(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091296
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】送信装置、受信装置、送信方法、受信方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04B 7/06 20060101AFI20230623BHJP
H04B 7/08 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
H04B7/06 982
H04B7/08 982
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205966
(22)【出願日】2021-12-20
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、総務省「HAPSを利用した無線通信システムに係る周波数有効利用技術に関する研究開発」に関する委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大内 幹博
(72)【発明者】
【氏名】木村 知弘
(72)【発明者】
【氏名】珍田 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】菊地 和彦
(57)【要約】
【課題】高性能なビームフォーミングを実現すること。
【解決手段】本開示の一実施例に係る送信方法は、送信装置が、デジタル校正用信号を生成し、送信装置が有する複数のアンテナ素子の各々に対応する第1デジタル信号にデジタル校正用信号を加算した第2デジタル信号に対してデジタル/アナログ変換を含む送信処理を実行して、第1アナログ信号を生成し、複数のアンテナ素子の各々を通過した第1アナログ信号に対してアナログ/デジタル変換を含む受信処理を実行することによって、複数のアンテナ素子の各々に対応する第3デジタル信号を生成し、デジタル校正用信号と第3デジタル信号との相関演算を行って、複数のアンテナ素子の各々の遅延に関する送信特性を算出し、遅延に関する送信特性に基づき、複数のアンテナ素子の各々の遅延に関する送信特性補正量を算出し、送信特性補正量に基づき、遅延に関する送信特性を補正する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナ素子と、
デジタル校正用信号を生成する校正用信号生成部と、
前記複数のアンテナ素子の各々に対応する第1デジタル信号に前記デジタル校正用信号を加算した第2デジタル信号に対してデジタル/アナログ変換を含む送信処理を実行して、第1アナログ信号を生成する送信処理実行部と、
前記複数のアンテナ素子の各々を通過した前記第1アナログ信号に対してアナログ/デジタル変換を含む受信処理を実行することによって、前記複数のアンテナ素子の各々に対応する第3デジタル信号を生成する受信処理実行部と、
前記デジタル校正用信号と前記第3デジタル信号との相関演算を行って、前記複数のアンテナ素子の各々の遅延に関する送信特性を算出し、前記遅延に関する送信特性に基づき、前記複数のアンテナ素子の各々の遅延に関する送信特性補正量を算出する送信特性算出部と、
前記送信特性補正量に基づき、前記遅延に関する送信特性を補正する送信特性補正部と、
を有する送信装置。
【請求項2】
前記送信特性算出部は、前記相関演算を行ってE-L(Early-Late)相関値を得ることによって、前記遅延に関する送信特性を算出する、
請求項1に記載の送信装置。
【請求項3】
前記送信特性算出部は、前記相関演算を高速サンプリングレートにより行って、前記遅延に関する送信特性を算出する、
請求項1に記載の送信装置。
【請求項4】
前記送信特性算出部は、前記複数のアンテナ素子の内遅延中央値を持つ基準アンテナ素子の遅延に関する送信特性に、前記基準アンテナ素子以外のアンテナ素子の遅延に関する送信特性を合わせるように、前記遅延に関する送信特性補正量を算出する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の送信装置。
【請求項5】
前記校正用信号生成部は、前記複数のアンテナ素子の内遅延中央値を持つ基準アンテナ素子のE-L相関値が0となるように、前記デジタル校正用信号の遅延量を調整し、
前記送信特性算出部は、前記基準アンテナ素子以外のアンテナ素子のE-L相関値が0となるように、前記遅延に関する送信特性補正量を算出する、
請求項2に記載の送信装置。
【請求項6】
前記基準アンテナ素子は、設計情報に基づき特定される、
請求項4又は5に記載の送信装置。
【請求項7】
前記送信特性算出部は、前記複数のアンテナ素子の全部の前記遅延に関する送信特性に基づき前記基準アンテナ素子を特定する、
請求項4又は5に記載の送信装置。
【請求項8】
複数のアンテナ素子と、
デジタル校正用信号を生成する校正用信号生成部と、
前記デジタル校正用信号に対してデジタル/アナログ変換を含む送信処理を実行して、第1アナログ信号を生成する送信処理実行部と、
前記複数のアンテナ素子の各々を介して受信された第2アナログ信号に前記第1アナログ信号を加算した第3アナログ信号に対してアナログ/デジタル変換を含む受信処理を実行することによって、前記複数のアンテナ素子の各々に対応する第1デジタル信号を生成する受信処理実行部と、
前記デジタル校正用信号と前記第1デジタル信号との相関演算を行って、前記複数のアンテナ素子の各々の遅延に関する受信特性を算出し、前記遅延に関する受信特性に基づき、前記複数のアンテナ素子の各々の遅延に関する受信特性補正量を算出する受信特性算出部と、
前記受信特性補正量に基づき、前記遅延に関する受信特性を補正する受信特性補正部と、
を有する受信装置。
【請求項9】
前記受信特性算出部は、前記相関演算を行ってE-L相関値を得ることによって、前記遅延に関する受信特性を算出する、
請求項8に記載の受信装置。
【請求項10】
前記受信特性算出部は、前記相関演算を高速サンプリングレートにより行って、前記遅延に関する受信特性を算出する、
請求項8に記載の受信装置。
【請求項11】
前記受信特性算出部は、前記複数のアンテナ素子の内遅延中央値を持つ基準アンテナ素子の遅延に関する受信特性に、前記基準アンテナ素子以外のアンテナ素子の遅延に関する受信特性を合わせるように、前記遅延に関する受信特性補正量を算出する、
請求項8~10のいずれか一項に記載の受信装置。
【請求項12】
前記校正用信号生成部は、前記複数のアンテナ素子の内遅延中央値を持つ基準アンテナ素子のE-L相関値が0となるように、前記デジタル校正用信号の遅延量を調整し、
前記受信特性算出部は、前記基準アンテナ素子以外のアンテナ素子のE-L相関値が0となるように、前記遅延に関する受信特性補正量を算出する、
請求項9に記載の受信装置。
【請求項13】
前記基準アンテナ素子は、設計情報に基づき特定される、
請求項11又は12に記載の受信装置。
【請求項14】
前記受信特性算出部は、前記複数のアンテナ素子の全部の前記遅延に関する送信特性に基づき前記基準アンテナ素子を特定する、
請求項11又は12に記載の受信装置。
【請求項15】
送信装置が、
デジタル校正用信号を生成し、
前記送信装置が有する複数のアンテナ素子の各々に対応する第1デジタル信号に前記デジタル校正用信号を加算した第2デジタル信号に対してデジタル/アナログ変換を含む送信処理を実行して、第1アナログ信号を生成し、
前記複数のアンテナ素子の各々を通過した前記第1アナログ信号に対してアナログ/デジタル変換を含む受信処理を実行することによって、前記複数のアンテナ素子の各々に対応する第3デジタル信号を生成し、
前記デジタル校正用信号と前記第3デジタル信号との相関演算を行って、前記複数のアンテナ素子の各々の遅延に関する送信特性を算出し、
前記遅延に関する送信特性に基づき、前記複数のアンテナ素子の各々の遅延に関する送信特性補正量を算出し、
前記送信特性補正量に基づき、前記遅延に関する送信特性を補正する、
送信方法。
【請求項16】
受信装置が、
デジタル校正用信号を生成し、
前記デジタル校正用信号に対してデジタル/アナログ変換を含む送信処理を実行して、第1アナログ信号を生成し、
前記受信装置が有する複数のアンテナ素子の各々を介して受信された第2アナログ信号に前記第1アナログ信号を加算した第3アナログ信号に対してアナログ/デジタル変換を含む受信処理を実行することによって、前記複数のアンテナ素子の各々に対応する第1デジタル信号を生成し、
前記デジタル校正用信号と前記第1デジタル信号との相関演算を行って、前記複数のアンテナ素子の各々の遅延に関する受信特性を算出し、
前記遅延に関する受信特性に基づき、前記複数のアンテナ素子の各々の遅延に関する受信特性補正量を算出し、
前記受信特性補正量に基づき、前記遅延に関する受信特性を補正する、
受信方法。
【請求項17】
請求項15に記載の送信方法を送信装置に実行させるためのプログラム。
【請求項18】
請求項16に記載の受信方法を受信装置に実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、送信装置、受信装置、送信方法、受信方法及びプログラムに関し、より詳細には、無線伝送においてビームフォーミングを実行するための送信装置、受信装置、送信方法、受信方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
5G(5th Generation)移動通信システムの主要技術の1つとして、5Gマルチアンテナ技術が挙げられる(例えば、非特許文献1)。5Gマルチアンテナ技術では、超多素子アンテナを用いてアンテナ指向性を適応的に制御するビームフォーミングにより、高周波数帯での伝搬損失を補償する。ビームフォーミングには大別して、以下の3種類がある(例えば、非特許文献1の3.3章)。
(1)フルデジタルビームフォーミング
(2)フルアナログビームフォーミング
(3)ハイブリッドビームフォーミング
【0003】
(1)フルデジタルビームフォーミングは、デジタルプリコーディング処理により優れた性能を有するが、アンテナ素子数と同数のデジタル/アナログ変換器(DAC:Digital to Analog Converter)やアップコンバータ(UC:Up Converter)が必要となる。このため、高周波数帯では高価となり、かつ、消費電力が比較的高くなる。
【0004】
(2)フルアナログビームフォーミングは、デジタルプリコーディング処理が不要となり最も簡単な回路構成となるが、ビーム間の直交性を保つためにビーム数を減らし、かつ、狭ビームを生成する必要がある。
【0005】
(3)ハイブリッドビームフォーミングは、デジタルとアナログとが混在してビームフォーミングを行うため、性能及び回路構成の複雑さが共に、(1)フルデジタルビームフォーミングと(2)フルアナログビームフォーミングとの中間になる。
【0006】
ところで、高高度プラットフォーム(HAPS:High-Altitude Platform Station)の事業化に向けて国際的に環境整備及び技術開発が進み、その普及拡大が見込まれている。特にHAPSを利用した固定通信システムに対しては、上空経由にてバックホール回線の冗長経路確保実現等への期待が高まっている。WRC-19(2019年世界無線通信会議)にてHAPSに分配された38GHz帯による5G網と連携した高速大容量のHAPSシステムの実現が期待される(例えば、非特許文献2)。HAPSは、高度20km付近の成層圏で円周上を周回して飛行するため、地上局との間でビームフォーミングを行って追従する。HAPSでは、高周波数帯での伝搬損失を補償するため、超多素子アンテナを用いる必要がある。
【0007】
上記(1)~(3)のいずれのビームフォーミングにおいても、各アンテナ素子の位相(遅延)制御では、素子間のアナログ回路特性にばらつきがあるため、素子間の校正が重要である。特にHAPSが滞在する高度20km付近の成層圏は-70℃の極低温及び1/10気圧の厳しい環境であるため、素子間校正のリアルタイム性及び高速性が求められる。
【0008】
特許文献1では、疑似ランダム系列を主信号に加算してアレイアンテナから送出し、受信用アレイアンテナで受信して、送信側と同一の疑似ランダム系列と受信信号との相関を求めることでアンテナ素子毎の位相特性を算出し、素子間位相校正を行っている。これにより、主信号を止めることなくリアルタイム位相校正を可能としている。
【0009】
一方、非特許文献2のように広帯域信号を用いる場合、素子間の遅延ばらつきが帯域内位相傾きを生じさせやすくさせ、ビームフォーミング性能に悪影響を及ぼす。よって、ビームフォーミング性能を維持するためには、1サンプル未満の遅延ばらつきまで素子間校正を行う必要がある。特許文献2では、各素子における遅延補正量の設定可能範囲を抑圧するため、校正用信号を各素子の送信及び受信回路に順次注入し、校正用信号との相関により得られた各素子の送信及び受信回路の遅延測定結果を用いて、各素子の遅延補正量を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特表2010-540894号公報
【特許文献2】特開2010-213217号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】須山他,“5Gマルチアンテナ技術”,NTT DOCOMOテクニカル・ジャーナル,Vol. 23 No.4, pp.30-39(2016年1月)
【非特許文献2】鈴木他,“高高度プラットフォーム(HAPS)による5G網と連携した38GHz帯の無線通信システム開発-5G網の高速大容量バックホール回線に係る検討-”,2021年電子情報通信学会総合大会,B-3-1(2021年3月)
【非特許文献3】大内他,“高高度プラットフォーム(HAPS)による5G網と連携した38GHz帯の無線通信システム開発-基地局搭載型HAPSにおけるフルデジタルビームフォーミングの検討-”,2021年電子情報通信学会ソサイエティ大会,B-3-11(2021年9月)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前述の通り、HAPSを利用した固定通信システムにおいては、38GHz帯による高速大容量化の実現が期待される。しかしながら、降雨減衰が大きい38GHz帯を用いるとなると、高周波数帯での伝搬損失を補償するために元々超多素子アンテナを用いる想定である上に、十分な降雨減衰マージンを確保するために素子数を更に増加させる必要がある。このため、校正に要する時間が素子数に比例して増大する。特許文献2では、送信及び受信校正用信号が各々主信号の受信及び送信回路における遅延補正を行う遅延素子を通過後に、相関による遅延測定が行われるため、各素子の送信及び受信回路の遅延測定結果を用いて各素子の遅延補正量を算出する必要がある。このため、素子間の遅延校正に要する時間が素子数の2倍に比例して増大する。
【0013】
本開示の非限定的な実施例は、高性能なビームフォーミングを実現できる送信装置、受信装置、送信方法及び受信方法の提供に資する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示の一実施例に係る送信装置は、複数のアンテナ素子と、デジタル校正用信号を生成する校正用信号生成部と、前記複数のアンテナ素子の各々に対応する第1デジタル信号に前記デジタル校正用信号を加算した第2デジタル信号に対してデジタル/アナログ変換を含む送信処理を実行して、第1アナログ信号を生成する送信処理実行部と、前記複数のアンテナ素子の各々を通過した前記第1アナログ信号に対してアナログ/デジタル変換を含む受信処理を実行することによって、前記複数のアンテナ素子の各々に対応する第3デジタル信号を生成する受信処理実行部と、前記デジタル校正用信号と前記第3デジタル信号との相関演算を行って、前記複数のアンテナ素子の各々の遅延に関する送信特性を算出し、前記遅延に関する送信特性に基づき、前記複数のアンテナ素子の各々の遅延に関する送信特性補正量を算出する送信特性算出部と、前記送信特性補正量に基づき、前記遅延に関する送信特性を補正する送信特性補正部と、を有する。
【0015】
本開示の一実施例に係る受信装置は、複数のアンテナ素子と、デジタル校正用信号を生成する校正用信号生成部と、前記デジタル校正用信号に対してデジタル/アナログ変換を含む送信処理を実行して、第1アナログ信号を生成する送信処理実行部と、前記複数のアンテナ素子の各々を介して受信された第2アナログ信号に前記第1アナログ信号を加算した第3アナログ信号に対してアナログ/デジタル変換を含む受信処理を実行することによって、前記複数のアンテナ素子の各々に対応する第1デジタル信号を生成する受信処理実行部と、前記デジタル校正用信号と前記第1デジタル信号との相関演算を行って、前記複数のアンテナ素子の各々の遅延に関する受信特性を算出し、前記遅延に関する受信特性に基づき、前記複数のアンテナ素子の各々の遅延に関する受信特性補正量を算出する受信特性算出部と、前記受信特性補正量に基づき、前記遅延に関する受信特性を補正する受信特性補正部と、を有する。
【0016】
本開示の一実施例に係る送信方法は、送信装置が、デジタル校正用信号を生成し、前記送信装置が有する複数のアンテナ素子の各々に対応する第1デジタル信号に前記デジタル校正用信号を加算した第2デジタル信号に対してデジタル/アナログ変換を含む送信処理を実行して、第1アナログ信号を生成し、前記複数のアンテナ素子の各々を通過した前記第1アナログ信号に対してアナログ/デジタル変換を含む受信処理を実行することによって、前記複数のアンテナ素子の各々に対応する第3デジタル信号を生成し、前記デジタル校正用信号と前記第3デジタル信号との相関演算を行って、前記複数のアンテナ素子の各々の遅延に関する送信特性を算出し、前記遅延に関する送信特性に基づき、前記複数のアンテナ素子の各々の遅延に関する送信特性補正量を算出し、前記送信特性補正量に基づき、前記遅延に関する送信特性を補正する。
【0017】
本開示の一実施例に係る受信方法は、受信装置が、デジタル校正用信号を生成し、前記デジタル校正用信号に対してデジタル/アナログ変換を含む送信処理を実行して、第1アナログ信号を生成し、前記受信装置が有する複数のアンテナ素子の各々を介して受信された第2アナログ信号に前記第1アナログ信号を加算した第3アナログ信号に対してアナログ/デジタル変換を含む受信処理を実行することによって、前記複数のアンテナ素子の各々に対応する第1デジタル信号を生成し、前記デジタル校正用信号と前記第1デジタル信号との相関演算を行って、前記複数のアンテナ素子の各々の遅延に関する受信特性を算出し、前記遅延に関する受信特性に基づき、前記複数のアンテナ素子の各々の遅延に関する受信特性補正量を算出し、前記受信特性補正量に基づき、前記遅延に関する受信特性を補正する。
【0018】
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータープログラム、または、記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータープログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本開示の一実施例によれば、送信校正用信号(又は受信校正用信号)が校正用信号専用の受信処理実行部(又は送信処理実行部)を通過後に、単一かつ送信のみ(又は受信のみ)の相関により、遅延校正を行うことができるので、高性能なビームフォーミングを実現することができる。
【0020】
本開示の一実施例における更なる利点および効果は、明細書および図面から明らかにされる。かかる利点および/または効果は、いくつかの実施形態並びに明細書および図面に記載された特徴によってそれぞれ提供されるが、1つまたはそれ以上の同一の特徴を得るために必ずしも全てが提供される必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本開示の実施の形態1における通信装置の構成の一例を示す図
【
図2】本開示の実施の形態1における送信特性算出用アナログ部の構成の一例を示す図
【
図3】本開示の実施の形態1における送受信特性算出部の構成の一例を示す図
【
図4】遅延によるピーク相関値の変化及び遅延によるE-L相関値の変化をシミュレーションで得た結果の一例を示す図
【
図5】本開示の実施の形態1における受信特性算出用アナログ部の構成の一例を示す図
【
図6】本開示の実施の形態2における送信又は受信でのアンテナ素子(系統)間の遅延校正のフローチャートの一例を示す図
【
図7】本開示の実施の形態3における送信又は受信でのアンテナ素子(系統)間の遅延校正のフローチャートの他の一例を示す図
【
図8】本開示の実施の形態4における通信装置の構成の一例を示す図
【
図9】本開示の実施の形態4における送受信特性算出部の構成の一例を示す図
【
図10】本開示の実施の形態5における送信又は受信でのアンテナ素子(系統)間の遅延校正のフローチャートの一例を示す図
【
図11】本開示の実施の形態6における送信又は受信でのアンテナ素子(系統)間の遅延校正のフローチャートの他の一例を示す図
【
図12】本の実施の形態7における送信又は受信でのアンテナ素子(系統)間の遅延校正のフローチャートの他の一例を示す図
【
図13】本開示の実施の形態8における送信又は受信でのアンテナ素子(系統)間の遅延校正のフローチャートの他の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を適宜参照して、本開示の実施の形態について、詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0023】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために、提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0024】
(実施の形態1)
図1は、本開示の実施の形態1における通信装置100の構成の一例を示す図である。通信装置100は、M個の送信信号生成部110-1~110-Mと、送信用デジタルプリコーディング部115と、N個の送信特性補正部175-1~175-Nと、校正用信号生成部120と、N個のDAC125-1~125-Nと、N個のUC130-1~130-Nと、N個の電力増幅部135-1~135-Nと、N個のデュプレクサ140-1~140-Nと、N個のアンテナ素子145-1~145-Nと、送信特性算出用アナログ部180と、受信特性算出用アナログ部185と、送受信特性算出部190と、N個の加算器195-1~195-Nと、L個の受信信号再生部210-1~210-Lと、受信用デジタルプリコーディング部215と、N個の受信特性補正部275-1~275-Nと、N個のアナログ/デジタル変換器(ADC:Analog to Digital Converter)225-1~225-Nと、N個のダウンコンバータ(DC:Down Converter)230-1~230-Nと、N個の電力増幅部235-1~235-Nと、を備える。なお、通信装置100の内、デジタル処理を行う構成要素を集積回路105としてもよい。デジタル処理を行う構成要素としては、例えば、送信信号生成部110-1~110-M、送信用デジタルプリコーディング部115、校正用信号生成部120、DAC125-1~125-N、受信信号再生部210-1~210-L、受信用デジタルプリコーディング部215、ADC225-1~225-N、送信特性補正部175-1~175-N、送受信特性算出部190及び受信特性補正部275-1~275-Nが挙げられる。なお、集積回路105は、デジタル処理を行う構成要素だけでなく、アナログ処理を行う構成要素の一部又は全部を含んでもよい。
【0025】
以下、
図1の通信装置100の動作の内、送信側について説明する。
【0026】
送信信号生成部110-1~110-Mは、各々、送信ストリーム1~Mを生成して送信用デジタルプリコーディング部115に出力する。
【0027】
送信用デジタルプリコーディング部115は、M個の入力(送信ストリーム1~M)に対してビームフォーミングのためのデジタルプリコーディングを行い、N個のアンテナ素子の各々に対応するN個のデジタル信号(主信号)を生成して、対応する送信特性補正部175-1~175-Nに出力する。
【0028】
送信特性補正部175-1~175-Nは、送受信特性算出部190から入力された送信特性補正量信号によって示される送信特性(遅延)補正量を、記憶部(図示せず)に記憶させる。あるいは、送信特性(遅延)補正量は、送受信特性算出部190によって記憶部(図示せず)に記憶されてもよい。送信特性補正部175-1~175-Nは、送信特性補正量信号によって示される送信特性(遅延)補正量に基づいて、送信用デジタルプリコーディング部115から入力されたデジタル信号(主信号)の特性を各々補正することでアンテナ素子間校正を行う。そして、送信特性補正部175-1~175-Nは、各々、校正を行ったデジタル信号をDAC125-1~125-Nに出力する。なお、アンテナ素子間校正を行うための前処理が行われる場合には、N個のデジタル信号(主信号)は、送信特性補正部175-1~175-Nによって処理されずに送信特性補正部175-1~175-Nを通過する。以下においては、特段の断りがない限り、アンテナ素子間校正(すなわち、送信特性補正部175-1~175-Nによる補正)を行うための前処理が行われる場合について説明する。
【0029】
校正用信号生成部120は、校正用信号を低電力レベルで生成してDAC125-1~125-Nに出力する。また、図示されていないが、校正用信号生成部120は、校正用信号を送受信特性算出部190にも出力する。校正用信号の一例としては、M系列又はGold系列等の0と1がおよそ等確率で生成される疑似ランダム系列が挙げられる。
【0030】
DAC125-1~125-Nは、各々、校正用信号生成部120から入力された校正用信号を送信特性補正部175-1~175-Nから入力された主信号に加算してから、デジタル信号をアナログ信号に変換してUC130-1~130-Nに出力する。
【0031】
UC130-1~130-Nは、各々、DAC125-1~125-Nから入力されたアナログ信号を送信周波数帯にアップコンバートして電力増幅部135-1~135-Nに出力する。
【0032】
電力増幅部135-1~135-Nは、各々、電力増幅部135-1~135-Nから入力されたアップコンバートされたアナログ信号の電力を増幅して出力する。電力増幅部135-1~135-Nから出力されたアナログ信号は、各々、デュプレクサ140-1~140-N、加算器195-1~195-Nを通過して、N個のアンテナ素子145-1~145-Nに送信信号として入力される。そして、N個のアンテナ素子145-1~145-Nに入力された送信信号(すなわち、N個のアンテナ素子145-1~145-Nを通過した送信信号)は、送信特性算出用アナログ部180による後述の処理のために送信特性算出用アナログ部180に入力される。
【0033】
DAC125-1~125-N、UC130-1~130-N及び電力増幅部135-1~135-Nは、主信号に校正用信号を加算したデジタル信号に対してDA変換を少なくとも含む送信処理を実行して、アナログ信号を生成する。
【0034】
上記の主信号は、本開示に係る送信装置及び送信方法における第1デジタル信号の一例であり、上記の主信号に校正用信号を加算したデジタル信号は、本開示に係る送信装置及び送信方法における第2デジタル信号の一例であり、送信処理実行後に生成される上記のアナログ信号は、本開示に係る送信装置及び送信方法における第1アナログ信号の一例である。また、少なくともDAC125-1~125-Nは(場合によっては、さらにUC130-1~130-N及び電力増幅部135-1~135-Nは)、本開示に係る送信装置及び送信方法における送信処理実行部の一例である。
【0035】
送信特性算出用アナログ部180は、N個のアンテナ素子145-1~145-Nから入力されたアナログ送信信号に対してダウンコンバート、AD変換等の受信処理を実行し、受信処理後のデジタル信号を送受信特性算出部190に出力する。なお、通信装置100において、送信の周波数と受信の周波数とが異なる場合、送信特性算出用アナログ部180から送信側の信号のみが出力されて送受信特性算出部190に入力される。
【0036】
送受信特性算出部190は、送信特性算出用アナログ部180から入力されたデジタル信号を用いて、送信特性を算出する。
【0037】
以上のように、送信校正用信号が校正用信号専用の受信回路(送信特性算出用アナログ部180)を通過後に、相関による遅延測定が行われる。すなわち、特許文献2とは異なり、送信校正用信号が主信号の受信回路における遅延素子を通過せずに、相関による遅延測定が行われる。
【0038】
図2は、送信特性算出用アナログ部180の構成の一例を示す図である。送信特性算出用アナログ部180は、ADC425と、DC430と、電力増幅部435と、入力選択スイッチ437と、を備える。
【0039】
入力選択スイッチ437は、N個のアンテナ素子145-1~145-Nの内、順次1つを選択して、選択したアンテナ素子からのアナログ信号を受け付け電力増幅部435に出力する。
【0040】
電力増幅部435は、入力選択スイッチ437から入力されたアナログ信号の電力を増幅してDC430に出力する。
【0041】
DC430は、DC230-1~230-Nと同様に、電力増幅部435から入力されたアナログ信号を、受信周波数帯からダウンコンバートしてADC425に出力する。
【0042】
ADC425は、DC430から入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換して送受信特性算出部190に出力する。
【0043】
DC430、ADC425、入力選択スイッチ437及び電力増幅部435は、N個のアンテナ素子145-1~145-Nを介して入力されたアナログ信号に対してAD変換を少なくとも含む受信処理を実行して、校正用信号(疑似ランダム系列)が含まれているデジタル信号を生成する。
【0044】
上記のデジタル信号は、本開示に係る送信装置及び送信方法における第3デジタル信号の一例である。少なくともDC430は(場合によっては、さらにADC425、入力選択スイッチ437及び電力増幅部435は、すなわち、送信特性算出用アナログ部180は)、本開示に係る送信装置及び送信方法における受信処理実行部又は第1受信処理実行部の一例である。
【0045】
アンテナ素子間校正を行うための前処理が既に行われている場合、すなわち、送信用デジタルプリコーディング部115からのN個のデジタル信号(主信号)が、送信特性補正部175-1~175-Nによって処理されて送信される場合については、詳細な説明を省略する。この場合、N個のアンテナ素子145-1~145-Nによる送信のために、N個のアンテナ素子145-1~145-Nに対応する送信特性補正を受けたデジタル信号が、各々、上述したDAC125-1~125-N、UC130-1~130-N、電力増幅部135-1~135-N及びデュプレクサ140-1~140-Nを介して、最終的にN個のアンテナ素子145-1~145-Nに入力される。
【0046】
上記の送信特性補正を受けたデジタル信号は、本開示に係る受信装置及び受信方法における第2デジタル信号の一例である。また、少なくともDAC125-1~125-Nは(場合によっては、さらにUC130-1~130-N及び電力増幅部135-1~135-Nは)、本開示に係る受信装置及び受信方法における第2送信処理実行部の一例である。
【0047】
図3は、送受信特性算出部190の構成の一例を示す図である。送受信特性算出部190は、入力選択スイッチ441と、相関演算部343及び443と、E-L(Early-Late)検出部347及び447と、送信特性比較部353と、受信特性比較部453と、を備える。
【0048】
相関演算部343は、送信特性算出用アナログ部180によってアンテナ素子145-1~145-Nを通過したアナログ信号から変換されて送信特性算出用アナログ部180から入力されたデジタル信号と校正用信号生成部120によって生成されて校正用信号生成部120から入力された校正用信号(疑似ランダム系列)との相関演算を行う。
【0049】
E-L検出部347は、疑似ランダム系列の1周期内のピーク値を検出し、必要に応じて複数周期間の相関演算を行うことで所望の相関ゲインを得る。また、E-L検出部347は、ピーク値の1サンプル前の相関値から1サンプル後の相関値を減算した結果であるE-L相関値を、送信特性として送信特性比較部353に出力する。
【0050】
送信特性算出用アナログ部180からの出力がN個のアンテナ素子145-1~145-Nの各々に順次切り替えられることで、送信特性比較部353は、E-L検出部347から入力されたN個のアンテナ素子145-1~145-Nの各々の特性を比較する。そして、送信特性比較部353は、全ての特性が同一となるように、N個のアンテナ素子145-1~145-Nの各々の送信特性補正量を算出(又は決定)し、送信特性補正量を示す送信特性補正量信号を生成して送信特性補正部175-1~175-Nに出力する。
【0051】
送受信特性算出部190は、本開示に係る送信装置及び送信方法における送信特性算出部の一例である。
【0052】
図4(a)及び
図4(b)は、各々、非特許文献3に示されている諸元を与えて、遅延によるピーク相関値の変化及び遅延によるE-L相関値の変化をシミュレーションで得た結果の一例を示す図である。
【0053】
図4(a)は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号なしの校正用信号のみの条件下で、遅延によるピーク相関値の変化を示している。横軸は、サンプル単位の遅延量を示し、遅延なしの0で最大値となる。
図4(a)に示す通り、横軸0を中心として正負の遅延量に対して対称な相関値が得られることを利用して、E-L相関値により1サンプル未満の遅延量までも算出する。
【0054】
図4(b)は、OFDM信号(NR信号と表記)に校正用信号(CAL信号と表記)を重畳させた条件下で、遅延によるE-L相関値の変化を示している。
図4(b)に示すグラフの縦軸はE-L相関値を示し、このグラフの横軸はサンプル単位の遅延量を示している。AWGN(Additive White Gaussian Noise)なしの条件下では原点を通るきれいな1次関数(実線で示される関数)となる。AWGNを加えてSNR(Signal to Nose power Ratio)が18dBの条件下では、誤差バーに示す通りE-L相関値が分散し、100回平均した値をプロットするときれいな1次関数(点線で示される関数)となる。このE-L相関値の性質を用いて、送信特性比較部353は、アンテナ素子間の1サンプル未満の遅延差までも算出し、全ての特性(遅延)が同一となるように各々の送信特性(遅延)補正量を算出(又は決定)し、送信特性補正量を示す送信特性補正量信号を生成して送信特性補正部175-1~175-Nに出力する。
【0055】
次に、
図1の通信装置100の動作の内、受信側について説明する。以下においては、特段の断りがない限り、アンテナ素子間校正(すなわち、受信特性補正部275-1~275-Nによる補正)を行うための前処理が行われる場合について説明する。
【0056】
受信特性算出用アナログ部185は、校正用信号生成部120から入力された校正用信号に対してDA変換、アップコンバート等の送信処理を実行して、アンテナ素子145-1~145-Nの各々に対する高周波アナログ信号を生成する。
【0057】
上記の高周波アナログ信号は、本開示に係る受信装置及び受信方法における第1アナログ信号の一例である。
【0058】
加算器195-1~195-Nは、この各高周波アナログ信号を、N個のアンテナ素子145-1~145-Nによって受信されたアナログ信号(主信号)に対して各々加算して出力する。
【0059】
N個のアンテナ素子145-1~145-Nによって(を介して)受信された上記のアナログ信号は、本開示に係る受信装置及び受信方法における第2アナログ信号の一例である。
【0060】
加算器195-1~195-Nから出力されたアナログ信号は、各々、デュプレクサ140-1~140-Nを通過して、電力増幅部235-1~235-Nに入力される。
【0061】
各高周波アナログ信号が、N個のアンテナ素子145-1~145-Nによって受信されたアナログ信号に対して各々加算されて加算器195-1~195-Nから出力されるアナログ信号は、本開示に係る受信装置及び受信方法における第3アナログ信号の一例である。
【0062】
電力増幅部235-1~235-Nは、各々、入力されたアナログ信号の電力を増幅してDC230-1~230-Nに出力する。
【0063】
DC230-1~230-Nは、各々、電力増幅部235-1~235-Nから入力されたアナログ信号を、受信周波数帯からダウンコンバートしてADC225-1~225-Nに出力する。
【0064】
ADC225-1~225-Nは、各々、DC230-1~230-Nから入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換して送受信特性算出部190及び受信特性補正部275-1~275-Nに出力する。
【0065】
上記のデジタル信号は、本開示に係る受信装置及び受信方法における第1デジタル信号の一例である。
【0066】
DC230-1~230-N、ADC225-1~225-N及び電力増幅部235-1~235-Nは、N個のアンテナ素子145-1~145-Nを介して受信されたアナログ信号に校正用信号に対応する高周波アナログ信号を加算したアナログ信号に対してAD変換を少なくとも含む受信処理を実行して、デジタル信号を生成する。
【0067】
少なくともDC230-1~230-Nは(場合によっては、さらにADC225-5~225-N及び電力増幅部235-1~235-Nは)、本開示に係る受信装置及び受信方法における受信処理実行部の一例である。
【0068】
送受信特性算出部190は、ADC225-1~225-Nから入力された信号を用いて受信特性を算出し、受信特性補正量信号を生成して受信特性補正部275-1~275-Nに出力する。
【0069】
受信特性補正部275-1~275-Nは、送受信特性算出部190から入力された受信特性補正量信号によって示される受信特性(遅延)補正量を、記憶部(図示せず)に記憶させる。あるいは、受信特性(遅延)補正量は、送受信特性算出部190によって記憶部(図示せず)に記憶されてもよい。アンテナ素子間校正を行うための前処理がこのように既に行われている場合、以後、受信特性補正部275-1~275-Nは、受信特性補正量信号によって示される受信特性(遅延)補正量に基づいて、ADC225-1~225-Nから入力されたデジタル信号の特性を各々補正することでアンテナ素子間校正を行い、校正を行ったデジタル信号を受信用デジタルプリコーディング部215に出力する。
【0070】
アンテナ素子間校正を行うための前処理が既に行われている場合については、詳細な説明を省略する。この場合、N個のアンテナ素子145-1~145-Nによって受信されたアナログ信号が、各々、上述したデュプレクサ140-1~140-N、電力増幅部235-1~235-N、DC230-1~230-N及びADC225-1~225-Nを介して、受信特性補正部275-1~275-Nに入力される。そして、受信特性補正部275-1~275-Nは、上述したように、アンテナ素子間校正を行い、校正を行ったデジタル信号を受信用デジタルプリコーディング部215に出力する。
【0071】
N個のアンテナ素子145-1~145-Nの各々によって受信された上記のアナログ信号は、本開示に係る送信装置及び受信方法における第2アナログ信号の一例である。また、少なくともDC230-1~230-Nは(場合によっては、さらにADC225-1~225-N及び電力増幅部135-1~135-Nは)、本開示に係る送信装置及び送信方法における第2受信処理実行部の一例である。
【0072】
受信用デジタルプリコーディング部215は、受信特性補正部275-1~275-Nの各々から入力された受信特性補正を受けたデジタル信号に対してデジタルプリコーディングを行い、L個の出力(受信ストリーム1~L)を生成して受信信号再生部210-1~210-Lに出力する。
【0073】
以上のように、受信校正用信号が校正用信号専用の送信回路(受信特性算出用アナログ部185)を通過後に、相関による遅延測定が行われる。すなわち、特許文献2とは異なり、受信校正用信号が主信号の送信回路における遅延素子を通過せずに、相関による遅延測定が行われる。
【0074】
図5は、受信特性算出用アナログ部185の構成の一例を示す図である。受信特性算出用アナログ部185は、DAC325と、UC330と、電力増幅部335と、出力切替スイッチ337と、を備える。
【0075】
DAC325は、校正用信号生成部120から入力されたデジタル信号である校正用信号をアナログ信号に変換してUC330に出力する。
【0076】
UC330は、UC130-1~130-Nと同様に、各々アナログ信号を送信周波数帯にアップコンバートして電力増幅部335に出力する。
【0077】
電力増幅部335は、電力増幅部135-1~135-Nと同様に、UC330から入力されたアップコンバートされたアナログ信号の電力を増幅して出力切替スイッチ337に出力する。
【0078】
出力切替スイッチ337は、加算器195-1~195-Nへの出力の内、順次1つを選択して、選択した加算器に、電力増幅部335から入力されたアナログ信号を出力し、その他の選択していない加算器には0(ヌル)を出力する。
【0079】
DAC325、UC330、電力増幅部335及び出力切替スイッチ337は、校正用信号に対してDA変換を少なくとも含む送信処理を実行して、アナログ信号を生成する。
【0080】
上記のアナログ信号は、本開示に係る受信装置及び受信方法における第1アナログ信号の一例である。少なくともDAC325は(場合によっては、さらにUC330、電力増幅部335及び出力切替スイッチ337は、すなわち、受信特性算出用アナログ部185は)、本開示に係る受信装置及び受信方法における送信処理実行部又は第1送信処理実行部の一例である。
【0081】
図3に示す送受信特性算出部190において、入力選択スイッチ441は、ADC225-1~225-Nからの出力の内、受信特性算出用アナログ部185から校正用信号が出力されているADCを選択し、当該ADCからの入力を相関演算部443に出力する。
【0082】
相関演算部443は、アンテナ素子145-1~145-Nによって受信されたアナログ信号に各々対応する入力選択スイッチ441から入力されたデジタル信号と校正用信号生成部120によって生成されて校正用信号生成部120から入力された疑似ランダム系列との相関演算を行う。
【0083】
E-L検出部447は、疑似ランダム系列の1周期内のピーク値を検出し、必要に応じて複数周期間の相関演算を行うことにより所望の相関ゲインを得る。また、E-L検出部447は、ピーク値の1サンプル前の相関値から1サンプル後の相関値を減算した結果であるE-L相関値を、受信特性として受信特性比較部453に出力する。
【0084】
受信特性算出用アナログ部185からの出力がN個のアンテナ素子145-1~145-Nの各々に順次切り替えられることで、受信特性比較部453は、N個のアンテナ素子145-1~145-Nの各々の特性を比較する。そして、受信特性比較部453は、
図4(b)に示すE-L相関値の性質を用いて、全ての特性(遅延)が同一となるように、N個のアンテナ素子145-1~145-Nの各々の受信特性(遅延)補正量を算出(又は決定)し、受信特性補正量を示す受信特性補正量信号を生成して受信特性補正部275-1~275-Nに出力する。
【0085】
送受信特性算出部190は、本開示に係る受信装置及び受信方法における受信特性算出部の一例である。
【0086】
<実施の形態1の効果>
実施の形態1によれば、以上の構成により、E-L相関値の性質を用いた遅延校正によりビームフォーミング性能を一定に保つ送信装置及び受信装置を提供することができる。特に、送信校正用信号及び受信校正用信号が各々校正用信号専用の受信回路及び送信回路を通過後に、相関による遅延測定が行われる。すなわち、特許文献2とは異なり、送信校正用信号及び受信校正用信号が各々主信号の受信回路及び送信回路における遅延素子を通過せずに、相関による遅延測定が行われるため、送信の遅延校正と受信の遅延校正とを互いに独立に実施可能となり、特許文献2と比較してアンテナ素子間の遅延校正に要する時間を半分に短縮することができるという効果を有する。
【0087】
(実施の形態2)
図6は、
図1に示す通信装置100の送信又は受信におけるアンテナ素子(系統と称されてもよい)間の遅延校正のフローチャートの一例を示す図である。通信装置100は、このフローチャートに基づき、送信の遅延校正と受信の遅延校正とを互いに独立に実施可能である。
【0088】
特に高い周波数帯を用いる場合、アンテナ素子間の遅延差の主要因として、アナログ素子間の遅延特性の個体差ではなく、基板上の配線長の違いの占める割合が高まる。この性質を利用して、S101において、通信装置100(例えば
図1に示していない制御部、相関演算部343、443、E-L検出部347、447、送信特性比較部353又は受信特性比較部453等)は、基板の配線長に基づき、遅延中央値を持つ系統を基準系統(基準アンテナ素子)として特定する。あるいは、基準系統は、例えば設計者等の人により、基板情報(基板の配線長)から手作業で特定されてもよい。ここで、遅延中央値は、N個のアンテナ素子145-1~145-Nの遅延の内の中央値を意味する。このように、遅延中央値を持つ系統を基準系統として用いることで、特許文献2と比較して遅延補正量の範囲を抑圧することが可能となる。なお、基準系統としては、遅延中央値を持つ系統に限定されず、遅延中央値付近の遅延値を持つ系統が用いられてもよい。
【0089】
通信装置100が基準系統を特定する際に、基板の配線長は、例えば記憶部(図示せず)に設けられた設計情報データベースに記憶されてよい。基板の配線長は、本開示に係る設計情報の一例である。
【0090】
S201において、相関演算部343及びE-L検出部347は協働して(送信の遅延校正の場合)、又は、相関演算部443及びE-L検出部447は協働して(受信の遅延校正の場合)、基準系統のE-L相関を実行する。
【0091】
S301-1~S301-Nの各々において、相関演算部343及びE-L検出部347は協働して(送信の遅延校正の場合)、又は、相関演算部443及びE-L検出部447は協働して(受信の遅延校正の場合)、系統#1~#Nが基準系統以外の場合、系統#1~#NのE-L相関を実行する。
【0092】
S401において、送信特性比較部353は(送信の遅延校正の場合)、又は、受信特性比較部453(受信の遅延校正の場合)は、基準系統のE-L相関値と系統#1~#N(基準系統以外)のE-L相関値とを比較する。
【0093】
S402において、送信特性比較部353は(送信の遅延校正の場合)、又は、受信特性比較部453(受信の遅延校正の場合)は、S401における比較の結果と
図4(b)に示すE-L相関値の性質とに基づいて、基準系統の遅延特性に他の系統の遅延特性を合わせるように、系統#1~#N(基準系統以外)の遅延量を算出して出力する(より具体的には、送信特性補正量信号として又は受信特性補正量信号として)。そして、
図6に示すフローは終了する。
【0094】
<実施の形態2の効果>
実施の形態2によれば、以上の構成により、遅延中央値を持つ系統を基準系統として特定し、基準系統の遅延特性に他の系統の遅延特性を合わせることで、遅延補正量の範囲を抑圧することができるという効果を有する。また、実施の形態1と同様に、送信の遅延校正と受信の遅延校正とを互いに独立に実施可能であり、特許文献2と比較してアンテナ素子間の遅延校正に要する時間を半分に短縮することができるという効果も有する。
【0095】
(実施の形態3)
図7は、
図1に示す通信装置100の送信又は受信におけるアンテナ素子(系統)間の遅延校正のフローチャートの他の一例を示す図である。通信装置100は、このフローチャートに基づき、送信の遅延校正と受信の遅延校正とを互いに独立に実施可能である。実施の形態2におけるフローチャートと同じ処理に対しては同じ符号を用い、その説明を省略する。
【0096】
S101及びS201は、実施の形態2と同じである。
【0097】
S501において、校正用信号生成部120が、基準系統のE-L相関が0となるように、校正用信号の遅延量を調整する。
【0098】
S301-1~S301-Nは、実施の形態2と同じである。
【0099】
実施の形態3では、実施の形態2におけるS401の処理は不要となり、S412において、送信特性比較部353は(送信の遅延校正の場合)、又は、受信特性比較部453(受信の遅延校正の場合)は、系統#1~#N(基準系統以外)のE-L相関が0となるように、遅延量を算出して出力する(より具体的には、送信特性補正量信号として又は受信特性補正量信号として)。そして、
図7に示すフローは終了する。
【0100】
<実施の形態3の効果>
実施の形態3によれば、以上の構成により、遅延中央値を持つ系統を基準系統として特定し、基準系統の遅延特性に他の系統の遅延特性を合わせることで、遅延補正量の範囲を抑圧することができるという効果を有する。さらに、実施の形態2とは異なり、基準系統のE-L相関が0となるように校正用信号の遅延量を調整することで、系統#1~#N(基準系統以外)のE-L相関も0となるように遅延量を算出でき、処理を簡略化することができると共に、0という中央値に合わせるので、遅延補正量の範囲を抑圧することができるという効果をより高めることができる。また、実施の形態1~2と同様に、送信の遅延校正と受信の遅延校正とを互いに独立に実施可能であり、特許文献2と比較してアンテナ素子間の遅延校正に要する時間を半分に短縮することができるという効果も有する。
【0101】
(実施の形態4)
図8は、本開示の実施の形態4における通信装置500の構成の一例を示す図である。実施の形態1における通信装置100と同じ構成要素に対しては同じ符号を用い、その説明を省略する。
【0102】
図8に示す通信装置500は、
図1に示す実施の形態1における通信装置100と比較して、送受信特性算出部190の代わりに、送受信特性算出部590に置き換えた構成を採る。なお、通信装置500の内、デジタル処理を行う構成要素を集積回路505としてもよい。デジタル処理を行う構成要素としては、送信信号生成部110-1~110-M、送信用デジタルプリコーディング部115、校正用信号生成部120、DAC125-1~125-N、受信信号再生部210-1~210-L、受信用デジタルプリコーディング部215、ADC225-1~225-N、送信特性補正部175-1~175-N、送受信特性算出部590及び受信特性補正部275-1~275-Nが挙げられる。なお、集積回路505は、デジタル処理を行う構成要素だけでなく、アナログ処理を行う構成要素の一部又は全部を含んでもよい。
【0103】
図9は、送受信特性算出部590の構成の一例を示す図である。
図9に示す送受信特性算出部590は、
図3に示す実施の形態1における送受信特性算出部190と比較して、相関演算部343及び443、E-L検出部347及び447、送信特性比較部353並びに受信特性比較部453の代わりに、相関演算部543及び643、ピーク検出部547及び647、送信特性比較部553並びに受信特性比較部653に置き換えた構成を採る。
【0104】
相関演算部543及び643は、アンテナ素子145-1~145-Nに対応するデジタル入力信号と校正用信号生成部120によって生成されて校正用信号生成部120から入力された校正用信号(疑似ランダム系列)との相関演算を高速サンプリングレート(例えば、送信サンプリングレートの10倍等)により行う。
【0105】
ピーク検出部547及び647は、疑似ランダム系列の1周期内のピーク値を検出し、必要に応じて複数周期間の相関演算を行うことで所望の相関ゲインを得る。また、ピーク検出部547及び647はピークタイミングも検出し、検出したピークタイミングを各々送信(遅延)及び受信(遅延)特性として送信特性比較部553及び受信特性比較部653に出力する。
【0106】
送信特性比較部553は、N個のアンテナ素子145-1~145-Nの各々の特性(遅延)を比較する。そして、送信特性比較部553は、全ての特性が同一となるように、N個のアンテナ素子145-1~145-Nの各々の送信特性補正量を算出(又は決定)し、送信特性補正量を示す送信特性補正量信号を生成して送信特性補正部175-1~175-Nに出力する。
【0107】
同様に、受信特性比較部653は、N個のアンテナ素子145-1~145-Nの各々の特性(遅延)を比較する。そして、受信特性比較部653は、全ての特性が同一となるように、N個のアンテナ素子145-1~145-Nの各々の受信特性補正量を算出(又は決定)し、受信特性補正量を示す受信特性補正量信号を生成して受信特性補正部275-1~275-Nに出力する。
【0108】
<実施の形態4の効果>
実施の形態4によれば、以上の構成により、高速サンプリングレートによる相関演算を用いた遅延校正によりビームフォーミング性能を一定に保つ送信装置及び受信装置を提供することができる。特に、送信校正用信号及び受信校正用信号が各々校正用信号専用の受信回路及び送信回路を通過後に、相関による遅延測定が行われる。すなわち、特許文献2とは異なり、送信校正用信号及び受信校正用信号が各々主信号の受信回路及び送信回路における遅延素子を通過せずに、相関による遅延測定が行われるため、送信の遅延校正と受信の遅延校正とを互いに独立に実施可能となり、特許文献2と比較してアンテナ素子間の遅延校正に要する時間を半分に短縮することができるという効果を有する。
【0109】
(実施の形態5)
図10は、
図8に示す通信装置500の送信又は受信におけるアンテナ素子(系統)間の遅延校正のフローチャートの一例を示す図である。通信装置500は、このフローチャートに基づき、送信の遅延校正と受信の遅延校正とを互いに独立に実施可能である。実施の形態2~3のフローチャートと同じ処理に対しては同じ符号を用い、その説明を省略する。
【0110】
S101は、実施の形態2~3と同じである。
【0111】
S221において、相関演算部543及びピーク検出部547は協働して(送信の遅延校正の場合)、又は、相関演算部643及びピーク検出部647は協働して(受信の遅延校正の場合)、基準系統の相関を実行する。
【0112】
S321-1~S321-Nの各々において、相関演算部543及びピーク検出部547は協働して(送信の遅延校正の場合)、又は、相関演算部643及びピーク検出部647は協働して(受信の遅延校正の場合)、系統#1~#Nが基準系統以外の場合、系統#1~#Nの相関を実行する。
【0113】
S421において、送信特性比較部553は(送信の遅延校正の場合)、又は、受信特性比較部653(受信の遅延校正の場合)は、基準系統の相関ピークタイミングと系統#1~#N(基準系統以外)の相関ピークタイミングとを比較する。
【0114】
S422において、送信特性比較部553は(送信の遅延校正の場合)、又は、受信特性比較部653(受信の遅延校正の場合)は、S421における比較の結果に基づいて、基準系統の遅延特性に他の系統の遅延特性を合わせるように、系統#1~#N(基準系統以外)の遅延量を算出して出力する(より具体的には、送信特性補正量信号として又は受信特性補正量信号として)。そして、
図10に示すフローは終了する。
【0115】
<実施の形態5の効果>
実施の形態5によれば、以上の構成により、遅延中央値を持つ系統を基準系統として特定し、基準系統の遅延特性に他の系統の遅延特性を合わせることで、遅延補正量の範囲を抑圧することができるという効果を有する。実施の形態2~3と異なり、相関演算を高速サンプリングレートにより行うことでE-L相関を不要とする。また、実施の形態1~4と同様に、送信の遅延校正と受信の遅延校正とを互いに独立に実施可能であり、特許文献2と比較してアンテナ素子間の遅延校正に要する時間を半分に短縮することができるという効果も有する。
【0116】
(実施の形態6)
図11は、
図1に示す通信装置100の送信又は受信におけるアンテナ素子(系統)間の遅延校正のフローチャートの他の一例を示す図である。通信装置100は、このフローチャートに基づき、送信の遅延校正と受信の遅延校正とを互いに独立に実施可能である。実施の形態2~3のフローチャートと同じ処理に対しては同じ符号を用い、その説明を省略する。
【0117】
S631-1~S631-Nの各々において、相関演算部343及びE-L検出部347は協働して(送信の遅延校正の場合)、又は、相関演算部443及びE-L検出部447は協働して(受信の遅延校正の場合)、系統#1~#NのE-L相関を実行する。
【0118】
S632において、送信特性比較部353は(送信の遅延校正の場合)、又は、受信特性比較部453(受信の遅延校正の場合)は、系統#1~#NのE-L相関値を比較し、遅延中央値を持つ系統を基準系統として特定する。
【0119】
S201、S301-1~S301-N、S401及びS402は、実施の形態2と同じである。
【0120】
<実施の形態6の効果>
実施の形態6によれば、以上の構成により、遅延中央値を持つ系統を基準系統として特定し、基準系統の遅延特性に他の系統の遅延特性を合わせることで、遅延補正量の範囲を抑圧することができるという効果を有する。実施の形態6では、実施の形態2とは異なり、基準系統の特定を基板の配線長に基づいて実施するのではなく、系統#1~#NのE-L相関を実行してこれらの相関値を比較することで基準系統の特定を自動的に実施可能である。また、実施の形態1~5と同様に、送信の遅延校正と受信の遅延校正とを互いに独立に実施可能であり、特許文献2と比較してアンテナ素子間の遅延校正に要する時間を半分に短縮することができるという効果も有する。
【0121】
(実施の形態7)
図12は、
図1に示す通信装置100の送信又は受信におけるアンテナ素子(系統)間の遅延校正のフローチャートの他の一例を示す図である。通信装置100は、このフローチャートに基づき、送信の遅延校正と受信の遅延校正とを互いに独立に実施可能である。実施の形態2~3及び6のフローチャートと同じ処理に対しては同じ符号を用い、その説明を省略する。
【0122】
図12に示す通り、S631-1~S631-N、S632及びS201は、実施の形態6と同じであり、S501、S301-1~S301-N及びS412は、実施の形態3と同じである。したがって、実施の形態7では、実施の形態3における
図7に示すフローチャートとは異なり、実施の形態6と同様に系統#1~#NのE-L相関を実行してこれらの相関値を比較することで自動的に基準系統を特定する。
【0123】
<実施の形態7の効果>
実施の形態7によれば、以上の構成により、遅延中央値を持つ系統を基準系統として特定し、基準系統の遅延特性に他の系統の遅延特性を合わせることで、遅延補正量の範囲を抑圧することができるという効果を有する。実施の形態7では、実施の形態3とは異なり、基準系統の特定を基板の配線長に基づいて実施するのではなく、系統#1~#NのE-L相関を実行してこれらの相関値を比較することで基準系統の特定を自動的に実施可能である。さらに、実施の形態6と異なり、基準系統のE-L相関が0となるように校正用信号の遅延量を調整することで、系統#1~#N(基準系統以外)のE-L相関も0となるように遅延量を算出でき、処理を簡略化できると共に、0という中央値に合わせるので、遅延補正量の範囲を抑圧することができるという効果をより高めることができる。また、実施の形態1~6と同様に、送信の遅延校正と受信の遅延校正とを互いに独立に実施可能であり、特許文献2と比較してアンテナ素子間の遅延校正に要する時間を半分に短縮することができるという効果も有する。
【0124】
(実施の形態8)
図13は、
図8に示す通信装置500の送信又は受信におけるアンテナ素子(系統)間の遅延校正のフローチャートの他の一例を示す図である。通信装置500は、このフローチャートに基づき、送信の遅延校正と受信の遅延校正とを互いに独立に実施可能である。実施の形態2~3及び5~7のフローチャートと同じ処理に対しては同じ符号を用い、その説明を省略する。
【0125】
S641-1~S641-Nにおいて、相関演算部543及びピーク検出部547は協働して(送信の遅延校正の場合)、又は、相関演算部643及びピーク検出部647は協働して(受信の遅延校正の場合)、系統#1~#Nの相関を実行する。
【0126】
S642において、送信特性比較部553は(送信の遅延校正の場合)、又は、受信特性比較部653(受信の遅延校正の場合)は、系統#1~#Nの相関ピークタイミングを比較し、遅延中央値を持つ系統を基準系統として特定する。
【0127】
S221、S321-1~S321-N、S421及びS422は、実施の形態5と同じである。
【0128】
<実施の形態8の効果>
実施の形態8によれば、以上の構成により、遅延中央値を持つ系統を基準系統として特定し、基準系統の遅延特性に他の系統の遅延特性を合わせることで、遅延補正量の範囲を抑圧することができるという効果を有する。実施の形態8では、実施の形態5とは異なり、基準系統の特定を基板の配線長に基づいて実施するのではなく、系統#1~#Nの相関を実行してこれらの相関ピークタイミングを比較することで基準系統の特定を自動的に実施可能である。実施の形態6~7とは異なり、相関演算を高速サンプリングレートにより行うことでE-L相関を不要とする。また、実施の形態1~7と同様に、送信の遅延校正と受信の遅延校正とを互いに独立に実施可能であり、特許文献2と比較してアンテナ素子間の遅延校正に要する時間を半分に短縮することができるという効果も有する。
【0129】
(補足)
以上、図面を参照しながら実施の形態について説明したが、本開示は、上記の実施の形態1~8で説明した内容に限定されず、本開示の目的とそれに関連又は付随する目的を達成するためのいかなる形態においても実施可能であり、例えば、以下であってもよい。
【0130】
(1)実施の形態1~8においてフルデジタルビームフォーミングの構成としたが、本開示はこれに限られず、ハイブリッドビームフォーミングの構成でもよい。この場合でも上記の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0131】
(2)実施の形態1~8において、遅延校正を1回限りで行ってもよいし、繰り返して行ってもよい。後者の場合、特に実施の形態2~3及び5~8では、フローチャートを繰り返すことになるが、遅延中央値を持つ基準系統の特定は最初の1回限りでもよい。特に実施の形態2~3及び6~7では、基板の配線長に基づき基準系統の特定を行うため、最初の1回限りが望ましい。
【0132】
(3)実施の形態1~3及び6~7において、E-L検出部が平均化により精度を高めてもよい。平均化として、単純平均の他に、例えばIIR(Infinite Impulse Response)を用いてもよい。
【0133】
(4)実施の形態4~5及び8において、ピーク検出部が平均化により精度を高めてもよい。平均化として、ピーク付近の前後何サンプルかの単純平均の他に、例えばIIRを用いて、ピーク検出を行ってもよい。
【0134】
(5)実施の形態1~2及び6において、
図4(b)に示すE-L相関値の変化の性質を利用して、送信特性比較部及び受信特性比較部が基準系統とそれ以外の系統との遅延差を算出することが考えられ、例えば前述の変化の性質をテーブルに保持して利用してもよい。
【0135】
(6)実施の形態1、3及び7において、
図4(b)に示すE-L相関値の変化の性質を利用して、送信特性比較部及び受信特性比較部が各系統のE-L相関値が0となる遅延量を算出することが考えられ、例えば前述の変化の性質をテーブルに保持して利用してもよい。
【0136】
(7)実施の形態1~8のいくつかを互いに組み合わせてもよい。
【0137】
(8)実施の形態1~8において、各構成要素に用いる「・・・部」という表記は、「・・・回路(circuitry)」、「・・・アッセンブリ」、「・・・デバイス」、「・・・ユニット」、又は、「・・・モジュール」といった他の表記に置換されてもよい。
【0138】
(9)本開示は、ハードウェアとソフトウェアを使った実装に関するものであってもよい。上記の実施の形態はコンピューティングデバイス(プロセッサ)を使って実装又は実行されてもよい。コンピューティングデバイスまたはプロセッサは、例えば、メインプロセッサ/汎用プロセッサ(general purpose processor)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、ASIC(application specific integrated circuit)、FPGA(field programmable gate array)、他のプロラマブル論理デバイスなどであってよい。上記の実施の形態は、これらのデバイスの結合によって実行され、あるいは、実現されてもよい。
【0139】
(10)実施の形態1~8は、プロセッサによって、または、直接ハードウェアによって実行される、ソフトウェアモジュールの仕組みによって実現されてもよい。また、ソフトウェアモジュールとハードウェア実装の組み合わせも可能である。ソフトウェアモジュールは、様々な種類のコンピュータ読み取り可能なストレージメディア、例えば、RAM、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリ、レジスタ、ハードディスク、CD-ROM、DVDなど、に保存されてもよい。
【0140】
(実施の形態のまとめ)
本開示の一実施例に係る送信装置は、複数のアンテナ素子と、デジタル校正用信号を生成する校正用信号生成部と、前記複数のアンテナ素子の各々に対応する第1デジタル信号に前記デジタル校正用信号を加算した第2デジタル信号に対してデジタル/アナログ変換を含む送信処理を実行して、第1アナログ信号を生成する送信処理実行部と、前記複数のアンテナ素子の各々を通過した前記第1アナログ信号に対してアナログ/デジタル変換を含む受信処理を実行することによって、前記複数のアンテナ素子の各々に対応する第3デジタル信号を生成する受信処理実行部と、前記デジタル校正用信号と前記第3デジタル信号との相関演算を行って、前記複数のアンテナ素子の各々の遅延に関する送信特性を算出し、前記遅延に関する送信特性に基づき、前記複数のアンテナ素子の各々の遅延に関する送信特性補正量を算出する送信特性算出部と、前記送信特性補正量に基づき、前記遅延に関する送信特性を補正する送信特性補正部と、を有する。
【0141】
本開示の一実施例に係る受信装置は、複数のアンテナ素子と、デジタル校正用信号を生成する校正用信号生成部と、前記デジタル校正用信号に対してデジタル/アナログ変換を含む送信処理を実行して、第1アナログ信号を生成する送信処理実行部と、前記複数のアンテナ素子の各々を介して受信された第2アナログ信号に前記第1アナログ信号を加算した第3アナログ信号に対してアナログ/デジタル変換を含む受信処理を実行することによって、前記複数のアンテナ素子の各々に対応する第1デジタル信号を生成する受信処理実行部と、前記デジタル校正用信号と前記第1デジタル信号との相関演算を行って、前記複数のアンテナ素子の各々の遅延に関する受信特性を算出し、前記遅延に関する受信特性に基づき、前記複数のアンテナ素子の各々の遅延に関する受信特性補正量を算出する受信特性算出部と、前記受信特性補正量に基づき、前記遅延に関する受信特性を補正する受信特性補正部と、を有する。
【0142】
本開示の一実施例に係る送信方法は、送信装置が、デジタル校正用信号を生成し、前記送信装置が有する複数のアンテナ素子の各々に対応する第1デジタル信号に前記デジタル校正用信号を加算した第2デジタル信号に対してデジタル/アナログ変換を含む送信処理を実行して、第1アナログ信号を生成し、前記複数のアンテナ素子の各々を通過した前記第1アナログ信号に対してアナログ/デジタル変換を含む受信処理を実行することによって、前記複数のアンテナ素子の各々に対応する第3デジタル信号を生成し、前記デジタル校正用信号と前記第3デジタル信号との相関演算を行って、前記複数のアンテナ素子の各々の遅延に関する送信特性を算出し、前記遅延に関する送信特性に基づき、前記複数のアンテナ素子の各々の遅延に関する送信特性補正量を算出し、前記送信特性補正量に基づき、前記遅延に関する送信特性を補正する。
【0143】
本開示の一実施例に係る受信方法は、受信装置が、デジタル校正用信号を生成し、前記デジタル校正用信号に対してデジタル/アナログ変換を含む送信処理を実行して、第1アナログ信号を生成し、前記受信装置が有する複数のアンテナ素子の各々を介して受信された第2アナログ信号に前記第1アナログ信号を加算した第3アナログ信号に対してアナログ/デジタル変換を含む受信処理を実行することによって、前記複数のアンテナ素子の各々に対応する第1デジタル信号を生成し、前記デジタル校正用信号と前記第1デジタル信号との相関演算を行って、前記複数のアンテナ素子の各々の遅延に関する受信特性を算出し、前記遅延に関する受信特性に基づき、前記複数のアンテナ素子の各々の遅延に関する受信特性補正量を算出し、前記受信特性補正量に基づき、前記遅延に関する受信特性を補正する。
【0144】
上記の構成により、送信校正用信号(又は受信校正用信号)が、受信信号(又は送信信号)用の第2受信処理実行部(又は第2送信処理実行部)とは異なる校正用信号専用の第1受信処理実行部(第1送信処理実行部)を通過後に、単一かつ送信のみ(又は受信のみ)の相関により、遅延校正を行うことができる。これにより、送信と受信との並列化が可能となり、遅延校正時間を短縮することができるので、高性能なビームフォーミングを実現することができる。
【0145】
本開示に係る送信装置及び受信装置は、HAPSにおいて実現されてもよいし、地上の基地局において実現されてもよいし、ユーザ端末において実現されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0146】
本開示は、HAPSに限らず、無線伝送におけるビームフォーミング技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0147】
100、500 通信装置
105、505 集積回路
110 送信信号生成部
115 送信用デジタルプリコーディング部
120 校正用信号生成部
125、325 DAC
130、330 UC
135、235、335、435 電力増幅部
140 デュプレクサ
145 アンテナ素子
175 送信特性補正部
180 送信特性算出用アナログ部
185 受信特性算出用アナログ部
190、590 送受信特性算出部
195 加算器
210 受信信号再生部
215 受信用デジタルプリコーディング部
225、425 ADC
230、430 DC
275 受信特性補正部
337 出力切替スイッチ
343、443、543、643 相関演算部
347、447 E-L検出部
353、553 送信特性比較部
437、441 入力選択スイッチ
453、653 受信特性比較部
547、647 ピーク検出部