(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091309
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】疎水化ポリイオンコンプレックス粒子を含む組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/81 20060101AFI20230623BHJP
A61K 8/65 20060101ALI20230623BHJP
A61K 8/64 20060101ALI20230623BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20230623BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20230623BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20230623BHJP
A61K 8/55 20060101ALI20230623BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/65
A61K8/64
A61K8/73
A61K8/92
A61K8/36
A61K8/55
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021205988
(22)【出願日】2021-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】河西 毅彦
(72)【発明者】
【氏名】白谷 俊史
(72)【発明者】
【氏名】淺沼 秀彦
(72)【発明者】
【氏名】奥田 真介
(72)【発明者】
【氏名】五十島 健史
(72)【発明者】
【氏名】山本 麻理子
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA121
4C083AA122
4C083AB051
4C083AC241
4C083AC242
4C083AC251
4C083AC252
4C083AC261
4C083AC262
4C083AC301
4C083AC302
4C083AC901
4C083AC902
4C083AD071
4C083AD072
4C083AD091
4C083AD131
4C083AD321
4C083AD322
4C083AD331
4C083AD332
4C083AD431
4C083BB11
4C083BB24
4C083CC02
4C083DD31
4C083EE01
4C083EE12
(57)【要約】
【課題】ポリイオンコンプレックス粒子を含む組成物であって、相対的に多量の油を含むときでさえも安定性である組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、(a)少なくとも1種のカチオン性ポリマー、少なくとも1種のアニオン性ポリマー、及び少なくとも1種の2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩を含む、少なくとも1種の粒子と、(b)少なくとも1種の油と、(c)少なくとも1種の脂肪酸と、(d)水と、を含む組成物に関する。本発明による組成物は、相当量の油、例えば組成物の総質量に対して最大30質量%の油を含む場合でも安定性である。
【選択図】
図1C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1種のカチオン性ポリマー、
少なくとも1種のアニオン性ポリマー、及び
少なくとも1種の2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩
を含む、少なくとも1種の粒子と、
(b)少なくとも1種の油と、
(c)少なくとも1種の脂肪酸と、
(d)水と、
を含む、組成物。
【請求項2】
(a)粒子が(c)脂肪酸によって疎水化されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記カチオン性ポリマーが、アルキルジアリルアミンのシクロポリマー及びジアルキルジアリルアンモニウムのシクロポリマー、例えば(コ)ポリジアリルジアルキルアンモニウムクロリド、(コ)ポリアミン、例えば(コ)ポリリジン、カチオン性(コ)ポリアミノ酸、例えばコラーゲン、カチオン性セルロースポリマー、キトサン、並びにそれらの塩からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物中の(a)粒子を形成するカチオン性ポリマーの量が、前記組成物の総質量に対して、0.001質量%~15質量%、好ましくは0.005質量%~10質量%、より好ましくは0.01質量%~5質量%である、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記アニオン性ポリマーが、多糖、例えばアルギン酸、ヒアルロン酸、及びセルロースポリマー、アニオン性(コ)ポリアミノ酸、例えば(コ)ポリグルタミン酸、(コ)ポリ(メタ)アクリル酸、(コ)ポリアミン酸、(コ)ポリスチレンスルホネート、(コ)ポリ(ビニルスルフェート)、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸、(コ)ポリマレイン酸、ポリフマル酸、マレイン酸(コ)ポリマー、並びにそれらの塩からなる群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物中の(a)粒子を形成するアニオン性ポリマーの量が、前記組成物の総質量に対して、0.001質量%~15質量%、好ましくは0.005質量%~10質量%、より好ましくは0.01質量%~5質量%である、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩が、有機酸又はその塩、好ましくは親水性若しくは水溶性の有機酸又はその塩、より好ましくはフィチン酸又はその塩である、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物中の2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩の量が、前記組成物の総質量に対して、0.001質量%から10質量%、好ましくは0.003質量%から5質量%、より好ましくは0.005質量%から1質量%である、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物中の前記(a)粒子の量が、前記組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%である、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物中の前記(b)油の量が、前記組成物の総質量に対して、1質量%~45質量%、好ましくは5質量%~40質量%、より好ましくは10質量%~35質量%である、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物中の前記(c)脂肪酸の量が、前記組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%である、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物中の前記(d)水の量が、前記組成物の総質量に対して、50質量%~95質量%、好ましくは55質量%~90質量%、より好ましくは60質量%~85質量%である、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記(b)油及び前記(c)脂肪酸を含む脂肪相と前記(d)水を含む水性相とを含み、前記脂肪相が、前記水性相中に分散されている、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
皮膚等のケラチン物質のための美容方法であって、
請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物をケラチン物質に塗布する工程と、
前記組成物を乾燥させて前記ケラチン物質上に化粧皮膜を形成する工程と
を含む、方法。
【請求項15】
(a)少なくとも1種のカチオン性ポリマー、
少なくとも1種のアニオン性ポリマー、及び
少なくとも1種の2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩
を含む、少なくとも1種の粒子と、
(b)少なくとも1種の油と、
(d)水と
を含む組成物中における、(c)少なくとも1種の脂肪酸の使用であって、
前記組成物中の(b)油の量を、前記組成物の総質量に対して、1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上に増加させるための、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疎水化ポリイオンコンプレックス粒子を含む組成物と、組成物を使用する美容方法と、に関する。
【背景技術】
【0002】
アニオン性ポリマー及びカチオン性ポリマーで形成されているポリイオンコンプレックスは、既に公知である。
【0003】
例えば、WO2021/125069は、美容処置に有用であり、少なくとも1種のカチオン性ポリマー、少なくとも1種のアニオン性ポリマー、及び少なくとも1種の2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸を含む、少なくとも1種のポリイオンコンプレックス粒子を含む、組成物を開示している。WO2021/125069はまた、明細書中で開示される組成物が、油を含んでもよく、且つエマルションの形態であってもよいことも開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2021/125069
【特許文献2】欧州特許出願第0080976号
【特許文献3】仏国特許第2077143号
【特許文献4】仏国特許第2393573号
【特許文献5】仏国特許第1492597号
【特許文献6】米国特許第4,131,576号
【特許文献7】米国特許第3,589,578号
【特許文献8】米国特許第4,031,307号
【特許文献9】仏国特許第2,162,025号
【特許文献10】仏国特許第2,280,361号
【特許文献11】仏国特許第2,252,840号
【特許文献12】仏国特許第2,368,508号
【特許文献13】仏国特許第1,583,363号
【特許文献14】米国特許第3,227,615号
【特許文献15】米国特許第2,961,347号
【特許文献16】仏国特許第2,080,759号
【特許文献17】仏国特許第2,190,406号
【特許文献18】仏国特許第2 320 330号
【特許文献19】仏国特許第2 270 846号
【特許文献20】仏国特許第2 316 271号
【特許文献21】仏国特許第2 336 434号
【特許文献22】仏国特許第2 413 907号
【特許文献23】米国特許第2,273,780号
【特許文献24】米国特許第2,375,853号
【特許文献25】米国特許第2,388,614号
【特許文献26】米国特許第2,454,547号
【特許文献27】米国特許第3,206,462号
【特許文献28】米国特許第2,261,002号
【特許文献29】米国特許第2,271,378号
【特許文献30】米国特許第3,874,870号
【特許文献31】米国特許第4,001,432号
【特許文献32】米国特許第3,929,990号
【特許文献33】米国特許第3,966,904号
【特許文献34】米国特許第4,005,193号
【特許文献35】米国特許第4,025,617号
【特許文献36】米国特許第4,025,627号
【特許文献37】米国特許第4,025,653号
【特許文献38】米国特許第4,026,945号
【特許文献39】米国特許第4,027,020号
【特許文献40】欧州特許出願第0122324号
【特許文献41】EP-A-0750899
【特許文献42】EP-A-1069172
【特許文献43】EP-A-0173109
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Micelle formation of random copolymers of sodium 2-(acrylamido)-2-methylpropanesulfonate and nonionic surfactant macromonomer in water as studied by fluorescence and dynamic light scattering - Macromolecules、2000年、第33巻、第10号-3694~3704頁
【非特許文献2】「Hyaluronan fragments: an information-rich system」, R. Stern等、European Journal of Cell Biology 58 (2006) 699~715頁
【非特許文献3】D. Campoccia等、「Semisynthetic resorbable materials from hyaluronan esterification」、Biomaterials、19 (1998) 2101~2127頁
【非特許文献4】Walter Noll著、Chemistry and Technology of Silicones(1968)、Academic Press
【非特許文献5】Cosmetics and Toiletries、第91巻、76年1月、27~32頁、Todd & Byers、Volatile Silicone Fluids for Cosmetics
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、WO2021/125069中で開示される組成物は、非常に限定された量の油、例えば組成物の総質量に対して0.5質量%の油を含むときのみ、安定性であることが分かった。開示される組成物が、相対的に多量の油を含むとき、不安定になる傾向がある。
【0007】
したがって、本発明の目的は、ポリイオンコンプレックス粒子を含む組成物であって、相対的に多量の油を含むときでさえも安定性である組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記の目的は、
(a)少なくとも1種のカチオン性ポリマー、
少なくとも1種のアニオン性ポリマー、及び
少なくとも1種の2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩
を含む、少なくとも1種の粒子と、
(b)少なくとも1種の油と、
(c)少なくとも1種の脂肪酸と、
(d)水と、
を含む、組成物によって達成することができる。
【0009】
(a)粒子は、(c)脂肪酸によって疎水化されていてもよい。
【0010】
カチオン性ポリマーは、アルキルジアリルアミンのシクロポリマー及びジアルキルジアリルアンモニウムのシクロポリマー、例えば(コ)ポリジアリルジアルキルアンモニウムクロリド、(コ)ポリアミン、例えば(コ)ポリリジン、カチオン性(コ)ポリアミノ酸、例えばコラーゲン、カチオン性セルロースポリマー、キトサン、並びにそれらの塩からなる群から選択することができる。
【0011】
本発明による組成物中の(a)粒子を形成するカチオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%~15質量%、好ましくは0.005質量%~10質量%、より好ましくは0.01質量%~5質量%でありうる。
【0012】
アニオン性ポリマーは、多糖、例えばアルギン酸、ヒアルロン酸、及びセルロースポリマー、アニオン性(コ)ポリアミノ酸、例えば(コ)ポリグルタミン酸、(コ)ポリ(メタ)アクリル酸、(コ)ポリアミン酸、(コ)ポリスチレンスルホネート、(コ)ポリ(ビニルスルフェート)、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸、(コ)ポリマレイン酸、ポリフマル酸、マレイン酸(コ)ポリマー、並びにこれらの塩からなる群から選択することができる。
【0013】
本発明による組成物中の(a)粒子を形成するアニオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%~15質量%、好ましくは0.005質量%~10質量%、より好ましくは0.01質量%~5質量%でありうる。
【0014】
2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩は、有機酸又はその塩、好ましくは親水性若しくは水溶性の有機酸又はその塩、より好ましくはフィチン酸又はその塩であってよい。
【0015】
本発明による組成物中の2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩の量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%~10質量%、好ましくは0.003質量%~5質量%、より好ましくは0.005質量%~1質量%でありうる。
【0016】
本発明による組成物中の(a)粒子の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%であってもよい。
【0017】
本発明による組成物中の(b)油の量は、組成物の総質量に対して、1質量%~45質量%、好ましくは5質量%~40質量%、より好ましくは10質量%~35質量%であってもよい。
【0018】
本発明による組成物中の(c)脂肪酸の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%であってもよい。
【0019】
本発明による組成物中の(d)水の量は、組成物の総質量に対して、50質量%~95質量%、好ましくは55質量%~90質量%、より好ましくは60質量%~85質量%であってもよい。
【0020】
本発明による組成物は、(b)油及び(c)脂肪酸を含む脂肪相と、(d)水を含む水性相と、を含んでもよく、ここで、脂肪相は、水性相中に分散されている。
【0021】
本発明はまた、皮膚等のケラチン物質のための美容方法であって、
本発明による組成物をケラチン物質に塗布する工程と、
組成物を乾燥させてケラチン物質上に化粧皮膜を形成する工程と
を含む方法にも関する。
【0022】
本発明はまた、
(a)少なくとも1種のカチオン性ポリマー、
少なくとも1種のアニオン性ポリマー、及び
少なくとも1種の2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩
を含む、少なくとも1種の粒子と、
(b)少なくとも1種の油と、
(d)水と、
を含む組成物中における、(c)少なくとも1種の脂肪酸の使用であって、組成物中の(b)油の量を、組成物の総質量に対して、1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上に増加させるための使用にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1は、本発明の一実施形態における、水性相中に分散されている油滴等の脂肪相の周囲の(a)粒子の挙動、及び(a)粒子の疎水化の例を示す概略図を示す図である。
【
図1A】(c)脂肪酸を含まない脂肪相の場合における、水性相中に分散されている油滴等の脂肪相の周囲の(a)粒子の挙動を示す概略図を示す図である。
【
図1B】(c)脂肪酸を含む脂肪相の場合における、水性相中に分散されている油滴等の脂肪相の周囲の(a)粒子の挙動を示す概略図を示す図である。
【
図1C】(c)脂肪酸による(a)粒子の疎水化のメカニズムの例を示す概略図を示す図である。
【
図2】実施例1及び比較例1による組成物の顕微鏡写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
鋭意検討の結果、本発明者等は、ポリイオンコンプレックス粒子を含み、相当量の油を含んでいる場合でも安定な組成物を提供することが可能であることを発見した。そのため、本発明による組成物は、
(a)少なくとも1種のカチオン性ポリマー、
少なくとも1種のアニオン性ポリマー、及び
少なくとも1種の2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩
を含む、少なくとも1種の粒子と、
(b)少なくとも1種の油と、
(c)少なくとも1種の脂肪酸と、
(d)水と、を含む。
【0025】
本発明による組成物は、(d)水を含む水性相を含んでいてもよい。
【0026】
本発明による組成物は、(b)油及び(c)脂肪酸を含む脂肪相を含んでいてもよい。
【0027】
脂肪相は、水性相中に分散されていてもよい。
【0028】
(a)粒子は、脂肪相と水性相との間の界面に存在しうる。
【0029】
(a)粒子は、ポリイオンコンプレックス粒子である。(a)ポリイオンコンプレックス粒子を(c)脂肪酸によって疎水化して、組成物を安定化することができる。
【0030】
本発明による組成物は、相当量の油、例えば組成物の総質量に対して最大30質量%の油を含む場合でも安定性である。そのため、本発明による組成物は、相当量の油、例えば組成物の総質量に対して最大30質量%の油を含みうる。
【0031】
本発明による組成物は、長期間にわたって安定性である。換言すれば、本発明による組成物の相分離は、長期間にわたって防止することができる。
【0032】
したがって、本発明による組成物は、長期間にわたり、保存することができる。
【0033】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0034】
[ポリイオンコンプレックス粒子]
本発明による組成物は、ポリイオンコンプレックス粒子である(a)少なくとも1種の粒子を含む。2つ以上の異なるタイプの(a)粒子を組み合わせて使用してもよい。したがって、単一のタイプの(a)粒子、又は異なるタイプの(a)粒子の組合せを使用することができる。
【0035】
ポリイオンコンプレックス粒子の粒径は、5nm~100μm、好ましくは100nm~50μm、より好ましくは200nm~40μm、より一層好ましくは500nm~30μmでありうる。1μm未満の粒径は、動的光散乱法によって測定することができ、1μm超の粒径は、光学顕微鏡によって測定することができる。この粒径は、体積平均直径に基づきうる。
【0036】
本発明による組成物中の(a)粒子の量は、組成物の総質量に対して0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であってよい。
【0037】
本発明による組成物中の(a)粒子の量は、組成物の総質量に対して、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であってもよい。
【0038】
本発明による組成物中の(a)粒子の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%であってもよい。
【0039】
(a)粒子は、ポリマーの組合せを含む。具体的には、(a)粒子は、少なくとも1種のカチオン性ポリマー及び少なくとも1種のアニオン性ポリマーを含む。カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーは、ポリイオンコンプレックス粒子(複数可)を形成することができる。
【0040】
(カチオン性ポリマー)
本発明による組成物は、少なくとも1種のカチオン性ポリマーを含む。単一のタイプのカチオン性ポリマーを使用してもよいが、2種以上の異なるタイプのカチオン性ポリマーを組み合わせて使用することもできる。
【0041】
カチオン性ポリマーは、正電荷密度を有する。カチオン性ポリマーの電荷密度は、0.01meq/g~20meq/g、好ましくは0.05meq/g~15meq/g、より好ましくは0.1meq/g~10meq/gでありうる。
【0042】
カチオン性ポリマーの分子量が、1000以上、好ましくは2000以上、より好ましくは3000以上、より一層好ましくは4000以上であることが好ましい場合がある。
【0043】
本明細書に別段の定義がない限り、「分子量」は数平均分子量を意味する。
【0044】
カチオン性ポリマーは、第一級、第二級又は第三級アミノ基、第四級アンモニウム基、グアニジン基、ビグアニド基、イミダゾール基、イミノ基及びピリジル基からなる群から選択される、少なくとも1つの正電荷を有することができる及び/又は正電荷を有する部分を有してもよい。用語(第一級)「アミノ基」は、本明細書では、-NH2基を意味する。
【0045】
カチオン性ポリマーは、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。「コポリマー」という用語は、2種類のモノマーから得られるコポリマーと、3種類以上のモノマーから得られるコポリマー、例えば3種類のモノマーから結果として得られるターポリマーの両方を意味すると理解される。
【0046】
カチオン性ポリマーは、天然の及び合成のカチオン性ポリマー、好ましくは天然のカチオン性ポリマーから選択することができる。カチオン性ポリマーの非限定的な例は、以下の通りである。
【0047】
(1)アクリル酸又はメタクリル酸のエステル及びアミドに由来し、以下の式の単位から選ばれる少なくとも1つの単位を含むホモポリマー及びコポリマー:
【0048】
【0049】
(式中:
R1及びR2は、同一であっても異なっていてもよく、水素、及び1~6個の炭素原子を含むアルキル基、例えばメチル基及びエチル基から選ばれ、
R3は、同一であっても異なっていてもよく、水素及びCH3から選ばれ、
記号Aは、同一であっても異なっていてもよく、1~6個の炭素原子、例えば2~3個の炭素原子を含む直鎖状又は分枝状のアルキル基、及び1~4個の炭素原子を含むヒドロキシアルキル基から選ばれ、
R4、R5及びR6は、同一であっても異なっていてもよく、1~18個の炭素原子を含むアルキル基、及びベンジル基から選ばれ、少なくとも1つの実施形態では、1~6個の炭素原子を含むアルキル基であり、
Xは、無機又は有機酸に由来するアニオン、例えば、メト硫酸アニオン、並びに塩化物イオン及び臭化物イオン等のハロゲン化物イオンである)。
【0050】
ファミリー(1)のコポリマーはまた、コモノマーに由来する少なくとも1つの単位も含んでよく、これは、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、窒素原子が(C1~C4)低級アルキル基で置換されているアクリルアミド及びメタクリルアミド、アクリル酸又はメタクリル酸及びそのエステルに由来する基、ビニルラクタム、例えばビニルピロリドン及びビニルカプロラクタム、並びにビニルエステルから選ぶことができる。
【0051】
ファミリー(1)のコポリマーの例には、以下が含まれるがこれらに限定されない:
アクリルアミドと、硫酸ジメチル又はハロゲン化ジメチルで四級化されたメタクリル酸ジメチルアミノエチルとのコポリマー、
アクリルアミドとメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリドとのコポリマー、例えば欧州特許出願第0080976号に記載されているもの、
アクリルアミドとメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムメトスルフェートとのコポリマー、
四級化又は非四級化ビニルピロリドン/アクリル酸又はメタクリル酸ジアルキルアミノアルキルコポリマー、例えば仏国特許第2077143号及び同第2393573号に記載されているもの、
メタクリル酸ジメチルアミノエチル/ビニルカプロラクタム/ビニルピロリドンターポリマー、
ビニルピロリドン/メタクリルアミドプロピルジメチルアミンコポリマー、四級化ビニルピロリドン/ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドコポリマー、並びに
架橋メタクリロイルオキシ(C1~C4)アルキルトリ(C1~C4)アルキルアンモニウム塩ポリマー、例えば塩化メチルで四級化されたメタクリル酸ジメチルアミノエチルの単独重合によって、又はアクリルアミドと、塩化メチルで四級化されたメタクリル酸ジメチルアミノエチルとの共重合によって、その単独重合又は共重合に続いて、オレフィン性不飽和を含有する化合物、例えばメチレンビスアクリルアミドで架橋することによって得られるポリマー。
【0052】
(2)カチオン性セルロースポリマー、例えば仏国特許第1492597号に記載されている、1つ又は複数の第四級アンモニウム基を含むセルロースエーテル誘導体等、例えばUnion Carbide Corporation社によって名称「JR」(JR 400、JR 125、JR 30M)又は「LR」(LR 400、LR 30M)で販売されているポリマー。これらのポリマーはまた、CTFA辞典において、トリメチルアンモニウム基で置換されているエポキシドと反応したヒドロキシエチルセルロースの第四級アンモニウムとして定義されている。
【0053】
カチオン性セルロースポリマーは、少なくとも1つの第四級アンモニウム基、好ましくは第四級トリアルキルアンモニウム基、より好ましくは第四級トリメチルアンモニウム基を有することが好ましい。
【0054】
第四級アンモニウム基は、以下の化学式(I)で表されうる第四級アンモニウム基含有基中に存在しうる:
【0055】
【0056】
(式中、
R1及びR2のそれぞれは、C1~3アルキル基、好ましくはメチル基又はエチル基、より好ましくはメチル基を示し、
R3は、C1~24アルキル基、好ましくはメチル基又はエチル基、より好ましくはメチル基を示し、
X-は、アニオン、好ましくはハロゲン化物イオン、より好ましくは塩化物イオンを示し、
nは、0~30、好ましくは0~10、より好ましくは0の整数を示し、
R4は、C1~4アルキレン基、好ましくはエチレン基又はプロピレン基を示す)。
【0057】
上記の化学式(I)中の最左のエーテル結合(-O-)は、多糖の糖環に結合することができる。
【0058】
第四級アンモニウム基含有基は、-O-CH2-CH(OH)-CH2-N+(CH3)3であることが好ましい。
【0059】
(3)カチオン性セルロースポリマー、例えば第四級アンモニウムの水溶性モノマーでグラフト化したセルロースコポリマー及びセルロース誘導体、並びに、例えば米国特許第4,131,576号に記載のもの、例えばメタクリロイルエチルトリメチルアンモニウム塩、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、及びジメチルジアリルアンモニウム塩から選択される塩でグラフト化した、ヒドロキシアルキルセルロース、例えばヒドロキシメチル-、ヒドロキシエチル-及びヒドロキシプロピルセルロース。
【0060】
これらのポリマーに相当する市販製品には、例えば、National Starch社により名称「Celquat(登録商標)L 200」及び「Celquat(登録商標)H 100」で販売されている製品が挙げられる。
【0061】
(4)非セルロース系カチオン性多糖、米国特許第3,589,578号及び第4,031,307号に記載されているもの、例えばカチオン性トリアルキルアンモニウム基を含むグアーガム、カチオン性ヒアルロン酸及びデキストランヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド。塩で修飾されたグアーガム、例えば2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウムの塩で、例えば塩化物で修飾されたグアーガム(グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド)もまた、使用することができる。
【0062】
このような製品は、例えば、MEYHALL社により商品名JAGUAR(登録商標)C13 S、JAGUAR(登録商標)C15、JAGUAR(登録商標)C17及びJAGUAR(登録商標)C162で販売されている。
【0063】
(5)ピペラジニル単位と、酸素、硫黄、窒素、芳香環及び複素環式環から選ばれる少なくとも1つの要素により任意選択で割り込まれた直鎖又は分枝鎖を含む二価のアルキレン基又はヒドロキシアルキレン基とを含むポリマー、更にはこれらのポリマーの酸化及び/又は四級化生成物。このようなポリマーは、例えば仏国特許第2,162,025号及び同第2,280,361号に記載されている。
【0064】
(6)例えば酸性化合物をポリアミンと重縮合させることによって調製される水溶性ポリアミノアミドであり、これらのポリアミノアミドは、エピハロヒドリン;ジエポキシド;二無水物;不飽和二無水物;ビス不飽和誘導体;ビスハロヒドリン;ビスアゼチジニウム;ビスハロアシルジアミン;ビスアルキルハライド;ビスハロヒドリン、ビスアゼチジニウム、ビスハロアシルジアミン、ビスアルキルハライド、エピハロヒドリン、ジエポキシド及びビス不飽和誘導体から選ばれる要素と反応性である二官能性化合物の反応から得られるオリゴマーから選ばれる要素で架橋されている場合があり;その架橋剤は、ポリアミノアミドのアミン基1つ当たり0.025~0.35molの範囲の量で使用され;これらのポリアミノアミドは、任意選択でアルキル化されているか、又はこれらが少なくとも1つの第三級アミン官能基を含む場合、それらは、四級化されていてもよい。このようなポリマーは、例えば仏国特許第2,252,840号及び同第2,368,508号に記載されている。
【0065】
(7)ポリアルキレンポリアミンをポリカルボン酸と縮合させ、続いて二官能性作用剤でアルキル化することから得られるポリアミノアミド誘導体、例えば、メチル、エチル及びプロピルの各基のようにアルキル基が1~4個の炭素原子を含み、エチレン基のようにアルキレン基が1~4個の炭素原子を含む、アジピン酸/ジアルキルアミノヒドロキシアルキルジアルキレントリアミンポリマー。このようなポリマーは、例えば仏国特許第1,583,363号に記載されている。少なくとも1つの実施形態では、これらの誘導体は、アジピン酸/ジメチルアミノヒドロキシプロピルジエチレントリアミンポリマーから選択することができる。
【0066】
(8)2つの第一級アミン基及び少なくとも1つの第二級アミン基を含むポリアルキレンポリアミンを、ジグリコール酸、及び3~8個の炭素原子を含む飽和脂肪族ジカルボン酸から選ばれるジカルボン酸と反応させることによって得られるポリマー。ポリアルキレンポリアミンの、ジカルボン酸に対するモル比は、0.8:1~1.4:1の範囲であることができ、それから得られるポリアミノアミドを、エピクロロヒドリンと、エピクロロヒドリンの、ポリアミノアミドの第二級アミン基に対するモル比0.5:1~1.8:1の範囲で反応させる。このようなポリマーは、例えば、米国特許第3,227,615号及び同第2,961,347号に記載されている。
【0067】
(9)アルキルジアリルアミンのシクロポリマー、及びジアルキルジアリル-アンモニウムのシクロポリマー、例えば、鎖の主要構成要素として、以下の式(Ia)及び(Ib)の単位から選ばれる少なくとも1つの単位を含むホモポリマー及びコポリマー:
【0068】
【0069】
(式中:
k及びtは、同一であっても異なっていてもよく、0又は1に等しく、和k+tは、1に等しく、
R12は、水素及びメチル基から選ばれ、
R10及びR11は、同一であっても異なっていてもよく、1~6個の炭素原子を含むアルキル基、アルキル基が例えば1~5個の炭素原子を含むヒドロキシアルキル基、及び低級(C1~C4)アミドアルキル基から選ばれ、又はR10及びR11は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、複素環式基、例えばピペリジニル及びモルホリニルを形成してもよく、
Y'は、アニオン、例えば臭化物イオン、塩化物イオン、酢酸イオン、ホウ酸イオン、クエン酸イオン、酒石酸イオン、硫酸水素イオン、亜硫酸水素イオン、硫酸イオン及びリン酸イオンである)。これらのポリマーは、例えば仏国特許第2,080,759号及びその追加特許第2,190,406号に記載されている。
【0070】
一実施形態では、R10及びR11は、同一であっても異なっていてもよく、1~4個の炭素原子を含むアルキル基から選ばれる。
【0071】
このようなポリマーの例には、(コ)ポリジアリルジアルキルアンモニウムクロリド、例えばCALGON社により名称「MERQUAT(登録商標)100」で販売されているジメチルジアリルアンモニウムクロリドホモポリマー(及び低質量の平均分子量のその同族体)、並びに名称「MERQUAT(登録商標)550」で販売されているジアリルジメチルアンモニウムクロリドとアクリルアミドとのコポリマーが挙げられるがこれらに限定されない。
【0072】
式(II)の少なくとも1つの繰り返し単位を含む第四級ジアンモニウムポリマー:
【0073】
【0074】
{式中:
R13、R14、R15及びR16は、同一であっても異なっていてもよく、1~20個の炭素原子を含む脂肪族、脂環式及びアリール脂肪族の各基、並びに低級ヒドロキシアルキル脂肪族基から選ばれ、或いは、R13、R14、R15及びR16は、それらが結合している窒素原子と一緒になって又は別々に、窒素以外の第2のヘテロ原子を任意選択で含む複素環を形成してもよく、或いは、R13、R14、R15及びR16は、同一であっても異なっていてもよく、ニトリル基、エステル基、アシル基、アミド基、-CO-O-R17-E基及び-CO-NH-R17-E基[式中、R17は、アルキレン基であり、Eは、第四級アンモニウム基である]から選ばれる少なくとも1つの基で置換されている直鎖状又は分枝状C1~C6アルキル基から選ばれ、
A1及びB1は、同一であっても異なっていてもよく、2~20個の炭素原子を含むポリメチレン基から選ばれ、これは、直鎖状又は分枝状、飽和又は不飽和であってよく、これは、芳香環、酸素、硫黄、スルホキシド基、スルホン基、ジスルフィド基、アミノ基、アルキルアミノ基、ヒドロキシル基、第四級アンモニウム基、ウレイド基、アミド基及びエステル基から選ばれる少なくとも1つの要素を、主鎖中に、連結されて又は挿入されて含んでよく、
X-は、無機又は有機酸に由来するアニオンであり、
A1、R13及びR15は、それらが結合している2個の窒素原子と一緒になってピペラジン環を形成してよく、
A1が、直鎖状又は分枝状の、飽和又は不飽和のアルキレン基又はヒドロキシアルキレン基から選ばれる場合、B1は、以下:
-(CH2)n-CO-E'-OC-(CH2)n-
[式中、E'は、以下:
a)式-O-Z-O-(式中、Zは、直鎖状又は分枝状の炭化水素系基、及び以下の式:
-(CH2-CH2-O)x-CH2-CH2-
-[CH2-CH(CH3)-O]y-CH2-CH(CH3)-
(式中、x及びyは、同一であっても異なっていてもよく、定義された独自の重合度を表す1~4の範囲の整数、及び平均重合度を表す1~4の範囲の数から選ばれる)の基から選ばれる)のグリコール残基、
b)ビス-第二級ジアミン残基、例えばピペラジン誘導体、
c)式-NH-Y-NH-(式中、Yは、直鎖状又は分枝状の炭化水素系基及び二価基-CH2-CH2-S-S-CH2-CH2-から選ばれる)のビス-第一級ジアミン残基、並びに
d)式-NH-CO-NH-のウレイレン基
から選ばれる]から選ぶことができる}。
【0075】
少なくとも1つの実施形態では、X-は、アニオン、例えば塩化物イオン又は臭化物イオンである。
【0076】
このタイプのポリマーは、例えば、仏国特許第2 320 330号、同第2 270 846号、同第2 316 271号、同第2 336 434号、及び同第2 413 907号、並びに米国特許第2,273,780号、同第2,375,853号、同第2,388,614号、同第2,454,547号、同第3,206,462号、同第2,261,002号、同第2,271,378号、同第3,874,870号、同第4,001,432号、同第3,929,990号、同第3,966,904号、同第4,005,193号、同第4,025,617号、同第4,025,627号、同第4,025,653号、同第4,026,945号、及び同第4,027,020号に記載されている。
【0077】
このようなポリマーの非限定的な例には、式(III)の、少なくとも1つの繰り返し単位を含むものが挙げられる:
【0078】
【0079】
(式中、
R13、R14、R15及びR16は、同一であっても異なっていてもよく、1~4個の炭素原子を含むアルキル基及びヒドロキシアルキル基から選ばれ、n及びpは、同一であっても異なっていてもよく、2~20の範囲の整数であり、X-は、無機又は有機酸に由来するアニオンである)。
【0080】
(11)式(IV)の単位を含むポリ四級アンモニウムポリマー:
【0081】
【0082】
(式中:
R18、R19、R20及びR21は、同一であっても異なっていてもよく、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、β-ヒドロキシエチル基、β-ヒドロキシプロピル基、-CH2CH2(OCH2CH2)pOH基(式中、pは、0~6の範囲の整数から選ばれる)から選ばれ、但し、R18、R19、R20及びR21が同時に水素であることはなく、
r及びsは、同一であっても異なっていてもよく、1から6の範囲の整数から選択され、
qは、0から34の範囲の整数から選ばれ、
X-は、アニオン、例えばハロゲン化物イオンであり、
Aは、ジハライド基及び-CH2-CH2-O-CH2-CH2-基から選ばれる)。
【0083】
このような化合物は、例えば欧州特許出願第0122324号に記載されている。
【0084】
(12)ビニルピロリドンとビニルイミダゾールとの第四級ポリマー。
好適なカチオン性ポリマーの他の例には、カチオン性タンパク質及びカチオン性タンパク質加水分解物、ポリアルキレンイミン、例えばポリエチレンイミン、ビニルピリジン単位及びビニルピリジニウム単位から選ばれる単位を含むポリマー、ポリアミンとエピクロロヒドリンとの縮合物、第四級ポリウレイレン、並びにキチン誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1種のカチオン性ポリマーは、第四級アンモニウム基を含むセルロースエーテル誘導体、例えばUNION CARBIDE CORPORATION社により名称「JR 400」で販売されている製品、カチオン性シクロポリマー、例えばCALGON社により名称MERQUAT(登録商標)100、MERQUAT(登録商標)550及びMERQUAT(登録商標)Sで販売されているジメチルジアリルアンモニウムクロリドのホモポリマー及びコポリマー、2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウム塩で修飾されたグアーガム、並びにビニルピロリドンとビニルイミダゾールとの第四級ポリマーから選ばれる。
【0086】
(13)ポリアミン
カチオン性ポリマーとして、複数のアミノ基を有する、ホモポリマー又はコポリマーでありうる(コ)ポリアミンを使用することもまた可能である。アミノ基は、第一級、第二級、第三級又は第四級アミノ基でありうる。アミノ基は、(コ)ポリアミンのポリマー主鎖中に、又は存在する場合はペンダント基中に存在してよい。
【0087】
(コ)ポリアミンの例として、キトサン、(コ)ポリアリルアミン、(コ)ポリビニルアミン、(コ)ポリアニリン、(コ)ポリビニルイミダゾール、(コ)ポリジメチルアミノエチレンメタクリレート、(コ)ポリビニルピリジン、例えば(コ)ポリ-1-メチル-2-ビニルピリジン、(コ)ポリイミン、例えば(コ)ポリエチレンイミン、(コ)ポリピリジン、例えば(コ)ポリ(第四級ピリジン)、(コ)ポリビグアニド、例えば(コ)ポリアミノプロピルビグアニド、(コ)ポリリジン、(コ)ポリオルニチン、(コ)ポリアルギニン、(コ)ポリヒスチジン、アミノデキストラン、アミノセルロース、アミノ(コ)ポリビニルアセタール、及びそれらの塩を挙げることができる。
【0088】
(コ)ポリアミンとしては、(コ)ポリリジンを使用することが好ましい。ポリリジンは周知である。ポリリジンは、細菌発酵によって生成されうるL-リジンの天然ホモポリマーであることができる。例えば、ポリリジンは、食品中の天然保存料として典型的に使用されるε-ポリ-L-リジンであることができる。ポリリジンは、水、プロピレングリコール及びグリセロール等の極性溶媒に可溶である高分子電解質である。ポリリジンは、ポリD-リジン及びポリL-リジン等の様々な形態で市販されている。ポリリジンは、塩及び/又は溶液の形態であることができる。
【0089】
(14)カチオン性ポリアミノ酸
カチオン性ポリマーとして、複数のアミノ基及びカルボキシル基を有する、カチオン性ホモポリマー又はコポリマーでありうるカチオン性ポリアミノ酸を使用することが可能でありうる。アミノ基は、第一級、第二級、第三級又は第四級アミノ基でありうる。アミノ基は、カチオン性ポリアミノ酸のポリマー主鎖中に、又は存在する場合はペンダント基中に存在してよい。カルボキシル基は、存在する場合はカチオン性ポリアミノ酸のペンダント基中に存在してよい。
【0090】
カチオン性ポリアミノ酸の例として、カチオン化コラーゲン、カチオン化ゼラチン、ステアルジモニウムヒドロキシプロピル加水分解コムギタンパク、ココジモニウムヒドロキシプロピル加水分解コムギタンパク、ヒドロキシプロピルトリモニウム加水分解コンキオリンタンパク、ステアルジモニウムヒドロキシプロピル加水分解ダイズタンパク、ヒドロキシプロピルトリモニウム加水分解ダイズタンパク、ココジモニウムヒドロキシプロピル加水分解ダイズタンパク等を挙げることができる。
【0091】
以下の説明は、カチオン性ポリマーの好ましい実施形態に関する。
【0092】
カチオン性ポリマーがカチオン性デンプンから選択されることが、好ましい場合がある。
【0093】
カチオン性デンプンの例としては、2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウム塩(例えば、塩化物)で修飾されたデンプン、例えばOndeo社から名称SENSOMER Cl-50又はIngredion社から名称Pencare(商標)DP 1015で販売されている、INCI名によるとデンプンヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドとして知られる製品を挙げることができる。
【0094】
カチオン性ポリマーがカチオン性ガムから選択されることもまた、好ましい場合がある。
【0095】
ガムは、例えば、カッシアガム、カラヤガム、コンニャクガム、トラガカントゴム、タラガム、アカシアゴム及びアラビアゴムからなる群から選択されうる。
【0096】
カチオン性ガムの例としては、カチオン性ポリガラクトマンナン誘導体、例えばグアーガム誘導体及びカッシアガム誘導体、例えば、CTFA:グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、ヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、及びカッシアヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドが挙げられる。グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドは、Rhodia Inc.社からJaguar(商標)の商標名シリーズ、及びAshland Inc.社からN-Hanceの商標名シリーズで市販されている。カッシアヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドは、Lubrizol Advanced Materials, Inc.社からSensomer(商標)CT-250及びSensomer(商標)CT-400又はAshland Inc.社からClearHance(商標)の商標名で市販されている。
【0097】
カチオン性ポリマーがキトサンから選択されることもまた、好ましい場合がある。
【0098】
カチオン性ポリマーが、アルキルジアリルアミンのシクロポリマー、及びジアルキルジアリルアンモニウムのシクロポリマー、例えば(コ)ポリジアリルジアルキルアンモニウムクロリド、(コ)ポリアミン、例えば(コ)ポリリジン、カチオン性(コ)ポリアミノ酸、例えばカチオン化コラーゲン、カチオン性セルロースポリマー、キトサン、並びにそれらの塩からなる群から選択されることがより好ましい場合がある。
【0099】
カチオン性ポリマーが、ポリクオタニウム-4、ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-24、ポリクオタニウム-67、デンプンヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、カッシアヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、ポリリジン、キトサン、及びこれらの混合物からなる群から選択されることが、より一層好ましい場合がある。
【0100】
本発明による組成物中のカチオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して0.001質量%以上、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上であってよい。
【0101】
本発明による組成物中のカチオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であってよい。
【0102】
本発明による組成物中のカチオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%~15質量%、好ましくは0.005質量%~10質量%、より好ましくは0.01質量%~5質量%であってもよい。
【0103】
(アニオン性ポリマー)
本発明による組成物は、少なくとも1種のアニオン性ポリマーを含む。単一のタイプのアニオン性ポリマーを使用してもよいが、2種以上の異なるタイプのアニオン性ポリマーを組み合わせて使用することもできる。
【0104】
アニオン性ポリマーは、正の電荷密度を有する。アニオン性ポリマーが合成アニオン性ポリマーである場合、アニオン性ポリマーの電荷密度は、0.1meq/g~20meq/g、好ましくは1meq/g~15meq/g、より好ましくは4meq/g~10meq/gであってもよく、アニオン性ポリマーが天然アニオン性ポリマーである場合、アニオン性ポリマーの平均置換度は、0.1~3.0、好ましくは0.2~2.7、より好ましくは0.3~2.5であってもよい。
【0105】
アニオン性ポリマーの分子量は、1,000以上、好ましくは2,000以上、より一層好ましくは5,000以上、より一層好ましくは10,000以上、より一層好ましくは50,000以上、より一層好ましくは100,000以上、より一層好ましくは1,000,000以上であることが好ましい場合がある。
【0106】
説明において別段の定義がない限り、「分子量」は、数平均分子量を意味することができる。
【0107】
アニオン性ポリマーは、硫酸基、スルフェート基、スルホン酸基、スルホネート基、リン酸基、ホスフェート基、ホスホン酸基、ホスホネート基、カルボン酸基及びカルボキシレート基からなる群から選択される、少なくとも1つの負電荷を有することができる及び/又は負電荷を有する部分を有してよい。
【0108】
アニオン性ポリマーは、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。「コポリマー」という用語は、2種類のモノマーから得られるコポリマーと、3種類以上のモノマーから得られるコポリマー、例えば3種類のモノマーから得られるターポリマーの両方を意味すると理解される。
【0109】
アニオン性ポリマーは、天然の及び合成のアニオン性ポリマー、好ましくは天然のアニオン性ポリマーから選択することができる。
【0110】
アニオン性ポリマーは、少なくとも1つの疎水性鎖を含んでよい。
【0111】
少なくとも1つの疎水性鎖を含みうるアニオン性ポリマーは、α,β-エチレン性不飽和を含むカルボン酸(モノマーa')及び2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(モノマーa'')から選ばれるモノマー(a)を、(a)以外のエチレン性不飽和を含む非表面活性モノマー(b)、並びに/又はα,β-モノエチレン性不飽和を含むアクリルモノマー若しくはモノエチレン性不飽和を含むイソシアネートモノマーを、一価の非イオン性両親媒性成分又は第一級若しくは第二級脂肪アミンと反応させることから得られるエチレン性不飽和を含むモノマー(c)と、共重合させることによって得ることができる。
【0112】
そのため、少なくとも1つの疎水性鎖を有するアニオン性ポリマーは、2つの合成経路のいずれかによって得ることができる:
- モノマー(a')と(c)、若しくは(a')と(b)と(c)、若しくは(a'')と(c)、若しくは(a'')と(b)と(c)との共重合、
- 又はモノマー(a')、若しくはモノマー(a')と(b)、若しくは(a'')と(b)とから形成されたコポリマーを、一価の非イオン性両親媒性化合物又は第一級若しくは第二級脂肪アミンで修飾(具体的にはエステル化若しくはアミド化)すること。
【0113】
2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸コポリマーとしては、特に、論文「Micelle formation of random copolymers of sodium 2-(acrylamido)-2-methylpropanesulfonate and nonionic surfactant macromonomer in water as studied by fluorescence and dynamic light scattering - Macromolecules、2000年、第33巻、第10号-3694~3704頁」並びに出願EP-A-0750899及びEP-A-1069172に開示されているものを挙げることができる。
【0114】
モノマー(a')を構成する、α,β-モノエチレン性不飽和を含むカルボン酸は、多数の酸から、詳細には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸及びマレイン酸から選ぶことができる。これは、好ましくは、アクリル酸又はメタクリル酸である。
【0115】
コポリマーは、界面活性剤特性を有さないモノエチレン性不飽和を含むモノマー(b)を含むことができる。好ましいモノマーは、単独重合する場合に水不溶性ポリマーを与えるものである。これらは、例えば、アクリル酸及びメタクリル酸アルキル(C1~C4)、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル又は対応するメタクリレートから選択することができる。より特に好ましいモノマーは、アクリル酸メチル及びアクリル酸エチルである。使用されうる他のモノマーは、例えば、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル及び塩化ビニリデンである。非反応性モノマーが好ましく、これらのモノマーは、単一のエチレン性基が、重合条件下で反応性を持つ唯一の基であるものである。しかしながら、熱の作用下で反応する基を含むモノマー、例えばアクリル酸ヒドロキシエチルを、任意選択で使用することができる。
【0116】
モノマー(c)は、α,β-モノエチレン性不飽和を含むアクリルモノマー、例えば(a)、又はモノエチレン性不飽和を含むイソシアネートモノマーを、一価の非イオン性両親媒性化合物又は第一級若しくは第二級脂肪アミンと反応させることによって得られる。
【0117】
非イオン性モノマー(c)を生成するのに使用される一価の非イオン性両親媒性化合物又は第一級若しくは第二級脂肪アミンは、周知である。一価の非イオン性両親媒性化合物は、一般に、分子の親水性部分を形成するアルキレンオキシドを含むアルコキシル化疎水性化合物である。疎水性化合物は、一般に、脂肪族アルコール又はアルキルフェノールから構成され、その化合物中、少なくとも6個の炭素原子を含む炭素性鎖が、両親媒性化合物の疎水性部分を構成する。
【0118】
好ましい一価の非イオン性両親媒性化合物は、以下の式(V)を有する化合物である:
R-(OCH2CHR')m-(OCH2CH2)n-OH (V)
(式中、Rは、6~30個の炭素原子を含むアルキル又はアルキレン基、及び8~30個の炭素原子を含むアルキル基を有するアルキルアリール基から選ばれ、R'は、1~4個の炭素原子を含むアルキル基から選ばれ、nは、およそ1~150の範囲の平均数であり、mは、およそ0~50の範囲の平均数であり、但し、nは、少なくともmと同じ大きさである)。
【0119】
好ましくは、式(V)の化合物中、R基は、12~26個の炭素原子を含むアルキル基及びアルキル基がC8~C13であるアルキルフェニル基から選択され、R'基は、メチル基であり、m=0であり、n=1から25である。
【0120】
好ましい第一級及び第二級脂肪アミンは、6~30個の炭素原子を含む1つ又は2つのアルキル鎖で構成される。
【0121】
非イオン性ウレタンモノマー(c)を形成するのに使用されるモノマーは、非常に多様な化合物から選ぶことができる。共重合性不飽和、例えばアクリル性、メタクリル性又はアリル性不飽和を含む、任意の化合物を使用することができる。モノマー(c)は、特に、モノエチレン性不飽和を含むイソシアネート、例えば特にα,α-ジメチル-m-イソプロペニルベンジルイソシアネートから得ることができる。
【0122】
モノマー(c)は、特に、オキシエチレン化(1から50EO)C6~C30脂肪アルコールのアクリレート、メタクリレート又はイタコネート、例えばメタクリル酸ステアレス-20、オキシエチレン化(25EO)ベヘニルメタクリレート、オキシエチレン化(20EO)モノセチルイタコネート、オキシエチレン化(20EO)モノステアリルイタコネート又はポリオキシエチレン化(25EO)C12~C24アルコールで修飾されたアクリレートから、及びオキシエチレン化(1から50EO)C6~C30脂肪アルコールのジメチル-m-イソプロペニルベンジルイソシアネート、例えば特にオキシエチレン化ベヘニルアルコールのジメチル-m-イソプロペニルベンジルイソシアネートから選択することができる。
【0123】
本発明の特定の実施形態によれば、アニオン性ポリマーは、(a)α,β-エチレン性不飽和を含むカルボン酸、(b)(a)以外のエチレン性不飽和を含む非表面活性モノマー、及び(c)一価の非イオン性両親媒性化合物と、モノエチレン性不飽和を含むイソシアネートとの反応生成物である非イオン性ウレタンモノマーから得られるアクリルターポリマーから選ばれる。
【0124】
少なくとも1つの疎水性鎖を含むアニオン性ポリマーとしては、特に、アクリル酸/アクリル酸エチル/アクリル酸アルキルターポリマー、例えばRohm & Haas社によって名称Acusol 823で販売されている30%水性分散体としての製品;アクリレート/メタクリル酸ステアレス-20コポリマー、例えばRohm & Haas社によって名称Aculyn 22で販売されている製品;(メタ)アクリル酸/アクリル酸エチル/オキシエチレン化(25EO)ベヘニルメタクリレートターポリマー、例えばRohm & Haas社によって名称Aculyn 28で販売されている水性エマルションとしての製品;アクリル酸/オキシエチレン化(20EO)モノセチルイタコネートコポリマー、例えばNational Starch社によって名称Structure 3001で販売されている30%水性分散体としての製品;アクリル酸/オキシエチレン化(20EO)モノステアリルイタコネートコポリマー、例えばNational Starch社によって名称Structure 2001で販売されている30%水性分散体としての製品;アクリレート/ポリオキシエチレン化(25EO)C12~C24アルコールで修飾されたアクリレートのコポリマー、例えば3V SA社によって名称Synthalen W2000で販売されている30~32%コポリマーラテックス;又はメタクリル酸/アクリル酸メチル/エトキシル化ベヘニルアルコールのジメチル-メタ-イソプロペニルベンジルイソシアネートのターポリマー、例えば文献EP-A-0173109に開示された40個のエチレンオキシド基を含む24%水性分散体としての製品を挙げることができる。
【0125】
アニオン性ポリマーはまた、ポリエステル-5、例えば、以下の化学式を有する、EASTMAN CHEMICAL社により名称Eastman AQ(商標)55S Polymerで販売されている製品であってもよい:
【0126】
【0127】
A:ジカルボン酸部分
G:グリコール部分
SO3
-Na+: ナトリウムスルホ基
OH:ヒドロキシル基
【0128】
アニオン性ポリマーが、多糖、例えばアルギン酸、ヒアルロン酸及びセルロースポリマー(例えばカルボキシメチルセルロース)、アニオン性(コ)ポリアミノ酸、例えば(コ)ポリグルタミン酸、(コ)ポリ(メタ)アクリル酸、(コ)ポリアミン酸、(コ)ポリスチレンスルホネート、(コ)ポリ(ビニルスルフェート)、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸、(コ)ポリマレイン酸、(コ)ポリフマル酸、マレイン酸(コ)ポリマー、並びにそれらの塩からなる群から選択されることが好ましい場合がある。
【0129】
マレイン酸コポリマーは、1つ又は複数のマレイン酸コモノマーと、酢酸ビニル、ビニルアルコール、ビニルピロリドン、2~20個の炭素原子を含むオレフィン、及びスチレンから選ばれる1つ又は複数のコモノマーとを含んでよい。
【0130】
そのため、「マレイン酸コポリマー」は、1つ又は複数のマレイン酸コモノマーと、酢酸ビニル、ビニルアルコール、ビニルピロリドン、2~20個の炭素原子を含むオレフィン、例えばオクタデセン、エチレン、イソブチレン、ジイソブチレン又はイソオクチレン、及びスチレンから選ばれる1つ又は複数のコモノマーとの共重合によって得られる任意のポリマーを意味すると理解され、そのマレイン酸コモノマーは、任意選択で部分的に又は完全に加水分解されている。好ましくは、親水性ポリマー、すなわち水溶解度が2g/l以上であるポリマーが使用される。
【0131】
本発明の有利な態様では、マレイン酸コポリマーは、マレイン酸単位のモル分率が、0.1から1の間、より好ましくは0.4から0.9の間であってよい。
【0132】
マレイン酸コポリマーの質量平均モル質量は、1,000から500,000の間、好ましくは1,000から50,000の間でありうる。
【0133】
マレイン酸コポリマーが、スチレン/マレイン酸コポリマー、より好ましくはスチレン/マレイン酸コポリマーナトリウムであることが好ましい。
【0134】
好ましくは、50/50の比のスチレンとマレイン酸とのコポリマーを使用する。
【0135】
例えば、Cray Valley社により参照名SMA1000H(登録商標)で販売されている、水中30%でアンモニウム塩の形態のスチレン/マレイン酸(50/50)コポリマー、又はCray Valley社により参照名SMA1000HNa(登録商標)で販売されている、水中40%でナトリウム塩の形態のスチレン/マレイン酸(50/50)コポリマーを使用することができる。
【0136】
スチレン/マレイン酸コポリマー、例えばスチレン/マレイン酸コポリマーナトリウムの使用は、本発明による組成物によって調製される皮膜の濡れ性を改善することができる。
【0137】
好ましい実施形態において、アニオン性ポリマーは、ヒアルロン酸、その塩(例えば、ヒアルロン酸ナトリウム)、及びその誘導体から選択することができる。
【0138】
ヒアルロン酸は、以下の化学式によって表すことができる。
【0139】
【0140】
本発明の文脈では、用語「ヒアルロン酸」は、具体的には、次式のヒアルロン酸の基本単位を包含する:
【0141】
【0142】
これは、二糖ダイマー、すなわちD-グルクロン酸及びN-アセチルグルコサミンを含むヒアルロン酸の最小の部分である。
【0143】
用語「ヒアルロン酸及びその誘導体」はまた、本発明の文脈では、380から13,000,000ダルトンの間の範囲でありうる分子量(MW)を有する、交互β(1,4)及びβ(1,3)グルコシド結合を介して鎖内で一緒に結合される上記のポリマー単位を含む直鎖状ポリマーも含む。この分子量は、主に、ヒアルロン酸が得られる供給源及び/又は調製方法に依存する。
【0144】
用語「ヒアルロン酸及びその誘導体」はまた、本発明の文脈では、ヒアルロン酸塩も含む。塩として、ナトリウム塩及びカリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0145】
自然状態では、ヒアルロン酸は、真皮及び上皮組織等の脊椎動物の臓器の結合組織の基体中の細胞周囲ゲル中、特に表皮中、関節の滑液中、硝子体液中、ヒト臍帯中、及び鶏冠突起中に存在する。
【0146】
そのため、用語「ヒアルロン酸及びその誘導体」は、特に上で想起される分子量の範囲内の分子量を有するヒアルロン酸の全分画又はサブユニットを含む。
【0147】
本発明の文脈では、炎症活性を有さないヒアルロン酸分画が使用されることが好ましい。
【0148】
様々なヒアルロン酸分画の例えば、ヒアルロン酸の列挙される生物活性をその分子量に応じて見直している、文献「Hyaluronan fragments: an information-rich system」, R. Stern等、European Journal of Cell Biology 58 (2006) 699~715頁を参考にしてもよい。
【0149】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明に包含される使用に好適なヒアルロン酸分画は、50,000から5,000,000、特に100,000から5,000,000、とりわけ400,000から5,000,000Daの間の分子量を有する。この場合、使用される用語は、高分子量のヒアルロン酸である。
【0150】
或いは、本発明に包含される使用に好適でもありうるヒアルロン酸分画は、50,000から400,000Daの間の分子量を有する。この場合、使用される用語は、中間分子量のヒアルロン酸である。
【0151】
更に或いは、本発明に包含される使用に好適でありうるヒアルロン酸分画は、50,000Da未満の分子量を有する。この場合、使用される用語は、低分子量のヒアルロン酸である。
【0152】
最後に、用語「ヒアルロン酸及びその誘導体」はまた、ヒアルロン酸エステル、特に酸官能基のカルボン酸基の全て又は一部がオキシエチレン化アルキル又はアルコールでエステル化されているものであって、1~20個の炭素原子を含有する、特にヒアルロン酸のD-グルクロン酸のレベルの置換度が0.5~50%の範囲であるものも含む。
【0153】
特に、ヒアルロン酸のメチル、エチル、n-プロピル、n-ペンチル、ベンジル及びドデシルエステルを挙げることができる。そのようなエステルは特に、D. Campoccia等、「Semisynthetic resorbable materials from hyaluronan esterification」、Biomaterials、19 (1998) 2101~2127頁に記載された。
【0154】
ヒアルロン酸誘導体は、例えば、アセチル化ヒアルロン酸又はその塩でありうる。
【0155】
上に示した分子量は、ヒアルロン酸エステルにも有効である。
【0156】
ヒアルロン酸は、具体的には、Hyactive社により商品名CPN(MW:10~150kDa)で、Soliance社により商品名Cristalhyal(MW:1.1×106)で、Bioland社により名称Nutra HA(MW:820,000Da)で、Bioland社により名称Nutra AF(MW:69,000Da)で、Bioland社により名称Oligo HA(MW:6100Da)で、又はVam Farmacos Metica社により名称D Factor(MW:380Da)で供給されているヒアルロン酸でありうる。
【0157】
本発明による組成物中のアニオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%以上、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上であってよい。
【0158】
本発明による組成物中のアニオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であってよい。
【0159】
本発明による組成物中のアニオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%~15質量%、好ましくは0.005質量%~10質量%、より好ましくは0.01質量%~5質量%であってもよい。
【0160】
(2つ以上の酸解離定数を有する非ポリマー酸)
本発明による組成物は、少なくとも1種の2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩、すなわち、少なくとも1種の2つ以上の酸解離定数を有する非ポリマー酸又はその塩を含む。pKa値(酸解離定数)は、当業者に周知であり、一定の温度、例えば25℃で決定されるべきである。
【0161】
2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩は、(a)粒子中に組み入れられうる。2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸は、カチオン性ポリマー及び/又はアニオン性ポリマー、特にカチオン性ポリマーのための架橋剤として機能することができる。
【0162】
用語「非ポリマー」は、本明細書では、酸が、2種以上のモノマーを重合することによって得られるものではないことを意味する。したがって、非ポリマー酸は、ポリアクリル酸等の2種以上のモノマーを重合することによって得られる酸には相当しない。
【0163】
2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩の分子量は、1000以下、好ましくは800以下、より好ましくは700以下であることが好ましい。
【0164】
2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩のタイプに限定はない。2種以上の異なるタイプの2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩を組み合わせて使用してもよい。そのため、単一のタイプの2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸若しくはその塩、又は異なるタイプの2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸若しくはその塩の組合せを使用することができる。
【0165】
本明細書における用語「塩」は、2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸に、好適な塩基を添加することによって形成される塩を意味し、これは、当業者に公知の方法に従って、2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸と塩基との反応から得ることができる。塩として、金属塩、例えば、Na及びK等のアルカリ金属との塩並びにMg及びCa等のアルカリ土類金属との塩、並びにアンモニウム塩を挙げることができる。
【0166】
2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩は、有機酸又はその塩、好ましくは親水性若しくは水溶性の有機酸又はその塩であってよい。
【0167】
2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸は、カルボン酸基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、フェノール性ヒドロキシル基、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも2つの酸基を有しうる。
【0168】
2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸は、非ポリマー多価酸であってよい。
【0169】
2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸は、ジカルボン酸、ジスルホン酸及びジホスホン酸、並びにこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0170】
2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、クエン酸、アコニット酸、オキサロ酢酸、酒石酸、及びそれらの塩;アスパラギン酸、グルタミン酸、及びそれらの塩;テレフタリリデンジカンファースルホン酸、又はその塩(Mexoryl SX)、ベンゾフェノン-9;フィチン酸及びその塩;赤色2号(アマランス)、赤色102号(ニューコクシン)、黄色5号(タルトラジン)、黄色6号(サンセットイエローFCF)、緑色3号(ファストグリーンFCF)、青色1号(ブリリアントブルーFCF)、青色2号(インジゴカルミン)、赤色201号(リソールルビンB)、赤色202号(リソールルビンBCA)、赤色204号(レーキレッドCBA)、赤色206号(リソールレッドCA)、赤色207号(リソールレッドBA)、赤色208号(リソールレッドSR)、赤色219号(ブリリアントレーキレッドR)、赤色220号(ディープマルーン)、赤色227号(ファストアシッドマジェンタ)、黄色203号(キノリンイエローWS)、緑色201号(アリザニンシアニングリーンF)、緑色204号(ピラニンコンク)、緑色205号(ライトグリーンSF黄)、青色203号(パテントブルーCA)、青色205号(アルファズリンFG)、赤色401号(ビオラミンR)、赤色405号(パーマネントレッドF5R)、赤色502号(ポンソー3R)、赤色503号(ポンソーR)、赤色504号(ポンソーSX)、緑色401号(ナフトールグリーンB)、緑色402号(ギネアグリーンB)及び黒色401号(ナフトールブルーブラック);葉酸、アスコルビン酸、エリソルビン酸、及びそれらの塩;シスチン及びその塩;EDTA及びその塩;グリチルリチン及びその塩;並びにこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0171】
2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩が、テレフタリリデンジカンファースルホン酸及びその塩(メギゾリルSX)、黄色6号(サンセットイエローFCF)、アスコルビン酸、フィチン酸及びそれらの塩、並びにこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい場合がある。
【0172】
2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩は、有機酸又はその塩、好ましくは親水性若しくは水溶性の有機酸又はその塩、より好ましくはフィチン酸又はその塩であってよい。
【0173】
本発明による組成物中の2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩の量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%以上、好ましくは0.003質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上でありうる。
【0174】
本発明による組成物中の2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩の量は、組成物の総質量に対して、10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下でありうる。
【0175】
本発明による組成物中の2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩の量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%~10質量%、好ましくは0.003質量%~5質量%、より好ましくは0.005質量%~1質量%でありうる。
【0176】
[油]
本発明による組成物は、(b)少なくとも1種の油を含む。2種以上の(b)油を使用する場合、これらは同じであっても異なっていてもよい。
【0177】
本明細書では、「油」は、大気圧(760mmHg)下、室温(25℃)で液体又はペースト(非固体)の形態の脂肪化合物又は脂肪物質を意味する。油として、化粧品において一般に使用されるものを、単独で、又はそれらの組合せで使用することができる。これらの油は、揮発性であっても、不揮発性であってもよい。
【0178】
油は、炭化水素油、シリコーン油等の非極性油、植物油若しくは動物油、及びエステル油若しくはエーテル油等の極性油、又はこれらの混合物であってもよい。
【0179】
油は、植物又は動物由来の油、合成油、シリコーン油、炭化水素油及び脂肪アルコールからなる群から選択されうる。
【0180】
植物油の例として、例えば、アンズ油、アマニ油、カメリア油、マカデミアナッツ油、コーン油、ミンク油、オリーブ油、アボカド油、サザンカ油、ヒマシ油、ベニバナ油、ホホバ油、ヒマワリ油、アーモンド油、ナタネ油、ゴマ油、ダイズ油、ピーナツ油、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0181】
動物油の例として、例えば、スクアレン及びスクアランを挙げることができる。
【0182】
合成油の例として、アルカン油、例えば、イソドデカン及びイソヘキサデカン、エステル油、エーテル油、並びに人工トリグリセリドを挙げることができる。
【0183】
エステル油は、好ましくは、飽和又は不飽和の直鎖状又は分枝状C1~C26脂肪族一酸又は多酸と、飽和又は不飽和の直鎖状又は分枝状C1~C26脂肪族一価アルコール又は多価アルコールとの液状エステルであり、これらのエステルの合計炭素原子数は10以上である。
【0184】
好ましくは、一価アルコールのエステルの場合、本発明のエステルが誘導されるアルコール及び酸のうち、少なくとも1種は分枝状である。
【0185】
一酸及び一価アルコールのモノエステルの中でも、パルミチン酸エチル、パルミチン酸エチルヘキシル、パルミチン酸イソプロピル、炭酸ジカプリリル、ミリスチン酸アルキル、例えばミリスチン酸イソプロピル又はミリスチン酸エチル、ステアリン酸イソセチル、イソノナン酸2-エチルヘキシル、イソノナン酸イソノニル、ネオペンタン酸イソデシル及びネオペンタン酸イソステアリルを挙げることができる。
【0186】
C4~C22ジカルボン酸又はトリカルボン酸とC1~C22アルコールとのエステル、並びにモノカルボン酸、ジカルボン酸又はトリカルボン酸と、非糖C4~C26ジヒドロキシ、トリヒドロキシ、テトラヒドロキシ又はペンタヒドロキシアルコールとのエステルもまた、使用することができる。
【0187】
特に挙げることができるのは、セバシン酸ジエチル、ラウロイルサルコシンイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ビス(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジ-n-プロピル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソステアリル、マレイン酸ビス(2-エチルヘキシル)、クエン酸トリイソプロピル、クエン酸トリイソセチル、クエン酸トリイソステアリル、トリ乳酸グリセリル、トリオクタン酸グリセリル、クエン酸トリオクチルドデシル、クエン酸トリオレイル、ジヘプタン酸ネオペンチルグリコール、ジイソノナン酸ジエチレングリコールである。
【0188】
エステル油として、C6~C30、好ましくはC12~C22脂肪酸の糖エステル及びジエステルを使用することができる。用語「糖」は、アルデヒド又はケトン官能基を含む又は含まない、いくつかのアルコール官能基を含有する、酸素を有する炭化水素系化合物であって、少なくとも4個の炭素原子を含む化合物を意味することが想起される。これらの糖は、単糖、オリゴ糖又は多糖とすることができる。
【0189】
挙げることができる好適な糖の例には、スクロース(又はショ糖)、グルコース、ガラクトース、リボース、フコース、マルトース、フルクトース、マンノース、アラビノース、キシロース及びラクトース、並びにそれらの誘導体、特に、メチル誘導体等のアルキル誘導体、例えばメチルグルコースがある。
【0190】
脂肪酸の糖エステルは、とりわけ、前述の糖と、直鎖状若しくは分枝状で飽和若しくは不飽和のC6~C30、好ましくはC12~C22脂肪酸とのエステル又はエステルの混合物を含む群から選択することができる。これらの化合物は、不飽和である場合、1から3個の共役又は非共役の炭素-炭素二重結合を有することができる。
【0191】
この変形によるエステルはまた、モノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステル、及びポリエステル、並びにこれらの混合物から選択することもできる。
【0192】
これらのエステルは、例えば、オレイン酸エステル、ラウリン酸エステル、パルミチン酸エステル、ミリスチン酸エステル、ベヘン酸エステル、ヤシ脂肪酸エステル、ステアリン酸エステル、リノール酸エステル、リノレン酸エステル、カプリン酸エステル及びアラキドン酸エステル、又はこれらの混合物、例えばとりわけ、オレオパルミチン酸、オレオステアリン酸、及びパルミトステアリン酸の混合エステル、並びにテトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチルであってもよい。
【0193】
より詳細には、モノエステル及びジエステル、特に、スクロース、グルコース又はメチルグルコースのモノオレイン酸エステル又はジオレイン酸エステル、ステアリン酸エステル、ベヘン酸エステル、オレオパルミチン酸エステル、リノール酸エステル、リノレン酸エステル及びオレオステアリン酸エステルが使用される。
【0194】
挙げることができる例は、ジオレイン酸メチルグルコースである、Amerchol社により名称Glucate(登録商標)DOで販売されている製品である。
【0195】
好ましいエステル油の例として、例えば、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジオクチル、ヘキサン酸2-エチルヘキシル、ラウリン酸エチル、オクタン酸セチル、オクタン酸オクチルドデシル、ネオペンタン酸イソデシル、プロピオン酸ミリスチル、2-エチルヘキサン酸2-エチルヘキシル、オクタン酸2-エチルヘキシル、カプリル酸2-エチルヘキシル/カプリン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、炭酸ジカプリリル、ラウロイルサルコシン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル、パルミチン酸エチルヘキシル、ラウリン酸イソヘキシル、ラウリン酸ヘキシル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸イソデシル、トリ(2-エチルヘキサン酸)グリセリル、テトラ(2-エチルヘキサン酸)ペンタエリスリチル、コハク酸2-エチルヘキシル、セバシン酸ジエチル、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0196】
人工トリグリセリドの例として、例えば、カプリルカプリリルグリセリド、トリミリスチン酸グリセリル、トリパルミチン酸グリセリル、トリリノレン酸グリセリル、トリラウリン酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル、トリカプリル酸グリセリル、トリ(カプリン酸/カプリル酸)グリセリル及びトリ(カプリン酸/カプリル酸/リノレン酸)グリセリルを挙げることができる。
【0197】
シリコーン油の例として、例えば、直鎖状オルガノポリシロキサン、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等、環状オルガノポリシロキサン、例えば、シクロヘキサシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等、並びにこれらの混合物を挙げることができる。
【0198】
好ましくは、シリコーン油は、液体ポリジアルキルシロキサン、とりわけ、液体ポリジメチルシロキサン(PDMS)、及び少なくとも1つのアリール基を含む液体ポリオルガノシロキサンから選ばれる。
【0199】
これらのシリコーン油はまた、有機変性されていてよい。本発明に従って使用され得る有機変性シリコーンは、構造中に、炭化水素系基を介して結合されている1つ又は複数の有機官能基を含む、上に定義したシリコーン油である。
【0200】
オルガノポリシロキサンは、Walter Noll著、Chemistry and Technology of Silicones(1968)、Academic Pressにおいて、より詳細に定義されている。これらは、揮発性であっても、不揮発性であってもよい。
【0201】
それらが揮発性である場合、シリコーンは、より詳細には、沸点が60℃から260℃の間であるものから選ばれ、より一層詳細には以下から選ばれる:
(i)3~7個、好ましくは4~5個のケイ素原子を含む環状ポリジアルキルシロキサン。これらは、例えば、特にUnion Carbide社により名称Volatile Silicone(登録商標) 7207で販売されている、又はRhodia社により名称Silbione(登録商標) 70045 V2で販売されているオクタメチルシクロテトラシロキサン、Union Carbide社により名称Volatile Silicone(登録商標) 7158で販売されている、Rhodia社によりSilbione(登録商標) 70045 V5で販売されているデカメチルシクロペンタシロキサン、及びMomentive Performance Materials社により名称Silsoft 1217で販売されているドデカメチルシクロペンタシロキサン、並びにこれらの混合物である。次式のジメチルシロキサン/メチルアルキルシロキサンのようなタイプのシクロコポリマー、例えば、Union Carbide社により販売されているSilicone Volatile(登録商標)FZ 3109を挙げることもできる。
【0202】
【0203】
環状ポリジアルキルシロキサンと有機ケイ素化合物との混合物、例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサンとテトラトリメチルシリルペンタエリスリトールとの混合物(50/50)、及びオクタメチルシクロテトラシロキサンとオキシ-1,1'-ビス(2,2,2',2',3,3'-ヘキサトリメチルシリルオキシ)ネオペンタンとの混合物も挙げることができる。
(ii)2~9個のケイ素原子を含有し、25℃において5×10-6m2/s以下の粘度を有する、直鎖状の揮発性ポリジアルキルシロキサン。例は、特にToray Silicone社により名称SH 200で販売されているデカメチルテトラシロキサンである。この部類に属するシリコーンは、Cosmetics and Toiletries、第91巻、76年1月、27~32頁、Todd & Byers、Volatile Silicone Fluids for Cosmeticsに公表されている論文にも記載されている。該シリコーンの粘度は、ASTM規格445付録Cに従って25℃で測定されている。
【0204】
また、不揮発性ポリジアルキルシロキサンを使用してもよい。これらの不揮発性シリコーンは、より詳細にはポリジアルキルシロキサンから選ばれ、その中では、主としてトリメチルシリル末端基を有するポリジメチルシロキサンを挙げることができる。
【0205】
これらのポリジアルキルシロキサンの中でも、以下の市販製品を非限定的な手法で挙げることができる:
- Rhodia社により販売されているSilbione(登録商標)油の47及び70 047シリーズ又はMirasil(登録商標)油、例えば70 047 V 500 000油;
- Rhodia社により販売されているMirasil(登録商標)シリーズの油;
- Dow Corning社からの200シリーズの油、例えば粘度が60,000mm2/sであるDC200;及び
- General Electric社製のViscasil(登録商標)油及びGeneral Electric社製のSFシリーズの特定の油(SF 96、SF 18)。
【0206】
名称ジメチコノール(CTFA)で知られる、ジメチルシラノール末端基を含有するポリジメチルシロキサン、例えばRhodia社製の48シリーズの油も挙げることができる。
【0207】
アリール基を含有するシリコーンの中でも、ポリジアリールシロキサン、とりわけポリジフェニルシロキサン及びポリアルキルアリールシロキサン、例えばフェニルシリコーン油を挙げることができる。
【0208】
フェニルシリコーン油は、次式のフェニルシリコーンから選ぶことができる。
【0209】
【0210】
(式中、
R1~R10は、互いに独立して、飽和又は不飽和の、直鎖状、環状又は分枝状C1~C30炭化水素系基、好ましくはC1~C12炭化水素系基、より好ましくはC1~C6炭化水素系基、具体的にはメチル、エチル、プロピル又はブチルの各基であり、
m、n、p及びqは、互いに独立に、端点を含む0~900、好ましくは端点を含む0~500、より好ましくは端点を含む0~100の整数であり、
但し、和n+m+qは0以外である)。
【0211】
挙げることができる例には、以下の名称で販売されている製品がある:
- Rhodia社製のSilbione(登録商標)油の70 641シリーズ;
- Rhodia社製のRhodorsil(登録商標)70 633及び763シリーズの油;
- Dow Corning社製の油であるDow Corning 556 Cosmetic Grade Fluid;
- Bayer社製のPKシリーズのシリコーン、例えば製品PK20;
- General Electric社製のSFシリーズの特定の油、例えばSF 1023、SF 1154、SF 1250及びSF 1265。
【0212】
フェニルシリコーン油として、フェニルトリメチコン(上の式中、R1~R10はメチルであり、p、q及びn=0であり、m=1である)が好ましい。
【0213】
有機変性液状シリコーンは、とりわけ、ポリエチレンオキシ及び/又はポリプロピレンオキシ基を含有してもよい。そのため、信越化学工業株式会社により提案されているシリコーンKF-6017、及びUnion Carbide社製の油Silwet(登録商標)L722及びL77を挙げることができる。
【0214】
炭化水素油は、以下から選ばれうる:
- 直鎖状又は分枝状、任意選択で環状のC6~C16低級アルカン。挙げることができる例として、ヘキサン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、及びイソパラフィン、例としてはイソヘキサデカン、イソドデカン及びイソデカン、並びに
- 16個超の炭素原子を含有する直鎖状又は分枝状の炭化水素、例えば流動パラフィン、流動ワセリン、ポリデセン及び水素化ポリイソブテン、例えばParleam(登録商標)、及びスクアラン。
【0215】
炭化水素油の好ましい例として、例えば、直鎖状又は分枝状の炭化水素、例えば、イソヘキサデカン、イソドデカン、スクアラン、鉱油(例えば流動パラフィン)、パラフィン、ワセリン又はペトロラタム、ナフタレン等;水素化ポリイソブテン、イソエイコサン、及びデセン/ブテンコポリマー;並びにこれらの混合物を挙げることができる。
【0216】
脂肪アルコールにおける用語「脂肪」は、比較的大きい数の炭素原子を包含することを意味する。そのため、4個以上、好ましくは6個以上、より好ましくは12個以上の炭素原子を有するアルコールが、脂肪族アルコールの範囲内に包含される。脂肪アルコールは、飽和であっても、不飽和であってもよい。脂肪アルコールは、直鎖状であっても、分枝状であってもよい。
【0217】
脂肪アルコールは、構造R-OH(式中、Rは、4から40個の炭素原子、好ましくは6から30個の炭素原子、より好ましくは12から20個の炭素原子を含有する、飽和及び不飽和の、直鎖状及び分枝状の基から選択される)を有し得る。少なくとも1つの実施形態では、Rは、C12~C20アルキル基及びC12~C20アルケニル基から選択されうる。Rは、少なくとも1つのヒドロキシル基によって置換されていても、されていなくてもよい。
【0218】
脂肪アルコールの例として、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ウンデシレニルアルコール、ミリスチルアルコール、オクチルドデカノール、へキシルデカノール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、パルミトレイルアルコール、アラキドニルアルコール、エルシルアルコール、及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0219】
脂肪アルコールは飽和脂肪アルコールであることが好ましい。
【0220】
したがって、脂肪アルコールは、直鎖状又は分枝状で、飽和又は不飽和のC6~C30アルコール、好ましくは直鎖状又は分枝状の、飽和C6~C30アルコール、より好ましくは直鎖状又は分枝状の、飽和C12~C20アルコールから選択することができる。
【0221】
「飽和脂肪アルコール」という用語は、本明細書において、長鎖の脂肪族飽和炭素鎖を有するアルコールを意味する。飽和脂肪アルコールが、任意の直鎖状又は分枝状の飽和C6~C30脂肪アルコールから選択されることが好ましい。直鎖状又は分枝状の飽和C6~C30脂肪アルコールの中でも、直鎖状又は分枝状の飽和C12~C20脂肪アルコールが、好ましくは使用され得る。任意の直鎖状又は分枝状の飽和C16~C20脂肪アルコールが、より好ましく使用されうる。分枝状C16~C20脂肪アルコールが、より一層好ましく使用されうる。
【0222】
飽和脂肪アルコールの例として、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ウンデシレニルアルコール、ミリスチルアルコール、オクチルドデカノール、へキシルデカノール、及びそれらの混合物を挙げることができる。一実施形態では、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、又はこれらの混合物(例えばセテアリルアルコール)、及びベヘニルアルコールを、飽和脂肪アルコールとして使用することができる。
【0223】
少なくとも1つの実施形態によれば、本発明による組成物において使用される脂肪アルコールは、好ましくは、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール及びそれらの混合物から選択される。
【0224】
(b)油は、植物油、合成エステル油、及びこれらの混合物から、好ましくは植物油から選択されることが好ましい。
【0225】
本発明によれば、(b)油は、複数の(a)粒子によって取り囲まれていてもよく、又は(b)油は、(a)粒子によって形成されたカプセルの中空内に存在してもよい。言い換えると、(b)油は、(a)粒子によって覆われていてもよく、又は(a)粒子によって形成されたカプセルは、カプセルの中空内に(b)油を含む。
【0226】
(a)粒子によって取り囲まれた又は(a)粒子によって形成されたカプセルの中空内に存在する(b)油は、皮膚等のケラチン物質と直接接触することができない。したがって、(b)油がべたつく又は油っぽい使用感を有する場合であっても、本発明による組成物は、べたつく又は油っぽい使用感をもたらさない。
【0227】
本発明による組成物中の(b)油の量は、組成物の総質量に対して、1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であってよい。
【0228】
本発明による組成物中の(b)油の量は、組成物の総質量に対して、45質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下であってよい。
【0229】
本発明による組成物中の(b)油の量は、組成物の総質量に対して、1質量%~45質量%、好ましくは5質量%~40質量%、より好ましくは10質量%~35質量%であってもよい。
【0230】
[脂肪酸]
本発明による組成物は、(c)少なくとも1種の脂肪酸を含む。2種以上の脂肪酸が使用される場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0231】
本明細書において用語「脂肪酸」は、脂肪族炭素の長鎖を有するカルボン酸を意味する。
【0232】
(c)脂肪酸は、少なくとも4個の炭素原子、好ましくは少なくとも6個の炭素原子、より好ましくは少なくとも8個の炭素原子を有する。(c)脂肪酸は、最大24個の炭素原子、好ましくは最大22個の炭素原子、より好ましくは最大20個の炭素原子を含んでもよい。(c)脂肪酸は、C6~C24脂肪酸、より好ましくはC8~C22脂肪酸、より一層好ましくはC10~C20脂肪酸から選択されることが好ましい。
【0233】
(c)脂肪酸は、飽和又は不飽和、直鎖状又は分枝状の脂肪酸から選択され得る。そのため、(c)脂肪酸は、C4~C24、好ましくはC6~C22、より好ましくはC8~C20飽和及び不飽和の直鎖状又は分枝状脂肪酸から選択することができる。
【0234】
不飽和の直鎖状又は分枝状脂肪酸として、一価不飽和の直鎖状若しくは分枝状脂肪酸又は多価不飽和の直鎖状若しくは分枝状脂肪酸を使用してもよい。不飽和の直鎖状又は分枝状脂肪酸の不飽和部分として、炭素間二重結合又は炭素間三重結合を挙げることができる。
【0235】
飽和脂肪酸としては、例えば、カプリル酸(C8)、ペラルゴン酸(C9)、カプリン酸(C10)、ラウリン酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、ペンタデカン酸(C15)、パルミチン酸(C16)、ヘプタデカン酸(C17)、ステアリン酸(C18)、イソステアリン酸(C18)、ノナデカン酸(C19)、アラキジン酸(C20)、ベヘン酸(C22)、及びリグノセリン酸(C24)を挙げることができる。
【0236】
不飽和脂肪酸としては、例えば、ミリストレイン酸(C14)、パルミトレイン酸(C16)、オレイン酸(C18)、リノール酸(C18)、リノレン酸(C18)、エライジン酸(C18)、アラキドン酸(C20)、エイコセン酸(C20)、エルカ酸(C22)、及びネルボン酸(C24)を挙げることができる。
【0237】
(c)脂肪酸は、C12~C22飽和又は不飽和の直鎖状又は分枝状脂肪酸から、より好ましくは、カプリル酸、カプリン酸、オレイン酸、リノール酸、ステアリン酸、イソステアリン酸及びこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。
【0238】
(c)脂肪酸は、その遊離酸の形態又はその塩の形態であってもよい。脂肪酸の塩として、無機塩、例えばアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)及びアルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩等)、並びに有機塩、例えばアンモニウム塩(第4級アンモニウム塩等)及びアミン塩(トリエタノールアミン塩、トリエチルアミン塩等)を挙げることができる。単一のタイプの脂肪酸塩又は異なるタイプの脂肪酸塩の組合せを使用してもよい。更に、遊離酸の形態の1種又は複数の脂肪酸と、塩の形態の1種又は複数の脂肪酸との組合せを使用することができ、1種又は複数のタイプの塩を使用することもできる。
【0239】
本発明による組成物中の(c)脂肪酸の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上でよい。本発明による組成物中の(c)脂肪酸の量は、組成物の総質量に対して、0.5質量%以上であることがより一層好ましいことがある。
【0240】
一方で、本発明による組成物中の(c)脂肪酸の量は、組成物の総質量に対して、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下でもよい。本発明による組成物中の(c)脂肪酸の量は、組成物の総質量に対して、3質量%以下であることがより一層好ましいことがある。
【0241】
これに応じて、本発明による組成物中の(c)脂肪酸の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%の範囲であってもよい。本発明による組成物中の(c)脂肪酸の量は、組成物の総質量に対して、0.5質量%~3質量%であることがより一層好ましいことがある。
【0242】
[水]
本発明による組成物は、(d)水を含む。
【0243】
(d)水の量は、組成物の総質量に対して、50質量%以上、好ましくは55質量%以上、より好ましくは60質量%以上であってもよい。
【0244】
(d)水の量は、組成物の総質量に対して、95質量%以下、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下であってもよい。
【0245】
(d)水の量は、組成物の総質量に対して、50質量%~95質量%、好ましくは55質量%~90質量%、より好ましくは60質量%~85質量%であってもよい。
【0246】
[pH]
本発明による組成物のpHは、3~9、好ましくは3.3~8.5、より好ましくは3.5~8でありうる。
【0247】
pH3~9で、(a)粒子は、非常に安定でありうる。
【0248】
本発明による組成物のpHは、2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩以外の、少なくとも1種のアルカリ剤及び/又は少なくとも1種の酸を添加し、(a)粒子中に取り入れることによって調整することができる。本発明による組成物のpHはまた、少なくとも1種の緩衝剤を添加することによって調整することができる。
【0249】
(アルカリ剤)
本発明による組成物は、少なくとも1種のアルカリ剤を含んでよい。2種以上のアルカリ剤を組み合わせて使用してもよい。そのため、単一のタイプのアルカリ剤、又は異なるタイプのアルカリ剤の組合せを使用することができる。
【0250】
アルカリ剤は、無機アルカリ剤であってもよい。無機アルカリ剤が、アンモニア、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属リン酸塩及びリン酸一水素塩、例えばリン酸ナトリウム又はリン酸一水素ナトリウムからなる群から選択されることが好ましい。
【0251】
無機アルカリ金属水酸化物の例としては、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムを挙げることができる。アルカリ土類金属水酸化物の例としては、水酸化カルシウム及び水酸化マグネシウムを挙げることができる。無機アルカリ剤として、水酸化ナトリウムが好ましい。
【0252】
アルカリ剤は、有機アルカリ剤であってもよい。有機アルカリ剤が、モノアミン及びその誘導体、ジアミン及びその誘導体、ポリアミン及びその誘導体、塩基性アミノ酸及びその誘導体、塩基性アミノ酸のオリゴマー及びその誘導体、塩基性アミノ酸のポリマー及びその誘導体、尿素及びその誘導体、並びにグアニジン及びその誘導体からなる群から選択されることが好ましい。
【0253】
有機アルカリ剤の例として、アルカノールアミン、例えばモノ-、ジ-及びトリ-エタノールアミン、並びにイソプロパノールアミン;尿素、グアニジン及びそれらの誘導体;塩基性アミノ酸、例えばリジン、オルニチン又はアルギニン;並びにジアミン、例えば以下の構造:
【0254】
【0255】
(式中、Rは、ヒドロキシル又はC1~C4アルキル基で任意選択により置換されているプロピレン等のアルキレンを示し、R1、R2、R3及びR4は、独立に、水素原子、アルキル基又はC1~C4ヒドロキシアルキル基を示す)
で記載されるもの、例えば1,3-プロパンジアミン及びその誘導体を挙げることができる。アルギニン、尿素及びモノエタノールアミンが好ましい。
【0256】
アルカリ剤は、その溶解度に応じて、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.02質量%~10質量%、より好ましくは0.03質量%~5質量%の総量で使用することができる。
【0257】
(酸)
本発明による組成物は、少なくとも1種の酸を含んでもよい。2種以上の酸を組み合わせて使用してもよい。そのため、単一のタイプの酸、又は異なるタイプの酸の組合せを使用することができる。
【0258】
酸として、化粧料中で一般に使用される任意の無機又は有機酸、好ましくは無機酸を挙げることができる。一価の酸及び/又は多価酸を使用することができる。クエン酸、乳酸、硫酸、リン酸及び塩酸(HCl)等の一価の酸を使用することができる。乳酸が好ましい場合がある。
【0259】
酸は、その溶解度に応じて、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.02質量%~10質量%、より好ましくは0.03質量%~5質量%の総量で使用することができる。
【0260】
(緩衝剤)
本発明による組成物は、少なくとも1種の緩衝剤を含んでよい。2種以上の緩衝剤を組み合わせて使用してもよい。そのため、単一のタイプの緩衝剤、又は異なるタイプの緩衝剤の組合せを使用することができる。
【0261】
緩衝剤としては、酢酸緩衝液(例えば、酢酸+酢酸ナトリウム)、リン酸緩衝液(例えば、リン酸二水素ナトリウム+リン酸水素二ナトリウム)、クエン酸緩衝液(例えば、クエン酸+クエン酸ナトリウム)、ホウ酸緩衝液(例えば、ホウ酸+ホウ酸ナトリウム)、酒石酸緩衝液(例えば、酒石酸+酒石酸ナトリウム二水和物)、トリス緩衝液(例えば、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、及びHepes緩衝液(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)を挙げることができる。
【0262】
[任意選択の添加剤]
本発明による組成物は、前述の成分に加えて化粧品に典型的に用いられる成分、具体的には、界面活性剤/乳化剤、例えば、(a)粒子に使用されるカチオン性及びアニオン性ポリマー以外の合成ポリマーに由来する親水性又は親油性増粘剤、揮発性又は不揮発性有機溶媒、(b)油以外のシリコーン及びシリコーン誘導体、動物又は植物に由来する天然抽出物、ワックス等を、本発明の効果を損なわない範囲内で含んでもよい。
【0263】
本発明による組成物は、上記の任意選択の添加剤を、組成物の総質量に対して、0.01質量%~30質量%、好ましくは0.05質量%~20質量%、より好ましくは0.1質量%~10質量%の量で含んでよい。
【0264】
本発明による組成物は、環境適合性を考慮して、非常に限られた量の界面活性剤/乳化剤及び/又は合成増粘剤及び/又は有機溶媒を含んでもよい。
【0265】
本発明による組成物中の界面活性剤/乳化剤及び/又は合成増粘剤及び/又は有機溶媒の量は、組成物の総質量に対して、1質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下であってよい。本発明による組成物が界面活性剤/乳化剤又は合成増粘剤又は有機溶媒を含まないことが特に好ましい。
【0266】
[調製]
本発明による組成物は、上記で説明した必須成分と、上記で説明した任意選択の成分(必要な場合)とを混合することによって調製することができる。
【0267】
上記の必須及び任意選択の成分を混合する方法及び手段は、限定されない。任意の従来の方法及び手段が、上記の必須成分と任意選択の成分とを混合して本発明による組成物を調製するために使用されうる。
【0268】
本発明による組成物は、撹拌機及びホモジナイザー等の従来の混合手段により、単純に又は容易に混合することによって調製することができる。また、加熱は必要ではない場合もある。したがって、本発明による組成物の調製方法は、環境に適合性でありうる。
【0269】
[化粧用組成物]
本発明による組成物は、化粧用組成物として使用されることが意図されてよい。そのため、本発明による化粧用組成物は、ケラチン物質への塗布が意図されてよい。ケラチン物質は、本明細書では、ケラチンを主な構成要素として含む物質を意味し、その例には、皮膚、頭皮、爪、唇、毛髪等が挙げられる。そのため、本発明による化粧用組成物が、ケラチン物質、詳細には皮膚のための美容方法のために使用されることが好ましい。
【0270】
そのため、本発明による化粧用組成物は、皮膚化粧用組成物、好ましくはスキンケア組成物又は皮膚メイクアップ組成物、より好ましくはスキンケア組成物であってもよい。
【0271】
[形態]
本発明による組成物において、(b)油は脂肪相を形成することができ、(d)水は水性相を形成することができ、脂肪相は、水性相中に分散されうる。そのため、水性相は連続相として機能することができ、脂肪相は分散相として機能することができる。
【0272】
そのため、本発明による組成物は、O/Wエマルション等のO/W分散体の形態でありうる。本発明による組成物がO/W型である場合、その外相を形成する(d)水に起因して、清涼感を付与できる。
【0273】
[メカニズム]
図1は、本発明の一実施形態における、水性相中に分散されている油滴等の脂肪相の周囲の(a)粒子の挙動、及び(a)粒子の疎水化の例を示す概略図を示す。
【0274】
複数の(a)粒子が、脂肪相と水性相との間の界面に存在しうる。そのため、(a)粒子は、一切の従来の界面活性剤又は乳化剤の力を借りずにエマルションを形成できる。(a)粒子によって形成されるエマルションは、いわゆるピッカリングエマルションに類似しうる。
【0275】
或いは、複数の(a)粒子は、中空を有するカプセルを形成することができる。(b)油は、中空内に存在することができる。言い換えると、(b)油は、カプセルに組み込むことができる。カプセルの壁は、(a)粒子から形成された連続層又は皮膜から構成されうる。理論に拘泥するものではないが、(a)粒子は、(b)油と(d)水との界面で再組織化して、(b)油を含むための中空を有するカプセルを自発的に形成することができると考えられる。例えば、カプセル中の(d)水を含む連続水性相及び(b)油を含む分散相は、いわゆるピッカリングエマルションにも類似しうるO/Wエマルションを形成することができる。
【0276】
上記のことは、(a)粒子自体が両親媒性であり、油又は水に不溶性であることを意味する。
【0277】
脂肪相は、(c)脂肪酸を含む。脂肪相中の(c)脂肪酸は、インサイチュで(a)粒子を疎水化できる。
図1は、(c)脂肪酸による(a)粒子の疎水化のスキームを示す。
【0278】
図1Aは、(c)脂肪酸を含まない脂肪相の場合における、水性相中に分散されている油滴等の脂肪相の周囲の(a)粒子の挙動を示す概略図を示す。
【0279】
図1Aにおいて、(a)粒子の疎水性は不十分である。したがって、(a)粒子と(b)油を含む脂肪相との間の親和性は限定されている。そのため、水性相中の脂肪相の乳化は、不安定である。
【0280】
一方、
図1Bは、(c)脂肪酸を含む脂肪相の場合における、水性相中に分散されている油滴等の脂肪相の周囲の(a)粒子の挙動を示す概略図を示す。
【0281】
図1Bにおいて、
図1Cに示すように、脂肪相中の(c)脂肪酸のカルボン酸基は、(a)粒子中のカチオン性ポリマー中のアンモニウム基又はアミノ基等のカチオン性又はカチオン化基とイオンで相互作用することができる。これに応じて、(a)粒子は、イオンで疎水化され、充分な疎水性を持つことができる。したがって、(a)粒子と(b)油を含む脂肪相との間の親和性が強化される。そのため、水性相中の脂肪相の乳化は、安定性である。
【0282】
[皮膜]
本発明による組成物は、皮膜を容易に調製するのに使用することができる。(a)粒子は、凝集し、合体して連続皮膜となることができる。
【0283】
したがって、本発明はまた、好ましくは0.5μm超、より好ましくは1.0μm以上、より一層好ましくは1.5μm以上の厚さを任意選択により有する皮膜、好ましくは化粧皮膜を調製するための方法であって、
本発明による組成物を基材、好ましくはケラチン物質、より好ましくは皮膚に塗布する工程と、
該組成物を乾燥させる工程と
を含む方法にも関する。
【0284】
本発明による皮膜の厚さの上限は限定されない。したがって、例えば、本発明による皮膜の厚さは、1mm以下、好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下、より一層好ましくは100μm以下であってよい。
【0285】
本発明による皮膜を調製するための方法は、本発明による組成物を基材、好ましくはケラチン物質、より好ましくは皮膚に塗布する工程と、組成物を乾燥させる工程とを含むことから、本発明による方法は、スピンコーティング又はスプレーすることを一切必要とせず、したがって、比較的厚い皮膜さえ容易に調製することが可能である。したがって、本発明による皮膜を調製するための方法は、スピンコーター及びスプレー機等の特殊な装置を一切用いずに比較的厚い皮膜を調製することができる。
【0286】
本発明による皮膜が比較的厚くても、それでもなお薄く、透明とすることができ、したがって、知覚することが容易でない場合がある。したがって、本発明による皮膜は、好ましくは化粧皮膜として使用することができる。
【0287】
基材が皮膚等のケラチン物質でない場合、本発明による組成物は、ケラチン以外の任意の材料から作製された基材に塗布することができる。非ケラチン基材の材料は限定されない。2種以上の材料を組み合わせて使用してもよい。したがって、単一のタイプの材料、又は異なるタイプの材料の組合せを使用することができる。いずれにせよ、基材は、可撓性又は弾性であることが好ましい。
【0288】
基材がケラチン物質でない場合、基材は、水溶性であることが好ましく、その理由は、基材を水で洗浄することによって本発明による皮膜を残すことが可能であるからである。水溶性材料の例としては、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール(PVA)、デンプン、酢酸セルロース等を挙げることができる。PVAが好ましい。
【0289】
非ケラチン基材がシートの形態である場合、これは、基材シートに付着した皮膜の取り扱いを容易にするために、本発明による皮膜の厚さを超える厚さを有してもよい。非ケラチン基材シートの厚さは限定されないが、1μmから5mm、好ましくは10μmから1mm、より好ましくは50から500μmであってよい。
【0290】
本発明による皮膜は、非ケラチン基材から取り外し可能であることがより好ましい。取り外し方式は限定されない。したがって、本発明による皮膜は、非ケラチン基材から剥がしてもよく、又は基材シートを水等の溶媒中に溶解することによって取り外してもよい。
【0291】
本発明はまた、
(1)好ましくは0.5μm超、より好ましくは1.0μm以上、より一層好ましくは1.5μm以上の厚さを任意選択により有する皮膜、好ましくは化粧皮膜であって、
本発明による組成物を基材、好ましくはケラチン物質、より好ましくは皮膚に塗布する工程と、
組成物を乾燥させる工程と
を含む方法によって調製される皮膜、
並びに
(2)好ましくは0.5μm超、より好ましくは1.0μm以上、より一層好ましくは1.5μm以上の厚さを任意選択により有する皮膜、好ましくは化粧皮膜であって、
少なくとも1種のカチオン性ポリマー及び少なくとも1種のアニオン性ポリマー、
少なくとも1種の2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩、
少なくとも1種の油、並びに
少なくとも1種の脂肪酸
を含む皮膜にも関しうる。
【0292】
カチオン性及びアニオン性ポリマー、並びに2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩、並びに上記の油及び脂肪酸に関する上記の説明は、上記の皮膜(1)及び(2)中のものに適用されうる。
【0293】
上記のこうして得られた皮膜は、自立性とすることができる。本明細書における「自立性」という用語は、皮膜をシートの形態とすることができ、基材又は支持体の補助なしに独立したシートとして取り扱うことができることを意味する。したがって、「自立性」という用語は、「自己支持性」と同じ意味を有することができる。
【0294】
本発明による皮膜は、疎水性であることが好ましい。
【0295】
本明細書における「疎水性」という用語は、20から40℃、好ましくは25から40℃、より好ましくは30から40℃での皮膜の水(好ましくは1リットルの体積)に対する溶解度が、皮膜の総質量に対して、10質量%未満、好ましくは5質量%未満、より好ましくは1質量%未満、より一層好ましくは0.1質量%未満であることを意味する。皮膜は、水に可溶性でないことが最も好ましい。
【0296】
本発明による皮膜が疎水性である場合、皮膜は、耐水特性を有することができ、したがって、ケラチン物質の表面が例えば汗及び雨により濡れている場合であっても、皮膚等のケラチン物質上に残存することができる。したがって、本発明による皮膜が何らかの美容効果を提供する場合、その美容効果は長時間持続することができる。
【0297】
一方、本発明による皮膜は、pH8から12、好ましくは9から11等のアルカリ性条件下で、皮膚等のケラチン物質から容易に除去することができる。したがって、本発明による皮膜は、水で除去することは困難であるが、そのようなアルカリ性条件をもたらすことができる石けんで容易に除去することができる。
【0298】
本発明による皮膜は、少なくとも1種の生体適合性及び/又は生分解性ポリマー層を含んでもよい。2種以上の生体適合性及び/又は生分解性ポリマーを組み合わせて使用してもよい。したがって、単一のタイプの生体適合性及び/若しくは生分解性ポリマー、又は異なるタイプの生体適合性及び/若しくは生分解性ポリマーの組合せを使用することができる。
【0299】
本明細書における「生体適合性」ポリマーという用語は、ポリマーが、ポリマーと皮膚を含む生体内の細胞との間の過度の相互作用を有さず、ポリマーが、生体によって異物として認識されないことを意味する。
【0300】
本明細書における「生分解性」ポリマーという用語は、ポリマーが、例えば生体自体の代謝又は生体内に存在しうる微生物の代謝により、生体内で分解又は分割されうることを意味する。また、生分解性ポリマーは、加水分解によって分解されうる。
【0301】
本発明による皮膜が生体適合性及び/又は生分解性ポリマーを含む場合、これは、皮膚への刺激が少ないか又は刺激がなく、一切の発疹を起こさない。加えて、生体適合性及び/又は生分解性ポリマーの使用により、本発明による美容シートは、皮膚によく接着することができる。
【0302】
本発明による皮膜は、ケラチン物質、好ましくは皮膚、特に顔の美容処置に使用することができる。本発明による皮膜は、任意の形状又は形態であってよい。例えば、これは、フルフェイスマスクシート、又は頬、鼻、及び目の周り等の顔の一部用のパッチとして使用することができる。
【0303】
本発明による皮膜が、少なくとも1種の親水性又は水溶性UV遮蔽剤を含む場合、皮膜は、親水性又は水溶性UV遮蔽剤に由来するUVシールド効果を提供することができる。通常、親水性又は水溶性UV遮蔽剤は、汗及び雨等の水によって皮膚等のケラチン基材の表面から除去されうる。しかし、親水性又は水溶性UV遮蔽剤は、本発明による皮膜中に含まれることから、親水性又は水溶性UV遮蔽剤を水によって除去することは困難であり、それにより、長時間持続するUVシールド効果がもたらされる。
【0304】
[美容方法及び使用]
本発明はまた、
皮膚等のケラチン物質のための美容方法であって、本発明による組成物をケラチン物質に塗布する工程と、組成物を乾燥させて、ケラチン物質上に化粧皮膜を形成する工程とを含む方法、又は
皮膚等のケラチン物質上に化粧皮膜を調製するための本発明による組成物の使用にも関する。
【0305】
本明細書における美容方法とは、皮膚等のケラチン物質の表面をケア及び/又はメイクアップするための非治療的美容法を意味する。
【0306】
上記の方法と使用との両方において、上記の化粧皮膜は、pH7以下の水に耐性があり、pH7超、好ましくは8以上、より好ましくは9以上の水で除去可能である。
【0307】
換言すると、上記の化粧皮膜は、pH7以下、好ましくは6以上で7以下の範囲、より好ましくは5以上で7以下の範囲等の中性又は酸性条件下で耐水性でありうるが、上記の化粧皮膜は、pH7超、好ましくは8以上、より好ましくは9以上等のアルカリ性条件下で除去することができる。pHの上限は、好ましくは13、より好ましくは12、より一層好ましくは11である。
【0308】
これに応じて、上記の化粧皮膜は、耐水性とすることができ、したがって、ケラチン物質の表面が例えば汗及び雨により濡れている場合であっても、皮膚等のケラチン物質上に残存することができる。一方、上記の化粧皮膜は、アルカリ性条件下で、皮膚等のケラチン物質から容易に除去することができる。したがって、本発明による皮膜は、水で除去することは困難であるが、アルカリ性条件をもたらすことができる石けんで容易に除去することができる。
【0309】
上記の化粧皮膜が、本発明による組成物中に存在しうるUV遮蔽剤を含む場合、上記の化粧皮膜は、紫外線から皮膚等のケラチン物質を保護し、それにより、皮膚の黒ずみを抑え、肌の色及び均一性を改善し、且つ/又は皮膚の老化を処置することができる。
【0310】
更に、上記の化粧皮膜は、化粧皮膜が美容有効成分を一切含まない場合であっても、化粧皮膜中のポリイオンコンプレックス粒子の特性により、皮脂を捕獲する、皮膚等のケラチン基材の外観にマット感付与する、悪臭を吸収若しくは吸着する、且つ/又は例えば汚れ若しくは汚染物質からケラチン物質を保護する等の美容効果を有しうる。
【0311】
加えて、上記の化粧皮膜は、化粧皮膜が美容有効成分を一切含まない場合であっても、皮膚上の光反射等を変化させることによって皮膚の外観を即座に変化させる又は修正することができる。したがって、上記の化粧皮膜は、毛穴又はしわ等の皮膚の欠陥を隠すことが可能でありうる。更に、上記の化粧皮膜は、皮膚上の表面粗さ等を変化させることによって皮膚の触感を即座に変化させる又は修正することができる。更に、上記の化粧皮膜は、環境ストレス、例えば汚染物質、夾雑物等から、バリアーとして、皮膚の表面を覆い、皮膚をシールドすることによって皮膚を即座に保護することができる。
【0312】
上記の美容効果は、上記の化粧皮膜の化学組成、厚さ及び/又は表面粗さを変化させることによって調整又は制御することができる。
【0313】
上記の化粧皮膜が、(b)油以外の少なくとも1種の追加の美容有効成分を含む場合、化粧皮膜は、その追加の美容有効成分によって提供される美容効果を有することができる。例えば、化粧皮膜が、抗老化剤、皮脂抑制剤、デオドラント剤、発汗抑制剤、美白剤及びそれらの混合物から選択される少なくとも1種の美容有効成分を含む場合、化粧皮膜は、皮膚の老化を処置し、皮膚上の皮脂を吸収し、皮膚上の匂いを制御し、皮膚上の発汗を制御し、且つ/又は皮膚を美白することができる。
【0314】
皮膚に適用した後に、本発明による化粧皮膜又は美容シートにメイクアップ化粧用組成物を塗布することも可能である。
【0315】
本発明はまた、
(a)少なくとも1種のカチオン性ポリマー、
少なくとも1種のアニオン性ポリマー、及び
少なくとも1種の2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩
を含む、
少なくとも1種の粒子と、
(b)少なくとも1種の油と、
(d)水と、
を含む組成物中における、(c)少なくとも1種の脂肪酸の使用であって、組成物中の(b)油の量を、組成物の総質量に対して、1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上に増加させるための使用にも関する。
【0316】
カチオン性及びアニオン性ポリマー並びに上記の油及び脂肪酸に関する上記の説明は、上記の使用におけるものに適用されうる。
【0317】
上記の本発明による使用は、組成物が比較的大量の油、例えば組成物の総質量に対して、1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上の油を含んでも、組成物の安定性を強化できる。したがって、組成物の相分離は、長期間にわたって防止されうる。
【実施例0318】
本発明を、実施例によって、より詳細な方法で説明する。しかしながら、それらは、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきでない。
【0319】
(実施例1~5及び比較例1)
[調製]
(実施例1)
ポリ-ε-リジンの水溶液2グラム(25質量%)を水に添加した後、攪拌しながら、20gのZea Mays(トウモロコシ)胚芽油及び1.7gのオレイン酸を添加した。次に、攪拌しながら1gのヒアルロン酸ナトリウムを添加した。次いで、攪拌しながらフィチン酸の水溶液0.55g(50質量%)を添加した。それによって、ポリイオンコンプレックスゲル粒子(PGP)を含む組成物を調製した。調製は、加熱せずに室温で実施した。
【0320】
実施例1によるPGP分散体を調製するのに使用した材料を、表1に示す。表1に示した成分の量の単位は、全て「グラム」である。
【0321】
(実施例2~5)
実施例1による手順を繰り返し、但し、表1に示した材料を使用して、実施例2~5による安定性のPGP分散体を調製した。
【0322】
実施例2~5によるPGP分散体を調製するのに使用した成分を、表1に示す。表1に示した成分の量の単位は、全て「グラム」である。
【0323】
(比較例1)
比較例1において、実施例1による組成物の調製を繰り返し、但し、オレイン酸は添加しなかった。
【0324】
比較例1によるPGP分散体を調製するのに使用した成分を、表1に示す。表1に示した成分の量の単位は、全て「グラム」である。
【0325】
【0326】
[評価]
(顕微鏡による観察)
実施例1による組成物及び比較例1による組成物を、顕微鏡観察した。実施例1及び比較例1による組成物の顕微鏡写真を
図2に示す。
【0327】
実施例1による組成物中の油滴のサイズは小さく、油滴は均一に分散されていたが、比較例1による組成物中の油滴のサイズはさまざまであり、油滴は均一に分散されておらず、幾つかの凝集体を形成していた。
【0328】
(安定性)
実施例1~5及び比較例1による組成物のそれぞれを、室温で1週間、透明の容器に入れて保存した。組成物の安定性を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。
良好: 組成物の均一性が維持されていた。
不良: 組成物の均一性が維持されていなかった。
【0329】
結果を表1に示す。
【0330】
実施例1~5による組成物は、相分離がなく、乳化された均一な外観を維持して安定性だったが、比較例1による組成物は、相分離が観察されたことから安定でなかった。
【0331】
(実施例6及び比較例2)
[調製]
(実施例6)
乳酸1グラムを水に添加した後、攪拌しながら20gのZea Mays(トウモロコシ)胚芽油及び0.5gのオレイン酸を添加することによって2グラムのキトサンを水に溶解した。次に、攪拌しながら0.01gのヒアルロン酸ナトリウムを添加した。次いで、攪拌しながらフィチン酸の水溶液0.01g(50質量%)を添加した。それによって、ポリイオンコンプレックスゲル粒子(PGP)を含む組成物を調製した。
【0332】
実施例6によるPGP分散体を調製するのに使用した成分を、表2に示す。表2に示した成分の量の単位は、全て「グラム」である。
【0333】
(比較例2)
比較例2において、実施例6による組成物の調製を繰り返し、但し、オレイン酸は添加しなかった。
【0334】
比較例2によるPGP分散体を調製するのに使用した成分を、表2に示す。表2に示した成分の量の単位は、全て「グラム」である。
【0335】
【0336】
[評価]
(安定性)
実施例6及び比較例2による組成物を、室温で1週間、透明の容器に個別に入れて保存した。組成物の安定性を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。
良好: 組成物の均一性が維持されていた。
不良: 組成物の均一性が維持されていなかった。
【0337】
結果を表2に示す。
【0338】
実施例6による組成物は、相分離がなく、乳化された均一な外観を維持して安定性だったが、比較例2による組成物は、相分離が観察されたことから安定でなかった。