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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091310
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】可溶化ポリフェノールを含む組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/49 20060101AFI20230623BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20230623BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20230623BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230623BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
A61K8/49
A61K8/73
A61K8/365
A61Q19/00
A61K8/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021205989
(22)【出願日】2021-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】奥田 真介
(72)【発明者】
【氏名】白谷 俊史
(72)【発明者】
【氏名】淺沼 秀彦
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AC111
4C083AC122
4C083AC301
4C083AC302
4C083AC841
4C083AC842
4C083AD071
4C083AD072
4C083AD111
4C083AD321
4C083AD322
4C083AD391
4C083AD641
4C083AD642
4C083BB34
4C083CC02
4C083DD01
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】組成物中に可溶化されたポリフェノールを含む水性組成物を提供すること。
【解決手段】本発明は、(a)少なくとも1種のポリフェノール、(b)5,000~450,000、好ましくは10,000~350,000、より好ましくは50,000~250,000の分子量を有し、キトサン類から選択される、少なくとも1種の第1のカチオン性ポリマー、(c)アスコルビン酸、グルコノラクトン、グルコン酸、グリコール酸、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の有機化合物、並びに(d)水を含む組成物であって、pHが3.0~5.0である、組成物に関する。(a)ポリフェノールは、本発明による組成物中に可溶化させることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1種のポリフェノール、
(b)5,000~450,000、好ましくは10,000~350,000、より好ましくは50,000~250,000の分子量を有し、キトサン類から選択される、少なくとも1種の第1のカチオン性ポリマー、
(c)アスコルビン酸、グルコノラクトン、グルコン酸、グリコール酸、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の有機化合物、並びに
(d)水
を含む組成物であって、pHが3.0~5.0である、組成物。
【請求項2】
(a)ポリフェノールが、エラグ酸、プニカラギン、及びこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(a)ポリフェノールが、植物、好ましくはザクロに由来する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
組成物中の(a)ポリフェノールの量が、組成物の総質量に対して、0.001質量%~10質量%、好ましくは0.005質量%~5質量%、より好ましくは0.01質量%~1質量%である、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
(b)第1のカチオン性ポリマーが、3%超且つ10%未満のアセチル化度を有するキトサン類から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
組成物中の(b)第1のカチオン性ポリマーの量が、組成物の総質量に対して、0.001質量%~10質量%、好ましくは0.005質量%~5質量%、より好ましくは0.01質量%~1質量%である、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
組成物中の(c)有機化合物の量が、組成物の総質量に対して、0.001質量%~15質量%、好ましくは0.005質量%~10質量%、より好ましくは0.01質量%~5質量%である、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
組成物中の(d)水の量が、組成物の総質量に対して、50質量%~98質量%、好ましくは60質量%~95質量%、より好ましくは70質量%~90質量%である、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
(e)ポリリジン類から選択される少なくとも1種の第2のカチオン性ポリマーを更に含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
組成物中の(e)第2のカチオン性ポリマーの量が、組成物の総質量に対して、0.001質量%~10質量%、好ましくは0.01質量%~5質量%、より好ましくは0.1質量%~3質量%である、請求項10に記載の組成物。
【請求項11】
(f)少なくとも1種のポリオールを更に含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
(f)ポリオールがジプロピレングリコールである、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
組成物中の(f)ポリオールの量が、組成物の総質量に対して、0.1質量%~25質量%、好ましくは0.5質量%~20質量%、より好ましくは1質量%~15質量%である、請求項11又は12に記載の組成物。
【請求項14】
化粧用組成物、好ましくは透明な化粧用組成物、より好ましくは透明な皮膚化粧用組成物である、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
ケラチン物質、例えば皮膚のための美容方法であって、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物をケラチン物質に塗布する工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可溶化ポリフェノールを含む組成物、及び該組成物を使用する美容方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフェノールは抗酸化効果を有し、美容効果、例えば老化防止を提供できることが知られている。したがって、1種又は複数のポリフェノールを含む化粧用組成物が提案されている。例えば、WO2017/167364には、ポリフェノールを含むオオムギ(Hordeum vulgare)種子抽出物を含む化粧用組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2017/167364
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一般に、ポリフェノールを水性組成物中に可溶化することは困難である。そのため、水性組成物におけるポリフェノールの抗酸化効果の利用は限定的であった。
【0005】
したがって、本発明の目的は、組成物中に可溶化されたポリフェノールを含む水性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記の目的は、
(a)少なくとも1種のポリフェノール、
(b)5,000~450,000、好ましくは10,000~350,000、より好ましくは50,000~250,000の分子量を有し、キトサン類から選択される、少なくとも1種の第1のカチオン性ポリマー、
(c)アスコルビン酸、グルコノラクトン、グルコン酸、グリコール酸、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の有機化合物、並びに
(d)水
を含む組成物であって、pHが3.0~5.0である、組成物によって達成されうる。
【0007】
(a)ポリフェノールは、エラグ酸、プニカラギン、及びこれらの混合物から選択されうる。
【0008】
(a)ポリフェノールは、植物、好ましくはザクロ(学名:Punica granatum)に由来しうる。
【0009】
本発明による組成物中の(a)1種又は複数のポリフェノールの量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%~10質量%、好ましくは0.005質量%~5質量%、より好ましくは0.01質量%~1質量%でありうる。
【0010】
(b)第1のカチオン性ポリマーは、3%超及び10%未満のアセチル化度を有するキトサン類から選択されうる。
【0011】
本発明による組成物中の(b)第1のカチオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%~10質量%、好ましくは0.005質量%~5質量%、より好ましくは0.01質量%~1質量%でありうる。
【0012】
本発明による組成物中の(c)有機化合物の量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%~15質量%、好ましくは0.005質量%~10質量%、より好ましくは0.01質量%~5質量%でありうる。
【0013】
本発明による組成物中の(d)水の量は、組成物の総質量に対して、50質量%~98質量%、好ましくは60質量%~95質量%、より好ましくは70質量%~90質量%でありうる。
【0014】
本発明による組成物は、(e)ポリリジン類から選択される少なくとも1種の第2のカチオン性ポリマーを更に含んでもよい。
【0015】
本発明による組成物中の(e)第2のカチオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%~10質量%、好ましくは0.01質量%~5質量%、より好ましくは0.1質量%~3質量%でありうる。
【0016】
本発明による組成物は、(f)少なくとも1種のポリオールを更に含んでもよい。
【0017】
(f)ポリオールは、ジプロピレングリコールであることが好ましい。
【0018】
本発明による組成物中の(f)ポリオール類の量は、組成物の総質量に対して、0.1質量%~25質量%、好ましくは0.5質量%~20質量%、より好ましくは1質量%~15質量%でありうる。
【0019】
本発明による組成物は、化粧用組成物、好ましくは透明な化粧用組成物、より好ましくは透明な皮膚化粧用組成物でありうる。
【0020】
本発明はまた、ケラチン物質、例えば皮膚のための美容方法であって、本発明による組成物をケラチン物質に塗布する工程を含む、方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
鋭意検討の結果、本発明者らは、組成物中に可溶化されたポリフェノールを含む水性組成物を提供することが、可能であることを発見した。
【0022】
したがって、本発明による組成物は、
(a)少なくとも1種のポリフェノール、
(b)5,000~450,000、好ましくは10,000~350,000、より好ましくは50,000~250,000の分子量を有し、キトサン類から選択される、少なくとも1種の第1のカチオン性ポリマー、
(c)アスコルビン酸、グルコノラクトン、グルコン酸、グリコール酸、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の有機化合物、並びに
(d)水
を含み、組成物のpHは3.0~5.0である。
【0023】
(a)ポリフェノールは、本発明による組成物中に可溶化させることができる。
【0024】
(a)ポリフェノールの溶解性は、本発明による組成物の透明性によって評価することができる。例えば、本発明による組成物が均質で透明である場合、これは、組成物中の(a)ポリフェノールが組成物中に十分に可溶化されていることを意味する。
【0025】
本発明による組成物中の(a)ポリフェノールの溶解性は、長期間にわたって維持されることが好ましい。したがって、(a)ポリフェノールは、本発明による組成物中に、長期間にわたって可溶化されていることが好ましい。言い換えれば、本発明による組成物の透明性は、長期間にわたって維持されることが好ましい。
【0026】
本発明による組成物は、1カ月以上の間、透明でありうる。
【0027】
本発明による組成物中に可溶化された(a)ポリフェノールは、美容効果、例えば老化防止に寄与することができる、良好な抗酸化効果を発揮することができる。
【0028】
したがって、本発明による組成物は、組成物中の(a)ポリフェノールに起因する抗酸化効果に基づく、良好な美容効果を提供することができる。
【0029】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0030】
[組成物]
本発明による組成物は、
(a)少なくとも1種のポリフェノール、
(b)5,000~450,000、好ましくは10,000~350,000、より好ましくは50,000~250,000の分子量を有し、キトサン類から選択される、少なくとも1種の第1のカチオン性ポリマー、
(c)アスコルビン酸、グルコノラクトン、グルコン酸、グリコール酸、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の有機化合物、並びに
(d)水
を含み、組成物のpHは3.0~5.0である。
【0031】
(ポリフェノール)
本発明による組成物は、(a)少なくとも1種のポリフェノールを含む。単一のタイプのポリフェノールを使用してもよく、2種以上の異なるタイプのポリフェノールを組み合わせて使用してもよい。
【0032】
「ポリフェノール」という表現は、複数のフェノール性ヒドロキシル基を含有する化合物を意味するものと理解される。フェノール性ヒドロキシル基とは、芳香環、例えばベンゼン環及びナフタレン環に結合したヒドロキシル基を意味する。フェノール性ヒドロキシル基は、任意選択でエーテル化又はエステル化されてもよい。
【0033】
(a)ポリフェノールは、乏しい水中溶解性を有しうる。したがって、(a)ポリフェノールは、後に説明する(b)第1のカチオン性ポリマー、(c)有機化合物、及び(d)水なしでは、室温(20℃~25℃、好ましくは25℃)で1質量%未満、0.1質量%未満、又は0.01質量%未満の水溶性を有しうる。
【0034】
(a)ポリフェノールは、化粧料又は皮膚科用製品中の活性成分又は活性化合物でありうる。本明細書で使用される「活性」化合物という用語は美容的又は皮膚科学的活性特性、例えば、抗酸化効果、白色化効果、及び抗菌効果を有する化合物を意味する。(a)ポリフェノールは、抗酸化活性を有するものから選択されることが好ましい。
【0035】
本発明に使用することができる(a)ポリフェノールは、フラボノイド及び非フラボノイドでありうる。
【0036】
フラボノイド類は、カルコン、フラボン、フラバノン、フラバノール、フラボノール、ジヒドロフラボノール、イソフラボノイド、ネオフラボノイド、カテキン、アントシアニジン、タンニン、及びこれらの誘導体からなる群から選択されうる。特に、フラボノイドは、タンニン及びその誘導体であってもよい。
【0037】
タンニン類及びその誘導体は、エラグ酸、ゲラニイン、カテキン、プロシアニジン、プロフィセチニジン、プロデルフィニジン、及びこれらの誘導体、例えばエラジタンニンからなる群から選択されうる。エラグ酸は抗酸化効果を有するため、これらのタンニン類の中でも、本発明は、特に好ましくは、(a)ポリフェノールとしてエラグ酸及びエラジタンニンを使用しうる。
【0038】
エラグ酸は、次の化学式によって表される。エラグ酸は、例えば、Minasolve社から入手することができる(製品名:Minacare Elage)。
【0039】
【化1】
【0040】
エラジタンニンは、カスタラギン、カスタリン、カスアリクチン(casuarictin)、グランジニン、ロブリン(roburin) A、テリマグランジンII、テルフラビン(terflavin) B、ベスカラギン、プニカラギン、プニカリン、及びこれらの混合物からなる群から選択されうる。
【0041】
非フラボノイド類は、リグナン、オーロン、スチルベノイド、クルクミノイド、及び他のフェニルプロパノイド、並びにこれらの誘導体、例えばレゾルシノール誘導体からなる群から選択されうる。特に、非フラボノイドは、スチルベノイド及びその誘導体、並びにレゾルシノール誘導体から選択されうる。
【0042】
スチルベノイド類及び誘導体は、ピセアタンノール、ピノシルビン、レスベラトロール、及びこれらの誘導体からなる群から選択されうる。レスベラトロールは白色化作用を有するため、これらのスチルベノイドの中でも、本発明は、好ましくは(a)ポリフェノールとしてレスベラトロールを使用しうる。
【0043】
レスベラトロールは、次の化学式によって表される。レスベラトロールは、例えば、Symrise Corp社から入手することができる。
【0044】
【化2】
【0045】
レゾルシノール誘導体は、好ましくは4位で置換された誘導体、例えば4-アルキルレゾルシノール、より好ましくはフェニルエチルレゾルシノール、4-n-ブチルレゾルシノール及び4-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)ベンゼン-1,3-ジオールであってもよく、特に、その白色化効果のためにフェニルエチルレゾルシノールであってもよい。フェニルエチルレゾルシノールは、4-(1-フェニルエチル)-1,3-ベンゼンジオールとも称され、次の化学式によって表される。フェニルエチルレゾルシノールは、例えば、Symrise Corp社から入手することができる(製品名:Symwhite 377(登録商標))。
【0046】
【化3】
【0047】
レゾルシノール誘導体の他の例として、以下を挙げることができる:2-メチルレゾルシノール、5-メチルレゾルシノール、4-メチルレゾルシノール、4-エチルレゾルシノール、2,5-ジメチルレゾルシノール、4,5-ジメチルレゾルシノール、2,4-ジメチル-1,3-ベンゼンジオール、3,5-ジヒドロキシベンジルアミン、5-メトキシレゾルシノール、3,5-ジヒドロキシベンジルアルコール、2-メトキシレゾルシノール、4-メトキシレゾルシノール、3,5-ジヒドロキシトルエン一水和物、4-クロロレゾルシノール、2-クロロレゾルシノール、2',4'-ジヒドロキシアセトフェノン、3',5'-ジヒドロキシアセトフェノン、2,6-ジヒドロキシ-4-メチルベンズアルデヒド、4-プロピルレゾルシノール、2,4-ジヒドロキシ-1,3,5-トリメチルベンゼン、3,5-ジヒドロキシベンズアミド、2,6-ジヒドロキシベンズアミド、2,4-ジヒドロキシベンズアミド、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、2,6-ジヒドロキシ安息香酸、3,5-ジヒドロキシ安息香酸、2,6-ジヒドロキシ-4-メチルベンジルアルコール、3,5-ジヒドロキシアニソール水和物、4-アミノレゾルシノール塩酸塩、2-アミノレゾルシノール塩酸塩、5-アミノベンゼン-1,3-ジオール塩酸塩、2',4'-ジヒドロキシプロピオフェノン、2',4'-ジヒドロキシ-3'-メチルアセトフェノン、(2,4-ジヒドロキシフェニル)アセトン、(3,5-ジヒドロキシフェニル)アセトン、2,6-ジヒドロキシ-4'-メチルアセトフェノン、4-n-ブチルレゾルシノール、2,4-ジエチル-1,3-ベンゼンジオール、3,5-ジヒドロキシ-4-メチル安息香酸、2,6-ジヒドロキシ-4-メチル安息香酸、2,4-ジヒドロキシ-6-メチル安息香酸、3,5-ジヒドロキシフェニル酢酸、2-エチル-5-メトキシベンゼン-1,3-ジオール、4-アミノ-3,5-ジヒドロキシ安息香酸、3,5-ジヒドロキシアセトフェノン一水和物、3,5-ジヒドロキシベンジルアミン塩酸塩、4,6-ジクロロレゾルシノール、2',4'-ジヒドロキシ-3'-メチルプロピオフェノン、1-(3-エチル-2,6-ジヒドロキシフェニル)エタン-1-オン、2',6'-ジヒドロキシ-4'-メトキシアセトフェノン、1-(2,6-ジヒドロキシ-3-メトキシフェニル)エタン-1-オン、3-(2,4-ジヒドロキシフェニル)プロピオン酸)及び2,4-ジヒドロキシ-3,6-ジメチル安息香酸。
【0048】
(a)ポリフェノールの塩としては、従来型の、前記化合物の非毒性塩、例えば酸から又は塩基から形成されるものが挙げられる。
【0049】
(a)ポリフェノールの塩としては、以下が挙げられる:
a)該化合物と鉱酸、より特定すれば、塩酸、ホウ酸、臭化水素酸、ヒドロン(hydroic)酸、硫酸、硝酸、炭酸、リン酸及びテトラフルオロホウ酸から選択される鉱酸との付加によって得られる塩、又は
b)該化合物と、有機酸、より特定すれば、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、フマル酸、乳酸、グリコール酸、クエン酸、グルコン酸、サリチル酸、酒石酸、テレフタル酸、メチルスルホン酸、エチルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸及びトリフル酸から選択される有機酸との付加によって得られる塩。
【0050】
(a)ポリフェノールと、無機塩基、例えば、水性の、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アンモニウム、水酸化マグネシウム、水酸化リチウム、並びに例えば、ナトリウム、カリウム若しくはカルシウムの炭酸塩若しくは炭酸水素塩;又は有機塩基、例えば第一級、第二級若しくは第三級アルキルアミン、例えばトリエチルアミン若しくはブチルアミンとの付加によって得られる塩も挙げられる。
【0051】
(a)ポリフェノールの塩は、有利には、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩、並びにアンモニウム塩から選択されうる。
【0052】
(a)ポリフェノールは、エラグ酸、エラジタンニン、例えば、プニカラギン及びプニカリン、並びにこれらの混合物から選択されることが好ましい。
【0053】
プニカラギンとは、2種のジアステレオ異性体、プニカラギンAとBとの混合物を意味する。これらはポリフェノールファミリーに属し、とりわけ、エラグ酸及びガラギン酸に結合したグルコースによって形成される、約1084gmol-1のモル質量の複雑なエラジタンニンであり、次の化学式の2,3-(S)-ヘキサヒドロキシジフェノイル-4,6-(S,S)-ガラギル-D-グルコースの異性体によって形成される。
【0054】
【化4】
【0055】
「プニカリン」という用語は、2種のジアステレオ異性体、プニカリンAとBとの混合物を意味する。これらはポリフェノールファミリーに属し、とりわけ、4,6-(S,S)-ガラギル-D-グルコースという名称の、次の化学式のエラジタンニンである。
【0056】
【化5】
【0057】
(a)ポリフェノールは、エラグ酸、プニカラギン、及びこれらの混合物から選択されることがより好ましいことがある。
【0058】
(a)ポリフェノールは、植物、より好ましくはザクロに由来することが好ましい。
【0059】
ザクロは、ミソハギ(Lythraceae)科の結実性の落葉性低木、すなわち小木であり、5mから10mの間(16~30フィート)の高さに成長する。複数の刺状枝において、落葉性の葉は対生、又は5枚若しくは6枚の輪生であり、その茎は短く、広皮針形であり、革質であり、長さ1~10cm(0.4~4インチ)である。派手な赤色、白色、又は斑入りの花が、単体で、又は最大5つの花で群をなして、枝の先端に見られる。ザクロ(英名:pomegranate)の果実は、ほぼ球形であるが、底部には冠状の萼が目立ち、強靭な革質の表皮又は外皮を有し、黄色を基礎として、淡い若しくは濃いピンク色、又は深みのある赤色が重なっている。内側は、膜状の壁及び白色のスポンジ質組織によって区画に隔てられており、酸っぱく、香り豊かな、多肉質、多汁質の果肉で満たされた透明な嚢(仮種皮)が詰まっている。各嚢の中には、1つの、白色又は赤色で、角張った、軟質又は硬質の種子がある。仮種皮は、果実全体の質量の約52%に相当する。
【0060】
本発明の目的には、ザクロの果実、特に果皮がより好ましい。
【0061】
本発明の好ましい実施形態では、ザクロの果実は、インド、ジャンムー及びカシミール州のRamban地区周辺(kanga村)で9月~12月の期間中に、より特定すると、32°N、74°E周辺の緯度及び経度で収集される。
【0062】
ザクロ抽出物
本発明の一実施形態によれば、ザクロの抽出物(ザクロ抽出物)が、(a)ポリフェノールとして使用されうる。
【0063】
好ましくは、上記のザクロ抽出物は、
乾燥抽出物の総質量の10質量%~15質量%、好ましくは10.5質量%~15質量%、より好ましくは10.8質量%~14.8質量%、よりいっそう好ましくは11.7質量%~14.6質量%のプニカラギン、及び
乾燥抽出物の総質量の10質量%~15質量%、好ましくは10.5質量%~14.5質量%、より好ましくは10.8質量%~14.8質量%、よりいっそう好ましくは11.2質量%~14.5質量%のエラグ酸
を含みうる。
【0064】
ザクロ抽出物は、乾燥抽出物の総質量の1質量%~5質量%、好ましくは2質量%~4.5質量%、よりいっそう好ましくは3質量%~4質量%のプニカリンを更に含んでもよい。
【0065】
有利には、質量比[エラグ酸/プニカラギン]は、0.6~1.6、より好ましくは0.7~1.3、よりいっそう好ましくは0.7~1の範囲内である。
【0066】
第1の好ましい実施形態では、ザクロ抽出物は、
乾燥抽出物の総質量の11.7質量%~14.6質量%のプニカラギン、及び
乾燥抽出物の総質量の11.2質量%~14.5質量%のエラグ酸を含んでもよく、
質量比[エラグ酸/プニカラギン]は、0.6~1.6、より好ましくは0.7~1.3、よりいっそう好ましくは0.7~1の範囲内である。
【0067】
第2の好ましい実施形態では、ザクロ抽出物は、
乾燥抽出物の総質量の11.7質量%~14.6質量%のプニカラギン、及び
乾燥抽出物の総質量の11.2質量%~14.5質量%のエラグ酸、及びiii.乾燥抽出物の総質量の3質量%~4質量%のプニカリンを含んでもよく、
質量比[エラグ酸/プニカラギン]は、0.6~1.6、より好ましくは0.7~1.3、よりいっそう好ましくは0.7~1の範囲内である。
【0068】
ザクロ抽出物は、エタノール抽出物又は乾燥抽出物の形態のいずれであってもよい。
【0069】
「乾燥抽出物」という用語は、乾燥抽出物の総質量に対して7質量%以下の溶媒、好ましくは乾燥抽出物の総質量に対して5質量%以下、より好ましくは3質量%以下の溶媒を含む抽出物を意味する。好ましい実施形態では、乾燥抽出物は、乾燥抽出物の総質量に対して1質量%以下の溶媒を含む。別の好ましい実施形態では、乾燥抽出物は、一切の溶媒を含有しない(すなわち0%)。
【0070】
「溶媒」という用語は、水性溶媒、有機溶媒、及びこれらの混合物を意味する。
【0071】
水性溶媒としては、水を挙げることができる。有機溶媒としては、アルコール溶媒、とりわけ、C2~C5の一価アルコール、例えば、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール及びこれらの混合物から選択されるものを挙げることができる。
【0072】
ザクロ抽出物の調製方法
ザクロ抽出物は、次の工程によって調製されうる:
(i)ザクロ果皮を準備する工程、
(ii)前記果皮から、少なくとも99.5%のエタノールによって、37℃~45℃の範囲内の温度で2~5時間、少なくともプニカラギン及びエラグ酸を抽出する工程、
(iii)濾過し、工程(ii)を少なくとも更に2回繰り返す工程、並びに
(iv)任意選択で、工程(iii)の最後に得た濾液を、真空下、35℃~40℃の範囲内の温度で乾燥させる工程。
【0073】
有利には、工程(ii)におけるエタノールは、0.5%未満、より好ましくは0.2%未満の水分レベルを有する。
【0074】
好ましくは、工程(i)において準備するザクロ果皮は、とりわけ、乾燥果皮粉末の総質量の1質量%~5質量%のプニカラギン、及び乾燥果皮粉末の総質量の1質量%~5質量%のエラグ酸、より好ましくは、乾燥果皮粉末の総質量の2質量%~3質量%のプニカラギン、及び乾燥果皮粉末の総質量の1質量%~4質量%のエラグ酸を含む、粉末の形態の乾燥果皮である。
【0075】
好ましい実施形態では、質量比[果皮/無水エタノール]は1:5である。
【0076】
有利には、抽出する工程(ii)の温度は、40℃~43℃の範囲内であり、より好ましくは42℃である。
【0077】
工程(iii)の濾過する工程は、当業者に周知である従来型の濾過方法、例えば、ブフナー漏斗によって行われる。
【0078】
好ましくは、乾燥させる工程(iv)の温度は、37℃~39℃の範囲内であり、より好ましくは38℃である。
【0079】
特定の実施形態では、ザクロ抽出物の調製の方法は、次の工程を含んでもよい:
(v)ザクロ果皮を準備する工程、
(vi)前記果皮から、少なくとも99.5%のエタノールによって、37℃~45℃の範囲内の温度で2~5時間、少なくともプニカラギン及びエラグ酸を抽出する工程、
(vii)濾過し、工程(vi)を少なくとも更に2回繰り返す工程、並びに
(viii)任意選択で、工程(vii)の最後に得た濾液を、真空下、35℃~40℃の範囲内の温度で乾燥させる工程。
【0080】
本発明による組成物中の(a)1種又は複数のポリフェノールの量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%以上、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、よりいっそう好ましくは0.05質量%でありうる。
【0081】
本発明による組成物中の(a)1種又は複数のポリフェノールの量は、組成物の総質量に対して、10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、よりいっそう好ましくは0.5質量%以下でありうる。
【0082】
本発明による組成物中の(a)1種又は複数のポリフェノールの量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%~10質量%、好ましくは0.005質量%~5質量%、より好ましくは0.01質量%~1質量%、よりいっそう好ましくは0.05質量%~0.5質量%以下でありうる。
【0083】
(第1のカチオン性ポリマー)
本発明による組成物は、(b)少なくとも1種の第1のカチオン性ポリマーを含む。単一のタイプの第1のカチオン性ポリマーを使用してもよく、2種以上の異なるタイプの第1のカチオン性ポリマーを組み合わせて使用してもよい。
【0084】
カチオン性ポリマーは、正の電荷密度を有しうる。(b)第1のカチオン性ポリマーの電荷密度は、0.01meq/g~20meq/g、好ましくは0.05meq/g~15meq/g、より好ましくは0.1meq/g~10meq/gでありうる。
【0085】
(b)第1のカチオン性ポリマーの分子量は、5,000~450,000、好ましくは10,000~350,000、より好ましくは50,000~250,000である。
【0086】
本明細書に別段の定義がない限り、「分子量」は数平均分子量を意味する。
【0087】
(b)第1のカチオン性ポリマーは、キトサン類から選択される。キトサン類は、キトサン、キトサンの塩、及びキトサンのグリコシドを含む。
【0088】
キトサンは周知である。キトサンは、ランダムに分布しているβ-(1→4)結合したD-グルコサミン(脱アセチル化単位)及びN-アセチル-D-グルコサミン(アセチル化単位)から構成される、直鎖状多糖類であり得る。
【0089】
キトサンのアセチル化度は、3%超~10%未満、好ましくは3質量%~8質量%、より好ましくは3質量%~5質量%でありうる。
【0090】
キトサンは、例えば、エビ又は他の甲殻類のキチン殻を、アルカリ性物質、例えば水酸化ナトリウムで処理することによって調製され得る。しかしながら、真菌に由来するキトサンは、いずれのアレルゲンも不含とすることができるため、キトサンは真菌、例えば、クロコウジカビ(Aspergillus Niger)に由来することが好ましい。したがって、(b)第1のカチオン性ポリマーは、真菌に由来することが好ましい。
【0091】
本発明による組成物中の(b)第1のカチオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%以上、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上でありうる。
【0092】
本発明による組成物中の(b)第1のカチオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下でありうる。
【0093】
本発明による組成物中の(b)第1のカチオン性ポリマー類の量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%~10質量%、好ましくは0.005質量%~5質量%、より好ましくは0.01質量%~1質量%でありうる。
【0094】
(有機化合物)
本発明による組成物は、(c)少なくとも1種の(特定の)有機化合物を含む。2種以上の特定の有機化合物を組み合わせて使用してもよい。したがって、特定の有機化合物、又は特定の有機化合物の組み合わせが使用されうる。
【0095】
(c)有機化合物は、アスコルビン酸、グルコノラクトン、グルコン酸、グリコール酸、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0096】
(c)有機化合物は、塩の形態であってもよい。「塩」という用語は、ここでは、好適な塩基類を(c)有機化合物に付加することによって形成される塩を意味し、これは、当業者に公知の方法による(c)有機化合物と塩基との反応から得ることができる。塩として、金属塩、例えば、アルカリ金属、例えばNa及びKとの塩、並びにアルカリ土類金属、例えばMg及びCaとの塩、並びにアンモニウム塩を挙げることができる。
【0097】
本発明による組成物中の(c)有機化合物類の量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%以上、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上でありうる。
【0098】
本発明による組成物中の(c)有機化合物類の量は、組成物の総質量に対して、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下でありうる。
【0099】
本発明による組成物中の(c)有機化合物類の量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%~15質量%、好ましくは0.005質量%~10質量%、より好ましくは0.01質量%~5質量%でありうる。
【0100】
(水)
本発明による組成物は、(d)水を含む。
【0101】
本発明による組成物中の(d)水の量は、組成物の総質量に対して、50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上でありうる。
【0102】
本発明による組成物中の(d)水の量は、組成物の総質量に対して、98質量%以下、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下でありうる。
【0103】
本発明による組成物中の(d)水の量は、組成物の総質量に対して、50質量%~98質量%、好ましくは60質量%~95質量%、より好ましくは70質量%~90質量%でありうる。
【0104】
(第2のカチオン性ポリマー)
本発明による組成物は、(e)少なくとも1種の第2のカチオン性ポリマーを更に含んでもよい。単一のタイプの第2のカチオン性ポリマーを使用してもよく、2種以上の異なるタイプの第2のカチオン性ポリマーを組み合わせて使用してもよい。
【0105】
カチオン性ポリマーは、正の電荷密度を有しうる。(b)第2のカチオン性ポリマーの電荷密度は、0.01meq/g~20meq/g、好ましくは0.05meq/g~15meq/g、より好ましくは0.1meq/g~10meq/gでありうる。
【0106】
(e)第2のカチオン性ポリマーの分子量は、1,000~100,000、好ましくは1,500~50,000、より好ましくは2,000~10,000でありうる。
【0107】
本明細書に別段の定義がない限り、「分子量」は数平均分子量を意味する。
【0108】
(e)第2のカチオン性ポリマーは、ポリリジン類から選択される。ポリリジン類は、ポリリジン、及びポリリジンの塩を含む。
【0109】
ポリリジンは周知である。ポリリジンは、細菌発酵によって生成されうるL-リジンの天然ホモポリマーとすることができる。例えば、ポリリジンは、食品中の天然保存料として典型的に使用されるε-ポリ-L-リジンとすることができる。
【0110】
ポリリジンは、極性溶媒、例えば水、プロピレングリコール及びグリセロールに可溶性の高分子電解質である。ポリリジンは、ポリD-リジン及びポリL-リジン等の様々な形態で市販されている。
【0111】
本発明による組成物中の(e)第2のカチオン性ポリマー類の量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上でありうる。
【0112】
本発明による組成物中の(e)第2のカチオン性ポリマー類の量は、組成物の総質量に対して、10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下でありうる。
【0113】
本発明による組成物中の(e)第2のカチオン性ポリマー類の量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%~10質量%、好ましくは0.01質量%~5質量%、より好ましくは0.1質量%~3質量%でありうる。
【0114】
(ポリオール)
本発明による組成物は、(f)少なくとも1種のポリオールを更に含んでもよい。単一のタイプのポリオールを使用してもよいが、2種以上の異なるタイプのポリオールを組み合わせて使用してもよい。
【0115】
「ポリオール」という用語は、ここでは、2つ以上のヒドロキシ基を有するアルコールを意味し、糖類又はその誘導体を包含しない。糖類の誘導体としては、糖類の1つ又は複数のカルボニル基を還元することによって得られる糖アルコール、及び1つ又は複数のヒドロキシ基中の水素原子が、少なくとも1つの置換基、例えばアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、アシル基、又はカルボニル基で置き換えられている糖類又は糖アルコールが挙げられる。
【0116】
ポリオールは、少なくとも2つのヒドロキシ基、好ましくは2~5つのヒドロキシ基を含む、C2~C12ポリオール、好ましくはC2~C9ポリオールでありうる。
【0117】
ポリオールは、天然ポリオールであっても、合成ポリオールであってもよい。ポリオールは、直鎖状、分枝状、又は環状の分子構造を有しうる。
【0118】
ポリオールは、グリセリン及びその誘導体、並びにグリコール及びその誘導体から選択されうる。ポリオールは、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ポリエチレングリコール(5~50のエチレンオキシド基)、及び糖、例えばソルビトールからなる群から選択されうる。
【0119】
(f)ポリオールとして、ジプロピレングリコールを使用することが好ましい。
【0120】
本発明による組成物中の(f)ポリオールの量は、組成物の総質量に対して、0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上でありうる。
【0121】
本発明による組成物中の(f)ポリオールの量は、組成物の総質量に対して、25質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下でありうる。
【0122】
本発明による組成物中の(f)ポリオールの量は、組成物の総質量に対して、0.1質量%~25質量%、好ましくは0.5質量%~20質量%、例えば1質量%~15質量%でありうる。
【0123】
(pH)
本発明による組成物のpHは、3.0~5.0、好ましくは3.1~4.9、より好ましくは3.2~4.8、よりいっそう好ましくは3.3~4.7、なおもよりいっそう好ましくは3.4~4.6、更により好ましくは3.5~4.5である。
【0124】
3.0~5.0のpHにおいて、(a)ポリオールを十分に可溶化することができる。
【0125】
本発明による組成物のpHは、(c)有機化合物以外の少なくとも1種のアルカリ剤及び/又は少なくとも1種の酸を添加することによって調整されてもよい。
【0126】
本発明による組成物のpHはまた、少なくとも1種の緩衝剤を添加することによって調整されてもよい。
【0127】
アルカリ剤
本発明による組成物は、少なくとも1種のアルカリ剤を含んでもよい。2種以上のアルカリ剤を組み合わせて使用してもよい。したがって、単一のタイプのアルカリ剤、又は異なるタイプのアルカリ剤の組み合わせが使用されうる。
【0128】
アルカリ剤は、無機アルカリ剤であってもよい。無機アルカリ剤は、アンモニア、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属リン酸塩及びリン酸一水素塩、例えばリン酸ナトリウム又はリン酸一水素ナトリウムからなる群から選択されることが好ましい。
【0129】
無機アルカリ金属水酸化物の例としては、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムを挙げることができる。アルカリ土類金属水酸化物の例としては、水酸化カルシウム及び水酸化マグネシウムを挙げることができる。無機アルカリ剤としては、水酸化ナトリウムが好ましい。
【0130】
アルカリ剤は、有機アルカリ剤であってもよい。有機アルカリ剤は、モノアミン及びその誘導体、ジアミン及びその誘導体、ポリアミン及びその誘導体、塩基性アミノ酸及びその誘導体、塩基性アミノ酸のオリゴマー及びその誘導体、塩基性アミノ酸のポリマー及びその誘導体、尿素及びその誘導体、並びにグアニジン及びその誘導体からなる群から選択されることが好ましい。
【0131】
有機アルカリ剤の例として、アルカノールアミン、例えばモノ-、ジ-及びトリ-エタノールアミン、並びにイソプロパノールアミン;尿素、グアニジン及びこれらの誘導体;塩基性アミノ酸、例えばリジン、オルニチン又はアルギニン;並びにジアミン、例えば下記の構造:
【0132】
【化6】
【0133】
(式中、Rは、任意選択によって置換されている、アルキレン、例えばヒドロキシル又はC1~C4アルキル基でプロピレンを示し、R1、R2、R3及びR4は、独立して、水素原子、アルキル基又はC1~C4ヒドロキシアルキル基を示す)
で記載され、1,3-プロパンジアミン及びその誘導体によって例示することができるものを挙げることができる。アルギニン、尿素、及びモノエタノールアミンが好ましい。
【0134】
アルカリ剤は、その溶解性に応じて、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%の総量で使用され得る。
【0135】

本発明による組成物は、少なくとも1種の酸を含んでもよい。2種以上の酸を組み合わせて使用してもよい。したがって、単一のタイプの酸、又は異なるタイプの酸の組み合わせが使用されうる。
【0136】
酸として、化粧料に一般に使用される任意の無機酸又は有機酸、好ましくは無機酸を挙げることができる。
【0137】
一価又は多価の酸を使用することができる。
【0138】
酸は、その溶解性に応じて、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%の総量で使用されうる。
【0139】
緩衝剤
本発明による組成物は、少なくとも1種の緩衝剤を含んでもよい。2種以上の緩衝剤を組み合わせて使用してもよい。したがって、単一のタイプの緩衝剤、又は異なるタイプの緩衝剤の組み合わせが使用されうる。
【0140】
緩衝剤として、酢酸緩衝液(例えば、酢酸+酢酸ナトリウム)、リン酸緩衝液(例えば、リン酸二水素ナトリウム+リン酸水素二ナトリウム)、クエン酸緩衝液(例えば、クエン酸+クエン酸ナトリウム)、ホウ酸緩衝液(例えば、ホウ酸+ホウ酸ナトリウム)、酒石酸緩衝液(例えば、酒石酸+酒石酸ナトリウム二水和物)、トリス緩衝液(例えば、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、及びHepes緩衝液(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)を挙げることができる。
【0141】
(任意成分)
本発明による組成物は、前述の成分に加えて、化粧品に典型的に用いられる成分、具体的には、例えば、(b)第1のカチオン性ポリマー及び(e)第2のカチオン性ポリマー以外の合成ポリマーに由来する、界面活性剤/乳化剤、親水性又は親油性増粘剤;(f)ポリオール以外の揮発性又は不揮発性有機溶媒;アニオン性ポリマー;両性ポリマー;非イオン性ポリマー;シリコーン及びシリコーン誘導体;(a)ポリフェノールを含むもの以外の、動物又は植物に由来する天然抽出物;ワックス等を、本発明の効果を損なわない範囲内で含んでもよい。
【0142】
本発明による組成物は、上記の任意成分を、組成物の総質量に対して、0.01質量%~30質量%、好ましくは0.05質量%~20質量%、より好ましくは0.1質量%~10質量%の量で含んでもよい。
【0143】
本発明による組成物中の界面活性剤/乳化剤の量は、組成物の総質量に対して、1質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下でありうる。本発明による組成物は、界面活性剤/乳化剤を含まないことが特に好ましい。
【0144】
[調製]
本発明の組成物は、上記で説明した必須成分、及び必要な場合、上記で説明した任意成分を混合することによって、調製することができる。
【0145】
上記の必須成分及び任意成分を混合する方法及び手段は、限定されない。任意の従来の方法及び手段を使用して、上記の必須成分及び任意成分を混合し、本発明による組成物を調製することができる。
【0146】
本発明による組成物を調製するために、成分(a)を成分(f)と混合して成分(a)と(f)との混合物を得て、この成分(a)と(f)との混合物を、既に別途調製してある成分(b)~(d)及び任意選択で成分(e)の混合物に加えることが好ましい。
【0147】
[化粧用組成物]
本発明による組成物は、化粧用組成物として使用されることが意図されてもよい。したがって、本発明による化粧用組成物は、ケラチン物質への塗布が意図されてもよい。ケラチン物質とは、ここでは、ケラチンを主な構成要素として含有する物質を意味し、その例としては、皮膚、頭皮、爪、唇、毛髪等が挙げられる。したがって、本発明による化粧用組成物は、ケラチン物質、特に皮膚のための美容方法に使用されることが好ましい。
【0148】
したがって、本発明による化粧用組成物は、皮膚化粧用組成物、好ましくはスキンケア組成物又は皮膚メイクアップ組成物、より好ましくはスキンケア組成物であってもよい。
【0149】
本発明による組成物は、透明な外観を有することができる。
【0150】
したがって、本発明による組成物は、化粧用組成物、好ましくは透明な化粧用組成物、より好ましくは透明な皮膚化粧用組成物でありうる。
【0151】
透明度は、濁度(例えば、濁度は、丸型セル(直径25mm×高さ60mm)、及び可視光(400nmから800nmの間、好ましくは400~500nm)を発することができるタングステンフィラメント電球を備えた2100Q(HACH社により市販されている)で測定できる)を測定することによって測定できる。測定は、無希釈組成物において行うことができる。ブランクは、蒸留水を用いて決定されうる。
【0152】
本発明による組成物は、好ましくは、200NTU未満、好ましくは150NTU未満、より好ましくは100NTU未満、よりいっそう好ましくは50NTU未満の濁度を有しうる。
【0153】
[美容方法及び美容的使用]
本発明はまた、ケラチン物質、例えば皮膚のための美容方法であって、本発明による組成物をケラチン物質に塗布する工程を含む、方法に関する。
【0154】
美容方法とは、本明細書中では、ケラチン物質、例えば皮膚の表面をケア及び/又はメイクアップするための非治療的美容方法を意味する。
【0155】
本発明はまた、
(b)5,000~450,000、好ましくは10,000~350,000、より好ましくは50,000~250,000の分子量を有し、キトサン類から選択される、少なくとも1種の第1のカチオン性ポリマー、
(c)アスコルビン酸、グルコノラクトン、グルコン酸、グリコール酸、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の有機化合物、並びに
(d)水
を含む、pHが3.0~5.0である組成物の、(a)少なくとも1種のポリフェノールを当該組成物中に可溶化するための使用に関する。
【0156】
本発明による組成物についての(a)ポリフェノール、(b)第1のカチオン性ポリマー、(c)有機化合物、及び(d)水に関する上記の説明は、本発明による使用におけるものに適用することができる。
【0157】
上記の本発明による使用によって、好ましくは1カ月以上の間、組成物を透明にすることができる。
【実施例0158】
本発明を、実施例によってより詳細に説明する。しかしながら、これらは、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきでない。
【0159】
(実施例1~4及び比較例1~7)
[調製]
実施例1~4及び比較例1~7による組成物を、表1及び表2に示す成分を混合することによって調製した。上記の調製において使用された各成分の量を表1及び表2に示す。表1及び表2に示す成分の量についての数値はすべて、原料の「質量%」に基づく。
【0160】
【表1】
【0161】
【表2】
【0162】
[評価]
(透明性)
実施例1~4による組成物及び比較例1~7による組成物の各々を、20mlの体積を有する透明なガラス瓶に注ぎ、十分に振盪した。
【0163】
5日後及び1カ月後に、実施例1~4による組成物及び比較例1~7による組成物の各々の透明性を、次の評価基準に準拠して、目視観察によって評価した。
非常に良好:組成物が透明であり、粒子が見出されなかった
良好:組成物が透明であり、非常に少量の小さな粒子が見出された
不良:組成物の一部が透明ではなかった
非常に不良:組成物が不透明であった
【0164】
結果を表1及び表2に示す。
【0165】
実施例1~4による組成物は、長期間にわたって透明であった。アスコルビン酸を含む実施例1による組成物は、より良好な透明性を示した。アスコルビン酸とポリリジンとを含む実施例4による組成物は、最も良好な透明性を示した。
【0166】
透明性は、組成物中の成分が、ポリフェノールを含めて可溶化されていることを示す。
【0167】
比較例1及び2による組成物は、pHが3.0~5.0であるという要件を満たさなかったため、不良な透明性を示した。
【0168】
比較例3及び4による組成物も、組成物中に使用したキトサンの分子量が小さすぎた又は大きすぎたため、不良な透明性を示した。
【0169】
比較例5~7による組成物も、アスコルビン酸、グルコノラクトン、又はグリコール酸を使用しなかったため、不良な透明性を示した。
【0170】
(β-カロテン退色試験)
0.05質量%の濃度を有する0.6gのβ-カロテン溶液(溶媒:カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド)と、0.2質量%の実施例1~4による組成物及び比較例1~7による組成物の各々とを混合して、混合物を得た。
【0171】
0.4gの上記の混合物を、フィルター(ガラスマイクロファイバーフィルター)に塗布した。
【0172】
上記のフィルターを、365nmの波長を有するUV光に30分間曝露して、β-カロテンを酸化した。
【0173】
β-カロテンが酸化される場合、β-カロテンに由来する当初の黄色が退色する。
【0174】
フィルターに残った黄色度を、次の評価基準に準拠して、視覚的に評価した。
非常に良好:ほぼ変化なし
良好:わずかに変化したが許容される
不良:明白な変化があり、許容されない
非常に不良:大きな変化がある
【0175】
結果を表1及び表2に示す。
【0176】
残った黄色度が強いほど、より多くのβ-カロテンが残った。これは、残った黄色度が強いほど、組成物中のポリフェノールによる抗酸化効果が大きかったことを意味する。
【0177】
実施例1~4による組成物は、良好な抗酸化効果を呈した。アスコルビン酸を含む実施例1による組成物、及びアスコルビン酸とポリリジンとを含む実施例4による組成物は、最も良好な抗酸化効果を呈した。
【0178】
比較例1及び2による組成物は、pHが3.0~5.0であるという要件を満たさなかったため、不良な抗酸化効果を呈した。
【0179】
比較例3及び4による組成物も、組成物中に使用したキトサンの分子量が小さすぎた又は大きすぎたため、不良な抗酸化効果を呈した。
【0180】
比較例5~7による組成物も、アスコルビン酸、グルコノラクトン、又はグリコール酸を使用しなかったため、不良な抗酸化効果を呈した。
【外国語明細書】