(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091313
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】レチノイド及びアスコルビン酸化合物を含む、安定な組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/04 20060101AFI20230623BHJP
A61K 8/11 20060101ALI20230623BHJP
A61K 8/67 20060101ALI20230623BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20230623BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230623BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
A61K8/04
A61K8/11
A61K8/67
A61K8/73
A61Q19/00
A61K8/92
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021205993
(22)【出願日】2021-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】池田 侑市
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】山田 幸宜
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA121
4C083AA122
4C083AB032
4C083AB051
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC302
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC471
4C083AC472
4C083AC482
4C083AC532
4C083AC662
4C083AC692
4C083AC812
4C083AC852
4C083AD092
4C083AD132
4C083AD211
4C083AD212
4C083AD301
4C083AD302
4C083AD351
4C083AD352
4C083AD392
4C083AD532
4C083AD621
4C083AD622
4C083AD632
4C083AD641
4C083AD642
4C083AD661
4C083AD662
4C083BB11
4C083BB47
4C083CC03
4C083DD14
4C083DD33
4C083DD39
4C083EE01
4C083EE03
(57)【要約】
【課題】少なくとも1種のレチノイドと、少なくとも1種のアスコルビン酸化合物との両方を含む組成物であって、安定であり、組成物の色(特に明度)の変化が低減され得る、組成物を提供することである。
【解決手段】本発明は、(1)その各々が、少なくとも1つのコア、及びコアを包囲する少なくとも1つのシェルを含む、複数のカプセルであり、コアが(a)少なくとも1種のレチノイド及び(b)少なくとも1種の油を含み、シェルが(c)少なくとも1種の多糖を含む、複数のカプセル、並びに(2)(d)少なくとも1種のアスコルビン酸化合物及び(e)水を含む水性相、を含む組成物であって、(1)カプセルが(2)水性相中に分散している、組成物に関する。本発明による組成物は安定であり、経時的な組成物の色(特に明度)の変化が低減され得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)その各々が、
少なくとも1つのコア、及び
コアを包囲する少なくとも1つのシェル
を含む、複数のカプセルであり、
コアが(a)少なくとも1種のレチノイド及び(b)少なくとも1種の油を含み、
シェルが(c)少なくとも1種の多糖を含む、複数のカプセル、
並びに
(2)(d)少なくとも1種のアスコルビン酸化合物及び(e)水を含む、水性相
を含む組成物、好ましくは化粧用組成物、より好ましくは皮膚化粧用組成物であって、
(1)カプセルが(2)水性相中に分散している、組成物。
【請求項2】
(a)レチノイドがレチノールである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
組成物中の(a)レチノイドの量が、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%の範囲内である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
(b)油が、トリグリセリド、好ましくは少なくとも1つの不飽和脂肪酸残基を有するトリグリセリド、より好ましくは少なくとも1つの多価不飽和脂肪酸残基を有するトリグリセリドから選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
(b)油が植物油から選択され、好ましくは、ダイズ油、トウモロコシ油、綿実油、ブドウ種子油、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
組成物中の(b)油の量が、組成物の総質量に対して、0.1質量%~20質量%、好ましくは0.5質量%~15質量%、より好ましくは1質量%~10質量%の範囲内である、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
(c)多糖が、寒天、アルギン酸塩、カラギーナン、及びこれらの混合物から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
組成物中の(c)多糖の量が、組成物の総質量に対して、0.001質量%~5質量%、好ましくは0.005質量%~3質量%、より好ましくは0.01質量%~1質量%の範囲内である、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
(d)アスコルビン酸化合物が、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、アスコルビン酸エステル、及びこれらの混合物から選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
組成物中の(d)アスコルビン酸化合物の量が、組成物の総質量に対して、0.1質量%~25質量%、好ましくは0.5質量%~20質量%、より好ましくは1質量%~15質量%の範囲内である、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
組成物中の(e)水の量が、組成物の総質量に対して、50質量%~90質量%、好ましくは55質量%~85質量%、より好ましくは60質量%~80質量%の範囲内である、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
コアが、(f)少なくとも1種の親油性抗酸化剤を更に含み、親油性抗酸化剤が、好ましくは生分解性親油性抗酸化剤から選択され、より好ましくは、トコフェロール、テトラ-ジ-t-ブチルヒドロキシヒドロケイ皮酸ペンタエリスリチル、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
組成物中の(f)親油性抗酸化剤の量が、組成物の総質量に対して、0.01質量%~5質量%、好ましくは0.05質量%~3質量%、より好ましくは0.1質量%~1質量%の範囲内である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
水性相が、(g)10mmの光路長を伝わる290~420nmの波長を有する光について、10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下の透過率を有する溶液を提供することができる、少なくとも1種の化合物を更に含み、溶液中の化合物の濃度が、溶液の総質量に対して0.9質量%である、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
皮膚等のケラチン物質を処置するための美容方法であって、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物をケラチン物質に塗布する工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定であり、少なくとも1種のレチノイド及び少なくとも1種のアスコルビン酸化合物を含む、組成物、好ましくは化粧用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
レチノイドは、皺への処置等のために使用されうる老化防止活性成分として機能できるため、例えば、化粧品の分野において有用であることが知られている。
【0003】
アスコルビン酸、すなわちビタミンC及びその誘導体(アスコルビン酸化合物)は、多くの有益な特性のために、一般に使用される。特に、アスコルビン酸は、結合組織の、特にコラーゲンの合成を刺激し、紫外線照射及び汚染物質等の外的な攻撃に対する皮膚組織の防御を強化し、皮膚のビタミンE欠乏を補い、皮膚の色素を除去し、フリーラジカルに対抗する役割を有する。これらの最後2つの特性によって、アスコルビン酸は、皮膚の老化に対抗するため、又は皮膚の老化を抑制するための化粧品又は皮膚科学的活性成分として、優れた候補となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】FR2370377
【特許文献2】EP0199636
【特許文献3】EP0325540
【特許文献4】EP0402072
【特許文献5】FR0853634
【特許文献6】EP-A-0955039
【特許文献7】US2004-175338
【特許文献8】EP-A-487404
【特許文献9】EP-A-425066
【特許文献10】特開平05-213736
【特許文献11】EP1374852
【特許文献12】FR2832630
【特許文献13】FR2908769
【特許文献14】FR2704754
【特許文献15】FR2877004
【特許文献16】FR2854160
【特許文献17】EP0511118
【特許文献18】WO94/11338
【特許文献19】FR2698095
【特許文献20】FR2737205
【特許文献21】EP0755925
【特許文献22】FR2825920
【特許文献23】EP-A-307,626
【特許文献24】FR-2,400,358
【特許文献25】FR-2,400,359
【特許文献26】EP-A-317542
【特許文献27】EP-A-399133
【特許文献28】EP-A-516102
【特許文献29】EP-A-509382
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】C.M. Hansenによる論文「The three dimensional solubility parameters」、J.Paint Technol.、39、105(1967年)
【非特許文献2】Meylan及びHowardによる記事:Atom/Fragment contribution method for estimating octanol-water partition coefficients、J. Pharm. Sci.、84: 83~92頁、1995年
【非特許文献3】Exploring QSAR: hydrophobic, electronic and steric constants (ACS professional reference book、1995年)
【非特許文献4】http://esc.syrres.com/interkow/kowdemo.htm
【非特許文献5】「The Flavonoids」、Harborne J. B.、Mabry T. J.、Helga Mabry、1975年、1~45頁
【非特許文献6】Changら、JOSC、第61巻、第6号、1984年6月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
レチノイドとアスコルビン酸化合物とが単一の組成物中で接触する場合、組成物が不安定化して、組成物の色(特に色の3属性の間の明度)が変化することが発見されている。
【0007】
本発明の目的は、少なくとも1種のレチノイドと、少なくとも1種のアスコルビン酸化合物との両方を含む組成物であって、安定であり、組成物の色(特に明度)の変化が低減され得る、組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記の目的は、
(1)その各々が、
少なくとも1つのコア、及び
コアを包囲する少なくとも1つのシェル
を含む、複数のカプセルであり、
コアが(a)少なくとも1種のレチノイド及び(b)少なくとも1種の油を含み、
シェルが(c)少なくとも1種の多糖を含む、複数のカプセル、
並びに
(2)(d)少なくとも1種のアスコルビン酸化合物及び(e)水を含む、水性相
を含む組成物、好ましくは化粧用組成物、より好ましくは皮膚化粧用組成物であって、
(1)カプセルが(2)水性相中に分散している、
組成物によって達成することができる。
【0009】
(a)レチノイドは、レチノールであってもよい。
【0010】
本発明による組成物中の(a)レチノイドの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%の範囲内でありうる。
【0011】
(b)油は、トリグリセリド、好ましくは少なくとも1つの不飽和脂肪酸残基を有するトリグリセリド、より好ましくは少なくとも1つの多価不飽和脂肪酸残基を有するトリグリセリドから選択されうる。
【0012】
(b)油は植物油から選択されうるが、好ましくは、ダイズ油、トウモロコシ油、綿実油、ブドウ種子油、及びこれらの混合物からなる群から選択されうる。
【0013】
本発明による組成物中の(b)油の量は、組成物の総質量に対して、0.1質量%~20質量%、好ましくは0.5質量%~15質量%、より好ましくは1質量%~10質量%の範囲内でありうる。
【0014】
(c)多糖は、寒天、アルギン酸塩、カラギーナン、及びこれらの混合物から選択されうる。
【0015】
本発明による組成物中の(c)多糖の量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%~5質量%、好ましくは0.005質量%~3質量%、より好ましくは0.01質量%~1質量%の範囲内でありうる。
【0016】
(d)アスコルビン酸化合物は、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、アスコルビン酸エステル、及びこれらの混合物から選択されうる。
【0017】
本発明による組成物中の(d)アスコルビン酸化合物の量は、組成物の総質量に対して、0.1質量%~25質量%、好ましくは0.5質量%~20質量%、より好ましくは1質量%~15質量%の範囲内でありうる。
【0018】
本発明による組成物中の(e)水の量は、組成物の総質量に対して、50質量%~90質量%、好ましくは55質量%~85質量%、より好ましくは60質量%~80質量%の範囲内でありうる。
【0019】
コアは、(f)少なくとも1種の親油性抗酸化剤を更に含んでもよく、親油性抗酸化剤は、好ましくは生分解性親油性抗酸化剤から選択され、より好ましくは、トコフェロール、テトラ-ジ-t-ブチルヒドロキシヒドロケイ皮酸ペンタエリスリチル、及びこれらの混合物からなる群から選択されうる。
【0020】
補正請求項による組成物中の(f)親油性抗酸化剤の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~5質量%、好ましくは0.05質量%~3質量%、より好ましくは0.1質量%~1質量%の範囲内でありうる。
【0021】
水性相は、(g)10mmの光路長を伝わる290~420nmの波長を有する光について、10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下の透過率を有する溶液を提供することができる、少なくとも1種の化合物を更に含んでもよく、溶液中の化合物の濃度は、溶液の総質量に対して0.9質量%である。
【0022】
本発明はまた、皮膚等のケラチン物質を処置するための美容方法であって、本発明による組成物をケラチン物質に塗布する工程を含む、方法にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
鋭意検討の結果、本発明者は、少なくとも1種のレチノイドと、少なくとも1種のアスコルビン酸化合物との両方を含む組成物であって、安定であり、組成物の色(特に明度)の変化が低減され得る、組成物を提供できることを発見した。
【0024】
本発明による組成物は、レチノイドをカプセルに封入し、カプセル中には存在しないアスコルビン酸化合物が、カプセル中のレチノイドと接触しづらくすることによって、単一組成物中のレチノイドとアスコルビン酸化合物とを分離することを特徴としうる。
【0025】
本発明において、単一組成物中のレチノイドとアスコルビン酸化合物との間の接触が限定されるため、レチノイドとアスコルビン酸化合物との接触によって生じる組成物の不安定化(例えば、色、特に明度の変化)を低減することができる。
【0026】
したがって、本発明による組成物は安定であり、経時的な組成物の色(特に明度)の変化が低減され得る。
【0027】
本発明によれば、カプセルはレチノイドだけでなく油も含み、カプセルは、アスコルビン酸化合物及び水を含む水性相中に分散している。そのため、本発明による組成物は、O/Wタイプの形態とすることができる。
【0028】
本発明による組成物は安定である、すなわち、経時的な組成物の色(特に明度)の変化が低減され得る、本発明による組成物は、長期にわたって保存することができる。
【0029】
本発明による組成物は、少なくとも、組成物中に含まれるレチノイド及びアスコルビン酸化合物に基づいて、美容効果を提供することができる。
【0030】
本発明による組成物は、組成物中のレチノイド及びアスコルビン酸化合物に基づいて、経時的に安定な美容効果、例えば、老化防止(例えば、皺の減少)、皮膚の白色化、皮膚のくすみの改善、及び皮膚の滑らかさの改善を提供することができる。
【0031】
本発明による組成物は、多量のレチノイド及び多量のアスコルビン酸化合物を含むことができる。そのため、本発明による組成物は、多量のレチノイドと多量のアスコルビン酸化合物との組み合わせによる、増強された美容効果、及び場合により、相乗的な美容効果を提供することができる。
【0032】
以下に、本発明による組成物を、より詳細に説明する。
【0033】
[レチノイド]
本発明による組成物は、(a)少なくとも1種のレチノイドを含む。2種以上のレチノイドを組み合わせて使用してもよい。したがって、単一のタイプのレチノイドを使用しても、異なるタイプのレチノイドの組み合わせを使用してもよい。
【0034】
(a)レチノイドは、レチノール(ビタミンA)、レチナール(ビタミンAアルデヒド)、レチノイン酸(ビタミンA酸)、又はレチノールとC2~20酸とのエステル、例えば、レチノールのプロピオン酸エステル、酢酸エステル、リノール酸エステル、又はパルミチン酸エステル(パルミチン酸レチニル)であってもよい。
【0035】
(a)レチノイドの中でも、レチノール、レチナール、レチノイン酸、特に全トランスレチノイン酸及び13-シスレチノイン酸、レチノール誘導体、例えば、酢酸レチニル、プロピオン酸レチニル、又はパルミチン酸レチニル、並びに次の特許出願:FR2370377、EP0199636、EP0325540、及びEP0402072に記載されているレチノイドを挙げることができる。
【0036】
本発明の好ましい一実施形態によれば、(a)レチノイドは、レチノール又はプロレチノールである。
【0037】
「レチノール」という用語は、レチノールのすべての異性体、すなわち、全トランスレチノール、13-シスレチノール、11-シスレチノール、9-シスレチノール、及び3,4-ジデヒドロレチノールを意味することが意図される。
【0038】
プロレチノールの代表として、パルミチン酸レチニルを挙げることができる。
【0039】
(a)レチノイドは、レチノールであることが好ましい。
【0040】
本発明による組成物中の(a)レチノイドの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上でありうる。
【0041】
或いは、本発明による組成物中の(a)レチノイドの量は、組成物の総質量に対して、0.5質量%以上、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上でありうる。
【0042】
その一方で、本発明による組成物中の(a)レチノイドの量は、組成物の総質量に対して、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下でありうる。
【0043】
本発明による組成物中の(a)レチノイドの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%の範囲内でありうる。
【0044】
或いは、本発明による組成物中の(a)レチノイドの量は、組成物の総質量に対して、0.5質量%~15質量%、好ましくは1.0質量%~10質量%、より好ましくは1.5質量%~5質量%の範囲内でありうる。
【0045】
[油]
本発明による組成物は、(b)少なくとも1種の油を含む。2種以上の油を組み合わせて使用してもよい。したがって、単一のタイプの油を使用しても、異なるタイプの油の組み合わせを使用してもよい。
【0046】
ここでは、「油」は、大気圧(760mmHg)下、室温(25℃)において、液体又はペースト(非固体)の形態である脂肪化合物又は脂肪物質を意味する。油として、化粧品において一般に使用されるものを、単独で、又はそれらの組み合わせで使用することができる。これらの油は、揮発性であっても、不揮発性であってもよい。
【0047】
(a)レチノイドは、(b)油に可溶性であることが好ましい。言い換えれば、その中に(a)レチノイドが可溶性である(b)油を使用することが好ましい。
【0048】
(b)油は、極性油から選択しても、非極性油から選択してもよい。
【0049】
「極性油」という用語は、ここでは、25℃において、分散相互作用に特徴的な溶解度パラメータδdが16を超え、極性相互作用に特徴的な溶解度パラメータδpが厳密に0を超える任意の親油性化合物を意味する。溶解度パラメータδd及びδpは、ハンセン分類に従って定義される。
【0050】
ハンセンの3次元溶解度空間における溶解度パラメータの定義及び計算は、C.M. Hansenによる論文「The three dimensional solubility parameters」、J.Paint Technol.、39、105(1967年)に記載されている。
【0051】
このハンセン空間によれば、
δDは、分子の衝突中に誘起される双極子の形成から生じるロンドン分散力を特徴づけ、
δpは、永久双極子間のデバイ相互作用力、更に誘起双極子と永久双極子との間のケーソム相互作用力を特徴づけ、
δhは、特定の相互作用力(例えば、水素結合、酸/塩基、ドナー/アクセプター等)を特徴づけ、
δaは、δa=(δp
2+δh
1)1/2の等式によって決定される。パラメータδp、δh、δd、及びδaは、(J/cm3)1/2で表される。
【0052】
極性油は、植物油又は動物油、例えば、トリグリセリド、エステル油、エーテル油、及びこれらの混合物からなる群から、より好ましくは、エステル油、エーテル油、及びこれらの混合物からなる群から、より一層好ましくはエステル油から選択されることが好ましい場合がある。
【0053】
極性油は、とりわけ、次の油から選択されうる;
- 炭化水素系極性油、例えばフィトステアリルエステル、例えば、オレイン酸フィトステアリル、イソステアリン酸フィトステアリル、及びグルタミン酸ラウロイル/オクチルドデシル/フィトステアリル(味の素株式会社、Eldew PS203)、グリセロールの脂肪酸エステルからなるトリグリセリド(特にその脂肪酸がC4~C36、とりわけC18~C36の範囲内の鎖長を有しうるものであってもよく、これらの油は場合により、直鎖状若しくは分枝状であり、飽和若しくは不飽和であり;これらの油は、とりわけ、ヘプタン酸若しくはオクタン酸トリグリセリドであってもよい)、小麦胚芽油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、ゴマ種子油(820.6g/mol)、トウモロコシ油、アプリコット油、ヒマシ油、シア油、アボカド油、オリーブ油、ダイズ油、スイートアーモンド油、ヤシ油、ナタネ油、綿実油、ヘーゼルナッツ油、マカダミア油、ホホバ油、アルファルファ油、ケシ油、パンプキン油、ペポカボチャ油、クロスグリ油、月見草油、キビ油、オオムギ油、キノア油、ライムギ油、ベニバナ油、ククイ油、パッションフラワー油、又はマスクローズ油;シアバター;或いはカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、例えばStearineries Dubois社により販売されているもの又はDynamit Nobel社によりMiglyol810(登録商標)、812(登録商標)及び818(登録商標)の名称で販売されているもの;
- 10~40個の炭素原子を含有する合成エーテル、例えばジカプリリルエーテル;
- 式RCOOR'(式中、RCOOは2~40個の炭素原子を含むカルボン酸残基を表し、R'は1~40個の炭素原子を含有する炭化水素系鎖を表す)の炭化水素系エステル、例えばオクタン酸セトステアリル、イソプロピルアルコールエステル、例えばミリスチン酸イソプロピル又はパルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチル、ステアリン酸若しくはイソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソステアリル、ステアリン酸オクチル、アジピン酸ジイソプロピル、ヘプタン酸エステル、とりわけヘプタン酸イソステアリル、アルコール若しくはポリアルコールのオクタン酸エステル、デカン酸エステル若しくはリシノール酸エステル、例えばジオクタン酸プロピレングリコール、オクタン酸セチル、オクタン酸トリデシル、4-ジヘプタン酸2-エチルヘキシル及びパルミチン酸2-エチルヘキシル、安息香酸アルキル、ジヘプタン酸ポリエチレングリコール、2-ジエチルヘキサン酸プロピレングリコール、並びにこれらの混合物、安息香酸C12~C15アルコール、ラウリン酸ヘキシル、ネオペンタン酸エステル、例えばネオペンタン酸イソデシル、ネオペンタン酸イソトリデシル、ネオペンタン酸イソステアリル及びネオペンタン酸2-オクチルドデシル、イソノナン酸エステル、例えばイソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル及びイソノナン酸オクチル、エルカ酸オレイル、ラウロイルサルコシンイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、ステアリン酸イソセチル、ネオペンタン酸イソデシル、ベヘン酸イソステアリル、並びにミリスチン酸ミリスチル;
- 不飽和脂肪酸二量体及び/又は三量体とジオールとの縮合により得られるポリエステル、例えば特許出願FR0853634に記載されているもの、特に、例えばジリノール酸と1,4-ブタンジオールとの縮合により得られるポリエステル。この点に関しては、とりわけ、Biosynthis社によりViscoplast 14436H(INCI名:ジリノール酸/ブタンジオールコポリマー)の名称で販売されているポリマー、又は他にはポリオールと二量体二酸とのコポリマー及びそのエステル、例えばHailuscent ISDAを挙げることができる;
- ポリオールエステル及びペンタエリスリトールエステル、例えばテトラヒドロキシステアリン酸/テトライソステアリン酸ジペンタエリスリチル;
- 12~26個の炭素原子を含有する脂肪族アルコール、例えば、オクチルドデカノール、2-ブチルオクタノール、2-ヘキシルデカノール、2-ウンデシルペンタデカノール、及びオレイルアルコール;
- C12~C22高級脂肪酸、例えば、オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸、並びにこれらの混合物;
- 12~26個の炭素原子を含有する脂肪酸、例えばオレイン酸;
- 2つのアルキル鎖が場合により同一である又は異なる、炭酸ジアルキル、例えば、Cognis社によりCetiol CC(登録商標)の名称で販売されている炭酸ジカプリリル;並びに
- 高分子量の、例えば400から10000g/molの間の、特に650から10000g/molの間の不揮発性油、例えば:
i)ビニルピロリドンコポリマー、例えばビニルピロリドン/1-ヘキサデセンコポリマー、ISP社により販売又は製造されているAntaron V-216(MW = 7300g/mol)、
ii)エステル、例えば:
a)35~70個の範囲内の合計炭素数を有する直鎖状脂肪酸エステル、例えばテトラペラルゴン酸ペンタエリスリチル(MW = 697.05g/mol)、
b)ヒドロキシル化エステル、例えばトリイソステアリン酸ポリグリセロール-2(MW = 965.58g/mol)、
c)芳香族エステル、例えばトリメリト酸トリデシル(MW = 757.19g/mol)、C12~C15アルコール安息香酸エステル、安息香酸の2-フェニルエチルエステル及びサリチル酸ブチルオクチル、
d)C24~C28分枝状脂肪酸又は脂肪族アルコールのエステル、例えば、特許出願EP-A-0955039に記載されているもの、とりわけ、クエン酸トリイソアラキジル(MW = 1033.76g/mol)、テトライソノナン酸ペンタエリスリチル(MW = 697.05g/mol)、トリイソステアリン酸グリセリル(MW = 891.51g/mol)、トリス(2-デシル)テトラデカン酸グリセリル(MW = 1143.98g/mol)、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル(MW = 1202.02g/mol)、テトライソステアリン酸ポリグリセリル-2(MW = 1232.04g/mol)又は他にはテトラキス(2-デシル)テトラデカン酸ペンタエリスリチル(MW = 1538.66g/mol)、
e)二量体ジオールとモノカルボン酸又はジカルボン酸とのエステル及びポリエステル、例えば、二量体ジオールと脂肪酸とのエステル及び二量体ジオールと二量体ジカルボン酸とのエステル、例えば、日本精化株式会社により販売されており、参照によりその内容が本出願に組み込まれる特許出願US2004-175338に記載されている、Lusplan DD-DA5(登録商標)及びLusplan DD-DA7(登録商標)、
- 並びにこれらの混合物。
【0054】
「極性炭化水素系油」という用語は、ここでは、炭素原子及び水素原子、並びに任意選択で酸素原子及び窒素原子から本質的に形成されている、又は更にはこれらによって構成されているが、ケイ素原子もフッ素原子も一切含有しない極性油を意味する。これは、アルコール基、エステル基、エーテル基、カルボン酸基、アミン基及び/又はアミド基を含有してもよい。
【0055】
(b)油は、7.0以下、より好ましくは6.5以下、より一層好ましくは6.0以下のlog P値を有することが好ましい。(b)油は、1.0以上、より好ましくは1.5以上、より一層好ましくは2.0以上のlog P値を有することが好ましいこともある。したがって、(b)油は、1.0~7.0、より好ましくは1.5~6.5、より一層好ましくは2.0~6.0のlog P値を有することが好ましいこともある。
【0056】
log P値とは、オクタン-1-オール/水の見掛け分配係数の10を底とする対数の値である。log P値は公知であり、オクタン-1-オール及び水の中の、(b)油の濃度を決定する標準試験によって決定される。log Pは、Meylan及びHowardによる記事:Atom/Fragment contribution method for estimating octanol-water partition coefficients、J. Pharm. Sci.、84: 83~92頁、1995年に記載されている方法に従って計算することができる。この値は、log Pを分子構造の関数として決定する、多数の市販のソフトウェアパッケージを使用して計算することもできる。例として、米国環境庁製のEpiwinソフトウェアを挙げることができる。
【0057】
この値は、とりわけ、ACD(Advanced Chemistry Development) SolarisソフトウェアV4.67を使用して計算することができ;この値はまた、Exploring QSAR: hydrophobic, electronic and steric constants (ACS professional reference book、1995年)から得ることもできる。概算値を提供しているインターネットサイトもある(アドレス:http://esc.syrres.com/interkow/kowdemo.htm)。
【0058】
(b)油は、アミド結合、エステル結合、及びこれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも2つの部分を有してもよい。アミド結合は、ここでは-CONR-(Rは、水素原子、又は直鎖状若しくは分枝状C1~C18アルキル基、好ましくはメチル基を表す)を意味し、エステル結合は、ここでは-COO-を意味する。言い換えれば、(b)油は、2つ以上のアミド結合、2つ以上のエステル結合、又は少なくとも1つのアミド結合と少なくとも1つのエステル結合との混合物を有してもよい。
【0059】
(b)油は、エーテル結合、エステル結合、及びこれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも2つの部分を有してもよい。エーテル結合は、ここでは-O-を意味し、エステル結合は、ここでは-COO-を意味する。言い換えれば、(b)油は、2つ以上のエーテル結合、2つ以上のエステル結合、又は少なくとも1つのエーテル結合と少なくとも1つのエステル結合との混合物を有してもよい。
【0060】
(b)油は、ラウロイルサルコシンイソプロピル、オクチルドデカノール、及びこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましいこともある。
【0061】
その一方で、非極性油の例として、スクアランを挙げることができる。
【0062】
(b)油は、トリグリセリドから選択してもよい。トリグリセリドは、グリセロールと3つの脂肪酸とから誘導されるエステルであり、トリアシルグリセロールと呼ばれることもある。
【0063】
(b)油のためのトリグリセリドは、少なくとも1つの不飽和脂肪酸残基を有することが好ましい。言い換えれば、(b)油のためのトリグリセリドは、グリセロールと、少なくとも1つの不飽和脂肪酸とから誘導されるエステルであることが好ましい。したがって、(b)油のためのトリグリセリドは、(i)グリセロールと、1つの不飽和脂肪酸及び2つの飽和脂肪酸から誘導されるエステル、(ii)グリセロールと、2つの不飽和脂肪酸及び1つの飽和脂肪酸から誘導されるエステル、又は(iii)グリセロールと、3つの不飽和脂肪酸から誘導されるエステルでありうる。2つ以上の不飽和脂肪酸が使用される場合、それらは同じであっても異なってもよい。2つの飽和脂肪酸が使用される場合、それらは同じであっても異なってもよい。
【0064】
本発明によれば、「不飽和脂肪酸」とは、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合又は三重結合を含む脂肪酸を意味する。これらは、より特定的には、長鎖を有する脂肪酸であり、すなわち、8~32個の炭素原子、好ましくは12~26個の炭素原子、より好ましくは14~22個の炭素原子を有することができる。
【0065】
脂肪酸は、一不飽和、例えば、ペトロセリン酸(C12)、パルミトレイン酸(C16)、及びオレイン酸(C18)であってもよく、又は多価不飽和、すなわち、少なくとも2つの炭素-炭素二重結合を提示するもの、例えば、リノール酸(C18)及びリノレン酸(C18)であってもよい。
【0066】
(b)油のためのトリグリセリドは、少なくとも1つの多価不飽和脂肪酸残基を有することがより好ましい。言い換えれば、(b)油のためのトリグリセリドは、グリセロールと、少なくとも1つの多価不飽和脂肪酸とから誘導されるエステルであることがより好ましい。
【0067】
多価不飽和脂肪酸は、末端メチル基に最も近い不飽和位によって特徴づけられる、ω-3、ω-6、及びω-9脂肪酸から選択されうる。
【0068】
18から22個の間の炭素原子を含む多価不飽和脂肪酸、特にω-3及びω-6脂肪酸から選択されるものは、より好ましいことがある。
【0069】
ω-3系列の多価不飽和脂肪酸の中でも、α-リノレン酸(18:3、ω-3)、ステアリドン酸(18:4、ω-3)、5,8,11,14,17-エイコサペンタエン酸、すなわちEPA(20:5、ω-3)、及び4,7,10,13,16,19-ドコサヘキサエン酸、すなわちDHA(22:6、ω-3)、ドコサペンタエン酸(22:5、ω-3)、及びn-ブチル-5,11,14-エイコサトリエン酸を挙げることができる。
【0070】
ω-6系列の多価不飽和脂肪酸の中でも、18個の炭素原子と2つの不飽和を有するリノレン酸(18:2、ω-6)、18個の炭素原子と3つの不飽和を有するγ-リノレン酸(18:3、ω-6)、20個の炭素原子と3つの不飽和を有するジホモガンマリノレン酸(20:3、ω-6)、アラキドン酸、すなわち5,8,11,14エイコサテトラエン酸(20:4、ω-6)、及びドコサテトラエン酸(22:4、ω-6)を挙げることができる。
【0071】
ω-9脂肪酸としては、ミード酸(20:3、ω-9)を挙げることができる。
【0072】
多価不飽和脂肪酸は、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、ステアリドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、これらの混合物から選択されうる。
【0073】
(b)油のためのトリグリセリド中の脂肪酸残基を形成する脂肪酸の中で、多価不飽和脂肪酸の量は、脂肪酸の総質量に対して、10質量%以上、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上でありうる。
【0074】
(b)油のためのトリグリセリド中の脂肪酸残基を形成する脂肪酸の中で、多価不飽和脂肪酸の量/一不飽和脂肪酸の量の質量比は、1.0超、好ましくは1.5超、より好ましくは2.0超でありうる。
【0075】
(b)油は、植物油から選択されうる。
【0076】
例えば、(b)油は、ダイズ油、ナタネ油、綿実油、コメ油、トウモロコシ油、ブドウ種子油、ゴマ油、亜麻仁油、及びこれらの混合物からなる群から選択されうる。
【0077】
(b)油は、ダイズ油、トウモロコシ油、綿実油、ブドウ種子油、及びこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。
【0078】
本発明による組成物中の(b)油の量は、組成物の総質量に対して、0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上でありうる。
【0079】
その一方で、本発明による組成物中の(b)油の量は、組成物の総質量に対して、20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下でありうる。
【0080】
本発明による組成物中の(b)油の量は、組成物の総質量に対して、0.1質量%~20質量%、好ましくは0.5質量%~15質量%、より好ましくは1質量%~10質量%の範囲内でありうる。
【0081】
(b)油は、本発明による組成物の脂肪相を形成することができる。(b)油は、本発明による組成物中の分散脂肪相を形成することができる。
【0082】
[多糖]
本発明による組成物は、(c)少なくとも1種の多糖を含む。単一のタイプの多糖を使用してもよいが、2種以上の異なるタイプの多糖を組み合わせて使用してもよい。
【0083】
(c)多糖は、植物に由来する多糖から選択されることが好ましい。言い換えれば、(c)多糖は、植物起源のものであることが好ましい。
【0084】
その一方で、(c)多糖はまた、セルロース及びその誘導体から選択されないことが好ましい。
【0085】
本発明によれば、「植物に由来する多糖」という用語は、とりわけ、植物界(植物又は藻類)から得られる多糖を意味するが、これは生物工学によって得られる多糖に対するものであり、後者の場合、例えばキサンタンガムについては、とりわけ、細菌キサントモナス・キャンペストリス(Xanthomonas campestris)の発酵によって生成される。
【0086】
本発明によって使用されうる植物起源の多糖の例として、とりわけ、以下のものを挙げることができる:
a)藻類抽出物、例えば、アルギン酸塩、カラギーナン及び寒天、並びにこれらの混合物。挙げることができるカラギーナンの例には、Degussa社製のSatiagum UTC30(登録商標)及びUTC10(登録商標)が含まれ;挙げることができるアルギン酸塩は、ISP社によりKelcosol(登録商標)の名称で販売されているアルギン酸ナトリウムである;
b)ガム、例えば、グアーガム及びその非イオン性誘導体(ヒドロキシプロピルグアー)、アラビアガム、コンニャクガム若しくはマンナンガム、トラガカントガム、ガティガム、カラヤガム、又はローカストビーンガム;挙げることができる例には、Rhodia社によりJaguar HP105(登録商標)の名称で販売されているグアーガム;GfN社により販売されているマンナン及びkonjac gum(登録商標)(1%グルコノマンナン)が含まれる;
c)化工デンプン又は非化工デンプン、例えば、禾穀類、例えばコムギ、トウモロコシ又はイネから得られるもの、マメ科植物、例えばブロンドピー(blonde pea)から得られるもの、塊茎、例えばジャガイモ又はキャッサバから得られるもの、及びタピオカデンプン等;デキストリン、例えばトウモロコシデキストリン;とりわけ挙げることができる例には、Remy社により販売されているコメデンプンRemy DR I(登録商標);Roquette社製のcorn starch B(登録商標);2-クロロエチルアミノジプロピオン酸によって変性され、水酸化ナトリウムによって中和された、National Starch社によりStructure Solanace(登録商標)の名称で販売されているジャガイモデンプン;National Starch社によりTapioca pure(登録商標)の名称で販売されている天然タピオカデンプン粉末が含まれる;
d)デキストリン、例えばトウモロコシから抽出された、National Starch社製のIndex(登録商標)という名称のデキストリン;並びに
これらの混合物。
【0087】
好ましくは、(c)多糖は、藻類抽出物から選択される。
【0088】
藻類抽出物は、アルギン酸塩、カラギーナン及び寒天、並びにこれらの混合物から選択されうる。好ましくは、アルギン酸塩若しくは寒天、又はこれらの混合物が使用されうる。
【0089】
本発明による組成物中の(c)多糖の量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%以上、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上でありうる。
【0090】
その一方で、本発明による組成物中の(c)多糖の量は、組成物の総質量に対して、5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下でありうる。
【0091】
本発明による組成物中の(c)多糖の量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%~5質量%、好ましくは0.005質量%~3質量%、より好ましくは0.01質量%~1質量%の範囲内でありうる。
【0092】
[アスコルビン酸化合物]
本発明による組成物は、(d)少なくとも1種のアスコルビン酸化合物を含む。単一のタイプのアスコルビン酸化合物を使用してもよいが、2種以上の異なるタイプのアスコルビン酸化合物を組み合わせて使用してもよい。
【0093】
「アスコルビン酸化合物」という用語は、ここでは、アスコルビン酸、すなわちビタミンC、及びその誘導体を包含する。
【0094】
アスコルビン酸は、天然生成物から抽出される場合、必須ではないが、一般にL体である。
【0095】
アスコルビン酸の誘導体は、アスコルビン酸の塩、例えば、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム、及びアスコルビン酸カルシウムであってもよい。
【0096】
光、熱及び水性媒体等のある特定の環境パラメータに非常に高感度となる化学的構造(α-ケトラクトン)のために、アスコルビン酸誘導体は、アスコルビン酸の糖エステル又はリン酸化アスコルビン酸の金属塩の形態において使用することが有利でありうる。
【0097】
本発明に使用されうるアスコルビン酸の糖エステルは、とりわけ、アスコルビン酸のグリコシル、マンノシル、フルクトシル、フコシル、ガラクトシル、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルムラミン酸誘導体、及びこれらの混合物、より特定的には、アスコルビル-2グルコシド、又はL-アスコルビン酸の2-O-α-Dグルコピラノシル、又はL-アスコルビン酸の6-O-Dガラクトピラノシルである。後半の化合物及びこれらを調製するための方法は、特に、文献EP-A-487404、EP-A-425066及び特開平05-213736に記載されている。
【0098】
この部分について、リン酸化アスコルビン酸の金属塩は、リン酸アスコルビルアルカリ金属塩、リン酸アスコルビルアルカリ土類金属塩、及びリン酸アスコルビル遷移金属塩から選択されうる。
【0099】
アスコルビン酸の誘導体は、アスコルビン酸又はリン酸化アスコルビン酸の塩、とりわけ、アスコルビン酸ナトリウム、リン酸アスコルビルナトリウム若しくはリン酸アスコルビルマグネシウム、アスコルビン酸の酢酸エステル、又は糖(saccharide)エステル及びとりわけグリコシルアスコルビン酸等を含む、アスコルビン酸の糖(sugar)エステル等から選択されることが好ましいことがある。
【0100】
必要な場合、アスコルビン酸の酸化に対する安定化は、特許出願EP1374852に記載されているようにアスコルビン酸を無水マレイン酸誘導体と組み合わせることによって、又は特許出願FR2832630に記載されているようにイミダゾールポリマーと組み合わせることによって得られうる。
【0101】
(d)アスコルビン酸化合物は、親油性又は油溶性ではなく、親水性又は水溶性である。したがって、(d)アスコルビン酸化合物は、アスコルビン酸の脂肪酸エステル、例えば、パルミチン酸アスコルビル、イソパルミチン酸アスコルビル、及びステアリン酸アスコルビルではないことが好ましい。
【0102】
(d)アスコルビン酸化合物として、アスコルビン酸を使用することが好ましい。
【0103】
本発明による組成物中の(d)アスコルビン酸化合物の量は、組成物の総質量に対して、0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上でありうる。
【0104】
或いは、本発明による組成物中の(d)アスコルビン酸化合物の量は、組成物の総質量に対して、3質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上でありうる。
【0105】
その一方で、本発明による組成物中の(d)アスコルビン酸化合物の量は、組成物の総質量に対して、25質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下でありうる。
【0106】
本発明による組成物中の(d)アスコルビン酸化合物の量は、組成物の総質量に対して、0.1質量%~25質量%、好ましくは0.5質量%~20質量%、より好ましくは1質量%~15質量%の範囲内でありうる。
【0107】
或いは、本発明による組成物中の(d)アスコルビン酸化合物の量は、組成物の総質量に対して、3質量%~25質量%、好ましくは5質量%~20質量%、より好ましくは10質量%~15質量%の範囲内でありうる。
【0108】
[水]
本発明による組成物は、(e)水を含む。
【0109】
(e)水は、本発明による組成物の水性相、好ましくは連続水性相を形成することができる。
【0110】
本発明による組成物中の(e)水の量は、組成物の総質量に対して、50質量%以上、好ましくは55質量%以上、より好ましくは60質量%以上でありうる。
【0111】
その一方で、本発明による組成物中の(e)水の量は、組成物の総質量に対して、90質量%以下、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下であってもよい。
【0112】
本発明による組成物中の(e)水の量は、組成物の総質量に対して、50質量%~90質量%、好ましくは55質量%~85質量%、より好ましくは60質量%~80質量%の範囲内でありうる。
【0113】
[親油性抗酸化剤]
本発明による組成物は、(f)少なくとも1種の親油性抗酸化剤を含んでもよい。単一のタイプの親油性抗酸化剤を使用してもよいが、2種以上の異なるタイプの親油性抗酸化剤を組み合わせて使用してもよい。
【0114】
本発明によれば、抗酸化剤は、皮膚中に存在しうる様々なラジカル形態を除去することができる化合物又は物質であり;好ましくはそれらは、存在する様々なラジカル形態のすべてを同時に除去する。
【0115】
(f)親油性抗酸化剤は、(a)レチノイドとは異なる。
【0116】
(f)親油性抗酸化剤は、n-ブタノールと水との間の抗酸化剤の分配係数が、>1、より好ましくは>10、より一層好ましくは>100であることを意味する。
【0117】
(f)親油性抗酸化剤として、分子内にヒンダードフェノール構造又はセミヒンダードフェノール構造を有するフェノール性抗酸化剤を挙げることができる。このような化合物の具体例として、
3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシベンゼンプロパン酸(INCI名テトラ-ジ-t-ブチルヒドロキシヒドロケイ皮酸ペンタエリスリチルを有する)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、モノ-又はジ-又はトリ-(α-メチルベンジル)フェノール、2,2'-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4'-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-tert-アミルヒドロキノン、トリス[N-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)]イソシアヌレート、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、ブチリデン-1,1ビス[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート]、オクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナト]メタン、トリエチレングリコールビス[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート]、3,9-ビス{2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,2-チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N'-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナミド)、1,6-ヘキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5-トリス[(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-キシリル)メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン、2,4-ビス(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、2-tert-ブチル-6-(3'-tert-ブチル-5'-メチル-2'-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート、4,6-ビス[(オクチルチオ)メチル]-o-クレゾール、2,4-ジ-tert-ブチルフェニル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート及び1,6-ヘキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を挙げることができる。
【0118】
(f)親油性抗酸化剤として、以下のものも挙げることができる: BHA(ブチル化ヒドロキシルアニソール)並びにBHT(ブチル化ヒドロキシルトルエン)、ビタミンE(すなわちトコフェロール及びトコトリエノール)並びにその誘導体、例えばホスフェート誘導体、例えば、昭和電工株式会社により販売されているTPNA(登録商標)、コエンザイムQ10(すなわちユビキノン)、イデベノン、ある特定のカロテノイド、例えばルテイン、アスタキサンチン、ベータカロテン、フェノール酸及び誘導体(例えばクロロゲン酸)。
【0119】
同様に挙げることができる(f)親油性抗酸化剤には、ジチオラン、例えばアスパラガス酸又はその誘導体、例えば珪質のジチオラン誘導体、とりわけ、例えば特許出願FR2908769に記載されているものが含まれる。
【0120】
同様に挙げることができる(f)親油性抗酸化剤には、以下のものが含まれる:
グルタチオン及びその誘導体(GSH及び/又はGSHOEt)、例えばグルタチオンアルキルエステル(例えば特許出願FR2704754及びFR2908769に記載されているもの);
システイン及びその誘導体、例えばN-アセチルシステイン又はL-2-オキソチアゾリジン-4-カルボン酸。以下のものも言及することができる:特許出願FR2877004及びFR2854160に記載されているシステイン誘導体;
酸化ストレスに対して保護するためのある特定の酵素、例えばカタラーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、ラクトペルオキシダーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ及びキノンレダクターゼ;
ベンジルシクラノン;置換ナフタレノン;ピドレート(とりわけ特許出願EP0511118に記載されているもの);コーヒー酸及びその誘導体、ガンマオリザノール;メラトニン、スルホラファン及びそれを含有する抽出物(クレソンを除く);
とりわけ特許出願WO94/11338、FR2698095、FR2737205又はEP0755925に記載されている、N,N'-ビス(ベンジル)エチレンジアミン-N,N'-二酢酸のジイソプロピルエステル;
特許出願FR2825920に記載されている、デフェロキサミン(すなわちデスフェラール)。
【0121】
同様に使用することができる(f)親油性抗酸化剤は、カルコン、より詳細にはフロレチン又はネオヘスペリジン、N,N'-ビス(ベンジル)エチレンジアミン-N,N'-二酢酸のジイソプロピルエステル、又はPYCNOGENOL(登録商標)等のフランスカイガンショウ樹皮の抽出物である。
【0122】
(f)親油性抗酸化剤の例として、テトラ-ジ-t-ブチルヒドロキシヒドロケイ皮酸ペンタエリスリチル、ノルジヒドログアイアレチン酸、トコフェロール、レスベラトロール、没食子酸プロピル、ブチル化ヒドロキシルトルエン、ブチル化ヒドロキシルアニソール、パルミチン酸アスコルビル、トコフェロール、及びこれらの混合物も挙げることができる。
【0123】
(f)親油性抗酸化剤は、生分解性であることが好ましい。この意味において、生分解性ではないBHTは、(f)親油性抗酸化剤として好ましくない。したがって、BHTを(f)親油性抗酸化剤として使用しないことが好ましい。更に、本発明による組成物は、BHTフリーであることが好ましい。
【0124】
「フリー」という用語は、ここでは、本発明による組成物が、限定的な量のBHTを含有してもよいことを意味する。しかしながら、BHTの量は、組成物の総質量に対して、1質量%未満、より好ましくは0.1質量%未満、より一層好ましくは0.01質量%未満であるように限定されることが好ましい。本発明による組成物は、BHTを含まないことが最も好ましい。
【0125】
(f)親油性抗酸化剤は、トコフェロール、テトラ-ジ-t-ブチルヒドロキシヒドロケイ皮酸ペンタエリスリチル、及びこれらの混合物から選択されることがより好ましい。
【0126】
本発明による組成物中の(f)親油性抗酸化剤の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上でありうる。
【0127】
その一方で、本発明による組成物中の(f)親油性抗酸化剤の量は、組成物の総質量に対して、5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下でありうる。
【0128】
本発明による組成物中の(f)親油性抗酸化剤の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~5質量%、好ましくは0.05質量%~3質量%、より好ましくは0.1質量%~1質量%の範囲内でありうる。
【0129】
[光遮蔽化合物]
本発明による組成物は、(g)10mmの光路長を伝わる290~420nmの波長を有する光について、10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下の透過率を有する溶液を提供することができる、少なくとも1種の化合物を含んでもよく、ここで、溶液中の(g)化合物の濃度は、溶液の総質量に対して0.9質量%である。したがって、単一のタイプのこのような化合物を使用しても、異なるタイプのこのような化合物の組み合わせを使用してもよい。
【0130】
(g)化合物は、低い光透過率を提供することができる。そのため、(g)化合物は、光遮蔽化合物と呼ばれることもある。
【0131】
(g)化合物は、10mmの光路長を伝わる290~420nmの波長を有する光について、ゼロ(0)透過率を有する溶液を提供できることがより好ましく、ここで、溶液中の(g)化合物の濃度は、溶液の総質量に対して0.9質量%である。
【0132】
(g)化合物は、10mmの光路長を伝わる290~420nmの波長を有する光について、ゼロ(0)透過率を有する溶液を提供できることがより一層好ましく、ここで、溶液中の(g)化合物の濃度は、溶液の総質量に対して0.1質量%超である。
【0133】
溶液のための溶媒は、(g)化合物が溶媒中に可溶化される限り限定されず、溶媒は、290~420nmの波長を有する光について、一切の吸光度を有しない。例えば、溶媒として、水及びエタノール等の親水性溶媒を使用してもよい。
【0134】
透過率は、分光光度計、例えば、JASCO Corp社によるUV-可視/NIR分光光度計V-750によって測定することができる。
【0135】
(g)化合物は、10mmの光路長を伝わる290~420nmの波長を有する一切の光について、10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下、より一層好ましくはゼロ(0)%の透過率を有する溶液を提供することができる。言い換えれば、(g)化合物の溶液は、波長が290nm~420nmである一切の光を低減又は遮蔽することができる。
【0136】
本発明による組成物中の(a)レチノイドに到達して(a)レチノイドを分解しうる上記の特定波長を有する光を、(g)化合物は低減又は遮蔽することができる。そのため、(g)化合物は、(a)レチノイドの光安定性の増強に寄与することができ、本発明による組成物中の(a)レチノイドの分解を低減することができる。
【0137】
(g)化合物は、ポリフェノールからなる群から選択されうる。
【0138】
(ポリフェノール)
「ポリフェノール」という表現は、複数のフェノール性ヒドロキシル基を含有する化合物を意味するものと理解される。フェノール性ヒドロキシル基とは、ベンゼン環及びナフタレン環等の芳香族環に結合したヒドロキシル基を意味する。フェノール性ヒドロキシル基は、任意選択でエーテル化又はエステル化されてもよい。
【0139】
ポリフェノールは、抗酸化活性を有するものから選択されうる。
【0140】
ポリフェノールは、例えば、フラボノイドから選択されうる。
【0141】
好ましいフラボノイドは、一般式(I):
【0142】
【0143】
(式中、
A"、B"、C"及びD"は、互いに独立して、H、-OH、-R'又は-OR'を表し、R'は式R'OHの糖の残基を表し;
E"は、H、-OH又は-OX'を表し、X'は
【0144】
【0145】
を表し、
F"、G"及びJ"は、互いに独立して、H、-OH又は-OCH3を表し;
X1は、-CH2-、-CO-又は-CHOH-を表す)
又は一般式(II):
【0146】
【0147】
(式中、
A'、C'及びD'は、互いに独立して、H、-OH、-OCH3、-R'又は-OR'を表し、R'は式R'OHの糖の残基を表し;
E'は、H、-OH又は-OR'を表し、R'は式R'OHの糖の残基を表し;
B'、F'、G'及びJ'は、互いに独立して、H、OH、-OCH3、-OCH2-CH2-OH、又は-OR'を表し、R'は式R'OHの糖の残基を表す)に対応しうる。
【0148】
ルチノース、グルコース、アピオース、ラムノース、ロビノース、ネオヘスペリドース、又はこれらの組み合わせを、糖R'OHの中でも挙げることができる。
【0149】
式(I)及び(II)の化合物は公知である。これらは、とりわけ、「The Flavonoids」、Harborne J. B.、Mabry T. J.、Helga Mabry、1975年、1~45頁に記載されている方法によって得ることができる。
【0150】
フラボノイドは、フラボン、フラボノール、イソフラボン、フラバノール、フラバノン、アントシアニジン、及びこれらの混合物から選択されうる。
【0151】
本発明のために使用することができるフラボノイドの中でも、タキシフォリン、カテキン、エピカテキン、エリオジクチオール、ナリンゲニン、ルチン、グルコシルルチン、トロキセルチン、クリシン、タンゲレチン、ルテオリン、エピガロカテキン及び没食子酸エピガロカテキン、ケルセチン、イソケルセチン、フィセチン、ケンペロール、ガランギン、ガロカテキン、並びに没食子酸エピカテキンを挙げることができる。
【0152】
使用することができるある特定のポリフェノールは植物中に存在し、その中から公知の方法で抽出することができる。茶葉(チャノキ(Camellia sinensis)又はヤブツバキ(Camellia japonica))からの抽出物を使用することができる。特に、Taiyo社によりSUNPHENON(登録商標)の名称で販売されている緑茶抽出物が挙げられ、これはとりわけフラボノイドを含有する。
【0153】
ポリフェノールとして、QINGDAO TAITONG PHARMACEUTICAL社によりALPHA GLUCOSYL RUTINの名称で販売されている、グルコシルルチンとルチンとの混合物を使用することができる。
【0154】
使用することができるポリフェノールの中でも、カルノシン酸及びカルノソール等のポリフェノールを挙げることができ、これらは、例えばローズマリーから、抽出に続く蒸留(Changら、JOSC、第61巻、第6号、1984年6月)によって、又はEP-A-307,626に記載されているように、エタノール等の極性溶媒による抽出の前に、ヘキサン等の非極性溶媒を使用して抽出し、臭気物質を除去することによってのいずれかで抽出することができる。
【0155】
ポリフェノールはまた、式(III)の(2,5-ジヒドロキシフェニル)アルキレンカルボン酸及びその誘導体(とりわけ、エステル及びアミド):
【0156】
【0157】
(式中、
R1"は、-O-Alk、OH又は-N(r')(r")を表し、Alkは、1つ若しくは複数のヒドロキシル若しくはアルコキシ基によって任意選択で置換されている、直鎖状若しくは分枝状C1~C20アルキル、又はC2~C20アルケニルを示し、
r'及びr"は、独立して、H、C1~C20アルキル、C2~C6ヒドロキシアルキル又はC3~C6ポリヒドロキシアルキルを表し、或いは、r'及びr"は、これらが結合している窒素原子とともに、複素環を形成しており、
rは、-(CH2)r-COR1鎖が最大21個の炭素原子を含有するような、ゼロを含む数であり、
R2"及びR3"は、独立して、H又はC1~C4アルキルを表し、加えて、R2"は、C1~C4アルコキシを表すこともできる)から選択してもよい。
【0158】
式(III)の化合物は公知であり、又は公知の方法に従って、例えば特許FR-2,400,358及びFR-2,400,359に記載されている方法と同様に、調製することができる。
【0159】
ポリフェノールはまた、コーヒー酸のエステル又はアミドから選択してもよい。
【0160】
コーヒー酸のエステルの中でも、とりわけ、式(IV):
【0161】
【0162】
(式中、
Zは、C1~C8アルキル、例えばメチル、又はフィトールの残基を表す)の化合物を挙げることができる。
【0163】
コーヒー酸のアミドの中でも、とりわけ、式(V):
【0164】
【0165】
(式中、
Z'は、C1~C8、特にC6~C8アルキルを表す)の化合物を挙げることができる。
【0166】
式(IV)又は(V)の化合物は公知であり、又は公知の方法に従って調製することができる。
【0167】
本発明による組成物中の(g)化合物の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上でありうる。
【0168】
その一方で、本発明による組成物中の(g)化合物の量は、組成物の総質量に対して、5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下でありうる。
【0169】
本発明による組成物中の(g)化合物の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~5質量%、好ましくは0.05質量%~3質量%、より好ましくは0.1質量%~1質量%の範囲内でありうる。
【0170】
[キレート剤]
本発明による組成物は、(h)少なくとも1種のキレート剤を含んでもよい。単一のタイプのキレート剤を使用してもよいが、2種以上の異なるタイプのキレート剤を組み合わせて使用してもよい。
【0171】
(h)キレート剤として、次のものを挙げることができる:
(i)アミノカルボン酸、例えば、次のINCI名を有する化合物:ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチレンジアミン二コハク酸(EDDS)及びエチレンジアミンジコハク酸3Na、例えばOctel社製のOctaquest E30、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレンジアミン-N,N'-二グルタル酸(EDDG)、グリシンアミド-N,N'-二コハク酸(GADS)、2-ヒドロキシプロピレンジアミン-N,N'-二コハク酸(HPDDS)、エチレンジアミン-N,N'-ビス(オルト-ヒドロキシフェニル酢酸) (EDDHA)、N,N'-ビス(2-ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン-N,N'-二酢酸(HBED)、ニトリロ三酢酸(NTA)、メチルグリシン二酢酸(MGDA)、N-2-ヒドロキシエチル-N,N-二酢酸及びグリセリルイミノ二酢酸(文献EP-A-317542及びEP-A-399133に記載されている通り)、イミノ二酢酸-N-2-ヒドロキシプロピルスルホン酸及びアスパラギン酸N-カルボキシメチルN-2-ヒドロキシプロピル-3-スルホン酸(EP-A-516102に記載されている通り)、ベータアラニン-N,N'-二酢酸、アスパラギン酸-N,N'-二酢酸及びアスパラギン酸-N-一酢酸(EP-A-509382に記載されている通り)、次のものをベースとするキレート剤:イミノ二コハク酸(IDSA) (EP-A-509382に記載されている通り)、エタノール二グリシン酸、ホスホノブタントリカルボン酸、例えば、Bayer社によりBayhibit AMの参照名で販売されている化合物、グルタミン酸二酢酸四ナトリウム(GLDA)、例えば、Akzo Nobel社製のDissolvine GL38又は45S、
(ii)一又はポリホスホン酸をベースとするキレート剤、例えば、次のINCI名を有する化合物:ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DTPMP)、エタン-1-ヒドロキシ-1,1,2-三ホスホン酸(E1HTP)、エタン-2-ヒドロキシ-1,1,2-三ホスホン酸(E2HTP)、エタン-1-ヒドロキシ-1,1-二ホスホン酸(EHDP)、エタン-1,1,2-三ホスホン酸(ETP)、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(EDTMP)、及びヒドロキシエタン-1,1-二ホスホン酸(HEDP)、並びに
(iii)ポリリン酸をベースとするキレート剤、例えば、次のINCI名を有する化合物:トリポリリン酸ナトリウム(STP)、二リン酸四ナトリウム、ヘキサメタリン酸、メタリン酸ナトリウム、フィチン酸、その塩及び誘導体、
並びに
これらの混合物。
【0172】
(h)キレート剤は、生分解性であることが好ましい。この意味において、生分解性ではないEDTAは、(h)キレート剤として好ましくない。したがって、EDTAを(h)キレート剤として使用しないことが好ましい。更に、本発明による組成物は、EDTAフリーであることが好ましい。
【0173】
「フリー」という用語は、ここでは、本発明による組成物が、限定的な量のEDTAを含有してもよいことを意味する。しかしながら、EDTAの量は、組成物の総質量に対して、1質量%未満、より好ましくは0.1質量%未満、より一層好ましくは0.01質量%未満であるように限定されることが好ましい。本発明による組成物が、EDTAを含まないことが最も好ましい。
【0174】
(h)キレート剤は、エチレンジアミンジコハク酸3Naであることがより好ましい。
【0175】
本発明による組成物中の(h)キレート剤の量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%以上、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上でありうる。
【0176】
その一方で、本発明による組成物中の(h)キレート剤の量は、組成物の総質量に対して、3質量%以下、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下でありうる。
【0177】
本発明による組成物中の(h)キレート剤の量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%~3質量%、好ましくは0.005質量%~2質量%、より好ましくは0.01質量%~1質量%の範囲内でありうる。
【0178】
[ポリオール]
本発明による組成物は、少なくとも1種のポリオールを更に含んでもよい。単一のタイプのポリオールを使用してもよいが、2種以上の異なるタイプのポリオールを組み合わせて使用してもよい。
【0179】
「ポリオール」という用語は、ここでは、2つ以上のヒドロキシ基を有するアルコールを意味し、糖又はその誘導体を包含しない。糖の誘導体としては、糖の1つ又は複数のカルボニル基を還元することによって得られる糖アルコール、及び1つ又は複数のヒドロキシ基中の水素原子が、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、アシル基、又はカルボニル基等の少なくとも1つの置換基で置き換えられている糖又は糖アルコールが挙げられる。
【0180】
ポリオールは、少なくとも2つのヒドロキシ基、好ましくは2~5つのヒドロキシ基を含む、C2~C12ポリオール、好ましくはC2~C9ポリオールでありうる。
【0181】
ポリオールは、天然ポリオールであっても、合成ポリオールであってもよい。ポリオールは、直鎖状、分枝状、又は環状の分子構造を有してもよい。
【0182】
ポリオールは、グリセリン及びその誘導体、並びにグリコール及びその誘導体から選択されうる。ポリオールは、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、カプリリルグリコール、1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ポリエチレングリコール(5~50のエチレンオキシド基)、及びソルビトール等の糖からなる群から選択されうる。
【0183】
本発明による組成物中のポリオールの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上でありうる。
【0184】
その一方で、本発明による組成物中のポリオールの量は、組成物の総質量に対して、20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下でありうる。
【0185】
したがって、ポリオールは、組成物の総質量に対して、0.01質量%~20質量%、好ましくは0.05質量%~15質量%、例えば0.1質量%~10質量%の範囲内の量で、本発明による組成物中に存在してもよい。
【0186】
[他の成分]
本発明による組成物は、室温(25℃)で液体の形態である、1種又は複数種のモノアルコール、例えば1~6個の炭素原子を含む直鎖状又は分枝状のモノアルコール等、例えばエタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、イソブタノール、ペンタノール、及びヘキサノールを含有してもよい。
【0187】
本発明による組成物中のモノアルコールの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上でありうる。
【0188】
その一方で、本発明による組成物中のモノアルコールの量は、組成物の総質量に対して、60質量%以下、好ましくは55質量%以下、より好ましくは50質量%以下であってもよい。
【0189】
したがって、本発明による組成物中のモノアルコールの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~60質量%、好ましくは0.1質量%~55質量%、より好ましくは1質量%~50質量%の範囲内でありうる。
【0190】
本発明による組成物はまた、上に説明した成分以外に、化粧用及び皮膚科学的組成物において従来使用される様々なアジュバント、例えば、アニオン性、非イオン性、カチオン性、及び両性又は双性イオン性ポリマー、アニオン性、カチオン性、両性及び非イオン性界面活性剤、親水性抗酸化剤、着色剤、増粘剤、金属イオン封鎖剤、香料、分散剤、コンディショニング剤、皮膜形成剤、保存剤、共保存剤、並びにこれらの混合物を含んでもよい。
【0191】
[調製]
本発明による組成物は、上記で説明した必須成分、及び必要な場合、上記で説明した任意選択の成分を混合することによって、調製することができる。
【0192】
上記の必須成分及び任意選択の成分を混合する方法及び手段は、限定されない。任意の従来の方法及び手段を使用して、上記の必須成分及び任意選択の成分を混合し、本発明による組成物を調製することができる。
【0193】
[形態]
本発明による組成物は、複数のカプセル及び水性相を含み、カプセルは水性相中に分散している。
【0194】
水性相は、(d)少なくとも1種のアスコルビン酸化合物及び(e)水を含む。
【0195】
カプセルは、少なくとも1つのコア、及びコアを包囲する少なくとも1つのシェルを含む。カプセルは、1つのコア、及びコアを包囲する少なくとも1つのシェルを含むことが好ましい。
【0196】
シェルは、少なくとも1つの層又はフィルムを含む。層又はフィルムの数は限定されないが、シェルが1つの層又はフィルムを含むことが好ましいことがある。
【0197】
コアは、(a)少なくとも1種のレチノイド及び(b)少なくとも1種の油を含む。コアは、(f)少なくとも1種の親油性抗酸化剤を更に含むことが好ましい。
【0198】
シェルは、(c)少なくとも1種の多糖を含む。
【0199】
(c)多糖はカプセルを形成することができ、このカプセルは、(a)少なくとも1種のレチノイドを、(b)少なくとも1種の油とともに、好ましくは、(b)少なくとも1種の油及び(f)少なくとも1種の親油性抗酸化剤とともに、カプセル化することができる。(a)少なくとも1種のレチノイドのカプセル化によって、(a)少なくとも1種のレチノイドと(d)少なくとも1種のアスコルビン酸化合物との接触を防止又は低減して、本発明による組成物の色(特に明度)の変化を低減することができる。したがって、カプセルは、本発明による組成物の安定性を増強することができる。
【0200】
(a)少なくとも1種のレチノイドと(b)少なくとも1種の油とを含む(c)少なくとも1種の多糖のカプセルは、(a)少なくとも1種のレチノイドと(b)少なくとも1種の油とを含む混合物を、(c)少なくとも1種の多糖によって包囲又はコーティングすることによって、調製することができる。(a)少なくとも1種のレチノイドと、(b)少なくとも1種の油と、(f)少なくとも1種の親油性抗酸化剤とを含む混合物を、(c)少なくとも1種の多糖によって包囲又はコーティングすることは好ましい。(a)少なくとも1種のレチノイドを(b)少なくとも1種の油に可溶化し、次いで、(b)少なくとも1種の油を(c)少なくとも1種の多糖によって包囲又はコーティングすることは、より好ましい。(f)少なくとも1種の親油性抗酸化剤も、(b)少なくとも1種の油に可溶化してもよい。
【0201】
カプセルを調製又は形成する工程は、任意の従来の方法によって行うことができる。例えば、(i)(a)少なくとも1種のレチノイドと(b)少なくとも1種の油とを含む混合物を、(ii)(c)少なくとも1種の多糖とともに共押出しすることができる。この場合、押し出された(i)混合物がコアを形成することができ、(ii)(c)少なくとも1種の多糖がシェルを形成することができる。共押出しされたコア/シェル構造を、カプセルに対応するコア/シェル粒子に変換することができる。上記の(i)混合物は、下に説明する(f)少なくとも1種の親油性抗酸化剤も含んでもよい。
【0202】
カプセルの形態は特に限定されない。例えば、カプセルは球体の形態であってもよい。
【0203】
カプセルのサイズは、限定されない。カプセルのサイズ又は直径は、0.1~10mm、好ましくは0.5~5mm、より好ましくは1~3mmでありうることができる。
【0204】
カプセルは、本発明による組成物中に分散及び懸濁させることができる。カプセルは、本発明による組成物に特有の態様を提供することができる。
【0205】
本発明によれば、カプセルは(a)レチノイドだけでなく(b)油も含み、カプセルは、(d)アスコルビン酸化合物及び(e)水を含む水性相中に分散している。そのため、本発明による組成物は、O/Wタイプの形態とすることができる。
【0206】
本発明による組成物は、O/Wタイプの形態であることが好ましい。本発明による組成物は、連続水性相中に分散した脂肪相を含む、O/W型エマルション又はO/W型分散体の形態であることがより好ましい。分散した脂肪相は、水性相中の油滴とすることができる。本発明による組成物は、O/W型ゲルエマルション又はO/W型ゲル分散体の形態であることがより一層好ましい。この場合、水性相は、水性相をゲル化するための少なくとも1種の親水性増粘剤を含んでもよい。
【0207】
水性相中に分散した脂肪相からなるO/W型の構成又は構造は、外側に水性相を有し、そのため、O/W型の構成又は構造を有する本発明による組成物は、水性相が提供できる即時のみずみずしさの感覚があるので、心地よい使用感を提供することができる。
【0208】
本発明による組成物は、透明であっても半透明であってもよいが、好ましくは透明でありうる。
【0209】
透明度は、濁度(例えば、濁度は、丸型セル(直径25mm×高さ60mm)、及び可視光(400から800nmの間、好ましくは400~500nm)を発することができるタングステンフィラメント電球を備えた2100Q(HACH社により市販されている)で測定できる)を測定することによって測定できる。測定は、無希釈組成物において行うことができる。ブランクは、蒸留水を用いて決定できる。
【0210】
本発明による組成物は、好ましくは、200NTU未満、好ましくは150NTU未満、より好ましくは100NTU未満、より一層好ましくは50NTU未満の濁度を有する。
【0211】
[方法及び使用]
本発明による組成物は、化粧用又は皮膚科学的組成物、好ましくは化粧用組成物、より好ましくは皮膚等のケラチン物質のための化粧用組成物であることが好ましい。
【0212】
本発明による組成物は、ケラチン物質に塗布することによって、皮膚、毛髪、粘膜、爪、まつ毛、眉毛、及び/又は頭皮等のケラチン物質を処置するための美容方法等、非治療的方法のために使用することができる。
【0213】
したがって、本発明はまた、皮膚等のケラチン物質を処置するための美容方法であって、本発明による組成物をケラチン物質に塗布する工程を含む、方法にも関する。
【0214】
本発明による組成物は、例えば、皮膚等のケラチン質物質のための老化防止、抗皺、又はターンオーバー促進製品として使用されうる。特に、本発明による組成物は、抗皺皮膚化粧料として使用されうる。
【0215】
本発明による組成物はまた、例えば、皮膚等のケラチン質物質のための白色化、抗酸化、又はコラーゲン合成促進製品としても使用されうる。特に、本発明による組成物は、白色化又は抗酸化(例えば、皮膚ダメージを低減するための)化粧料として使用されうる。
【0216】
本発明の別の態様は、
(1)その各々が、
少なくとも1つのコア、及び
コアを包囲する少なくとも1つのシェル
を含む、複数のカプセルであり、
コアが(a)少なくとも1種のレチノイド及び(b)少なくとも1種の油を含み、
シェルが(c)少なくとも1種の多糖を含む、複数のカプセルの、
(2)(d)少なくとも1種のアスコルビン酸化合物及び(e)水を含む、水性相
を含む組成物における、使用であって、
(1)カプセルが(2)水性相中に分散しており、
組成物を安定化するための、
又は
組成物の色(特に明度)の変化を低減するための、
使用に関しうる。
【0217】
本発明の別の態様はまた、
(a)少なくとも1種のレチノイド及び(d)少なくとも1種のアスコルビン酸化合物を含む安定な組成物を調製するための方法、又は
(a)少なくとも1種のレチノイド及び(d)少なくとも1種のアスコルビン酸化合物を含む組成物の色(特に明度)の変化を低減するための方法であって、
(i)その各々が、
少なくとも1つのコア、及び
コアを包囲する少なくとも1つのシェル
を含む、複数のカプセルであり、
コアが(a)少なくとも1種のレチノイド及び(b)少なくとも1種の油を含み、
シェルが(c)少なくとも1種の多糖を含む、複数のカプセルを形成する工程、並びに
(ii)カプセルを、(d)少なくとも1種のアスコルビン酸化合物及び(e)水を含む水性相中に分散させる工程
を含む、方法に関しうる。
【0218】
カプセルを形成する工程(i)は、(a)少なくとも1種のレチノイド及び(b)少なくとも1種の油を含む混合物を、(c)少なくとも1種の多糖と共押出しすることによって行ってもよい。
【0219】
上記態様では、(a)少なくとも1種のレチノイドと、(b)少なくとも1種の油と、(f)少なくとも1種の親油性抗酸化剤との混合物を、(c)少なくとも1種の多糖によってカプセル化することは好ましい。したがって、コアは、(f)少なくとも1種の親油性抗酸化剤を更に含むことが好ましい。
【0220】
本発明による組成物についての成分(a)~(f)、及び任意選択の成分に関する上記の説明は、上記の本発明による使用及び方法のための成分に適用することができる。本発明による組成物の調製及び形態に関する説明もまた、上記の使用及び方法において記載された組成物の調製及び形態に適用することができる。
【実施例0221】
本発明を、実施例によってより詳細に説明するが、これは、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0222】
(実施例1~2及び比較例1~2)
カプセル化されたO/W型ゲルタイプエマルションの形態の、実施例1及び2による以下の組成物を、表1に示す成分を混合することによって調製した。
【0223】
カプセル化されたO/W型ゲルタイプ分散体(実施例1及び2)の調製を、次の通りに行った:
(1)レチノールを除くフェーズAの成分を混合し、固体化合物を含む場合は75~80℃で加熱して均一な混合物を形成し、次いで室温に冷却し、レチノールを導入して、フェーズAの均一な混合物を得る;
(2)アスコルビン酸を除くフェーズBの成分を混合し、75~80℃で加熱して均一な混合物を形成し、次いで室温に冷却し、アスコルビン酸を導入して、フェーズBの均一な混合物を得る;
(3)フェーズCの成分を80~90℃で混合して、フェーズCの均一な混合物を形成する;
(4)フェーズAの均一な混合物とフェーズCの均一な混合物とを、後者によって前者をカプセル化することによって共押出しして、フェーズAの均一な混合物が、フェーズCの均一な混合物によってコーティング及びカプセル化されているカプセルを調製する;
(5)カプセルをフェーズBの均一な混合物に加える。
【0224】
次に、実施例1及び2による組成物の各々を、2つの群に分けた。
【0225】
一方の群は、ホモジナイザーによって15,000rpmで1分間均質化し、その中のカプセルを破壊して、比較例1又は2による組成物を調製した。他方の群は、ホモジナイザーに供することなく、実施例1又は2による組成物として使用した。
【0226】
表1に示す成分の量の数値はすべて、活性原料としての「質量%」に基づく。
【0227】
【0228】
【0229】
[評価]
実施例1~2及び比較例1~2による組成物の各々を、透明な容器に投入し、55℃で2週間保存した。保存後の各組成物の色(CIE1976に基づくL*a*b*値)を、Konica Minolta CM-3600Aを使用して測定した。
【0230】
実施例1及び比較例1について、上記測定を3回行い、L*、a*及びb*の各々について、平均値及び標準偏差の値を計算した。結果を表1に示す。次いで、スチューデントのt検定を行った。有意差(p<0.05)があった。
【0231】
実施例2及び比較例2について、上記測定を3つのサンプルで行い、L*、a*及びb*の各々について、平均値及び標準偏差の値を計算した。結果を表1に示す。次いで、スチューデントのt検定を行った。有意差(p<0.05)があった。
【0232】
実施例1と比較例1との間の比較は、レチノールのカプセル化によってレチノールとアスコルビン酸との間の接触が限定されることで、色安定性の改善に寄与したことを実証している。
【0233】
実施例2と比較例2との間の比較も、レチノールのカプセル化によってレチノールとアスコルビン酸との間の接触が限定されることで、色安定性の改善に寄与したことを実証している。