(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091323
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】ゴム組成物およびその用途
(51)【国際特許分類】
C08L 7/00 20060101AFI20230623BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20230623BHJP
C08L 23/16 20060101ALI20230623BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20230623BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
C08L7/00
C08L9/00
C08L23/16
C08K3/04
B60C1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206005
(22)【出願日】2021-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋口 和輝
(72)【発明者】
【氏名】山本 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】市野 光太郎
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA02
3D131BA01
3D131BA04
3D131BA05
3D131BA07
3D131BA08
3D131BA18
3D131BA20
3D131BC01
3D131BC02
3D131BC12
3D131BC19
3D131BC31
3D131BC35
3D131BC47
4J002AC01W
4J002AC03W
4J002AC06W
4J002AC08W
4J002BB15X
4J002DA036
4J002DE107
4J002DJ016
4J002EX038
4J002FD016
4J002FD140
4J002FD148
4J002FD150
4J002FD157
4J002FD170
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、破断物性を実用上十分なレベルに維持しつつ、耐引裂性を向上させ得るタイヤ用ゴム材料を得るに好適なゴム組成物を得ることにある。
【解決手段】本発明は、ジエン系ゴム(Z)、および、当該ジエン系ゴム(Z):100質量部に対して、下記(1)~(5)のすべてを満たすエチレン・非共役ポリエン共重合体(X)を0.5~50質量部の範囲で含有することを特徴とするゴム組成物に係る。
エチレン・非共役ポリエン共重合体(X)
(1)非共役ポリエンから導かれる構成単位の含有量が0.01~10モル%〔ただし、(A)と(B)の合計を100モル%とする〕の範囲にある。
(2)135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が1.0~2.0dl/gの範囲にある。
(3)密度が920~950kg/m3の範囲にある。
(4)DSCで測定した融点(Tm)が100~130℃の範囲にある。
(5)溶融粘弾性測定により求められるP値〔η*(ω=0.1)/η*(ω=100)〕が5~100の範囲にある。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴム(Z)、および、当該ジエン系ゴム(Z):100質量部に対して、下記(1)~(5)のすべてを満たすエチレン・非共役ポリエン共重合体(X)を0.5~50質量部の範囲で含有することを特徴とするゴム組成物:
エチレン・非共役ポリエン共重合体(X)
(1)非共役ポリエンから導かれる構成単位の含有量が0.01~10モル%〔ただし、(A)と(B)の合計を100モル%とする〕の範囲にある。
(2)135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が1.0~2.0dl/gの範囲にある。
(3)密度が920~950kg/m3の範囲にある。
(4)DSCで測定した融点(Tm)が100~130℃の範囲にある。
(5)溶融粘弾性測定により求められるP値〔η*(ω=0.1)/η*(ω=100)〕が5~100の範囲にある。
【請求項2】
ジエン系ゴム(Z):100質量部に対して、エチレン・非共役ポリエン共重合体(X)を1~40質量部の範囲で含むことを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
ジエン系ゴム(Z)100質量部に対して、さらに、加硫剤(C)を0.2~15質量部、カーボンブラック(D)を5~100質量部、白色フィラー(E)を5~150質量部、およびシランカップリング剤(F)を0.2~10質量部の範囲で含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のゴム組成物からなるタイヤ用ゴム材料。
【請求項5】
請求項4に記載のタイヤ用ゴム材料を用いて形成されたタイヤトレッド。
【請求項6】
請求項5に記載のタイヤトレッドを備えたタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム材料を得るに好適なゴム組成物およびそれを用いたタイヤなどの用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム(加硫ゴム)は優れたゴム弾性と耐熱性を有することから、自動車用のタイヤや防振ゴム及び各種シール材として幅広く利用されている。その原料ゴムには、天然ゴムをはじめとして、スチレン・ブタジエンゴムやブタジエンゴム、およびエチレン・プロピレン
ゴムなどの合成ゴムが用いられている。
【0003】
タイヤ用途に用いるゴム組成物としては、耐摩耗性、耐カット性、耐テアー性等の耐久性及び転がり抵抗低減のバランスに優れたタイヤトレッドが得られるタイヤトレッド用ゴム組成物(特許文献1)、天然ゴムおよび合成ジエン系ゴムのうち少なくとも一種からなるゴム成分に、特定のビスマレイミドおよび官能化ポリオレフィンを含んでなり、タイヤのトレッドに使用するゴム組成物(特許文献2)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-99746号公報
【特許文献2】特開2002-121326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、破断物性を実用上十分なレベルに維持しつつ、耐引裂性を向上させ得るタイヤ用ゴム材料を得るに好適なゴム組成物を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ジエン系ゴム(Z)、および、当該ジエン系ゴム(Z):100質量部に対して、下記(1)~(5)のすべてを満たすエチレン・非共役ポリエン共重合体(X)を0.5~50質量部の範囲で含有することを特徴とするゴム組成物に係る。
【0007】
エチレン・非共役ポリエン共重合体(X)
(1)非共役ポリエンから導かれる構成単位の含有量が0.01~10モル%〔ただし、(A)と(B)の合計を100モル%とする〕の範囲にある。
(2)135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が1.0~2.0dl/gの範囲にある。
(3)密度が920~950kg/m3の範囲にある。
(4)DSCで測定した融点(Tm)が100~130℃の範囲にある。
(5)溶融粘弾性測定により求められるP値〔η*(ω=0.1)/η*(ω=100)〕が5~100の範囲にある。
【発明の効果】
【0008】
本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴムと共架橋可能かつ結晶性を有するエチレン・非共役ポリエン共重合体を含むので、当該ゴム組成物からなる成形体は、引張特性(引張破断点応力および引張破断点伸び)が実用上十分なレベルであり、且つ、耐引裂性(引裂き強度に優れる)が向上しているので、タイヤ用ゴム材料にとくに好適である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<ジエン系ゴム(Z)]
本発明のゴム組成物を構成する成分の一つであるジエン系ゴム(Z)は、分子内に共役ジエンから導かれる単位を有するゴムであり、分子内に二重結合を有する公知のジエン系ゴムを制限なく使用でき、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0010】
本発明に係るジエン系ゴム(Z)としては、共役ジエン化合物を主モノマーとする重合体または共重合体ゴムが好ましく用いられる。本発明において、ジエン系ゴムには、天然ゴム(NR)、水添ゴムも含まれる。ジエン系ゴム(Z)としては、通常、未架橋のものを採用することができ、ヨウ素価が100以上、好ましくは200以上、さらに好ましくは250以上のものが望ましい。
【0011】
本発明に係るジエン系ゴム(Z)の具体例としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、ニトリルゴム、水添ニトリルゴムなどが挙げられる。
【0012】
本発明において、ジエン系ゴム(Z)としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)がより好ましく、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、および、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)とブタジエンゴム(BR)との混合物が特に好ましい。これらのジエン系ゴム(Z)は1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0013】
天然ゴム(NR)としては、グリーンブック(天然ゴム各種等級品の国際品質包装基準)により規格化された天然ゴムを用いることができる。イソプレンゴム(IR)としては、比重が0.91~0.94、ムーニー粘度〔ML(1+4)(100℃),JIS K6300〕が30~120のものが好ましく用いられる。
【0014】
スチレン・ブタジエンゴム(SBR)としては、比重が0.91~0.98、ムーニー粘度〔ML(1+4)(100℃),JIS K6300〕が20~120のものが好ましく用いられる。
【0015】
ブタジエンゴム(BR)としては、比重が0.90~0.95、ムーニー粘度〔ML(1+4)(100℃),JIS K6300〕が20~120のものが好ましく用いられる。
【0016】
<エチレン・非共役ポリエン共重合体(X)>
本発明のゴム組成物を構成する成分の一つであるエチレン・非共役ポリエン共重合体(X)〔以下、「共重合体(X)」と呼称する場合がある。〕は、エチレンから導かれる構成単位(A)、および非共役ポリエンから導かれる構成単位(B)を含み、下記要件(1)~(5)のすべてを満たすことを特徴とするエチレン・非共役ポリエン共重合体(X)である。
【0017】
〈要件(1)〉
非共役ポリエンから導かれる構成単位の含有量が0.01~10モル%、好ましくは0.05~8モル%〔ただし、(A)と(B)の合計を100モル%とする〕の範囲にある。
【0018】
本発明の共重合体(X)を構成する非共役ポリエンは、環状または鎖状の非共役ポリエンが用いられる。環状非共役ポリエンとしては、たとえば5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)、ジシクロペンタジエン、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)、ノルボルナジエン、メチルテトラヒドロインデンなどがあげられる。また鎖状の非共役ポリエンとしては、たとえば1,4-ヘキサジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、8-メチル-4-エチリデン-1,7-ノナジエン、4-エチリデン-1,7-ウンデカジエンなどがあげられる。これらの非共役ポリエンは、単独または2種以上混合して用いられる。
【0019】
これら非共役ポリエンの中では、ENBおよびVNBが好ましい。
本発明の共重合体(X)の具体例としては、エチレン・ENB共重合体、エチレン・VNB共重合体、エチレン・ENB・VNB共重合体などが挙げられる。
【0020】
本発明の共重合体(X)におけるのモル量(モル%)は、1H-NMRスペクトルメーターによる強度測定によって求めた。測定条件の詳細は、国際公開第2015/122415号に記載されている。
【0021】
〈要件(2)〉
135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が1.0~2.0dl/g、好ましくは1.4~1.7dl/gの範囲にある。
【0022】
共重合体(X)の極限粘度がこの範囲にある共重合体を使用することで、ゴム組成物を構成するジエン系ゴムと共重合体(X)とが、良好な相溶性を有し、これらを含むゴム組成物を用いると相分離を生じることなく架橋成形体を製造することができる。
【0023】
〈要件(3)〉
密度が920~950kg/m3、好ましくは930~940kg/m3の範囲にある。
共重合体(X)の密度がこの範囲にあることにより、共重合体(X)の結晶性により混練加工性を損なうことなく、ゴム組成物の破断物性と耐引裂性を向上させることができる。
共重合体(X)の密度は、JIS Z8807:2012に準拠し、液中秤量法により23℃、水中にて測定した。
【0024】
〈要件(4)〉
DSCで測定した融点(Tm)が100~130℃、好ましくは110~125℃の範囲にある。
【0025】
共重合体(X)の融点がこの範囲にあることにより、混練機加工中に溶融することからゴム組成物中での分散不良を起こさない。
共重合体(X)の融点(Tm)は、以下の方法で測定した。
【0026】
示差走査熱量計(DSC)を用いて、試料5mg程度をアルミニウムパン中に密封し、室温から10℃/分で200℃まで加熱し、その試料を、完全融解させるために200℃で3分間保持した。次いで10℃/分で30℃まで冷却し、30℃で3分間保持した後、その試料を10℃/分で230℃まで再度加熱した。2度目の加熱試験にて検出されたピーク温度を、融点(Tm)とした。
【0027】
〈要件(5)〉
溶融粘弾性測定により求められるP値〔η*(ω=0.1)/η*(ω=100)〕が5~100、好ましくは6~50、より好ましくは6~30の範囲にある。
【0028】
共重合体(X)のP値がこの範囲では、非共役ポリエンから導かれる構成単位(B)によって生成される分岐構造が共重合体(X)の結晶性を損なう程度が少なく、ゴム組成物の破断物性を保持することができる。
【0029】
共重合体(X)のP値は、以下の方法で測定した。
レオメーターとして、粘弾性測定装置Ares(Rheometric Scientific社製)を用い、190℃、歪み1.0%の条件で、周波数ω=0.01rad/sでの複素粘度η*(ω=0.01)、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η*(ω=0.1)、周波数ω=10rad/sでの複素粘度η*(ω=10)および周波数ω=100rad/sでの複素粘度η*(ω=100)(いずれも単位はPa・sec)を測定した。また、得られた結果より、η*(ω=0.1)とη*(ω=100)との複素粘度の比(η*比)であるP値(η*(ω=0.1)/η*(ω=100))を算出した。
【0030】
本発明の共重合体(X)は、上記要件(1)~(5)のすべてを満たすことにより、ゴム組成物とした場合に混練加工性が良好で、かつ破断物性を実用上十分なレベルに維持しつつ、耐引裂性を向上させることができる。
【0031】
<エチレン・非共役ポリエン共重合体(X)の製造方法>
本発明の共重合体(X)は、エチレンと非共役ポリエンとを、メタロセン化合物の一種である、ビス(4-メチルフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド(メタロセン化合物(a))を含む重合触媒系の存在下に共重合することにより製造し得る。
【0032】
≪メタロセン化合物(a)を含む重合触媒≫
本発明の共重合体(X)の製造に好適に用いることのできる重合触媒としては、上記メタロセン化合物(a)を含み、モノマーを共重合できるものが挙げられる。
【0033】
好ましくは、(a)メタロセン化合物と、(b)(b-1)有機金属化合物、(b-2)有機アルミニウムオキシ化合物、および(b-3)該メタロセン化合物(a)と反応してイオン対を形成する化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(以下「イオン化イオン性化合物」ともいう。)と、さらに必要に応じて、(c)粒子状担体とから構成される重合触媒が挙げられる。以下、各成分について具体的に説明する。
【0034】
≪化合物(b)≫
前記化合物(b)は、(b-1)有機金属化合物、(b-2)有機アルミニウムオキシ化合物および(b-3)イオン化イオン性化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物であり、好ましくは、少なくとも前記有機金属化合物(b-1)を含む。
【0035】
(b-1)有機金属化合物
前記有機金属化合物(b-1)としては、例えば下記一般式[VII]~[IX]のような周期律表第1、2族および第12、13族の有機金属化合物が用いられる。
【0036】
(b-1a)一般式:Ra
mAl(ORb)nHpXq・・・[VII]
(式[VII]中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。)で表される有機アルミニウム化合物。
【0037】
このような化合物として、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリn-オクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウム、イソブチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、ジメチルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドを例示することができる。
【0038】
(b-1b)一般式:M2AlRa
4・・・[VIII]
(式[VIII]中、M2はLi、NaまたはKを示し、Raは炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基である。)で表される周期律表第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物。
このような化合物として、LiAl(C2H5)4、LiAl(C7H15)4などを例示することができる。
【0039】
(b-1c)一般式:RaRbM3・・・[IX]
(式[IX]中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、M3はMg、ZnまたはCdである。)で表される周期律表第2族または第12族金属を有するジアルキル化合物。
【0040】
上記の有機金属化合物(b-1)の中では、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリn-オクチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物が好ましい。また、このような有機金属化合物(b-1)は、1種単独で用いてもよいし2種以上組み合せて用いてもよい。
【0041】
(b-2)有機アルミニウムオキシ化合物
前記有機アルミニウムオキシ化合物(b-2)は、従来公知のアルミノキサンであってもよく、また特開平2-78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。
【0042】
従来公知のアルミノキサンは、例えば下記のような方法によって製造することができ、通常、炭化水素溶媒の溶液として得られる。
(1)吸着水を含有する化合物または結晶水を含有する塩類、例えば塩化マグネシウム水和物、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、硫酸ニッケル水和物、塩化第1セリウム水和物などの炭化水素媒体懸濁液に、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物を添加して、吸着水または結晶水と有機アルミニウム化合物とを反応させる方法。(2)ベンゼン、トルエン、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどの媒体中で、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に直接水、氷または水蒸気を作用させる方法。
(3)デカン、ベンゼン、トルエンなどの媒体中でトリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に、ジメチルスズオキシド、ジブチルスズオキシドなどの有機スズ酸化物を反応させる方法。
【0043】
なお、前記アルミノキサンは、少量の有機金属成分を含有してもよい。また回収された上記のアルミノキサンの溶液から溶媒または未反応有機アルミニウム化合物を蒸留して除去した後、溶媒に再溶解またはアルミノキサンの貧溶媒に懸濁させてもよい。
【0044】
アルミノキサンを調製する際に用いられる有機アルミニウム化合物としては、前記(b-1a)に属する有機アルミニウム化合物として例示したものと同様の有機アルミニウム化合物を挙げることができる。
【0045】
これらのうち、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、中でも、トリメチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが特に好ましい。
上記のような有機アルミニウム化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
【0046】
また本発明で用いられる有機アルミニウムオキシ化合物(b-2)の一態様であるベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物は、60℃のベンゼンに溶解するAl成分がAl原子換算でベンゼン100重量%に対して通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、特に好ましくは2重量%以下であるもの、すなわち、ベンゼンに対して不溶性または難溶性であるものが好ましい。
【0047】
本発明で用いられる有機アルミニウムオキシ化合物(b-2)としては、下記一般式[X]で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物を挙げることもできる。
【0048】
【化1】
(式[X]中、R
1は炭素原子数が1~10の炭化水素基を示し、R
2~R
5は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数が1~10の炭化水素基を示す。)
【0049】
前記一般式[X]で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物は、
一般式:R1-B(OH)2・・・[XI]
(式[XI]中、R1は前記一般式[X]におけるR1と同じ基を示す。)で表されるアルキルボロン酸と、有機アルミニウム化合物とを、不活性ガス雰囲気下に不活性溶媒中で、-80℃~室温の温度で1分~24時間反応させることにより製造できる。
【0050】
前記一般式[XI]で表されるアルキルボロン酸としては、メチルボロン酸、エチルボロン酸、イソプロピルボロン酸、n-プロピルボロン酸、n-ブチルボロン酸、イソブチルボロン酸、n-ヘキシルボロン酸、シクロヘキシルボロン酸、フェニルボロン酸、3,5-ジフルオロフェニルボロン酸、ペンタフルオロフェニルボロン酸、3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸などが挙げられる。
【0051】
これらの中では、メチルボロン酸、n-ブチルボロン酸、イソブチルボロン酸、3,5-ジフルオロフェニルボロン酸、ペンタフルオロフェニルボロン酸が好ましい。これらは1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
【0052】
このようなアルキルボロン酸と反応させる有機アルミニウム化合物としては、前記(b-1a)に属する有機アルミニウム化合物として例示したものと同様の有機アルミニウム化合物を挙げることができる。これらのうち、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、特にトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが好ましい。
上記のような有機アルミニウムオキシ化合物(b-2)は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
【0053】
(b-3)イオン化イオン性化合物
前記イオン化イオン性化合物(b-3)としては、特表平1-501950号公報、特表平1-502036号公報、特開平3-179005号公報、特開平3-179006号公報、特開平3-207703号公報、特開平3-207704号公報、USP5321106号などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物などを挙げることができる。さらに、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物も挙げることができる。このようなイオン化イオン性化合物(b-3)は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
【0054】
具体的には、ルイス酸としては、BR3(Rは、フッ素、メチル基、トリフルオロメチル基などの置換基を有していてもよいフェニル基またはフッ素である)で示される化合物が挙げられ、たとえばトリフルオロボロン、トリフェニルボロン、トリス(4-フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(4-フルオロメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリス(p-トリル)ボロン、トリス(o-トリル)ボロン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ボロンなどが挙げられる。
【0055】
イオン性化合物としては、たとえば下記一般式[XII]で表される化合物が挙げられる。
【0056】
【化2】
(式[XII]中、R
1+としては、H
+、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオンなどが挙げられる。R
2~R
5は、互いに同一でも異なっていてもよく、有機基、好ましくはアリール基または置換アリール基である。)
【0057】
前記カルボニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)カルボニウムカチオンなどの三置換カルボニウムカチオンなどが挙げられる。
【0058】
前記アンモニウムカチオンとして具体的には、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン、トリ(n-ブチル)アンモニウムカチオンなどのトリアルキルアンモニウムカチオン;
N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオン、N,N,2,4,6-ペンタメチルアニリニウムカチオンなどのN,N-ジアルキルアニリニウムカチオン;
ジ(イソプロピル)アンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオンなどのジアルキルアンモニウムカチオンなどが挙げられる。
【0059】
前記ホスホニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのトリアリールホスホニウムカチオンなどが挙げられる。
【0060】
R1+としては、カルボニウムカチオン、アンモニウムカチオンなどが好ましく、特にトリフェニルカルボニウムカチオン、N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオンが好ましい。
【0061】
またイオン性化合物として、トリアルキル置換アンモニウム塩、N,N-ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアリールホスフォニウム塩などを挙げることもできる。
【0062】
トリアルキル置換アンモニウム塩として具体的には、たとえばトリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(o-トリル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(N、N-ジメチルフェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(3、5-ジトリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(o-トリル)ホウ素などが挙げられる。
【0063】
N,N-ジアルキルアニリニウム塩として具体的には、たとえばN,N-ジメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素、N,N-ジエチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素、N,N,2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。
【0064】
ジアルキルアンモニウム塩として具体的には、たとえば、ジ(1-プロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。
【0065】
さらにイオン性化合物として、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、N,N-ジエチルアニリニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、下記式[XIII]または[XIV]で表されるホウ素化合物などを挙げることもできる。なお、下記式中、Etはエチル基を示す。
【0066】
【0067】
【0068】
ボラン化合物として具体的には、たとえばデカボラン;ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ノナボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕デカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ウンデカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ドデカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕デカクロロデカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ドデカクロロドデカボレートなどのアニオンの塩;トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ドデカハイドライドドデカボレート)コバルト酸塩(III)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ドデカハイドライドドデカボレート)ニッケル酸塩(III)などの金属ボランアニオンの塩などが挙げられる。
【0069】
カルボラン化合物として具体的には、たとえば、4-カルバノナボラン、1,3-ジカルバノナボラン、6,9-ジカルバデカボラン、ドデカハイドライド-1-フェニル-1,3-ジカルバノナボラン、ドデカハイドライド-1-メチル-1,3-ジカルバノナボラン、ウンデカハイドライド-1,3-ジメチル-1,3-ジカルバノナボラン、7,8-ジカルバウンデカボラン、2,7-ジカルバウンデカボラン、ウンデカハイドライド-7,8-ジメチル-7,8-ジカルバウンデカボラン、ドデカハイドライド-11-メチル-2,7-ジカルバウンデカボラン、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-カルバデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム-1-カルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム-1-カルバドデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム-1-トリメチルシリル-1-カルバデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムブロモ-1-カルバドデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム-6-カルバデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム-7-カルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム-7,8-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム-2,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムドデカハイドライド-8-メチル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-8-エチル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-8-ブチル―7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-8-アリル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-9-トリメチルシリル-7,8-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-4,6-ジブロモ-7-カルバウンデカボレートなどのアニオンの塩;
トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド-1,3-ジカルバノナボレート)コバルト酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)鉄酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)銅酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)金酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド-7,8-ジメチル-7,8-ジカルバウンデカボレート)鉄酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド-7,8-ジメチル-7,8-ジカルバウンデカボレート)クロム酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(トリブロモオクタハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、トリス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)クロム酸塩(III)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)マンガン酸塩(IV)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(IV)などの金属カルボランアニオンの塩などが挙げられる。
【0070】
ヘテロポリ化合物は、ケイ素、リン、チタン、ゲルマニウム、ヒ素および錫から選ばれる原子と、バナジウム、ニオブ、モリブデンおよびタングステンから選ばれる1種または2種以上の原子からなっている。具体的には、リンバナジン酸、ゲルマノバナジン酸、ヒ素バナジン酸、リンニオブ酸、ゲルマノニオブ酸、シリコノモリブデン酸、リンモリブデン酸、チタンモリブデン酸、ゲルマノモリブデン酸、ヒ素モリブデン酸、錫モリブデン酸、リンタングステン酸、ゲルマノタングステン酸、錫タングステン酸、リンモリブドバナジン酸、リンタングストバナジン酸、ゲルマノタングストバナジン酸、リンモリブドタングストバナジン酸、ゲルマノモリブドタングストバナジン酸、リンモリブドタングステン酸、リンモリブドニオブ酸、およびこれらの酸の塩、例えば周期表第1族または2族の金属、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等との塩、トリフェニルエチル塩等の有機塩が使用できるが、この限りではない。
【0071】
イオン化イオン性化合物(b-3)の中では、上述のイオン性化合物が好ましく、その中でもトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートがより好ましい。
【0072】
本発明において、重合触媒として、上記メタロセン化合物(a)と、トリイソブチルアルミニウムなどの有機金属化合物(b-1)、メチルアルミノキサンなどの有機アルミニウムオキシ化合物(b-2)、およびトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどのイオン化イオン性化合物(b-3)とを含むメタロセン触媒を用いると、共重合体(X)の製造に際して非常に高い重合活性を示すことができる。
【0073】
(c)粒子状担体
本発明で、必要に応じて用いられる(c)粒子状担体は、無機化合物または有機化合物であって、顆粒状ないしは微粒子状の固体である。
【0074】
無機化合物としては、多孔質酸化物、無機ハロゲン化物、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物が好ましい。これらの具体例としては、WO2015/122495号公報に記載のものが挙げられる。
【0075】
本発明で用いられる粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物は、そのまま用いてもよく、またボールミル、ふるい分けなどの処理を行った後に用いてもよい。また、新たに水を添加吸着させ、あるいは加熱脱水処理した後に用いてもよい。さらに、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
これらのうち、好ましいものは粘土または粘土鉱物であり、特に好ましいものはモンモリロナイト、バーミキュライト、ヘクトライト、テニオライトおよび合成雲母である。
有機化合物としては、粒径が10~300μmの範囲にある顆粒状ないしは微粒子状固体を挙げることができる。具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンなどの炭素原子数が2~14のα-オレフィンを主成分として生成される(共)重合体またはビニルシクロヘキサン、スチレンを主成分として生成される(共)重合体、およびそれらの変成体を例示することができる。
【0077】
本発明に使用される重合触媒は、メタロセン化合物(a)と、有機金属化合物(b-1)、有機アルミニウムオキシ化合物(b-2)およびイオン化イオン性化合物(b-3)から選ばれる少なくとも1種の化合物(b)と、必要に応じて用いられる担体(c)と共に、さらに必要に応じて特定の有機化合物成分(d)を含むこともできる。
【0078】
(d)有機化合物成分
本発明において、前記有機化合物成分(d)は、必要に応じて重合性能および生成ポリマーの物性を向上させる目的で使用される。このような有機化合物としては、アルコール類、フェノール性化合物、カルボン酸、リン化合物およびスルホン酸塩等が挙げられるが、この限りではない。
【0079】
≪共重合体(X)の製造方法および条件≫
本発明の共重合体(X)は、エチレンと非共役ポリエンとを共重合して製造する。
このようなモノマーを共重合させる際、前述した重合触媒を構成する各成分の使用法、添加順序は任意に選ばれるが、下記(1)~(5)のような方法が例示される。
(1)メタロセン化合物(a)を単独で重合器に添加する方法。
(2)メタロセン化合物(a)および化合物(b)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(3)メタロセン化合物(a)を担体(c)に担持した触媒成分、化合物(b)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(4)化合物(b)を担体(c)に担持した触媒成分、メタロセン化合物(a)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(5)メタロセン化合物(a)と化合物(b)とを担体(c)に担持した触媒成分を重合器に添加する方法。
【0080】
上記(2)~(5)の各方法においては、メタロセン化合物(a)、化合物(b)、担体(c)の少なくとも2つは予め接触されていてもよい。
化合物(b)が担持されている上記(4)、(5)の各方法においては、必要に応じて担持されていない化合物(b)を、任意の順序で添加してもよい。この場合、化合物(b)は、担体(c)に担持されている化合物(b)と同一でも異なっていてもよい。
【0081】
また、上記の担体(c)にメタロセン化合物(a)が担持された固体触媒成分、担体(c)にメタロセン化合物(a)および化合物(b)が担持された固体触媒成分は、オレフィンが予備重合されていてもよく、予備重合された固体触媒成分上に、さらに、触媒成分が担持されていてもよい。
【0082】
本発明の共重合体(X)は、上記のような重合触媒の存在下に、エチレンと非共役ポリエンとを共重合することにより好適に得ることができる。
上記のような重合触媒を用いて、エチレンと非共役ポリエンとの重合を行うに際して、メタロセン化合物(a)は、反応容積1リットル当り、通常10-12~10-2モル、好ましくは10-10~10-8モルになるような量で用いられる。
【0083】
化合物(b-1)は、化合物(b-1)と、メタロセン化合物(a)中の全遷移金属原子(M)とのモル比〔(b-1)/M〕が、通常0.01~50000、好ましくは0.05~10000となるような量で用いられる。化合物(b-2)は、化合物(b-2)中のアルミニウム原子と、メタロセン化合物(a)中の全遷移金属(M)とのモル比〔(b-2)/M〕が、通常10~50000、好ましくは20~10000となるような量で用いられる。化合物(b-3)は、化合物(b-3)と、メタロセン化合物(a)中の遷移金属原子(M)とのモル比〔(b-3)/M〕が、通常1~20、好ましくは1~15となるような量で用いられる。
【0084】
本発明において、共重合体(X)を製造する方法は、溶液(溶解)重合、懸濁重合などの液相重合法または気相重合法のいずれにおいても実施可能であり、特に限定されないが、下記重合反応液を得る工程を有することが好ましい。
【0085】
重合反応液を得る工程とは、脂肪族炭化水素を重合溶媒として用い、上記メタロセン化合物(a)存在下に、エチレンと非共役ポリエンとを共重合し、共重合体(X)の重合反応液を得る工程である。
【0086】
重合溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素などが挙げられる。具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素が挙げられ、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、オレフィン自身を溶媒として用いることもできる。なお、これらのうち、得られる共重合体(A)との分離、精製の観点から、ヘキサンが好ましい。
【0087】
また、重合温度は、通常-50~+200℃、好ましくは0~+150℃の範囲、より好ましくは、+70~+110℃の範囲であり、用いるメタロセン触媒系の到達分子量、重合活性によるが、より高温(+70℃以上)であることが触媒活性、共重合性および生産性の観点から望ましい。
【0088】
重合圧力は、通常常圧~10MPaゲージ圧、好ましくは1.1~5MPaゲージ圧、より好ましくは1.2~2.0MPaゲージ圧の条件下であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。本発明ではこのうち、エチレンと非共役ポリエンとを連続して反応器に供給して共重合を行う方法を採用することが好ましい。
【0089】
反応時間(共重合が連続法で実施される場合には平均滞留時間)は、触媒濃度、重合温度などの条件によっても異なるが、通常0.5分間~5時間、好ましくは5分間~3時間、より好ましくは10分~2時間である。
【0090】
得られる共重合体(X)の分子量は、重合系内に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによっても調節することができる。さらに、使用する化合物(b)の量により調節することもできる。具体的には、トリイソブチルアルミニウム、メチルアルミノキサン、ジエチル亜鉛等が挙げられる。水素を添加する場合、その量はオレフィン1kgあたり0.001~100NL程度が適当である。
【0091】
本発明では、前記重合触媒の存在下で共重合を行う工程(1)の後、触媒失活剤を添加して前記重合触媒の失活を行う工程(2)を含むことが好ましい。
前記触媒失活剤としては、アルコール類を用いることができ、メタノールまたはエタノールが好ましく、エタノールが特に好ましい。
【0092】
前記工程(2)において、前記触媒失活剤を、前記有機金属化合物(b-1)に対して、好ましくは0.05~3.0mol倍、より好ましくは0.06~2.5mol倍、さらに好ましくは0.08~2.0mol倍の量で添加することにより、エタノール等の触媒失活剤で変質した触媒がわずかに生成して低分子量成分を適度に重合する結果、分子量分布が適度に広い共重合体(X)を得ることができる。一方、触媒失活剤の添加量が多すぎると、変質触媒がほとんど生成されず、低分子量成分の重合がほとんど行われないため、得られる共重合体(X)の分子量分布の狭くなる傾向にある。また、触媒失活剤を添加しない、もしくは添加量が少なすぎると、変質触媒が多く生成して低分子量成分を多量に重合するため、得られる共重合体(X)の低分子量成分の含有量が多くなり過ぎる傾向にある。
【0093】
≪ゴム組成物≫
本発明のゴム組成物は、上記ジエン系ゴム(Z)、および、当該ジエン系ゴム(Z):100質量部に対して、上記エチレン・非共役ポリエン共重合体(X)を0.5~50質量部、好ましくは、1~40質量部、より好ましくは2.5~20質量部の範囲で含む組成物である。
【0094】
上記共重合体(X)を上記範囲で含む本発明のゴム組成物から得られるタイヤ用ゴム材料、タイヤトレッドは、引裂き強度が良好で、耐チッピング性に優れる。
本発明のゴム組成物は、上記共重合体(X)に加え、上記ジエン系ゴム(Z):100質量部に対して、好ましくは下記加硫剤(C)を0.2~15質量部、好ましくは0.5~10質量部、より好ましくは1.0~5質量部、下記カーボンブラック(D)を5~100質量部、好ましくは10~80質量部、より好ましくは20~60質量部、下記白色フィラー(E)を5~150質量部、好ましくは10~100質量部、より好ましくは15~60質量部、および下記シランカップリング剤(F)を0.2~10質量部、好ましくは1.0~8質量部、より好ましくは2~6質量部、の範囲で含む。
【0095】
〈加硫剤(C)〉
本発明のゴム組成物に配合される加硫剤(C)は、上記ジエン系ゴム(Z)および上記共重合体(A)を加硫可能である限り特に限定されず、硫黄系化合物、過酸化物系架橋剤などゴムの分野において通常用いられる種々のものであってもよい。
【0096】
本発明においては、好適な加硫剤(C)として、イオウ系化合物が挙げられる。イオウ系化合物によりゴム組成物を架橋することで、ジクミルパーオキサイド等の過酸化物系架橋剤を用いた場合と比べて、成形体に同等の低温特性を与えつつ、格段に優れた柔軟性や機械的特性を付与することができる。
【0097】
イオウ系化合物の種類としては、イオウ、塩化イオウ、二塩化イオウ、モルフォリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジチオカルバミン酸セレン等が挙げられる。この中でも、イオウやテトラメチルチウラムジスルフィドが好ましい。
【0098】
一方、ジエン系ゴム(Z)の種類によっては、加硫剤として過酸化物系架橋剤を用いることもできる。
過酸化物系架橋剤としては、
1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)オクタン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカンなどのパーオキシケタール、並びに、
ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α、α'-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサンなどのジアルキルパーオキサイド等が挙げられる。
【0099】
〈カーボンブラック(D)〉
本発明のゴム組成物に配合されるカーボンブラック(D)は、ゴムに配合して成形体の機械的強度、反発弾性、耐摩耗性などの物性を向上させる配合剤の一種である。
【0100】
カーボンブラック(D)としては、例えば、旭#55G、旭#60G、旭#80(以上、旭カーボン(株)製)、シースト(SRF、GPF、FEF、MAF、HAF、ISAF、SAF、FT、MT、G-SO等)(以上、東海カーボン(株)製)などの公知のものを使用することができる。これらは、単独で使用することもできるし、併用することもできる。また、シランカップリング剤などで表面処理したものを使用することもできる。
【0101】
〈白色フィラー(E)〉
本発明のゴム組成物に配合される白色フィラー(E)は、疎水性シリカ、親水性シリカ、両親媒性シリカ等のシリカ、両微粉ケイ酸、活性化炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレーなどが挙げられる。これらの充填剤は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0102】
白色フィラー(E)の平均粒子径は、好ましくは1~50nm、より好ましくは2~45nm、さらに好ましくは5~40nmの範囲にある。
また、本発明に係る白色フィラー(E)は表面処理されたものであってもよい。
【0103】
〈シランカップリング剤(F)〉
本発明のゴム組成物に配合されるシランカップリング剤(F)しては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリクロルシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N,N'-ビス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)エチレンジアミン、ポリオキシエチレンプロピルトリアルコキシシラン、ポリエトキシジメチルシロキサン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0104】
本発明のゴム組成物は、上記ジエン系ゴム(Z)、上記共重合体(X)、上記加硫剤(C)、上記カーボンブラック(D)、上記白色フィラー(E)、および上記シランカップリング剤(F)に加え、必要に応じて、その他の成分、例えば、可塑剤、加硫促進剤、共架橋剤、加硫助剤、加工助剤、老化防止剤、活性剤等の種々の添加剤が挙げられる。また、必要に応じて、公知の発泡剤、発泡助剤、着色剤、分散剤、難燃剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、着色剤、滑剤および増粘剤等もその他の成分として用いうる。
【0105】
《その他の成分》
〈可塑剤〉
本発明のゴム組成物は、その用途に応じて、可塑剤、具体的には、ゴムの分野において軟化剤として一般的に用いられる公知の可塑剤をさらに含んでいてもよい。
【0106】
このような可塑剤の具体例としては、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン油、流動パラフィン、石油アスファルト、およびワセリン等の石油系軟化剤;コールタール、およびコールタールピッチ等のコールタール系軟化剤;ひまし油、アマニ油、ナタネ油、大豆油、およびヤシ油等の脂肪油系軟化剤;蜜ロウ、カルナウバロウ、およびラノリン等のロウ類;リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、およびラウリン酸亜鉛等の脂肪酸またはその塩;ナフテン酸、パイン油、およびロジンまたはその誘導体;テルペン樹脂、石油樹脂、アタクチックポリプロピレン、およびクマロンインデン樹脂等の合成高分子物質;ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、およびジオクチルセバケート等のエステル系軟化剤;その他、マイクロクリスタリンワックス、液状ポリブタジエン、変性液状ポリブタジエン、液状チオコール、炭化水素系合成潤滑油、トール油、およびサブ(ファクチス)などが挙げられる。なかでも、石油系軟化剤が好ましい。石油系軟化剤の中では、石油系プロセスオイルが好ましく、この中でもパラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル等がさらに好ましい。
【0107】
ここで、上記可塑剤の含有量は、その用途により適宜選択でき、通常、ジエン系ゴム(Z)100質量部に対して、最大200質量部、好ましくは最大150質量部、より好ましくは最大130質量部が望ましい。
【0108】
〈加硫促進剤〉
本発明に係るゴム組成物は、上記成分に加え加硫促進剤をさらに含んでいてもよい。
加硫促進剤の具体例としては、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(例えば、「サンセラーCM」(商品名;三新化学工業株式会社製)など)、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N'-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、2-メルカプトベンゾチアゾール(例えば、「サンセラーM」(商品名;三新化学工業株式会社製)など)、2-(4-モルホリノジチオ)ペンゾチアゾール(例えば、「ノクセラーMDB-P」(商品名;三新化学工業株式会社製)など)、2-(2,4-ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2-(2,6-ジエチル-4-モルフォリノチオ)ベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド等のチアゾール系;ジフェニルグアニジン、トリフェニルグアニジン、ジオルソトリルグアニジン等のグアニジン系;アセトアルデヒド-アニリン縮合物、ブチルアルデヒド-アニリン縮合物、アルデヒドアミン系;2-メルカプトイミダゾリン等のイミダゾリン系;ジエチルチオウレア、ジブチルチオウレア等のチオウレア系;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド(例えば、「サンセラーTT」(商品名;三新化学工業株式会社製)など)等のチウラム系;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(例えば、「サンセラーBZ」(商品名;三新化学工業株式会社製)など)、ジエチルジチオカルバミン酸テルル等のジチオ酸塩系;エチレンチオ尿素(例えば、「サンセラー22-C」(商品名;三新化学工業株式会社製)など)、N,N'-ジエチルチオ尿素等のチオウレア系;ジブチルキサトゲン酸亜鉛等のザンテート系;その他亜鉛華(例えば、「META-Z102」(商品名;井上石灰工業株式会社製)などの酸化亜鉛)等が挙げられる。
【0109】
本発明のゴム組成物が加硫促進剤を含む場合は、その含有量は、ジエン系ゴム(Z)100質量部に対して、好ましくは0.1~15質量部、より好ましくは0.5~10質量部である。このような含有量でゴム組成物に加硫促進剤が含まれることにより、ゴム組成物が優れた架橋特性を有し、得られる成形体からのブルームの発生がより低減する。
【0110】
〈共架橋剤〉
上記架橋剤として過酸化物系架橋剤を用いる場合には、ゴム組成物の加硫速度改善や、得られる成形体の物性などを目的として、必要に応じて、適宜な共架橋剤をさらに含むことができる。
【0111】
共架橋剤の例として、ブレンマーPDE-100(日本油脂株式会社製商品名)の如きポリエチレングリコールジメタクリレート(PEGDM)、ジアリルフタレート(DAP)、タイク(日本化成株式会社製商品名)の如きトリアリルイソシアヌレート(TAIC)、タック(株式会社武蔵野化学研究所製商品名)の如きトリアリルシアヌレート(TAC)、アクリエステルTHF(三菱レーヨン株式会社製商品名)の如きメタクリル酸テトラヒドロフルフリル(THFMA)、サンエステルEG(三新化学工業株式会社製商品名)やアクリエステルED(三菱レーヨン株式会社製商品名)の如きジメタクリル酸エチレン(EDMA)、アクリエステルBD(三菱レーヨン株式会社製商品名)の如きジメタクリル酸1,3-ブチレン(BDMA)、サンエステルTMPMA(三新化学工業株式会社製商品名)やアクリエステルTMP(三菱レーヨン株式会社製商品名)やハイクロスM(精工化学株式会社製商品名)の如きトリメタクリル酸トリメチロールプロパン(TMPMA)などが挙げられる。
【0112】
本発明のゴム組成物が共架橋剤を含む場合は、その量は、ジエン系ゴム(Z)100質量部に対して、1~10質量部程度が適当である。
またこの態様のゴム組成物においては、過酸化物系架橋剤を用いた架橋の際にメタクリル酸エステルやタイク(日本化成株式会社)の如きトリアリルイソシアヌレート(TAIC)、などを加硫助剤としてさらに添加してもよい。
【0113】
〈加硫助剤〉
加硫助剤の具体的例としては、酸化マグネシウム、亜鉛華(例えば、「META-Z102」(商品名;井上石灰工業株式会社製)などの酸化亜鉛)などが挙げられる。
本発明のゴム組成物が加硫助剤を含む場合は、その量は、ジエン系ゴム(Z)100質量部に対して、通常、1~20質量部である。
【0114】
〈加工助剤〉
本発明のゴム組成物は、加工助剤をさらに含んでいてもよい。
加工助剤としては、通常のゴムの加工に使用される化合物を使用することができる。具体的には、リシノール酸、ステアリン酸、パルチミン酸、ラウリン酸等の高級脂肪酸;ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸の塩;リシノール酸、ステアリン酸、パルチミン酸、ラウリン酸等の高級脂肪酸のエステル類などが挙げられる。
【0115】
本発明のゴム組成物が加工助剤を含む場合は、その量はジエン系ゴム(Z)100質量部に対して、10質量部以下、好ましくは5質量部以下の量で用いられるが、要求される物性値に応じて適宜最適量を決定することが望ましい。
【0116】
〈老化防止剤〉
本発明のゴム組成物は、架橋して得られる成形体の製品寿命を長くするために、老化防止剤を含有してもよい。また、老化防止剤としては、従来公知の老化防止剤、例えばアミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、イオウ系老化防止剤等が挙げられる。
【0117】
老化防止剤としては、具体的には、フェニルブチルアミン、N,N-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等の芳香族第2級アミン系老化防止剤、ジブチルヒドロキシトルエン、テトラキス-[メチレン-3-(3',5'-ジ-t-ブチル-4'-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のフェノール系老化防止剤;ビス[2-メチル-4-(3-n-アルキルチオプロピオニルオキシ)-5-t-ブチルフェニル]スルフィド等のチオエーテル系老化防止剤;ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル等のジチオカルバミン酸塩系老化防止剤;2-メルカプトベンゾイルイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等のイオウ系老化防止剤等が挙げられる。これらの老化防止剤は、1種単独であるいは2種以上の組み合わせで用いることがでる。
【0118】
本発明のゴム組成物が老化防止剤を含む場合は、その量は、ジエン系ゴム(Z)100質量部に対して、通常、0.3~10質量部、好ましくは0.5~7.0質量部、さらに好ましくは0.7~5.0質量部である。老化防止剤の量が上記範囲内であると、ゴム組成物を架橋(加硫)する際の加硫阻害を低減することができ、得られる成形体からブルームの発生を低減することができる。
【0119】
〈活性剤〉
本発明のゴム組成物は、必要に応じて、活性剤を1種単独あるいは2種以上含有していてもよい。
【0120】
活性剤の具体的な例としては、ジ-n-ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、モノエタノールアミン、「アクチングB」(商品名;吉冨製薬株式会社製)、「アクチングSL」(商品名;吉冨製薬株式会社製)などのアミン類;ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、レシチン、トリアリルトリメリテート、脂肪族および芳香族カルボン酸の亜鉛化合物(例えば、「Struktol activator 73」、「Struktol IB 531」および「Struktol FA541」(商品名;Schill&Seilacher社製))などのアミン系活性剤;「ZEONET ZP」(商品名;日本ゼオン株式会社製)などの過酸化亜鉛調整物;オクタデシルトリメチルアンモニウムブロミド、合成ハイドロタルサイト、特殊四級アンモニウム化合物(例えば、「アーカード2HF」(商品名;ライオン・アクゾ株式会社製))などが挙げられる。
【0121】
本発明のゴム組成物が活性剤を含む場合は、その量は、ジエン系ゴム(Z)100質量部に対して、通常、0.2~10質量部、好ましくは0.3~5質量部、さらに好ましくは0.5~4質量部である。
【0122】
〈タイヤ用ゴム材料〉
本発明のゴム組成物は、タイヤ用ゴム材料に好適に用い得る。
本発明のタイヤ用ゴム材料は燃費性能やウェットグリップ性能を低下させることなく、優れた耐引裂性が両立している。また、該ゴム材料はゴム弾性、耐候性、耐オゾン性にも優れ、特に機械特性、耐疲労性に優れている。したがって本発明に係るタイヤ用ゴム材料を適用すれば、燃費性能やウェットグリップ性能を維持し、ゴム弾性、耐候性、耐オゾン性にも優れ、特に耐引裂性および耐疲労性(ロングライフ性能)に優れたタイヤを得ることができる。
【0123】
タイヤ用ゴム材料の具体的な用途としては、タイヤインナーライナー、タイヤインナーチューブ、タイヤフラップ、タイヤショルダー、タイヤビード、タイヤトレッドおよびタイヤサイドウォールなどの用途が挙げられる。このうち、タイヤトレッド、タイヤサイドウォールの用途に好適に用いることができ、特にタイヤトレッドに好適に用いることができる。
【0124】
<ゴム組成物の調製方法>
ゴム組成物の調製方法としては、例えば、ゴム組成物に含まれる各成分を、例えば、ミキサー、ニーダー、ロール等の従来知られる混練機、さらに二軸押出機のような連続混練機等を用いて混合する方法、ゴム組成物に含まれる各成分が溶解または分散した溶液を調製し、溶媒を除去する方法等が挙げられる。
【0125】
また、本発明に係るゴム組成物は、ジエン系ゴム(Z)と共重合体(X)、必要に応じて任意成分とを同時にあるいは逐次配合して調製することができる。
ゴム組成物の調製方法は、特に限定されるものではなく、一般的なゴム配合物の調製方法を特に制限なく採用することができる。たとえば、本発明のゴム組成物が任意成分を含有する場合、任意成分の少なくとも一部を、ジエン系ゴム(Z)あるいは共重合体(X)とあらかじめ混合した後に残りの任意成分を配合してもよく、また、ジエン系ゴム(Z)および共重合体(X)を配合した後に任意成分を添加して配合してもよい。
【0126】
たとえばバンバリーミキサー、ニーダー、インターミックス等のインターナルミキサー類を用いて、ジエン系ゴム(Z)および共重合体(X)、および必要に応じて配合する他の成分を、80~170℃の温度で3~10分間混練した後、必要に応じて架橋剤およびさらに必要に応じて架橋促進剤、架橋助剤、発泡剤などを加えて、オープンロールなどのロール類あるいはニーダーを用いて、ロール温度40~80℃で5~30分間混練した後、分出しすることにより調製することができる。このようにして通常リボン状またはシート状のゴム組成物が得られる。上記のインターナルミキサー類での混練温度が低い場合には、架橋剤、架橋促進剤、発泡剤などを同時に混練することもできる。
【0127】
<成形体>
本発明の成形体は、前述の本発明のゴム組成物を加硫(架橋とも表示する)することにより得られる。なお、加硫の際には、金型を用いても、用いなくてもよい。金型を用いない場合には、ゴム組成物は、通常、連続的に成形、架橋される。
【0128】
ゴム組成物を加硫する方法としては、(a)加硫剤を含有するゴム組成物を、通常、押出し成形、プレス成形、インジェクション成形等の成形法や、ロール加工により所望形状に予備成形し、成形と同時にまたは成形物を架橋槽内に導入して加熱する方法や、(b)加硫剤を含有するゴム組成物を、(a)の方法と同様の方法で予備成形し、次いで電子線を照射する方法を例示することができる。
【0129】
なお、(a)の方法では、加熱によりゴム組成物中の架橋剤による架橋反応が起こり、成形体が得られる。また、(b)の方法では、電子線により架橋反応が起こり、成形体が得られる。(b)の方法においては通常、予備成形が施されたゴム組成物に、0.1~10MeVのエネルギーを有する電子線を、ゴム組成物の吸収線量が通常は0.5~36Mrad、好ましくは0.5~20Mrad、さらに好ましくは1~10Mradになるように照射する。
【0130】
また、ゴム組成物の加硫(架橋)は、未架橋のゴム組成物を、通常、押出成形機、カレンダーロール、プレス、射出成形機またはトランスファー成形機などの成形機を用いた種々の成形法よって所望形状に予備成形し、成形と同時にまたは成形物を架橋槽内に導入して加熱するか、あるいは、電子線、X線、γ線、α線およびβ線などの放射線を照射することにより架橋する放射線架橋により行うことができる。成形あるいは予備成形の方法としては、押出成形、射出成形、インフレーション成形、ブロー成形、押出ブロー成形、プレス成形、真空成形、カレンダー成形及び発泡成形などにより、所望の形状に成形する公知の成形方法を適宜採用することができる。また、架橋成形体が発泡体の場合は、発泡剤を配合した未架橋のゴム組成物を発泡成形した後に電子線照射あるいは加熱により架橋するか、発泡成形と同時に架橋を進行させることにより製造することができる。さらに、ゴム組成物を架橋する工程は、加熱による架橋と電子線架橋とを組み合わせて行ってもよい。
【0131】
上記ゴム組成物を加熱により架橋する場合には、通常、硫黄、硫黄系化合物、過酸化物などの加硫剤を含むゴム組成物を用いて、熱空気、ガラスビーズ流動床、UHF(極超短波電磁波)、スチームまたはLCM(熱溶融塩槽)などの加熱形態の架橋槽を用いて、150~270℃の温度で1~30分間加熱することが好ましい。硫黄架橋または過酸化物架橋は、架橋工程に特殊な装置を必要としない利点があるため、従来からゴム組成物の架橋工程に広く用いられている。
【0132】
また、電子線照射により架橋する電子線架橋により架橋を行う場合は、通常架橋剤を含有しないゴム組成物を用いて、予備成形されたゴム組成物に、電子線を照射して、架橋成形体を製造することが好ましい。電子線照射による架橋は、架橋剤を用いなくても行うことができ、架橋工程において揮発物の発生が少ないという利点がある。
【0133】
電子線照射による架橋工程を伴う架橋成形体の製造は、具体的には、例えば次のようにして行うことができる。まずバンバリーミキサーなどのミキサーを用い、ジエン系ゴム(Z)、および必要に応じて各種添加剤ならびに架橋助剤などを、80~170℃の温度で3~10分間混練した後、オープンロールなどのロール類を用い、ロール温度40~80℃で5~30分間混練した後、分出し、リボン状またはシート状のゴム組成物を調製するか、または、容器内などで各成分をブレンドすることによりゴム組成物を調製する。このようにして調製されたゴム組成物はシート状等のまま、あるいは押出成形機、カレンダーロール、射出成形機またはプレスにより所望の形状に成形するか、または押出機よりストランド状に押し出してカッター等により粉砕してペレットにして電子線を照射する。あるいは、架橋助剤などの化合物を含浸したジエン系ゴム(Z)および共重合体(X)などの粉体に直接電子線を照射して、ゴム組成物の架橋物を調製してもよい。電子線の照射は、通常0.1~10MeV(メガエレクトロンボルト)、好ましくは0.3~5MeVのエネルギーを有する電子線を、吸収線量が通常0.5~100kGy(キログレイ)、好ましくは0.5~70kGyになるように行う。
【0134】
γ線照射は、電子線照射と比べてゴム組成物に対する透過度が高く、特にゴム組成物をペレット形状にしたものに照射する場合、少量を直接照射するだけでペレット内部まで充分架橋させることができる。γ線の照射は、ゴム組成物にγ線照射量が通常0.1~50kGy、好ましくは0.3~50kGyになるように行うことができる。
【0135】
成形体の架橋度は、ゲル分率で表すことができる。通常、架橋体のゲル分率は、1~80%である。しかしながら本発明における架橋成形体では、架橋の程度はこの範囲に限定されるものではなく、ゲル分率が10%未満、特には0.5%未満のゲル分率を示す架橋度の低い架橋体においても、架橋度の高い本発明の架橋成形体と同様、外観表面に優れるような効果は得られる。
【0136】
本発明に係る成形体は、ゴム特性を有する各種製品の用途に制限なく利用することができる。本発明に係る架橋成形体は、製品の少なくとも一部を構成していればよく、全体が本発明に係る成形体から構成されていることも好ましく、また、本発明の成形体が製品の少なくとも一部を構成する、積層体あるいは複合体であることも好ましい。積層体としては、2層以上の層を有する多層積層体のうち、少なくともその1層が本発明に係る成形体である積層体が挙げられ、たとえば、多層フィルムおよびシート、多層容器、多層チューブ、水系塗料の一構成成分として含まれる多層塗膜積層体等の形態が挙げられる。
【0137】
本発明に係る成形体は、耐候性に特に優れることから、タイヤや電線被覆材などの屋外で長期間使用する用途にも好適に用いることができ、特に各種タイヤの少なくとも一部を構成するタイヤ部材用途に好適に使用することができる。
【0138】
本発明の成形体は、ジエン系ゴムが本来有する優れた機械的強度および耐疲労性(ロングライフ性能)を保持し、かつ、優れた耐引裂性を示す。本発明の架橋成形体を用いたタイヤトレッドやタイヤサイドウォールなどのタイヤ部材は、耐候性に優れるとともに、耐引裂特性に優れる。
【0139】
<発泡体>
本発明のゴム組成物は発泡体としても用い得る。本発明に係る発泡体は、発泡剤を含有する本発明のゴム組成物を架橋および発泡することにより得られる。
【0140】
前記ゴム組成物は、発泡剤を含むため、ゴム組成物を加熱することによって、架橋剤による架橋反応と共に、発泡剤が分解して炭酸ガスや窒素ガスを発生する。このため、気泡構造を有する発泡体が得られる。
【0141】
<用途>
本発明のゴム組成物は、低温特性、機械特性、押出し成形性、プレス成形性、インジェクション成形性等の成形性、およびロール加工性に非常に優れており、本発明のゴム組成物から、低温特性(低温での柔軟性、ゴム弾性等)、機械特性などに優れる成形体を好適に得ることができる。
【0142】
また、本発明のゴム組成物は、加工性、成形性および架橋特性に優れ、耐熱安定性、ロングライフ性能、耐引裂性能に優れた成形体を製造することができるため、本発明のゴム組成物から得られた成形体は、高温下での長期使用が見込まれる用途や使用中に大きな引裂力がかかることが見込まれる用途などの用途にも好適に使用することができる。
【0143】
本発明のゴム組成物、該組成物から得られる成形体、たとえば、架橋体や発泡体などは、様々な用途に用いることができる。具体的には、タイヤ用ゴム材料、O-リング、工業用ロール、パッキン(例えばコンデンサーパッキン)、ガスケット、ベルト(例えば、断熱ベルト、複写機ベルト、搬送ベルト)、自動車用ホースなどのホース類(例えば、ターボチャージャーホース、ウォーターホース、ブレーキリザーバーホース、ラジエターホース、エアーホース)、防振ゴム、防振材あるいは制振材(例えば、エンジンマウント、モーターマウント)、マフラーハンガー、スポンジ(例えば、ウェザーストリップスポンジ、断熱スポンジ、プロテクトスポンジ、微発泡スポンジ)、ケーブル(イグニッションケーブル、キャブタイヤケーブル、ハイテンションケーブル)、電線被覆材(高圧電線被覆材、低電圧電線被覆材、舶用電線被覆材)、グラスランチャネル、カラー表皮材、給紙ロール、ルーフィングシート等に好適に用いられる。これらのうちでも、自動車用内外装部品や耐熱性を求められる用途に好適に用いられ、タイヤトレッド等のタイヤ用ゴム材料として好適である。
【0144】
<タイヤトレッド>
本発明に係るタイヤトレッドは上記本発明のタイヤ用ゴム材料を用いて形成されるものである。本発明のタイヤ用ゴム材料を加硫して得られるタイヤトレッドを適用すれば、燃費性能やウェットグリップ性能を維持した上で破断物性と優れた耐引裂性能とが両立し、ゴム弾性、耐候性、耐オゾン性にも優れ、特に機械特性、耐疲労性(ロングライフ性能)に優れたタイヤを得ることができる。
【0145】
<タイヤ>
本発明に係るタイヤは上記タイヤトレッドを備える。本発明に係るタイヤは燃費性能やウェットグリップ性能を維持した上で破断物性と優れた耐引裂性能とが両立し、ゴム弾性、耐候性、耐オゾン性にも優れ、特に機械特性、耐疲労性(ロングライフ性能)に優れたタイヤを得ることができる。
【実施例0146】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例および比較例における各特性の評価方法は次の通りである。
【0147】
実施例および比較例で用いたジエン系ゴム(Z)およびエチレン・非共役ポリエン共重合体(X)を以下に示す。
(1)ジエン系ゴム(Z)
(1-1)SBR
ジエン系ゴム(Z-1)として、SBR、商品名 Nipol NS116R ZSエラストマー社製 結合スチレン量:21質量%、ムーニー粘度〔ML(1+4)(100℃):45を用いた。
(1-2)ブタジエンゴム
ジエン系ゴム(Z-2)として、ブタジエンゴム,商品名;Nipol BR12200、日本ゼオン(株)製 ムーニー粘度〔ML(1+4)(100℃):43を用いた。
(2)エチレン・非共役ポリエン共重合体(X)
共重合体(X)として、以下の重合例1~3で製造した共重合体を用いた。
なお、重合例1~3で示す(a)~(w)などの記号は、下記表1に示す各単位の量である。
【0148】
〔重合例1~3〕
容積136Lの連続重合器の一つの供給口に、脱水精製したn-ヘキサン(C6)を(a)L/hの割合で供給し、他の供給口より[ビス(4-メチルフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド(ZD)のヘキサン溶液(b)mmol/Lを(c)L/hの割合、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(4mmol/L)を(d)L/h、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(CB-3)のヘキサンスラリーを(e)mmol-B/L)を(f)L/h、VNBを(g)g/h、ENBを(h)g/hの割合で連続的に供給した〔合計ヘキサン(T-C6):(i)L/h〕。同時に重合器の別の供給口に、エチレン(C2")を(j)kg/h、水素を(k)NL/hの割合で連続供給し、重合温度:1℃、全圧(m)MPaG、滞留時間(n)分の条件下で連続溶液重合を行った。
【0149】
重合器で生成したエチレン・非共役ポリエン共重合体(X)のヘキサン溶液は、重合器側壁部に設けられた排出口を介して連続的に排出させ、ジャケット部が8kg/cm2スチームで加熱された連結パイプに導かれた。スチームジャケット付き連結パイプ内で約170℃に加温されたエチレン・非共役ポリエン共重合体(X)のヘキサン溶液は、重合槽内溶液量約28Lを維持するように、連結パイプ終端部に設けられた液レベル制御バルブの開度の調節によって、10kg/cm2スチームで加熱された二重配管内管を通して連続的にフラッシュ槽に送液された。なお、液レベル制御バルブの直後には、触媒失活剤であるメタノールが注入される供給口が付設され、1.0vol%ヘキサン希釈溶液として12L/hの速度で注入されて該ヘキサン溶液に合流させた。フラッシュ槽内への移送においては、フラッシュ槽内の圧力が0.05MPaG、フラッシュ槽内の蒸気部の温度が180℃を維持するように溶液温度と圧力調整バルブ開度設定を行った。
【0150】
その結果、エチレン・非共役ポリエン共重合体(X)が(p)kg/hの生産スピードで得られた。エチレン・非共役ポリエン共重合体(X)の重合Mileageは(q)kg/mmol-Zr、エチレン・非共役ポリエン共重合体(X)の[η]は(r)dl/gMFRは(s)g/10min、融点(Tm)は(t)℃、密度は(u)kg/m3、VNBの含有量は(v)mol%(モル%)、ENBの含有量は(w)mol%(モル%)であった。
【0151】
【0152】
<未加硫のゴム組成物の物性>
(1)ムーニースコーチ
125℃における最低粘度(Vm)およびスコーチ時間(t5)は、JIS K6300に準拠して、ムーニー粘度計((株)島津製作所製SMV202型)を用いて、125℃の条件下で測定した。
【0153】
(2)加硫速度
実施例および比較例における未加硫のゴム組成物を用いて、測定装置:MDR2000(ALPHA TECHNOLOGIES社製)により、温度170℃および時間20分の測定条件下で、加硫速度(tc90)を以下のとおり測定した。
【0154】
一定温度および一定のせん断速度の条件下で得られるトルク変化を測定した。トルクの最大値と最小値との差の90%のトルクに達成するまでの時間を加硫速度(tc90;分)とした。
【0155】
<加硫したゴム組成物の物性>
(1)硬さ試験(デュロ-A硬度)
JIS K 6253に従い、架橋シートの硬度(タイプAデュロメータ、HA)の測定は、平滑な表面をもっている2mmのシート状ゴム成形品6枚を用いて、平らな部分を積み重ねて厚み約12mmとして行った。ただし、試験片に異物の混入したもの、気泡のあるもの、およびキズのあるものは用いなかった。また、試験片の測定面の寸法は、押針先端が試験片の端から12mm以上離れた位置で測定できる大きさとした。硬度が低いほど制動性能が良いという指標となる。
【0156】
(2)引張り試験
JIS K 6251に従い、測定温度23℃、引張速度500mm/分の条件で引張試験を行い、シートの破断強度(TB)〔MPa〕および破断伸び(EB)〔%〕を測定した。すなわち、シート状の架橋成形体を打抜いてJIS K 6251(2001年)に記載されている3号形ダンベル試験片を調製した。この試験片を用いて同JIS K 6251に規定される方法に従い、測定温度25℃、引張速度500mm/分の条件で引張り試験を行ない、引張破断点応力(TB)および引張破断点伸び(EB)を測定した。TBおよびEBが大きいほど耐疲労性(ロングライフ性能)が良いという指標となる。
【0157】
(3)引裂き強度
架橋シートの引裂き強度は、前記加硫成形体の作成と同様の条件で厚さ2mmのアングル形の試験片を作成し、この試験片を500mm/secの速度で引張り、最大応力値(引裂き強度)を測定した(測定温度25℃)。
【0158】
(4)引張粘弾性試験
貯蔵弾性率E';実施例および比較例によって得られた加硫ゴム1mmシートについて、TA-Instruments社製のRSA-G2を用いて窒素下で動的粘弾性を測定した。ここで、貯蔵弾性率(E')は、粘弾性体に正弦的振動ひずみを与えたときの応力と、ひずみの関係を表わす複素弾性率を構成する項であり、TA-Instruments社製のRSA-G2による、引張モード(歪み1%)により-70℃~100度の温度領域において4℃/minの昇温速度、周波数10Hzにて測定される値である。
【0159】
tanδ;実施例および比較例によって得られた加硫ゴム1mmシートについて、TA-Instruments社製のRSA-G2を用いて窒素下で動的粘弾性を測定した。ここで、tanδ(0℃、60℃)=E"/E'にて求められる値である。
tanδ0℃が大きいほどウェットグリップが良いという指標となる。tanδ60℃が小さいほど燃費性能が良いという指標となる。
【0160】
〔実施例1〕
<ゴム組成物の調製および成形体の製造>
ジエン系ゴム(Z-1)として上記SBR:75質量部およびジエン系ゴム(Z-2)として上記ブタジエンゴム:25質量部〔合計:100質量部〕に対して、上記共重合体(X-1)20質量部、架橋助剤として酸化亜鉛(ZnO#1・酸化亜鉛2種、ハクスイテック(株)製)3質量部、加工助剤としてステアリン酸(ステアリン酸つばきシリーズ、日油(株)製)2質量部、カーボンブラック(商品名 旭#80 旭カーボン社製)40質量部、白色フィラーとしてシリカ(ニップシルVN3、東ソー・シリカ(株)製)36質量部、シランカップリング剤(Si-69、EVONIK社製)4質量部、軟化剤としてアロマ系オイル(AH-16、出光興産(株)製)50質量部、加硫剤として硫黄1.4質量部、加硫促進剤としてサンセラーCM(三新化学(株)製)1.7質量部およびノクセラーD(大内新興化学(株)製)2.0質量部を、BB-4型バンバリーミキサー(神戸製鋼所製)を用いて混練し、ゴム配合物を得た。
【0161】
前記混練では、シリカ/カップリング剤/ポリマーを2分間素練りし、次いで酸化亜鉛、ステアリン酸、カーボンブラック、アロマ系オイルを入れて、2分間混練した。その後、ラムを上昇させて掃除を行い、更に1分間混練し、未加硫のゴム配合物(G-1)を得た。
【0162】
前記ゴム配合物(G-1)を8インチロール(日本ロール(株)社製)を用いて、前ロールの表面温度50℃、後ロールの表面温度50℃、前ロールの回転数18rpm、後ロールの回転数16rpmに巻きつけて混練した。
【0163】
混練は、前記混合物に、切り返し3回、丸め通し6回を行い、厚み2.2~2.5mmのシートとしてゴム組成物を得ることで行った。得られたゴム組成物を用いて、未加硫のゴム配合物(G-1)の特性を評価した。結果を表2に示す。
【0164】
次いでプレス成形機を用いて170℃で10分間プレス処理を行って、厚さ2mmおよび1mmの架橋体(G-2)シートを作製した。得られた架橋体(G-2)シートを用いて、硬さ試験、引張試験、引裂き強度試験、および引張粘弾性試験を行った。
ゴム組成物および架橋体の評価結果を表2に示す。
【0165】
〔実施例2~12〕
実施例1で用いたゴム組成物に替えて、共重合体(X-1)の量を表2に記載の量、共重合体(X-1)に替えて、共重合体(X-2)および、共重合体(X-3)を表2、および表3に記載の量に替える以外は実施例1と同様に行いゴム組成物を得た。
得られたゴム組成物および架橋体を上記記載の方法で評価した。評価結果を表2、および表3に示す。
【0166】
〔比較例1〕
実施例1で用いたゴム組成物に替えて、共重合体(X-1)を用いない以外は、実施例1と同様に行いゴム組成物を得た。
得られたゴム組成物および架橋体を上記記載の方法で評価した。評価結果を表3に示す。
【0167】
【0168】