(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091324
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】光デバイス
(51)【国際特許分類】
G02B 6/124 20060101AFI20230623BHJP
G02B 6/34 20060101ALI20230623BHJP
G02B 6/122 20060101ALI20230623BHJP
G02B 6/125 20060101ALN20230623BHJP
【FI】
G02B6/124
G02B6/34
G02B6/122 311
G02B6/125 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206007
(22)【出願日】2021-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】309015134
【氏名又は名称】富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】杉山 昌樹
【テーマコード(参考)】
2H137
2H147
【Fターム(参考)】
2H137AA05
2H137AB08
2H137AB12
2H137BA01
2H137BA34
2H137BA36
2H137BA46
2H137BB12
2H137BB25
2H137BC16
2H137EA01
2H137GA10
2H137HA01
2H147AB02
2H147AB05
2H147BB02
2H147BB04
2H147BC05
2H147BD01
2H147BE13
2H147BG04
2H147CA01
2H147CA18
2H147CD02
2H147EA10D
2H147EA12D
2H147EA13D
2H147EA36D
2H147FC07
2H147FD13
2H147FD19
2H147GA10
2H147GA26
(57)【要約】
【課題】ウエハから光ICチップを切り出す前に光ICチップに形成される光回路を精度よく試験できる構成を提供する。
【解決手段】光ICチップ上に形成される光デバイスは、光回路、第1のグレーティングカプラ、第2のグレーティングカプラ、単一ポート端に設けられる第1の光ポートおよび2ポート端に設けられる第2の光ポートおよび第3の光ポートを備える第1の1×2光カプラ、単一ポート端に設けられる第4の光ポートおよび2ポート端に設けられる第5の光ポートおよび第6の光ポートを備える第2の1×2光カプラを備える。第1のグレーティングカプラは、第1の光ポートに結合される。第2の光ポートは、光回路に結合される。第3の光ポートは、第4の光ポートに結合される。第5の光ポートは、第2のグレーティングカプラに結合される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ICチップ上に形成される光デバイスであって、
光回路と、
第1のグレーティングカプラと、
第2のグレーティングカプラと、
単一ポート端に設けられる第1の光ポートおよび2ポート端に設けられる第2の光ポートおよび第3の光ポートを備える第1の1×2光カプラと、
単一ポート端に設けられる第4の光ポートおよび2ポート端に設けられる第5の光ポートおよび第6の光ポートを備える第2の1×2光カプラと、を備え、
前記第1のグレーティングカプラは、前記第1の光ポートに結合され、
前記第2の光ポートは、前記光回路に結合され、
前記第3の光ポートは、前記第4の光ポートに結合され、
前記第5の光ポートは、前記第2のグレーティングカプラに結合される
ことを特徴とする光デバイス。
【請求項2】
前記光回路は、前記光ICチップのデバイス領域に形成され、
前記第1のグレーティングカプラ、前記第2のグレーティングカプラ、前記第1の1×2光カプラ、および前記第2の1×2光カプラは、前記光ICチップのカプラ領域に形成され、
前記デバイス領域と前記カプラ領域との間にダイシングラインが設定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項3】
前記第6の光ポートに結合する光終端器をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項4】
前記光終端器は、前記第6の光ポートに結合する光導波路および前記光導波路を伝搬する光を放射するテーパ導波路を備える
ことを特徴とする請求項3に記載の光デバイス。
【請求項5】
前記テーパ導波路の先端は、前記第1のグレーティングカプラおよび前記第2のグレーティングカプラが形成されてない方向に向いている
ことを特徴とする請求項4に記載の光デバイス。
【請求項6】
前記光終端器は、前記第6の光ポートに結合する光導波路および前記光導波路を伝搬する光を吸収する光吸収材料を備える
ことを特徴とする請求項3に記載の光デバイス。
【請求項7】
前記第2の1×2光カプラは、前記第2の1×2光カプラの2ポート端が前記第1のグレーティングカプラおよび前記第2のグレーティングカプラが形成されてない方向に向くように配置される
ことを特徴とする請求項3に記載の光デバイス。
【請求項8】
前記光終端器は、前記第1のグレーティングカプラと前記第2のグレーティングカプラとの間の領域に配置される
ことを特徴とする請求項3に記載の光デバイス。
【請求項9】
複数の光ICチップが形成されるウエハであって、
各光ICチップは、
光回路と、
第1のグレーティングカプラと、
第2のグレーティングカプラと、
単一ポート端に設けられる第1の光ポートおよび2ポート端に設けられる第2の光ポートおよび第3の光ポートを備える第1の1×2光カプラと、
単一ポート端に設けられる第4の光ポートおよび2ポート端に設けられる第5の光ポートおよび第6の光ポートを備える第2の1×2光カプラと、を備え、
各光ICチップにおいて、
前記第1のグレーティングカプラは、前記第1の光ポートに結合され、
前記第3の光ポートは、前記第4の光ポートに結合され、
前記第5の光ポートは、前記第2のグレーティングカプラに結合され
前記複数の光ICチップの中の第1の光ICチップに形成される光回路は、前記第1の光ICチップに隣接する第2の光ICチップに形成される第1の1×2光カプラの第2の光ポートに結合され、
前記第1の光ICチップに形成される第1の1×2光カプラの第2の光ポートは、前記第1の光ICチップに隣接する第3の光ICチップに形成される光回路に結合される
ことを特徴とするウエハ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ICチップ上に形成される光回路を含む光デバイスに係わる。
【背景技術】
【0002】
図1は、光デバイスの試験方法の一例を示す。この例では、光デバイスは、光回路11を備える。光回路11は、例えば、光受信器を含む。あるいは、光回路11は、光受信器および光送信器を含む。この場合、光送信器は、光変調器を含む。光回路11は、光ICチップ10上に形成される。また、光ICチップ10の表面には、光導波路12が形成される。光導波路12は、入力光を光回路11に導く。
【0003】
光デバイスの試験においては、光源101が使用される。光源101は、例えばレーザ光源であり、光信号(又は、連続光)を出力する。偏波コントローラ(PC)102は、光源101から出力される光信号の偏波を制御する。偏波コントローラ102を通過した光信号は、光ファイバ103を介して光導波路12に入射される。この光信号は、光導波路12を介して光回路11に導かれる。
【0004】
光回路11が光受信器である場合、光回路11は、入力光信号を表す電気信号を生成する。そして、この電気信号に基づいて、光回路11が正常であるか否かが判定される。また、光回路11が光変調器である場合、光回路11には、光導波路12を介して連続光が入力され、また、不図示の駆動信号が与えられる。そうすると、駆動信号に対応する変調光信号が生成される。そして、この変調光信号に基づいて、光回路11が正常であるか否かが判定される。
【0005】
図1に示す試験方法は、ウエハから光ICチップ10を切り出した後、各光ICチップ10について行われる。このとき、光ICチップ10上に形成されている光導波路12の端面に光ファイバ103を調心しなければならない。よって、光デバイスの試験に要する時間が長くなってしまう。
【0006】
図2は、光デバイスの試験方法の他の例を示す。
図2に示す方法では、ウエハから各光ICチップを切り出す前にウエハ上で光デバイスの試験が行われる。ここで、ウエハ上で光デバイスの試験を行うためには、ウエハの表面に光を照射することでその光を光回路11に導く構成が必要である。このため、光回路11の近傍にグレーティングカプラが形成される。
【0007】
図2に示す例では、光ICチップ10は、光回路11を形成するためのデバイス領域10aに加えて、グレーティングカプラ(GC)21、22を形成するためのカプラ領域10bを備える。カプラ領域10bにおいて、グレーティングカプラ21は、光導波路23を介して1×2光カプラ25に結合される。ここで、1×2光カプラ25は、1個の光ポートP1および1組の光ポートP2、P3を備える。そして、光導波路23は、1×2光カプラ25の光ポートP1に結合されている。光ポートP2は、光導波路12を介して光回路11に結合される。光ポートP3は、光導波路24を介してグレーティングカプラ22に結合される。
【0008】
光デバイスを試験するときは、光源101から出力されるテスト光は、偏波コントローラ102および光ファイバ103を介してグレーティングカプラ21に入射される。そうすると、このテスト光は、光導波路23、1×2光カプラ25、および光導波路12を介して光回路11に導かれる。そして、このテスト光を利用して、光回路11の動作が確認される。このとき、光回路11に入力されるテスト光のパワーが測定されることが好ましい。そこで、1×2光カプラ25を用いてテスト光が分岐され、この分岐光が光導波路24を介してグレーティングカプラ22に導かれる。また、グレーティングカプラ22から出射される光は、光ファイバ104を介して光パワーメータ105に導かれる。そして、光パワーメータ105により測定される光パワーに基づいて、光回路11に入力されるテスト光のパワーが算出される。
【0009】
デバイス領域10aとカプラ領域10bとの間には、ダイシングラインが設定されている。そして、ウエハから光ICチップ10が切り出されるときに、カプラ領域10bはデバイス領域10aから切り離される。なお、ウエハから光ICチップを切り出す前にウエハ上で光デバイスの特性を測定する構成が提案されている(例えば、特許文献1~2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2020-021015号公報
【特許文献2】米国特許10145758
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図2に示す構成によれば、ウエハ上で各光ICチップを試験することができる。このとき、光導波路の端面に光ファイバを調心する工程と比較して、グレーティングカプラの近傍に光ファイバの端部を配置する工程は容易である。
図1に示す方法と比較して、
図2に示す方法においては、試験時間を短縮できる。
【0012】
ただし、
図2に示す構成で光回路11に入力されるテスト光のパワーを計算するためには、グレーティングカプラの損失を考慮する必要がある。このため、グレーティングカプラ21から光回路11に導かれるテスト光は、1×2光カプラ25により分岐されて光パワーメータ105に導かれる。そして、光パワーメータ105により測定される値に基づいて、光回路11に入力されるテスト光のパワーが計算される。
【0013】
この場合、1×2光カプラ25による損失が既知であることが前提となる。1×2光カプラ25による損失は約3dBであるが、実際には、ばらつきが発生する。このため、一般的な1×2光カプラの損失値を使用してグレーティングカプラの損失を推定すると、光回路11に入力されるテスト光のパワーを精度よく測定できないおそれがある。他方、光ICチップ10上に1×2光カプラの損失を測定するための専用回路を設けると、ウエハのスペース効率が悪くなり、また、1×2光カプラの損失を測定するための工程が発生してしまう。
【0014】
本発明の1つの側面に係わる目的は、ウエハから光ICチップを切り出す前に光ICチップに形成される光回路を精度よく試験できる構成を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の1つの態様の光デバイスは、光ICチップ上に形成される。光デバイスは、光回路と、第1のグレーティングカプラと、第2のグレーティングカプラと、単一ポート端に設けられる第1の光ポートおよび2ポート端に設けられる第2の光ポートおよび第3の光ポートを備える第1の1×2光カプラと、単一ポート端に設けられる第4の光ポートおよび2ポート端に設けられる第5の光ポートおよび第6の光ポートを備える第2の1×2光カプラと、を備える。前記第1のグレーティングカプラは、前記第1の光ポートに結合される。前記第2の光ポートは、前記光回路に結合される。前記第3の光ポートは、前記第4の光ポートに結合される。前記第5の光ポートは、前記第2のグレーティングカプラに結合される。
【発明の効果】
【0016】
上述の態様によれば、ウエハから光ICチップを切り出す前に光ICチップに形成される光回路を精度よく試験できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】光デバイスの試験方法の一例を示す図である。
【
図2】光デバイスの試験方法の他の例を示す図である。
【
図3】複数の光ICチップが形成されるウエハの一例を示す図である。
【
図4】光ICチップ上に実装される光デバイスの一例を示す図である。
【
図5】グレーティングカプラによる放射および入射を説明する図である。
【
図6】本発明の実施形態に係わる光デバイスの一例を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態に係わる光デバイスの第1のバリエーションを示す図である。
【
図9】本発明の実施形態に係わる光デバイスの第2のバリエーションを示す図である。
【
図10】本発明の実施形態に係わる光デバイスの第3のバリエーションを示す図である。
【
図11】本発明の実施形態に係わる光デバイスの第4のバリエーションを示す図である。
【
図12】本発明の実施形態に係わる光デバイスの第5のバリエーションを示す図である。
【
図13】本発明の実施形態に係わる光送受信モジュールの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図3は、複数の光ICチップが形成されるウエハの一例を示す。ウエハ500の表面には、複数の光ICチップが形成される。
図3に示す例では、ウエハ500上に24個の光ICチップが形成されている。各光ICチップは、例えば、光受信器および光変調器を含む光デバイス(即ち、光トランシーバ)を構成する。したがって、ダイシングによりウエハ500から複数の光デバイスを得ることができる。ただし、各光デバイスの試験は、ウエハ500から各光ICチップを切り出す前にウエハ500上で行われる。
【0019】
図4は、光ICチップ上に実装される光デバイスの一例を示す。この実施例では、光ICチップ10は、デバイス領域10aおよびカプラ領域10bから構成される。また、デバイス領域10aとカプラ領域10bとの間には、ダイシングラインが設定されている。
【0020】
デバイス領域10aには、光回路11が形成されている。光回路11は、上述したように、光受信器および/または光変調器を含む。また、光回路11には光導波路12が結合されている。光導波路12は、入力光を光回路11に導くことができる。また、光導波路12は、ダイシングラインを超えてカプラ領域10bにまで形成されている。なお、デバイス領域10aには、図示されてない他の回路または要素が形成されていてもよい。
【0021】
カプラ領域10bには、グレーティングカプラ(GC)21、22、および1×2光カプラ25、26が形成されている。1×2光カプラ25、26は、それぞれ、1個の光ポートP1および1組の光ポートP2、P3を備える。なお、光ポートP1から光が入力されるときは、その光は、分岐されて光ポートP2および光ポートP3に導かれる。光ポートP2から光が入力されるときは、その光は、光ポートP1に導かれる。同様に、光ポートP3から光が入力されるときは、その光は、光ポートP1に導かれる。このとき、光ポートP1と光ポートP2との間の損失は、光ポートP1から光ポートP2に向かうパスおよび光ポートP2から光ポートP1に向かうパスにおいて互いに実質的に同じである。また、光ポートP1と光ポートP3との間の損失は、光ポートP1から光ポートP3に向かうパスおよび光ポートP3から光ポートP1に向かうパスにおいて互いに実質的に同じである。
【0022】
カプラ領域10bには、図示されてない他の回路または要素が形成されていてもよい。なお、
図4(及び、後述する
図6~
図7および
図9~
図11等)においては、図面を見やすくするためにデバイス領域10aと比較してカプラ領域10bを相対的に大きく描いているが、実際には、デバイス領域10aと比較してカプラ領域10bは十分に小さいことが好ましい。
【0023】
グレーティングカプラ21は、光導波路23を介して1×2光カプラ25の光ポートP1に結合されている。1×2光カプラ25の光ポートP2には、光導波路12が結合されている。すなわち、1×2光カプラ25の光ポートP2は、光導波路12を介して光回路11に結合されている。1×2光カプラ25の光ポートP3は、光導波路24を介して1×2光カプラ26の光ポートP2に結合されている。1×2光カプラ26の光ポートP1は、光導波路27を介してグレーティングカプラ22に結合されている。なお、1×2光カプラ26の光ポートP3は、この実施例では、未使用である。
【0024】
光回路11を試験するための試験システムは、光源101、偏波コントローラ(PC)102、および光パワーメータ105を備える。光源101は、光信号(又は、連続光)を出力する。偏波コントローラ102は、光源101から出力される光信号の偏波を制御する。例えば、TE偏波測定においては、偏波コントローラ102は、光回路11にTE波が入力されるように、光源101から出力される光信号の偏波を制御する。偏波コントローラ102から出力される光信号は、光ファイバ103を介してグレーティングカプラ21に導かれる。光ファイバ104は、グレーティングカプラ22から出射される光を光パワーメータ105に導く。光パワーメータ105は、グレーティングカプラ22から出射される光のパワーを測定する。
【0025】
グレーティングカプラは、例えば、導波路面にグレーティングを設けることにより形成される。そして、
図5(a)に示すように、光導波路を介して伝搬する導波光がグレーティングカプラを通過するときに、その導波光の一部が基板に対して所定の方向に放射される。以下の記載では、導波光の一部がグレーティングカプラにより放射される方向を「回折方向」と呼ぶことがある。また、
図5(b)に示すように、基板に対して所定の角度でグレーティングカプラに光を入射すると、入射光の一部が光導波路を介して伝搬する。
【0026】
よって、グレーティングカプラ21の近傍に光ファイバ103の端面を配置すれば、光ファイバ103を介して光導波路23に光を入射することができる。また、グレーティングカプラ22の近傍に光ファイバ104の端面を配置すれば、光導波路27を介して伝搬する光を取得することができる。すなわち、グレーティングカプラ21、22は、光ICチップ10の表面で光ファイバ103、104と光導波路23、27とを光学的に結合することができる。
【0027】
グレーティングカプラ21、22は、回折方向が互いに同じになるよう形成されることが好ましい。この場合、光ファイバ103、104は、光ファイバアレイにより実現してもよい。
【0028】
光回路11を試験するときは、光源101から出力されるテスト光は、偏波コントローラ102および光ファイバ103を介してグレーティングカプラ21に入射される。そうすると、このテスト光は、光導波路23、1×2光カプラ25、および光導波路12を介して光回路11に導かれる。そして、このテスト光を利用して、光回路11の動作が確認される。
【0029】
テスト光は、1×2光カプラ25により分岐されて光ポートP3から出力される。以下の記載では、1×2光カプラ25の光ポートP3から出力される分岐光を「参照光」と呼ぶことがある。ここで、1×2光カプラ25の分岐比は、例えば、1:1である。この場合、1×2光カプラ25の光ポートP2から出力されるテスト光のパワーおよび1×2光カプラ25の光ポートP3から出力される参照光のパワーは、互いに実質的に同じである。
【0030】
1×2光カプラ25の光ポートP3から出力される参照光は、光導波路24を介して1×2光カプラ26の光ポートP2に導かれる。そうすると、この参照光は、1×2光カプラ26の光ポートP1から出力され、光導波路27を介してグレーティングカプラ22に導かれる。さらに、グレーティングカプラ22から出射される参照光は、光ファイバ104を介して光パワーメータ105に導かれる。そして、光パワーメータ105により測定される参照光のパワーに基づいて、光回路11に入力されるテスト光のパワーが算出される。
【0031】
上述の試験において、光源101の出力光のパワーがP_LDであり、光パワーメータ105により測定される参照光のパワーがP_refであるとき、下記(1)式が得られる。
P_LD-Lin-GC21-CPL25-CPL26-GC22-Lout=P_ref (1)
P_LDは、既知であるものとする。Linは、偏波コントローラ102および光ファイバ103による損失を表し、予め測定しておくことが可能である。GC21は、グレーティングカプラ21による損失を表す。CPL25は、1×2光カプラ25による損失を表す。CPL26は、1×2光カプラ26による損失を表す。GC22は、グレーティングカプラ22による損失を表す。Loutは、光ファイバ104による損失を表し、予め測定しておくことが可能である。
【0032】
したがって、光パワーメータ105を用いて参照光のパワーP_refを測定することにより、結合/分岐損失L(=GC21+CPL25+CPL26+GC22)が得られる。すなわち、グレーティングカプラ21、1×2光カプラ25、1×2光カプラ26、およびグレーティングカプラ22による損失の和が得られる。ここで、グレーティングカプラ21、22による損失が互いに同じであるものとする。また、1×2光カプラ25、26による損失が互いに同じであるものとする。そうすると、結合/分岐損失Lは、2個のグレーティングカプラによる損失および2個の1×2光カプラによる損失の和を表す。よって、結合/分岐損失Lを「2」で除算することにより、1個のグレーティングカプラによる損失および1個の1×2光カプラによる損失の和が算出される。すなわち、
図4において、グレーティングカプラ21による損失および1×2光カプラ25による損失の和が算出される。
【0033】
このように、光パワーメータ105を用いて参照光のパワーP_refを測定することにより、グレーティングカプラ21による損失および1×2光カプラ25による損失の和が算出される。したがって、この値を利用してキャリブレーションを行えば、光回路11に入力されるテスト光のパワーを精度よく推定できる。
【0034】
ただし、
図4に示す構成においては、1×2光カプラにおける反射により測定精度が低下するおそれがある。1×2光カプラは、
図4に示すように、1個の光ポート(P1)および1組の光ポート(P2、P3)を備える。ここで、1個の光ポートが設けられる入出力端を「単一ポート端(又は、単一ポート面、単一ポートサイド)」と呼び、1組の光ポートが設けられる入出力端を「2ポート端(又は、2ポート面、2ポートサイド)」と呼ぶことにする。
【0035】
単一ポート端から2ポート端を見ると、2つの光パスは対称である。よって、単一ポート端に設けられている光ポート(即ち、光ポートP1)から光が入力されるときは、反射は小さい。例えば、1×2光カプラ25の光ポートP1にテスト光が入力されるとき、反射は十分に小さい。
【0036】
ところが、2ポート端から単一ポート端を見ると、光パスは非対称である。よって、2ポート端に設けられている光ポート(例えば、光ポートP2)から光が入力されるときには、反射が発生しやすい。例えば、1×2光カプラ26の光ポートP2に参照光が入力されるとき、大きな反射が発生し得る。そして、1×2光カプラ26において反射が発生すると、この反射光は、1×2光カプラ25、グレーティングカプラ21、光ファイバ103を介して光源101に導かれる。そうすると、光源101の動作(例えば、レーザ発振動作)が不安定になり、測定精度が低下してしまう。
【0037】
図6は、本発明の実施形態に係わる光デバイスの一例を示す。本発明の実施形態に係わる光デバイス1は、
図4に示す構成とほぼ同じである。すなわち、デバイス領域10aには、光回路11が形成されている。また、カプラ領域10bには、グレーティングカプラ21、22、および1×2光カプラ25、26が形成されている。
【0038】
ただし、
図4に示す構成と異なり、光デバイス1においては、参照光を出力する1×2光カプラ25の光ポートP3は、光導波路24を介して1×2光カプラ26の光ポートP1に結合される。また、1×2光カプラ26の光ポートP2は、光導波路27を介してグレーティングカプラ22に結合される。
【0039】
すなわち、光デバイス1にテスト光が入力されるときは、参照光は、1×2光カプラ26の単一ポート端に設けられている光ポートP1に入力される。そうすると、この参照光は、1×2光カプラ26の2ポート端に設けられている各光ポートP2、P3から出力される。さらに、光ポートP2から出力される参照光は、光導波路27、グレーティングカプラ22、光ファイバ104を介して光パワーメータ105に導かれる。
【0040】
光回路11に入力されるテスト光のパワーを計算する方法は、
図4および
図6において実質的に同じである。すなわち、光デバイス1においても、上述した(1)式を利用してグレーティングカプラ21による損失および1×2光カプラ25による損失の和が算出される。したがって、光パワーメータ105を用いて参照光のパワーP_refを測定することにより、光回路11に入力されるテスト光のパワーを精度よく推定できる。なお、1×2光カプラ26において、光ポートP2から入力されて光ポートP1から出力される光に対する損失(
図4)、及び、光ポートP1から入力されて光ポートP2から出力される光に対する損失(
図6)は、互いに同じであるものとする。
【0041】
このように、
図6に示す光デバイス1においては、1×2光カプラ25から出力される参照光は、1×2光カプラ26の単一ポート端に設けられている光ポート(即ち、P1)に入力される。したがって、
図4に示す構成を比較して、参照光の反射は小さくなる。この結果、光源101の動作(例えば、レーザ発振動作)が安定し、測定精度が高くなる。
【0042】
光回路11の試験は、上述したように、ウエハから各光ICチップ10を切り出す前に行われる。そして、試験が終了した後、ウエハから光ICチップ10が切り出される。さらに、光ICチップ10からカプラ領域10bが切り離される。ここで、光ICチップ10からカプラ領域10bが切り離されると、光導波路12の先端がデバイス領域10aのエッジに位置することになる。よって、光デバイス1が光モジュール内に実装されるときには、光導波路12の先端に光ファイバが調芯されて保持される。
【0043】
なお、光デバイス1は、
図6に示すように、デバイス領域10aおよびカプラ領域10bから構成される。ただし、光デバイス1は、カプラ領域10bが切り離され後の光ICチップ10を意味してもよい。
【0044】
図7は、本発明の実施形態に係わる光デバイスの第1のバリエーションを示す。
図6に示す光デバイス1においては、1×2光カプラ26の2ポート端に設けられている1組の光ポートのうちの他方の光ポート(即ち、P3)は開放されている。これに対して、第1のバリエーションに係わる光デバイス1Bにおいては、
図7に示すように、1×2光カプラ26の光ポートP3は、光導波路28を介して光終端器(T)29に接続されている。したがって、1×2光カプラ26に入力される参照光の分岐光(即ち、光ポートP3から出力される光)は、光終端器29において吸収または放射される。この結果、
図6に示す構成と比較して、参照光の反射がさらに抑えられる。
【0045】
図8(a)は、
図7に示す光デバイス1Bに実装される光終端器29の一例を示す。この実施例では、光終端器29は、テーパ導波路により実現される。すなわち、光終端器29は、1×2光カプラ26の光ポートP3に結合される光導波路の幅を、先端に向かって徐々に狭くすることで実現される。この構成によれば、1×2光カプラ26の光ポートP3から出力される光は、テーパ導波路の先端から放射される。したがって、1×2光カプラ26の光ポートP1から参照光が入力されるとき、反射が抑えられる。
【0046】
図8(b)は、
図7に示す光デバイス1Bに実装される光終端器29の他の例を示す。この実施例では、光終端器29は、光吸収材料により実現される。具体的には、光終端器29は、1×2光カプラ26の光ポートP3に結合される光導波路の先端を含む所定の領域に光吸収材料を設けることで実現される。光吸収材料は、例えば、アルミニウム、金などの金属であってもよいし、半導体薄膜であってもよいし、ボロン等の不純物が注入されたシリコン材料であってもよい。この構成によれば、1×2光カプラ26の光ポートP3から出力される光は、光導波路28の先端で吸収される。したがって、1×2光カプラ26の光ポートP1から参照光が入力されるとき、反射が抑えられる。
【0047】
図9は、本発明の実施形態に係わる光デバイスの第2のバリエーションを示す。
図7に示す第1のバリエーションにおいては、1×2光カプラ26の光ポートP3に結合される光導波路28がグレーティングカプラ21、22に向かって伸びている。このため、光終端器29が
図8(a)に示すテーパ導波路で実現される場合、そのテーパ導波路の先端から放射される光がグレーティングカプラ21、22において再結合するおそれがある。
【0048】
第2のバリエーションに係わる光デバイス1Cおいては、この問題を緩和するために、1×2光カプラ26の光ポートP3に結合される光導波路28は、グレーティングカプラ21、22が設けられていない方向に伸びるように形成される。
図9に示す例では、光導波路28は、約90度曲げられている。この構成によれば、光終端器29が
図8(a)に示すテーパ導波路で実現される場合、そのテーパ導波路の先端は、グレーティングカプラ21、22が設けられていない方向に向くことになる。よって、テーパ導波路の先端から放射される光は、グレーティングカプラ21、22において再結合されにくい。また、光終端器29が
図8(b)に示す光吸収材料で実現されるときは、残留光が光導波路から漏れる場合であっても、その残留光はグレーティングカプラ21、22において再結合されにくい。したがって、意図しない光が光源101および/または光パワーメータ105に導かれる状態が回避され、測定精度が高くなる。
【0049】
図10は、本発明の実施形態に係わる光デバイスの第3のバリエーションを示す。
図7に示す第1のバリエーションまたは
図9に示す第2のバリエーションにおいては、グレーティングカプラ21、22と1×2光カプラ25、26との間の領域に光終端器29が設けられる。このため、第1または第2のバリエーションにおいては、グレーティングカプラ21、22と1×2光カプラ25、26との間の領域が大きくなり、カプラ領域10bのサイズが大きくなることがある。
【0050】
第3のバリエーションに係わる光デバイス1Dおいては、1×2光カプラ25および1×2光カプラ26の向きが互いに異なる。
図10に示す例では、1×2光カプラ25は、グレーティングカプラ21から光回路11に向かう方向に配置されている。これに対して1×2光カプラ26は、グレーティングカプラ21から光回路11に向かう方向に直交する方向に配置されている。このため、グレーティングカプラ21、22と1×2光カプラ25、26との間の領域とは異なる空き領域に光終端器29を設けることができる。この実施例では、光終端器29は、ダイシングラインの近傍領域に設けられている。したがって、この構成によれば、
図7または
図9に示す構成と比較して、グレーティングカプラ21、22と1×2光カプラ25、26との間の領域を小さくできるので、カプラ領域10bの高さHを小さくできる。即ち、各光ICチップ10のサイズを小さくできるので、ウエハの面積効率が高くなる。
【0051】
図11は、本発明の実施形態に係わる光デバイスの第4のバリエーションを示す。第4のバリエーションに係わる光デバイス1Eおいては、光終端器29は、グレーティングカプラ21、22間に設けられる。グレーティングカプラ21、22の間隔は、例えば、光ファイバアレイのピッチに基づいて設計される。この場合、グレーティングカプラ21、22の間隔は、例えば、約127μmである。また、各グレーティングカプラ21、22のサイズは、20μm程度である。したがって、このケースでは、グレーティングカプラ21、22間に光終端器29を形成できる。そして、光終端器29は、光導波路28を介して1×2光カプラ26の光ポートP3に結合される。
【0052】
この構成によれば、光終端器29が
図8(a)に示すテーパ導波路で実現される場合であっても、そのテーパ導波路の先端から放射される光は、グレーティングカプラ21、22において再結合することはない。加えて、カプラ領域10bのサイズを小さくできる。
【0053】
なお、
図6~
図7および
図9~
図11に示す実施例では、光ICチップ10上に2個のグレーティングカプラが設けられるが、本発明はこの構成に限定されるものではない。すなわち、必要に応じて、光ICチップ10上に3個以上のグレーティングカプラを設けてもよい。例えば、光回路11により生成される光信号の品質を測定する試験を行なうケースでは、グレーティングカプラ21、22に加えて、光回路11により生成される光信号を出射するためのグレーティングカプラが設けられる。
【0054】
光ICチップ10上に3個以上のグレーティングカプラを設ける場合には、それらのグレーティングカプラの回折方向が互いに同じになるよう形成されることが好ましい。加えて、それらのグレーティングカプラは直線上に等間隔で配置されることが好ましい。ここで、複数のグレーティングカプラが配置される間隔は、光ファイバアレイのピッチと同じである。そうすると、ウエハ上での各光ICチップの試験の効率が向上する。
【0055】
図12は、本発明の実施形態に係わる光デバイスの第5のバリエーションを示す。尚、
図12においては、ウエハ上に形成される複数の光ICチップ10C~10Fが描かれている。また、光ICチップ10C、10Fは、一部のみが描かれている。
【0056】
各光ICチップ上には、
図6~
図7または
図9~
図11に示す構成と同様に、光回路11、グレーティングカプラ21、22、1×2光カプラ25、26が形成される。また、それらの間を結合する光導波路23、24、27が形成される。さらに、各光ICチップ上に光終端器29を設けてもよい。
【0057】
ただし、第5のバリエーションにおいては、各光ICチップに形成されている光回路11は、隣接する光ICチップ上に形成されている結合回路に接続されている。ここで、結合回路は、グレーティングカプラ21、22および1×2光カプラ25、26を含む。例えば、光ICチップ10Dに形成される光回路11は、光ICチップ10Cに形成される結合回路に接続され、光ICチップ10Eに形成される光回路11は、光ICチップ10Dに形成される結合回路に接続される。各光回路11と対応する結合回路との間は、光導波路12により結合される。
【0058】
光回路11の試験を行うときは、隣接する光ICチップに形成される結合回路が使用される。例えば、光ICチップ10Dの光回路11の試験を行うときは、光ICチップ10C上に形成されているグレーティングカプラ21、22の近傍に光ファイバ103、104が配置される。そして、グレーティングカプラ21を介して入射されるテスト光は、1×2光カプラ25を介して光回路11に導かれる。このとき、1×2光カプラ25により分岐された光(即ち、参照光)は、1×2光カプラ26およびグレーティングカプラ22を介してパワーメータ105に導かれる。
【0059】
各光回路11の試験が終了した後、ウエハから各光ICチップが切り出される。この結果、複数の光デバイスが得られる。ここで、
図6~
図7または
図9~
図11に示す構成では、光ICチップからカプラ領域が切り離される。これに対して、
図12に示す第5のバリエーションにおいては、各ICチップ内にグレーティングカプラ21、22および1×2光カプラ25、26が残っている。また、ウエハから光ICチップを切り出すときに、光回路11に結合する光導波路12が切断される。すなわち、光導波路12の先端が光ICチップのエッジに位置することになる。よって、光デバイスが光モジュール内に実装されるときには、光導波路12の先端に光ファイバが調芯されて保持される。
【0060】
図13は、本発明の実施形態に係わる光送受信モジュールの一例を示す。光送受信モジュール200は、光デバイス201、光源202、デジタル信号処理器(DSP)203を備える。
【0061】
光デバイス201は、
図4、
図6~
図7、または
図9~
図12に示す光ICチップにより実現される。すなわち、光デバイス201は、光回路11を備える。光回路11は、例えば、光変調器および光受信器を備える。光源202は、連続光を生成する。この連続光は、光変調器に与えられる。また、光受信器がコヒーレント受信器であるときは、光受信器にも連続光が与えられる。受信光信号(Rx_In)は、光受信器に導かれる。光変調器により生成される変調光信号(Tx_Out)は、光ファイバ伝送路に出力される。デジタル信号処理器203は、光デバイス201において変調光信号を生成するためのデータ信号を生成する。また、デジタル信号処理器203は、光デバイス201の受信光信号を表す電気信号を処理する。
【符号の説明】
【0062】
1、1B、1C、1D、1E 光デバイス
10 光ICチップ
10a デバイス領域
10b カプラ領域
11 光回路
12、23、24、27、28 光導波路
21、22 グレーティングカプラ
25、26 1×2光カプラ
29 光終端器
200 光送受信モジュール
201 光デバイス
500 ウエハ