(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091355
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】柱状型浮体、及び柱状型浮体製造方法
(51)【国際特許分類】
B63B 35/00 20200101AFI20230623BHJP
B63B 35/44 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
B63B35/00 T
B63B35/44 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206056
(22)【出願日】2021-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】弁理士法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】十川 靖弘
(72)【発明者】
【氏名】西郡 一雅
(72)【発明者】
【氏名】高橋 智彦
(72)【発明者】
【氏名】石川 哲哉
(57)【要約】
【課題】本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわち、従来に比して低コストかつ短期間で製造することができる柱状型浮体と、その製造方法を提供することである。
【解決手段】本願発明の柱状型浮体は、浮体式洋上風力発電施設を構成するものであって、中空の柱状である柱本体を備えたものである。この柱本体は、曲げ加工直面材を周方向に複数連結することで形成されものである。なお、曲げ加工直面材は「平面部」と一端側に形成される「曲げ加工部」とを含んで構成され、柱本体の断面形状は頂部が曲線とされた多角形となる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮体式洋上風力発電施設を構成する柱状型浮体において、
中空の柱状である柱本体を、備え、
前記柱本体は、曲げ加工直面材を周方向に複数連結することで形成され、
前記曲げ加工直面材は、平面部と、端部に形成される曲げ加工部と、を含み、
前記柱本体の断面形状は、頂部が曲線とされた多角形である、
ことを特徴とする柱状型浮体。
【請求項2】
浮体式洋上風力発電施設を構成する柱状型浮体において、
中空の柱状である柱本体を、備え、
前記柱本体は、曲げ加工直面材を周方向に複数連結することで形成され、
前記曲げ加工直面材は、2個所の平面部と、該平面部に挟まれた位置に形成される曲げ加工部と、を含み、
前記柱本体の断面形状は、頂部が曲線とされた多角形である、
ことを特徴とする柱状型浮体。
【請求項3】
浮体式洋上風力発電施設を構成する柱状型浮体において、
中空の柱状である柱本体を、備え、
前記柱本体は、曲げ加工直面材を周方向に複数連結することで形成され、
前記曲げ加工直面材は、2以上の曲げ加工部を含み、
前記柱本体の断面形状は、頂部が曲線とされた多角形である、
ことを特徴とする柱状型浮体。
【請求項4】
前記柱本体の一端に設けられる縮径体を、さらに備え、
前記縮径体は、前記曲げ加工直面材を周方向に複数連結することで形成されるとともに、前記柱本体から外方に向かって断面積が縮小する錐台形状であって、断面形状が該柱本体の断面形状と相似形である、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の柱状型浮体。
【請求項5】
浮体式洋上風力発電施設を構成する柱状型浮体を製造する方法において、
母材から、板面が平面である直面材を切り出す切断工程と、
前記直面材の一端に曲げ加工を施すことによって、平面部と曲げ加工部とを含む曲げ加工直面材を得る端部曲げ加工工程と、
複数の前記曲げ加工直面材を、所定の交差角で突き合せて配置する配置工程と、
前記配置工程によって配置された前記曲げ加工直面材どうしを溶接によって連結する連結工程と、を備え、
隣接する前記曲げ加工直面材の前記平面部と前記曲げ加工部を突き合せたうえで、複数の該曲げ加工直面材を周方向に連結していくことによって、中空の柱状である柱本体を製造する、
ことを特徴とする柱状型浮体製造方法。
【請求項6】
浮体式洋上風力発電施設を構成する柱状型浮体を製造する方法において、
母材から、板面が平面である直面材を切り出す切断工程と、
前記直面材の中間部に曲げ加工を施すことによって、2個所の平面部と、該平面部に挟まれた位置に形成される曲げ加工部と、を含む曲げ加工直面材を得る中間部曲げ加工工程と、
複数の前記曲げ加工直面材を、突き合せて配置する配置工程と、
前記配置工程によって配置された前記曲げ加工直面材どうしを溶接によって連結する連結工程と、を備え、
隣接する前記曲げ加工直面材の前記平面部どうしが同一面又は略同一面となるように突き合せたうえで、複数の該曲げ加工直面材を周方向に連結していくことによって、中空の柱状である柱本体を製造する、
ことを特徴とする柱状型浮体製造方法。
【請求項7】
浮体式洋上風力発電施設を構成する柱状型浮体を製造する方法において、
母材から、板面が平面である直面材を切り出す切断工程と、
前記直面材の2以上の箇所に曲げ加工を施すことによって、2以上の曲げ加工部を含む曲げ加工直面材を得る曲げ加工工程と、
複数の前記曲げ加工直面材を、突き合せて配置する配置工程と、
前記配置工程によって配置された前記曲げ加工直面材どうしを溶接によって連結する連結工程と、を備え、
隣接する前記曲げ加工直面材の端部どうしを突き合せたうえで、複数の該曲げ加工直面材を周方向に連結していくことによって、中空の柱状である柱本体を製造する、
ことを特徴とする柱状型浮体製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、浮体式洋上風力発電施設を構成する柱状型浮体に関するものであり、より具体的には、頂部が曲線とされた多角形の断面形状を有する柱本体を備えた柱状型浮体とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
我が国における電力消費量は、2008年の世界的金融危機の影響により一旦は減少に転じたものの、オイルショックがあった1973年以降継続的に増加しており、1973年度から2007年度の間には2.6倍にまで拡大している。その背景には、生活水準の向上に伴うエアコンや電気カーペットといったいわゆる家電製品の普及、あるいはオフィスビルの増加に伴うOA(Office Automation)機器や通信機器の普及などが挙げられる。
【0003】
これまで、このような莫大な量の電力需要を主に支えてきたのは、石油、石炭等いわゆる化石燃料による発電であった。ところが近年、化石燃料の枯渇化問題や、地球温暖化に伴う環境問題が注目されるようになり、これに応じて発電方式も次第に変化してきた。その結果、先に説明した1973年頃には、石油、石炭による発電が全体の約90%を占めていたのに対し、2010年にその割合は66%まで減少している。代わりに増加したのが全体の約10%強(2010年)を占めている原子力発電である。原子力発電は、従来の発電方式に比べ温室効果ガスの削減効果が顕著であるうえ、低コストで電力を提供できることから、我が国の電力需要にも大きく貢献してきた。
【0004】
また、温室効果ガスの排出を抑制することができるという点において、再生可能エネルギーによる発電方式も採用されるようになっている。この再生可能エネルギーは、太陽光や風力、地熱、中小水力、木質バイオマスといった文字どおり再生することができるエネルギーであり、温室効果ガスの排出を抑え、また国内で生産できることから、有望な低炭素エネルギーとして期待されている。
【0005】
再生可能エネルギーのうち特に風力を利用した発電方式は、電気エネルギーの変換効率が高いという特長を備えている。一般に、太陽光発電の変換効率は約20%、木質バイオマス発電は約20%、地熱発電は10~20%とされているのに対して、風力発電は20~40%とされているように、他の発電方法よりも高効率でエネルギーを電気に変換できる。また、太陽光発電とは異なり昼夜問わず発電することができることも風力発電の特長である。このような特長を備えていることもあって、風力発電は既にヨーロッパで主要な発電方法として多用され、我が国でも「エネルギーミックス」の取り組みにおいて2030年には電源構成のうち1.7%を担うことを目指している。
【0006】
風力発電はその設置場所によって陸上風力発電と洋上風力発電に大別され、このうち陸上風力発電は洋上風力発電に比べ設置が容易であり、したがってそのコストも抑えることができるといった特長を備えている。一方、洋上風力発電は、陸上風力発電が抱える騒音問題が生ずることがなく、また転倒等による被害リスクも回避でき、なにより陸上に比して大きな風力を安定的に得ることができるという特長を備えている。世界第6位の排他的経済水域を持つ我が国は、浮体洋上風力発電にとって適地であり、将来的には再生可能エネルギーの有望な産出地となり得ると考えられる。
【0007】
また洋上風力発電は、その設置場所によって異なる形式が採用され、50m以浅の海域では着床式洋上風力発電が適しており、50m以深の海域では浮体式洋上風力発電が適しているとされている。このうち浮体式洋上風力発電は、海水に浮かべる浮体を利用するものであり、係留索で繋がれた浮体上に発電機構を設置し、この発電機構によって発電する方式である。なお浮体形式には、ポンツーン形式(バージ形式)、セミサブ形式、スパー形式(柱状型)、緊張係留形式(TLP:Tension Leg Platform)などが挙げられ、大きな風力が得られるとされる陸域から離れた沖合では、主に柱状形式が採用される傾向にある。
【0008】
図16は、柱状形式の洋上風力発電施設を模式的に示す側面図である。この図に示すように柱状形式の洋上風力発電施設は、海中に浮かべる柱状型浮体(スパー型浮体)と、その上に設置されるタワーやローター、ナセルなどを含んで構成される。タワーはローターやナセルを支持する構造体であり、さらに柱状型浮体がタワーの基礎として機能している。そしてブレード(羽根)とハブからなるローターによって風を動力に変換し、増速機や発電機、変圧器などを含むナセルによって動力を電気に変換して、海底ケーブルを通じて陸域まで送電するわけである。なお柱状型浮体は、カテナリー(懸垂線)形状とされた係留索の自重によって係留されるのが一般的である。
【0009】
ところで従来の柱状型浮体は、特許文献1に示すようにその断面が円形の管形状(つまり円柱管)とされ、しかも鋼板を加工して製造するのが主流であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
鋼製の円柱管(つまり、鋼管)は、その製法によって継目無鋼管(シームレス)や溶接鋼管などに分けられるが、柱状型浮体のように大口径(例えばφ10m以上)のものは鋼板を曲面状に成形したうえで溶接して形成する溶接鋼管を用いることになる。ここで、
図17を参照しながら柱状型浮体の製造工程について説明する。
【0012】
まず
図17(a)に示すように、母材となる大型の鋼板から所定の大きさの板片(以下、便宜上「切出部材」という。)を切り出す。この切出部材は、柱状型浮体を構成するいわばパーツであり、そのため柱状型浮体を構成する必要な数(一般的には1,000を超える)だけ繰り返し切り出される。なお、
図17(a)で切り出された状態の切出部材は、板面が「平面」の板材である。ここでいう「平面」とは、曲面でないという意味であって、3次元空間における平面の一般式で表されるか、あるいはそれに近似した形状を指す。便宜上ここでは、板面が平面である板材のことを特に「直面材」ということとする。
【0013】
切出部材を切り出すと、
図17(b)に示すように「鋼板曲げ加工」や「ローラー曲げ加工」といった手法を利用し、切出部材に対して曲げ加工を施していく。上記したとおり従来の柱状型浮体はその断面が円形であり、直面材である切出部材は円形の一部を構成するように曲げ加工が施されるわけである。もちろん、この曲げ加工は切り出されたすべての切出部材に対して行われる。なお便宜上ここでは、板面が曲面である板材のことを特に「曲面材」ということとする。
【0014】
切出部材に対する曲げ加工が施されると、
図17(c)に示すように型治具の上に曲面材である切出部材を配置し、溶接によって隣接する切出部材どうしを接合していく。そして、ひとまず所定長さの半断面の構造体(以下、「半断面分割体」という。)を形成する。また
図17(d)に示すように、別途用意した小組(リブ)を、半断面分割体の内周面に所定間隔で設置する。
【0015】
半断面分割体が形成されると、
図17(e)に示すように2つの半断面分割体を溶接によって接合し、円形断面の「分割体」を形成する。そして
図17(f)に示すように、複数の分割体を軸方向に連結することによって、柱状型浮体が完成する。
【0016】
このように柱状型浮体を製造するにあたっては、大量の鋼材を利用する必要があり、しかも多種多様な工程を行わなければならない。特に
図17(b)に示す曲げ加工は、板長が5mほどの大型材料(切出部材)に対して行われることから1日に1材料(1枚)程度しか加工できず、そのうえ大量の(例えば1,000を超える)切出部材に対して加工しなければならない。したがって曲げ加工には人件費や加工機の損料、燃料費など多額の費用が掛かり、すなわち曲げ加工が柱状型浮体の製造費用を押し上げる大きな要因となっていた。
【0017】
本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわち、従来に比して低コストかつ短期間で製造することができる柱状型浮体と、その製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本願発明は、切出部材の全体に対して曲げ加工を行うことなく、大部分が直面材のまま中空管体の柱本体を形成する、という点に着目してなされたものであり、これまでにない発想に基づいて行われたものである。
【0019】
本願発明の柱状型浮体は、浮体式洋上風力発電施設を構成するものであって、中空の柱状である柱本体を備えたものである。この柱本体は、曲げ加工直面材を周方向に複数連結することで形成されたものである。なお、曲げ加工直面材は「平面部」と一端側に形成される「曲げ加工部」とを含んで構成され、柱本体の断面形状は頂部が曲線とされた多角形となる。
【0020】
本願発明の柱状型浮体は、中間部に曲げ加工部が形成された曲げ加工直面材を使用したものとすることもできる。この場合の曲げ加工直面材は、2個所に平面部が配置されるとともに、これら平面部に挟まれた位置に曲げ加工部が配置される。また柱本体は、隣接する曲げ加工直面材の平面部どうしが略同一面(同一面を含む)となるように突き合せたうえで周方向に連結されたものとされる。
【0021】
本願発明の柱状型浮体は、2以上の曲げ加工部を含む曲げ加工直面材を使用したものとすることもできる。この場合の曲げ加工直面材は、平面部に挟まれたそれぞれの位置に曲げ加工部が配置される。
【0022】
本願発明の柱状型浮体は、柱本体の一端に設けられる縮径体をさらに備えたものとすることもできる。この縮径体は、複数の曲げ加工直面材を周方向に連結することで形成されるとともに、柱本体から外方に向かって断面積が縮小する錐台形状であって、断面形状が柱本体の断面形状と相似形となるものである。
【0023】
本願発明の柱状型浮体製造方法は、本願発明の柱状型浮体を製造する方法であって、切断工程と端部曲げ加工工程、配置工程、連結工程を備えた方法である。このうち切断工程では、母材から直面材を切り出し、端部曲げ加工工程では、直面材の一端に曲げ加工を施すことによって曲げ加工直面材を得る。また配置工程では、複数の曲げ加工直面材を所定の交差角で突き合せて配置し、連結工程では、配置工程によって配置された曲げ加工直面材どうしを溶接によって連結(接合)する。なお、隣接する曲げ加工直面材の平面部と曲げ加工部を突き合せたうえで、複数の曲げ加工直面材を周方向に連結していくことによって中空の柱状である柱本体を製造する。
【0024】
本願発明の柱状型浮体製造方法は、中間部曲げ加工工程を備えた方法とすることもできる。この中間部曲げ加工工程では、直面材の中間部に曲げ加工を施すことによって曲げ加工直面材を得る。この場合の曲げ加工直面材は、2個所に配置される平面部と、これら平面部に挟まれた位置に曲げ加工部とを含むものである。そして、隣接する曲げ加工直面材の平面部どうしが略同一面(同一面を含む)となるように突き合せたうえで、複数の曲げ加工直面材を周方向に連結していくことによって、中空の柱状である柱本体を製造する。
【0025】
本願発明の柱状型浮体製造方法は、曲げ加工工程を備えた方法とすることもできる。この曲げ加工工程では、直面材の2以上の箇所に曲げ加工を施すことによって曲げ加工直面材を得る。この場合の曲げ加工直面材は、平面部に挟まれたそれぞれの位置に曲げ加工部を含むものである。そして、隣接する曲げ加工直面材の端部どうしを突き合せたうえで、複数の曲げ加工直面材を周方向に連結していくことによって、中空の柱状である柱本体を製造する。
【発明の効果】
【0026】
本願発明の柱状型浮体、及び柱状型浮体製造方法には、次のような効果がある。
(1)切出部材の端部のみに対して曲げ加工を行うだけであり、切出部材全体に対して曲げ加工を行っていた従来技術に比して柱状型浮体の製造コストが大幅に低減される。その結果、柱状型浮体を調達しやすくなり、柱状型浮体の採用が拡大していくことが期待できる。
(2)曲げ加工にかかる作業者の負担を軽減することができることから、近年の慢性的な人材不足の問題の解決に貢献することができる。
(3)また曲げ加工に必要な燃料や電力など各種エネルギーの消費を低減することができることから、従来に比して環境に与える負荷を抑制することができる。
(4)断面視の頂部が構造的に不連続な「角部」であれば応力集中が生じやすい。これに対して本願発明は、その頂部に曲げ加工を施していることから、応力集中を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本願発明の柱状型浮体を模式的に示す斜視図。
【
図2】(a)は直面材を説明する平面図、(b)は直面材を説明する側面図。
【
図4】直面材を千鳥配置とした本願発明の柱状型浮体を模式的に示す斜視図。
【
図5】(a)は屈折材を説明する平面図、(b)は屈折材を説明する側面図。
【
図6】本願発明の柱状型浮体を模式的に示す斜視図。
【
図7】(a)は曲げ加工直面材を説明する平面図、(b)は曲げ加工直面材を説明する側面図。
【
図8】曲げ加工直面材によって形成された柱本体の一部を模式的に示す断面図。
【
図9】(a)は中間に曲げ加工部を有する曲げ加工直面材を説明する平面図、(b)は中間に曲げ加工部を有する曲げ加工直面材を説明する側面図。
【
図10】中間に曲げ加工部を有する曲げ加工直面材によって形成された柱本体の一部を模式的に示す断面図。
【
図11】第1の実施形態における本願発明の柱状型浮体製造方法の主な工程を示すフロー図。
【
図12】第1の実施形態における本願発明の柱状型浮体製造方法の主な工程を示すステップ図。
【
図13】(a)は配置用治具を内周面側に当接しながら配置した2つの直面材を上方から見た平面図、(b)は交差角を調整する機能と従来の型治具の機能をあわせ持つ配置用治具に載置した直面材を示す側面図。
【
図14】第2の実施形態における本願発明の柱状型浮体製造方法の主な工程を示すフロー図。
【
図15】第3の実施形態における本願発明の柱状型浮体製造方法の主な工程を示すフロー図。
【
図16】スパー形式の洋上風力発電施設を模式的に示す側面図。
【
図17】柱状型浮体の製造工程を模式的に示すステップ図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本願発明の柱状型浮体(スパー型浮体)、及び柱状型浮体製造方法の実施形態の一例を、図に基づいて説明する。なお本願発明の柱状型浮体は、浮体式洋上風力発電施設を構成するものとして利用する場合に特に好適に実施することができ、本願発明の柱状型浮体製造方法は、本願発明の柱状型浮体を製造する場合に特に好適に実施することができる。
【0029】
1.柱状型浮体
はじめに本願発明の柱状型浮体について図を参照しながら詳しく説明する。なお、本願発明の柱状型浮体製造方法は、本願発明の柱状型浮体を製造する方法であり、したがってまずは本願発明の柱状型浮体について説明し、その後に本願発明の柱状型浮体製造方法について詳しく説明することとする。
【0030】
図1は、本願発明の柱状型浮体100を模式的に示す斜視図である。この図に示すように本願発明の柱状型浮体100は、柱本体110を含んで構成され、さらに縮径体120や底板130を含んで構成することもできる。以下、柱状型浮体100を構成する主な要素ごとに説明する。
【0031】
(柱本体)
柱本体110は、
図1に示すように断面寸法に比して軸(以下、「柱軸」という。)方向寸法の方が大きい長尺体であって内部は中空とされ、つまり外形は概ね管状を呈している。そして柱本体110は、複数の直面材FPによって形成されることを一つの特徴としている。
【0032】
図2は、直面材FPを説明する図であり、(a)はその平面図、(b)はその側面図である。この図に示すように直面材FPは、平面寸法に比して肉厚寸法が小さい板状の部材であって、その板面は概ね平面(平面含む)とされる。既述したとおりここでいう「平面」とは、曲面でないという意味であって、3次元空間における平面の一般式(ax+by+cz+d=0)で表される形状を指す。
【0033】
柱本体110は、例えば溶接接合によって複数の直面材FPを断面の周方向に連結することで形成される。そのため柱本体110の断面形状は、
図3に示すように多角形となる。なお
図3では、同じ幅を有する12の直面材FPによって正12角形が形成されているが、もちろんこれに限らず任意数のn角形(nは自然数)とすることができ、また正多角形(全辺長が等しい多角形)ではない多角形(各辺長が異なる)とすることもできる。また
図1からも分かるように柱本体110の柱軸長によっては、複数の直面材FPを断面周方向に連結した「分割体」(つまり1リング)を、柱軸方向に複数(図では12段)連結して形成するとよい。あるいは
図4に示すように、周方向に隣接する直面材FPの柱軸方向における配置高さが同じにならないように(いわゆる千鳥配置としたうえで)、柱軸方向に複数連結して形成することもできる。
【0034】
柱本体110は、直面材FPに代えて屈折材RPによって形成することもできる。
図5は、屈折材RPを説明する図であり、(a)はその平面図、(b)はその側面図である。この図に示すように屈折材RPは、直面材FPを所定の屈折角で折り曲げた板材である。ここで所定の屈折角とは、複数の屈折材RPによって目的とする柱状型浮体100の断面形状(多角形)が完成するための角度(つまり多角形の内角)であって、例えば
図3に示す正12角形であれば、屈折材RPの屈折角は150°となる。なお屈折材RPは、
図5に示すように折り曲げ箇所(以下、「屈折線」という。)が1個所のもの(つまり、2面の直面材FPからなるもの)に限らず、屈折線が2個所以上のもの(つまり、3面以上の直面材FPからなるもの)とすることもできる。
【0035】
屈折材RPによって形成される柱本体110は、屈折加工を要しない直面材FPによって形成されるケースに比べるとやや手間がかかるものの、従来の曲げ加工に比べると大幅にその手間は低減され、また溶接個所が少なくなるという利点もある。
【0036】
図6に示すように、屈折材RPによって形成された柱本体110の柱軸長によっては、複数の屈折材RPを断面周方向に連結した「分割体」(つまり1リング)を、柱軸方向に複数(図では部分的に示す4段)連結して形成するとよい。このとき、柱軸方向に隣接する分割体の連結位置(つまり、溶接ラインWL)どうしが連続する(繋がる)いわゆる「いも継ぎ」は避け、
図6に示すように柱軸方向(図では上下)に隣接する分割体の溶接ラインWLどうしが不連続となる(ずれた)いわゆる「千鳥配置」にするとよい。一般的に溶接個所は他の部分と比べて構造上の弱点となりやすく、
図6に示すように溶接ラインWLを千鳥配置とすることで全体的な構造脆弱性を緩和することができるわけである。なお分割体は、屈折材RPのみによって形成することもできるし、屈折材RPと直面材FPを組み合わせて形成することもできる。
【0037】
また柱本体110は、直面材FPや屈折材RPに代えて、曲げ加工直面材BPによって形成することもできる。
図7は、曲げ加工直面材BPを説明する図であり、(a)はその平面図、(b)はその側面図である。この図に示すように曲げ加工直面材BPは、直面材FPの一端(図では右側)に曲げ加工を施したものであり、すなわち平面である「平面部SF」と、曲げ加工された「曲げ加工部SR」とを有する板部材である。
【0038】
曲げ加工直面材BPを用いた本体110も、例えば溶接接合によって複数の曲げ加工直面材BPを断面周方向に連結することによって形成される。このとき、隣接する曲げ加工直面材BPどうしは、
図8に示すように、平面部SFの端面と曲げ加工部SRの端面を突き合せるように配置される。そのため柱本体110の断面形状は、概ね多角形ではあるが頂部が曲線となる形状(以下、便宜上ここでは「面取り多角形」という。)となる。この場合も、複数の曲げ加工直面材BPを断面周方向に連結した「分割体」(つまり1リング)を、柱軸方向に複数連結して形成するとよい。なお分割体は、曲げ加工直面材BPのみによって形成することもできるし、直面材FPや屈折材RPを組み合わせて形成することもできる。
【0039】
曲げ加工部は、
図7(b)に示すように断面視でいわゆる扇形であり、その中心角は、屈折材RPの屈折角と同様、複数の曲げ加工直面材BPによって目的とする柱状型浮体100の断面形状(面取り多角形)が完成するための角度(つまり多角形の内角)である。一般的に、曲げ半径が小さいほど工作時間が短くなるという利点があるものの応力集中が生じやすいという短所があり、曲げ半径が大きいほど工作時間が掛かるという短所があるものの構造的な連続性がよくなり応力集中を緩和することができるという利点がある。そのため、曲げ加工部SR(つまり、扇形)の曲げ半径は状況に応じて任意に設計することができ、50mm以上1000mm以下の曲げ半径で設計するとよく、より好ましくは100mm以上300mm以下がよい。
【0040】
曲げ加工直面材BPは、端部に曲げ加工部SRを有するもの(
図7)のほか、
図9に示すように中間部に曲げ加工部SRを有するもの(以下、特に「中間曲げ加工直面材BPM」という。)とすることもできる。
図9は、中間曲げ加工直面材BPMを説明する図であり、(a)はその平面図、(b)はその側面図である。この中間曲げ加工直面材BPMは、
図9に示すように直面材FPの中間部(図では略中央)に曲げ加工を施したものであり、直面材FPが2個所に形成されるとともに、これら直面材FPに挟まれる位置に曲げ加工部SRが形成された板部材である。
【0041】
中間曲げ加工直面材BPMを用いた本体110も、例えば溶接接合によって複数の中間曲げ加工直面材BPMを断面周方向に連結することによって形成される。このとき、隣接する曲げ加工直面材BPどうしは、
図10に示すように、隣接する平面部SFの端面どうしの端面を突き合せるように、しかも隣接する平面部SFどうしが略同一面(同一面を含む)となるように配置される。これにより柱本体110の断面形状は、
図8と同様、「面取り多角形」となる。この場合も、複数の中間曲げ加工直面材BPMを断面周方向に連結した「分割体」(つまり1リング)を、柱軸方向に複数連結して形成するとよい。なお分割体は、中間曲げ加工直面材BPMのみによって形成することもできるし、直面材FPや屈折材RP、曲げ加工直面材BPを組み合わせて形成することもできる。
【0042】
図9や
図10に示す中間曲げ加工直面材BPMは、2つの平面部SFと1つの曲げ加工部SRを有するものであるが、これに限らず3以上の平面部SFと2以上の曲げ加工部SRを有するものとすることもできる。例えば、平面部SFをn箇所(nは3以上の自然数)に形成するとともに、これら平面部SFに挟まれたそれぞれの位置に曲げ加工部SRをn-1箇所に形成するわけである。さらに中間曲げ加工直面材BPMは、端部(一端あるいは両端)に曲げ加工部SRを有するもの(つまり、曲げ加工直面材BPと中間曲げ加工直面材BPMを組み合わせたもの)とすることもできる。また、
図7や
図8に示す曲げ加工直面材BPは、一端にのみ曲げ加工部SRを有するものであるが、これに限らず両端に曲げ加工部SRが形成されたものとすることもできる。
【0043】
曲げ加工直面材BP(中間曲げ加工直面材BPMを含む)によって形成される柱本体110は、端部曲げ加工を要しない直面材FPによって形成されるケースに比べるとやや手間がかかるものの、従来の曲げ加工に比べると大幅にその手間は低減され、また多角形の頂部が面取りされていることから欠けや凹みといった損傷を受けにくいという利点もある。
【0044】
(縮径体)
縮径体120は、ローターやナセルを支持するタワー(
図16)と連結されるもので、柱本体110の太径からタワーの細径に変更するためのいわば調整区間である。そのため縮径体120は、
図1に示すように、使用時(海中設置時)における柱本体110の上端に設けられ、また柱本体110から柱軸方向の外側(図では上側)に向かって断面積が縮小する錐台形状(つまりテーパー形状)とされる。
【0045】
縮径体120は、柱本体110と同様、複数の直面材FPを断面周方向に連結することで形成される。より詳しくは、柱本体110から柱軸方向の外側(図では上側)に向かって内側(中心側)に傾斜するように直面材FPを配置したうえで周方向に連結された構成である。そのため縮径体120の断面形状は、多角形となり、しかも柱本体110の断面形状と相似形にするとよい。また
図1からも分かるように縮径体120の柱軸長によっては、複数の直面材FPを周方向に連結した構造体(つまり1リング)を、柱軸方向に複数(図では2段)連結して形成するとよい。縮径体120は、柱本体110と同様、直面材FPに代えて屈折材RPや曲げ加工直面材BP(中間曲げ加工直面材BPMを含む)によって形成することもできるし、屈折材RPと直面材FP、曲げ加工直面材BP(中間曲げ加工直面材BPMを含む)を組み合わせて形成することもできる。なお
図4では、一体の縮径体120を柱本体110の上部に設置しているが、これに限らず複数段からなる縮径体120を柱本体110の上部に設置することもできる。この場合、上方に向かって断面積が縮小していくように順次、縮径体120を重ねていく。
【0046】
(底板)
柱状型浮体110は、使用時に海面付近で浮かぶ必要があることから、浮力を受ける構造とされる。したがって、使用時における柱本体110の下端には底板130が設けられる。底板130で封鎖することによって、柱状型浮体110の内部への海水の進入を防ぎ、すなわち柱状型浮体110内部と海中との圧力差を生じさせるわけである。なお底板130は、平面視で多角形とし、さらに柱本体110の断面形状と相似形にするとよい。
【0047】
2.柱状型浮体製造方法
続いて本願発明の柱状型浮体製造方法について図を参照しながら詳しく説明する。なお、本願発明の柱状型浮体製造方法は、ここまで説明した柱状型浮体100を製造する方法であり、したがって柱状型浮体100で説明した内容と重複する説明は避け、本願発明の柱状型浮体製造方法に特有の内容のみ説明することとする。すなわち、ここに記載されていない内容は、「1.柱状型浮体」で説明したものと同様である。
【0048】
また本願発明の柱状型浮体製造方法は、直面材FPによって柱状型浮体110を形成する形態(以下、「第1の実施形態」という。)と、屈折材RPによって(あるいは屈折材RPと直面材FPを組み合わせて)柱状型浮体110を形成する形態(以下、「第2の実施形態」という。)、さらに曲げ加工直面材BPによって(あるいは屈折材RPや直面材FPを組み合わせて)柱状型浮体110を形成する形態(以下、「第3の実施形態」という。)に大別することができる。以下、それぞれ実施形態ごとに順に説明していく。
【0049】
(第1の実施形態)
図11は、第1の実施形態における本願発明の柱状型浮体製造方法の主な工程を示すフロー図であり、
図12は、第1の実施形態における本願発明の柱状型浮体製造方法の主な工程を示すステップ図である。
【0050】
まず
図12(a)に示すように、母材となる大型の鋼板から所定の大きさの板片(切出部材)を切り出す(
図11のStep101)。この切断工程では、本願発明の柱状型浮体100を構成する必要な切出部材の数(一般的には1,000を超える)だけ繰り返し切り出される。なお、
図12(a)で切り出された状態の切出部材は直面材FPであることから、以下では切出部材のことを直面材FPということとする。
【0051】
直面材FPを切り出すと、
図12(b)に示すように例えば型治具の上に直面材FPを配置していく(
図11のStep102)。このとき、隣接する2つの直面材FPが所定の交差角となるように突き合せて配置する。ここで所定の交差角とは、複数の直面材FPによって目的とする柱状型浮体100の断面形状(多角形)が完成するための角度(つまり多角形の内角)であって、例えば
図3に示す正12角形であれば、隣接する2つの直面材FPの交差角は150°となる。なお本願発明における配置工程では、直面材FPをそのまま配置していくことが肝要であり、すなわち従来技術のように直面材FPを曲げ加工(
図17(b))することなく(つまり曲面材に加工することなく)直面材FPを配置していく。これにより柱状型浮体100の製造コストを、従来に比して大幅に低減することができるわけである。
【0052】
ところで、目視によって所定の交差角となるように直面材FPを配置することは容易ではない。そこで
図13(a)に示すように、配置用治具ATを用いて隣接する2つの直面材FPを配置するとよい。この配置用治具ATは、所定の交差角(例えば
図3の場合は150°)が形成されており、したがってこの配置用治具ATを直面材FPの内周面側に当接しながら配置すると、隣接する2つの直面材FPが所定の交差角で突き合せられるわけである。この場合、直面材FPを床面上に、しかもその板面が略鉛直(鉛直含む)姿勢となるように配置すると、配置用治具ATを当接した状態での位置調整が比較的容易となる。ただし、直面材FPが転倒しないようにクレーン等で吊上げた状態とし、かつ直面材FPの前面と背面からサポート材で支持しておくとよい。
【0053】
あるいは
図13(b)に示す配置用治具ATを用いて隣接する2つの直面材FPを配置することもできる。
図13(b)に示す配置用治具ATにも、所定の交差角(例えば
図3の場合は150°)が形成されており、この図に示すように複数(図では5つ)の直面材FPを配置用治具ATの上に載置するだけで、自動的に隣接する2つの直面材FPが所定の交差角で突き合せられるわけである。つまり
図13(b)に示す配置用治具ATは、交差角を調整する機能と、従来の型治具の機能をあわせ持つ治具である。ただし、
図17(c)に示すように従来の型治具は切出部材(曲面材)の内周面が上方となるように載置するものであるのに対して、
図13(b)に示す配置用治具ATは直面材FPの外周面が上方となるように載置するものである。
図13(a)からも分かるように、隣接する2つの直面材FPを突き合せるとその外周面側にいわば「開先」が設けられることとなり、したがって
図13(b)に示す配置用治具ATに直面材FPを載置すると、その状態のまま次工程の連結(溶接接合)工程を行うことができるわけである。
【0054】
直面材FPが配置されると、溶接等によって隣接する切出部材どうしを接合(連結)し(
図11のStep103)、ひとまず半断面分割体(所定長さの半断面の構造体)を形成する。また
図12(c)に示すように、別途用意した小組(リブ)を半断面分割体の内周面に所定間隔で設置する(
図11のStep104)。半断面分割体が形成されると、
図12(d)に示すように2つの半断面分割体を溶接等によって接合し、多角形断面の「分割体」(つまり1リング)を形成する(
図11のStep105)。そして
図12(e)に示すように、複数(図では4段)の分割体を軸方向に連結することによって柱本体110を形成する(
図11のStep106)。
【0055】
さらに、柱本体110と同様の工程で形成された縮径体120を柱本体110の一端(上端)に取り付け(
図11のStep107)、柱本体110他端(下端)を封鎖するように底板130を固定して(
図11のStep108)、本願発明の柱状型浮体100が完成する。
【0056】
(第2の実施形態)
図14は、第2の実施形態における本願発明の柱状型浮体製造方法の主な工程を示すフロー図である。
【0057】
まず、第1の実施形態と同様、母材となる大型の鋼板から直面材FPを切り出す(
図14のStep201)。直面材FPを切り出すと、この直面材FPを所定の屈折角で折り曲げて屈折材RPを得る(
図14のStep202)。この折り曲げ工程は、切り出された直面材FPの数だけ繰り返し行われる。
【0058】
屈折材RPが得られると、第1の実施形態と同様、屈折材RPを配置していき(
図14のStep203)、溶接等によって隣接する屈折材RPどうしを接合(連結)する(
図14のStep204)ことで、ひとまず半断面分割体を形成する。また、別途用意した小組(リブ)を半断面分割体の内周面に所定間隔で設置する(
図14のStep205)。半断面分割体が形成されると、2つの半断面分割体を溶接等によって接合し、多角形断面の分割体を形成する(
図14のStep206)。そして、複数(図では4段)の分割体を軸方向に連結することによって柱本体110を形成する(
図14のStep207)。このとき、
図6に示すように柱軸方向に隣接する分割体の溶接ラインWLどうしが不連続となる(千鳥配置となる)ように連結していくとよい。
【0059】
さらに、柱本体110と同様の工程で形成された縮径体120を柱本体110の一端(上端)に取り付け(
図14のStep208)、柱本体110他端(下端)を封鎖するように底板130を固定して(
図14のStep209)、本願発明の柱状型浮体100が完成する。
【0060】
(第3の実施形態)
図15は、第3の実施形態における本願発明の柱状型浮体製造方法の主な工程を示すフロー図である。
【0061】
まず、第1の実施形態や第2の実施形態と同様、母材となる大型の鋼板から直面材FPを切り出す(
図15のStep301)。直面材FPを切り出すと、この直面材FPの端部(一端あるいは両端)に曲げ加工を施すことによって「曲げ加工部SR」と「平面部SF」が形成された曲げ加工直面材BPを得る(
図15のStep302)。このとき、曲げ加工部SRが所定の中心角となるように曲げ加工を行うことは既述したとおりである。また、この折り曲げ工程は、切り出された直面材FPの数だけ繰り返し行われる。なお、中間曲げ加工直面材BPMを使用して柱状型浮体100を製造する場合は、切り出された直面材FPの中間部に曲げ加工を施すことによって中間曲げ加工直面材BPMを得る(中間部曲げ加工工程)。もちろん、2以上の曲げ加工部SRを有する場合、その個所だけ曲げ加工が行われる(曲げ加工工程)。
【0062】
曲げ加工直面材BPが得られると、第1の実施形態や第2の実施形態と同様、曲げ加工直面材BPを配置していき(
図15のStep303)、溶接等によって隣接する曲げ加工直面材BPどうしを接合(連結)する(
図15のStep304)ことで、ひとまず半断面分割体を形成する。また、別途用意した小組(リブ)を半断面分割体の内周面に所定間隔で設置する(
図15のStep305)。半断面分割体が形成されると、2つの半断面分割体を溶接等によって接合し、面取り多角形断面の分割体を形成する(
図15のStep306)。そして、複数の分割体を軸方向に連結することによって柱本体110を形成する(
図15のStep307)。
【0063】
さらに、柱本体110と同様の工程で形成された縮径体120を柱本体110の一端(上端)に取り付け(
図15のStep308)、柱本体110他端(下端)を封鎖するように底板130を固定して(
図15のStep309)、本願発明の柱状型浮体100が完成する。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本願発明の柱状型浮体、及び柱状型浮体製造方法は、50m以深の海域における浮体式洋上風力発電に特に好適に利用することができる。本願発明によれば低コストで浮体式洋上風力発電施設を構築することができることから、洋上風力発電に対するより積極的な動機を期待することができ、ひいては温室効果ガスの排出を抑えたうえで安定的にエネルギーを供給することを考えれば、本願発明は産業上利用できるばかりでなく社会的にも大きな貢献を期待し得る発明といえる。
【符号の説明】
【0065】
100 本願発明の柱状型浮体
110 (柱状型浮体の)柱本体
120 (柱状型浮体の)縮径体
130 (柱状型浮体の)底板
AT 配置用治具
BP 曲げ加工直面材
BPM 中間曲げ加工直面材
SF (曲げ加工直面材や中間曲げ加工直面材の)平面部
SR (曲げ加工直面材や中間曲げ加工直面材の)曲げ加工部
FP 直面材
RP 屈折材
WL 溶接ライン