(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091359
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】個装吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/56 20060101AFI20230623BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
A61F13/56 110
A61F13/15 220
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206064
(22)【出願日】2021-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】永島 真里子
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200CA11
3B200DE03
3B200DF09
(57)【要約】
【課題】個別包装された吸収性物品を素早く装着できるようにするとともに、装着時の位置合わせをしやすくする。
【解決手段】下着に固定するためのズレ止め粘着剤層8を備えた吸収性物品が、ズレ止め粘着剤層8を剥離可能に覆う剥離シート13及び前記剥離シート13の外面側に固定された個装シート20と共に、幅方向の折り線にて長手方向に折り畳まれて、個装シート20によって個別包装された個装吸収性物品である。剥離シート13及び個装シート20がそれぞれ、装着時に着用者の体液排出部に対応する領域を含む前方部F及びその後方の後方部Bに分離可能に形成されており、前方部Fの剥離シート13及び個装シート20を取り除き、前方部Fのズレ止め粘着剤層8を露出させるとともに、後方部Bの剥離シート13及び個装シート20を配置したままの状態とした吸収性物品の前方部Fが、先行的に下着に固定できるようになっている。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下着に固定するためのズレ止め粘着剤層を備えた吸収性物品が、前記ズレ止め粘着剤層を剥離可能に覆う剥離シート及び前記剥離シートの外面側に固定された個装シートと共に、幅方向の折り線にて長手方向に折り畳まれて、前記個装シートによって個別包装された個装吸収性物品であって、
前記剥離シート及び個装シートがそれぞれ、装着時に着用者の体液排出部に対応する領域を含む前方部及びその後方の後方部に分離可能に形成されており、
前記前方部の前記剥離シート及び個装シートを取り除き、前記前方部の前記ズレ止め粘着剤層を露出させるとともに、前記後方部の前記剥離シート及び個装シートを配置したままの状態とした前記吸収性物品の前記前方部が、先行的に下着に固定できるようになっていることを特徴とする個装吸収性物品。
【請求項2】
前記後方部の個装シートの後端中央部に、手の触覚で識別可能なマークが施されている請求項1記載の個装吸収性物品。
【請求項3】
前記マークは、前記後方部の個装シートの後端中央部から後方に突出する摘み部によって形成されている請求項2記載の個装吸収性物品。
【請求項4】
前記後方部の剥離シートの前端部が長手方向に折り返されるとともに、この折り返し端部に設けられた固定部のみで、前記後方部の剥離シートが前記個装シートに固定されている請求項1~3いずれかに記載の個装吸収性物品。
【請求項5】
前記後方部の剥離シートと個装シートとを固定する固定部が、該固定部に最も近接する前記折り線より後側に位置している請求項1~4いずれかに記載の個装吸収性物品。
【請求項6】
前記個装シートは、前記前方部と後方部との境界に沿ってミシン目が設けられている請求項1~5いずれかに記載の個装吸収性物品。
【請求項7】
前記個装シートは、前記前方部と後方部との境界の両側部に切欠き部が設けられている請求項1~6いずれかに記載の個装吸収性物品。
【請求項8】
前記個装シートは、前記前方部と後方部との境界部が易破断性のシート材で形成されている請求項1~7いずれかに記載の個装吸収性物品。
【請求項9】
前記ズレ止め粘着剤層が、前記前方部と後方部に分離して配置されるとともに、前記剥離シートが、前記前方部と後方部に分離して配置されている請求項1~8いずれかに記載の個装吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキン、パンティライナー、おりものシート、失禁パッド等の吸収性物品が個装シートと共に折り畳まれて、前記個装シートによって個別包装された個装吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、吸収性物品50としては、例えば
図19に示されるように、ポリエチレンラミネート不織布などからなる不透液性の裏面シート51と、不織布又は透孔性プラスチックシートなどからなる透液性の表面シート52との間に綿状パルプなどからなる吸収体53を介在させるとともに、装着状態で下着とのズレ止めを図るために、非肌当接面(裏面シート51の外面)に、1又は複数条の粘着剤層54を形成したものが知られている。
【0003】
前記吸収性物品50を個装するには、
図19及び
図20に示されるように、前記粘着剤層54を紙又はフィルムからなる剥離シート55によって被覆するとともに、吸収性物品50の外面側に個装シート56を配置し、吸収性物品50、剥離シート55及び個装シート56をともに、適宜の幅方向の折り線57にて長手方向に三つ折り又は四つ折りとし、側縁部分及び開封部を封止する。
【0004】
このようにして個装された吸収性物品50を下着に装着するには、
図21に示されるように、開封部から開封して吸収性物品50から個装シート56及び剥離シート55を全て取り除き、前記粘着剤層54を露出させた状態で、下着の内面に貼着する。
【0005】
前記吸収性物品Nを下着に装着する際の手間を軽減したものとして、例えば下記特許文献1、2が存在する。特許文献1には、吸収性物品の裏面シート側における排泄部対向領域に、包装シートが、粘着性を有する本体ズレ止め部を介して剥離可能に接合され、前記排泄部対向領域に対応する表面シート側では、該表面シート側を内側にして、吸収性物品の長手方向の前方部および後方部が折り畳まれ、包装シートで覆われており、前記包装シートは、裏面シート側における排泄部対向領域に対向する位置に、個包装体の開封部を有しており、前記開封部が開封された際に、吸収性物品の裏面シート側における前方部および後方部と包装シートとの剥離可能な接合状態が保持され、吸収性物品の折り畳まれた構造が保持される吸収性物品の個包装体が開示されている。かかる個包装体では、開封部を基点に、包装シートを吸収性物品の長手方向の前後方向に向け引き剥がし、吸収性物品のうち排泄部対向領域だけをまず露出させることにより、コンパクトな個包装の状態を維持したまま、排泄部対向領域が着用者の排泄部に対応するよう的確な装着位置決めを行うことができるようにしている。
【0006】
また特許文献2には、吸収性物品が、個装状態で、長手方向の中間部を頂部としてその前後部分がそれぞれ透液性表面シート側に折り畳まれており、前記頂部に対応する部位に、吸収性物品のズレ止め粘着剤層を覆う剥離シート及び包装シートの剥離開始端が設けられている個装吸収性物品が開示されている。かかる吸収性物品では、剥離開始端から剥離シート及び包装シートを剥がして、前記頂部付近のズレ止め粘着剤層のみを露出させた状態で、この頂部付近のみをはじめに下着に固定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-150233号公報
【特許文献2】特開2015-123164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1、2はいずれも、吸収性物品の長手方向中間に設けられた開封部から包装シート及び剥離シートを引き剥がし、ズレ止め粘着剤層の一部を露出させた状態で、この部分をはじめに下着に固定するようにしたものであり、これにより、固定位置の調整などがしやすくなるなどの利点を有する。ところが、固定位置を決定した後は、包装シート及び剥離シートを全て取り除き、長手方向に折り畳まれた吸収性物品の前後部をそれぞれ展開し、ズレ止め粘着剤層を下着に固定するという手順を経なければ、吸収性物品を装着することができず、装着完了までに作業手順が多く、かなりの時間を要することが問題であった。
【0009】
また、上述した従来の吸収性物品50では、個装シート56及び剥離シート55を開封時に全て取り除いて、粘着剤層54を全部露出させた状態で、下着に固定しているため、個装シート及び剥離シートを全て取り除くのに時間がかかるとともに、吸収性物品の適切な領域が着用者の体液排出部に当たるようにする前後方向の位置調整や、吸収性物品の後方中央部が臀部溝に沿うようにする回転方向の角度調整など、固定位置の調整に時間がかかっていた。
【0010】
生理期間中における日常生活の中では、例えば風呂上がりのときなどに、身体を拭いたり、子供の世話をしたり、生理用ナプキンを下着に貼り付けたりしてる間に、経血が出てきて脚やタオル、床などが汚れるという課題があった。このため、まずは排血口領域だけでも先に吸収性物品を下着に取り付けて装着したいという要望があった。
【0011】
特に、夜用生理用ナプキンは、着用者の臀部溝を覆うように後方に長く形成されているため、個包装から剥離シート及び個装シートを引き剥がして生理用ナプキンを取り出すのに時間がかかるとともに、その後固定位置を調整しながら下着の適正な位置に取り付けるのに時間がかかり、焦る気持ちから取付位置の付け直しを何度も繰り返したり、粘着剤層が意図しない部分に貼り付いたりして、余計に苛立たしさが増すという問題があった。
【0012】
また、経血で汚れるのを避けたいがために焦燥感が増して、急いで下着に取り付けようとするから、装着位置がずれやすくなるという問題があった。
【0013】
そこで本発明の主たる課題は、個別包装された吸収性物品を素早く装着できるようにするとともに、装着時の位置合わせをしやすくした個装吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために第1の態様として、下着に固定するためのズレ止め粘着剤層を備えた吸収性物品が、前記ズレ止め粘着剤層を剥離可能に覆う剥離シート及び前記剥離シートの外面側に固定された個装シートと共に、幅方向の折り線にて長手方向に折り畳まれて、前記個装シートによって個別包装された個装吸収性物品であって、
前記剥離シート及び個装シートがそれぞれ、装着時に着用者の体液排出部に対応する領域を含む前方部及びその後方の後方部に分離可能に形成されており、
前記前方部の前記剥離シート及び個装シートを取り除き、前記前方部の前記ズレ止め粘着剤層を露出させるとともに、前記後方部の前記剥離シート及び個装シートを配置したままの状態とした前記吸収性物品の前記前方部が、先行的に下着に固定できるようになっていることを特徴とする個装吸収性物品が提供される。
【0015】
上記第1の態様では、前記剥離シート及び個装シートがそれぞれ、装着時に着用者の体液排出部に対応する領域を含む前方部及び後方部に分離可能に形成されている。かかる個装吸収性物品から吸収性物品を取り出して下着に装着するには、前方部の剥離シート及び個装シートを吸収性物品から取り除いて、前方部のズレ止め粘着剤層を露出させるとともに、後方部の剥離シート及び個装シートを配置したままの状態とした上で、この吸収性物品の前方部を、先行的に下着に固定する。このように、まずは体液排出部だけでも先に急いで吸収性物品で覆いたい場合に、最低限の領域(体液排出部に対応する領域を含む前方部)だけ先に下着に固定して装着できるから、装着時間の短縮化が図れ、素早い装着が可能になる。また、後方部のズレ止め粘着剤層が剥離シートで覆われているため、後方部が意図しない部分に貼り付いたりすること無く、位置合わせがしやすい。
【0016】
このようにして前方部を先行的に下着に固定して装着した後、落ち着いたら、下着の中に手を入れて、後方部の個装シート及び剥離シートを引っ張り出し、後方部を下着に固定する。
【0017】
第2の態様として、前記後方部の個装シートの後端中央部に、手の触覚で識別可能なマークが施されている請求項1記載の個装吸収性物品が提供される。
【0018】
上記第2の態様では、吸収性物品の前方部を下着に固定して装着した後、下着の中に手を入れて、後方部の個装シート及び剥離シートを引っ張り出しやすくするため、後方部の個装シートの後端中央部に、手の触覚で識別可能なマークを設けている。
【0019】
第3の態様として、前記マークは、前記後方部の個装シートの後端中央部から後方に突出する摘み部によって形成されている請求項2記載の個装吸収性物品が提供される。
【0020】
上記第3の態様では、前記マークを、後方部の個装シートの後端中央部から後方に突出する摘み部によって形成しているため、この摘み部を手で摘まんで簡単に引っ張り出すことができるようになる。
【0021】
第4の態様として、前記後方部の剥離シートの前端部が長手方向に折り返されるとともに、この折り返し端部に設けられた固定部のみで、前記後方部の剥離シートが前記個装シートに固定されている請求項1~3いずれかに記載の個装吸収性物品が提供される。
【0022】
上記第4の態様では、後方部の剥離シートの前端部を長手方向に折り返し、この折り返し端部に設けられた固定部のみで、前記後方部の剥離シートを個装シートに固定しているため、吸収性物品の前方部を下着に固定して装着した後、下着の中に手を入れて、後方部の個装シートを引っ張り出す際、剥離シートが後方部のズレ止め粘着剤層の前端部から確実に剥離し、容易に剥離シートを引き剥がすことができるようになる。
【0023】
第5の態様として、前記後方部の剥離シートと個装シートとを固定する固定部が、該固定部に最も近接する前記折り線より後側に位置している請求項1~4いずれかに記載の個装吸収性物品が提供される。
【0024】
上記第5の態様では、吸収性物品の前方部を下着に固定して装着した後、下着の中に手を入れて、後方部の個装シートを引っ張り出す際、個装時の吸収性物品の折り癖によって、折り位置で引っ掛かって、後方部の個装シート及び剥離シートが引っ張り出しにくくなるのを防ぐため、前記固定部を、該固定部に最も近接する折り線より後側に設けている。
【0025】
第6の態様として、前記個装シートは、前記前方部と後方部との境界に沿ってミシン目が設けられている請求項1~5いずれかに記載の個装吸収性物品が提供される。
【0026】
上記第6の態様では、前記個装シートを前方部と後方部で分離可能にする第1の手段として、個装シートの前方部と後方部の境界に沿ってミシン目を設けている。
【0027】
第7の態様として、前記個装シートは、前記前方部と後方部との境界の両側部に切欠き部が設けられている請求項1~6いずれかに記載の個装吸収性物品が提供される。
【0028】
上記第7の態様では、前記個装シートを前方部と後方部で分離可能にする第2の手段として、個装シートの前方部と後方部の境界の両側部に切欠き部を設けている。なお、前方部と後方部の境界に沿ってミシン目を設けた上で、その両側部に切欠き部を設けてもよい。
【0029】
第8の態様として、前記個装シートは、前記前方部と後方部との境界部が易破断性のシート材で形成されている請求項1~7いずれかに記載の個装吸収性物品が提供される。
【0030】
上記第8の態様では、前記個装シートを前方部と後方部で分離可能にする第3の手段として、個装シートの前方部と後方部の境界部を易破断性のシート材で形成している。なお、前方部と後方部の境界部に易破断性のシート材を使用した上で、前記ミシン目や切欠き部を設けてもよい。
【0031】
第9の態様として、前記ズレ止め粘着剤層が、前記前方部と後方部に分離して配置されるとともに、前記剥離シートが、前記前方部と後方部に分離して配置されている請求項1~8いずれかに記載の個装吸収性物品が提供される。
【0032】
上記第9の態様では、ズレ止め粘着剤層及び剥離シートの前方部及び後方部の配置形態について規定しており、ズレ止め粘着剤層を予め、前方部と後方部に分離して配置するとともに、剥離シートも同様に、前方部と後方部に分離して配置している。
【発明の効果】
【0033】
以上詳説のとおり本発明によれば、個別包装された吸収性物品を素早く装着できるとともに、装着時の位置合わせがしやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明に係る個装生理用ナプキンNを展開した状態を示す一部破断平面図である。
【
図3】
図1のII-II線矢視図(横断面図)である。
【
図4】
図1のIII-III線矢視図(横断面図)である。
【
図6】変形例に係る個装シート20の前方部Fと後方部Bの境界部分を示す拡大平面図である。
【
図9】生理用ナプキン1の装着手順(その1)を示す斜視図である。
【
図10】生理用ナプキン1の装着手順(その2)を示す縦断面図である。
【
図11】生理用ナプキン1の装着手順(その3)を示す下着の斜視図である。
【
図12】生理用ナプキン1の装着手順(その4)を示す下着の背面図である。
【
図13】生理用ナプキン1の装着手順(その5)を示す下着の背面図である。
【
図15】後方部Bの後方個装シート20B及び後方剥離シート13Bを引っ張り出す際の端部の動きを示す、縦断面図である。
【
図16】後方部Bの後方個装シート20B及び後方剥離シート13Bの固定部の変形例を示す、縦断面図である。
【
図17】(A)は好ましい形態、(B)は好ましくない形態を示す、縦断面図である。
【
図18】仮止め部28を示す後方部Bの拡大裏面図である。
【
図19】従来の吸収性物品50を示す平面図である。
【
図20】従来の吸収性物品50の個装要領を示す斜視図である。
【
図21】従来の吸収性物品50の装着状態を示す下着の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0036】
本発明に係る個装生理用ナプキンNは、生理用ナプキン1が個装シート20と共に長手方向に折り畳まれて、該生理用ナプキン1が前記個装シート20によって個別包装されたものである。
【0037】
〔生理用ナプキン1の基本構造〕
先ずはじめに、前記生理用ナプキン1の基本構造について、
図1~
図4に基づいて説明する。
【0038】
前記生理用ナプキン1は、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシートなどからなる不透液性の裏面シート2と、経血やおりものなど(以下、まとめて体液ともいう。)を速やかに透過させる透液性の表面シート3と、これら両シート2,3間に介在された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、前記吸収体4の形状保持および拡散性向上のために前記吸収体4を囲繞するクレープ紙又は不織布などからなる被包シート5と、肌当接面側の両側部にそれぞれ前後方向に沿って配置されるサイドシート7とを備え、かつ前記吸収体4の周囲においては、その前後端縁部では前記裏面シート2と表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4よりも側方に延出している前記裏面シート2と前記サイドシート7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合されることにより、吸収体が介在しないフラップ部が形成されたものである。なお、前記表面シート3と吸収体4との間であって、表面シート3の非肌側に隣接して多孔プラスチックフィルム又は不織布などからなるセカンドシートを配置してもよい。
【0039】
以下、さらに前記生理用ナプキン1の構造について詳述すると、
前記裏面シート2は、ポリエチレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、蒸れ防止の観点から透湿性を有するものを用いるのが望ましい。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。前記裏面シート2としては、プラスチックフィルムと不織布とを積層させたポリラミ不織布を用いてもよい。前記吸収体4が介在する本体部分の裏面シート2の非肌側面(外面)には、ナプキン前後方向に沿って1または複数条の、図示例では3条のズレ止め粘着剤層8が形成され、身体への装着時に生理用ナプキン1を下着の内面に固定するようになっている。
【0040】
次いで、前記表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高で圧縮復元性が高い点で優れている。前記表面シート3に多数の透孔を形成した場合には、体液が速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。不織布の繊維は、長繊維または短繊維のいずれでもよいが、好ましくはタオル地の風合いを出すため短繊維を使用するのがよい。また、エンボス処理を容易とするために、比較的低融点のポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系繊維のものを用いるのがよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド-バイ-サイド型繊維、分割型繊維の複合繊維を好適に用いることもできる。
【0041】
前記裏面シート2と表面シート3との間に介在される吸収体4は、たとえば綿状パルプと吸水性ポリマーとにより構成されている。前記吸水性ポリマーは吸収体を構成するパルプ中に、例えば粒状粉として混入されている。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。
【0042】
また、前記吸収体4には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド-バイ-サイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0043】
前記表面シート3の幅寸法は、図示例では、
図3及び
図4の横断面図に示されるように、吸収体4の幅よりも若干長めとされ、吸収体4を覆うだけに止まり、それより外方側は前記表面シート3とは別のサイドシート7、具体的には経血やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの目的に応じて、適宜の撥水処理または親水処理を施した不織布素材を用いて構成されたサイドシート7が配設されている。かかるサイドシート7としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができるが、好ましくはゴワ付き感を無くすとともに、ムレを防止するために、坪量を抑えて通気性を持たせた不織布を用いるのがよい。
【0044】
前記サイドシート7は、幅方向中間部より外側部分を所定の内側位置から裏面シート2の外縁までの範囲に亘ってホットメルトなどの接着剤によって接着され、当該サイドシート7と裏面シート2との積層シート部分により、吸収体4の両側部に吸収体4が介在しないサイドフラップ部を形成している。
【0045】
このサイドフラップ部は、ほぼ着用者の体液排出部Hに相当する側部位置に、吸収体4の側縁からの延出量をその前後の部位よりも拡大させた左右一対のウイング状フラップ部W、Wを形成するとともに、これより臀部側(後部側)位置に、吸収体4の側縁からの延出量をその前後の部位よりも拡大させた左右一対のヒップホールド用フラップ部W
B、W
Bを形成する。
図2に示されるように、これらウイング状フラップ部W、Wおよびヒップホールド用フラップ部W
B、W
Bの外面側(裏面シート2の外面側)にはそれぞれウイング用粘着剤層10、ヒップホールド用粘着剤層11が備えられ、下着に対する装着時に、前記ウイング状フラップ部W、Wを基端部の折返し線RL(
図1参照。)位置にて反対側(裏面シート2側)に折り返し、下着のクロッチ部分に巻き付けて、前記ウイング用粘着剤層10を下着のクロッチ部分の外面に止着するとともに、前記ヒップホールド用粘着剤層11を下着の内面に止着し、装着時に着用者の臀部を覆うようになっている。
【0046】
一方、前記サイドシート7の内方側部分はほぼ二重に折り返されるとともに、この二重シート内部の長手方向中間部に、両端または長手方向の適宜の位置が固定された1又は複数本の、図示例では3本の糸状弾性伸縮部材9が伸長状態で配設されている。この二重シート部分は前後端部では
図4に示されるように、外側に1回折り返して積層された状態で吸収体4側に接着された非起立部分を形成している。これによって、
図3に示されるように、長手方向中間部の前記糸状弾性伸縮部材9の配置範囲が、前記糸状弾性伸縮部材9の収縮力により肌側に起立する左右対の立体ギャザーBS、BSを形成している。
【0047】
前記ズレ止め粘着剤層8は、生理用ナプキン1の装着時に着用者の体液排出部Hに対応する領域を含む前方部Fと、その後方の後方部Bとに亘って、連続する連続線状に設けてもよいが、前方部Fと後方部Bに分離して配置した方が、開封しやすくなるので好ましい。すなわち、好適には、前記ズレ止め粘着剤層8は、前方部Fに配置される前方ズレ止め粘着剤層8Fと、後方部Bに配置される後方ズレ止め粘着剤層8Bとからなり、これら前方ズレ止め粘着剤層8Fと後方ズレ止め粘着剤層8Bとの間に、生理用ナプキン1の長手方向に離隔する離隔部が設けられている。
【0048】
図1に示されるように、前記表面シート3の肌当接面側には、所定の形態で圧搾溝12が形成されている。前記圧搾溝12は、表面シート3の肌当接面側からの圧搾により、表面シート3及び吸収体4を一体的に裏面シート2側に窪ませた凹溝である。前記圧搾溝12は、少なくとも着用者の体液排出部Hに対応する領域の両側部に長手方向に沿って左右対で設けられている。
【0049】
〔個装生理用ナプキンN〕
前記本体部分の非肌側面に設けられたズレ止め粘着剤層8は、剥離シート13によって剥離可能に覆われている。前記剥離シート13としては、ズレ止め粘着剤層8に対する当接面に対し、例えばシリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、または四フッ化エチレン系樹脂などの離型処理液を塗工するかスプレー塗布し離型処理したプラスチックまたは紙からなるシートを用いることができる。なお、特別に離型処理をしなくても、実質的に粘着力の低下を招かないものであれば、フィルムそのものであっても、不織布そのものであっても良い。
【0050】
前記ズレ止め粘着剤層8を前方部Fと後方部Bとで連続する連続線状に設けた場合、前記剥離シート13は、前方部Fと後方部Bとの境目に開封時に分離可能な易破断部を備えた連続シート状に形成するか、前方部Fの前方剥離シート13Fと後方部Bの後方剥離シート13Bとに予め分離され、その境目で隙間なく又は若干の重なり代を有するように配置されたものを使用する。前記易破断部としては、前方部Fと後方部Bとの境界に沿って設けられたミシン目、前方部Fと後方部Bとの境界の両側部に設けられた切欠き部、前方部Fと後方部Bとの境界部に設けられた易破断性のシート材、のいずれか又は2以上の組み合わせを用いることができる。
【0051】
一方、前記ズレ止め粘着剤層8が、前方部Fの前方ズレ止め粘着剤層8Fと、後方部Bの後方ズレ止め粘着剤層8Bとに分離して配置される場合、前記剥離シート13は、前記前方ズレ止め粘着剤層8Fを剥離可能に被覆する前方剥離シート13Fと、前記後方ズレ止め粘着剤層8Bを剥離可能に被覆する後方剥離シート13Bとに予め分離して配置されたものを使用する。
【0052】
前記ウイング状フラップ部W及びヒップホールド用フラップ部W
Bのいずれか又は両方を備えた生理用ナプキン1では、前記ウイング用粘着剤層10及びヒップホールド用粘着剤層11を覆うように、前記剥離シート13における対応する部分の両側部が幅方向外側に延出している。図示例では、
図2及び
図5に示されるように、左右のウイング用粘着剤層10を一体的に覆う、生理用ナプキン1の幅方向に長いウイング用剥離シート14が、前方剥離シート13Fとの重なり部で該前方剥離シート13Fに、ホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段からなる固定部15によって固定されるとともに、左右のヒップホールド用粘着剤層11を一体的に覆う、生理用ナプキン1の幅方向に長いヒップホールド用剥離シート16が、後方剥離シート13Bとの重なり部で該後方剥離シート13Bに、ホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段からなる固定部17によって固定されている。
【0053】
前記剥離シート13は、所定の固定部18、19で個装シート20に剥離不能に固定されている。「剥離不能」及び「固定」とは、個装生理用ナプキンNの開封時に生理用ナプキン1を取り出す際の引張力によって個装シート20と剥離シート9との固定状態が解除されないことを意味する。前記固定部11は、ホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段で構成される。図示例では、前記前方剥離シート13Fが、前方剥離シート13Fの前端部及び後端部にそれぞれ設けられた固定部18で個装シート20(後述する前方個装シート20F)に固定されるとともに、前記後方剥離シート13Bが、後方剥離シート13Bの前端部に設けられた固定部19で個装シート20(後述する後方個装シート20B)に固定されている。
【0054】
前記生理用ナプキン1を個別包装する個装シート20は、
図1及び
図2に示されるように、生理用ナプキン1の長手方向(前後方向)と対応する左右一対の長手側縁20aと、生理用ナプキン1の長手方向と直交する短手方向(幅方向)と対応する一対の短手側縁20b、20cとにより画成される略矩形状のシートとされる。寸法的には、短手寸法としては、
図7に示されるように、生理用ナプキン1の本体部分より幅方向外側に突出するフラップ部(ウイング状フラップ部W及びヒップホールド用フラップ部W
B)を内側に折り畳んだ状態の幅寸法より幅広の両側に延在する寸法で形成されている。また、長手寸法としては、少なくとも一方端側(パウチテープ21が備えられる開封端縁20b側)が生理用ナプキン1の前側端縁より外側に延在して形成され、他方端側(20c側)は、図示例のように生理用ナプキン1の後側端縁より長くしてもよいし、生理用ナプキン1の後側端縁より短くしてもよい。好ましくは、後段で説明するように、後方個装シート20Bの後端部を手で摘まんで引っ張り出しやすいように、生理用ナプキン1の後側端縁より長くするのがよい。
【0055】
前記個装シート20は、前記前方部F及び後方部Bに分離可能に形成されている。つまり、個装生理用ナプキンNの開封前は個装シート20が前方部Fから後方部Bにかけて連続的に形成されており、開封時に、前方部Fと後方部Bとの境界において切り離すことにより、前方個装シート20Fと後方個装シート20Bとに分離できるようになっている。これによって、開封前に生理用ナプキン1が個装シート20によって覆われるため、衛生状態が維持できる。
【0056】
前記個装シート20を分離可能に形成するには、次の(1)~(3)の手段のいずれか又は2以上の組み合わせとすることができる。
【0057】
(1)
図2に示されるように、個装シート20の前方部Fと後方部Bとの境界に沿ってミシン目23を設けることにより分離可能とする。
【0058】
(2)
図6(A)に示されるように、前記個装シート20の前方部Fと後方部Bとの境界の両側部に切欠き部24を設けることにより分離可能とする。
【0059】
(3)
図6(B)に示されるように、前記個装シート20の前方部Fと後方部Bとの境界部を易破断性のシート材25で形成することにより分離可能とする。なお、前記シート材25は、開封時に個装シート20を手で摘まんだ状態で、人が簡単に破断できる程度の破断強度を有する素材からなるものであり、具体的には紙や易破断性のプラスチックフィルムなどを用いることができる。前記シート材25の配置は、前方の個装シート20と後方の個装シート20とを生理用ナプキン1の長手方向に離隔して配置し、この離隔部に前記シート材25を配置するとともに、両端部を各個装シート20にホットメルトなどの接着剤によって固定する。
【0060】
上記(1)~(3)の手段は、それぞれ単独で用いてもよいし、2以上の手段を組み合わせて使用してもよい。組み合わせの例としては、前記ミシン目23を設けるとともに、その両端部に切欠き部24を設けたり、前方部Fと後方部Bとの境界部に易破断性のシート材25を設けた上で、このシート材25にミシン目23を設けるとともに、その両端部に切欠き部24を設けたりすることなどを挙げることができる。
【0061】
次に、前記個装シート20によって生理用ナプキン1を個装する方法について説明する。先ずはじめに、
図2及び
図5に示されるように、個装シート20の上面に剥離シート13を固定部18、19で固着し、この剥離シート13の上面に生理用ナプキン1を配置する。実際の製造工程では、前記ズレ止め粘着剤層8が前記剥離シート13上に塗布され、この剥離シート13上に生理用ナプキン1を配置したときに前記ズレ止め粘着剤層8が裏面シート2の外面に転写されるようになっている。
【0062】
次いで、
図7に示されるように、本体部分より幅方向外側に突出するフラップ部(ウイング状フラップW及びヒップホールド用フラップ部W
B)を、このフラップ部の基端部(吸収体4の側縁部)を長手方向に沿う折り線にて、表面シート3側に折り畳む。
【0063】
その後、
図7に示されるように、ナプキン幅方向に沿う折り線X1位置にてナプキン後端部をその前側領域に折り畳むとともに、この折り返されたナプキン後方部を、ナプキン幅方向に沿う折り線X2位置にてナプキン中央部に折り畳み、更に、ナプキン幅方向に沿う折り線X3位置にてナプキン前方部をその上面に折り畳む4つ折りとする。折り畳み方式は、特にこれに限定するものではなく、3つ折りなどの公知の折り畳み方式を制限なく採用することができる。
【0064】
その後、
図8に示されるように、個装シート20の開口した両側縁20a、20aに沿ってエンボス圧着、加熱融着、接着剤等の適宜の封止手段の単独又は組み合わせからなる側縁封止部22を形成する。しかる後、開封端縁20bを跨ぐパウチテープ21を貼着して、生理用ナプキン1が個装シート20によって個別包装された個装生理用ナプキンNが完成する。
【0065】
次に、前記個装生理用ナプキンNから生理用ナプキン1を取り出して下着に装着する手順について説明する。先ずはじめに、パウチテープ21を剥がして個装生理用ナプキンNの開封端縁20bから開封し、側縁封止部22を解除して、生理用ナプキン1を長手方向に展開する。次いで、
図9に示されるように、前方部Fの前方ズレ止め粘着剤層8Fを覆う前方剥離シート13F及び前方個装シート20Fを取り除き、前方部Fの前方ズレ止め粘着剤層8Fを露出させる(
図10)。個装シート20から前方個装シート20Fを取り除くには、前方部Fと後方部Bの境界に設けられたミシン目23などで個装シート20を破断し、前方個装シート20Fと後方個装シート20Bとに分離する。
【0066】
これにより、生理用ナプキン1は、
図10に示されるように、後方部Bに後方剥離シート13B及び後方個装シート20Bが配置されたままの状態となる。その後、
図11に示されるように、この状態の生理用ナプキン1の前方部Fを、先行的に下着に固定する。これにより、着用者の体液排出部Hに対応する領域を含む前方部Fが先行的に下着に固定できる。
【0067】
このように、生理期間中における風呂上がりのときなどに、身体を拭いたり、子供の世話をしたり、生理用ナプキンを下着に貼り付けたりしてる間に、経血が出てきて脚やタオル、床などが汚れるのを防止するため、まずは体液排出部Hだけでも急いで生理用ナプキンで覆いたいという場合に、最低限の領域である体液排出部Hに対応する領域を含む前方部Fだけでも先に下着に固定して装着できるから、装着時間の短縮化が図れ、素早い装着が可能になる。つまり、従来の吸収性物品では、吸収性物品の全長に亘る個装シート及び剥離シートを全て取り除いた後でないと、下着に固定できなかったが、本生理用ナプキン1では、前方部Fの前方個装シート20F及び前方剥離シート13Fを取り除くだけで、生理用ナプキン1の前方部Fが下着に固定できるため、個装シート20及び剥離シート13を取り除く時間や、位置合わせに掛かる時間が短縮化でき、素早い装着が可能になる。また、体液排出部Hに対応する領域では、両側部の太ももの内側が当たって生理用ナプキン1の位置ずれが生じやすい部分であるが、前方ズレ止め粘着剤層8Fによって生理用ナプキン1の前方部Fが先行的に下着に固定されているため、このような位置ずれが生じにくい。
【0068】
また、後方部Bの後方ズレ止め粘着剤層8Bが後方剥離シート13Bで覆われているため、前方ズレ止め粘着剤層8Fを下着に固定する作業において、後方部Bの後方ズレ止め粘着剤層8Bが意図しない部分に貼り付いたりすることが無く、位置合わせがしやすくなる。
【0069】
このようにして前方部Fを先に下着に固定して装着した後、落ち着いたら、
図12に示されるように、下着の胴部開口の背中側から下着の中に手を入れて、後方部Bの後方個装シート20B及び後方剥離シート13Bを引っ張り出し(
図13)、後方ズレ止め粘着剤層8Bを下着に固定する。これにより、生理用ナプキン1が完全に下着に固定できるようになる。
【0070】
生理用ナプキン1の前方部Fを下着に固定して装着した後、背中側から下着の中に手を入れて後方個装シート20B及び後方剥離シート13Bを引っ張り出す際、目視せずに手探りで後方個装シート20Bの引っ張り端部が識別できるようにするため、
図1などに示されるように、後方部Bの後方個装シート20Bの後端中央部に、手の触覚で識別可能なマーク26を施すのがよい。前記マーク26は、後方個装シート20Bの後端中央部に後方に突出することなく設けてもよいが、
図14に示されるように、後方個装シート20Bの後端中央部から後方に突出する摘み部によって形成した方が、引っ張り出すときの摘み部として利用できるため好ましい。この摘み部の形状としては、
図14(A)の略台形状や矩形状、(B)のリング状などとすることができる。(B)のリング状では、中央部の穴に指が引っ掛けられるようにすると、後方個装シート20B及び後方剥離シート13Bを引っ張り出しやすくなる。
【0071】
前記マーク26は、剛性や触感が個装シートの他の部分と異なるようにすることにより、手の触覚で識別しやすくするのが好ましい。剛性や触感を変化させるには、加熱して硬化させたり、粘液状の薬剤を塗布してぬるぬるさせたりすることができる。また、剛性が異なる別部材を表面に貼付するか、或いはマーク26自体を別部材で構成し、これを後方個装シート20Bの後端中央部から後方に突出した状態で固着してもよい。
【0072】
前記マーク26を手で摘まんで後方個装シート20Bを引っ張り出すことにより、後方剥離シート13Bが後方ズレ止め粘着剤層8Bから剥離するように構成されている。前記後方剥離シート13Bが後方ズレ止め粘着剤層8Bから容易に剥離できるように、
図2、
図5及び
図15に示されるように、後方剥離シート13Bと後方個装シート20Bとの固定が、後方剥離シート13Bの前端部に設けられた固定部19のみによって成されており、それ以外では後方剥離シート13Bと後方個装シート20Bとが固定されないようにするのが好ましい。これにより、
図15に示されるように、後方個装シート20Bの後端中央部に設けられた前記マーク26を手で摘まんで引っ張ったとき、前記固定部19を介して固定された後方剥離シート13Bの前端部に引張力が作用し、後方剥離シート13Bが前端部から徐々に剥離するようになる。これにより、後方剥離シート13Bが後方ズレ止め粘着剤層8Bから容易に剥離できる。
【0073】
更に後方剥離シート13Bの剥離を容易にするため、
図15に示されるように、後方剥離シート13Bの前端部を長手方向に折り返して折り返し部27を形成するとともに、この折り返し部27の先端部の折り返し端部27aに、前記固定部19が設けられることにより、前記後方剥離シート13Bが後方個装シート20Bに固定されるようにするのがよい。これにより、
図15(B)に示されるように、後方個装シート20Bを引っ張ったとき、固定部19を介して後方剥離シート13Bの折り返し端部27aに引張力が伝播するとともに、折り返し部27の折り返し開始端27b(折り返し部27が開始する最初の折り返し部分である第1折返し部)からめくれ上がって、後方剥離シート13Bが後方ズレ止め粘着剤層8Bの端部から徐々に剥離するようになる。このとき、折り返し部27の折り返し開始端27bは、
図15(A)に示されるように、後方ズレ止め粘着剤層8Bの前端8Baより前側に位置するように配置されている。
【0074】
前記折り返し部27は、少なくとも1回折り返されていればよいが、
図15に示されるように、2回折り返して、Z状に形成することにより、離型処理が施された剥離処理面と反対側面の非剥離処理面を固定部19に対向させ、固定部19の固定強度が確保できるようにするのがよい。このような観点から、折り返し回数は、2回以上の偶数回とするのが好ましい。
【0075】
図16に示されるように、前記折り返し部27は設けなくてもよく、この場合には、固定部19の前端19aが、後方ズレ止め粘着剤層8Bの前端8Baより前側に位置するように配置する。これにより、後方剥離シート13Bが後方ズレ止め粘着剤層8Bの前端から徐々に剥離できるようになる。なお、前記折り返し部27を設けた場合には、前記固定部19の後方ズレ止め粘着剤層8Bに対する位置は関係なく、前記折り返し開始端27bが後方ズレ止め粘着剤層8Bの前端8Baより前側に位置していれば足りる。
【0076】
前述のように、後方部Bの後方剥離シート13Bと後方個装シート20Bとの固定が、後方剥離シート13Bの前端部に設けられた固定部19のみによって成された形態において、
図17(A)に示されるように、前記固定部19は、該固定部19に最も近接する折り線X2より後側に位置している。これに対して、同
図17(B)に示されるように、前記固定部19が前記折り線X2より前側に位置する場合には、後方個装シート20Bの後端部を引っ張って後方個装シート20B及び後方剥離シート13Bを引っ張り出す際、個装時の生理用ナプキン1の折り癖によって、角張った折り位置で引っ掛かって、引っ張り出しにくくなるという問題が生じるので好ましくない。本発明では、
図17(A)に示されるように、固定部19を折り線X2より後側に設けることにより、後方剥離シート13Bと後方ズレ止め粘着剤層8Bとの剥離初期の段階で、固定部19が折り癖が付いた部位を通過しないため、引っ掛かりが低減し、引っ張り出す作業に支障が生じなくなる。
【0077】
本発明では、後方個装シート20Bが後方剥離シート13Bの前端部に設けられた固定部19のみで固定されているため、前方部Fの剥離シート13及び個装シート20を取り除いて前方部Fのズレ止め粘着剤層8を露出させた後、生理用ナプキン1を下着に装着する際、生理用ナプキン1に取り付けられた後方部Bの後方個装シート20Bがヒラヒラして装着しにくくなるおそれがある。そこで、
図18に示されるように、後方剥離シート13Bの後側部分を任意の部位に仮止めする仮止め部28を設けてもよい。前記仮止め部28は、生理用ナプキン1の前方部Fを下着に固定して、後方部Bの剥離シート13及び個装シート20を取り除くまでの間、後方個装シート20Bが生理用ナプキン1の後方部Bに沿って配置される形態を維持すればよく、その後の後方部Bの剥離シート13及び個装シート20を引っ張り出す際の引張力によって容易に剥離する程度の粘着力で形成されている。具体的な粘着力としては、剥離シート13とズレ止め粘着剤層8との粘着力と同等以下であればよい。前記仮止め部28は、後方個装シート20Bを任意の部材に接合する位置に設けられており、例えば、
図18に示されるように、裏面シート2と対向する位置に配置することができる。また、その他に、後方剥離シート13Bと対向する位置や、ヒップホールド用剥離シート16と対向する位置などに配置してもよい。
【0078】
次に、前記個装生理用ナプキンNの製造方法について説明すると、まずはじめに、前方剥離シート13F及び後方剥離シート13Bを所定の形状に裁断し、後方剥離シート13Bの前端部をセーラーなどにより折り畳んで前記折り返し部27を形成する。また、必要に応じて、前記前方剥離シート13Fに前記ウイング用剥離シート14を固定部15で固定するとともに、前記後方剥離シート13Bに前記ヒップホールド用剥離シート16を固定部17で固定する。
【0079】
前記剥離シート13の製造が完了したら、この剥離シート13に個装シート20との固定用の接着剤を塗布し、個装シート20と固定する。具体的には、前記前方剥離シート13Fの所定位置に固定部18用の接着剤を塗布するとともに、後方剥離シート13Bの所定位置に固定部19用の接着剤を塗布し、合流する個装シート20に固着する。
【0080】
その後、固定シート20を所定の形状に裁断し、前記マーク26部分に対してエンボス付与や薬剤塗布などを行う。
【0081】
前記剥離シート13の剥離処理面には、適宜の段階でズレ止め粘着剤層8が塗布され、この剥離シート13上に生理用ナプキン1が配置されることにより、前記ズレ止め粘着剤層8が裏面シート2の外面に転写される。
【0082】
しかる後、前述の通り、前記個装シート20によって生理用ナプキン1を個装する。
【符号の説明】
【0083】
1…生理用ナプキン、2…裏面シート、3…表面シート、4…吸収体、5…被包シート、7…サイドシート、8…ズレ止め粘着剤層、8F…前方ズレ止め粘着剤層、8B…後方ズレ止め粘着剤層、9…糸状弾性伸縮部材、10…ウイング用粘着剤層、11…ヒップホールド用粘着剤層、12…圧搾溝、13…剥離シート、13F…前方剥離シート、13B…後方剥離シート、14…ウイング用剥離シート、15…固定部、16…ヒップホールド用剥離シート、17…固定部、18・19…固定部、20…個装シート、20F…前方個装シート、20B…後方個装シート、21…パウチテープ、22…側縁封止部、23…ミシン目、24…切欠き部、25…易破断性のシート材、26…マーク、27…折り返し部、28…仮止め部