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  • 特開-シリンジを用いた液体供給システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091366
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】シリンジを用いた液体供給システム
(51)【国際特許分類】
   B01J 4/00 20060101AFI20230623BHJP
【FI】
B01J4/00 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206072
(22)【出願日】2021-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】593064951
【氏名又は名称】兵神機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093698
【弁理士】
【氏名又は名称】進藤 純一
(72)【発明者】
【氏名】龍美 修次
【テーマコード(参考)】
4G068
【Fターム(参考)】
4G068AA07
4G068AB11
4G068AB15
4G068AC17
4G068AD21
4G068AD40
4G068AF01
4G068AF14
(57)【要約】
【課題】無重力環境および微小重力環境において気体を混入させず液体のみを安定して移送することができるようにする。
【解決手段】シリンジ1をタンクとして活用し液体用容積形のポンプ2で液体を移送する液体移送ラインSLと、液体移送ラインSLから分岐してポンプ2を迂回するバイパスラインBLとで液体供給システムを構成し、必要に応じて、ポンプ2が故障した際にシリンジ1を手動ポンプとして活用して液体の供給を行うことができるよう、バイパスラインBLに開閉バルブ3を設ける。また、シリンジ本体1に液量目盛10を設け、また、押し子5が押し込み限界位置に接近したことを検知するようシリンジ本体4と押し子5に近接センサ11を取り付ける。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状で一端にノズル部を有し他端に開口部を有するシリンジ本体に棒状で先端側に気密摺接部を有する押し子が挿入されてなるシリンジを用い、前記ノズル部を液体用容積形のポンプの吸込側に接続してシリンジ内の液体をポンプで移送する液体移送ラインを形成してなることを特徴とするシリンジを用いた液体供給システム。
【請求項2】
前記液体移送ラインから分岐して前記ポンプを迂回するバイパスラインを設け、該バイパスラインに開閉バルブを設けてなる請求項1記載のシリンジを用いた液体供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無重力環境および微小重力環境において液体を安定して供給するためのシリンジを用いた液体供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
宇宙ステーションや月面のような無重力環境あるいは微小重力環境においては、液体と気体が重力によって分離することはないので、例えば植物や実験動物を育成するのに必要な水等の液体を供給するのに、重力を利用するものである地上用の液体供給装置をそのまま使用することはできない。そこで、そのような宇宙環境において使用するための装置として、従来から、例えば、可撓性を有する液体輸送管内にウイックを充填し、無重力下で表面張力により液体収容タンクの壁面に張り付く液体を毛細管現象でウイックに染込ませ、モータにより移動するスクイズローラによって輸送管を順次圧迫して液体を移送するようにした液体輸送装置(例えば、特許文献1参照。)や、筒状のケースの中に支持部材で支持してバルーンを配置し、支持部材に設けた充填口を液体源に接続して水等の液体をバルーンに供給し、バルーンの収縮力によって流出口から配管内へ押し出すようにした液体供給装置(例えば、特許文献2参照。)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62-82287号公報
【特許文献2】特開2016-88602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、宇宙等の無重力環境あるいは微小重力環境において、タンク等に収容された液体を気体と完全に分離することはできず、液体のみを安定して移送することはできない。
【0005】
本発明は、無重力環境および微小重力環境において気体を混入させず液体のみを安定して移送することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、気体を混入させずに液体のみを収容し注出できる装置であるシリンジを液体収納のためのタンクとして利用し、シリンジに充填した液体をシリンジとは別体のポンプで移送することにより、無重力環境および微小重力環境において気体の混入を防いで液体のみを安定して移送することができ、使用条件に合わせてタンク容量や供給する液体の種類を制限無く且つ簡単に変更でき、使用条件に合わせてポンプを変更することができ、ポンプ並びに制御部の配置に制約がなくて、場所を取らず、制御並びに管理が容易なものとすることができるよう液体供給システムを構成したものであり、また、そうした液体供給システムにおいて、ポンプが故障した際はシリンジを手動ポンプとしても活用できるようにしたものである。
【0007】
すなわち、請求項1に係る発明の液体供給システムは、シリンジを用いた液体供給システムであって、筒状で一端にノズル部を有し他端に開口部を有するシリンジ本体に棒状で先端側に気密摺接部を有する押し子が挿入されてなるシリンジを用い、ノズル部を液体用容積形のポンプの吸込側に接続してシリンジ内の液体をポンプで移送する液体移送ラインを形成してなることを特徴とする。また、請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の上記構成に加えて、液体移送ラインから分岐してポンプを迂回するバイパスラインを設け、該バイパスラインに開閉バルブを設けてなることを特徴とする。
【0008】
請求項1に係る発明の液体供給システムでは、液体のみが入ったシリンジの先をチューブ等で液体移送ラインのポンプ吸込側に接続する。そして、ポンプを稼働させ、シリンジ内の液体をポンプによって移送する。その際、シリンジの押し子は吸引されて液体と共に移動する。その際、タンクとしての役割を持つシリンジの内部は液体のみで満たされ、ポンプの吸込側は密閉状態であるため、ポンプによる液体の移送に伴って押し子が動き、ポンプ吸込側で配管内およびシリンジ内の圧力が負圧になることはない。そのため、無重力環境および微小重力環境において気体の混入を防ぎ安定して液体のみを移送することができる。
【0009】
また、請求項2に係る発明の液体供給システムによれば、ポンプが故障した際にはバイパスラインの開閉バルブを開き、シリンジの押し子を押すことによって、手動で液体の供給を行うことができる。
【0010】
また、本発明(請求項1,2に係る発明)の液体供給システムでは、シリンジ内の液量が少なくなったら、そのシリンジを取り外して液体の入った新しいシリンジに交換すればよく、簡単な作業でそれを行うことができる。
【0011】
また、本発明の液体供給システムでは、複数のシリンジを並列に接続することもでき、そうすることで複数のシリンジを同時に使用してタンクとしての容量を大きくするようにでき、また、使用するシリンジをバルブで切り換えて、シリンジの交換を切れ目なく行えるようにしたり、異なる液体を切り換えて供給するようにすることもできる。
【0012】
また、本発明の液体供給システムでは、シリンジに内部の液量を示す目盛を設けることにより、移送した液体の量を目視で確認するようにできる。
【0013】
また、本発明の液体供給システムでは、シリンジ本体と押し子にセンサを取り付けて、シリンジの押し込み量を検出するようにでき、そのデータを基に、シリンジ内の液体の量、移送した液体の量等を把握し、それをポンプ等の制御に活用するようにできる。
【0014】
また、本発明の液体供給システムでは、押し子が押し込み限界位置に接近したことを検知するようシリンジ本体と押し子に近接センサを取り付けて、シリンジ容量の限界を超えてポンプが稼働するのを防ぐようにすることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、無重力環境および微小重力環境において気体を混入させず液体のみを安定して移送することができる。そして、ポンプが故障した際はシリンジを手動ポンプとして活用して液体の供給を行うようにすることができる。
【0016】
また、使用条件に合わせてタンク容量や供給する液体の種類を制限無く且つ簡単に変更することができ、使用条件に合わせてポンプを変更することができる。
【0017】
また、タンクとして活用するシリンジはシンプルで設置場所の制約も少なく、ポンプ並びに制御部の配置に制約を生ずるものではなくて、システム全体として場所を取らず、制御並びに管理が容易なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態の一例に係るシリンジを用いた液体供給システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は本発明の実施の形態の一例のシリンジを用いた液体供給システムを示している。この液体供給システムは、宇宙ステーションや月面のような無重力環境あるいは微小重力環境において、例えば植物育成のための養液供給に好適なもので(植物育成のための養液供給に限定されるものではなく、無重力環境あるいは微小重力環境で液体供給を必要とする様々な用途に適用できる。)、シリンジ1を液体源(タンク)としてチューブポンプ等の液体用容積形のポンプ2〈チューブポンプに限るものではなく、用途に応じて他のポンプも適宜使用できる。但し、例えば植物育成のための養液供給に使用する場合、Cu等の金属を含有させる恐れのないポンプが望ましく、チューブポンプ等が好適である。〉で液体を移送する液体移送ラインSLと、液体移送ラインSLから分岐してポンプ2を迂回するバイパスラインBLとで構成している。そして、バイパスラインBLには開閉バルブ3を設けている。
【0020】
シリンジ1は、筒状のシリンジ本体4と、シリンジ本体4に挿入された棒状の押し子5とで構成されている。そして、シリンジ本体4は一端(先端)にノズル部6を有し、他端(基端)に開口部7を有し、開口部7の周囲にフランジ部8が設けられている。また、押し子5は、一端(先端)に気密摺接部(図示せず)を有し、他端(基端)にはフランジ部9が形成されている。シリンジ本体4には、内部の液体の量を目視できるよう液量目盛10が設けられている。押し子5は、気密摺動部を先端にして開口部4からシリンジ本体4に挿入され、シリンジ本体4の内壁に沿って気密摺接状態で軸方向に移動自在である。また、この実施の形態では、押し子5が押し込み限界位置に接近したことを検知するようシリンジ本体4の基端に位置するフランジ部8と押し子5のフランジ部9に近接センサ11を取り付けている。
【0021】
この液体供給システムでは、液体を入れたシリンジ1のノズル部6をチューブ等でポンプ2の吸込側に接続する。そして、ポンプ2を稼働させ、シリンジ1内の液体をシリンジ1から吸引して液体供給ラインSLを経て供給先まで移送する。その際、シリンジ1の押し子は液体の移送に伴い吸引されて液体と共に移動する。
そのため、無重力環境および微小重力環境において気体の混入を防ぎ安定して液体のみを移送することができる。また、万が一ポンプ2が故障した際は、バイパスラインBLのバルブ3を開き、シリンジ1の押し子5を押すことで液体の供給が可能である。
【0022】
この液体供給システムにおいて、シリンジ1から移送された液体の量並びにシリンジ1内に残存する液量は、シリンジ本体4の目盛10によって目視確認することができる。そして、シリンジ1内に液体がなくなったら、あるいは残量が少なくなったら、シリンジ1を取り外して液体の入った新しいシリンジ1に交換する。簡単な作業でそれを行うことができる。
【0023】
また、この液体供給システムでは、押し子5が押し込み限界位置に接近したことを近接センサ11によって検知することで、シリンジ1の容量の限界を超えてポンプ2が稼働するのを防ぐ制御が可能である。近接センサ11の代わりに、シリンジ1の押し込み量を連続して検出するようシリンジ本体4と押し子5にセンサを取り付けて、そのデータを基に、シリンジ1内の液体の量、移送した液体の量等を把握し、それをポンプ2等の制御に活用するよう構成することも可能である。
【0024】
この液体供給システムは、複数のシリンジ1を並列に接続するよう構成することも可能である。その場合、複数のシリンジ1を同時に使用するよう配管することで、タンクとしての容量を大きくすることができる。また、シリンジ1毎にバルブを設けた配管とし、使用するシリンジ1をバルブで切り換えるようにすることもできる。そのようにシリンジ1をバルブで切り換えて使用することで、シリンジ1の交換を切れ目なく行うことができ、また、異なる液体を切り換えて供給することも可能となる。このように、使用条件に合わせてタンク容量や供給する液体の種類を制限無く且つ簡単に変更できる。
【0025】
この液体供給システムは、タンクとして活用するシリンジ1は構成がシンプルで設置場所の制約も少なく、ポンプ2並びに制御部の配置に制約を生ずるものではなく、システム全体として場所を取らず、制御並びに管理が容易なものとすることができる。
【0026】
以上、バイパスラインBLを設けた例について説明したが、本発明のシリンジを用いた液体供給システムは、バイパスラインBLを設けない実施の形態も可能であり、その他、発明の技術的思想の範囲で様々な実施の形態が可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 シリンジ
2 ポンプ
3 開閉バルブ
4 シリンジ本体
5 押し子
6 ノズル部
7 開口部
8 フランジ部
9 フランジ部
10 液量目盛
11 近接センサ
SL 液体移送ライン
BL バイパスライン
図1