(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091375
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】ゴルフボール
(51)【国際特許分類】
A63B 37/00 20060101AFI20230623BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20230623BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20230623BHJP
C08K 5/05 20060101ALI20230623BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20230623BHJP
C08K 5/09 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
A63B37/00 538
A63B37/00 512
C08L9/00
C08L23/08
C08K5/05
C08K5/14
C08K5/09
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206086
(22)【出願日】2021-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】592014104
【氏名又は名称】ブリヂストンスポーツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】望月 雄宣
(72)【発明者】
【氏名】進藤 潤
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AC031
4J002BB082
4J002EC036
4J002EC046
4J002EC056
4J002EF047
4J002EG057
4J002EK008
4J002GC01
(57)【要約】
【解決手段】コアと1層または複数層のカバーを有するゴルフボールにおいて、上記コアが(a)~(d)成分
(a)基材ゴム
(b)水及び/又は分子量200未満の低級アルコール
(c)α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩
(d)有機過酸化物
を含有するゴム組成物の加熱成形物により形成されるものであり、(a)成分の基材ゴムが、(a-1)ポリブタジエンと、(a-2)未中和のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体とを混合した後に、(a-3)金属酸化物で中和することにより得られるゴムであって、(a-2)成分の酸含有量が5質量%以上で、(a-2)成分の配合量が(a-1)成分と(a-2)成分との合計量100質量部に対して10質量部以下であると共に、コアの表面と中心との硬度差がJIS-C硬度15以上であるゴルフボール。
【効果】本発明によれば、高い反発性を保持しつつ、低スピン化と優れた耐久性とを両立させることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと1層または複数層のカバーを有するゴルフボールにおいて、上記コアが下記(a)~(d)成分
(a)基材ゴム
(b)水及び/又は分子量200未満の低級アルコール
(c)α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩
(d)有機過酸化物
を含有するゴム組成物の加熱成形物により形成されるものであり、(a)成分の基材ゴムが、(a-1)ポリブタジエンと、(a-2)未中和のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体とを混合した後に、(a-3)金属酸化物で中和することにより得られるゴムであって、(a-2)成分の酸含有量が5質量%以上であり、(a-2)成分の配合量が(a-1)成分と(a-2)成分との合計量100質量部に対して10質量部以下であると共に、上記コアの表面と中心との硬度差がJIS-C硬度で15以上であることを特徴とするゴルフボール。
【請求項2】
(a-2)成分において、不飽和カルボン酸が、アクリル酸又はメタクリル酸である請求項1記載のゴルフボール。
【請求項3】
(a-2)未中和のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体が(a-3)金属酸化物により完全に中和される請求項1又は2記載のゴルフボール。
【請求項4】
(b)成分の配合量が、(a)成分100質量部に対して0.1~10質量部である請求項1~3のいずれか1項記載のゴルフボール。
【請求項5】
(d)成分の低級アルコールが、ブタノール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタントリオ―ル、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジ(トリメチロールプロパン)、ペンタエリトリトール及びソルビトールの群から選ばれる1種以上のアルコールである請求項1~4のいずれか1項記載のゴルフボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアと1層または複数層のカバーを有するゴルフボールに関する。
【背景技術】
【0002】
最近では、ゴルフボールはツーピースソリッドゴルフボールやスリーピースソリッドゴルフボールが主流となっている。これらのゴルフボールは、通常、ゴム組成物のコアに各種の樹脂材料からなる単層又は複数層のカバーを被覆した構造である。コアは、ゴルフボールの体積の大部分を占め、反発性や打感、耐久性等のボール諸物性に大きな影響を及ぼす。最近では、コアの断面硬度を適宜調整することで特異なコア硬度傾斜を実現し、ドライバーやアイアンのフルショット時のスピン特性適正化による飛距離向上を達成する技術が種々提案されている。コアの表面と中心の硬度差をより拡大することがドライバーのフルショット時のスピンを低減させる効果が分かっており、また、従来の知見からフルショット時のスピン低減は、飛距離向上の実現につながることが分かっている。従って、ゴルフボールの飛距離改善のために、コア内部の硬度差をより拡大させる技術が求められている。この技術を実現させる方法の一つには、コアを2層のゴム層で作る構造の提案がある。しかし、コアを生産するうえでの工数が単層ゴムコアと比較して多くなるため、単層コア内の硬度差を拡大する技術が依然として期待されている。
【0003】
また、コアの断面硬度を調整する方法については、コアのゴム組成物の配合成分や、加硫温度及び時間を適宜調整することなどが挙げられる。また、コアのゴム組成物の配合成分に関しては、共架橋剤や有機過酸化物の種類の選定や配合量を調整することなどが挙げられる。また、共架橋剤については、ゴルフボール分野では、メタクリル酸,アクリル酸及びこれら金属塩を使用することが知られている。しかし、上記の共架橋剤の配合の調整については、主にコアの硬度調整によるボールの打感調整を主眼としておりスピン特性を満足できるものにはなっていない。
【0004】
コアの表面と中心との硬度差を拡大してフルショット時のボールの低スピン化を実現させる新しい技術としては、特開2015-47502号公報(対応する米国特許出願公開第2015-0065268号明細書)に記載されたゴルフボールが挙げられる。この公報には、コア用ゴム組成物に水を配合させて加硫成形してコアを得ている。また、特開2019-213606号公報(対応する米国特許出願公開第2019-0375917号明細書)に記載されたゴルフボールが挙げられる。この公報には、コア用ゴム組成物に低級アルコール配合させて加硫成形してコアを得ている。しかしながら、これらの技術では、コアの表面と中心との硬度差を拡大することによりボールの打撃耐久性が低下してしまう欠点がある。
【0005】
また、コアの反発性を維持しながらボールの打撃耐久性を向上させる技術として具体的には、以下の技術が提案されている。コア用ゴム組成物において、ポリブタジエンゴムにアイオノマー樹脂を配合する技術があり、米国特許出願公開第2002-0086745号明細書に記載されている。また、ポリブタジエンゴムと未中和のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体とを混合した後に、金属カチオン源で中和する技術が、特開2007-209472号公報(対応する米国特許出願公開第2007-0184916号明細書)に記載されている。更に、ポリブタジエンゴムと特定量の酸含量を有するオレフィン含有ポリマーと無機金属化合物とを含有するゴム組成物が、特開2007-061605号公報及び特開2012-254304号公報(対応する米国特許出願公開第2007-0049419号明細書)に記載されている。しかしながら、これらの技術は、いずれも、ゴム組成物に樹脂成分を含有させるものであり、樹脂成分の添加量を多くすると反発性が大きく低下してしまう欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-47502号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2015-0065268号明細書
【特許文献3】特開2019-213606号公報
【特許文献4】米国特許出願公開第2019-0375917号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2002-0086745号明細書
【特許文献6】特開2007-209472号公報
【特許文献7】米国特許出願公開第2007-0184916号明細書
【特許文献8】特開2007-061605号公報
【特許文献9】特開2012-254304号公報
【特許文献10】米国特許出願公開第2007-0049419号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、高い反発性を保持しつつ、低スピン化と優れた耐久性とを両立させたゴルフボールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、ゴルフボール用コアのゴム組成物の配合成分を、(a)基材ゴム、(b)水及び/又は分子量200未満の低級アルコール、(c)α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩、(d)有機過酸化物の上記(a)~(d)成分を必須成分とし、(a)成分の基材ゴムは、(a-1)ポリブタジエンと、(a-2)未中和のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体とを混合した後に、(a-3)金属酸化物で中和することにより得られるゴムであって、(a-2)成分の酸含有量が5質量%以上であり、(a-2)成分の配合量を(a-1)成分と(a-2)成分との合計量100質量部に対して10質量部以下に調製することにより、所望のコア硬度を維持しながらコア内部断面硬度における硬度差を大きく設定してゴルフボール打撃時の低スピン特性を十分に発揮できると共に、打撃耐久性に優れていることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0009】
従って、本発明は、下記のゴルフボールを提供する。
1.コアと1層または複数層のカバーを有するゴルフボールにおいて、上記コアが下記(a)~(d)成分
(a)基材ゴム
(b)水及び/又は分子量200未満の低級アルコール
(c)α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩
(d)有機過酸化物
を含有するゴム組成物の加熱成形物により形成されるものであり、(a)成分の基材ゴムが、(a-1)ポリブタジエンと、(a-2)未中和のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体とを混合した後に、(a-3)金属酸化物で中和することにより得られるゴムであって、(a-2)成分の酸含有量が5質量%以上であり、(a-2)成分の配合量が(a-1)成分と(a-2)成分との合計量100質量部に対して10質量部以下であると共に、上記コアの表面と中心との硬度差がJIS-C硬度で15以上であることを特徴とするゴルフボール。
2.(a-2)成分において、不飽和カルボン酸が、アクリル酸又はメタクリル酸である上記1記載のゴルフボール。
3.(a-2)未中和のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体が(a-3)金属酸化物により完全に中和される上記1又は2記載のゴルフボール。
4.(b)成分の配合量が、(a)成分100質量部に対して0.1~10質量部である上記1~3のいずれかに記載のゴルフボール。
5.(d)成分の低級アルコールが、ブタノール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタントリオ―ル、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジ(トリメチロールプロパン)、ペンタエリトリトール及びソルビトールの群から選ばれる1種以上のアルコールである上記1~4のいずれかに記載のゴルフボール。
【発明の効果】
【0010】
本発明のゴルフボールは、高い反発性を保持しつつ、低スピン化と優れた耐久性とを両立させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明につき、更に詳しく説明する。
本発明のゴルフボールは、コアと1層または複数層のカバーを有するものであり、コアは1層のみならず、必要により、2層以上に構成することもできる。上記コアは、下記(a)~(d)成分、
(a)基材ゴム
(b)水及び/又は分子量200未満の低級アルコール
(c)α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩
(d)有機過酸化物
を必須成分として配合するゴム組成物の加熱成形物により形成される。
【0012】
(a)成分の基材ゴムは、(a-1)ポリブタジエンと、(a-2)未中和のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体とを混合した後に、(a-3)金属酸化物で中和することにより得られるゴムである。
【0013】
(a-1)成分のポリブタジエンは、そのポリマー鎖中に、シス-1,4-結合を60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上有することが好適である。ポリブタジエン分子中の結合に占めるシス-1,4-結合が少なすぎると、反発性が低下する場合がある。
【0014】
また、上記ポリブタジエンに含まれる1,2-ビニル結合の含有量としては、そのポリマー鎖中に、通常2%以下、好ましくは1.7%以下、更に好ましくは1.5%以下である。1,2-ビニル結合の含有量が多すぎると、反発性が低下する場合がある。
【0015】
上記ポリブタジエンは、ムーニー粘度(ML1+4(100℃))が、好ましくは20以上、より好ましくは30以上であり、上限としては、好ましくは120以下、より好ましくは100以下、更に好ましくは80以下である。
【0016】
なお、上記ムーニー粘度とは、回転可塑度計の1種であるムーニー粘度計で測定される工業的な粘度の指標(JIS K 6300)であり、単位記号としてML1+4(100℃)を用いる。また、Mはムーニー粘度、Lは大ロータ(L型)、1+4は予備加熱時間1分間、ロータの回転時間は4分間を示し、100℃の条件下にて測定したことを示す。
【0017】
上記ポリブタジエンは、希土類元素系触媒やVIII族金属化合物触媒を用いて合成したものを使用することができる。
【0018】
(a-2)成分の未中和のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体は、特に、ドライバー(W#1)打撃後のボールのスピン性能を低量化させるのに効果がある。上記の不飽和カルボン酸は炭素数が3~8個有するものであり、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等が挙げられ、高い反発性を付与することからアクリル酸又はメタクリル酸が好ましい。
【0019】
(a-2)成分の酸含有量は5質量%以上であり、好ましくは7質量%以上、より好ましくは8質量%以上、さらに好ましくは9質量%以上、最も好ましくは10質量%以上である。この酸含量が低いと、十分な高い初速や良好な耐久性が得られない場合がある。なお、この酸含量の上限値は、好ましくは26質量%以下、より好ましくは23質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0020】
(a-2)成分の配合量は、(a-1)成分と(a-2)成分との合計量100質量部に対して10質量部以下である。この(a-2)成分の占める割合が多いほど耐久性は良好となるが、10質量部を超えると、コア反発性が低下してしまいボール初速の低下を招くおそれがある。
【0021】
(a-2)成分の未中和のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体のメルトフローレート(MFR)は、基材ゴムのマトリックス中への分散性を高める点から10g/10min以上が望まれ、好ましくは20g/10min以上、より好ましくは30g/10min以上、さらに好ましくは40g/10min以上、最も好ましくは50g/10min以上である。このメルトフローレート(MFR)の値は、JIS-K7210-1に準拠し、試験温度190℃、試験荷重21.18N(2.16kgf)条件下での測定値である。
【0022】
(a-2)成分の未中和のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体の融点は120℃以下であることが好適であり、好ましくは115℃以下、より好ましくは110℃以下、さらに好ましくは105℃以下、最も好ましくは100℃以下である。この融点が低いほど、(a-2)成分が基材ゴムのマトリックス中への分散性し易くなる。なお、この融点の下限値としては、60℃以上が好ましく、更に好ましくは70℃以上、最も好ましくは80℃以上である。
【0023】
(a-2)成分の未中和のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体としては市販品を用いることができ、例えば、商品名「ニュクレル N1110H」や「ニュクレル N1560」などを例示することができる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
(a-3)成分の金属酸化物は、特に制限はないが、具体的には、炭酸マグネシウム,酢酸マグネシウム,酸化マグネシウム,酸化亜鉛,酢酸亜鉛,水酸化ナトリウム,炭酸ナトリウム,酸化カルシウム,水酸化カルシウム,水酸化リチウム,炭酸リチウム,水酸化カリウム,炭酸カリウムなどが挙げられる。これらの1種を単独で、或いは2種以上を用いることができる。
【0025】
(a-3)成分は、(a-1)成分と(a-2)成分との合計量100質量部に対して1~50質量部が好ましく、特に好ましくは2~30質量部である。この配合量が少なすぎると、中和反応が十分でなく、反発性能や耐久性が十分でない場合がある。一方、この配合量が多すぎると、コアの質量が重くなりすぎ、ゴルフボールとして好適な重量範囲を超えてしまい、好ましくない場合がある。
【0026】
(a-3)成分の金属酸化物の上記配合量での配合により、(a-2)成分の未中和の不飽和カルボン酸は、80モル%以上が中和されていることが好適である。この不飽和カルボンの中和度は、より好ましくは90モル%以上であり、最も好ましくは100モル%である。即ち、(a-2)未中和のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体が(a-3)金属酸化物により完全に中和されていることが、本発明の所望の効果を十分に発揮できる点から、最も好ましい。
【0027】
(a-1)ポリブタジエンと(a-2)未中和のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体とを混合した後に(a-3)金属酸化物で中和する方法については、特に制限はないが、その一例としては次のような調製方法が挙げられる。例えば、ゴム用の加圧ニーダーにて(a-1)成分と(a-2)成分とを十分に混合した後、ゴム温度を100℃以上、好ましくは120℃以上で(a-3)成分を添加し、ローター回転数20~40rpm、3~20分間で混合し、冷却することで得ることができる。このような調製方法により、(a-1)成分の存在下、(a-2)成分中のカルボキシル基の全部または一部が(a-3)金属酸化物と中和反応した化学構造を有するゴム組成物を得ることができる。
【0028】
次に、本発明に用いられる(b)成分の水については、特に制限はなく、蒸留水であっても水道水であってもよいが、特には、不純物を含まない蒸留水を使用することが好適に採用される。水の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上配合することが好ましく、より好ましくは0.3質量部以上であり、上限としては、好ましくは5質量部以下であり、より好ましくは4質量部以下である。
【0029】
また、上記の水を適量配合することにより、加硫前のゴム組成物における水分含有率が1000ppm以上となることが好ましく、より好ましくは1500ppm以上である。上限としては、好ましくは8500ppm以下であり、より好ましくは8000ppm以下である。上記ゴム組成物の水分含有率が小さすぎると、適切な架橋密度を得ることが困難となり、エネルギーロスが少なく低スピン化を図ったゴルフボールを成形することが困難となる場合がある。上記ゴム組成物の水分含有率が大きすぎると、コアが軟らかくなりすぎてしまい、適切なコア初速を得ることが困難となる場合がある。
【0030】
上記ゴム組成物に水を直接配合することも可能ではあるが、下記の(i)~(iii)の方法を採用することができる。
(i)スチームや超音波によりミスト状の水をゴム組成物(配合材料)の全部または一部にあてる方法
(ii)ゴム組成物の全部または一部を水に浸漬させる方法
(iii)ゴム組成物の全部または一部を恒湿槽等の湿度管理可能な場所において高湿度環境下に一定時間放置する方法
なお、高湿度環境とはゴム組成物等を湿らせることができる環境であれば特に制限されるものではないが湿度40~100%であることが好ましい。
【0031】
また、水をゼリー状に加工して上記ゴム組成物に配合することができる。或いは、予め水を、充填剤,未加硫ゴム,ゴム粉等に担持した材料を用い、これを上記ゴム組成物に配合することができる。このような態様は、直接水を配合するよりも作業性に優れるため、ゴルフボールの生産効率を向上させることができる。水を所定量含有させた材料の種類については特に制限はないが、十分に水を含有させた充填剤,未加硫ゴム,ゴム粉等が挙げられ、特に、耐久性や反発性を損なうことがない材料を使用することが好適である。上記の材料の水分含有率としては、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、上限として、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下である。
【0032】
また、本発明においては、上記の水の代わりに、分子量が200未満の低級アルコールを用いることができる。ここで言うアルコールとは、アルコール性ヒドロキシ基を1個以上もつ物質のことであり、ヒドロキシ基を2個以上もつ多価アルコールを縮重合したものもアルコールに含まれる。また、低級アルコールとは、炭素原子数が少なく、すなわち分子量の小さいアルコールを意味する。この低級アルコールをゴム組成物に含有させることにより、ゴム組成物の加硫(硬化)時に、所望のコア硬度傾斜を有するゴム硬化物(コア)を得ることができ、打撃時のボールの低スピン化を十分に実現させ、飛び性能を優れたものとすることができる。
【0033】
上記の低級アルコールとしては、6価以下のアルコール(6個以下のアルコール性ヒドロキシ基を有するアルコール)であることが特に好適であり、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン、ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジ(トリメチロールプロパン)、ペンタエリトリトール、ソルビトールなどが挙げられるが、これらに限定されない。また、これらの分子量としては、200未満であり、好ましくは150未満、より好ましくは100未満である。上記の分子量が大きく、即ち、炭素数が多くなりすぎると、所望のコア硬度傾斜が得られず、打撃時のボールの低スピン化を十分に実現させることができなくなる。
【0034】
上記の低級アルコールの配合量は、基材ゴム100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、さらに好ましくは0.5質量部以上であり、上限値としては、好ましくは10質量部以下、より好ましくは6質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下である。この配合量が多すぎると、硬度が軟化し所望の打感や耐久性や反発性が得られず、配合量が少なすぎると、所望のコア硬度傾斜が得られず、打撃時のボールの低スピン化を十分に実現できなくなるおそれがある。
【0035】
次に、(c)成分はα,β-不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩である。この不飽和カルボン酸の炭素数は、3~8個であることが好適であり、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸が挙げられる。上記の不飽和カルボン酸の金属として具体的には、亜鉛、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム等が挙げられ、特に亜鉛が好ましい。従って、共架橋剤としては、アクリル酸亜鉛が最も好ましい。
【0036】
(c)成分の配合量は、上記(a)成分の基材ゴム100質量部に対し、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上、さらに好ましくは20質量部以上であり、上限としては、好ましくは65質量部以下、より好ましくは60質量部以下、さらに好ましくは55質量部以下である。上記配合量が上記範囲より少ないと、軟らかくなり過ぎて反発性が悪いものとなり、上記範囲より多いと、硬くなり過ぎて打球感が悪くなるとともに、脆く耐久性に劣るものとなる。
【0037】
(c)成分の共架橋剤は、平均粒度3~30μmを有することが好ましく、より好ましくは5~25μm、更に好ましくは8~15μmである。上記共架橋剤の平均粒度が3μm未満では、ゴム組成物中で凝集しやすく、アクリル酸同士の反応性が向上してしまい、基材ゴム同士の反応性が減少してしまうため、ゴルフボールの反発性能を十分に得られないことがある。上記共架橋剤の平均粒度が30μmを超えると、共架橋剤粒子が大きくなり過ぎてしまい、得られるゴルフボールの特性のバラツキが大きくなる。
【0038】
(d)成分は有機過酸化物である。この有機過酸化物としては、1分間半減期温度が110~185℃であるものを用いることが好適である。このような有機過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド(日油社製「パークミルD」)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン(日油社製「パーヘキサ25B」)、ジ(2-t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン(日油社製「パーブチルP」)等が挙げられ、ジクミルパーオキサイドを好適に用いることができる。そのほかの市販品としては、「パーヘキサC-40」、「ナイパーBW」、「パーロイルL」等(いずれも日油社製)、または、Luperco 231XL(アトケム社製)などを例示することができる。これらは1種を単独で用いてもよく、或いはい2種以上を併用してもよい。
【0039】
(d)成分の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上であり、上限値としては、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下である。
【0040】
上述した(a)~(d)の各成分の他には本発明の効果を妨げない限り、例えば、充填材、老化防止剤及び有機硫黄化合物などの各種添加物を配合することができる。
【0041】
充填材としては、例えば、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等を好適に用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。充填材の配合量は、上記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上とすることができる。また、この配合の上限は、上記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは100質量部以下、より好ましくは60質量部以下、更に好ましくは40質量部以下とすることができる。配合量が多すぎたり、少なすぎたりすると適正な質量、及び好適な反発性を得ることができない場合がある。
【0042】
老化防止剤としては、特に制限はないが、例えば、2,2-メチレンビス(4-メチル-6-tertブチルフェノール)、4,4-ブチリデンビス(3-メチル-6-tertブチルフェノール)、2,2-メチレンビス(4-エチル-6-tertブチルフェノール)などのフェノール系老化防止剤が挙げられ、市販品としてはノクラックNS-6、同NS-30、同NS-5(大内新興化学工業(株)製)等を採用することができる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。老化防止剤の配合量については、特に制限はないが、基材ゴム100質量部に対し、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、上限として好ましくは1.0質量部以下、より好ましくは0.7質量部以下、更に好ましくは0.4質量部以下である。配合量が多すぎたり、少なすぎたりすると、適正なコア硬度傾斜が得られずに好適な反発性、耐久性及びフルショット時の低スピン効果を得ることができない場合がある。
【0043】
有機硫黄化合物としては、特に制限はないが、例えばチオフェノール類、チオナフトール類、ジフェニルポリスルフィド類、ハロゲン化チオフェノール類、又はそれらの金属塩等を挙げることができる。具体的には、ペンタクロロチオフェノール、ペンタフルオロチオフェノール、ペンタブロモチオフェノール、パラクロロチオフェノール等の亜鉛塩、硫黄数が2~4のジフェニルポリスルフィド、ジベンジルポリスルフィド、ジベンゾイルポリスルフィド、ジベンゾチアゾイルポリスルフィド、ジチオベンゾイルポリスルフィド等を挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、または2種以上を併用してもよい。中でも、ペンタクロロチオフェノールの亜鉛塩、及び/又はジフェニルジスルフィドを好適に用いることができる。
【0044】
有機硫黄化合物の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.2質量部以上であり、上限として、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2質量部以下、更に好ましくは1質量部以下であることが推奨される。有機硫黄化合物の配合量が多すぎると、ゴム組成物の加熱成形物の硬さが軟らかくなりすぎてしまう場合があり、一方、少なすぎると反発性の向上が見込めない場合がある。
【0045】
上記コアは、上記各成分を含有するゴム組成物を加硫硬化させることにより製造することができる。例えば、バンバリーミキサーやロール等の混練機を用いて混練し、コア用金型を用いて圧縮成形または射出成型し、有機過酸化物や共架橋剤が作用するのに十分な温度として、約100~200℃、10~40分の条件にて成形体を適宜加熱することにより、該成形体を硬化させ、製造することができる。
【0046】
ここで、上述した配合により、加硫硬化後のゴム成型物であるコアは、表面と中心との硬度差が大きな硬度傾斜を有することができる。上記のゴルフボール用ゴム成型物をゴルフボール用コアとして採用することにより、ゴルフボールの良好なスピン特性を維持しつつ、耐久性を高めることができる。
【0047】
コアの中心硬度については、特に制限はないが、JIS-C規格で、好ましくは40以上、より好ましくは45以上、さらに好ましくは50以上であり、上限値としては、好ましくは75以下、より好ましくは70以下、さらに好ましくは65以下である。コアの中心硬度が上記範囲を逸脱すると、打感が悪くなり、または耐久性が低下してしまうことがあり、低スピン効果を得ることができない場合がある。
【0048】
コアの表面硬度については、特に制限はないが、JIS-C規格で、好ましくは65以上、より好ましくは70以上、さらに好ましくは72以上であり、上限値としては、好ましくは95以下、より好ましくは90以下、さらに好ましくは88以下である。コアの表面硬度が上記範囲よりも低すぎると、反発性が低くなり飛距離が十分に得られなくなることがある。また、コアの表面硬度が上記範囲よりも高すぎると、打感が硬くなり過ぎ、また、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなることがある。
【0049】
上記コアの表面と中心との硬度差については、JIS-C硬度で15以上であることが好ましく、より好ましくは20以上、さらに好ましくは24以上、最も好ましくは30以上であり、上限としては、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下である。上記硬度差の値が小さすぎると、W#1打撃時の低スピン効果が足りずに飛距離が出なくなることがある。一方、上記硬度差の値が大きすぎると、ゴルフボールを実打したときのボール初速が低くなり飛距離が出なくなり、または、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなることがある。ここで、上記の中心硬度とは、コアを半分に(中心を通るように)切断して得た断面の中心において測定される硬度を意味し、表面硬度は上記コアの表面(球面)において測定される硬度を意味する。また、JIS-C硬度とは、JIS K 6301-1975に規定するスプリング式硬度計(JIS-C形)で測定された硬度を意味する。
【0050】
また、本発明で用いるコアの硬度傾斜は、該コアの中心から表面に向かって、硬度が同等又は増加するものであって減少するものではないことが好適である。
【0051】
また、上記コア(加熱成形物)における初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1275N(130kgf)を負荷した時の圧縮硬度(変形量)については、特に制限はないが、好ましくは2.0mm以上、より好ましくは2.3mm以上、更に好ましくは2.5mm以上、最も好ましくは2.8mm以上であり、上限としては、好ましくは6.0mm以下、より好ましくは5.5mm以下、更に好ましくは5.0mm以下であることが推奨される。上記の値よりも大きすぎると、コアが軟らかくなりすぎるため、十分な低スピン効果を得られず反発性も低下することがある。また、上記の値よりも小さすぎると、低スピン効果を得られず、打感が硬くなってしまうことがある。
【0052】
コアの直径としては、特に制限はなく製造するゴルフボールの層構造にも依るが、好ましくは30mm以上、より好ましくは35mm以上であり、上限として、好ましくは41mm以下、より好ましくは40mm以下である。コアの直径がこの範囲を逸脱すると、ボールの初速が低くなり、あるいは適切なスピン特性を得られない場合がある。
【0053】
次に、コアを被覆する1層または複数層のカバーについて説明する。
カバー材料については、特に制限はないが、ゴルフボールに用いられている各種のアイオノマー樹脂、ウレタンエラストマー等の公知の材料を使用することができる。
【0054】
また、ボールの低スピン化をより一層実現するために、コアに隣接する層には高度に中和されたアイオノマー材料を用いることが特に好ましい。具体的には、下記(A)~(D)成分を配合した材料を用いることが好ましい。
(A-1)オレフィン-不飽和カルボン酸2元ランダム共重合体及び/又はオレフィン-不飽和カルボン酸2元ランダム共重合体の金属イオン中和物と、
(A-2)オレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル3元ランダム共重合体及び/又はオレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル3元ランダム共重合体の金属イオン中和物とを質量比で100:0~0:100になるように配合した(A)ベース樹脂と、(B)非アイオノマー熱可塑性エラストマーとを質量比で100:0~50:50になるように配合した樹脂成分100質量部に対して、
(C)分子量が228~1500の脂肪酸及び/又はその誘導体 5~80質量部と、 (D)上記(A)成分及び(B)成分中の未中和の酸基を中和できる塩基性無機金属化合物 0.1~17質量部とを配合する混合材料。特に、上記(A)~(D)成分の混合材料を用いる場合には、酸基が70%以上中和されているものを採用することが好ましい。
【0055】
また、カバーのうち最外層の材料としては、ウレタン材料、特に熱可塑性ウレタンエラストマーを主材とすることが好適である。
【0056】
更に、上記コアに隣接する層と最外層カバーとの間には、1層または2層以上のカバー(中間層)を成形してもよい。この場合、中間層材料としては、アイオノマー等の熱可塑性樹脂を用いることが好適である。
【0057】
上記カバーを得るには、例えば、ボールの種類に応じて予め作製した単層又は2層以上の多層コアを金型内に配備し、上記混合物を加熱混合溶融し、射出成形することにより、コアの周囲に所望のカバーを被覆する方法等を採用できる。この場合、カバーの製造は、優れた熱安定性、流動性、成形性が確保された状態で作業でき、これにより、最終的に得られたゴルフボールは、反発性が高く、その上、打感が良く、耐擦過傷性に優れている。また、カバーの形成方法は、上記のほかに、例えば、カバー材料により予め一対の半球状のハーフカップを成形し、このハーフカップでコアを包んで120~170℃、1~5分間、加圧成形する方法などを採用することもできる。
【0058】
上記カバーが1層の場合、その厚さは0.3~3.0mmとすることができる。上記カバーが2層の場合、外層カバーの厚さは0.3~2.0mm、内層カバーの厚さは0.3~2.0mmの範囲とすることができる。また、上記カバーを構成する各層(カバー層)のショアD硬度は、特に制限はないが、40以上とすることが好ましく、より好ましくは45以上であり、上限としては、好ましくは70以下、より好ましくは65以下である。
【0059】
なお、上記カバーの最外層の表面には、多数のディンプルが形成されるものであり、更にカバー上には下地処理、スタンプ、塗装等種々の処理を行うことができる。特に上記カバーにこのような表面処理を施す場合、カバー表面の成形性が良好であるため作業性を良好にして行うことができる。
【0060】
本発明のゴルフボールの種類としては、コアと少なくとも1層以上のカバー層を有するものである限り、特に制限されるものではない。例えば、ソリッドコアをカバーで被覆したツーピースやスリーピースソリッドゴルフボール、3層構造以上のマルチピースゴルフボール等のソリッドゴルフボール、更には、糸巻きコアに単層又は2層以上の多層構造のカバーを被覆した糸巻きゴルフボールが挙げられる。
【実施例0061】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0062】
〔実施例1~6,比較例1~5〕
下記表1に示すポリブタジエンを主成分とするゴム組成物を用いて、実施例1~6,比較例1~5のゴム配合(各成分及び配合量)によりコア組成物を調整する。これらのゴム組成物の混合及び成型方法は下記のとおりである。
【0063】
ゴム組成物の混合方法・成型方法
下記表1に示すコア材料を用いて、コア組成物を調整する。最初に、(a-1)ポリブタジエンゴムと(a-2)又は(a-2’)成分のエチレン-メタクリル酸共重合体とを東洋精機社製のプラストミルにより、設定温度120℃、30rpm,10分間混合した後、(a-3)酸化亜鉛を投入し、30rpm,5分間混合する。その後、混合物を排出し冷却する。第2段階として、上記混合物に対して、(c)アクリル酸亜鉛と老化防止剤とペンタクロロチオフェノール亜鉛塩とを投入し、設定温度を100℃、プラストミルにより30rpm,5分間混合し、その後、混合物を排出し冷却する。第3段階として、上記混合物に対して、(b)成分の水またはアルコール、(d)有機過酸化物を投入し、設定温度40℃、プラストミルにより30rpm、5分間混合し、その後、混合物を排出する。得られた混合物をそれぞれ155℃で20分間加硫を行い、コア表面の研磨工程を経て、直径38.5mmのコアを作製する。
【0064】
【0065】
下記表1のゴム配合についての詳細は下記のとおりである。
・ポリブタジエンゴム:商品名「BR01」(JSR社製)
・「AN4214C」「N1110H」「N1560」:いずれも、三井・ダウポリケミカル社製の銘柄「ニュクレル」(エチレン-不飽和カルボン酸共重合体)
・酸化亜鉛:商品名「三種酸化亜鉛」(堺化学社製)
・水:蒸留水
・プロピレングリコール(低級2価アルコール):分子量76.1(林純薬工業社製)
・アクリル酸亜鉛:商品名「ZN-DA85S」(85%アクリル酸亜鉛/15%ステアリン酸亜鉛)、日本触媒社製
・有機過酸化物(ジクミルパーオキサイド):商品名「パークミルD」(日油社製)
・老化防止剤(1):商品名「ノクラックNS-6」(大内新興化学工業社製)
・老化防止剤(2):商品名「ノクラックMBN」(大内新興化学工業社製)
・ペンタクロロチオフェノール亜鉛塩:和光純薬工業社製
【0066】
上記の銘柄「ニュクレル」(エチレン-不飽和カルボン酸共重合体)の詳細は下記表2のとおりである。
【0067】
【0068】
コアの断面硬度
上記の各実施例及び各比較例の直径38.5mmのコアについて、下記の方法により、表面及び中心の断面硬度を測定し、これらの硬度差を表1に記載する。
(1)コアの表面硬度
23±1℃の温度で、球状のコアの表面部分に硬度計の針を垂直になるようにセットし、JIS-C硬度により、コアの表面の4点をランダムに測定し、その平均値を1個のボールの測定値とし、測定個数3個のコアの平均値を求める。
(2)コアの中心硬度
断面がコアの中心を通るようにコアを平面状にカットして、23±1℃の温度で、上記平断面に硬度計の針を垂直になるようにセットし、JIS-C硬度計により、半球コアの中心の硬度を測定し、1個のボールの測定値とし、測定個数3個のコアの平均値を求める。
【0069】
カバー(中間層及び最外層)の形成
次に、射出成形用金型を用いて、上記のコア表面の周囲に、表3に示す中間層の材料(アイオノマー樹脂材料)を射出成形し、厚さ1.3mm、ショアD硬度64の中間層を形成する。次いで、別の射出成形用金型を用いて、上記の中間層被覆球体の周囲に、表3に示す最外層材料(ウレタン樹脂材料)を射出成形し、厚さ0.8mm、ショアD硬度40の最外層を形成する。
【0070】
【0071】
上記表3中の配合成分の詳細は下記のとおりである。
・「ハイミラン1706」「ハイミラン1557」及び「ハイミラン1605」:三井・ダウポリケミカル社製のアイオノマー樹脂
・「TPU」:ディーアイシーコベストロポリマー社製の商品名「パンデックス」、エーテルタイプの熱可塑性ポリウレタン「ショアD硬度40」
・「ポリエチレンワックス」:商品名「サンワックス161P」(三洋化成社製)
・イソシアネート化合物:4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート
【0072】
得られたゴルフボールについて、ボールの圧縮変形量、初速、スピン量及び耐久性を下記方法で評価する。その結果を表4に示す。
【0073】
ボールの圧縮変形量
ボールを、23±1℃の温度で、10mm/sの速度で圧縮し、初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1275N(130kgf)に負荷した時までのボールの圧縮変形量(mm)を計測し、測定個数10個の平均値を求める。
【0074】
ドライバー(W#1)打撃での初速及びバックスピン量
ゴルフ打撃ロボットにドライバー(W#1)をつけて、ヘッドスピード45m/sにて打撃した直後のボールの初速及びバックスピン量を初期条件計測装置により測定する。クラブは、ブリヂストンスポーツ社 製の「TourB XD-3ドライバー(2016モデル)」(ロフト角9.5°)を使用する。
【0075】
耐久性
米国Automated Design Corporation製のADC Ball COR Durability Testerにより、ボールの耐久性を評価する。この試験機は、ゴルフボールを空気圧で発射させた後、平行に設置した2枚の金属板に連続的に衝突させる機能を有する。金属板への入射速度は43m/sに設定とする。ゴルフボールが割れるまでに要した発射回数を測定し、ゴルフボール10個の測定値の平均値を算出すると共に、比較例2のボールが割れた平均回数を100(基準値)とした場合の指数を求め、表4に記載する。
【0076】
【0077】
表4より、実施例1~6は、いずれも、スピン性能を維持しながら、反発を落とさずに耐久性を改善していることが分かる。また、使用する(a-2)成分の酸含量が高いほど、不飽和カルボン酸と(a-3)金属酸化物とのイオン架橋が(a-1)ポリブタジエン中でより多く起こると予想され、その結果、耐久性が良くなることが分かる。
これに対して、比較例1~5は、本発明(実施例)よりも以下の点で劣る。
比較例1は、コア用ゴム組成物に(b)成分が配合されておらず、コアの中心/表面の硬度差が小さいため、ドライバー(W#1)打撃時のバックスピン量が多い。
比較例2は、コア用ゴム組成物に(a-2)成分が配合されておらず、耐久性が改良されていない。
比較例3は、コア用ゴム組成物に配合された(a-2)成分の酸含量が低いため、初速及び耐久性が十分に改良されていない。
比較例4は、コア用ゴム組成物に配合された(a-2)成分の酸含量が低いため、初速が低い。
比較例5は、コア用ゴム組成物に配合された(a-2)成分の配合量が多いため、初速が低い。