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  • 特開-Ca硬度含有水の処理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091376
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】Ca硬度含有水の処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/42 20230101AFI20230623BHJP
   B01D 61/02 20060101ALI20230623BHJP
   B01D 61/04 20060101ALI20230623BHJP
   C02F 1/44 20230101ALI20230623BHJP
   B01J 39/07 20170101ALI20230623BHJP
   B01J 39/18 20170101ALI20230623BHJP
   B01J 47/12 20170101ALI20230623BHJP
   B01J 49/06 20170101ALI20230623BHJP
   B01J 49/53 20170101ALI20230623BHJP
   B01J 49/75 20170101ALI20230623BHJP
【FI】
C02F1/42 B
B01D61/02 500
B01D61/04
C02F1/44 E
B01J39/07
B01J39/18
B01J47/12
B01J49/06
B01J49/53
B01J49/75
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206088
(22)【出願日】2021-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 徹
【テーマコード(参考)】
4D006
4D025
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006JA53Z
4D006JA67Z
4D006JA71
4D006KA01
4D006KA52
4D006KA55
4D006KA57
4D006KB11
4D006KE12R
4D006KE15Q
4D006PA01
4D006PB08
4D006PC01
4D006PC80
4D025AA02
4D025AA09
4D025AB19
4D025BA10
4D025BB02
4D025BB07
4D025CA01
4D025CA05
4D025CA06
4D025CA10
4D025DA05
(57)【要約】
【課題】処理水側への硬度成分のリークを抑えつつ、充填塔を小型化できるCa硬度含有水の処理方法を提供する。
【解決手段】Ca硬度含有水を陽イオン交換体が充填された充填塔に通水してCa硬度を除去するCa硬度含有水の処理方法であって、前記Ca硬度含有水中のCa硬度は5mg-CaCO/L以下であり、前記充填塔に通水する前記Ca硬度含有水の空間速度(SV)は、100~300h-1であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ca硬度含有水を陽イオン交換体が充填された充填塔に通水してCa硬度を除去する硬度成分含有水の処理方法であって、
前記Ca硬度含有水中のCa硬度は5mg-CaCO/L以下であり、前記充填塔に通水する前記Ca硬度含有水の空間速度(SV)は、100~300h-1であることを特徴とするCa硬度含有水の処理方法。
【請求項2】
前記陽イオン交換体が弱酸性の陽イオン交換体であることを特徴とする請求項1に記載のCa硬度含有水の処理方法。
【請求項3】
前記Ca硬度含有水はシリカを含み、
前記陽イオン交換体により前記Ca硬度が除去された処理水を、アルカリ条件で、逆浸透膜に通水することを特徴とする請求項1又は2に記載のCa硬度含有水の処理方法。
【請求項4】
前記Ca硬度含有水はフッ素を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のCa硬度含有水の処理方法。
【請求項5】
前記Ca硬度含有水は除害系排水を含む請求項4に記載のCa硬度含有水の処理方法。
【請求項6】
前記陽イオン交換体に対して、7日間に1回以下、21日間に1回以上の頻度で再生処理又は洗浄処理を行うことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のCa硬度含有水の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Ca硬度含有水の処理方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水処理においては、各種イオン成分の除去のため、イオン交換体を充填した充填塔が広く利用されている。この充填塔に供給される被処理水は、充填塔内のイオン交換体と接触することで、被処理水に含まれる対象のイオン成分がイオン交換体に吸着、除去され、純度が高められる。例えば、カルシウムイオン(Ca2+)やマグネシウムイオン(Mg2+)等の硬度成分をイオン交換体で除去する場合、充填塔に通水する被処理水の空間速度(SV)は20~80h-1に設定されるのが一般的である(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-3675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、空間速度(SV)が80h-1より高くなると、硬度成分が処理水側へリークする問題がある。また、大量の被処理水を処理する場合、空間速度(SV)が高くできないと、多量のイオン交換体が必要となるため、充填塔が大きくなって、コスト的に不利になるという問題がある。
【0005】
そこで、本開示では、処理水側への硬度成分、特にCa硬度のリークを抑えつつ、充填塔を小型化できる硬度成分含有水の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、Ca硬度含有水を陽イオン交換体が充填された充填塔に通水してCa硬度を除去するCa硬度含有水の処理方法であって、前記Ca硬度含有水中のCa硬度の濃度は5mg-CaCO/L以下であり、前記充填塔に通水する前記Ca硬度含有水の空間速度(SV)は、100~300h-1であることを特徴とする。
【0007】
また、上記Ca硬度含有水の処理方法において、前記陽イオン交換体が弱酸性の陽イオン交換体であることが好ましい。
【0008】
また、上記Ca硬度含有水の処理方法において、前記Ca硬度含有水はシリカを含み、前記陽イオン交換体により前記Ca硬度が除去された処理水を、アルカリ条件で、逆浸透膜に通水することが好ましい。
【0009】
また、上記Ca硬度含有水の処理方法において、前記Ca硬度含有水はフッ素を含むことが好ましい。
【0010】
また、上記Ca硬度含有水の処理方法において、前記Ca硬度含有水は除害系排水を含むことが好ましい。
【0011】
また、上記Ca硬度含有水の処理方法において、前記陽イオン交換体に対して、7日間に1回以下、21日間に1回以上の頻度で再生処理又は洗浄を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、処理水側へのCa硬度のリークを抑えつつ、充填塔を小型化できるCa硬度含有水の処理方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係る処理装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態について以下説明する。本実施形態は本開示を実施する一例であって、本開示は本実施形態に限定されるものではない。
【0015】
図1は、本実施形態に係る処理装置の一例を示す模式図である。本実施形態に係る処理装置1は、Ca硬度含有水を処理する装置である。硬度成分は、水処理の分野で知られているものであり、典型的には、Ca2+およびMg2+に代表される2価カチオンである。
【0016】
図1に示す処理装置1は、軟化処理装置3、再生処理装置5、及び膜ろ過装置7を備える。
【0017】
図1に示す軟化処理装置3は、Ca硬度含有水を貯留する原水タンク10、陽イオン交換体が充填された充填塔12、処理水タンク14、配管16a,16b、原水用ポンプ18を備える。配管16aには、原水用ポンプ18が設置されている。配管16aの一端は原水タンク10の出口に接続され、配管16aの他端は充填塔12の原水入口に接続されている。また、配管16bの一端は、充填塔12の処理水出口に接続され、配管16bの他端は処理水タンク14の入口に接続されている。
【0018】
図1に示す再生処理装置5は、再生剤を貯留する再生剤タンク20、配管22c,22d、再生剤用ポンプ24を有する。配管22cには、再生剤用ポンプ24が設置されている。配管22cの一端は、再生剤タンク20の出口に接続され、配管22cの他端は、充填塔12の再生剤入口に接続されている。配管22dは充填塔12の再生剤出口に接続されている。
【0019】
図1に示す膜ろ過装置7は、逆浸透膜(以下、RO膜と称する場合がある)を備える膜モジュール26、配管28e、透過水配管28f、濃縮水配管28g、加圧ポンプ30を有する。膜モジュール26は、例えば、逆浸透膜から構成される膜エレメントと、膜エレメントを格納するための耐圧容器等を含んで構成される。配管28eには、加圧ポンプ30が設置されている。配管28eの一端は、処理水タンク14の出口に接続され、配管28eの他端は、膜モジュール26の入口に接続されている。また、透過水配管28fは、膜モジュール26の透過側の出口に接続され、濃縮水配管28gは、膜モジュール26の濃縮側の出口に接続されている。
【0020】
図1に示す処理装置1によるCa硬度含有水の処理方法の一例について説明する。
【0021】
<軟化処理>
原水用ポンプ18が稼働されると、原水タンク10内のCa硬度含有水が、配管16aを通して、充填塔12に供給される。Ca硬度含有水は、充填塔12を下向流で通水され、充填塔12内の陽イオン交換体と接触して、Ca硬度含有水中の硬度成分が除去される(軟化処理)。硬度性成分が除去された処理水は、充填塔12から配管16bを通って、処理水タンク14に貯留される。
【0022】
ここで、軟化処理されるCa硬度含有水は、Ca硬度が5mg-CaCo/L以下である。そして、Ca硬度が5mg-CaCo/L以下のCa硬度含有水を軟化処理する際には、充填塔12に通水するCa硬度含有水の空間速度(SV)を100~300h-1にして運転する。ここで、空間速度とは、単位時間あたりに充填塔12に充填されたイオン交換体の体積の何倍相当分の水を処理しているかということであり、充填塔12に通水するCa硬度含有水の流量(m/h)を充填塔12に充填されたイオン交換体量(体積:m)で割ることで求められる。したがって、図1に示す処理装置1では、充填塔12に通水するCa硬度含有水の空間速度(SV)が100~300h-1となるように、原水用ポンプ18の出力を制御して、充填塔12に通水されるCa硬度含有水の流量を調整する。
【0023】
充填塔12からのCa硬度のリーク量は、空間速度(SV)の他に、Ca硬度含有水中の共存イオン類(例えば、ナトリウムイオン等)の影響も受ける。共存イオン類を多量に含むCa硬度含有水を軟化処理する場合、陽イオン交換体は、Ca硬度だけでなくナトリウムイオン等も吸着するため、Ca硬度が処理水へリークする時期が早くなる。そのため、Ca硬度が低い原水の場合であれば、単純に、空間速度(SV)を高く取ることができると容易に発想できるものではない。しかし、本発明者が、鋭意検討した結果、Ca硬度含有水のCa硬度が5mg-CaCo/L以下という特定の条件下の場合において、充填塔12に通水するCa硬度含有水の空間速度(SV)を100~300h-1にして運転しても、処理水側へのCa硬度のリークを抑えることができるということを見出した。また、Ca硬度含有水の空間速度(SV)を従来と比べて非常に高い範囲(100~300h-1)に設定できるため、陽イオン交換体量を抑えることができるので、小型化した充填塔を設計できる。
【0024】
ところで、原水タンク10内に貯留されるCa硬度含有水のCa硬度が5mg-CaCo/Lを超える場合には、例えば、処理水タンク14に貯留された処理水を原水タンク10に返送し、Ca硬度含有水を希釈して、Ca硬度を5mg-CaCo/L以下に低下させてもよい。希釈中は、例えば、軟化処理の運転を中止する。そして、原水タンク10内に貯留されるCa硬度含有水のCa硬度が5mg-CaCo/L以下になった段階で、充填塔12に通水するCa硬度含有水の空間速度(SV)を100~300h-1の範囲に設定した運転を再開する。また、原水タンク10内に貯留されるCa硬度含有水のCa硬度が5mg-CaCo/Lを超える場合には、例えば、充填塔12に通水するCa硬度含有水の空間速度(SV)を100h-1未満に設定して、例えば、20~50h-1に設定して、軟化処理の運転を行ってもよい。
【0025】
充填塔12へのCa硬度含有水の通水は、例えば、Ca硬度を効率的に除去する点で、図1に示す処理装置1のように、下向流にすることが好ましいが、これに限定されず、上向流でもよい。
【0026】
陽イオン交換樹体は、効率的に硬度成分を除去することができる点で、弱酸性陽イオン交換体であることが好ましく、Na型の弱酸性陽イオン交換体であることがより好ましい。軟化に一般的に用いられる強酸性陽イオン交換体は弱酸性陽イオン交換体に比べて再生効率が低いため、再生を繰り返すと、充填塔12に蓄積した硬度成分がリークする場合がある。高い空間速度(SV)の場合はこの傾向が特に顕著となる。したがって、硬度成分のリークを抑制するために、Ca硬度が低いCa硬度含有水に対しては、弱酸性陽イオン交換体を用いて軟化処理する手法が特に有利である。
【0027】
陽イオン交換体は、例えば、粒状のマクロポーラス型の陽イオン交換樹脂、ゲル型の陽イオン交換樹脂、モノリス状の有機多孔質カチオン交換体、陽イオン交換基を有するイオン吸着膜およびキレート樹脂等が挙げられる。
【0028】
ゲル型と、マクロポーラス型とは、下記の方法によって判別される。
(1)光が照射されているイオン交換樹脂が、光学顕微鏡で観察された時に、光を透過するものが「ゲル型」、光を透過しないものが「マクロポーラス型」と判別される。
(2)窒素ガス等を用いる吸着法(BET法)により測定されるイオン交換樹脂の比表面積又は細孔容積の値から、「ゲル型」と、「マクロポーラス型」とが、判別される。一般的には、ゲル型のイオン交換樹脂は、比表面積が極めて小さく、また、細孔容積が極めて小さい。例えば、ゲル型のイオン交換樹脂の比表面積は0.1m/g(乾燥樹脂)未満、ゲル型のイオン交換樹脂の細孔容積は0.001~0.008ml/ml(乾燥樹脂)である。また、マクロポーラス型のイオン交換樹脂は、比表面積が比較的大きく、また、細孔容積が比較的大きい。例えば、マクロポーラス型のイオン交換樹脂の比表面積は2~125m/g(乾燥樹脂)、マクロポーラス型のイオン交換樹脂の細孔容積は0.17~0.50ml/ml(乾燥樹脂)である。
【0029】
陽イオン交換樹脂は、耐汚染性、強度、反応速度等の点で、ゲル型の陽イオン交換樹脂よりマクロポーラス型の陽イオン交換樹脂の方が好ましい。
【0030】
マクロポーラス型の陽イオン交換樹脂の平均粒径は、特に制限されないが、例えば、200~1000μmの範囲が好ましく、200~500μmの範囲がより好ましい。なお、陽イオン交換樹脂の平均粒径は、レーザ回折式粒度分布測定装置により測定される値である。
【0031】
モノリス状の有機多孔質カチオン交換体は、モノリス状有機多孔質体を製造した後、モノリス状有機多孔質体の骨格部分の表面及び骨格部分の内部にイオン交換基を均一に導入したものであって、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量が0.1mg当量/ml以上、好ましくは0.15~5.0mg当量/mlである。弱酸性陽イオン交換樹脂の場合、カルボン酸基が導入される。
【0032】
<膜処理>
処理水タンク14内に貯留された処理水は、加圧ポンプ30により、配管28eを通って、膜モジュール26に供給される。処理水は、膜モジュール26内のRO膜を透過したことにより不純物が除去された透過水と、RO膜を透過せずに不純物を含んでいる濃縮水とに分離される。透過水は、透過水配管28fから排出され、濃縮水は、濃縮水配管28gから排出される。
【0033】
図1の処理装置1によれば、処理水中にはCa硬度がほとんど含まれないため、膜モジュール26内のRO膜に、Ca硬度由来のスケールは形成され難い。しかし、Ca硬度含有水中にシリカが含まれる場合、シリカは陽イオン交換体にある程度捕捉されるかもしれないが、処理水中にリークするシリカもあるため、RO膜にはシリカ由来のスケールは形成され易い。そこで、Ca硬度含有水にシリカが含まれる場合には、RO膜にスケールが形成されることを抑えるために、アルカリ条件で、処理水をRO膜に通水することが好ましい。アルカリ条件としては、例えば、処理水のpHを10以上とすることが好ましい。すなわち、処理水のpHが10未満である場合には、処理水タンク14に、アルカリ剤を添加して、処理水のpHを10以上にして、RO膜に通水することが好ましい。
【0034】
また、Ca硬度含有水中にフッ素が含まれる場合、フッ化カルシウムが生成されてRO膜を閉塞する虞がある。しかし、本実施形態によれば、処理水中へのCa硬度のリークは低く抑えられるため、フッ化カルシウムの生成を抑えて、RO膜の閉塞を抑制できる。フッ素が含まれるCa硬度含有水としては、除害系排水等が挙げられる。除害系排水とは、半導体製造工程で使用される有害ガスをスクラバー等で処理することにより排出される排水であり、例えばフッ素、アンモニア、有機成分など揮発性の高い成分を含む。この排水中のCa硬度は通常は極めて低いが、処理装置からの溶出などにより、微量のCa硬度を含む場合があることがわかった。
【0035】
膜モジュール26に使用されるろ過膜は、逆浸透膜(RO膜)が好ましいが、それ以外には、例えば、ナノろ過膜(NF膜)等でもよい。また、例えば、ナノろ過膜を備える膜モジュールを前段に設置し、逆浸透膜を備える膜モジュールを後段に設置してもよい。
【0036】
<再生処理>
陽イオン交換体の再生を行う際には、原水用ポンプ18が停止されて、再生剤用ポンプ24が稼働される。再生剤タンク20内の再生剤は、配管22cを通って、充填塔12に供給される。再生剤は、充填塔12に上向流で通水され、充填塔12内の陽イオン交換体と接触して、陽イオン交換体に吸着された硬度成分等が陽イオン交換体から除去される(再生処理)。再生処理に使用された排水は、充填塔12から配管22dを通って、系外に排出される。再生剤は、陽イオン交換体の種類にもよるが、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩酸、硫酸等が挙げられる。
【0037】
本実施形態では、陽イオン交換体に洗浄水を通水して、陽イオン交換体を洗浄する洗浄処理を実施してもよい。本実施形態では、再生処理に代えて洗浄処理を実施してもよいし、再生処理と洗浄処理とを交互に実施したり、洗浄処理を複数回実施した後再生処理を実施したり、再生処理を複数回実施した後洗浄処理を実施したりして、再生処理と洗浄処理を組み合わせてもよい。洗浄処理を実施する洗浄装置の構成は、再生処理装置5の構成と同様でよい。図での説明は省略するが、例えば、ポンプを稼働させて、タンク内の洗浄水を配管から充填塔12に供給し、充填塔12に上向流で通水することで、充填塔12内の陽イオン交換体を洗浄する。洗浄に使用された排水は、充填塔12から配管を通り、系外へ排出される。洗浄水は、水道水、純水、又は処理水タンクに貯留された処理水等でよい。
【0038】
充填塔12への再生剤や洗浄水の通水は、例えば、再生効率や洗浄効率の点等で、図1に示す処理装置1のように、上向流にすることが好ましいが、これに限定されず、下向流でもよい。
【0039】
Ca硬度含有水中のCa硬度が5mg-CaCO/L以下と低い場合、陽イオン交換体の再生や洗浄の頻度は、例えば1か月に1回と極めて少なくて済むように思われるが、そのような低頻度であると、スライム生成により、充填塔12が閉塞する虞がある。そこで、再生処理又は洗浄処理は、スライム生成による充填塔12の閉塞を抑制する点等で、21日間に1回以上の頻度で行うことが好ましく、14日間に1回以上の頻度で行うことがより好ましい。なお、空間速度(SV)が低すぎると、陽イオン交換体の交換能力に余裕を残したまま再生又は洗浄することになり、無駄が生じる。しかし、本実施形態の空間速度(SV)は、100~300h-1と高いため、再生又は洗浄頻度を21日間に1回以上に設定しても、陽イオン交換体の交換能力に余裕を残したまま再生又は洗浄することが避けられ、適正な再生又は洗浄が行われる。また、イオン交換体の再生や洗浄の頻度の下限は、例えば、処理コスト等の点で、7日間に1回以下とすることが好ましい。
【実施例0040】
以下、本開示を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本開示はこれに限定されるものではない。
【0041】
実施例及び比較例において、弱酸性陽イオン交換樹脂を充填したアクリル製カラムに、Ca硬度含有水を下向流で通水して、軟化処理を行った。この軟化処理の試験条件は以下の通りである。
弱酸性陽イオン交換樹脂:オルガノ株式会社製、Amberlite HPR8400(商品名)
樹脂量:225ml
使用カラム:Φ(直径)21.5mm×H(高さ)1.5m
硬度成分含有水:除害系排水にCaClを添加して、Ca=5mg-CaCO/L
に調整
空間速度(SV):表1に記載の通り
【0042】
表1に、各実施例及び各比較例の空間速度(SV)及び、通水時間50h~300h後の処理水中の硬度成分濃度をまとめた。
【0043】
【表1】
【0044】
実施例1~4は、空間速度(SV)100~300h-1の高SV条件であるが、300時間後でも、処理水中のCa硬度を低濃度に維持することができた。そして、例えば流量を30m/hとして、充填塔に充填する樹脂量を再設計すると、実施例1~4はそれぞれ、300、200、150、100Lとなる。一方、比較例1~2のように、空間速度(SV)を20~50h-1にしても、当然、300時間後の処理水中のCa硬度を低濃度に維持することはできた。しかし、実施例と同様に、充填塔に充填する樹脂量を再設計すると、比較例1~2はそれぞれ、1500、600Lとなる。これらの結果から、実施例のように、Ca硬度が5mg-CaCO/L以下のCa硬度含有水を軟化処理するにあたって、充填塔に通水するCa硬度含有水の空間速度(SV)を100~300h-1にすることにより、処理水側への硬度成分のリークを抑えつつ、充填塔を小型化することが可能となる。
【0045】
実施例5において、弱酸性陽イオン交換樹脂を充填したアクリル製カラムに、硬度成分含有水を下向流で通水して、軟化処理を行った。そして、軟化処理後の処理水を、RO膜に通水して、膜処理を行った。軟化処理後の処理水を940L/hでRO膜に通水し、およそ140L/hの透過水と800L/hの濃縮水を得た。軟化処理及び膜処理の試験条件は以下の通りである。
(軟化処理の条件)
弱酸性陽イオン交換樹脂:オルガノ株式会社製、Amberlite HPR8400(商品名)
樹脂量:10L
使用カラム:Φ(直径)Φ250mm×H(高さ)2.0m
硬度成分含有水:純水にCaClを添加して、Ca=5mg-CaCO/Lに調整し、ケイ酸ナトリウム溶液を添加してSiO=120mg/Lに調整。
空間速度(SV):100(1/h)
(膜処理の条件)
RO膜:日東電工株式会社製、CPA-5LD
軟化処理後の処理水のpH:10.2~10.5
操作圧:0.5~0.6MPa
【0046】
比較例3では、樹脂塔をバイパスし、Ca硬度含有水を直接RO膜に導入した。
【0047】
実施例5は、軟化処理及び膜ろ過処理の運転を1300時間継続しても、RO膜がスケールにより閉塞されなかった。樹脂塔の処理水Ca濃度は<0.05mg/Lと低く抑えられ、後段のRO膜が閉塞することは無かった。RO膜透過係数保持率(通水初期を100%とした場合の、単位圧力当たりの透過水量保持率)は常時96%以上であった。一方、比較例3は、膜ろ過処理の運転を24時間継続した時点で透過係数が80%を下回り、RO膜がスケールにより閉塞され、運転を継続することが困難となった。
【符号の説明】
【0048】
1 処理装置、3 軟化処理装置、5 再生処理装置、7 膜ろ過装置、10 原水タンク、12 充填塔、14 処理水タンク、16a,16b,22c,22d,28e 配管、18 原水用ポンプ、20 再生剤タンク、24 再生剤用ポンプ、26 膜モジュール、28f 透過水配管、28g 濃縮水配管、30 加圧ポンプ。
図1