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特開2023-91382窒化ガリウム層製造装置および窒化ガリウム層の製造方法
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  • 特開-窒化ガリウム層製造装置および窒化ガリウム層の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091382
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】窒化ガリウム層製造装置および窒化ガリウム層の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/38 20060101AFI20230623BHJP
   C30B 25/14 20060101ALI20230623BHJP
   H01L 21/20 20060101ALI20230623BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
C30B29/38 D
C30B25/14
H01L21/20
H01L21/205
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206096
(22)【出願日】2021-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 一都
(72)【発明者】
【氏名】小澤 基
(72)【発明者】
【氏名】山本 栄蔵
(72)【発明者】
【氏名】恩田 正一
(72)【発明者】
【氏名】小島 淳
(72)【発明者】
【氏名】笹岡 千秋
【テーマコード(参考)】
4G077
5F045
5F152
【Fターム(参考)】
4G077AA03
4G077BE15
4G077DB05
4G077DB11
4G077DB22
4G077EB10
4G077ED06
4G077EG14
4G077EG24
4G077TG06
4G077TH01
4G077TH05
4G077TH13
5F045AA03
5F045AB14
5F045AC03
5F045AC12
5F045AC13
5F045AC15
5F045AD14
5F045AD15
5F045AD16
5F045AD17
5F045BB11
5F045DP03
5F045DP28
5F152LL03
5F152LN02
5F152MM18
5F152NN09
5F152NQ09
(57)【要約】
【課題】GaN層が歪むことを抑制しつつ、GaN層の特性が変化することを抑制する。
【解決手段】種基板121上に、ガリウム系ガス、アンモニア系ガス、ドーパントガスを供給することで不純物がドープされたドープGaN層122aを成長させた後、ドープGaN層と異なるGaN層122bを成長させる前に、エッチングガス用供給配管310、350からエッチングガスを成長装置10へ供給して成長装置10に付着している異物を除去することを行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化ガリウムで構成される種基板(121)上にガリウム系ガスおよびアンモニア系ガスを供給することで窒化ガリウム層(122)を成長させる窒化ガリウム層製造装置であって、
反応室を構成する中空部(101a)で前記窒化ガリウム層が成長させられる筒状の成長用容器(100)を有する成長装置(10)と、
前記成長用容器の前記中空部内に配置され、前記窒化ガリウム層が成長させられる前記種基板が配置される台座(120)と、
前記成長装置に備えられ、前記成長装置へ前記窒化ガリウム層を成長させるための前記ガリウム系ガスを供給する第1供給配管(310)と、
前記成長装置に備えられ、前記窒化ガリウム層を成長させるためのアンモニア系ガスを供給する第2供給配管(320)と、
前記成長装置に備えられ、前記成長装置へドーパントガスを供給する第3供給配管(330)と、
前記成長装置に備えられ、前記成長装置へエッチングガスを供給するエッチングガス用供給配管(310、350)と、を備え、
前記種基板上に、前記ガリウム系ガス、前記アンモニア系ガス、前記ドーパントガスを供給することで不純物がドープされたドープ窒化ガリウム層(122a)を成長させた後、前記ドープ窒化ガリウム層と異なる窒化ガリウム層(122b)を成長させる前に、前記エッチングガス用供給配管から前記エッチングガスを前記成長装置へ供給して前記成長装置に付着している異物を除去することを行う窒化ガリウム層製造装置。
【請求項2】
前記異物を除去することを行う際、前記第2供給配管から前記アンモニア系ガスが供給されるようにする請求項1に記載の窒化ガリウム層製造装置。
【請求項3】
前記台座を回転させる回転機構(132)を備え、
前記回転機構は、前記異物を除去することを行う際、前記窒化ガリウム層を成長させる際よりも前記台座の回転数が少なくするようにする請求項1または2に記載の窒化ガリウム層製造装置。
【請求項4】
前記第1~第3供給配管および前記エッチングガス用供給配管は、前記成長用容器における一端部側に備えられ、
前記成長用容器には、前記一端部側と反対側の他端部側に第1排気口(104a)が備えられると共に、前記一端部側に第2排気口(104b)が備えられ、
前記窒化ガリウム層を成長させる際には、前記第1排気口から排気ガスが排気され、前記異物を除去することを行う際には、前記第2排気口から排気ガスが排気されるようにする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の窒化ガリウム層製造装置。
【請求項5】
前記成長用容器には、変位可能とされた遮蔽板(150)が備えられ、
前記異物を除去することを行う際、前記種基板と前記エッチングガス用供給配管との間に前記遮蔽板が配置されるようにする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の窒化ガリウム層製造装置。
【請求項6】
前記エッチングガス用供給配管は、前記第1供給配管とは別に備えられ、
前記第1供給配管に切替部(400)を介してキャリアガスを供給する第6供給配管(360)が備えられ、前記切替部が調整されることにより、前記成長装置へ前記ガリウム系ガスの供給と前記キャリアガスの供給とを選択できるようになっており、
前記異物を除去することを行う際には、前記切替部が調整されることにより、前記成長装置へ前記キャリアガスが供給されるようにする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の窒化ガリウム層製造装置。
【請求項7】
複数の前記種基板を収容する収容室(30)と、
前記成長装置と前記収容室との間に配置された搬送通路(40)と、を有し、
前記成長装置と前記収容室との間は、前記搬送通路に備えられた開閉可能な仕切扉(41)で区画され、
前記収容室は、前記窒化ガリウム層を成長させる際の前記種基板の周囲の温度と同じ温度になるように調整されると共にアンモニア系ガスが供給されるようになっており、
前記成長装置に配置された前記種基板上に前記窒化ガリウム層を成長させた後、前記成長装置に配置されている前記種基板を前記収容室に収容すると共に前記収容室から新たな前記種基板を前記成長装置に配置し、新たな前記種基板に対して再び前記窒化ガリウム層を成長させる請求項1ないし6のいずれか1つに記載の窒化ガリウム層製造装置。
【請求項8】
窒化ガリウムで構成される種基板(121)上にガリウム系ガスおよびアンモニア系ガスを供給することで窒化ガリウム層(122)を成長させる窒化ガリウム層の製造方法であって、
反応室を構成する中空部(101a)で前記窒化ガリウム層が成長させられる筒状の成長用容器(100)を有する成長装置(10)と、
前記成長用容器の前記中空部内に配置され、前記窒化ガリウム層が成長させられる前記種基板が配置される台座(120)と、
前記成長装置に備えられ、前記成長装置へ前記窒化ガリウム層を成長させるための前記ガリウム系ガスを供給する第1供給配管(310)と、
前記成長装置に備えられ、前記窒化ガリウム層を成長させるためのアンモニア系ガスを供給する第2供給配管(320)と、
前記成長装置に備えられ、前記成長装置へドーパントガスを供給する第3供給配管(330)と、
前記成長装置に備えられ、前記成長装置へエッチングガスを供給するエッチングガス用供給配管(310、350)と、を備える窒化ガリウム層製造装置を用意することと、
前記種基板上に、前記ガリウム系ガス、前記アンモニア系ガス、および前記ドーパントガスを供給することで不純物がドープされたドープ窒化ガリウム層(122a)を成長させることと、
前記ドープ窒化ガリウム層を成長させることの後、前記エッチングガスを前記成長装置へ供給して前記成長装置に付着している異物を除去することと、
前記異物を除去することの後、前記ドープ窒化ガリウム層と異なる窒化ガリウム層(122b)を成長させることと、を行う窒化ガリウム層の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化ガリウム(以下では、単にGaNともいう)で構成される種基板上にGaN層を成長させるGaN層製造装置およびGaN層の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、GaNで構成される種基板上に、不純物がドープされたドープGaN層と、不純物がドープされていないアンドープGaN層とを順に成長させてウェハを構成する製造方法が提案されている。具体的には、この製造方法では、ドープGaN層を成長させる際には、成長用容器内に、ガリウム系ガスおよびアンモニア系ガスを供給すると共に不純物を含むドーパントガスを供給してドープGaN層を成長させる。また、アンドープGaN層を成長させる際には、成長用容器内に、不純物を含むドーパントガスを供給せず、ガリウム系ガスおよびアンモニア系ガスを供給することでアンドープGaN層を成長させる。
【0003】
この場合、ドープGaN層を成長させた際には、成長用容器に不純物に起因する異物が付着する可能性がある。このため、ドープGaN層を成長させた後にそのままアンドープGaN層を成長させようとすると、成長用容器に付着している異物(すなわち、不純物)がアンドープGaN層に混入する可能性がある。
【0004】
したがって、例えば、特許文献1には、ドープGaN層とアンドープGaN層との間に、インジウム(In)を含む吸着層を配置することが提案されている。これによれば、吸着層を形成する際に成長用容器に付着している異物を吸着層に吸着させることができる。このため、アンドープGaN層を成長させる際、アンドープGaN層に不要な異物が混入することを抑制できる。つまり、GaN層の特性が変化することを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-96567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ドープGaN層とアンドープGaN層との間にインジウムを含む吸着層を配置することにより、吸着層と、ドープGaN層およびアンドープGaN層との間で格子不整合が発生し易くなる。このため、上記のような方法では、GaN層が歪んでしまう可能性がある。
【0007】
本発明は上記点に鑑み、GaN層が歪むことを抑制しつつ、GaN層の特性が変化することを抑制できるGaN層製造装置およびGaN層の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための請求項1では、GaNで構成される種基板(121)上にガリウム系ガスおよびアンモニア系ガスを供給することでGaN層(122)を成長させるGaN層製造装置であって、反応室を構成する中空部(101a)でGaN層が成長させられる筒状の成長用容器(100)を有する成長装置(10)と、成長用容器の中空部内に配置され、GaN層が成長させられる種基板が配置される台座(120)と、成長装置に備えられ、成長装置へGaN層を成長させるためのガリウム系ガスを供給する第1供給配管(310)と、成長装置に備えられ、GaN層を成長させるためのアンモニア系ガスを供給する第2供給配管(320)と、成長装置に備えられ、成長装置へドーパントガスを供給する第3供給配管(330)と、成長装置に備えられ、成長装置へエッチングガスを供給するエッチングガス用供給配管(310、350)と、を備え、種基板上に、ガリウム系ガス、アンモニア系ガス、ドーパントガスを供給することで不純物がドープされたドープGaN層(122a)を成長させた後、ドープGaN層と異なるGaN層(122b)を成長させる前に、エッチングガス用供給配管からエッチングガスを成長装置へ供給して成長装置に付着している異物を除去することを行う。
【0009】
これによれば、異物を除去することを行うため、ドープGaN層を成長させた後に当該ドープGaN層と異なるGaN層を成長させる際、異なるGaN層に異物が混入してしまうことを抑制でき、GaN層の特性が変化することを抑制できる。また、これによれば、吸着層等を配置する必要がないため、吸着層を配置することによる格子不整合等が発生し難くなり、成長させたGaN層が歪むことを抑制できる。
【0010】
また、請求項8は、請求項1に記載のGaN層製造装置を用いたGaN層の製造方法であり、請求項1に記載のGaN層製造装置を用意することと、種基板上に、ガリウム系ガス、アンモニア系ガス、ドーパントガスを供給することで不純物がドープされたドープGaN層(122a)を成長させることと、ドープGaN層を成長させることの後、エッチングガスを成長装置へ供給して成長装置に付着している異物を除去することと、異物を除去することの後、ドープGaN層と異なるGaN層(122b)を成長させることと、を行う。
【0011】
これによれば、異物を除去することを行うため、ドープGaN層を成長させた後に当該ドープGaN層と異なるGaN層を成長させる際、異なるGaN層に異物が混入してしまうことを抑制でき、GaN層の特性が変化することを抑制できる。また、これによれば、吸着層等を配置する必要がないため、吸着層を配置することによる格子不整合等が発生し難くなり、成長させたGaN層が歪むことを抑制できる。
【0012】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態におけるGaN層製造装置の断面模式図である。
図2】第1実施形態で種基板上に成長させられるGaN層を示す模式図である。
図3】第2実施形態におけるGaN層製造装置の断面模式図である。
図4】第3実施形態におけるGaN層製造装置の断面模式図である。
図5】第4実施形態におけるGaN層製造装置の断面模式図である。
図6】第5実施形態におけるGaN層製造装置の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0015】
(第1実施形態)
第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。まず、GaN層製造装置の構成について、図1を参照しつつ説明する。なお、図1に示されるGaN層製造装置は、図1の紙面上下方向を天地方向として設置され、種基板121上にGaN層122を成長させるものである。
【0016】
図1に示されるように、GaN層製造装置は、GaN層122を成長させる成長装置10、およびGaN層122を成長させるための原料ガスとしての三塩化ガリウムガスを生成する生成装置20を備えている。また、GaN層製造装置は、GaN層122を成長させるための各種のガスを成長装置10へ供給する第1~第5供給配管310~350等を備えている。
【0017】
成長装置10は、成長用容器100、加熱容器110、台座120、シャフト131、回転変位機構132、加熱装置140等を有している。
【0018】
成長用容器100は、反応室を構成する中空部101aを備えた筒状の筒部101と、筒部101に備えられて中空部101aを閉塞する第1蓋部102および第2蓋部103とを有している。筒部101は、石英ガラス等で構成され、本実施形態では、円筒状とされている。第1蓋部102および第2蓋部103は、SUS等で構成されており、第1蓋部102が筒部101のうちの天側となる一端部に備えられ、第2蓋部103が筒部101のうちの地側となる他端部に備えられている。そして、成長用容器100は、GaN層122を成長させるための他の構成要素が中空部101a内に配置され、この中空部101aの圧力を真空引きすることによって減圧できる構造とされている。
【0019】
また、成長用容器100には、GaN層122を成長させるための各種のガスを供給する第1~第5供給配管310~350が備えられている。本実施形態では、第1蓋部102に第1~第5供給配管310~350が備えられている。具体的には、第1蓋部102には、生成装置20で生成されたGaN層122を成長させるためのガリウム系ガスとして、三塩化ガリウムガスを成長用容器100内に供給する第1供給配管310が備えられている。第1蓋部102には、三塩化ガリウムガスと共にGaN層122を成長させるためのアンモニア系ガスとして、アンモニアガスを成長用容器100内に供給する第2供給配管320が備えられている。第1蓋部102には、ドーパントガスを成長用容器100内に供給する第3供給配管330が備えられている。第1蓋部102には、キャリアガスとしての窒素ガスを成長用容器100内に供給する第4供給配管340が備えられている。なお、本実施形態の第4供給配管340には、キャリアガスとしての窒素ガスと共に、水素ガスも供給される。さらに、第1蓋部102には、エッチングガスとしての塩素ガスを成長用容器100内に供給する第5供給配管350が備えられている。なお、塩素ガスが供給される第5供給配管350は、例えば、耐腐食性を有するフッ素コーティングが施された配管で構成される。また、本実施形態では、後述するように第1供給配管310にも塩素ガスが供給されるため、第1供給配管310も耐腐食性を有するフッ素コーティングが施された配管で構成される。そして、本実施形態では、第1供給配管310および第5供給配管350がエッチングガス用供給配管に相当する。
【0020】
本実施形態の第1~第5供給配管310~350は、一端部が後述の加熱容器110内に位置するように配置されている。但し、第4、第5供給配管330は、一端部が第1~第3供給配管310~330の一端部よりも第1蓋部102側に位置するように配置されている。言い換えると、第4供給配管340は、第1~第3供給配管310~330から供給されたガスが、第4供給配管340から供給されたガスによって下方(すなわち、後述の種基板121側)に流動し易くなるように、配置されている。また、第5供給配管350は、第1蓋部102側にも塩素ガスが到達し易くなるように、配置されている。
【0021】
なお、第1供給配管310は、成長装置10側の一端部と反対側の他端部側が生成装置20に備えられている。つまり、第1供給配管310は、成長装置10と生成装置20とを繋ぐように配置されている。また、第1供給配管310は、後述する生成用容器200よりもガスの流れ方向を法線方向とする断面積が小さくされている。そして、第2~第5供給配管320~350は、特に図示しないが、成長装置10の一端部と反対側の他端部がそれぞれのガス供給源と接続されている。
【0022】
さらに、成長用容器100には、GaN層122の成長に寄与しなかった未反応ガス等を含む排気ガスを排出する排気口104が備えられている。本実施形態では、成長用容器100のうちの第2蓋部103側の部分に排気口104が備えられている。
【0023】
加熱容器110は、例えば、アルミナ、ジルコニア、熱分解炭素、黒鉛(グラファイト)等で構成されており、中空部110aを有する円筒状に形成されている。そして、加熱容器110は、第1~第5供給配管310~350からの各種のガスが中空部110a内に供給されるように、第1蓋部102に備えられている。
【0024】
台座120は、GaN層122を成長させるためのGaNで構成される種基板121が配置される部材であり、加熱容器110よりも下方に配置されている。台座120は、熱エッチングされ難い材料で構成され、例えば、表面をPbN、SiC、TaCやNbC等の高融点金属炭化物にてコーティングした黒鉛等で構成されている。そして、この台座120のうち第1~第5供給配管310~350側に位置する一面120aに種基板121が貼り付けられ、種基板121の表面にGaN層122が成長させられる。
【0025】
なお、本実施形態では、後述するように、種基板121上に一塩化ガリウムガスおよびアンモニアガスが供給されることでGaN層122が成長させられる。ここで、GaN層122を成長させる際に一塩化ガリウムガスを用いた場合、GaN層122は、種基板121の成長面が窒素面であってもガリウム面であっても成長し易いことが報告されている。したがって、本実施形態では、種基板121は、GaN層122の成長面として所望の面を選択することができる。
【0026】
但し、種基板121上に三塩化ガリウムガスおよびアンモニアガスが供給されることでGaN層122が成長させられるようにしてもよい。この場合、GaN層122を成長させる際に三塩化ガリウムガスを用いると、GaN層122は、種基板121の成長面が窒素面であると成長し易く、種基板121の成長面がガリウム面であると成長し難いことが報告されている。したがって、種基板121上に三塩化ガリウムガスおよびアンモニアガスが供給されることでGaN層122を成長させる場合には、種基板121は、GaN層122の成長面が窒素面となるようにして配置されるのが好ましい。言い換えると、種基板121は、台座120と反対側の面が窒素面となるようにして配置されることが好ましい。
【0027】
また、台座120は、種基板121が配置される面と反対側の面にシャフト131が連結されている。そして、台座120は、シャフト131の回転に伴って回転させられると共に、シャフト131が成長用容器100の軸方向(すなわち、図1中紙面上下方向)に沿って変位することで共に変位する構成とされている。なお、シャフト131は、台座120と同様に、熱エッチングされ難い材料で構成され、例えば、表面をPbN、SiC、TaCやNbC等の高融点金属炭化物にてコーティングした黒鉛等で構成されている。
【0028】
回転変位機構132は、ギアやモータ等を含んで構成され、シャフト131と接続されてシャフト131を回転させると共にシャフト131を変位させる部材である。なお、回転変位機構132は、シャフト131を変位させる際には、GaN層122の成長に伴って当該GaN層122における成長表面の温度が成長に適した温度となるようにシャフト131(すなわち、種基板121)を変位させる。また、本実施形態の回転変位機構132は、GaN層122を成長させる際には、特に限定されるものではないが、台座120が1分間に200回転以上の回転となるようにシャフト131を回転させる。そして、本実施形態では、回転変位機構132が回転機構に相当する。
【0029】
加熱装置140は、加熱容器110や成長用容器100内を加熱するものであり、例えば、誘導加熱用コイルや直接加熱用コイル等の加熱コイルによって構成され、成長用容器100の周囲を囲むように配置されている。そして、本実施形態の加熱装置140は、GaN層122を成長させる際には、種基板121の周囲が1000~1300℃程度となり、加熱容器110内の温度が700℃以上となるように駆動される。
【0030】
生成装置20は、生成用容器200および加熱装置240等を有している。生成用容器200は、中空部201aを有する筒状の筒部201と、筒部201に備えられて中空部201aを閉塞する第1蓋部202および第2蓋部203とを有している。筒部201は、石英ガラス等で構成され、本実施形態では、円筒状とされている。第1蓋部202および第2蓋部203は、SUS等で構成されている。第1蓋部202は、筒部201のうちの第1供給配管310が接続される側と反対側の端部に備えられ、第2蓋部203は、筒部201のうちの第1供給配管310が接続される側の端部に備えられている。なお、生成用容器200は、成長用容器100と同様に、中空部201aの圧力を真空引きすることによって減圧できる構造とされている。
【0031】
生成用容器200には、中空部201aを、第1蓋部202側の第1空間211と、第2蓋部203側の第2空間212とに区画する区画壁213が備えられている。但し、この区画壁213は、第1空間211と第2空間212との連通が維持されるように形成されている。言い換えると、区画壁213は、第1空間211と第2空間212とを完全に区画しないように備えられている。
【0032】
そして、第1空間211には、金属ガリウム220が配置されている。第2空間212には、本実施形態では、後述するように第1空間211で生成された一塩化ガリウムガスおよび塩素ガスと接触する壁面を増加させるための仕切壁214が備えられている。
【0033】
また、生成用容器200には、塩素ガスを生成用容器200内に誘導する第1誘導配管231および第2誘導配管232が備えられている。本実施形態では、第1誘導配管231は、第1空間211に塩素ガスを誘導できるように、第1蓋部202に備えられている。第2誘導配管232は、第2空間212に塩素ガスを誘導できるように、筒部201に備えられている。なお、本実施形態では、第1誘導配管231および第2誘導配管232から生成用容器200内にキャリアガスとしての窒素ガスも誘導される。
【0034】
加熱装置240は、生成用容器200内を加熱するものであり、例えば、抵抗加熱式ヒータ等で構成され、生成用容器200の周囲に配置されている。本実施形態では、加熱装置240は、生成用容器200のうちの第1空間211を構成する部分を囲むように配置される。そして、加熱装置240は、GaN層122を成長させる際には、第1空間211が800~900℃程度となり、第2空間212のうちの第2蓋部203側の温度が第1空間211からの伝熱によって150℃程度となるように、駆動される。なお、本実施形態の第2空間212は、第1空間211からの伝熱によって加熱されるため、第1空間211側の部分から第2蓋部203側に向かって温度が徐々に低くなる温度勾配となる。
【0035】
そして、生成装置20には、第2蓋部203に第1供給配管310の他端部が備えられている。なお、特に図示しないが、第1供給配管310の周囲にも加熱装置が配置される。そして、第1供給配管310は、GaN層122を成長させる際には、例えば、150℃程度に加熱されるようになっている。
【0036】
以上が本実施形態におけるGaN層製造装置の構成である。次に、上記GaN層製造装置を用いたGaN層122の製造方法について説明する。
【0037】
まず、上記GaN層製造装置を用意し、台座120の一面120aに種基板121を配置する。そして、回転変位機構132により、シャフト131を介して台座120を回転させると共に、台座120の位置を調整する。なお、GaN層122を成長させている際には、GaN層122の成長レートに合せて台座の高さを調整する。これにより、GaN層の成長表面の高さがほぼ一定に保たれ、成長表面温度の温度分布を効果的に制御することが可能となる。
【0038】
次に、各加熱装置140、240を駆動する。具体的には、成長用容器100内に配置された種基板121の周囲が1000~1300℃程度となると共に加熱容器110内の温度が700℃以上となるように、加熱装置140を駆動する。また、生成用容器200における第1空間211が800~900℃程度となり、第2空間212のうちの第2蓋部203側の部分が150℃程度となるように加熱装置240を駆動する。さらに、図示を省略しているが、第1供給配管310も150℃程度なるように、これらの周囲に配置される加熱装置を駆動する。
【0039】
続いて、生成装置20内に、第1誘導配管231および第2誘導配管232から、塩素ガスおよびキャリアガスとしての窒素ガスを誘導する。これにより、第1空間211では、下記化学式1で示されるように、金属ガリウム220と塩素ガスとが反応し、一塩化ガリウムガスが生成される。
【0040】
(化1)Ga+1/2Cl→GaCl
また、この一塩化ガリウムガスが第2空間212に流動することにより、下記化学式2で示されるように、一塩化ガリウムガスが第2空間212に誘導されている塩素ガスと反応して三塩化ガリウムガスが生成される。
【0041】
(化2)GaCl+Cl→GaCl
この際、第1供給配管310から誘導される塩素ガスよりも第2供給配管320から誘導される塩素ガスの量を多くすることにより、一塩化ガリウムが残存することを抑制できる。特に限定されるものではないが、例えば、第1供給配管310から100sccm程度の塩素ガスが誘導され、第2供給配管320から200sccm程度の塩素ガスが誘導される。なお、窒素ガスは、例えば、1slm程度が誘導される。
【0042】
そして、三塩化ガリウムガスが第1供給配管310を介して成長装置10に供給される。この場合、本実施形態の第2空間212には、仕切壁214が備えられている。このため、第2空間212に誘導されたガスは、高温部分としての仕切壁214に衝突し易くなると共に流動距離が長くなる。したがって、一塩化ガリウムガスが塩素ガスと反応されずに残存することを抑制できる。なお、三塩化ガリウムは、一塩化ガリウムよりも沸点が低い材料であり、三塩化ガリウムガスは、一塩化ガリウムガスよりも固化し難いガスである。このため、このように三塩化ガリウムガスを第1供給配管310から成長装置10へ供給することにより、第1供給配管310内で一塩化ガリウムガスが固化して第1供給配管310が閉塞されることを抑制できる。
【0043】
そして、第2供給配管320からアンモニアガスを成長用容器100に供給すると共に、第4供給配管340から窒素ガスおよび水素ガスを成長用容器100に供給する。この際、加熱容器110内では、下記化学式3によって一塩化ガリウムが生成される。
【0044】
(化3)GaCl+H→GaCl+2HCl
その後、アンモニアガスおよび一塩化ガリウムガスが流動して種基板121に供給され、下記化学式4に示されるように、種基板121の表面にGaN層122が成長させられる。
【0045】
(化4)GaCl+NH→GaN+HCl+H
なお、アンモニアガスの供給は、加熱装置140を駆動した後であって、窒素抜けを防止するために、種基板121の周囲の温度が500℃以下である状態で開始することが好ましい。また、アンモニアガスは、例えば、1~5slm程度が供給される。キャリアガスとしての窒素ガスは、例えば、1~10slm程度が供給される。水素ガスは、例えば、50~500sccmが供給される。
【0046】
ここで、本実施形態では、図2に示されるように、種基板121上に、GaN層122として、n型不純物がドープされたn-GaN層122a、不純物がドープされていないアンドープのu-GaN層122b、p型不純物がドープされたp-GaN層122cを順に成長させる。
【0047】
この場合、n-GaN層122aは、上記の化学式4の反応によって成長させられる際、一塩化ガリウムガスおよびアンモニアガスに加え、第3供給配管330からn型不純物を含むドーパントガスが成長装置10に供給されることで成長させられる。同様に、p-GaN層122cは、上記の化学式4の反応によって成長させられる際、一塩化ガリウムガスおよびアンモニアガスに加え、第3供給配管330からp型不純物を含むドーパントガスが成長装置10に供給されることで成長させられる。なお、n型不純物を含むドーパントガスとしては、((CSiH)等を含むガスが挙げられ、p型不純物を含むドーパントガスは、Mg、CpMg、またはMgCl等を含むガスが挙げられる。
【0048】
また、u-GaN層122bは、一塩化ガリウムガスおよびアンモニアガスが種基板121に供給されつつ、第3供給配管330からのドーパントガスの供給が停止されることで成長させられる。
【0049】
そして、上記のように、ドープGaN層であるn-GaN層122aを成長させると、成長用容器100の内壁面等に不純物に起因する異物が付着する可能性がある。このため、n-GaN層122aの後にアンドープGaN層であるu-GaN層122bを成長させると、u-GaN層122b中に不純物が混入してしまう可能性がある。
【0050】
したがって、本実施形態では、n-GaN層122aを成長させた後、成長装置10の内壁面等に付着している異物を除去する異物除去工程を行う。具体的には、まず、第1供給配管310から三塩化ガリウムガスが成長用容器100内に供給されないようにする。本実施形態では、生成装置20において、第1誘導配管231から誘導されていた塩素ガスを停止する。これにより、生成装置20の第1空間211では、一塩化ガリウムガスが生成されないため、第1供給配管310から三塩化ガリウムガスが成長用容器100内に供給されなくなる。
【0051】
次に、成長装置10内に塩素ガスを供給する。本実施形態では、生成装置20の第2空間212に誘導されていた塩素ガスを誘導し続け、第1供給配管310から成長装置10に塩素ガスを誘導する。また、本実施形態では、第5供給配管350からも塩素ガスを成長装置10内へ供給する。これにより、塩素ガスがエッチングガスであるため、成長用容器100の内壁面に付着している異物を除去できる。なお、第1供給配管310から成長装置10に塩素ガスを誘導することにより、第1供給配管310に付着し得る一塩化ガリウム等も除去できる。
【0052】
また、本実施形態では、異物除去工程を行う際、第2供給配管320からアンモニアガスの供給をそのまま継続する。これにより、異物除去工程を行う前に成長させたGaN層122上にアンモニアガスが存在する状態となり、塩素ガスが当該GaN層122に到達し難くなる。したがって、塩素ガスによって成長させたGaN層122がエッチングされてしまうことを抑制できる。
【0053】
さらに、本実施形態では、異物除去工程を行う際、GaN層122を成長させる際よりも台座120(すなわち、種基板121)の回転数が少なくなるようにする。例えば、異物除去工程を行う際には、台座120が1分間に数十回転となるようにシャフト131を回転させる。これにより、台座120の周囲に塩素ガスが引き込まれ難くなり、塩素ガスがGaN層122に到達し難くなる。したがって、塩素ガスによって成長させたGaN層122がエッチングされてしまうことを抑制できる。
【0054】
そして、u-GaN層122bは、異物除去工程を行った後に成長させる。これにより、u-GaN層122bを成長させる際、n-GaN層122aを成長させる際の不純物がu-GaN層122bに混入することを抑制できる。
【0055】
なお、p-GaN層122cは、u-GaN層122bを成長させる際にドーパントガスを供給しないため、u-GaN層122bを成長した後にそのまま成長させられる。
【0056】
以上説明した本実施形態によれば、GaN層122として、ドープGaN層を成長させた後にアンドープGaN層を成長させる場合、アンドープGaN層を成長させる前に異物除去工程を行うようにしている。このため、アンドープGaN層に異物が混入してしまうことを抑制でき、GaN層122の特性が変化することを抑制できる。
【0057】
また、異物除去工程を行うことでアンドープGaN層に不純物が混入することを抑制しており、ドープGaN層とアンドープGaN層との間に吸着層等を配置する必要がない。このため、吸着層を配置することによる格子不整合等が発生し難くなり、成長させたGaN層122が歪むことを抑制できる。
【0058】
なお、本実施形態では、ドープGaN層としてのn-GaN層122aを成長させた後に、アンドープGaN層としてのu-GaN層122bを成長させる例について説明した。しかしながら、本実施形態の製造装置および製造方法は、以下のような場合にも適用可能である。例えば、ドープGaN層として、高不純物濃度のn型の第1GaN層を成長させた後に低不純物濃度のn型の第2GaN層を成長させる場合、第1GaN層を成長させた後にそのまま第2GaN層を成長させると、成長装置10に付着している異物が混入されることで第2GaN層の不純物濃度が変化してしまう可能性がある。このため、第1GaN層を成長させた後、異物除去工程を行ってから第2GaN層を成長させることにより、第2GaN層の不純物濃度が変化することを抑制できる。すなわち、本実施形態の製造装置および製造方法は、不純物の種類や不純物濃度が異なるGaN層を順に成長させる場合に適用でき、後のGaN層を成長させる前に異物除去工程を行うことでGaN層の特性が変化することを抑制できる。
【0059】
(1)本実施形態では、異物除去工程を行う際には、第2供給配管320からアンモニアガスの供給を継続している。このため、塩素ガスが成長させたGaN層122に到達し難くなり、GaN層122がエッチングされることを抑制できる。
【0060】
(2)本実施形態では、異物除去工程を行う際には、GaN層122を成長させる際よりも台座120(すなわち、種基板121)の回転数が少なくなるようにしている。このため、台座120の周囲に塩素ガスが引き込まれ難くなり、塩素ガスがGaN層122に到達し難くなる。したがって、塩素ガスによってGaN層122がエッチングされることを抑制できる。
【0061】
(第1実施形態の変形例)
上記第1実施形態では、異物除去工程を行う際、第1供給配管310および第5供給配管350から成長装置10に塩素ガスを供給する例について説明したが、いずれか一方のみから塩素ガスを供給するようにしてもよい。なお、第1供給配管310のみから成長装置10に塩素ガスを誘導するようにした場合には、第5供給配管350は備えられていなくてもよい。
【0062】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、排気口104を追加したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0063】
本実施形態のGaN層製造装置では、図3に示されるように、排気口104が成長用容器100のうちの第1蓋部102側の部分にも備えられている。以下、排気口104において、第2蓋部103側に備えられているものを下部排気口104aとし、第1蓋部102側に備えられているものを上部排気口104bとして説明する。なお、本実施形態では、下部排気口104aが第1排気口に相当し、上部排気口104bが第2排気口に相当している。
【0064】
また、本実施形態では、下部排気口104aに図示しない下部開閉部が備えられていると共に、上部排気口104bに図示しない上部開閉部が備えられている。下部開閉部および上部開閉部は、それぞれバルブ等で構成されており、開状態とされることで成長用容器100内と外部とを連通状態とし、閉状態とされることで成長用容器100内と外部との連通状態を遮断する。
【0065】
以上が本実施形態におけるGaN層製造装置の構成である。次に、上記GaN層製造装置を用いたGaN層122の製造方法について説明する。
【0066】
本実施形態では、GaN層122を成長させる際には、下部開閉部を開状態にすると共に上部開閉部を閉状態とする。つまり、下部排気口104aを通じて成長装置10内と外部とが連通状態となり、上部排気口104bを通じて成長装置10内と外部とが連通状態とならないようにする。これにより、GaN層122を成長させる際の排気ガスは、下部排気口104aから排気される。
【0067】
一方、異物除去工程を行う際には、下部開閉部を閉状態にすると共に上部開閉部を開状態にする。つまり、上部排気口104bを通じて成長装置10内と外部とが連通状態となり、下部排気口104aを通じて成長装置10内と外部とが連通状態とならないようにする。これにより、異物除去工程を行う際の排気ガス(すなわち、塩素ガス)は、上部排気口104bから排気される。このため、種基板121より第1蓋部102側に位置する異物を効率的に除去できる。言い換えると、種基板121上に到達し得る異物を効率的に除去できる。したがって、異物除去工程を行った後にGaN層122を成長させる際、異物がGaN層122に混入することをさらに抑制できる。
【0068】
以上説明した本実施形態によれば、吸着層を備えずに異物除去工程を行うため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0069】
(1)本実施形態では、上部排気口104bが備えられている。そして、異物除去工程を行う際には、排気ガスが上部排気口104bから排気されるようにしている。このため、種基板121より第1蓋部102側に位置する異物を効率的に除去でき、異物除去工程を行った後にGaN層122を成長させる際、異物がGaN層122に混入することをさらに抑制できる。
【0070】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、遮蔽板を追加したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0071】
本実施形態のGaN層製造装置では、図4に示されるように、成長装置10に変位可能な遮蔽板150が備えられている。具体的には、遮蔽板150は、加熱容器110と種基板121との間に配置される変位状態と、加熱容器110と種基板121との間と異なる位置に配置される格納状態との切り替えを行うことができるように備えられている。なお、変位状態とは、言い換えると、第1、第5供給配管310、350の一端部と種基板121との間に遮蔽板150が配置される状態のことである。また格納状態とは、言い換えると、加熱容器110と種基板121との間に遮蔽板150が配置されない状態のことである。そして、図4では、遮蔽板150が変位状態である際の図を示している。
【0072】
以上が本実施形態におけるGaN層製造装置の構成である。次に、上記GaN層製造装置を用いたGaN層122の製造方法について説明する。
【0073】
本実施形態では、GaN層122を成長させる際には、遮蔽板150を格納状態となるように配置する。これにより、加熱容器110内に供給された各ガスの流れが遮蔽板150によって妨げられることを抑制できる。
【0074】
そして、異物除去工程を行う際には、遮蔽板150を変位状態とする。つまり、異物除去工程を行う際には、第1、第5供給配管310、350と種基板121との間に遮蔽板150が配置されるようにする。これにより、塩素ガスがGaN層122に到達することを抑制でき、GaN層122がエッチングされることを抑制できる。なお、本実施形態では、遮蔽板150によって塩素ガスがGaN層122に到達し難くなる。このため、異物除去工程を行う際、第2供給配管320からアンモニアガスが供給されていなくてもよい。また、異物除去工程を行う際、台座120の回転数が少なくなるようにしなくてもよい。
【0075】
以上説明した本実施形態によれば、吸着層を備えずに異物除去工程を行うため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0076】
(1)本実施形態では、遮蔽板150が備えられており、異物除去工程を行う際には、遮蔽板150を変位状態とする。これにより、塩素ガスがGaN層122に到達することを抑制でき、GaN層122がエッチングされることを抑制できる。
【0077】
(第4実施形態)
第4実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、第1供給配管310に第6供給配管を連結したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0078】
本実施形態のGaN層製造装置では、図5に示されるように、第1供給配管310に、バルブ等で構成される切替部400を介して第6供給配管360が備えられている。なお、第6供給配管360は、切替部400と反対側の端部が図示しないガス供給源と接続され、キャリアガスとしての窒素ガスが供給されるようになっている。そして、成長装置10には、切替部400が調整されることにより、生成装置20から三塩化ガリウムガスが供給されるか、または第6供給配管360から窒素ガスが供給される。
【0079】
以上が本実施形態におけるGaN層製造装置の構成である。次に、上記GaN層製造装置を用いたGaN層122の製造方法について説明する。
【0080】
本実施形態では、GaN層122を成長させる際には、切替部400を調整し、生成装置20から三塩化ガリウムガスが成長装置10へ供給されるようにする。
【0081】
一方、異物除去工程を行う際には、第5供給配管350から成長装置10へ塩素ガスを供給し、第1供給配管310を介して生成装置20から成長装置10へ塩素ガスが供給されないようにする。この際、第1供給配管310から成長装置10へのガスの供給を停止すると、成長装置10内のガスの量や流れが変化し、その後のGaN層122の成長が行い難くなる可能性がある。このため、本実施形態では、異物除去工程を行う際には、切替部400を調整し、成長装置10へ第6供給配管360から窒素ガスが供給されるようにする。これにより、成長装置10内のガスの量や流れが変化することを抑制できる。
【0082】
以上説明した本実施形態によれば、吸着層を備えずに異物除去工程を行うため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0083】
(1)本実施形態では、異物除去工程を行う際には、第5供給配管350から成長装置10へ塩素ガスを供給し、第1供給配管310を介して生成装置20から成長装置10へ塩素ガスが供給されないようにする。また、異物除去工程を行う際には、切替部400を調整し、成長装置10へ第6供給配管360から窒素ガスが供給されるようにする。これにより、成長装置10内のガスの量や流れが変化することを抑制でき、その後のGaN層122の成長が行い難くなることを抑制できる。
【0084】
(第5実施形態)
第5実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、収容室を追加したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0085】
本実施形態のGaN層製造装置は、図6に示されるように、成長装置10および生成装置20に加え、収容室30が備えられている。収容室30は、種基板121や、種基板121上にGaN層122を成長させたウェハを収容するものであり、成長用容器100と同様に、石英ガラス等で構成され、箱状とされている。
【0086】
収容室30の周囲には、例えば、誘導加熱用コイルや直接加熱用コイル等の加熱コイルによって構成され、成長用容器100の周囲を囲むように配置された加熱装置31が配置されている。そして、本実施形態の加熱装置31は、収容室30内が1000~1300℃程度となるように駆動される。言い換えると、加熱装置31は、収容室30内がGaN層122を成長させる際の種基板121の周囲の温度と同じ温度となるように駆動される。なお、本実施形態における収容室30が種基板121の周囲の温度と同じ温度とは、誤差を含むものであり、例えば、GaN層122を成長させる際の種基板121の周囲の温度に対して収容室30の温度が±20%程度の温度となっている場合も含んでいる。
【0087】
また、収容室30には、収容室30内にアンモニアガスを供給するための供給配管32が備えられていると共に排気用の排気口33が備えられている。
【0088】
収容室30は、搬送通路40を介して成長装置10と連結されている。また、搬送通路40には、開閉可能な仕切扉41が備えられている。そして、成長装置10と収容室30とは、仕切扉41が開状態である際に連通状態となり、仕切扉41が閉状態である際に分離された状態となる。
【0089】
さらに、本実施形態のGaN層製造装置は、特に図示しないが、搬送通路40を通過して成長装置10と収容室30との間で種基板121を搬送可能な搬送部が備えられている。そして、搬送部により、収容室30内から種基板121を成長装置10内へ搬送すると共に、成長装置10内からGaN層122を成長させた種基板121を収容室30内へ搬送可能となっている。
【0090】
以上が本実施形態におけるGaN層製造装置の構成である。次に、上記GaN層製造装置を用いたGaN層122の製造方法について説明する。
【0091】
本実施形態では、GaN層122を成長させる工程および異物除去工程を適宜行い、種基板121上にGaN層122を成長させる。なお、GaN層122を成長させる際には、仕切扉41が閉状態となっている。また、収容室30は、加熱装置31によって1000~1300℃程度に加熱されると共にアンモニアガスが充満された状態となるように調整されている。
【0092】
そして、GaN層122を成長させた後には、仕切扉41を開状態とし、GaN層122を成長させた種基板121を収容室30に搬送して収容すると共に、収容室30から新たな種基板121を成長装置10内へ搬送して台座120上に載置する。この際、本実施形態では、収容室30が1000~1300℃程度に加熱されていると共にアンモニアガスが充満された状態となっている。このため、仕切扉41を開状態にした際、成長装置10内の状態が大きく変化することを抑制でき、その後のGaN層122の成長を行い易くできる。
【0093】
以上説明した本実施形態によれば、吸着層を備えずに異物除去工程を行うため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0094】
(1)本実施形態では、収容室30を備え、収容室30は、搬送通路40を介して成長装置10と連結されている。そして、GaN層122を成長させた種基板121を収容室30に搬送して収容すると共に、収容室30から新たな種基板121を成長装置10内へ搬送して台座120上に載置し、異なる種基板121上にGaN層122を連続して成長させる。このため、複数の異なる種基板121にGaN層122を製造する際、製造時間の短縮化を図ることができる。
【0095】
また、収容室30は、1000~1300℃程度に加熱されていると共にアンモニアガスが充満された状態となるように調整される。このため、種基板121を搬送する際、成長装置10内の状態が大きく変化することを抑制でき、その後のGaN層122の成長を行い易くできる。
【0096】
(他の実施形態)
本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0097】
上記各実施形態において、成長装置10の構成は適宜変更である。例えば、上記各実施形態では、台座120の回転および変位を行う回転変位機構132を備える例を説明したが、台座120の回転のみを行って変位を行わないようにしてもよい。
【0098】
また、上記各実施形態において、第2空間212に仕切壁214が備えられていなくてもよい。
【0099】
さらに、上記第1実施形態において、異物除去工程を行う際、アンモニアガスの供給を継続することと、台座120の回転数を少なくすることは、いずれか一方のみを行うようにしてもよい。また、上記第1実施形態において、異物除去工程を行う際、アンモニアガスの供給を継続することと、台座120の回転数を少なくすることは、行わないようにしてもよい。
【0100】
また、上記各実施形態において、第1供給配管310の他端部を生成装置20と異なるガス供給源と接続し、このガス供給源からガリウム系ガスが成長装置10へ供給されるようにしてもよい。
【0101】
さらに、上記各実施形態において、第4供給配管340から水素ガスが供給されず、三塩化ガリウムガスが種基板121に供給されるようにしてもよい。これによれば、三塩化ガリウムガスがアンモニアガスと反応してGaN層122が成長させられる。
【0102】
そして、上記各実施形態を適宜組み合わせることもできる。例えば、上記第2実施形態を上記第3~第5実施形態に組み合わせ、上部排気口104bを備えるようにしてもよい。上記第3実施形態を上記第4、第5実施形態に組み合わせ、遮蔽板150を備えるようにしてもよい。上記第4実施形態を上記第5実施形態に組み合わせ、第6供給配管360を備えるようにしてもよい。さらに、上記各実施形態を組み合わせたもの同士をさらに組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0103】
10 成長装置
101a 中空部
100 成長用容器
120 台座
121 種基板
122 GaN層
231 第1誘導配管
232 第2誘導配管
310 第1供給配管
320 第2供給配管
330 第3供給配管
350 第5供給配管(エッチングガス用供給配管)
図1
図2
図3
図4
図5
図6