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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091386
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】把持機構
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20230623BHJP
【FI】
B25J15/08 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206102
(22)【出願日】2021-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004374
【氏名又は名称】日清紡ホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000214836
【氏名又は名称】長野日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【弁理士】
【氏名又は名称】柏野 由布子
(72)【発明者】
【氏名】石松 毅志
(72)【発明者】
【氏名】古谷 順二
(72)【発明者】
【氏名】市川 毅
(72)【発明者】
【氏名】大平 倫之
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS02
3C707DS01
3C707ES03
3C707ET03
3C707EV14
3C707MS02
3C707NS26
(57)【要約】
【課題】把持する物品のサイズや形状が変わっても、物品を安定に把持することができる把持機構を提供する。
【解決手段】把持機構1は、物品Mを把持するための複数の指部2を備える。少なくとも一つの指部2は、ベース部5と、前記ベース部5から延びる保持部6と、前記保持部6の基端部11と先端部12との間にかけ渡されることで弾性的に伸長した状態に保持され、前記物品Mに接触する前記指部2の内側部分を構成する接触部7と、を有する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を把持するための複数の指部を備え、
少なくとも一つの指部は、
ベース部と、
前記ベース部から延びる保持部と、
前記保持部の基端部と先端部との間にかけ渡されることで弾性的に伸長した状態に保持され、前記物品に接触する前記指部の内側部分を構成する接触部と、を有する把持機構。
【請求項2】
前記保持部は、弓形に形成され、
前記接触部は、前記保持部の弓形の内側に位置する請求項1に記載の把持機構。
【請求項3】
前記保持部は、前記指部の外側部分を構成するように前記保持部の先端部及び基端部を除いて前記接触部の外側に間隔をあけて配置され、弾性的に撓み変形可能な外側弾性部を有し、
前記接触部及び前記外側弾性部の配列方向における前記外側弾性部の撓み剛性は、前記配列方向における前記接触部の撓み剛性よりも高い請求項1又は請求項2に記載の把持機構。
【請求項4】
前記接触部の伸長方向に直交する方向における前記接触部の撓み剛性は、0.05N/mm以上である請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の把持機構。
【請求項5】
前記物品に接触する前記接触部の摩擦係数は、当該摩擦係数をμとし、前記複数の指部により前記物品を把持する最大の力をFMAXとし、前記物品の最大重量をWMAXとし、前記複数の指部により把持された前記物品を移動させる際に前記複数の指部に作用する最大の加速度をGMAXとして、以下の式、
μ>WMAX×GMAX/FMAX
によって定義される請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の把持機構。
【請求項6】
前記接触部は、前記保持部に対して着脱自在である請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の把持機構。
【請求項7】
前記接触部は、環状に形成された弾性部材によって構成され、
前記弾性部材は、少なくとも前記保持部の基端部と先端部との間で弾性的に伸長するように前記保持部に巻き回されている請求項6に記載の把持機構。
【請求項8】
前記指部は、前記ベース部から前記保持部の延長方向の先端側に向かうにしたがって先細る形状に形成されている請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の把持機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把持機構に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、物品を把持するための複数の指部を有する把持機構(ロボットハンド)が開示されている。特許文献1の把持機構では、各指部が、シリコーンゴムなどのように弾性のある弾性指本体部材の外側に剛性の高い外皮部材を接着して構成されている。特許文献1の把持機構では、複数の指部により物品を把持する際に、各指部の弾性指本体部材が物品に押し付けられ、弾性指本体部材の残留応力により物品を把持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6815631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の把持機構では、複数の指部により物品を把持する際に、弾性指本体部材が物品と外皮部材との間で弾性的に圧縮変形する。このため、把持機構によって把持する物品のサイズや形状が変わると、指部が物品に接触する面積が小さくなって、物品を安定に把持することができない、という問題がある。
なお、指部を物品に押し付ける力を強くすることで物品を安定に把持することも考えられるが、苺などのように柔らかい物品を安定に把持することはできない。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、把持する物品のサイズや形状が変わっても、物品を安定に把持することが可能な把持機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る把持機構は、物品を把持するための複数の指部を備え、少なくとも一つの指部は、ベース部と、前記ベース部から延びる保持部と、前記保持部の基端部と先端部との間にかけ渡されることで弾性的に伸長した状態に保持され、前記物品に接触する前記指部の内側部分を構成する接触部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、把持する物品のサイズや形状が変わっても、物品を安定に把持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態の把持機構をロボットアームに取り付けた状態を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態の把持機構を示す斜視図である。
図3図2の把持機構に備える指部の保持部及び接触部を示す斜視図である。
図4図3の保持部及び接触部を別の角度から見た斜視図である。
図5図3,4において接触部を保持部から取り外した状態を示す斜視図である。
図6】撓み剛性が異なる複数種類の接触部の弾性特性を示すグラフである。
図7】接触部単体における弾性特性、及び、接触部と外側弾性部とを組み合わせた状態における弾性特性を示すグラフである。
図8図2の把持機構によって物品を把持する前の状態を概略的に示す上面図である。
図9図2の把持機構によって物品を把持した状態を概略的に示す上面図である。
図10図2の把持機構によって物品を把持した状態を概略的に示す斜視図である。
図11図2の把持機構によって把持された物品を別の物品に近い場所に置く様子の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1~11を参照して本発明の一実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態の把持機構1は、例えばロボットアーム100の先端に設けられて、物品M(図8~11参照)を把持する。ロボットアーム100は、物品Mを所定の位置から別の位置に移動させるために、物品Mを把持した把持機構1の位置が変化するように、当該把持機構1を移動させる。
【0010】
図2に示すように、把持機構1は、物品Mを把持するための複数の指部2を有する。また、把持機構1は、複数の指部2が取り付けられる把持本体部3を有する。複数の指部2は、物品Mを掴んだり離したりすることができるように、把持本体部3に対して移動可能に取り付けられている。本実施形態における指部2の数は2つである。2つの指部2は、互いに近づいたり離れたりするように、把持本体部3に対して移動可能となっている。本実施形態において、各指部2は図8,9に例示するように把持本体部3に対して回転移動するが、例えば平行移動してもよい。また、例えば、2つの指部2のうち一方だけが把持本体部3に対して移動可能であってもよい。
【0011】
図2に示すように、各指部2は、ベース部5と、保持部6と、接触部7、とを有する。ベース部5は、把持本体部3に対して移動可能に取り付けられる指部2の部分である。
【0012】
保持部6は、ベース部5から延びている。保持部6は、例えばベース部5から直線状に延びてよい。本実施形態の保持部6は、弓形(アーチ状)に形成されている。具体的に、保持部6は、ベース部5から離れるにしたがって当該ベース部5から離れる方向に交差する方向に向かうように湾曲する弓形に形成されている。また、保持部6は、2つの指部の先端部が互いに近づくように湾曲している。
【0013】
図2~4に示すように、接触部7は、保持部6の延長方向における保持部6の基端部11と先端部12との間にかけ渡されることで、保持部6の基端部11と先端部12との間において弾性的に伸長した状態に保持される。接触部7は、複数の指部2によって物品Mを把持する際に、物品Mに接触する指部2の内側部分を構成する(図9,10参照)。接触部7は、保持部6の基端部11及び先端部12を除いて、保持部6に対して間隔をあけて位置する。本実施形態において、接触部7は保持部6の弓形の内側に位置する。
接触部7が上記のように構成されることで、把持機構1によって物品Mを把持するために指部2を物品Mに押し付けた際には、接触部7が弾性的に撓み変形する(図9,10参照)。
【0014】
以下、本実施形態の指部2について、より具体的に説明する。
本実施形態において、保持部6は、接触部7の外側に間隔をあけて配置される。すなわち、保持部6は、指部2の外側部分を構成する。また、保持部6は、その先端部12及び基端部11を除いて接触部7の外側に間隔をあけて位置する。
【0015】
本実施形態における保持部6は、弾性的に撓み変形可能な外側弾性部13を有する。外側弾性部13は、接触部7と外側弾性部13とが並ぶ方向(接触部7及び外側弾性部13の配列方向)に、弾性的に撓み変形可能である。また、外側弾性部13は、帯板状に形成され、板厚方向に弾性的に撓み変形可能となっている。帯板状の外側弾性部13は、その板厚方向に湾曲して弓形に形成されている。帯状の板材からなる外側弾性部13の幅方向は、図2~4における上下方向に対応している。
保持部6を構成する外側弾性部13は、例えば金属の板材によって構成されてよい。
【0016】
本実施形態の保持部6は、弓形に形成されたり外側弾性部13を構成したりする本体部分に加え、取付部14を有する。取付部14は、保持部6の本体部分の基端部11に一体に形成されている。取付部14は、保持部6をベース部5に取り付けるための部分である。図示例の取付部14は、保持部6の本体部分(特に外側弾性部13)の延長方向に対して概ね直交する平板状に形成されているが、これに限ることはない。取付部14は、ベース部5に対して着脱可能に取り付けられる。図2において、取付部14は、ネジ9を利用してベース部5に固定されるが、これに限ることはない。
【0017】
本実施形態の接触部7は、保持部6に対して着脱自在となっている。具体的に、図3~5に示すように、接触部7は、環状に形成された弾性部材21によって構成されている。環状の弾性部材21は、その幅方向の寸法(環状とされた弾性部材21の軸方向の寸法)が厚さ寸法よりも大きい筒状に形成されている。弾性部材21の幅方向は、図3~5における上下方向に対応している。弾性部材21(接触部7)の幅寸法は、例えば物品Mに応じて変えてよい。例えば弾性部材21の幅方向における物品Mの寸法が大きい場合には、弾性部材21の幅寸法を大きくしてよい。
接触部7を構成する弾性部材21は、例えばゴムによって構成されてよい。
【0018】
図3,4に示すように、環状とされた接触部7の弾性部材21は、少なくとも保持部6の基端部11と先端部12との間で弾性的に伸長するように保持部6に巻き回される。
本実施形態では、保持部6に巻き回された弾性部材21の一部が、外側弾性部13の弓形の外側に沿って配置される。また、弾性部材21の他の一部が、前述した保持部6の取付部14のうちベース部5に対向する面14aに配置される。このため、図2に示すように、弾性部材21を取り付けた保持部6がベース部5に固定された状態では、弾性部材21の一部が取付部14とベース部5との間に挟まれる。この状態においては、弾性部材21を保持部6から取り外すことはできない。すなわち、保持部6をベース部5に固定した状態では、弾性部材21が保持部6に取り付けられた状態に安定に保持される。弾性部材21を保持部6に対して着脱する際には、保持部6をベース部5から取り外せばよい。
【0019】
接触部7及び外側弾性部13の配列方向における外側弾性部13の撓み剛性は、当該配列方向における接触部7の撓み剛性よりも高い。ここで、撓み剛性は、弾性率と同じ単位の数値である。ただし、撓み剛性は、例えば弾性率が同じであっても、例えば外側弾性部13の厚さなどの寸法に応じて変化し得る数値である。例えば、外側弾性部13を構成する材料が同一(すなわち弾性率が同一)であっても、例えば外側弾性部13の厚さが大きくなると、外側弾性部13の撓み剛性は高くなる。外側弾性部13の撓み剛性が接触部7の撓み剛性よりも高いことは、外側弾性部13が接触部7よりも弾性的に撓み変形しにくいことを意味する。
【0020】
接触部7は、図6に示すような弾性特性を有する。図6のグラフにおける横軸は、接触部7を含む指部2を物品Mに押し付ける変位量を示している。指部2の変位量は、図9において符号ΔLで示す長さであり、物品Mを把持する際の指部2のストローク量に相当する。また、図6のグラフにおける縦軸は、複数の指部2によって物品Mを把持する力(以下、把持力と呼ぶ。)を示している。当該把持力は、指部2が物品Mに押し付けられる力に相当する。図6に示すように、接触部7は、指部2の変位量が大きくなる程、把持力が大きくなる弾性特性を有している。
【0021】
接触部7の伸長方向に直交する方向における接触部7の撓み剛性は、指部2の変位量の変化の大きさに対する把持力の変化の大きさで表される、すなわち図6におけるグラフの傾きに対応している。前述した「接触部7の伸長方向に直交する方向」は、接触部7が弾性的に撓み変形するように接触部7に対して外力が作用する方向を意味し、具体的には、接触部7及び外側弾性部13の配列方向に相当する。
当該接触部7の撓み剛性は、例えば0.05N/mm以上であってよい。また、当該接触部7の撓み剛性は、例えば0.4N/mm以下であってよい。
【0022】
上記した接触部7の撓み剛性の上限及び下限は、物品Mを把持するための指部2の変位量(ストローク量)や、比較的柔らかい物品M(例えば苺)を把持することを考慮している。以下、この点について説明する。
【0023】
本実施形態の把持機構1では、物品Mを把持する際の指部2の変位量(ストローク量)が過度に大きくならないように、当該指部2の変位量を5mm以下としている。
また、柔らかい物品Mを把持する力(把持力)は、例えば0.5N以上かつ2.0N以下とすることが好ましい。把持力が2.0Nよりも大きいと、把持する際に柔らかい物品Mにダメージを与える可能性が高いためである。また、把持力が0.5Nよりも小さいと物品Mが把持機構1から不意に落下してしまう可能性が高いためである。柔らかい物品Mが苺である場合、最も小さいサイズ(例えば2Sサイズ)の苺に対する把持力の目標値は、例えば0.5N程度であるとよい。また、最も大きい(例えば3Lサイズ)の苺に対する把持力は、例えば1.7N程度であるとよい。
【0024】
以上のことを考慮すると、変位量5mm以下において把持力が0.5N以上となるように、接触部7の撓み剛性は0.05N/mm以上とすることが好ましい。また、変位量5mm以下において把持力が2.0N以下となるように、接触部7の撓み剛性は0.4N/mm以下とすることが好ましい。なお、接触部7の撓み剛性が高い程(0.4N/mmに近づく程)、より小さい変位量で物品Mを把持することが可能となる。
【0025】
さらに、本実施形態では、物品Mに接触する接触部7の摩擦係数が、以下のように定義される。
複数の指部2により物品Mを把持する最大の力(最大の把持力)をFMAXとする。また、物品Mの最大重量をWMAXとし、複数の指部2により把持された物品Mを移動させる際に複数の指部2に作用する最大の加速度をGMAXとする。このとき、接触部7の摩擦係数μは、以下の式で定義される。
μ>WMAX×GMAX/FMAX
接触部7の摩擦係数μが上記の式で設定されることで、複数の指部2によって把持された物品Mが、複数の指部2から落下することを効果的に抑制又は防止することができる。
【0026】
以下、複数の指部2によって把持する物品Mが比較的柔らかい苺である場合の接触部7の摩擦係数μの一例について説明する。
例えば、サイズが最も大きな苺(例えば3Lサイズの苺)の最大重量WMAXを0.05kg(50g)とし、苺を把持する最大の把持力FMAXを1.7Nとし、苺を把持した状態における最大の加速度GMAXを23m/sとした場合、接触部7の摩擦係数μは、0.7よりも大きければよい。
例えば、実際の接触部7の摩擦係数μ(測定値)が1.3である場合、設計値μ>0.7に対し、安全率1.86が得られる。このため、実際の把持力や摩擦係数に多少のばらつきがあっても、十分な安全率を確保することができる。
【0027】
前述したように、外側弾性部13の撓み剛性は、接触部7の撓み剛性よりも高い。このため、複数の指部2によって物品Mを把持する際に、接触部7を含む指部2を物品Mに押し付ける変位量に応じて、指部2の弾性特性を変えることができる。この点について、図7を参照して説明する。
図7のグラフは、指部2のうち接触部7だけが弾性的に撓み変形する場合(接触部単体)の弾性特性、及び、指部2の接触部7及び外側弾性部13の両方が弾性的に撓み変形する場合(接触部+外側弾性部)の弾性特性を示している。図7のグラフにおいて、横軸は物品Mを把持する際の指部2の変位量(ストローク量)を示し、縦軸は複数の指部2によって物品Mを把持する把持力を示している。
【0028】
外側弾性部13の撓み剛性が接触部7の撓み剛性よりも高いことで、図7のグラフに示すように、指部2を物品Mに押し付ける変位量が小さい範囲(例えば変位量1~3mmの範囲)では、接触部7だけが弾性的に撓み変形する。このとき、指部2の弾性特性は、指部2の変位量の変化に対する指部2の弾性力(物品Mの把持に寄与する弾性力)の変化が小さい弾性特性となる。
一方、指部2を物品Mに押し付ける変位量が大きくなって(例えば変位量3mm以上となって)、接触部7の弾性的な撓み変形に限界が生じると、外側弾性部13も弾性的に撓み変形する。これにより、変位量が大きい範囲(例えば変位量3mm以上の範囲)では、指部2の弾性特性は、指部2の変位量の変化に対する指部2の弾性力の変化が大きい弾性特性となる。
【0029】
図2~4に示すように、本実施形態の指部2は、ベース部5から保持部6の延長方向の先端側に向かうにしたがって先細る形状に形成されている。本実施形態において、指部2の先細り形状は、保持部6(特に外側弾性部13)と、接触部7(弾性部材21のうち保持部6の基端部11と先端部12との間にかけ渡された部分)とによって形成されている。
【0030】
以上のように構成される把持機構1によって物品Mを把持する方法の一例について図8~10を参照して説明する。図8~10に例示する物品Mは苺であるが、これに限ることはない。
物品Mを把持する際には、はじめに図8に示すように、2つの指部2を互いに離して位置させて、2つの指部2の間に物品Mを配置する。この際、物品Mは2つの指部2の先端部分の間に配置されることがより好ましい。
【0031】
次いで、図9,10に示すように、2つの指部2を互いに近づける方向に移動させて物品Mに押し付けることで、2つの指部2によって物品Mを把持する。この際、各指部2の接触部7は、物品Mによって接触部7の伸長方向に交差する方向(図9において概ね上下方向)に押されることで、当該交差する方向に弾性的に撓み変形する。そして、接触部7の弾性的な撓み変形に伴って発生する指部2の弾性力によって物品Mを把持することができる。
また、本実施形態では、物品Mの把持に際して各指部2の変位量が大きい(例えば3mm以上である)場合には、接触部7に加え、外側弾性部13も弾性的に撓み変形する。これにより、より大きな弾性力によって物品Mを把持することができる。
以上により、把持機構1による物品Mの把持方法が完了する。
【0032】
以上説明したように、本実施形態の把持機構1において、物品Mを把持するための指部2は、保持部6の基端部11と先端部12との間にかけ渡されることで弾性的に伸長した状態に保持され、指部2の内側部分を構成する接触部7を有する。このため、複数の指部2によって物品Mを把持した状態では、接触部7が弾性的に撓み変形する。そして、接触部7の弾性的な撓み変形が大きくなるにつれて、物品Mに対する接触部7の接触面積が大きくなる。このため、把持機構1によって把持する物品Mのサイズや形状が変わっても、指部2が物品Mに接触する面積を十分に確保することが可能となる。これにより、物品Mを安定に把持することができる。
【0033】
また、指部2が物品Mに接触する面積を十分に確保できることで、指部2を物品Mに押し付ける力(把持力)を小さくしても、物品Mを安定に把持することができる。したがって、柔らかい物品M(例えば苺など)であっても安定に把持することが可能となる。
【0034】
また、本実施形態の把持機構1では、接触部7が保持部6の弓形の内側に位置する。このため、接触部7を保持部6に対して間隔をあけて配置することができる。これにより、把持機構1によって物品Mを把持する際に、物品Mが接触部7に押し付けられたときには、接触部7が保持部6に近づくように弾性的に撓み変形することができる。したがって、接触部の弾性的な撓み変形が保持部6によって阻害されることを抑制又は防止できる。
【0035】
また、本実施形態の把持機構1では、接触部7及び保持部6の外側弾性部13の配列方向において、外側弾性部13の撓み剛性が、接触部7の撓み剛性よりも高い。これにより、接触部7を含む指部2を物品Mに押し付ける変位量(指部2の移動長さ)に応じて、指部2の弾性特性を変えることができる。具体的に、指部2は、変位量が小さい範囲では変位量の変化に対する把持力(弾性力)の変化が小さい弾性特性を有し、変位量が大きい範囲では変位量の変化に対する把持力(弾性力)の変化が大きい弾性特性を有する。
【0036】
このように、指部2の弾性特性が可変となっていることで、指部2によって物品Mを把持する力(把持力)をより広い範囲で調整することができる。したがって、把持機構1によって把持できる物品Mの重量の範囲を拡大することが可能となる。
【0037】
また、保持部6が弾性的に撓み変形可能な外側弾性部13であることで、接触部7の弾性的な撓み変形に限界が生じても、保持部6が弾性的に撓み変形することで、物品Mにダメージを与えることなく、指部2によって物品Mを把持することが可能となる。
【0038】
また、保持部6が弾性的に撓み変形可能な外側弾性部13であることで、接触部7が弾性的に撓み変形した際に、保持部6の基端部11や先端部12に接続される接触部7の接続部分に荷重が集中して作用することを抑制できる。これにより、接触部7の接続部分の局所的な劣化(例えば摩耗や破断)を抑えて、接触部7の長寿命化を図ることができる。
【0039】
また、本実施形態の把持機構1において、接触部7の撓み剛性が0.05N/mm以上である場合には、複数の指部2によって物品Mを安定に把持することができる。例えば、物品Mを把持した状態で把持機構1を移動させた際に、把持された物品Mの姿勢が変化することを効果的に抑制又は防止できる。把持された物品Mの姿勢の変化を抑制又は防止することで、当該物品Mを狙い通りの位置に狙い通りの姿勢で配置することが可能となる。
【0040】
また、接触部7の撓み剛性を0.05N/mm以上とすることで、物品Mを把持するために指部2を物品Mに押し付ける変位量(指部2のストローク量)が過度に大きくなることを抑制できる。したがって、把持機構1の大型化を抑えることが可能となる。
【0041】
また、上記したように指部2の変位量が小さく抑えられることで、把持機構1によって把持された物品Mを容易に狭い場所に置くことが可能となる。例えば図11に示すように、把持機構1によって把持された物品Mを別の物品M2に近い場所に置く際に、指部2が別の物品M2に接触して当該別の物品M2にダメージを与えることを抑制又は防止することができる。
【0042】
また、本実施形態の把持機構1では、接触部7が保持部6に対して着脱自在となっている。これにより、接触部7がその使用頻度や時間経過に伴って劣化しても、当該接触部7を交換することができる。したがって、指部2のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0043】
また、本実施形態の把持機構1では、接触部7を構成する環状の弾性部材21が保持部6に巻き回されることで、保持部6に取り付けられる。これにより、接触部7を保持部6に対して簡単に脱着することができる。
【0044】
また、本実施形態の把持機構1では、指部2が先細り状に形成されている。このため、物品Mを指部2の先端部分で把持することにより、把持機構1によって把持された物品Mを容易に狭い場所に置くことが可能となる。例えば図12に示すように、把持機構1によって把持された物品Mを別の物品M2に近い場所に置く際に、指部2が別の物品M2に接触して当該別の物品M2にダメージを与えることを抑制又は防止することができる。
【0045】
以上、本発明の詳細について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
【0046】
本発明において、接触部7は環状の弾性部材21によって構成されることに限らず、例えば両端を有する帯状又は紐状の弾性部材21であってもよい。この場合には、例えば、帯状又は紐状の弾性部材21が弾性的に伸長するように、当該弾性部材21の両端部が保持部6の基端部11と先端部12とに固定されればよい。
【0047】
本発明において、接触部7が引っ掛かる保持部6の基端部11は、上記実施形態のようにベース部5との境界部分に位置してよいが、例えばベース部5から離れて位置してもよい。
【0048】
本発明において、ベース部5、保持部6及び接触部7を有する指部2は、把持機構1を構成する全ての指部2に適用されることに限らず、把持機構1の複数の指部2のうち少なくとも1つに適用されればよい。
【符号の説明】
【0049】
1…把持機構
2…指部
5…ベース部
6…保持部
7…接触部
11…基端部
12…先端部
13…外側弾性部
21…弾性部材
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9
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図11