(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091405
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】歯ブラシ
(51)【国際特許分類】
A46B 15/00 20060101AFI20230623BHJP
A61C 17/34 20060101ALI20230623BHJP
A46B 13/02 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
A46B15/00 D
A61C17/34 K
A46B13/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206134
(22)【出願日】2021-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】504177284
【氏名又は名称】国立大学法人滋賀医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若村 祐宏
(72)【発明者】
【氏名】越沼 伸也
【テーマコード(参考)】
3B202
【Fターム(参考)】
3B202AA07
3B202AB23
3B202BA09
3B202BC08
3B202BE10
3B202CA09
3B202CA10
3B202EA01
3B202EA02
(57)【要約】
【課題】介護が必要な患者においても安全に歯磨きをすることが可能な歯ブラシを提供する。
【解決手段】歯ブラシ1は、歯列に沿って配置される複数のブラシヘッドを備え、前記ブラシヘッドのそれぞれは歯列の表側及び裏側に接触する一対のブラシ部35を有する、歯列清掃部3と、歯列清掃部3を着脱自由に支持する支持部材2と、支持部材2に設けられる把持部4と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯列に沿って配置される複数のブラシヘッドを備え、前記ブラシヘッドのそれぞれは歯列の表側及び裏側に接触する一対のブラシ部を有する、歯列清掃部と、
前記ブラシヘッドを着脱自由に支持する支持部材と、
前記支持部材に設けられる把持部と、
を備える歯ブラシ。
【請求項2】
前記支持部材及び前記歯列清掃部を振動させる振動発生部をさらに備える、請求項1に記載の歯ブラシ。
【請求項3】
前記歯列清掃部の複数の前記ブラシヘッドは、左右の大臼歯を清掃するための左右の大臼歯用ブラシヘッドと、左右の小臼歯を清掃するための左右の小臼歯用ブラシヘッドと、左右の前歯を清掃するための左右の前歯用ブラシヘッドとを含む、請求項1または2に記載の歯ブラシ。
【請求項4】
前記歯列清掃部の複数の前記ブラシヘッドは、歯列の各歯ごとに設けられるブラシヘッドを含む、請求項1または2に記載の歯ブラシ。
【請求項5】
前記支持部材は塑性変形する、請求項1から4のいずれか1項に記載の歯ブラシ。
【請求項6】
前記支持部材は、前記複数のブラシヘッドのそれぞれを支持する複数の支持パーツを備え、
前記各支持パーツは、塑性変形可能な連結部材により連結されている、請求項5に記載の歯ブラシ。
【請求項7】
前記ブラシヘッド及び前記支持部材の一方には、前記ブラシ部及び前記支持部材の他方に形成された係合凸部と係合するための係合凹部が形成されている、請求項1から6のいずれか1項に記載の歯ブラシ。
【請求項8】
前記支持部材に設けられ、口腔内の液体を吸引するための液体吸引管をさらに備える、請求項1から7のいずれか1項に記載の歯ブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、介護用の歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者や病気などにより介護が必要な患者において、口腔内が不潔であると嚥下機能や呼吸機能の低下の原因となったり、肺炎などのさらなる疾患を引き起こすことになる。このため、口腔内を清潔に保つための介護用歯ブラシが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の歯ブラシは、上歯歯列又は下歯歯列を歯列に沿って包囲可能な形状の歯列カバーと、歯列カバーの内側に設けられたブラシと、歯列カバーを歯列に対して電動で歯磨き駆動する駆動部とを備えている。歯磨きをする際には、歯列カバーを口内に収容し、ブラシが歯列の表側および裏側に接触するように歯列カバーで上側の歯列または下側の歯列を包囲する。駆動部により歯列カバーを歯列に対して駆動させ、ブラシで歯列の表側および裏側を同時に磨く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の歯ブラシにおいては、ブラシは歯列カバーに設けられており、部分的な取り外しができない。このため、欠損歯の箇所にブラシが位置すると、ブラシが歯周組織に当たって擦れ、歯周組織が傷つくことがある。
【0006】
本発明は、上記した課題に着目してなされたものであり、介護が必要な患者においても安全に歯磨きをすることが可能な歯ブラシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による歯ブラシは、歯列に沿って配置される複数のブラシヘッドを備え、前記ブラシヘッドのそれぞれは歯列の表側及び裏側に接触する一対のブラシ部を有する、歯列清掃部と、前記ブラシヘッドを着脱自由に支持する支持部材と、前記支持部材に設けられる把持部と、を備える。
【0008】
上記の構成によれば、歯列清掃部は複数のブラシヘッドを備え、各ブラシヘッドは支持部材に着脱自由に支持されている。このため、欠損歯に対応する位置にあるブラシヘッドを取り外すことができ、歯周組織を傷つけることなく安全に歯磨きを行うことができる。
【0009】
好ましい実施形態においては、前記支持部材及び前記歯列清掃部を歯列に対して振動させる振動発生部をさらに備える。
【0010】
好ましい実施形態においては、前記歯列清掃部の複数の前記ブラシヘッドは、左右の大臼歯を清掃するための左右の大臼歯用ブラシヘッドと、左右の小臼歯を清掃するための左右の小臼歯用ブラシヘッドと、左右の前歯を清掃するための左右の前歯用ブラシヘッドとを含む。
【0011】
他の実施形態においては、前記歯列清掃部の複数の前記ブラシヘッドは、歯列の各歯ごとに設けられるブラシヘッドを含む。
【0012】
好ましい実施形態においては、前記支持部材は塑性変形する。なお、塑性変形とは、外圧を加えることにより変形し、外圧を取り去っても変形した形状を保持することをいう。
【0013】
好ましい実施形態においては、前記支持部材は、前記複数のブラシヘッドのそれぞれを支持する複数の支持パーツを備え、前記各支持パーツは、塑性変形可能な連結部材により連結されている。
【0014】
好ましい実施形態においては、前記ブラシヘッド及び前記支持部材の一方には、前記ブラシ部及び前記支持部材の他方に形成された係合凸部と係合するための係合凹部が形成されている。
【0015】
好ましい実施形態においては、前記支持部材に設けられ、口腔内の液体を吸引するための液体吸引管をさらに備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、欠損歯の周囲の歯周組織を傷つけることなく安全に歯磨きを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る歯ブラシの全体の概略構成を示す斜視図である。
【
図2】歯列清掃部を取付けていない状態の歯ブラシの斜視図である。
【
図3】歯列清掃部を取付けていない状態の歯ブラシの平面図である。
【
図7】右の大臼歯用ブラシヘッドを示す図であり、(A)は支持部材に係止された状態を示す断面図、(B)は先端を内外方向に開いた状態を示す断面図、(C)は平面図、(D)は斜視図、である。
【
図8】右の小臼歯用ブラシヘッドを示す図であり、(A)は支持部材に係止された状態を示す断面図、(B)は先端を内外方向に開いた状態を示す断面図、(C)は平面図、(D)は斜視図、である。
【
図9】右の前歯用ブラシヘッドを示す図であり、(A)は支持部材に係止された状態を示す断面図、(B)は先端を内外方向に開いた状態を示す断面図、(C)は平面図、(D)は斜視図、である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態を
図1~
図9を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態の歯ブラシ1の外観を示す。本実施形態の歯ブラシ1は、平面視においてU字状の支持部材2と、支持部材2に着脱自由に支持される歯列清掃部3と、支持部材2に設けられ内部に振動発生部42bを備える把持部4と、口腔内の液体を吸引するための液体吸引管5とを備える。本実施形態の歯ブラシ1は、患者を介護する人(以下、「介助者」という。)や患者本人が、把持部4を把持して歯ブラシ1のU字状の先端側から口腔内に挿入して用いられるものである。
【0019】
本明細書において、歯列とは、歯牙によって形成される列をいい、歯牙とは、大臼歯、小臼歯、前歯(犬歯、側切歯、中切歯を含む)をいう。なお、歯列には、一般に「親知らず」と呼ばれる、最も奥に位置する大臼歯を含まない場合がある。以下の説明では、特にことわらない限り、歯ブラシ1を口腔内の上側の歯列に接触させたときの状態を基準として、唇側を前側、喉側を後側(または「奥側」ともいう。)とし、患者から見て上下方向及び左右方向を規定し、歯列の表から裏に向かう側を内側、裏から表に向かう側を外側とする。内外方向は、歯列に沿う方向及び上下方向に直交する方向である。
【0020】
(支持部材2)
支持部材2は、
図2、
図3に示すように、平面視における形状がU字形状であって、歯列清掃部3の複数のブラシヘッドのそれぞれを支持する複数の支持パーツを備えている。本実施形態では、後述する左右の大臼歯用ブラシヘッド30A、30Bを支持するための左右の大臼歯用支持パーツ10A、10Bと、左右の小臼歯用ブラシヘッド31A、31Bを支持するための左右の小臼歯用支持パーツ11A、11Bと、左右の前歯用ブラシヘッド32A、32Bを支持するための前歯用支持パーツ12とを備えている。
【0021】
支持部材2のU字形状の先端側、すなわち、歯ブラシ1の奥側の左右位置に、それぞれ左右の大臼歯用支持パーツ10A、10Bが位置し、前側に前歯用支持パーツ12が位置する。右の大臼歯用支持パーツ10Aと前歯用支持パーツ12との間には所定の隙間を空けて右の小臼歯用支持パーツ11Aが位置し、左の大臼歯用支持パーツ10Bと前歯用支持パーツ12との間には所定の隙間を空けて左の小臼歯用支持パーツ11Bが位置する。
【0022】
支持部材2の各支持パーツ10A、10B、11A、11B、12は、合成樹脂を素材として構成される。合成樹脂の種類としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリオキシメチレン(ポリアセタール樹脂(POM))、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、ポリ乳酸(PLA)が好ましく、耐久性の観点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリオキシメチレン(ポリアセタール樹脂(POM))が好ましいが、この素材に限定されるものではなく、任意の素材を用いることができる。
【0023】
右の大臼歯用支持パーツ10Aは、
図3に示すように、右の大臼歯の歯列に沿う湾曲形状を呈している。
図7(A)、
図7(B)に示すように、歯列に沿う方向に直交する断面形状が略矩形状であり、外側の側面13aには後述する右の大臼歯用ブラシヘッド30Aの係合凸部36aと係合するための係合凹部14aが形成され、内側の側面13bには、後述する右の大臼歯用ブラシヘッド30Aの係合凸部36bと係合するための係合凹部14bが形成されている。
図4、
図5に示すように、係合凹部14a、14bは、外側の側面13a及び内側の側面13bの上下方向の中央部であって歯列に沿う方向の中央部に設けられる溝であり、係合凹部14a、14bの歯列に沿う方向の長さは、右の大臼歯用支持パーツ10Aの歯列に沿う方向の長さよりもわずかに短い。係合凹部14a、14bは、各断面形状が右の大臼歯用ブラシヘッド30Aの係合凸部36a、36bに対応する形状であり、本実施形態では断面形状を三角形状としているが、三角形状に限定されず、円形、楕円形、矩形であってもよい。
【0024】
右の大臼歯用支持パーツ10Aの内外方向の中央部であって下部分には、
図6、
図7(A)に示すように、後述する口腔内の液体を吸引するための液体吸引管5を挿入するための挿入孔15が形成されている。挿入孔15は、歯列に沿う方向に右の大臼歯用支持パーツ10Aを貫通しており、歯列に沿う方向の両側面13c、13dに開口15aが形成されている。挿入孔15は、歯列に沿う方向の中央部において、大臼歯用支持パーツの上面13eに向けて分岐して分岐孔15bを有しており、上面13eに開口15aが形成されている。なお、本実施形態では、挿入孔15は右の大臼歯用支持パーツ10Aの下面に近い位置に設けられているが、挿入孔15の位置は限定されず、右の大臼歯用支持パーツ10Aに形成されて液体吸引管5を保持することができればいずれの位置に形成されていてもよい。また、挿入孔15の開口15aは、上面13eにのみ形成されていてもよく、歯列に沿う方向の奥側の側面13cにのみ形成されていてもよい。また、本実施形態では分岐孔15bは1つ設けられているが、複数設けられてもよい。
【0025】
左の大臼歯用支持パーツ10Bは、右の大臼歯用支持パーツ10Aと左右対称の同形状に形成されている。左の大臼歯用支持パーツ10Bについては、右の大臼歯用支持パーツ10Aと対応する構成に同一の符号を付すことで詳細な説明は省略する。
【0026】
右の小臼歯用支持パーツ11Aについて、右の大臼歯用支持パーツ10Aとの相違点について説明する。
図3に示すように、平面視において右の小臼歯の歯列に沿う湾曲形状を呈している。
図4、
図5に示すように、右の小臼歯用支持パーツ11Aの外側の側面13a、内側の側部13bには、それぞれ、係合凹部14c、14dが形成されている。係合凹部14c、14dは、断面形状が右の小臼歯用ブラシヘッド31Aの係合凸部36a、36bに対応する形状の溝であり、本実施形態では、断面形状を半円状としている。その他の構成については、右の大臼歯用支持パーツ10Aと同様の構成であるため、対応する構成に同一の符号を付すことで詳細な説明は省略する。
【0027】
また、左の小臼歯用支持パーツ11Bは、右の小臼歯用支持パーツ11Aと左右対称の同形状に形成されている。左の小臼歯用支持パーツ11Bについては、右の小臼歯用支持パーツ11Aと対応する構成に同一の符号を付すことで詳細な説明は省略する。
【0028】
前歯用支持パーツ12は、
図2、
図3に示すように、平面視において、右の前歯の列に沿う湾曲形状の右側部分12Aと、右側部分12Aと左右対称の形状であって左の前歯の列に沿う湾曲形状の左側部分12Bとが一体に形成されており、前側に凸となる湾曲形状を呈している。
図9(A)に示すように、前歯用支持パーツ12は歯列に沿う方向に直交する断面形状が右の大臼歯用支持パーツ10Aと同じ大きさの略矩形状である。
図2、
図3に示すように、前側に凸となる頂点部分、すなわち左右方向の中央部の外側の側面13aには、前側に向けて把持部4の柄部40が突設されている。
【0029】
図5に示すように、前歯用支持パーツ12の右側部分12Aの外側の側面13aには後述する右の前歯用ブラシヘッド32Aの係合凸部36eと係合するための係合凹部14eが形成されている。係合凹部14eは、上下方向の中央部に形成され、歯列に沿う方向に柄部40から外側の側面13aの右端部の手前の位置まで延びる溝である。また、
図4に示すように、前歯用支持パーツ12の右側部分12Aの内側の側面13bには、後述する右の前歯用ブラシヘッド32Aの係合凸部36bと係合するための係合凹部14fが形成されている。係合凹部14fは、上下方向の中央部であって内側の側面13bの右側部分12Aの歯列に沿う方向の中央部に形成され、右側部分12Aの歯列に沿う方向の長さよりもわずかに短い長さを有する溝である。係合凹部14e、14fは、断面形状が右の前歯用ブラシヘッド32Aの係合凸部36e、36fに対応する形状であり、本実施形態では、断面形状が右の小臼歯用支持パーツ11Aの係合凸部36c、36dよりも半径が大きい半円状に設定されている。
【0030】
前歯用支持パーツ12の左側部分12Bの外側の側面13aには、後述する左の前歯用ブラシヘッド32Bの係合凸部36と係合するための係合凹部14eが形成されている。また、前歯用支持パーツ12の左側部分12Bの内側の側面13bには、左の小臼歯用ブラシヘッド31Bの係合凸部36fと係合するための係合凹部14fが形成されている。左側部分12Bの外側の側面13a、内側の側面13bに設けられた係合凹部14e、14fは、右側部分12Aの外側の側面13a、内側の側面13bに設けられた係合凹部14e、14fと左右対称の位置に設けられ、同じ形状及び大きさを有している。
【0031】
図9(A)、
図9(B)に示すように、前歯用支持パーツ12(12A、12B)の内外方向の中央部であって下部分には、後述する口腔内の液体を吸引するための液体吸引管5を挿入するための挿入孔15が形成されている。挿入孔15は、歯列に沿う方向に前歯用支持パーツ12を貫通しており、歯列に沿う方向の側面に開口15aが形成されている。また、挿入孔15は、平面視において前歯用支持パーツ12の頂点部分で、上面13eに向けて分岐して分岐孔15bが形成されており、上面13eに分岐孔15bと連通する開口15aが形成されている。また、挿入孔15は頂点部分で前側に向けて分岐しており、後述する把持部4の柄部40に形成された挿入孔15と連通する。本実施形態では、挿入孔15は前歯用支持パーツ12の下面に近い位置に設けられているが、前歯用支持パーツ12に形成されて液体吸引管5を保持することができればいずれの位置に形成されていてもよい。
【0032】
(連結部材20)
図3、
図6に示すように、右の大臼歯用支持パーツ10Aと右の小臼歯用支持パーツ11Aとは所定の隙間を空けて配置され、塑性変形可能な連結部材20により連結されている。塑性変形とは、外圧を加えることにより変形し、外圧を取り去っても変形した形状を保持することをいう。連結部材20は、その両端部分が右の大臼歯用支持パーツ10Aの歯列に沿う方向の前側の側面13dと右の小臼歯用支持パーツ11Aの歯列に沿う方向の後側の側面13cとに挿入されて接着材等の任意の固定手段により固定されている。連結部材20は、支持パーツ10A、11Aの内外方向の中央部であって、挿入孔15の上位置に取付けられている。連結部材20は、例えばアルミニウム、鉄、銅などの素材から構成されており、塑性変形可能であれば任意の素材であってもよい。連結部材20の周囲には外圧により弾性変形可能な保護部材21が配置され、歯牙や歯周組織に連結部材20が直接当たることを防いでいる。保護部材21は、例えばポリウレタンとポリエチレンの発泡体からなるスポンジであるが、これに限定されない。本実施形態では、保護部材21は断面形状が右の大臼歯用支持パーツ10A及び右の小臼歯用支持パーツ11Aと略同じ大きさ、形状に形成されている。保護部材21には、連結部材20を貫通させるための貫通孔21aが形成されており、内外方向の中央部であって下側に、液体吸引管5を挿入するための挿入孔21bが設けられている。
【0033】
左の大臼歯用支持パーツ10Bと左の小臼歯用支持パーツ11Bとの間、右の小臼歯用支持パーツ11Aと前歯用支持パーツ12の間、左の小臼歯用支持パーツ11Bと前歯用支持パーツ12の間においても、それぞれ、塑性変形可能な連結部材20により連結されており、連結部材20の周囲には保護部材21が配置されている。連結部材20及び保護部材21は右の大臼歯用支持パーツ10Aと右の小臼歯用支持パーツ11Aとを連結する連結部材20及び保護部材21と同様の構成であるため、説明を省略する。
【0034】
連結部材20は塑性変形するため、前歯用支持パーツ12に対して左右の小臼歯用支持パーツ11A、11Bを左右方向及び上下方向に移動させてその位置を調整することができる。また、左右の小臼歯用支持パーツ11A、11Bに対して左右の大臼歯用支持パーツ10A、10Bを左右方向及び上下方向に移動させてその位置をそれぞれ調整することができる。このとき、保護部材21は左右の小臼歯用支持パーツ11A、11Bの位置に合わせて変形する。これにより、患者の口腔の大きさに合わせて、支持部材2の左右方向の幅及び上下方向の位置を調整可能となる。本実施形態においては、左右の小臼歯用支持パーツ11A、11Bの奥側の端部同士の左右方向の距離L1は約53mm以上63mm以下の間で調整され、左右の大臼歯用支持パーツ10A、10Bの奥側の端部同士の左右方向の距離L2は距離L1よりも1~3mm短い距離となるように調整される。また、本実施形態の歯ブラシ1は例えばL、M、Sの3つのサイズが用意され、患者の口腔の大きさに合わせて使用するサイズが選択されてもよく、この場合、例えば、Lサイズの場合の距離L1は63mm±10mm、Mサイズの場合の距離L1は58mm±10mm、Sサイズの場合の距離L1は53mm±10mmに調整される。さらに、支持部材2の前後方向の最大長さL5は50mm以上、70mm以下に設定されてもよい。
【0035】
左右の大臼歯用支持パーツ10A、10Bと左右の小臼歯用支持パーツ11A、11Bとの間のそれぞれの隙間の歯列に沿う方向の長さL3、前歯用支持パーツ12と左右の小臼歯用支持パーツ11A、11Bとの間のそれぞれの隙間の歯列に沿う方向の長さL4は、各支持パーツ10A、10B、11A、11B、12の位置を調整する際に、隣り合う支持パーツ同士が干渉しない程度の長さに設定され、本実施形態では長さL3、長さL4はそれぞれ3.0mmに設定されている。
【0036】
(歯列清掃部3)
歯列清掃部3は、歯列に沿って配置される複数のブラシヘッドを備えており、本実施形態においては、大臼歯を清掃するための左右の大臼歯用ブラシヘッド30A、30Bと、小臼歯を清掃するための左右の小臼歯用ブラシヘッド31A、31Bと、前歯を清掃するための左右の前歯用ブラシヘッド32A、32Bとを備えている。左右の大臼歯用ブラシヘッド30A、30B、左右の小臼歯用ブラシヘッド31A、31B、および左右の前歯用ブラシヘッド32A、32Bは、それぞれ、左右の大臼歯用支持パーツ10A、10B、左右の小臼歯用支持パーツ11A、11B、前歯用支持パーツ12に取付けられるものである。
【0037】
右の大臼歯用ブラシヘッド30Aは、
図7(A)~
図7(D)に示すように、平面視において、右の大臼歯用支持パーツ10Aに沿う所定の曲率半径で湾曲している。右の大臼歯用ブラシヘッド30Aは、歯列に沿う方向に直交する断面形状が上に開口するU字形状であって、上下方向に延びる一対の側部33a、33bと、一対の側部33a、33bの下部を連結する平板状の底部34とを有している。右の大臼歯用ブラシヘッド30Aは、歯列に沿う方向の長さが右の大臼歯用支持パーツ10Aと同じに設定され、底部34の内外方向の長さ、すなわち一対の側部33a、33bの間の間隔は、支持部材2の右の大臼歯用支持パーツ10Aの内外方向の長さと同じに設定されている。一対の側部33a、33bのそれぞれの上方には歯列の表側及び裏側に接触するブラシ部35が設けられている。ブラシ部35は、一対の側部33a、33bの対向するそれぞれの面の上部を植毛面35aとし、合成樹脂製の複数本のフィラメントを束ねて構成した毛束35bを植毛面35aに複数個植設して固定した構成のものである。ブラシ部35の構成は上記に限定されず、歯列の表面を磨くことができればいずれの形態でもよく、例えば、毛束35bに替えてスポンジブラシであってもよい。
【0038】
一対の側部33a、33bのそれぞれの対向面の下側であって、右の大臼歯用ブラシヘッド30Aが右の大臼歯用支持パーツ10Aに取付けられる際に係合凹部14a、14bに対応する位置には、係合凸部36a、36bが形成されている。係合凸部36a、36bは、係合凹部14a、14bに対応する大きさ、形状、長さに形成されて、係合凹部14a、14bと係合する。このように、右の大臼歯用支持パーツ10Aの係合凹部14a、14bを右の大臼歯用ブラシヘッド30Aの係合凸部36a、36bに対応する大きさ、形状とすることで、右の大臼歯用ブラシヘッド30Aが右の大臼歯用支持パーツ10Aに対して上下方向や歯列に沿う方向に位置ずれすることを防いでいる。
【0039】
本実施形態では、
図7(C)に示すように、係合凸部36a、36bの歯列に沿う方向の長さは一対の側部33a、33bの歯列に沿う方向の長さよりもわずかに短く、係合凸部36a、36bの上下方向の長さは、係合凹部14a、14bと同じに設定され、断面形状が係合凹部14a、14bと対応する三角形状である。なお、
図7(D)、
図8(D)、
図9(D)においては、ブラシ部35の毛束35bの記載を省略している。
【0040】
右の大臼歯用ブラシヘッド30Aは、弾性変形可能な合成樹脂から構成されており、合成樹脂の素材は支持部材2と同様の素材を用いることができる。
【0041】
右の大臼歯用ブラシヘッド30Aを右の大臼歯用支持パーツ10Aに取付けるには、まず、
図7(B)に示すように、一対の側部33a、33bの上端に力を加えて内外方向に押し広げて変形させ、一対の側部33a、33bの間であって底部34上に右の大臼歯用支持パーツ10Aを配置する。そして一対の側部33a、33bに加えた力を取り除いて、一対の側部33a、33bを
図7(A)に示すように変形前の位置に戻す。このとき、右の大臼歯用ブラシヘッド30Aの係合凸部36a、36bが右の大臼歯用支持パーツ10Aの係合凹部14a、14bと係合し、右の大臼歯用ブラシヘッド30Aは右の大臼歯用支持パーツ10Aに取付けられる。
【0042】
左の大臼歯用ブラシヘッド30Bは、右の大臼歯用ブラシヘッド30Aと左右対称の同形状に形成されている。左の大臼歯用支持ブラシヘッドについては、右の大臼歯用ブラシヘッド30Aと対応する構成に同一の符号を付すことで詳細な説明は省略する。
【0043】
右の小臼歯用ブラシヘッド31Aの構成を
図8(A)~
図8(D)に示す。右の小臼歯用ブラシヘッド31Aの構成について、以下の説明では、右の大臼歯用ブラシヘッド30Aとの相違点について説明する。右の小臼歯用ブラシヘッド31Aは、平面視において右の小臼歯用支持パーツ11Aに沿う所定の曲率半径で湾曲している。一対の側部33a、33bには、右の小臼歯用支持パーツ11Aの係合凹部14c、14dと係合するための係合凸部36c、36dが形成されており、本実施形態では係合凸部36c、36dの断面形状を半円状としている。なお、断面形状は右の小臼歯用支持パーツ11Aの係合凹部14c、14dと対応する形状であればよく、半円形に限定されるものではない。その他の構成は、右の大臼歯用ブラシヘッド30Aと同一の構成であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0044】
また、左の小臼歯用ブラシヘッド31Bは、右の小臼歯用ブラシヘッド31Aと左右対称の同形状に形成されている。左の小臼歯用ブラシヘッド31Bについては、右の小臼歯用ブラシヘッド31Aと対応する構成に同一の符号を付すことで詳細な説明は省略する。
【0045】
図9(A)~
図9(D)は右の前歯用ブラシヘッド32Aを示す。以下の説明では、右の大臼歯用ブラシヘッド30Aとの相違点について説明する。右の前歯用ブラシヘッド32Aは、平面視において前歯用支持パーツ12の右側部分12Aに沿う所定の曲率半径で湾曲しており、前歯用支持パーツ12の右側部分12Aに取付けられる。一対の側部33a、33bには、右の前歯用ブラシヘッド32Aが前歯用支持パーツ12の右側部分12Aに取付けられる際に係合凹部14e、14fと対応する位置に、係合凸部36e、36fが形成されている。係合凸部36e、36fは、前歯用支持パーツ12Aの右側部分12Aの係合凹部14e、14fと対応する形状、大きさ、長さを有し、係合凹部14e、14fと係合する。本実施形態では、係合凸部36fは歯列に沿う方向の中央部に形成され、
図9(C)に示すように、その長さは内側の側部33bの歯列に沿う方向の長さよりもわずかに短く設定されている。係合凸部36eは、歯列に沿う方向に後述する切り欠き部37の端縁から外側の側部33aの右端部の手前の位置まで延びている。本実施形態では、係合凸部36e、36fの断面形状を係合凹部14e、14fと対応する大きさの半円状としている。
【0046】
右の前歯用ブラシヘッド32Aの外側の側部33aの下部であって、歯列に沿う方向の前側の端部には、
図9(D)に示すように切り欠き部37が形成されている。切り欠き部37は、右の前歯用ブラシヘッド32Aを前歯用支持パーツ12に取付ける際に柄部40を挿入することができる大きさであり、本実施形態では、切り欠き部37の歯列に沿う方向の長さは柄部40の歯列に沿う方向の長さの約半分に設定され、切り欠き部37の上下方向の長さは柄部40の上下方向の長さとほぼ同じに設定されている。右の前歯用ブラシヘッド32Aの支持パーツへの取付けの際に、柄部40が切り欠き部37に挿入されることで、柄部40が右の前歯用ブラシヘッド32Aの外側の側部33aに干渉しないようにしている。
【0047】
右の前歯用ブラシヘッド32Aを前歯用支持パーツ12に取付けるには、まず、
図9(B)に示すように、一対の側部33a、33bの上端に力を加えて内外方向に押し広げる。そして、柄部40の右側から切り欠き部37に柄部40を挿入しつつ、一対の側部33a、33bの間であって、底部34上に前歯用支持パーツ12を配置する。そして一対の側部33a、33bに加えた力を取り除くことで、
図9(A)、
図9(D)に示すように、一対の側部33a、33bはもとの位置に戻る。このとき、右の前歯用ブラシヘッド32Aの係合凸部36e、36fが前歯用支持パーツ12の係合凹部14e、14fと係合し、右の前歯用ブラシヘッド32Aは前歯用支持パーツ12の右側部分12Aに取付けられる。
【0048】
左の前歯用ブラシヘッド32Bは、右の前歯用ブラシヘッド32Aと左右対称の同形状に形成されている。左の前歯用ブラシヘッド32Bについては、右の前歯用ブラシヘッド32Aと対応する構成に同一の符号を付すことで詳細な説明は省略する。左の前歯用ブラシヘッド32Bは、前歯用支持パーツ12の左側部分12Bに取付けられる。
【0049】
(把持部4)
図1に示すように、把持部4は、柄部40と、把持部本体41とを備える。柄部40は、支持部材2と把持部本体41とを連結しており、奥側の端部が支持部材2と接続され、前側の端部が把持部本体41と接続される。
図4に示すように、柄部40は、支持部材2と連結される板状の前側部40aと、把持部4と連結される板状の後側部40cと、前側部40aと後側部40cとを連結し、前側部40aから斜め上方向に延びる斜め部40bとを備えており、把持部本体41を支持部材2よりも上方に位置させる。柄部40の左右方向の中央部であって下面に近い位置には、液体吸引管5を挿入するための挿入孔40dが前後方向に貫通して形成されており、前歯用支持パーツ12の挿入孔15と連通している。
【0050】
把持部本体41は、介助者や患者が手で把持しやすい外形を有しており、内部に、本実施形態の歯ブラシ1を電動歯ブラシ1として用いるための駆動部42が水密に収容されている。駆動部42は、電池42aと、超音波振動を発生させる振動子などの振動発生部42bと、振動発生部42bの動作を制御する制御回路等(図示せず)を含む。超音波振動とは、一般的な超音波電動歯ブラシにおいて振動発生部が発生させる振動周波数での振動をいい、例えば、1.2MHz~1.6MHzの周波数での振動をいう。振動発生部42bは超音波振動に限らず、超音波振動よりも周波数の小さい振動、例えば音波振動を発生させてもよく、音波振動よりも振動周波数の小さい一般的な電動歯ブラシの振動周波数の振動を発生させるものであってもよい。また、振動発生部42bは複数の振動子を備え、異なる周波数の複数の振動を発生させるものであってもよい。電池や振動発生部42bは既知の構成が用いられる。把持部本体41には、図示しないスイッチが外面に設けられており、介助者や患者がスイッチをオンすることで、駆動部42による振動が柄部40を介して支持部材2、歯列清掃部3に伝達される。把持部本体41内には、液体吸引管5が貫通する。
【0051】
(液体吸引管5)
液体吸引管5は、口腔内の唾液や水などを吸引するためのものであり、支持部材2の各支持パーツ10A、10B、11A、11B、12及び保護部材21に設けられた挿通孔15、21bに挿入される本管5aと、本管5aから分岐して各支持パーツ10A、10B、11A、11B、12の分岐孔15bに挿入される分岐管5bを備える。本管5a及び分岐管5bは、各支持パーツ10A、10B、11A、11B、12の開口15aに揃う位置に開口5cを有しており、この開口5cから液体吸引管5に液体が導入される。液体吸引管5は、把持部4の柄部40、把持部本体41を介して、図示しない吸引装置に接続される。吸引装置は、吸引力を発生させて液体吸引管5を通じて液体を吸引するものであり、把持部本体41の外に配置されていてもよく、把持部本体41内に配置されていてもよい。液体吸引管5は、合成樹脂の素材から構成され、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリオキシメチレン(ポリアセタール樹脂(POM))、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、ポリ乳酸(PLA)等が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、合成樹脂のほか、シリコーンやエラストマー等であってもよい。
【0052】
(使用)
患者に本実施形態の歯ブラシ1を上側の歯列に対して使用する際には、まず、介助者または患者は、歯列清掃部3の各ブラシヘッド30A、30B、21A、31B、32A、32Bを支持部材2の各支持パーツ10A、10B、11A、11B、12に取付ける。次に、患者の歯列に歯列清掃部3の各ブラシ部35が沿うように、ブラシヘッド30A及び30B、31A及び31Bに力を加えて連結部材20を変形させ、左右の大臼歯用ブラシヘッド30A、30Bの間の距離、左右の小臼歯用ブラシヘッド31A、31Bの間の距離を調整する。そして、把持部本体41を把持して歯ブラシ1の奥側、すなわち左右の大臼歯用ブラシヘッド30A、30Bの位置する側から患者の口腔内に挿入し、各ブラシヘッド30A、30B、21A、31B、32A、32Bの内側のブラシ部35を歯列の裏面に接触させ、外側のブラシ部35を歯列の表面に接触させる。この状態を保持したままで、介助者または患者がスイッチを押すと駆動部42の振動発生部42bからの超音波振動が柄部40を介して支持部材2及び歯列清掃部3のブラシ部35に伝わる。ブラシ部35が超音波振動することで口腔内の唾液や水等の液体中に真空の空洞(キャビテーション)が発生し、その空洞が破裂するときに生じる衝撃波により歯列の表面および裏面に付着した歯垢や細菌の除去・破壊が行われる。これにより、歯列の表側及び裏側が同時に清掃される。なお、本実施形態の歯ブラシ1を電動歯ブラシとして使用せずに、介助者または患者が歯ブラシ1を小刻みに動かして歯列の表面及び裏面を清掃してもよい。また、本実施形態の歯ブラシ1を下側の歯列に対して使用する際には、歯ブラシ1の上下をひっくり返した状態で、上側の歯列に対する使用と同様の動作を行う。
【0053】
本実施形態によれば、歯列清掃部3は複数のブラシヘッド30A、30B、21A、31B、32A、32Bを備え、各ブラシヘッド30A、30B、21A、31B、32A、32Bは支持部材2に着脱自由に支持されている。このため、欠損歯に対応する位置にあるブラシヘッドを取り外すことができ、歯周組織を傷つけることなく安全に歯磨きを行うことができる。特に、本実施形態においては、歯列清掃部3は、左右の大臼歯用ブラシヘッド30A、30B、左右の小臼歯用ブラシヘッド31A、31B、左右の前歯用ブラシヘッド32A、32Bに分けられていることで、大臼歯、小臼歯、前歯の欠損歯に対応する位置にあるブラシヘッドを取り外すことができる。
【0054】
さらに、本実施形態においては振動発生部42bを備えており、歯ブラシ1を電動歯ブラシとして用いることができる。このため、患者の口腔内に歯ブラシ1を挿入したのち、介助者または患者が把持部4を把持して歯ブラシ1を保持し、歯ブラシ1を駆動させるだけで、患者の歯磨きを行うことができる。特に、患者が寝たきりであるなど、歯ブラシ1を自身で保持したり咥えることができず、患者自身で歯磨きができない場合であっても、介助者は歯ブラシ1を保持するだけで患者の歯磨きを行うことができる。また、振動発生部42bは超音波振動を発生させるため、歯石や汚れの除去等の清掃をより効果的に行うことができる。
【0055】
また、口腔の大きさや左右の大臼歯部、小臼歯部の間の距離(歯列の幅)は患者によって様々であるが、本実施形態によれば、支持部材2は塑性変形するため、患者の歯列の幅に応じて支持部材2に支持された各ブラシヘッド30A、30B、31A、31B、32A、32Bの左右の間隔を調整することができる。特に、本実施形態においては、支持部材2の各支持パーツ10A、10B、11A、11B、12が塑性変形可能な連結部材20により連結されていることで、支持部材2を塑性変形させることができる。このように、患者の口腔の大きさに合わせて歯ブラシ1の幅を調整することができるため、患者それぞれにフィットした口腔ケアを実施できる。
【0056】
また、大臼歯を清掃するための大臼歯用ブラシヘッド30A、30Bと支持パーツ10A、10B、小臼歯を清掃するための小臼歯用ブラシヘッド31A、31Bと支持パーツ11A、11B、前歯を清掃するための前歯用ブラシヘッド32A、32Bと支持パーツ12は、それぞれ異なる形状の係合凸部36a~36f及び係合凹部14a~14fを備えている。このため、例えば大臼歯用ブラシヘッド30A、30Bを小臼歯用支持パーツ11A、11Bに取付けることはできず、各支持パーツ10A、10B、11A、11B、12に誤ったブラシヘッド30A、30B、31A、31B、32A、32Bを取付けることがない。
【0057】
また、本実施形態においては、液体吸引管5を備えているため、口腔内の唾液等の液体を吸引することができ、誤嚥を防ぐことができる。
【0058】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0059】
上記の実施形態では、支持部材2の各支持パーツ10A、10B、11A、11B、12に係合凹部14a~14fが形成され、歯列清掃部3の各ブラシヘッド30A、30B、31A、31B、32A、32Bの係合凸部36a~36fと係合しているが、各支持パーツ10A、10B、11A、11B、12に係合凸部が形成され、歯列清掃部3の各ブラシヘッド30A、30B、31A、31B、32A、32Bに形成された係合凹部と係合してもよい。
【0060】
また、例えば、本実施形態では連結部材20を用いて左右の大臼歯用支持パーツ10A、10Bと左右の小臼歯用支持パーツ11A、11Bとが連結され、左右の小臼歯用支持パーツ11A、11Bと前歯用支持パーツ12とが連結されているが、支持部材2が各支持パーツ10A、10B、11A、11B、12として分離されずに一体として形成されていてもよい。この場合は、連結部材20は用いられず、支持部材2は塑性変形可能な素材から構成され、患者の口腔の大きさに合わせて、支持部材2の左右方向の幅を調整することができる。支持部材2を構成する素材として、例えば、金属が挙げられる。
【0061】
また、支持部材2が各支持パーツ10A、10B、11A、11B、12として分離されずに一体として形成されており、支持部材2が塑性変形しなくてもよい。この場合は、歯ブラシ1は例えばL、M、Sの3つのサイズが用意され、患者の口腔の大きさに合わせて使用するサイズが選択されてもよく、例えば、Lサイズの長さL1は63mm、Mサイズの長さL1は58mm、Sサイズの長さL1は53mmに設定される。
【0062】
また、支持部材2に設けられる挿入孔15には液体吸引管5を挿入せず、挿入孔15を液体吸引管5として用い、挿入孔15に直接液体が流れる構成としてもよい。
【0063】
また、本実施形態では、歯列清掃部3は左右の大臼歯用ブラシヘッド30A、30Bと、左右の小臼歯用ブラシヘッド31A、31Bと、左右の前歯用ブラシヘッド32A、32Bに分割されているが、歯列の各歯牙ごとに複数のブラシヘッドが設けられていてもよい。この場合、ある歯牙が欠損している場合には、欠損歯に対応するブラシヘッドを支持部材2に取付けないことで、欠損歯の周囲の歯周組織を傷つけることがなく、また、他の歯牙には確実にブラシを当てることができる。
【符号の説明】
【0064】
1 歯ブラシ
2 支持部材
3 歯列清掃部
4 把持部
5 液体吸引管
10A、10B 右の大臼歯用支持パーツ
11A、11B 右の小臼歯用支持パーツ
12 前歯用支持パーツ
14a~14f 係合凹部
20 連結部材
30A、30B 左右の大臼歯用ブラシヘッド
31A、31B 左右の小臼歯用ブラシヘッド
32A、32B 左右の前歯用ブラシヘッド
35 ブラシ部
36a~36f 係合凸部
42b 振動発生部