(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091408
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】電動自転車のバッテリー装置および電動折り畳み自転車
(51)【国際特許分類】
B62J 43/23 20200101AFI20230623BHJP
B62M 6/90 20100101ALI20230623BHJP
B62K 15/00 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
B62J43/23
B62M6/90
B62K15/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206137
(22)【出願日】2021-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】511097658
【氏名又は名称】ジック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 勝義
【テーマコード(参考)】
3D212
【Fターム(参考)】
3D212BA06
3D212BN05
(57)【要約】
【課題】荒い運転操作や路面の凹凸があっても、バッテリーケースが変位しないようにし、電気接続部での通電及びモータ駆動部へ給電を安定させる。
【解決手段】バッテリー装置は、ハンドル上に固定される取付ベースと、取付ベース上に取外し可能に定置されるバッテリーケース8とを含む。取付ベースとバッテリーケース8との対向位置にモータ駆動部とバッテリーとの間を電気接続する電気接続部60が設けられる。取付ベース上には外側及び上下に案内面を有する左右のガイド部と、取付ベースの上面より突出するように付勢されるラッチボルトとが設けられる。バッテリーケース8の下面にはガイド部の外側及び上下の各案内面に係合し各案内面に沿って摺動が可能な摺動面81~83を有する左右のスライド部80と、ラッチボルトが嵌合するラッチ穴104とが設けられる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動自転車のハンドル上に固定される取付ベースと、前記取付ベース上に取外し可能に定置されバッテリーの収納部及びバッテリーの充電端子を備えるバッテリーケースとを含む電動自転車のバッテリー装置であって、
前記取付ベースと前記バッテリーケースとが対向する位置に電動自転車のモータ駆動部と前記バッテリーとの間を電気的に接続する電気接続部が設けられ、前記取付ベースには、外側及び上下に案内面を有する左右のガイド部と、前記取付ベースの上面より突出するように上方へ付勢されかつ下方への押下げが可能なラッチボルトとが設けられ、前記バッテリーケースの下面には、前記左右の各ガイド部の外側及び上下の各案内面に係合し各案内面に沿って前後方向に摺動が可能な摺動面を有する左右のスライド部と、前記ラッチボルトが嵌合するラッチ穴とが設けられてなる電動自転車のバッテリー装置。
【請求項2】
前記電気接続部は、前記取付ベースの左右のガイド部間に前方へ突き出るように設けられる接続端子と、前記バッテリーケースの左右のスライド部間に前記接続端子と抜差しが可能なように設けられる差込み孔と、前記差込み孔内に配置される端子板とで構成される請求項1に記載の電動自転車のバッテリー装置。
【請求項3】
前記ラッチボルトは、前記取付ベース上の前端部に配置されており、前記取付ベースの一方の側面には、前記ラッチボルトを押し下げてラッチ穴との嵌合を解除するための操作レバーが設けられている請求項1に記載の電動自転車のバッテリー装置。
【請求項4】
前記スライド部には、複数本の補強用のリブが間隔をあけて縦方向に一体形成されている請求項1に記載の電動自転車のバッテリー装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のバッテリー装置が搭載された電動折り畳み自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電動自転車に搭載されたモータ駆動部に電源を供給するための電動自転車のバッテリー装置に関し、この発明は特に、折り畳むことが可能な電動自転車(以下「電動折り畳み自転車」という。)に好適なバッテリー装置と、そのバッテリー装置が搭載された電動折り畳み自転車とに関する。
【背景技術】
【0002】
電動自転車には、リチウムイオン電池のような充電が可能なバッテリーが用いられたバッテリー装置が搭載されている。従来、その種のバッテリー装置は、大容量のバッテリーが用いられるため、重量が嵩み、車体のバランスを考慮して、電動自転車の重心位置の近傍、例えば、電動自転車の上ポストと下ポストとで挟まれる空間などに設置されている。
【0003】
出願人は、先般、電動折り畳み自転車に好適であり、必要最小限の距離を走行できる小型のバッテリー装置を提案した。このバッテリー装置は、ハンドル上に固定した取付ベースと、取付ベース上に取り外しが可能に取り付けられるバッテリーケースとを有し、取付ベースとバッテリーケースとの間には、モータ駆動部とバッテリーとの間を電気的に接続する電気接続部と、取付ベース上にバッテリーケースを定位させて電気接続部が接続された状態に保持する保持機構部とが設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
電気接続部は、取付ベースの上面に設けられる第1の接続端子と、バッテリーケースの下面に設けられる第2の接続端子とを含み、第1、第2の接続端子が接触することでモータ駆動部とバッテリーとの間が電気的に接続される。
保持機構部は、取付ベースの電気接続部の周辺位置に設けられる第1の永久磁石と、バッテリーケースの電気接続部の周辺位置に設けられる第2の永久磁石とからなり、第1の永久磁石と第2の永久磁石との間で磁気吸引力が作用することで、取付ベース上にバッテリーケースが定位し、電気接続部が接続された状態に保持されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した構成の電動折り畳み自転車では、走行中に急ハンドルや急ブレーキが頻発すると、バッテリーケースが取付ベース上で左右、前後の各方向に変位するおそれがある。
また、路面に大きな凹凸があると、走行中、車体が上下にがたつき、バッテリーケースが取付ベース上で上下に振動するおそれがある。
バッテリーケースが左右、前後、上下の各方向へ変位すると、第1、第2の接続端子間の接触が不安定となり、電気接続部での通電が断続的となり、モータ駆動部への給電が安定しないという問題が生じる。
【0007】
この発明は、上記の問題に着目してなされたもので、荒い運転操作や路面の凹凸があっても、バッテリーケースが左右、前後、上下の各方向へ変位せず、電気接続部での通電及びモータ駆動部への給電が安定する電動自転車のバッテリー装置、及びそのバッテリー装置が搭載された電動折り畳み自転車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明による電動自転車のバッテリー装置は、電動自転車のハンドル上に固定される取付ベースと、取付ベース上に取外し可能に定置されバッテリーの収納部及びバッテリーの充電端子を備えるバッテリーケースとを含む。取付ベースとバッテリーケースとが対向する位置に電動自転車のモータ駆動部とバッテリーとの間を電気的に接続する電気接続部が設けられる。取付ベースには、外側及び上下の案内面を有する左右のガイド部と、取付ベースの上面より突出するように上方へ付勢されかつ下方への押下げが可能なラッチボルトとが設けられる。バッテリーケースの下面には、左右の各ガイド部の外側及び上下の各案内面に係合し各案内面に沿って前後方向に摺動が可能な摺動面を有する左右のスライド部と、ラッチボルトが嵌合するラッチ穴とが設けられる。
【0009】
電動自転車の走行に先立ち、バッテリーケースの充電端子に外部電源を接続してバッテリーを充電した後、ハンドル上に固定された取付ベース上にバッテリーケースを定置する。これにより、電動自転車のモータ駆動部とバッテリーとが電気接続部を介して電気的に接続され、モータ駆動部へバッテリーケース内のバッテリーより駆動電力が供給される。走行を終えたとき、取付ベースよりバッテリーケースを取り外すことで、電気接続部の接続が切れ、モータ駆動部への電力供給が止まる。取外し後は、バッテリーケースを携行するので、バッテリー装置が盗難に遭うことはない。
【0010】
バッテリーケースを取付ベース上に取り付けるには、取付ベース上の左右のガイド部にバッテリーケースの下面の左右のスライド部を外側より係合させ、ガイド部の案内面に沿ってスライド部の摺動面を摺動させる。スライド部は、ガイド部の外側及び上下の各案内面に係合するので、荒い運転操作や路面の凹凸に対して、バッテリーケースの左右、上下の各方向への変位が阻止される。
また、バッテリーケースを摺動させるとき、取付ベース上に突出するラッチボルトがバッテリーケースの下面のラッチ穴に嵌合するので、バッテリーケースの前後方向への変位が阻止される。
走行中、バッテリーケースが左右、上下、前後の各方向へ変位しないので、電気接続部での通電及びモータ駆動部への給電が安定する。
【0011】
好ましい実施形態においては、電気接続部は、取付ベースの左右のガイド部間に前方へ突き出るように設けられる接続端子と、バッテリーケースの左右のスライド部間に接続端子の抜差しが可能なように設けられる差込み孔と、差込み孔内に配置される端子板とで構成される。
【0012】
この実施形態によると、取付ベース上でバッテリーケースを前後方向へ移動させるとき、差込み孔に対して接続端子が挿脱し、これにより接続端子と端子板とが接続されたり接続が切れたりする。
【0013】
好ましい実施形態においては、ラッチボルトは、取付ベース上の前端部に配置されており、取付ベースの一方の側面には、ラッチボルトを押し下げてラッチ穴との嵌合を解除するための操作レバーが設けられている。
【0014】
ラッチボルトがラッチ穴に嵌合した状態では、バッテリーケースは取付ベース上に定位する。操作レバーを操作することで、ラッチボルトのラッチ穴との嵌合が解除されるので、バッテリーケースを取付ベース上で移動させて取り外すことができる。
【0015】
好ましい実施形態においては、スライド部には、複数本の補強用のリブが間隔をあけて縦方向に一体形成されている。
【0016】
この実施形態によると、スライド部は補強用のリブにより強度が高められているので、摺動や係合によるスライド部の変形や破損が防止される。
【0017】
この発明の範囲は、上記のバッテリー装置に加えて、上記のバッテリー装置が搭載された電動折り畳み自転車を含むものである。
ハンドル上に固定された取付ベース上にバッテリーケースが取り付けられるので、電動折り畳み自転車の見栄えは良好であり、バッテリーケースの取付や取外しも容易である。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、荒い運転操作や路面の凹凸に対して、バッテリーケースが左右、上下、前後の各方向へ変位することがなく、電気接続部での通電及びモータ駆動部への給電が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】バッテリー装置が取り付けられた電動折り畳み自転車の外観を示す正面図である。
【
図2】バッテリー装置の固定台を示す斜視図である。
【
図3】バッテリーケースを上方から見た平面図である。
【
図4】バッテリーケースの下面を示す斜視図である。
【
図7】取付ベース上にバッテリーケースが定置された状態を示す背面図である。
【
図8】取付ベース上にバッテリーケースが定置された状態を示す正面図である。
【
図9】取付ベースのガイド部とバッテリーケースのスライド部との係合状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、電動折り畳み自転車1の一実施形態を示す。なお、この発明は、折り畳み構造を有する電動折り畳み自転車に限らず、折り畳み構造を有しない電動自転車にも適用できる。電動折り畳み自転車1は、補助駆動装置であるモータ駆動部5と、モータ駆動部5へ駆動電力を供給するバッテリー装置6とが搭載されたものである。車体フレーム10の中心をなすトップチューブ11は、ほぼ長さ中央部が二つ折り可能な構造になっている。二つ折り部分はジョイント部2により結合される。ジョイント部2の結合状態は、レバー20の操作により固定したり解除したりすることが可能である。
【0021】
トップチューブ11の後端部には、上下方向を向くシートチューブ12を介して左右対をなすバックフォーク13L,13Rが設けられている。トップチューブ11とシートチューブ12との間およびシートチューブ12と左右のバックフォーク13L,13Rとの間は溶接により一体に連結されている。トップチューブ11の前端部には、上下方向を向くヘッドチューブ14を介して左右対をなすフロントフォーク15L,15Rが設けられている。ヘッドチューブ14も二つ折り可能な構造になっており、二つ折り部分はレバー22を有するジョイント部21により結合されている。トップチューブ11とヘッドチューブ14との間およびヘッドチューブ14と左右のフロントフォーク15L,15Rとの間は溶接により一体に連結されている。
【0022】
シートチューブ12にはシートポスト16が高さ調節可能に支持されている。シートポスト16の上端部にはサドル16aが取り付けられている。ヘッドチューブ14にはステム17が高さ調節可能に支持されている。ステム17の上端部にはハンドル19が設けられている。左右のバックフォーク13L,13Rは斜め下方へ延びており、後端部間に後車輪3が回転自由に支持されている。左右のフロントフォーク15L,15Rはほぼ真下へ延びており、下端部間に前車輪30が回転自由に支持されている。
【0023】
シートチューブ12は、下方へ延びる延長部12aを一連に備えている。トップチューブ11の後部の下面には支持パイプ18が溶着され、延長部12aの下端部と支持パイプ18の下端部との間に軸受筒40が溶接により取り付けられている。軸受筒40は駆動軸4を回転自由に支持する。駆動軸4の両端部にはクランクアーム41がそれぞれ取り付けられている。各クランクアーム41の先端にはペダル42が装着されている。駆動軸4にはモータ駆動部5より回転駆動力が伝達される。駆動軸4およびクランクアーム41の回転はチェン43を介して後車輪3に伝えられる。
【0024】
トップチューブ11、シートチューブ12、バックフォーク13L,13R、ヘッドチューブ14、およびフロントフォーク15L,15Rは電動折り畳み自転車1の骨格をなす車体フレーム10を構成する。車体フレーム10を構成する各部材はアルミニウム合金の展伸材により構成される。なお、トップチューブ11およびバックフォーク4L,4R、或いは、車体フレーム10の全ての構成部材をマグネシウム合金の展伸材により構成することも可能である。
【0025】
電動折り畳み自転車1のハンドル19の中央部上には、バッテリー装置6が取り付けられている。図示例のバッテリー装置6は、バッテリー容量が小さく、小型かつ軽量であるので、電動折り畳み自転車1の重心位置から離れたハンドル19上に設置できるものである。
【0026】
バッテリー装置6は、ハンドル19に固定されるアルミニウムなどの金属製の固定台7と、固定台7上に取外しが可能に取り付けられる合成樹脂製のバッテリーケース8とを含む。固定台7に組み付けられた接続端子61,61(詳細は後述)は、コード線51を介してモータ駆動部5に電気的に接続されている。コード線51は、ステム17およびヘッドチューブ14の内部を通り、一旦、外部に引き出された後、トップチューブ11および支持パイプ18の内部を通ってモータ駆動部5に接続されている。
【0027】
固定台7は、
図2及び
図5~
図7に示すように、固定基板71と、固定基板71の上面の後部側にねじ止めされる押さえ板72と、固定基板71の上面の前部側にネジ止めや接着により取り付けられる取付ベース70とを備えている。固定基板71の後部上面には凹曲面状の支持溝73が左右方向に形成されるとともに、図示しない貫通孔が上下方向に設けられ、この貫通孔をステム17が貫通している。ステム17の外周面と固定基板71の下面との間が溶接されて一体化されている。支持溝73上にハンドル19が水平に支持され、ハンドル19上に押さえ板72が被せられている。押さえ板72と固定基板71との間は4隅でねじ止めされている。
【0028】
押さえ板72及び取付ベース70の上面にバッテリーケース8が設置されて支持される。取付ベース70は、固定基板71上に固定される本体部70Aを有する。本体部70Aの上面には支持板部70Bが一体に設けられている。支持板部70Bは固定基板71とほぼ同じ幅を有し、前端が固定基板71の前端とほぼ同じ位置まで延びている。本体部70A及び支持板部70Bの後端面は押さえ板72の前端面に当接する。支持板部70Bの上面は押さえ板72の上面と連続する。
【0029】
取付ベース70は、固定基板71の前端より前方へ突き出るラッチ取付部70Cを有する。ラッチ取付部70Cは、固定基板71の前端面に沿って下方へ突出し、その突出部分は固定基板71の前端面に当接している。このラッチ取付部70Cには、ラッチボルト100を上下動自由に支持するためのラッチ取付穴74が上下方向に設けられている。ラッチ取付穴74はラッチ取付部70Cの上面に開口する。
【0030】
ラッチ取付穴74には、ラッチボルト100と、ラッチボルト100をラッチ取付部70Cの上面より突出するように上方へ付勢しかつ下方へ押し下げが可能なように支持する圧縮バネ(図示せず)が挿入されている。ラッチボルト100の上端部は、前側が傾斜面101に、後側が垂直面102に、それぞれ形成されている。傾斜面101が押されたときはラッチボルト100は押し下げられるが、垂直面102が押されたときはラッチボルト100は押し下げられず突出状態を維持する。ラッチ取付部70Cの一方の側面には、ラッチボルト100に連結されラッチボルト100を強制的に押し下げるための操作レバー103が設けられている。
【0031】
取付ベース70の支持板部70Bの両側端面には、左右の対称位置に帯板状をなす左右のガイド部75が形成されている。各ガイド部75は、前端側が前方へ突出しており、外側の垂直な面が第1の案内面76、上下の水平な面が第2,第3の案内面77,78になっている。各ガイド部75の第1~第3の各案内面76,77,78には、
図9に示すように、後述するバッテリーケース8の左右のスライド部80が外側より前後方向へ摺動自由に係合する。
【0032】
取付ベース70と後述するバッテリーケース8とが対向する位置には、電動折り畳み自転車1のモータ駆動部5とバッテリーとの間をコード線51を介して電気的に接続するための電気接続部60が設けられている。この実施例の電気接続部60は、支持板部70Bの左右のガイド部75,75間に前方へ突き出るように設けられる複数本の接続端子61と、後述するバッテリーケース8の下面に設けられる差込み孔62と、差込み孔62内に配置される接続用の端子板63とで構成されるもので、接続端子61にはコード線51が接続されている。
【0033】
バッテリーケース8は、
図3に示されるように、平面形状が長方形状をなし、縦横の長さに対して厚みが小さく、扁平状である。バッテリーケース8の内部空間には、図示していないが、バッテリー収納部が設けられている。バッテリー収納部には複数本のリチウムイオン電池よりなるバッテリーが収納される。
【0034】
バッテリーケース8の内部には、バッテリー充放電回路、LED点灯回路、LED表示回路、電源供給回路、スイッチ切替回路などが実装された回路基板(図示せず)が収納されている。バッテリー充放電回路は、バッテリーの充電および放電を制御する。LED点灯回路は、後述する照明用のLED85(
図8に示す。)の点灯動作を制御する。LED表示回路は、後述するLED表示部89を構成するLEDの点灯動作を制御する。電源供給回路は、後述する電源供給用のUSB端子84へバッテリーより電源電圧を出力する。スイッチ切替回路は、後述するスイッチ86の操作に応じて上記した回路のいずれかを動作可能とする。
【0035】
バッテリーケース8の下面の両側端部には、
図4及び
図9に示すように、左右のスライド部80が所定の間隔をあけて平行に設けられている。各スライド部80は、長さ方向と直交する断面の形状がコ字状に形成されており、垂直な内側の面を第1の摺動面81、上下の略水平な内側の面を第2,第3の摺動面82,83となす。左右のスライド部80は、取付ベース70の支持板部70Bの両側端面に形成された各ガイド部75に外側より係合するもので、第1の摺動面81はガイド部75の外側の第1の案内面76に沿って、第2,第3の各摺動面82,83はガイド部75の上下の第2,第3の各案内面77,78に沿って、それぞれ前後方向へ摺動が可能である。
【0036】
左右のスライド部80の第1の摺動面81,81間の距離D1は左右のガイド部75の第1の案内面76,76間の距離d1とほぼ一致する。また、左右のスライド部80の第2,第3の摺動面82,83間の間隔D2は左右のガイド部75の第2,第3の案内面77,78間の距離d2にほぼ一致する。これにより左右のスライド部80は左右のガイド部75に外側より緊密に係合し、バッテリーケース8の左右、上下の各方向の変位が規制される。
各スライド部80の外面には、
図4~
図6に示されるように、複数本の補強用のリブ87が間隔をあけて縦方向に一体形成されている。
【0037】
バッテリーケース8の下面の左右のスライド部80,80間には、スライド部80の高さとほぼ一致する厚みの端子板組付部88が一体形成されている。端子板組付部88には、前端面から下面にかけて開口する複数の差込み孔62が形成されている。各差込み孔62は、取付ベース70の上面の左右のガイド部75,75間に設けられた複数の接続端子61の抜差しが可能である。各差込み孔62には、接続端子61との接触によって導通する端子板63が配置されており、接続端子61と端子板63との接触によってモータ駆動部5とバッテリーとの間が電気的に接続される。なお、電気接続部60は、この実施例のようなプラグ、ソケット方式のもの限定されず、例えば、端子板同士を面接触させるような方式のものでもよい。
【0038】
端子板組込部88の後部側には、ラッチボルト100が緊密に嵌合するラッチ穴104が設けられている。左右のスライド部80を左右のガイド部75に沿ってガイド部75の終端位置まで摺動させたとき、ラッチ穴104にラッチボルト100が篏合するもので、これによりバッテリーケース8が取付ベース70上に定位し、バッテリーケース8の前後方向の変位が規制される。
【0039】
バッテリーケース8の一方の側面には、
図3に示されるように、バッテリー充放電回路に接続された充電端子64が設けられている。この充電端子64に充電器具を接続することにより外部電源からの充電が行われる。バッテリーケース8の他方の側面にはスマートフォンなどへ電源を供給することが可能な電源供給用のUSB端子84が設けられている。なお、各充電端子64およびUSB端子84にはゴム製の蓋64a,84aが被せてある。バッテリーケース8の前端面には、
図8に示すように、照明用のLED85が設けられている。このLED85はLED点灯回路により点灯動作が制御される。
【0040】
バッテリーケース8の上面には、
図3に示すように、スイッチ86及びLED表示部89が設けられている。このスイッチ86は切替回路を構成するもので、スイッチ86が1回押されると、バッテリー充放電回路、電源供給回路、LED表示回路がオン状態となり、続けてスイッチ86が押されると、LED点灯回路がオン状態になり、
図8に示される照明用のLED85が点灯する。スイッチ86を長押しすると、全ての回路がオフ状態となる。LED表示部89はスイッチ86によりオン状態になったとき、バッテリー81の充電残量に応じた個数のLEDが点灯する。
【0041】
電動折り畳み自転車1の走行に先立ち、バッテリーケース8に設けられた充電端子64に充電器具を接続してバッテリーを充電する。充電器具は一般に、一端にコンセントに差し込まれるプラグ、他端に充電端子64に差し込まれるプラグ、中間にAC/DCコンバーターを備えたものである。
【0042】
バッテリーに充電した後、バッテリーケース8を取付ベース70上に定置する。まず、取付ベース70の上面の左右のガイド部75にバッテリーケース8の下面の左右のスライド部80を外側より係合させ、ガイド部75の第1~第3の各案内面76,77,78に沿ってスライド部80の第1~第3の各摺動面81,82,83を摺動させる。取付ベース70に対するバッテリーケース8の移動によって、差込み孔62に接続端子61が差し込まれ、接続端子61が端子板63に接触して電気接続される。
【0043】
スライド部80は、ガイド部75の外側の第1の案内面76及び上下の第2,第3の各案内面77,78に緊密に係合するので、荒い運転操作や路面の凹凸に対して、バッテリーケース8の左右、上下の各方向への変位が阻止される。
また、バッテリーケース8を摺動させるとき、取付ベース70上に突出するラッチボルトが100バッテリーケース8の下面のラッチ穴104に緊密に嵌合するので、バッテリーケース8の前後方向への変位が阻止される。
走行中、バッテリーケース8は左右、上下、前後の各方向へ変位しないので、電気接続部60での通電及びモータ駆動部5への給電が安定する。
【0044】
電動折り畳み自転車1の走行を終えたとき、取付ベース70に対してバッテリーケース8を取付時と反対方向へ移動させることにより、バッテリーケース8を取付ベース70より取り外すことができる。これにより、電気接続部60の接続端子61が端子板63から離れて非導通の状態となり、モータ駆動部5へのバッテリーからの電力供給が止まる。取り外したバッテリーケース8を携行することで、バッテリーケース8が盗難に遭うことはない。
【符号の説明】
【0045】
1 電動折り畳み自転車
5 モータ駆動部
6 バッテリー装置
8 バッテリーケース
19 ハンドル
60 電気接続部
61 接続端子
62 差込み穴
63 端子板
64 充電端子
70 取付ベース
75 ガイド部
76.77.78 案内面
80 スライド部
81,82,83 摺動面
100 ラッチボルト
103 操作レバー
104 ラッチ穴