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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091425
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】調理器用トッププレート
(51)【国際特許分類】
   F24C 15/10 20060101AFI20230623BHJP
   C09K 9/00 20060101ALI20230623BHJP
   H05B 6/12 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
F24C15/10 B
C09K9/00 E
H05B6/12 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206164
(22)【出願日】2021-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 尚平
(72)【発明者】
【氏名】金 シオン
(72)【発明者】
【氏名】山本 健史
【テーマコード(参考)】
3K151
【Fターム(参考)】
3K151BA62
(57)【要約】
【課題】温度によって色調を変化させることができる調理器用トッププレートを提供する。
【解決手段】調理器用トッププレートであって、調理器具が載せられる側の調理面及び該調理面とは反対側の裏面を有する、ガラス基板と、前記ガラス基板の前記調理面及び前記裏面の内の少なくとも一方の表面上に配置されている、無機層と、を備え、前記無機層が、遷移金属酸化物を含む示温顔料と、ガラスとを含み、調理器用トッププレートの前記無機層を26℃から350℃まで昇温した後、26℃まで降温する試験をしたときに、昇温前の26℃における前記無機層と、350℃における前記無機層とのL表色系における色差ΔEが5以上であり、350℃における前記無機層と、降温後の26℃における前記無機層とのL表色系における色差ΔEが5以上である、調理器用トッププレート。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理器用トッププレートであって、
調理器具が載せられる側の調理面及び該調理面とは反対側の裏面を有する、ガラス基板と、
前記ガラス基板の前記調理面及び前記裏面の内の少なくとも一方の表面上に配置されている、無機層と、
を備え、
前記無機層が、遷移金属酸化物を含む示温顔料と、ガラスとを含み、
調理器用トッププレートの前記無機層を26℃から350℃まで昇温した後、26℃まで降温する試験をしたときに、
昇温前の26℃における前記無機層と、350℃における前記無機層とのL表色系における色差ΔEが5以上であり、
350℃における前記無機層と、降温後の26℃における前記無機層とのL表色系における色差ΔEが5以上である、調理器用トッププレート。
【請求項2】
昇温前の26℃における前記無機層と、降温後の26℃における前記無機層とのL表色系における色差ΔEが3以下である、請求項1に記載の調理器用トッププレート。
【請求項3】
前記無機層が、前記ガラス基板の前記調理面上に配置されている、請求項1又は2に記載の調理器用トッププレート。
【請求項4】
前記無機層が、前記ガラス基板の前記裏面上に配置されている、請求項1又は2に記載の調理器用トッププレート。
【請求項5】
前記遷移金属酸化物を含む示温顔料が、酸化鉄を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の調理器用トッププレート。
【請求項6】
前記遷移金属酸化物を含む示温顔料が、酸化鉄粉末、又は酸化鉄により被覆された無機粉末である、請求項1~5のいずれか1項に記載の調理器用トッププレート。
【請求項7】
前記無機層100質量%中、前記遷移金属酸化物を含む示温顔料の含有量が、5質量%以上、80質量%以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の調理器用トッププレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理器用トッププレートに関する。
【背景技術】
【0002】
電磁調理器、ラジアントヒーター調理器及びガス調理器等の上部には、調理器用トッププレートが備えられている。上記調理器用トッププレートには、調理器具が載せられる調理面と、この調理面とは反対側の裏面とを有するガラス基板が備えられている。また、上記ガラス基板の裏面の加熱部分には、温度情報を取得するための温度センサーが取り付けられることがある。
【0003】
ところで、温度により色調が変化する顔料(示温顔料)が知られている。例えば、下記の特許文献1には、硫化カドミウム及びセレン化カドニウムを含有する可逆性示温顔料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平01-190784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
調理器用トッププレートには、調理器の意匠性及び調理器内部の隠蔽性を高めるために、顔料を含む層が設けられることがある。しかしながら、調理器用トッププレートでは、一般的に上記特許文献1に記載のような示温顔料は用いられていないため、加熱前、加熱中及び加熱後において、顔料を含む層の表面の色調は変化せず、従って、調理器用トッププレートの表面の色調は変化しないものであった。
【0006】
本発明の目的は、温度によって色調を変化させることができる調理器用トッププレートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る調理器用トッププレートは、調理器用トッププレートであって、調理器具が載せられる側の調理面及び該調理面とは反対側の裏面を有する、ガラス基板と、前記ガラス基板の前記調理面及び前記裏面の内の少なくとも一方の表面上に配置されている、無機層と、を備え、前記無機層が、遷移金属酸化物を含む示温顔料と、ガラスとを含み、調理器用トッププレートの前記無機層を26℃から350℃まで昇温した後、26℃まで降温する試験をしたときに、昇温前の26℃における前記無機層と、350℃における前記無機層とのL表色系における色差ΔEが5以上であり、350℃における前記無機層と、降温後の26℃における前記無機層とのL表色系における色差ΔEが5以上であることを特徴としている。
【0008】
本発明に係る調理器用トッププレートでは、昇温前の26℃における前記無機層と、降温後の26℃における前記無機層とのL表色系における色差ΔEが3以下であることが好ましい。
【0009】
本発明に係る調理器用トッププレートでは、前記無機層が、前記ガラス基板の前記調理面上に配置されていることが好ましい。
【0010】
本発明に係る調理器用トッププレートでは、前記無機層が、前記ガラス基板の前記裏面上に配置されていることが好ましい。
【0011】
本発明に係る調理器用トッププレートでは、前記遷移金属酸化物を含む示温顔料が、酸化鉄を含むことが好ましい。
【0012】
本発明に係る調理器用トッププレートでは、前記遷移金属酸化物を含む示温顔料が、酸化鉄粉末、又は酸化鉄により被覆された無機粉末であることが好ましい。
【0013】
本発明に係る調理器用トッププレートでは、前記無機層100質量%中、前記遷移金属酸化物を含む示温顔料の含有量が、5質量%以上、80質量%以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、温度によって色調を変化させることができる調理器用トッププレートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る調理器用トッププレートを示す模式的断面図である。
図2図2は、本発明の第2の実施形態に係る調理器用トッププレートを示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、好ましい実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照する場合がある。
【0017】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る調理器用トッププレートを示す模式的断面図である。図1に示す調理器用トッププレート1は、ガラス基板2と無機層3とを備える。無機層3は、ガラス基板2の調理面2a上に配置されている。
【0018】
(ガラス基板)
ガラス基板2は、調理面2aと裏面2bとを有する。調理面2aと裏面2bとは、互いに対向している面である。調理面2aは、鍋やフライパンなどの調理器具が載せられる側の面である。裏面2bは、調理器の内部側において光源や加熱装置と対向する面である。従って、調理面2a及び裏面2bは、表裏の関係にある。
【0019】
ガラス基板2は、調理器内部の構造をより一層隠蔽する観点から、波長450nm~700nmにおける平均光透過率が20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%未満であることがさらに好ましい。ガラス基板2の波長450nm~700nmにおける平均光透過率の下限値は、特に限定されず、例えば、0%とすることができる。もっとも、ガラス基板2は、波長450nm~700nmにおける少なくとも一部の光を透過するガラス基板であってもよく、その場合、ガラス基板2は透明ガラス基板であることが好ましい。ガラス基板2は、有色透明であってもよいが、調理器用トッププレートの美観性をより一層高める観点から、無色透明であることが好ましい。なお、本明細書において、ガラス基板における「透明」とは、波長450nm~700nmにおける可視波長域の光透過率が70%以上であることをいう。
【0020】
調理器用トッププレート1は、加熱及び冷却が繰り返しなされる。そのため、ガラス基板2は、高い耐熱性及び低い熱膨張係数を有することが好ましい。具体的には、ガラス基板2の軟化温度は、700℃以上であることが好ましく、750℃以上であることがより好ましい。また、ガラス基板2の30℃~750℃における平均線熱膨張係数は、-10×10-7/℃~+60×10-7/℃の範囲内であることが好ましく、-10×10-7/℃~+50×10-7/℃の範囲内であることがより好ましく、-10×10-7/℃~+40×10-7/℃の範囲内であることがさらに好ましい。低膨張な結晶化ガラスの具体例としては、例えば、LAS系結晶化ガラスである日本電気硝子社製「N-0」及び「N-11」等が挙げられる。なお、ガラス基板2として、ホウケイ酸ガラス基板などを用いてもよい。
【0021】
ガラス基板2の厚みは、特に限定されない。ガラス基板2の厚みは、光透過率などに応じて適宜設定することができる。ガラス基板2の厚みは、例えば、2mm~6mm程度とすることができる。
【0022】
(無機層)
無機層3は、ガラス基板2の調理面2a上に配置されている。無機層3は、ガラス基板2の調理面2aの表面全体に配置されていてもよく、部分的に配置されていてもよい。無機層3は、遷移金属酸化物を含む示温顔料と、ガラスとを含む。
【0023】
調理器用トッププレート1の無機層3を26℃から350℃まで昇温した後、26℃まで降温する試験をする。
【0024】
本明細書では、「調理器用トッププレートの無機層を26℃から350℃まで昇温した後、26℃まで降温する試験」を「試験X」と記載することがある。
【0025】
上記試験Xは、調理器用トッププレートを、表面側(調理器具が載せられる側の面)を上にしてホットプレートに載せ、裏面側から加熱し、調理器用トッププレートの無機層を26℃から350℃まで昇温した後、26℃まで降温することにより行われる。なお、無機層の温度は、非接触式温度計を用いて測定することができる。
【0026】
調理器用トッププレート1では、試験Xをしたときに、昇温前の26℃における無機層3と、350℃における無機層3とのL表色系における色差ΔEが5以上であり、350℃における無機層3と、降温後の26℃における無機層3とのL表色系における色差ΔEが5以上である。したがって、調理器用トッププレート1では、温度によって色調を変化させることができる。調理器用トッププレート1では、例えば、調理器の温度センサーが故障して高温になった場合や、調理直後の鍋及びフライパン等の調理器具を調理器用トッププレート1からおろした場合でも、調理器用トッププレート1の表面の温度を視覚的に認識することができる。
【0027】
上記色差ΔE及び上記色差ΔEを大きくする方法としては、例えば、無機層3中の上記遷移金属酸化物を含む示温顔料の含有量を比較的多くする方法等が挙げられる。
【0028】
調理器用トッププレート1について、上記試験Xをしたときに、上記色差ΔEは、5以上であり、好ましくは10以上である。上記色差ΔEが上記下限以上であると、色調をより一層変化させることができるので、調理器用トッププレート1の表面温度の高低を視覚的に認識しやすくなる。なお、上記色差ΔEは、30以下であってもよい。
【0029】
調理器用トッププレート1について、上記試験Xをしたときに、上記色差ΔEは、5以上であり、好ましくは10以上である。上記色差ΔEが上記下限以上であると、色調をより一層変化させることができるので、調理器用トッププレート1の表面温度の高低を視覚的に認識しやすくなる。なお、上記色差ΔEは、30以下であってもよい。
【0030】
調理器用トッププレート1について、上記試験Xをしたときに、昇温前の26℃における無機層3と、降温後の26℃における無機層3とのL表色系における色差ΔEは、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1以下である。上記色差ΔEが上記上限以下であると、調理器用トッププレート1の表面温度の高低を視覚的に認識しやすくなる。上記色差ΔEは、可逆的に色調が変化する示温顔料を用いることで小さくすることができる。
【0031】
上記色差ΔE、上記色差ΔE及び上記色差ΔEは、試験Xをしたときの各温度における無機層3の表面のL表色系におけるL値、a値及びb値を測定し、それらの色差ΔEを計算することにより求めることができる。なお、L値、a値及びb値は、2次元色彩計(例えば、パパラボ社製「PPLB-210」)を用いて、無機層3の表面側(調理器具が載せられる面側)から測定することができる。
【0032】
無機層3の厚みは、特に限定されないが、好ましくは2μm以上、より好ましくは4μm以上、好ましくは8μm以下、より好ましくは6μm以下である。
【0033】
<遷移金属酸化物を含む示温顔料>
無機層3は、遷移金属酸化物を含む示温顔料を含む。上記遷移金属酸化物を含む示温顔料としては、酸化鉄等が挙げられる。上記遷移金属酸化物を含む示温顔料は、着色顔料であることが好ましい。上記遷移金属酸化物を含む示温顔料は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0034】
上記遷移金属酸化物を含む示温顔料は、酸化鉄を含むことが好ましく、酸化鉄粉末、又は酸化鉄により被覆された無機粉末であることがより好ましく、Fe粉末、又はFeにより被覆された無機粉末であることが更に好ましい。この場合には、上記色差ΔE及び上記色差ΔEをより一層大きくすることができ、温度によって調理器用トッププレート1の色調をより一層変化させることができる。特に、酸化鉄を含む示温顔料を用いることにより、加熱前の温度が低いときは赤系統の色調となり、加熱により温度が上昇すると黒みを帯び、降温後に温度が再び低くなると赤系統の色調に戻るという、無機層の色調に可逆性を付与することができる。
【0035】
酸化鉄により被覆された無機粉末としては、酸化鉄により被覆されたマイカ粉末等が挙げられる。また、Feにより被覆された無機粉末としては、Feにより被覆されたマイカ粉末等が挙げられる。これにより金属光沢を付与することができ、調理器用トッププレートの意匠性を高めることができる。
【0036】
なお、調理器用トッププレートの磁性を低減させる観点からは、上記遷移金属酸化物を含む示温顔料は、フェライト化合物を含まないことが好ましく、フェライト化合物を含む顔料とは異なることが好ましい。
【0037】
調理器用トッププレート1では、無機層3がガラス基板2の調理面2a上に配置されている。本実施形態において、無機層3中(無機層100質量%中)、上記遷移金属酸化物を含む示温顔料の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。上記遷移金属酸化物を含む示温顔料の含有量が上記下限以上であると、上記色差ΔE及び上記色差ΔEをより一層大きくすることができ、温度によって調理器用トッププレート1の色調をより一層変化させることができる。上記遷移金属酸化物を含む示温顔料の含有量が上記上限以下であると、無機層3中のガラスの含有量を多くすることができ、無機層3の耐摩耗性を高めることができる。
【0038】
<ガラス>
無機層3は、ガラスを含む。上記ガラスとしては、ホウケイ酸系ガラス、アルカリ金属成分及びアルカリ土類金属成分のうちの少なくとも一方を含む珪酸塩系ガラス、亜鉛及びアルミニウムを含むリン酸塩系ガラス等が挙げられる。上記ガラスは、ガラスフリットであってもよい。上記ガラスは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0039】
調理器用トッププレート1では、無機層3がガラス基板2の調理面2a上に配置されている。本実施形態において、無機層3中(無機層100質量%中)、上記ガラスの含有量は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下である。上記ガラスの含有量が上記下限以上であると、無機層3の耐摩耗性を高めることができる。上記ガラスの含有量が上記上限以下であると、無機層3中の遷移金属酸化物を含む示温顔料の含有量を多くすることができるので、上記色差ΔE及び上記色差ΔEをより一層大きくすることができる。
【0040】
<他の成分>
無機層3は、遷移金属酸化物を含む示温顔料及びガラスの双方とは異なる他の成分を含んでいてもよい。上記他の成分としては、着色顔料及び体質顔料等が挙げられる。上記他の成分は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0041】
着色顔料(示温顔料とは異なる着色顔料):
上記着色顔料(示温顔料とは異なる着色顔料)を用いることにより、無機層3に付与可能な色調のバリエーションを増やすことができ、調理器用トッププレート1の美観性をより一層高めることができる。上記着色顔料は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0042】
上記着色顔料としては、TiO粉末、ZrO粉末及びZrSiO粉末等の白色の顔料粉末;Coを含む青色の無機顔料粉末;Coを含む緑色の無機顔料粉末;Ti-Sb-Cr系及びTi-Ni系の黄色の無機顔料粉末;Co-Si系の赤色の無機顔料粉末;Feを含む茶色の無機顔料粉末;Cuを含む黒色の無機顔料粉末等が挙げられる。
【0043】
Coを含む青色の無機顔料粉末としては、Co-Al系及びCo-Al-Ti系の無機顔料粉末等が挙げられる。Co-Al系の無機顔料粉末としては、CoAl粉末等が挙げられる。Co-Al-Ti系の無機顔料粉末としては、CoAl-TiO-LiO粉末等が挙げられる。
【0044】
Coを含む緑色の無機顔料粉末としては、Co-Al-Cr系及びCo-Ni-Ti-Zn系の無機顔料粉末等が挙げられる。Co-Al-Cr系の無機顔料粉末としては、Co(Al,Cr)粉末等が挙げられる。Co-Ni-Ti-Zn系の無機顔料粉末としては、(Co,Ni,Zn)TiO粉末等が挙げられる。
【0045】
Feを含む茶色の無機顔料粉末としては、Fe-Zn系の無機顔料粉末等が挙げられる。Fe-Zn系の無機顔料粉末としては、(Zn,Fe)Fe粉末等が挙げられる。
【0046】
Cuを含む黒色の無機顔料粉末としては、Cu-Cr系の無機顔料粉末、及びCu-Fe系の無機顔料粉末等が挙げられる。Cu-Cr系の無機顔料粉末としては、Cu(Cr,Mn)粉末、及びCu-Cr-Mn粉末等が挙げられる。Cu-Fe系の無機顔料粉末としては、Cu-Fe-Mn粉末等が挙げられる。
【0047】
体質顔料:
上記体質顔料は、着色顔料とは異なる無機顔料粉末である。上記体質顔料としては、特に限定されないが、例えば、鱗片状や球状の無機顔料粉末を用いることができる。体質顔料を用いることにより、調理器用トッププレートの機械的強度を高めることができる。上記体質顔料としては、例えば、タルク及びマイカ等が挙げられる。上記体質顔料は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0048】
樹脂:
無機層3は樹脂を含んでいてもよいが、無機層3の劣化を効果的に抑える観点からは、無機層3中の樹脂の含有量は少ないほど好ましい。無機層3中(無機層100質量%中)、上記樹脂の含有量は、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下、最も好ましくは0質量%である。すなわち、無機層3は樹脂を含まないことが最も好ましい。
【0049】
(調理器用トッププレートの製造方法)
調理器用トッププレート1は、例えば、以下の製造方法により製造することができる。
【0050】
まず、遷移金属酸化物を含む示温顔料とガラスフリットとビヒクルとを含む無機層3の材料を用意する。無機層3の材料は、必要に応じて、上記着色顔料等の他の成分を含んでよい。無機層3の材料は、ペーストであってもよい。次いで、無機層3の材料を、ガラス基板2の調理面2a上に塗布した後、乾燥し、焼付けする。
【0051】
無機層3の材料を塗布する方法としては、例えば、スクリーン印刷法を用いることができる。無機層3の材料の乾燥温度としては、例えば、50℃以上、100℃以下の温度とすることができる。無機層3の材料の乾燥時間としては、例えば、5秒以上、50時間以下とすることができる。無機層3の材料の焼付け温度としては、例えば600℃以上、900℃以下の温度とすることができる。無機層3の材料の焼付け時間としては、例えば10分以上、2時間以下とすることができる。
【0052】
以上のようにして、調理器用トッププレート1を製造することができる。
【0053】
[第2の実施形態]
図2は、本発明の第2の実施形態に係る調理器用トッププレートを示す模式的断面図である。図2に示す調理器用トッププレート1Aは、ガラス基板2と無機層3Aとを備える。図1に示す調理器用トッププレート1と、図2に示す調理器用トッププレート1Aとでは、無機層の配置されている位置が異なる。すなわち、図1に示す調理器用トッププレート1では、ガラス基板2の調理面2a上に無機層3が配置されているのに対して、図2に示す調理器用トッププレート1Aでは、ガラス基板2の裏面2b上に無機層3Aが配置されている。その他の点は、第1の実施形態と同じである。
【0054】
調理器用トッププレート1Aでは、第1の実施形態に記載したガラス基板2が用いられている。調理器用トッププレート1Aは、ガラス基板2と、ガラス基板2の裏面2b上に配置されている無機層3Aとを備える。無機層3Aは、遷移金属酸化物を含む示温顔料と、ガラスとを含む。
【0055】
(ガラス基板)
ガラス基板2は、調理面2aと裏面2bとを有する。調理面2aと裏面2bとは、互いに対向している面である。調理面2aは、鍋やフライパンなどの調理器具が載せられる側の面である。裏面2bは、調理器の内部側において光源や加熱装置と対向する面である。従って、調理面2a及び裏面2bは、表裏の関係にある。
【0056】
ガラス基板2は、波長450nm~700nmにおける少なくとも一部の光を透過するガラス基板であることが好ましい。ガラス基板2は透明ガラス基板であることが好ましい。ガラス基板2は、有色透明であってもよいが、調理器用トッププレートの美観性をより一層高める観点から、無色透明であることが好ましい。なお、本明細書において、ガラス基板における「透明」とは、波長450nm~700nmにおける可視波長域の光透過率が70%以上であることをいう。
【0057】
調理器用トッププレート1は、加熱及び冷却が繰り返しなされる。そのため、ガラス基板2は、高い耐熱性及び低い熱膨張係数を有することが好ましい。具体的には、ガラス基板2の軟化温度は、700℃以上であることが好ましく、750℃以上であることがより好ましい。また、ガラス基板2の30℃~750℃における平均線熱膨張係数は、-10×10-7/℃~+60×10-7/℃の範囲内であることが好ましく、-10×10-7/℃~+50×10-7/℃の範囲内であることがより好ましく、-10×10-7/℃~+40×10-7/℃の範囲内であることがさらに好ましい。低膨張な結晶化ガラスの具体例としては、例えば、LAS系結晶化ガラスである日本電気硝子社製「N-0」等が挙げられる。なお、ガラス基板2として、ホウケイ酸ガラス基板などを用いてもよい。
【0058】
ガラス基板2の厚みは、特に限定されない。ガラス基板2の厚みは、光透過率などに応じて適宜設定することができる。ガラス基板2の厚みは、例えば、2mm~6mm程度とすることができる。
【0059】
(無機層)
無機層3Aは、ガラス基板2の裏面2bの表面全体に配置されていてもよく、部分的に配置されていてもよい。
【0060】
調理器用トッププレート1Aでは、試験X(調理器用トッププレートの無機層を26℃から350℃まで昇温した後、26℃まで降温する試験)をしたときに、昇温前の26℃における無機層3Aと、350℃における無機層3AとのL表色系における色差ΔEが5以上であり、350℃における無機層3Aと、降温後の26℃における無機層3AとのL表色系における色差ΔEが5以上である。したがって、調理器用トッププレート1Aでは、温度によって色調を変化させることができる。
【0061】
調理器用トッププレート1Aについて、上記試験Xをしたときに、上記色差ΔEは、5以上であり、好ましくは10以上である。上記色差ΔEが上記下限以上であると、色調をより一層変化させることができるので、調理器用トッププレート1Aの表面温度の高低を視覚的に認識しやすくなる。なお、上記色差ΔEは、30以下であってもよい。
【0062】
調理器用トッププレート1Aについて、上記試験Xをしたときに、上記色差ΔEは、5以上であり、好ましくは10以上である。上記色差ΔEが上記下限以上であると、色調をより一層変化させることができるので、調理器用トッププレート1Aの表面温度の高低を視覚的に認識しやすくなる。なお、上記色差ΔEは、30以下であってもよい。
【0063】
調理器用トッププレート1Aについて、上記試験Xをしたときに、昇温前の26℃における無機層3Aと、降温後の26℃における無機層3AとのL表色系における色差ΔEは、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1以下である。上記色差ΔEが上記上限以下であると、調理器用トッププレート1Aの表面温度の高低を視覚的に認識しやすくなる。上記色差ΔEは、可逆的に色調が変化する示温顔料を用いることで小さくすることができる。
【0064】
上記色差ΔE、上記色差ΔE及び上記色差ΔEは、試験Xをしたときの各温度における無機層3Aの表面のL表色系におけるL値、a値及びb値を測定し、それらの色差ΔEを計算することにより求めることができる。なお、L値、a値及びb値は、2次元色彩計(例えば、パパラボ社製「PPLB-210」)を用いて、無機層3Aのガラス基板2側の表面側(調理器具が載せられる面側)から測定することができる。
【0065】
無機層3Aの厚みは、特に限定されないが、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下である。
【0066】
無機層3Aに含まれる遷移金属酸化物を含む示温顔料、ガラス及び他の成分の詳細は、以下を除き、上記第1の実施形態で説明したとおりであるので、記載を省略する。
【0067】
調理器用トッププレート1Aでは、無機層3Aがガラス基板2の裏面2b上に配置されている。本実施形態において、無機層3A中(無機層100質量%中)、上記遷移金属酸化物を含む示温顔料の含有量は、好ましくは2質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、特に好ましくは20質量%以上、最も好ましくは30質量%以上、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、更に好ましくは80質量%以下、特に好ましくは75質量%以下、最も好ましくは70質量%以下である。上記遷移金属酸化物を含む示温顔料の含有量が上記下限以上であると、上記色差ΔE及び上記色差ΔEをより一層大きくすることができ、温度によって調理器用トッププレート1Aの色調をより一層変化させることができる。上記遷移金属酸化物を含む示温顔料の含有量が上記上限以下であると、無機層3Aの強度を高めることができる。
【0068】
また、本実施形態において、無機層3A中(無機層100質量%中)、上記ガラスの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上、特に好ましくは30質量%以上、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。上記ガラスの含有量が上記下限以上であると、無機層3Aの強度を高めることができる。上記ガラスの含有量が上記上限以下であると、上記色差ΔE及び上記色差ΔEをより一層大きくすることができ、温度によって調理器用トッププレート1Aの色調をより一層変化させることができる。
【0069】
また、調理器用トッププレート1Aの製造方法の詳細は、無機層3Aの材料を、ガラス基板2の裏面2b上に塗布することを除き、上記第1の実施形態で説明したとおりであるので、記載を省略する。
【0070】
以上の第1,第2の実施形態では、図1,2に示すように、上記調理器用トッププレートがガラス基板と該ガラス基板の一方の表面上に配置された無機層とを備える場合の構成について説明したが、本発明の調理器用トッププレートでは、ガラス基板の調理面及び裏面の双方の表面上に無機層が配置されていてもよい。ただし、製造コストの観点からは、調理器用トッププレートでは、ガラス基板の調理面及び裏面の内のいずれか一方の表面上に無機層が配置されていることが好ましい。また、上記調理器用トッププレートでは、無機層に加えて、耐熱樹脂層が配置されていてもよい。その場合、耐熱樹脂層はガラス基板の調理面及び裏面の内、無機層が配置されていない側に配置されていてもよいし、無機層の上に配置されていてもよい。耐熱樹脂層としては、例えば、シリコーン樹脂と顔料とを含む樹脂層が挙げられる。
【0071】
また、ガラス基板の調理面上に無機層が配置されている上記調理器用トッププレートでは、該無機層が、ガラス基板の調理面の表面全体に配置されていてもよく、調理面の表面の一部に配置されていてもよいが、無機層が、調理器具(鍋及びフライパン等)が載せられる領域に対応する領域に少なくとも配置されていることが好ましい。
【0072】
また、ガラス基板の裏面上に無機層が配置されている上記調理器用トッププレートでは、該無機層が、ガラス基板の裏面の表面全体に配置されていてもよく、裏面の表面の一部に配置されていてもよいが、無機層が、調理器具(鍋及びフライパン等)が載せられる領域に対応する領域に少なくとも配置されていることが好ましい。
【0073】
上記調理器用トッププレートでは、上記無機層のガラス基板側とは反対側の表面上に、樹脂層等の他の層が配置されていてもよい。上記樹脂層としては、例えば、シリコーン樹脂を含む樹脂層等が挙げられる。
【0074】
以下、本発明について、実施例に基づいてさらに詳細を説明する。但し、以下の実施例は、単なる例示である。本発明は、以下の実施例に何ら限定されない。
【0075】
以下のガラス基板を用意した。
【0076】
透明結晶化ガラス板(日本電気硝子社製「N-0」、30℃~750℃における平均線熱膨張係数:0.5×10-7/℃、厚み:4mm)
【0077】
以下の無機層の材料を用意した。
【0078】
<遷移金属酸化物を含む示温顔料>
酸化鉄粉末(関東化学社製「酸化第二鉄」)
酸化鉄により被覆されたマイカ粉末(赤メタリック顔料)
【0079】
<ガラス>
ガラスフリット
【0080】
<着色顔料(示温顔料とは異なる着色顔料)>
酸化チタン粒子
【0081】
また、ビヒクル(樹脂固形分+溶剤)を用意した。
【0082】
以下のようにして、無機層の材料A~Eを作製した。
【0083】
無機層の材料Aの作製:
ガラスフリットと、酸化鉄により被覆されたマイカ粉末と、ビヒクルとを、質量比(ガラスフリット:酸化鉄により被覆されたマイカ粉末:ビヒクル)で、85:15:100の割合で混合し、無機層の材料Aを調整した。
【0084】
無機層の材料Bの作製:
ガラスフリットと、酸化鉄粉末と、ビヒクルとを、質量比(ガラスフリット:酸化鉄粉末:ビヒクル)で、70:30:100の割合で混合し、無機層の材料Bを調整した。
【0085】
無機層の材料Cの作製:
ガラスフリットと、酸化鉄により被覆されたマイカ粉末と、ビヒクルとを、質量比(ガラスフリット:酸化鉄により被覆されたマイカ粉末:ビヒクル)で、50:50:200の割合で混合し、無機層の材料Cを調整した。
【0086】
無機層の材料Dの作製:
ガラスフリットと、酸化鉄粉末と、ビヒクルとを、質量比(ガラスフリット:酸化鉄粉末:ビヒクル)で、30:70:100の割合で混合し、無機層の材料Dを調整した。
【0087】
無機層の材料Eの作製:
ガラスフリットと、酸化鉄粉末と、酸化チタン粒子と、ビヒクルとを、質量比(ガラスフリット:酸化鉄粉末:酸化チタン粒子:ビヒクル)で、30:30:40:100の割合で混合し、無機層の材料Eを調整した。
【0088】
下記の表1に、無機層の材料A~Eの詳細を示す。表1では、ビヒクルを除く成分100質量%中の含有量が示されている。
【0089】
【表1】
【0090】
(実施例1)
無機層の材料Aを、ガラス基板の調理面上にスクリーン印刷した。次いで、60℃で2分間、加熱乾燥を行った後、750℃で60分間、焼付けを行った。このようにして、ガラス基板の調理面上に、厚み4μmの無機層が配置された調理器用トッププレートを作製した。得られた無機層は、赤メタリック色を有していた。
【0091】
(実施例2)
無機層の材料Aの代わりに無機層の材料Bを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ガラス基板の調理面上に、厚み5μmの無機層が配置された調理器用トッププレートを作製した。得られた無機層は、赤色を有していた。
【0092】
(実施例3)
無機層の材料Cを、ガラス基板の裏面上にスクリーン印刷した。次いで、60℃で2分間、加熱乾燥を行った後、750℃で60分間、焼付けを行った。このようにして、ガラス基板の裏面上に、厚み7μmの無機層が配置された調理器用トッププレートを作製した。得られた無機層は、赤メタリック色を有していた。
【0093】
(実施例4)
無機層の材料Cの代わりに無機層の材料Dを用いたこと以外は、実施例3と同様にして、ガラス基板の裏面上に、厚み6μmの無機層が配置された調理器用トッププレートを作製した。得られた無機層は、赤色を有していた。
【0094】
(実施例5)
無機層の材料Cの代わりに無機層の材料Eを用いたこと以外は、実施例3と同様にして、ガラス基板の裏面上に、厚み6μmの無機層が配置された調理器用トッププレートを作製した。得られた無機層は、茶色を有していた。
【0095】
[評価]
(1)試験Xによる無機層の色調変化
得られた調理器用トッププレートを、表面側を上にしてホットプレートに載せ、裏面側から加熱し、調理器用トッププレートの無機層を26℃から350℃まで昇温した後、26℃まで降温した。なお、無機層の温度は、非接触式温度計(オプテックス社製「PLD-5LD」)により計測した。表2,3に示す温度での無機層のL表色系におけるL値、a値及びb値を、2次元色彩計(パパラボ社製「PPLB-210」)を用いて測定した。得られた測定値より、以下の色差ΔEを算出した。
【0096】
1)昇温前の26℃における無機層と、各温度における無機層とのL表色系における色差ΔE
2)350℃における無機層と、降温時又は降温後の各温度における無機層とのL表色系における色差ΔE
【0097】
詳細及び結果を下記の表2,3に示す。
【0098】
【表2】
【0099】
【表3】
【0100】
なお、実施例1~5で得られた調理器用トッププレートに対して、上記「(1)試験Xによる無機層の色調変化」の評価後、再度、試験Xを行い無機層の色調変化を確認したが、表2,3に記載の結果と同様の結果が得られ、再現性があることを確認した。
【符号の説明】
【0101】
1,1A…調理器用トッププレート
2…ガラス基板
2a…調理面
2b…裏面
3,3A…無機層
図1
図2