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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091445
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】直流電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20230623BHJP
【FI】
H02M3/28 Q
H02M3/28 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206195
(22)【出願日】2021-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小羽根 淳志
(72)【発明者】
【氏名】河野 真吾
(72)【発明者】
【氏名】板倉 康仁
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AS04
5H730BB27
5H730BB66
5H730DD04
5H730EE02
5H730EE03
5H730EE07
5H730FG01
(57)【要約】
【課題】軽負荷時における電圧ゲインの増加を電圧制御が可能なレベルに抑制し、かつ、定格負荷においても大電力を出力することができる。
【解決手段】直流電源装置は、直流電圧源の正側端子と負側端子との間に直列に接続される第1スイッチおよび第2スイッチと、直流電圧源の正側端子と負側端子との間に直列に接続される第3スイッチおよび第4スイッチと、第1スイッチと第2スイッチとの間の接続点と、第1中間点との間に設けられる共振回路と、一次コイルが第1中間点と、第3スイッチと第4スイッチとの間の接続点との間に設けられるトランスと、整流回路と、平滑回路と、アノードが第1中間点に接続され、カソードが直流電圧源の正側端子に接続される第1ダイオードと、カソードが第1中間点に接続され、アノードが直流電圧源の負側端子に接続される第2ダイオードと、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧源の正側端子と負側端子との間に直列に接続され、同時にオンしないように交互にオン/オフを繰り返す第1スイッチおよび第2スイッチと、
前記直流電圧源の前記正側端子と前記負側端子との間に直列に接続され、同時にオンしないように交互にオン/オフを繰り返す第3スイッチおよび第4スイッチと、
前記第1スイッチと前記第2スイッチとの間の接続点と、第1中間点との間に設けられる共振回路と、
一次コイルが前記第1中間点と、前記第3スイッチと前記第4スイッチとの間の接続点との間に設けられるトランスと、
前記トランスの二次コイルから出力される交流電圧を整流した整流電圧を出力する整流回路と、
前記整流回路から出力された整流電圧を平滑化した出力電圧を出力する平滑回路と、
アノードが前記第1中間点に接続され、カソードが前記直流電圧源の前記正側端子に接続される第1ダイオードと、
カソードが前記第1中間点に接続され、アノードが前記直流電圧源の前記負側端子に接続される第2ダイオードと、
を備える直流電源装置。
【請求項2】
前記共振回路は、直列に接続されたインダクタとキャパシタとを含む
請求項1に記載の直流電源装置。
【請求項3】
前記第1スイッチと前記第4スイッチとを同期してオンさせ、前記第2スイッチと前記第3スイッチとを同期してオンさせるようにスイッチング制御する制御回路をさらに備える
請求項1または2に記載の直流電源装置。
【請求項4】
前記第1スイッチおよび前記第2スイッチのスイッチング周期と、前記第3スイッチおよび前記第4スイッチのスイッチング周期とが同一となるように制御するとともに、前記第1スイッチのオン期間に対する前記第4スイッチのオン期間の位相、および、前記第2スイッチのオン期間に対する前記第3スイッチのオン期間の位相を変化させる制御回路をさらに備える
請求項1または2に記載の直流電源装置。
【請求項5】
直流電圧源の正側端子と負側端子との間に直列に接続され、同時にオンしないように交互にオン/オフを繰り返す第1スイッチおよび第2スイッチと、
前記直流電圧源の前記正側端子と前記負側端子との間に直列に接続される第1キャパシタおよび第2キャパシタと、
前記第1スイッチと前記第2スイッチとの間の接続点と、第1中間点との間に設けられる共振回路と、
一次コイルが前記第1中間点と、前記第1キャパシタと前記第2キャパシタとの間の接続点との間に設けられるトランスと、
前記トランスの二次コイルから出力される交流電圧を整流した整流電圧を出力する整流回路と、
前記整流回路から出力された整流電圧を平滑化した出力電圧を出力する平滑回路と、
アノードが前記第1中間点に接続され、カソードが前記直流電圧源の前記正側端子に接続される第1ダイオードと、
カソードが前記第1中間点に接続され、アノードが前記直流電圧源の前記負側端子に接続される第2ダイオードと、
を備える直流電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
直列共振コンバータ方式を用いた直流電源装置が知られている。直列共振コンバータ方式を用いた直流電源装置は、大電力を出力することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-236531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、直列共振コンバータ方式を用いた直流電源装置は、軽負荷時において、トランスの一次側にリップルが発生する。このため、直列共振コンバータ方式を用いた直流電源装置は、1次側に発生したリップルがトランスの二次側に伝達されてしまい、電圧ゲインが増加してしまう。
【0005】
このような問題を解決するため、直列共振回路におけるインダクタとキャパシタとの間の接続点と、直流電圧源との間をダイオードにより接続して、電流を循環させる直流電源装置が提案されている(特許文献1)。しかし、このような一次側の電流を循環させる直流電源装置は、軽負荷時における電圧ゲインの増加を抑制することはできるが、定格の負荷を接続した場合にダイオードにより電圧がクランプされるので、大電力を出力することができない。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、軽負荷時における電圧ゲインの増加を電圧制御が可能なレベルに抑制し、かつ、定格の負荷において大電力を出力することができる直流電源装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る直流電源装置は、直流電圧源の正側端子と負側端子との間に直列に接続され、同時にオンしないように交互にオン/オフを繰り返す第1スイッチおよび第2スイッチと、前記直流電圧源の前記正側端子と前記負側端子との間に直列に接続され、同時にオンしないように交互にオン/オフを繰り返す第3スイッチおよび第4スイッチと、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの間の接続点と、第1中間点との間に設けられる共振回路と、一次コイルが前記第1中間点と、前記第3スイッチと前記第4スイッチとの間の接続点との間に設けられるトランスと、前記トランスの二次コイルから出力される交流電圧を整流した整流電圧を出力する整流回路と、前記整流回路から出力された整流電圧を平滑化した出力電圧を出力する平滑回路と、アノードが前記第1中間点に接続され、カソードが前記直流電圧源の前記正側端子に接続される第1ダイオードと、カソードが前記第1中間点に接続され、アノードが前記直流電圧源の前記負側端子に接続される第2ダイオードと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、軽負荷時における電圧ゲインの増加を電圧制御が可能なレベルに抑制し、かつ、定格の負荷において大電力を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る直流電源装置の構成を示す図である。
図2図2は、定格負荷の場合の一次側の電圧および電流のシミュレーション波形を示す図である。
図3図3は、定格負荷の場合の出力電圧の時間変化のシミュレーション波形を表す図である。
図4図4は、軽負荷の場合の一次側の電圧および電流のシミュレーション波形を示す図である。
図5図5は、軽負荷の場合の出力電圧の時間変化のシミュレーション波形を表す図である。
図6図6は、変形例に係る直流電源装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、実施形態に係る直流電源装置10の構成を示す図である。直流電源装置10は、入力直流電圧を昇圧した直流の出力電圧を、第1出力端子12と第2出力端子14との間から出力する。例えば、直流電源装置10は、プラズマ発生装置に供給されるスイッチングパルスを発生するパルス発生装置の電源として用いられる。
【0011】
直流電源装置10は、直流電圧源22と、第1スイッチ24と、第2スイッチ26と、第3スイッチ28と、第4スイッチ30と、共振回路32と、トランス34と、整流回路36と、平滑回路38と、第1ダイオード42と、第2ダイオード44と、制御回路46とを備える。
【0012】
直流電圧源22は、直流電圧を発生する。直流電圧源22は、発生する電圧値が、制御回路46により制御されてもよい。
【0013】
第1スイッチ24および第2スイッチ26は、直列に接続される。直列に接続された第1スイッチ24および第2スイッチ26は、直流電圧源22の正側端子と負側端子との間に設けられる。第1スイッチ24および第2スイッチ26は、制御回路46からの制御によって、同時にオンしないように交互にオン/オフを繰り返す。
【0014】
第1スイッチ24および第2スイッチ26のそれぞれは、例えばMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。第1スイッチ24は、MOSFETの場合、ドレインが、直流電圧源22の正側端子に接続され、ソースが第2スイッチ26のドレインに接続され、ゲートに制御回路46から出力されるスイッチング制御信号が印加される。第2スイッチ26は、MOSFETの場合、ドレインが第1スイッチ24のソースに接続され、ソースが直流電圧源22の負側端子に接続され、ゲートに制御回路46から出力されるスイッチング制御信号が印加される。
【0015】
第3スイッチ28および第4スイッチ30は、直列に接続される。直列に接続された第3スイッチ28および第4スイッチ30は、直流電圧源22の正側端子と負側端子との間に設けられる。第3スイッチ28および第4スイッチ30は、制御回路46からの制御によって、同時にオンしないように交互にオン/オフを繰り返す。
【0016】
第3スイッチ28および第4スイッチ30のそれぞれは、例えばMOSFETである。第3スイッチ28は、MOSFETの場合、ドレインが直流電圧源22の正側端子に接続され、ソースが第4スイッチ30のドレインに接続され、ゲートに制御回路46から出力されるスイッチング制御信号が印加される。第4スイッチ30は、MOSFETの場合、ドレインが第3スイッチ28のソースに接続され、ソースが直流電圧源22の負側端子に接続され、ゲートに制御回路46から出力されるスイッチング制御信号が印加される。
【0017】
共振回路32は、第1スイッチ24と第2スイッチ26との接続点と、第1中間点50との間に接続される。共振回路32は、所定の共振周波数のインピーダンスを有する。例えば、共振回路32は、第1スイッチ24および第2スイッチ26をスイッチングする周波数に共振する共振周波数を有するLC回路を含む。例えば、共振回路32は、直列に接続されたインダクタ62およびキャパシタ64を含む。共振回路32は、共振周波数において大きな電流を流すことができる。
【0018】
トランス34は、一次コイルが第1中間点50と、第3スイッチ28と第4スイッチ30との間の接続点と、の間に設けられる。トランス34は、一次コイルに印加された交流電圧の振幅を所定倍にした交流電圧を二次コイルから発生する。
【0019】
整流回路36は、トランス34の二次コイルに発生した交流電圧を全波整流した整流電圧を出力する。平滑回路38は、整流回路36から出力された整流電圧を平滑化し、第1出力端子12と第2出力端子14との間から、整流電圧を平滑化した直流の出力電圧を出力する。
【0020】
本実施形態において、トランス34は、センタータップ型であり、二次コイルの中点が第2出力端子14に接続される。また、本実施形態において、整流回路36は、第3ダイオード66と、第4ダイオード68とを含む。第3ダイオード66は、アノードが、トランス34の二次コイルの一方の端子に接続され、カソードが、第1出力端子12に接続される。第4ダイオード68は、アノードが、トランス34の二次コイルの第3ダイオード66が接続されていない方の端子に接続され、カソードが、第1出力端子12に接続される。本実施形態において、平滑回路38は、第1出力端子12と第2出力端子14との間に接続される平滑用キャパシタである。
【0021】
なお、トランス34は、センタータップを用いない構成であってもよい。また、整流回路36は、ブリッジ整流回路または電圧の振幅を所定倍する全波整流回路であってもよい。また、平滑回路38は、複数の平滑用キャパシタを含む回路、または、平滑用キャパシタと平滑用インダクタとを含む回路であってもよい。
【0022】
第1ダイオード42は、アノードが第1中間点50に接続され、カソードが直流電圧源22の正側端子に接続される。第2ダイオード44は、アノードが直流電圧源22の負側端子に接続され、カソードが第1中間点50に接続される。
【0023】
制御回路46は、所定の周波数で、第1スイッチ24、第2スイッチ26、第3スイッチ28および第4スイッチ30をスイッチングする。制御回路46は、第1スイッチ24および第2スイッチ26を、同時にオンしないように交互にオン/オフをさせ、第3スイッチ28および第4スイッチ30を、同時にオンしないように交互にオン/オフをさせる。
【0024】
例えば、制御回路46は、第1スイッチ24、第2スイッチ26、第3スイッチ28および第4スイッチ30を同期制御方式によりオン/オフする。より具体的には、制御回路46は、第1スイッチ24と第4スイッチ30とを同期してオン/オフさせ、第2スイッチ26と第3スイッチ28とを同期してオンさせるようにスイッチング制御する。これにより、制御回路46は、所定の周波数の交流電圧を共振回路32およびトランス34の一次コイルに印加することができる。
【0025】
また、制御回路46は、第1スイッチ24、第2スイッチ26、第3スイッチ28および第4スイッチ30を、出力電圧と目標電圧との偏差、または、出力電流と目標電流との偏差に応じて位相シフト制御方式によりオン/オフしてもよい。より具体的には、制御回路46は、第1スイッチ24および第2スイッチ26のスイッチング周期と、第3スイッチ28および第4スイッチ30のスイッチング周期とが同一となるように制御する。これとともに、制御回路46は、出力電圧が目標電圧に一致するように、または、出力電流が目標電流に一致するように、第1スイッチ24のオン期間に対する第4スイッチ30のオン期間の位相、および、第2スイッチ26のオン期間に対する第3スイッチ28のオン期間の位相を変化させる。これにより、制御回路46は、所定の周波数の交流電圧を共振回路32およびトランス34の一次コイルに印加することができるとともに、出力電圧を高速に変化させることができる。
【0026】
なお、制御回路46は、第1スイッチ24と第2スイッチ26とが同時にオフし、第3スイッチ28と第4スイッチ30とが同時にオフするマージン期間を含めてもよい。これにより、制御回路46は、スイッチングタイミングのずれ等により、第1スイッチ24と第2スイッチ26とが同時にオンして直流電圧源22が短絡したり、第3スイッチ28と第4スイッチ30とが同時にオンして直流電圧源22が短絡したりすることを防止することができる。
【0027】
図2は、定格負荷の場合の一次側の電圧および電流のシミュレーション波形を示す図である。図2において、実線は、実施形態に係る直流電源装置10の波形を示し、点線は、実施形態に係る直流電源装置10から第1ダイオード42および第2ダイオード44を除いた構成の装置の波形を示す。図3図4および図5においても同様である。
【0028】
また、図2は、トランス34の巻き線比が1:4であり、整流回路36が4倍整流回路である場合のシミュレーション波形を示す。また、図2は、共振回路32のインダクタ62のインダクタンスが4.2μH、キャパシタ64のキャパシタンスが210nF、トランス34の一次コイルの直列成分に現れる寄生インダクタのインダクタンスが1μH、トランス34の一次コイルの並列成分に現れる寄生キャパシタのキャパシタンスが1nF、および、トランス34の一次コイルの並列成分に現れる寄生インダクタのインダクタンスが600μHである場合の、シミュレーション波形を示す。また、図2は、直流電圧源22から発生する直流電圧が400Vであり、スイッチング周波数が175kHzである場合のシミュレーション波形を示す。図3図4および図5も、図2と同様の条件のシミュレーション波形を示す。なお、トランス34の一次コイルの直列成分に現れる寄生インダクタ、トランス34の一次コイルの並列成分に現れる寄生キャパシタおよびトランス34の一次コイルの並列成分に現れる寄生インダクタは、図2には図示していない。
【0029】
さらに、図2は、第1出力端子12と第2出力端子14との間に10Ωの負荷を接続した場合のシミュレーション波形を示す。
【0030】
図2のAに示すように、直流電源装置10は、10Ωの負荷が接続された場合、トランス34の一次コイルに、スイッチング周波数に同期したほぼ矩形の電圧が印加される。また、図2のAに示すように、第1ダイオード42および第2ダイオード44を除いた構成の装置も、10Ωの負荷が接続された場合、トランス34の一次コイルに、スイッチング周波数に同期したほぼ矩形の電圧が印加される。
【0031】
また、図2のBに示すように、直流電源装置10は、第1中間点50の電圧が直流電圧源22の正側端子より高くなり、第1ダイオード42が導通する期間において、第1ダイオード42に電流が流れる。また、図2のCに示すように、直流電源装置10は、10Ωの負荷が接続された場合、トランス34の一次コイルに、共振回路32に同調した周波数成分を含む電流が流れる。また、図2のCに示すように、第1ダイオード42および第2ダイオード44を除いた構成の装置も、10Ωの負荷が接続された場合、トランス34の一次コイルに、共振回路32に同調した周波数成分を含む電流が流れる。
【0032】
図3は、第1出力端子12と第2出力端子14との間に、定格負荷の一例である10Ωの負荷を接続した場合の、出力電圧の時間変化のシミュレーション波形を示す。
【0033】
図3に示すように、実施形態に係る直流電源装置10は、第1ダイオード42および第2ダイオード44を除いた構成の装置と比較して、出力電圧が2.4%程度低くなるが、その低下量は比較的に小さい。なお、特許文献1に示される回路の場合、出力電圧は、20%程度低くなってしまう。すなわち、実施形態に係る直流電源装置10の方が特許文献1に示される回路よりも大電力を出力することができる。
【0034】
この現象について更に説明する。
図1に示す共振回路32のように、インダクタとキャパシタとで直列共振回路が構成された場合、直列共振回路の共振特性は、一般的に式(1)に示すQ(Quality Factor)で表され、Qの値が大きいほど共振特性が良いとされる。なお、式(1)において、Rpriは1次側の見かけの負荷抵抗値であり、Lはインダクタのインダクタンス、fは周波数を示す。
Q=2πfL/Rpri ・・・(1)
【0035】
共振条件において、インダクタとキャパシタとの接続点の電圧は、直流電圧源の負側端子に対して、トランスの一次コイルに印加される電圧の約「Q」倍の電圧となるので、高電圧になる。そのため、負荷が重くなるほど(出力電圧が高くなるほど)、直列共振回路を構成するインダクタとキャパシタに印加される電圧が高くなる。したがって、特許文献1に示される回路のように、共振回路を構成するインダクタとキャパシタとの接続点にダイオードを設けると、負荷が重くなるほどクランプ電圧を超える電圧が生じやすく、その分、出力できる電力が低下してしまう。
【0036】
これに対して、キャパシタとトランスとの接続点の電圧は、インダクタとキャパシタとの接続点の電圧よりも低くなる。なぜならば、共振条件において、インダクタに印加される電圧の絶対値およびキャパシタに印加される電圧の絶対値は同じであるが、インダクタに印加される電圧とキャパシタに印加される電圧とは互いに打ち消しあう位相だからである。そのため、実施形態に係る直流電源装置10のように、キャパシタとトランスとの接続点にダイオードを設けると、特許文献1に示される回路のような構成よりもクランプ電圧を超える電圧が生じ難く、その分、出力できる電力を大きくできる。
【0037】
図4は、第1出力端子12と第2出力端子14との間に、軽負荷の一例である1MΩの負荷を接続した場合の、一次側の電圧および電流のシミュレーション波形を示す。
【0038】
図4のAに示すように、第1ダイオード42および第2ダイオード44を除いた構成の装置は、1MΩの負荷が接続された場合、トランス34の一次コイルに、スイッチング周波数に同期したほぼ矩形の電圧と、スイッチング周波数よりも高い周波数のリンギング電圧とが加わる。従って、第1ダイオード42および第2ダイオード44を除いた構成の装置は、スイッチング制御に関連なく、リンギングにより、トランス34の一次側から二次側へと電力が伝達されてしまう。
【0039】
これに対して、図4のAに示すように、直流電源装置10は、1MΩの負荷が接続された場合、トランス34の一次コイルにリンギング電圧が加わっていない。また、図4のBに示すように、直流電源装置10は、第1ダイオード42に流れる電流にリンギングが含まれる。従って、直流電源装置10は、リンギングによる電力が、第1ダイオード42を介して直流電圧源22に回生され、トランス34の二次側には伝達されない。
【0040】
図5は、第1出力端子12と第2出力端子14との間に、軽負荷の一例である1MΩの負荷を接続した場合の、出力電圧のシミュレーション波形を示す。
【0041】
図5に示すように、第1ダイオード42および第2ダイオード44を除いた構成の装置は、時間経過に従って、出力電圧が大きく上昇する。すなわち、電圧ゲインが大きく増加する。これに対して、直流電源装置10は、第1ダイオード42および第2ダイオード44を除いた構成の装置と比較して、時間経過に伴う出力電圧の増加率が低い。すなわち、電圧ゲインの増加が抑制されている。
【0042】
以上のように、直流電源装置10は、トランス34の一方の端子である第1中間点50と直流電圧源22との間に、第1ダイオード42および第2ダイオード44が設けられていることにより、軽負荷においてトランス34の一次コイルにリンギング電圧が印加されない。そのため、軽負荷時における電圧ゲインの増加を電圧制御が可能なレベルに抑制することができる。また、直流電源装置10は、定格負荷においても出力電圧の低下が小さい。これにより、直流電源装置10は、定格の負荷において大電力を出力することができる。
【0043】
図6は、変形例に係る直流電源装置10の構成を示す図である。なお、変形例に係る直流電源装置10は、図1から図5を参照して説明した実施形態に係る直流電源装置10と略同一の機能および構成を有するので、略同一の機能および構成の要素に同一の符号を付けて、相違点を除き説明を省略する。
【0044】
変形例に係る直流電源装置10は、図1に示した第3スイッチ28および第4スイッチ30に代えて、第1キャパシタ82と、第2キャパシタ84とを備える。
【0045】
第1キャパシタ82および第2キャパシタ84は、直列に接続される。直列に接続された第1キャパシタ82および第2キャパシタ84は、直流電圧源22の正側端子と負側端子との間に設けられる。トランス34は、一次コイルが第1中間点50と、第1キャパシタ82と第2キャパシタ84との間の接続点と、の間に設けられる。制御回路46は、第1スイッチ24および第2スイッチ26を、同時にオンしないように交互にオン/オフをさせる。
【0046】
このような構成の変形例に係る直流電源装置10は、トランス34の一方の端子である第1中間点50と直流電圧源22との間に、第1ダイオード42および第2ダイオード44が設けられていることにより、軽負荷において、トランス34の一次コイルにリンギング電圧が印加されず、定格負荷においても出力電圧の低下が小さい。これにより、変形例に係る直流電源装置10は、定格の負荷において大電力を出力することができ、かつ、軽負荷時における電圧ゲインの増加を電圧制御が可能なレベルに抑制することができる。
【0047】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、種々の変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0048】
10 直流電源装置、12 第1出力端子、14 第2出力端子、22 直流電圧源、24 第1スイッチ、26 第2スイッチ、28 第3スイッチ、30 第4スイッチ、32 共振回路、34 トランス、36 整流回路、38 平滑回路、42 第1ダイオード、44 第2ダイオード、46 制御回路、50 第1中間点、82 第1キャパシタ、84 第2キャパシタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6