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特開2023-91473電源装置の制御方法、無停電電源装置、電源装置、電源システム、及び組み込み系ソフトウェアプログラム
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  • 特開-電源装置の制御方法、無停電電源装置、電源装置、電源システム、及び組み込み系ソフトウェアプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091473
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】電源装置の制御方法、無停電電源装置、電源装置、電源システム、及び組み込み系ソフトウェアプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 9/06 20060101AFI20230623BHJP
   G06F 8/65 20180101ALI20230623BHJP
【FI】
H02J9/06 110
G06F8/65
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206237
(22)【出願日】2021-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】中島 貴浩
(72)【発明者】
【氏名】竹原 俊之
【テーマコード(参考)】
5B376
5G015
【Fターム(参考)】
5B376CA32
5B376CA43
5G015GA02
(57)【要約】
【課題】ファームウェア更新を適切に実行する電源装置の制御方法、無停電電源装置、電源装置、電源システム、及び組み込み系ソフトウェアプログラムを提供する。
【解決手段】電源装置の制御方法は、電源装置が備える電力変換器の運転を継続させることで電力出力及び電力入力の少なくともいずれかを継続し、前記電源装置の組み込み系ソフトウェアプログラムの更新データを、前記電源装置の電力出力及び電力入力の少なくともいずれかを継続しつつ、前記電源装置が備える通信部に受信させ、前記電源装置が備える複数の非一時記憶媒体のうち、第2の非一時記憶媒体に、受信中の前記更新データを逐次記憶させ、前記更新データの前記第2の非一時記憶媒体への記憶の完了後に、前記電源装置が備える制御部の動作領域である第1の非一時記憶媒体へ、前記第2の非一時記憶媒体から読み出した更新データを書き込む、処理を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源装置が備える電力変換器の運転を継続させることで電力出力及び電力入力の少なくともいずれかを継続し、
前記電源装置の組み込み系ソフトウェアプログラムの更新データを、前記電源装置の電力出力及び電力入力の少なくともいずれかを継続しつつ、前記電源装置が備える通信部に受信させ、
前記電源装置が備える複数の非一時記憶媒体のうち、第2の非一時記憶媒体に、受信中の前記更新データを逐次記憶させ、
前記更新データの前記第2の非一時記憶媒体への記憶の完了後に、前記電源装置が備える制御部の動作領域である第1の非一時記憶媒体へ、前記第2の非一時記憶媒体から読み出した更新データを書き込む
電源装置の制御方法。
【請求項2】
前記複数の非一時記憶媒体は、
前記電源装置が備える複数の制御部がそれぞれ内蔵する非一時記憶媒体であり、
前記複数の制御部のうちの一方が、前記組み込み系ソフトウェアプログラムに基づく電力出力及び電力入力の少なくともいずれかの制御を実行し、他方が前記組み込み系ソフトウェアプログラムの更新データの受信及び記憶を実行する
請求項1に記載の電源装置の制御方法。
【請求項3】
前記複数の非一時記憶媒体は、前記通信部によるデータ受信よりも高速に前記制御部からデータを読み出し可能な非一時記憶媒体である
請求項1又は請求項2に記載の電源装置の制御方法。
【請求項4】
電力変換器と、
第1及び第2の非一時記憶媒体と、
データを受信する通信部と、
前記第1の非一時記憶媒体に記憶された組み込み系ソフトウェアプログラムに基づく制御を実行する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記電力変換器の運転を継続させることで電力出力を継続し、
前記組み込み系ソフトウェアプログラムの更新データを、電力出力を継続しつつ前記通信部により受信し、
前記第2の非一時記憶媒体に、受信した前記更新データを逐次記憶させ、
前記更新データの前記第2の非一時記憶媒体への記憶の完了後に、バイパス給電に切り換えて前記第1の非一時記憶媒体へ、前記第2の非一時記憶媒体から読み出した更新データを書き込み、
更新後の組み込み系ソフトウェアプログラムに基づく処理を開始する、
無停電電源装置。
【請求項5】
電力変換器と、
第1及び第2の非一時記憶媒体と、
データを受信する通信部と、
前記第1の非一時記憶媒体に記憶された組み込み系ソフトウェアプログラムに基づく制御を実行する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記電力変換器の運転を継続させることで電力出力及び電力入力の少なくともいずれかを継続し、
前記組み込み系ソフトウェアプログラムの更新データを、電力出力及び電力入力の少なくともいずれかを継続しつつ前記通信部により受信し、
前記第2の非一時記憶媒体に、受信した前記更新データを逐次記憶させ、
前記更新データの前記第2の非一時記憶媒体への記憶の完了後に、前記第1の非一時記憶媒体へ、前記第2の非一時記憶媒体から読み出した更新データを書き込み、
更新後の組み込み系ソフトウェアプログラムに基づく処理を開始する、
電源装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電源装置を複数接続した、電源システム。
【請求項7】
第1及び第2の非一時記憶媒体、並びに制御部を備える電源装置の前記制御部に、
前記電源装置の組み込み系ソフトウェアプログラムの更新データを、前記電源装置の電力出力及び電力入力の少なくともいずれかを継続しつつ通信によって受信し、前記第2の非一時記憶媒体に記憶させ、
前記更新データの前記第2の非一時記憶媒体への記憶の完了後に、前記第1の非一時記憶媒体へ、前記第2の非一時記憶媒体から読み出した更新データを書き込み、
更新後の組み込み系ソフトウェアプログラムに基づく処理を開始する、
処理を実行させる組み込み系ソフトウェアプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置の組み込み系ソフトウェアプログラム(以下、ファームウェアともいう)の更新技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車両制御装置の制御プログラムのリプログラミングを行なうための方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-052960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
無停電電源装置、パワーコンディショナ、電気自動車充電器といった種々の電源装置が、社会的インフラストラクチャーとして利用されている。電源装置は、内蔵する記憶部に記憶されたファームウェアによって制御される。電源装置のファームウェアの更新は従来、影響が少ないと予想される時間に、電源装置を停止して実施されている。
【0005】
電源装置の使用目的を鑑みれば、ファームウェアの更新のために、電源装置の電力入出力を長期間停止することは好ましくない。
【0006】
本発明は、ファームウェア更新を適切に実行する電源装置の制御方法、無停電電源装置、電源装置、電源システム、及び組み込み系ソフトウェアプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る電源装置の制御方法は、電源装置が備える電力変換器の運転を継続させることで電力出力及び電力入力の少なくともいずれかを継続し、前記電源装置の組み込み系ソフトウェアプログラムの更新データを、前記電源装置の電力出力及び電力入力の少なくともいずれかを継続しつつ、前記電源装置が備える通信部に受信させ、前記電源装置が備える複数の非一時記憶媒体のうち、第2の非一時記憶媒体に、受信中の前記更新データを逐次記憶させ、前記更新データの前記第2の非一時記憶媒体への記憶の完了後に、前記電源装置が備える制御部の動作領域である第1の非一時記憶媒体へ、前記第2の非一時記憶媒体から読み出した更新データを書き込む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】電源装置の構成を示すブロック図である。
図2】第1制御部及び第2制御部による電源装置のファームウェアの更新処理手順の一例を示すフローチャートである。
図3】第1制御部及び第2制御部による電源装置のファームウェアの更新処理手順の一例を示すフローチャートである。
図4】ファームウェア更新中の第1制御部及び第2制御部の動作状態を示す図である。
図5】電源装置の状態のタイミングチャートである。
図6】第2実施形態に係る電源装置の構成を示すブロック図である。
図7】制御部によるファームウェアの更新処理手順の他の一例を示すフローチャートである。
図8】複数の電源装置が備えられるシステムの概要図である。
図9】複数の電源装置が備えられるシステムの概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
電源装置の制御方法は、電源装置が備える電力変換器の運転を継続させることで電力出力及び電力入力の少なくともいずれかを継続し、前記電源装置の組み込み系ソフトウェアプログラムの更新データを、前記電源装置の電力出力及び電力入力の少なくともいずれかを継続しつつ、前記電源装置が備える通信部に受信させ、前記電源装置が備える複数の非一時記憶媒体のうち、第2の非一時記憶媒体に、受信中の前記更新データを逐次記憶させ、前記更新データの前記第2の非一時記憶媒体への記憶の完了後に、前記電源装置が備える制御部の動作領域である第1の非一時記憶媒体へ、前記第2の非一時記憶媒体から読み出した更新データを書き込む。
【0010】
ここで、電源装置は、無停電電源装置(以下、UPSという)であってもよいし、パワーコンディショナ(以下、PCSという)であってもよいし、電気自動車等に搭載された蓄電素子に対する充電器(又は充放電器)であってもよい。電源装置は、これらに限定されない。
電力変換器は、交流電力を直流電力に変換する所謂コンバータであってもよいし、直流電力を交流電力に変換する所謂インバータであってもよい。電力変換器は、直流電力を異なる電圧値の直流電力へ変換するコンバータであってもよい。電源装置は、複数の電力変換器(例えば、コンバータと、インバータ)を備えていてもよい。
非一時記憶媒体は、制御部の一部であってもよい。
【0011】
電源装置は、ファームウェアの更新データを取得するに際し、複数に分割されたファームウェアのデータを複数回に分けて取得してもよい。
【0012】
電源装置にてファームウェアの更新データが記憶される非一時的記憶媒体は、コンピュータ(例えば、マイクロコンピュータ)に組み込まれた記憶媒体であってもよいし、外付けの記憶媒体であってもよい。
【0013】
更新後のファームウェアに基づく処理を開始する際は、例えば、再起動したコンピュータのCPUが、更新されたファームウェアの最初に実行すべきコードが記憶された領域にアクセスする。これは、更新後のファームウェアを実行可能にする処理に相当する。
【0014】
上記構成の電源装置の制御方法によれば、電力変換器(コンバータ及び/又はインバータ)の運転を継続させて、ファームウェアの更新データを受信して第2の非一時的記憶媒体に記憶させている間、電源装置の電力出力及び/又は電力入力を継続できる。これにより、電源装置の電力入出力が長期間停止される可能性を低減できる。
【0015】
UPSやPCSといった電源装置は、インフラストラクチャーとして用いられており、ファームウェアの更新のために、電源装置の電力入出力を長期間停止することは好ましくない。従来のUPSは、ファームウェアの更新中に停電が生じた場合、電気負荷に対するバックアップ電力供給を行なえず、期待されている機能を果たせない。従来のPCSは、ファームウェアの更新中は電力変換・電力入出力を行なえず、機会損失が生じる(例えば、太陽電池で発電された電力を売電又は蓄電できなかったり、デマンドレスポンスに応じる機会を逸したりする)。
【0016】
上記構成の電源装置の制御方法により、ファームウェアの更新に要する全期間の内、比較的長時間(例えば数分~数時間)を要する更新データの取得処理中は、電源装置が電力入出力を継続できる。データの取得完了後に更新後のファームウェアを実行可能にする処理が要する時間は、装置内部の非一時記憶媒体からの読み出し及び書き込みに要する時間である。装置内部の非一時記憶媒体からの読み出し及び書き込みに要する時間は、外部との通信により更新データを受信するために要する時間に比べて短い。つまり、装置内部の非一時記憶媒体からの読み出し及び書き込みは、通信で更新データを受信し書き込むことよりも高速である。そのため、電源装置の電力入出力が長期間停止される可能性を低減できる。
【0017】
電源装置の制御方法では、システムに含まれる複数の電源装置にて前記ファームウェアの更新データの取得及び前記非一時記憶媒体への記憶が完了した後、それら複数の電源装置における更新後のファームウェアをまとめて実行可能にしてもよい。
【0018】
例えば、大容量(高VA)の電力出力が求められる状況では、複数の電源装置を並列接続してシステムが構成される。ファームウェアの更新は、複数の電源装置それぞれで行なう必要がある。複数の電源装置が順次、上位の制御装置(例えば、ネットワークインターフェースカード)から通信でファームウェア更新データを受信する場合、複数の電源装置すべてにおいて取得及び記憶が完了するまでに長時間を要する。
上記構成の電源装置の制御方法によれば、長時間を要する複数の電源装置におけるデータの取得及び記憶処理中は、それぞれの電源装置の電力入出力を継続させる。これにより、電力入出力の停止期間を必要最小限にとどめられる。
【0019】
UPSは、電力変換器と、第1及び第2の非一時記憶媒体と、データを受信する通信部と、前記第1の非一時記憶媒体に記憶された組み込み系ソフトウェアプログラムに基づく制御を実行する制御部と、を備える。前記制御部は、前記電力変換器の運転を継続させることで電力出力を継続し、前記組み込み系ソフトウェアプログラムの更新データを、電力出力を継続しつつ前記通信部により受信し、前記第2の非一時記憶媒体に、受信した前記更新データを逐次記憶させ、前記更新データの前記第2の非一時記憶媒体への記憶の完了後に、バイパス給電に切り換えて前記第1の非一時記憶媒体へ、前記第2の非一時記憶媒体から読み出した更新データを書き込み、更新後の組み込み系ソフトウェアプログラムに基づく処理を開始する。
【0020】
例えば、常時インバータ給電方式のUPSは、商用電源などの系統電源から供給される交流電力をコンバータで直流電力に変換する。コンバータは、直流電力を、蓄電池等の蓄電素子へ供給する(蓄電池を充電する)とともに、インバータへ供給する。インバータは、直流電力を交流電力に変換し、整流して電気負荷へ供給する。UPSは、代替的に、パラレルプロセッシング方式であってもよいし、常時商用給電方式であってもよい。
上記構成のUPSによれば、ファームウェアの更新に要する全期間の内、比較的長時間を要する更新データの取得処理中は、電力変換器の運転が継続され、停電が生じてもUPSがバックアップ電力を電気負荷に供給できる。そのため、UPSに期待されている機能を果たすことができる。
【0021】
電源装置は、電力変換器と、第1及び第2の非一時記憶媒体と、データを受信する通信部と、前記第1の非一時記憶媒体に記憶された組み込み系ソフトウェアプログラムに基づく制御を実行する制御部と、を備え、前記制御部は、前記電力変換器の運転を継続させることで電力出力及び電力入力の少なくともいずれかを継続し、前記組み込み系ソフトウェアプログラムの更新データを、電力出力及び電力入力の少なくともいずれかを継続しつつ前記通信部により受信し、前記第2の非一時記憶媒体に、受信した前記更新データを逐次記憶させ、前記更新データの前記第2の非一時記憶媒体への記憶の完了後に、前記第1の非一時記憶媒体へ、前記第2の非一時記憶媒体から読み出した更新データを書き込み、更新後の組み込み系ソフトウェアプログラムに基づく処理を開始する。
電源システムは、上記電源装置を複数接続して構成される。複数の電源装置は、電力入力及び/又は電力出力のために、電気的に並列に接続されてもよいし、電気的に直列に接続されてもよい。
組み込み系ソフトウェアプログラムは、第1及び第2の非一時記憶媒体、並びに制御部を備える電源装置の前記制御部に、前記電源装置の組み込み系ソフトウェアプログラムの更新データを、前記電源装置の電力出力及び電力入力の少なくともいずれかを継続しつつ通信によって受信し、前記第2の非一時記憶媒体に記憶させ、前記更新データの前記第2の非一時記憶媒体への記憶の完了後に、前記第1の非一時記憶媒体へ、前記第2の非一時記憶媒体から読み出した更新データを書き込み、更新後の組み込み系ソフトウェアプログラムに基づく処理を開始する、処理を実行させる。
【0022】
本発明をその実施形態を示す図面を参照して具体的に説明する。
【0023】
(第1実施形態)
図1は、電源装置1の構成を示すブロック図である。電源装置1は、第1制御部11、第2制御部12、蓄電部13、充放電回路14、及び通信部15を備える。
【0024】
第1制御部11は、マイクロコントローラである。第1制御部11は、CPU(Central Processing Unit )110、ROM(Read Only Memory)111、RAM(Random Access Memory)112及びI/O(入出力)113を含む。
【0025】
第2制御部12は、マイクロコントローラである。第2制御部12は、CPU120、ROM121、RAM122及びI/O(入出力)123を含む。
【0026】
第1制御部11及び第2制御部12において、CPU110,120は、実行部である。CPU110は、ROM111に記憶されているファームウェアを逐次読み出してファームウェアで定義されている制御手順で制御処理を実行する。
【0027】
第1制御部11及び第2制御部12において、ROM111,121は、CPU110,120から原則として読み出し専用の非一時的なメモリである。ROM111,121の動作領域は、書き換え可能である。ROM111,121は、読み出しのみが許可される読み出しモードと、書き換えが可能だが読み出しができない消去書き換えモードとで使用される。ROM111,121は例えばフラッシュメモリである。ROM111,121は上述の通り、CPU110,120が読み出すファームウェアを記憶する。CPU110,120が読み出すファームウェアは、ROM111,121内の動作領域に記憶される。第1制御部11のROM111には、電力変換制御及び/又は充放電制御用の制御ファームウェア2Pと、以下に説明する更新処理を実行するための書き換え用ファームウェア11Pとが記憶されている。第2制御部12のROM121には、電源装置1が動作中に更新処理を実行するための書き換え用ファームウェア12Pが記憶されている。
【0028】
第1制御部11及び第2制御部12において、RAM112,122は、CPU110,120が演算に用いる一時的なメモリである。CPU110,120は、RAM112,122に演算の結果を書き込み、読み出しながら処理を進める。RAM112,122に記憶されるデータはそれぞれ、第1制御部11及び第2制御部12の再起動で揮発する。
【0029】
蓄電部13は、蓄電素子を含む。蓄電部13は、系統電源Eと直接、又は充放電回路14を介して接続されている。第1制御部11及び第2制御部12は、蓄電部13からの電力供給を受けてもよい。電源装置1(例えば、PCS)は、蓄電部13を備えなくてもよい。
【0030】
電力変換器としての充放電回路14は、インバータ及び/又はコンバータを含む。充放電回路14は、電気負荷と接続される。充放電回路14は、第1制御部11からの指令に応じて、系統電源Eから電気負荷への電力供給、系統電源Eから蓄電素子への充電、又は蓄電素子から電気負荷への電力供給を実行する。充放電回路14は、電源装置1の種類(UPS、PCS、又は直流電源装置)によって構成が異なる。電源装置1が蓄電部13を備えない場合、充放電回路14ではなく電力変換器が用いられる。
【0031】
通信部15は、上位装置2、又は図示しない外部記憶媒体(例えば、USBメモリ)との通信のための通信デバイスである。通信部15は例えば、ネットワークインターフェースカードであってもよいし、外部記憶媒体を装着可能な構成であってもよい。第2制御部12は、通信部15を介して上位装置2からの指示を受信する。第2制御部12は、通信部15を介してファームウェアの更新データを受信する。上位装置2は、ローカルネットワークを介して電源装置1へ制御ファームウェア2Pの更新データを送信する保守用端末装置であってもよいし、複数の電源装置1に接続されたネットワークインターフェースカードであってもよい。上位装置2は、インターネットを含む通信網経由で電源装置1に指示を与えるか、又は電源装置1からデータを収集するサーバ装置であってもよい。
【0032】
図2及び図3は、第1制御部11及び第2制御部12による電源装置1のファームウェアの更新処理手順の一例を示すフローチャートである。第1制御部11のCPU110は、ROM111の制御ファームウェア2Pに基づき制御を継続している状態である。第2制御部12のCPU120は、書き換え用ファームウェア12PをRAM122にコピーし、この状態で、CPU110及びCPU120は、以下の処理を実行する。
【0033】
第2制御部12のCPU120は、通信部15によってファームウェアの更新データを受信したか否かを判断する(ステップS201)。ファームウェアの更新データを受信していないと判断した場合(S201:NO)、CPU120は、ステップS201に戻り、受信したと判断するまで処理を繰り返す。この間、ROM121は読み出しモードである。第1制御部11では起動後、ROM111は読み出しモードであり、CPU110は制御ファームウェア2Pによる充放電制御(電力入出力の継続)を続行する(ステップS101)。
【0034】
ファームウェアの更新データを受信したと判断した場合(S201:YES)、第2制御部12のCPU120は、受信したデータを解析する(ステップS202)。CPU120は、受信したデータが規定のバイト数に到達したか否かを判断する(ステップS203)。受信したデータが規定のバイト数に到達しないと判断した場合(S203:NO)、CPU120は、処理をステップS201へ戻す。
【0035】
受信したデータが規定のバイト数に到達したと判断した場合(S203:YES)、CPU120は、ROM121を消去書き換えモードへ切り替えるか又は消去書き換えモードを維持し(ステップS204)、受信したデータをROM121に直接的に書き込む(ステップS205)。
【0036】
CPU120は、データ受信が完了したか否かを判断する(ステップS206)。データ受信が完了していないと判断した場合(S206:NO)、CPU120は、処理をステップS201へ戻し、受信及び書き込みの処理を続行する。
【0037】
データ受信が完了したと判断した場合(S206:YES)、CPU120は、ROM121を読み出しモードへ切り替える(ステップS207)。
【0038】
第2制御部12のCPU120は、第1制御部11に充放電回路14の動作停止指示を出力する(ステップS208)。ステップS208では更新通知が出力されてもよい。
【0039】
第1制御部11のCPU110は、動作停止の指示を受信し(ステップS102)、充放電回路14の動作を一旦停止させる(ステップS103)。電源装置1がUPSである場合、CPU110は電気負荷への給電方法を、バイパス給電へ切り替える。
【0040】
CPU110は、書き換え用ファームウェア11PをRAM112にコピーし(ステップS104)、ROM111を消去書き換えモードに切り替える(ステップS105)。CPU110は、切り替え完了通知を第2制御部12へ出力してもよい。
【0041】
第2制御部12のCPU120は、ROM121からファームウェアの更新データを第1制御部11へ出力する(ステップS209)。
【0042】
第1制御部11のCPU110は、第2制御部12から出力された更新データを受信し(ステップS106)、ROM111に直接的に書き込む(ステップS107)。CPU110は、書き込みを完了するとROM121を読み出しモードへ切り替える(ステップS108)。CPU110は、内部リセットなどを用いて電源装置1を再起動する(ステップS109)。再起動によって、更新処理はリセットされ、電源装置1は、通常動作を開始する。再起動によって、第1制御部11及び第2制御部12のRAM112及びRAM122にコピーされていた書き換え用ファームウェア11P,12Pはリセットされる。
【0043】
図4は、ファームウェア更新中の第1制御部11及び第2制御部12の動作状態を示す。図4Aは、第2制御部12にて更新データの受信中の状態を示し、図4Bは、第1制御部11にて更新データの書き込み中の状態を示す。図4Aに示すように、ファームウェアの更新データの受信中は、第2制御部12は、ROM121を消去書き換えモードとする。この間、第1制御部11は、ROM111が読み出しモードのまま動作が継続可能である。他方、図4Bに示すように、更新データを第1制御部11のROM111に書き込み中は、制御ファームウェア2Pに基づく制御は継続できない。
【0044】
第2制御部12における通信部15を介したファームウェア更新データの受信は、完了までに数分~数時間を要する場合もある。これに対し、第2制御部12のROM121から第1制御部11のROM111への更新データの移動は、数秒程度で終了する。装置内部のROM121からROM111への更新データの移動は、通信による受信及び書き込みよりも高速に行なえる。第1制御部11が充放電回路14を停止するのは(図4Bの状態)、更新データの移動及び再起動の期間のみであり、長くても数十秒である。
【0045】
図5は、電源装置1の状態のタイミングチャートである。図5は、縦軸の上部から下部に向けて時間が経過することを示す。図5では、電源装置1がUPSである場合と、PCSである場合とに分けて、状態の経過を示す。
【0046】
電源装置1が常時インバータ給電方式のUPSである場合、更新要求(更新データ)を上位装置2から受信した後、制御ファームウェア2Pの更新データの受信完了まではインバータから電気負荷への給電を維持する。制御ファームウェア2Pの更新データの受信完了後、UPSは充放電回路14(インバータ)を停止させる間、バイパス給電を維持する。更新後の制御ファームウェア2Pのデータの第2制御部12のROM121から第1制御部11のROM111へのコピーが完了した後、UPSは、インバータを含む充放電回路14の制御を開始し、インバータからの給電を開始できる。このように、UPSのインバータ給電を停止する時間を最小限に抑えることができる。
【0047】
電源装置1がPCSである場合、更新要求(更新データ)を上位装置2から受信した後、停止時間を最小限に抑えることができる。PCSは、制御ファームウェア2Pの更新データの受信完了までは運転を維持できる。制御ファームウェア2Pの更新データの受信完了後、PCSは速やかに、データの移動を含む再起動を実行する。この間、PCSはその機能を停止するが、従来の更新方法に比べて、停止時間は短時間で済む。
【0048】
図5の右側に示す従来の更新方法では、更新要求(更新データ)を受信したタイミングでROMからファームウェアが読み出し不可能となり、UPS又はPCSの動作は停止する。ファームウェアの更新データの受信及びROMの動作領域へのコピーが完了後、UPS又はPCSは動作を再開する。データの受信に数分~数時間かかる場合、その間UPS又はPCSは、期待されている機能を発揮できない。
【0049】
このように、2つの第1制御部11及び第2制御部12を備える電源装置1が、図2及び図3の処理手順で制御ファームウェア2Pを更新すると、電源装置1の機能が停止する時間を最小限に抑制できる。
【0050】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態における電源装置1の構成を示すブロック図である。第2実施形態において電源装置1は、制御部10、蓄電部13、充放電回路14、通信部15、及びメモリ16を備える。第1実施形態のときと同様、電源装置1(例えば、PCS)は、蓄電部13を備えなくてもよい。
【0051】
制御部10は、CPU100、ROM101、RAM102及びI/O103を含む。CPU100、ROM101、RAM102及びI/O103は、第1実施形態における第1制御部11及び第2制御部12と同様のハードウェアであるから、対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
【0052】
第2実施形態における制御部10のROM101には、制御ファームウェア2Pと、更新処理を電源装置1が動作中に実行するための書き換え用ファームウェア1Pとが記憶されている。
【0053】
メモリ16は、CPU100から読み出し可能な非一時的なメモリである。メモリ16は、CPU100によって書き換え可能な記憶媒体である。メモリ16は例えばフラッシュメモリである。
【0054】
図7は、制御部10による電源装置1のファームウェアの更新処理手順の一例を示すフローチャートである。制御部10のCPU100は、ROM101の制御ファームウェア2Pに基づき制御を継続している状態である。
【0055】
CPU100は、通信部15によってファームウェアの更新データを受信したか否かを判断する(ステップS111)。ファームウェアの更新データを受信していないと判断した場合(S111:NO)、CPU100は、ステップS111に戻り、受信したと判断するまで処理を繰り返す。この間、ROM101は読み出しモードであり、制御ファームウェア2Pによる充放電制御を続行する。
【0056】
ファームウェアの更新データを受信したと判断した場合(S111:YES)、制御部10のCPU100は、受信したデータを解析する(ステップS112)。CPU100は、受信したデータが規定のバイトに到達したか否かを判断する(ステップS113)。受信したデータが規定のバイト数に到達しないと判断した場合(S113:NO)、CPU100は、処理をステップS111へ戻す。
【0057】
受信したデータが規定のバイト数に到達したと判断した場合(S113:YES)、CPU100は、受信したデータをメモリ16に直接的に書き込む(ステップS114)。
【0058】
CPU100は、データ受信が完了したか否かを判断する(ステップS115)。データ受信が完了していないと判断した場合(S115:NO)、CPU100は、処理をステップS111へ戻し、受信及び書き込みの処理を続行する。
【0059】
データ受信が完了したと判断した場合(S115:YES)、CPU100は、充放電回路14の動作を一旦停止させる(ステップS116)。電源装置1がUPSである場合、CPU100は電気負荷への給電方法を、バイパス給電へ切り替える。
【0060】
CPU100は、書き換え用ファームウェア1PをRAM102へコピーし(ステップS117)、ROM101を消去書き換えモードに切り替える(ステップS118)。ROM101が消去書き換えモードへ切り替えられている間、CPU100はRAM102を動作領域として、書き換え用ファームウェア1Pに基づき以下の処理を続行する。
【0061】
RAM102にコピーされた書き換え用ファームウェア1Pに基づきCPU100は、メモリ16からファームウェアの更新データを読み出し(ステップ119)、ROM101に直接的に書き込む(ステップS120)。
【0062】
CPU100は、書き込みを完了させるとROM101を読み出しモードへ切り替える(ステップS121)。CPU100は、内部リセットなどを用いて電源装置1を再起動する(ステップS122)。再起動によって、更新処理はリセットされ、電源装置1は、更新後のファームウェアが記憶されたROM101を動作領域として通常動作を開始する。再起動によって、RAM102にコピーされていた書き換え用ファームウェア1Pはリセットされる。
【0063】
第2実施形態の電源装置1の構成により、長時間を要するファームウェアの更新データの受信及び記憶中も、充放電回路14の動作を継続させることができる。第2実施形態においても、電源装置1としての機能を停止するのは、再起動の期間のみである。
【0064】
電源装置1が、第1実施形態又は第2実施形態に示したような処理手順で制御ファームウェア2Pを更新することで、以下に説明するように、電源装置1を含むシステム全体での、電気負荷への電力供給の停止時間を最小限に抑えることができる。
【0065】
図8及び図9は、複数の電源装置1が備えられるシステム200,300の概要図である。図8のシステム200は、UPS1を複数含む。複数のUPS1は、並列で接続される。システム200は、ローカルネットワークLNのルータ3を含む。システム200では、保守担当者が携帯する保守端末装置(上位装置)2がルータ3に接続し、ルータ3経由で複数のUPS1に更新処理を実施させる。上位装置2は、1台ずつ、UPS1に制御ファームウェア2Pの更新データを記憶させる。更新データの受信及び記憶には、1台当たり、数分から数時間必要である。各UPS1における更新データの受信及び記憶の間、第1実施形態又は第2実施形態のファームウェア更新方法を用いることによって、各UPS1は電気負荷への電力供給を継続できる。複数のUPS1において第1制御部11のROM111又は制御部10のROM101(図1及び図6参照)への更新データの記憶が完了した後、それら複数のUPS1における更新後のファームウェアをまとめて実行可能にする。
【0066】
図9のシステム300は、シリアル通信接続された複数のPCS1を含む。システム300は、ローカルネットワークLNと外部ネットワークとを接続するルータ3を含む。PCS1は通信部15(図1及び図6参照)により、公衆通信網Nを介して電力サーバ4と通信接続が可能である。システム300では、複数のPCS1の内、特定のPCS1の通信部15が、ルータ3を介して保守担当者が携帯する保守端末装置(上位装置)2と接続する。他のPCS1は、シリアル通信ケーブルを介して通信可能に接続される。上位装置2は、PCS1それぞれに対し順に、制御ファームウェア2Pの更新データを送信する。第1実施形態又は第2実施形態のファームウェア更新方法によって、各PCS1への更新データの記憶が完了した後、それら複数のUPS1における更新後のファームウェアをまとめて実行可能にする。
【0067】
上述のように開示された実施形態は全ての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0068】
1 電源装置
11 第1制御部
12 第2制御部
10 制御部
100,110,120 CPU
101,111,121 ROM(非一時記憶媒体)
102,112,122 RAM(一時記憶媒体)
1P,11P,12P 書き換え用ファームウェア
2P 制御ファームウェア
14 充放電回路(電力変換器)
15 通信部
2 上位装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9