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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091475
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】緩衝器
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/54 20060101AFI20230623BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20230623BHJP
   B60G 7/00 20060101ALI20230623BHJP
   B60G 13/06 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
F16F9/54
F16F9/32 J
B60G7/00
B60G13/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206239
(22)【出願日】2021-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】松岡 良樹
(72)【発明者】
【氏名】土田 久輔
【テーマコード(参考)】
3D301
3J069
【Fターム(参考)】
3D301AA83
3D301AA85
3D301CA09
3D301DA33
3D301DA52
3D301DB12
3D301DB16
3J069CC10
3J069CC34
3J069DD47
(57)【要約】
【課題】コストと重量を低減可能な緩衝器を提供する。
【解決手段】本実施の形態の緩衝器Dは、円筒状のアウターシェル2と、アウターシェル2内に移動自在に挿入されるロッド3とを有する緩衝器本体1と、アウターシェル2の下端外周に取り付けられるナックルブラケット4とを備え、ナックルブラケット4は、一枚の金属板を母材として曲げ加工して形成されており、アウターシェル2の外周に沿って湾曲するとともにアウターシェル2を挟持する一対の挟持片5,6と、各挟持片5,6の周方向の端部からそれぞれアウターシェル2の径方向へ延びて互いに対向する一対の取付片7,8と、取付片7,8の上端同士を連結する連結片9と、挟持片5,6、取付片7,8および連結片9とが交わる三面交点を切除する一対の切欠10,11とを備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のアウターシェルと、前記アウターシェル内に移動自在に挿入されるロッドとを有する緩衝器本体と、
前記アウターシェルの下端外周に取り付けられるナックルブラケットとを備え、
前記ナックルブラケットは、
一枚の金属板を母材としており、
前記アウターシェルの外周に沿って湾曲するとともに前記アウターシェルを挟持する一対の挟持片と、
前記各挟持片の周方向の端部からそれぞれ前記アウターシェルの径方向へ延びて互いに対向する一対の取付片と、
前記取付片の端同士を連結する連結片と、
前記挟持片、前記取付片および前記連結片とが交わる三面交点を切除する一対の切欠とを有する
ことを特徴とする緩衝器。
【請求項2】
前記切欠は、矩形であって、角部がR面形状に面取りが施されている
ことを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【請求項3】
前記切欠は、前記挟持片、前記取付片および前記連結片の三面に亘って切除するように設けられる
ことを特徴とする請求項1または2に記載の緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
緩衝器は、アウターシェルと、アウターシェル内に移動自在に挿入されるロッドとを備え、たとえば、車両におけるサスペンションに組み込まれて使用され、アウターシェルに対してピストンロッドが軸方向に移動する伸縮時に減衰力を発揮して車体と車輪の振動を抑制する。
【0003】
このようにサスペンションに組み込まれる緩衝器は、たとえば、ストラット式サスペンションに利用される場合、アウターシェルの下端に車両の車輪を保持するナックルを取り付けるためのナックルブラケットが溶接によって取り付けられる。
【0004】
ナックルブラケットは、たとえば、アウターシェルの外周を抱持する断面C型であって筒状の抱持部と、抱持部の周方向両端から径方向の外側へ向けて互いに平行して延びてナックルに連結可能な一対の取付部と、各取付部の上端を互いに接近する方向へ折り曲げて形成される補強部とを備えたものがある(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-216129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように構成された緩衝器では、ナックルブラケットがアウターシェルの外周を略全周に亘って取り巻く抱持部と、取付部と補強する補強部とを備えているために、強度面での問題はないものの、ナックルブラケットを形成する材料が多いために材料歩留まりが悪く、緩衝器のコストと重量とが増加してしまう。
【0007】
そこで、本発明は、コストと重量を低減可能な緩衝器の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明の緩衝器は、円筒状のアウターシェルと、アウターシェル内に移動自在に挿入されるロッドとを有する緩衝器本体と、アウターシェルの下端外周に取り付けられるナックルブラケットとを備え、ナックルブラケットは、一枚の金属板を母材として曲げ加工して形成されており、アウターシェルの外周に沿って湾曲するとともにアウターシェルを挟持する一対の挟持片と、各挟持片の周方向の端部からそれぞれアウターシェルの径方向へ延びて互いに対向する一対の取付片と、取付片の上端同士を連結する連結片と、挟持片、取付片および連結片とが交わる三面交点を切除する一対の切欠とを備えている。
【0009】
このように構成された緩衝器では、ナックルブラケットの挟持片がアウターシェルの外周を取り巻いていなくとも、ナックルブラケットをアウターシェルに強固に固定できるとともに、取付片と連結片とで箱形を形成しているためナックルブラケットの強度を高くしてナックルから入力される荷重にも耐え得る。そして、ナックルブラケットが挟持片、取付片および連結片とが交わる三面交点を切除する切欠とを備えているので、アウターシェルに強固に固定できるとともに高強度のナックルブラケットを無理なく成型できる。そして、ナックルブラケットは、従来のナックルブラケットのようにアウターシェルを取り巻く抱持部を備えていないので、従来のナックルブラケットと比較して小型になるため、製造に必要な材料が少なくて済み、重量も軽量化される。
【0010】
また、ナックルブラケットにおける切欠が矩形であって角部にR面形状に面取りが施されていてもよい。このように構成された緩衝器によれば、切欠を設けることによってナックルブラケットにナックルから荷重が入力される際の応力集中を緩和できる。
【0011】
さらに、ナックルブラケットにおける切欠が挟持片、取付片および連結片の三面に亘って切除するように設けられてもよい。このように構成された緩衝器によれば、挟持片、取付片および連結片が互いに相手方の変形を阻害するのを抑制できるからナックルブラケットの成型後のスプリングバックを効果的に防止できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の緩衝器によれば、コストと重量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施の形態における緩衝器の側面図である。
図2】一実施の形態における緩衝器のナックルブラケットの正面図である。
図3】一実施の形態における緩衝器のナックルブラケットの側面図である。
図4】一実施の形態における緩衝器に取り付けられたナックルブラケットの平面図である。
図5】(a)は、ナックルブラケットを展開した形状に打ち抜かれた平板である。(b)は、挟持片と取付片を成型したナックルブラケットの半製品である。(c)は、取付片にボルト挿通孔を穿った後のナックルブラケットの半製品である。
図6】一実施の形態の一変形例におけるナックルブラケットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1および図2に示すように、緩衝器Dは、アウターシェル2と、アウターシェル2内に移動自在に挿入されるロッド3とを有する緩衝器本体1と、アウターシェル2の下端側の外周に溶接によって取付けられるナックルブラケット4とを備えており、ナックルブラケット4を利用して図示しない車両の車輪を支持するナックルに連結されて車両の車体と車輪との間に介装される。
【0015】
以下、緩衝器Dの各部について詳細に説明する。緩衝器本体1は、筒状のアウターシェル2と、アウターシェル2内に移動自在に挿入されるロッド3とを有して、ロッド3がアウターシェル2に対して軸方向に相対移動する伸縮作動時にロッド3のアウターシェル2に対する相対移動を妨げる減衰力を発生して、車両の車体と車輪の振動を減衰させる。
【0016】
緩衝器本体1は、たとえば、下端が閉塞される筒状のアウターシェル2と、アウターシェル2内に収容される図示しないシリンダと、シリンダ内に移動自在に挿入されるロッド3と、ロッド3に連結されるとともにシリンダ内に挿入されてシリンダ内を伸側室と圧側室とに区画するピストンと、シリンダとアウターシェル2との間に形成されるリザーバと、シリンダの下端に設けられて圧側室とリザーバとを仕切るバルブケースとを備えている。そして、伸側室と圧側室には、作動油等の液体が充填され、リザーバには、液体と気体とが充填されている。なお、緩衝器Dに使用される液体は、作動油以外にも、たとえば、水、水溶液といった液体でもよい。なお、アウターシェル2は、ナックルブラケット4が取り付けられる緩衝器本体1の最外殻を成す部材であり、緩衝器本体1が倒立型に設定される場合にはシリンダ等を収容する代わりにロッドを覆う部材であってもよい。
【0017】
また、ピストンには、伸側室と圧側室とを連通する通路と、圧側室とリザーバとを連通する通路には、それぞれ減衰バルブが設けられている。このように構成された緩衝器本体1は、伸縮作動時にピストンによって伸側室と圧側室とが拡縮されて液体が通路を介して移動し、この液体の流れに前記減衰バルブが抵抗を与えて減衰力を発生する。
【0018】
なお、アウターシェル2の中間の外周には、図示しない懸架ばねの下端を支承する下方懸架ばね受16が装着されている。図外の懸架ばねは、ロッド3の先端に取り付けられる上方懸架ばね受と前記した下方懸架ばね受16との間に介装されており、緩衝器Dを車体と車輪との間に介装すると車体を弾性支持する。
【0019】
ナックルブラケット4は、図1から図4に示すように、一枚金属板を母材して、当該母材をナックルブラケット4を展開した形状に打ち抜いた後で曲げ加工することによって形成されているナックルブラケット4は、アウターシェル2の外周に沿って湾曲するとともにアウターシェル2を挟持する一対の挟持片5,6と、各挟持片5,6の周方向の端部からそれぞれアウターシェル2の径方向へ延びて互いに対向する一対の取付片7,8と、取付片7,8の端同士を連結する連結片9と、挟持片5,6、取付片7,8および連結片9とが交わる三面交点を切除する一対の切欠10,11とを備えている。
【0020】
挟持片5,6は、それぞれ、アウターシェル2の軸方向から見てアウターシェル2の下端の外周形状に沿うように湾曲したプレートであって、アウターシェル2の側方から見てアウターシェル2の軸方向に沿って内周側面を当接させている。
【0021】
挟持片5,6の周方向の反取付片側端となる先端は、アウターシェル2の軸線方向から見てアウターシェル2の半分を超えないようになっている。このように、挟持片5,6の周方向の反取付片側端となる先端がアウターシェル2の軸線方向から見てアウターシェル2の半分を超えないので、ナックルブラケット4をアウターシェル2の外周に溶接するためにアウターシェル2の下端外周へ当接させる際に、ナックルブラケット4をアウターシェル2の側方から接近させればよいので、組付作業が容易となる。
【0022】
また、取付片7,8は、それぞれ挟持片5,6の周方向の基端から互いにアウターシェル2の径方向へ平行に延びて対向しており、図示しないナックルの取付部に設けられた2つの孔に対向可能な位置にそれぞれ2つずつボルト挿入孔7a,8aを備えている。そして、取付片7,8の間に図外のナックルの取付部を挿入し、ボルト挿入孔7a,8aに挿入されるナックルの取付部を貫通する図示しないボルトとナットによって、取付片7,8と前記取付部をボルト締結して、このナックルブラケット4をナックルに取付できるようになっている。
【0023】
また、取付片7と挟持片5の下端および取付片8と挟持片6の下端は、アウターシェル2から遠ざかるように外方へ折り曲げられてフランジ状の補強リブ12,13が設けられている。さらに、取付片7の上下方向の中央から挟持片5の上下方向の中央に欠けてアウターシェル2から遠ざかるように膨出するバルジ部14が設けられるとともに、取付片8の上下方向の中央から挟持片6の上下方向の中央に欠けてアウターシェル2から遠ざかるように膨出するバルジ部15が設けられている。補強リブ12,13およびバルジ部14,15は、ナックルブラケット4を変形させる荷重に対する強度を向上するために設けられている。
【0024】
さらに、取付片7,8の上端は、取付片7,8に対して垂直な連結片9によって連結されている。連結片9の挟持片5,6側を向いてアウターシェル2の外周面に対向する側面は、アウターシェル2の外周に沿うように湾曲しており、挟持片5,6をアウターシェル2の外周に当接させると連結片9の側面もまたアウターシェル2の外周に当接する。このように、ナックルブラケット4は、取付片7,8と連結片9とが箱形となっていて、取付片7,8の基端がそれぞれ挟持片5,6に連なる構造をしている。
【0025】
また、ナックルブラケット4は、挟持片5と取付片7との境の上端と、挟持片6と取付片8との境の上端とに、それぞれ切欠10,11を備えている。切欠10は、挟持片5、取付片7および連結片9の3つの面の交点である三面交点を切除するように設けられており、切欠11は、挟持片6、取付片8および連結片9の3つの面の交点である三面交点を切除するように設けられている。なお、切欠10,11は、前記三面交点を含んで挟持片5、取付片7および連結片9の3面に亘って切除するように設けられている。
【0026】
各切欠10,11は、挟持片5,6、取付片7,8および連結片9の境の上端から開口して下方へ向けて母材を矩形に切り欠いて形成されており、4つの角部にR形状に面取りが施されて形成された面取り部10a,11aを備えている。
【0027】
以上のように構成されたナックルブラケット4は、以下の手順によって製造去られる。まず、図示しない矩形の金属製の平板状のブランクの母材を打ち抜いて、図5(a)に示したナックルブラケット4を展開した形状の平板を得る。つづいて、プレス加工によって平板を曲げ成型して図5(b)に示すように、挟持片5,6、取付片7,8、補強リブ12,13およびバルジ部14,15の成型を行ったのち、図5(c)に示すように取付片7,8にボルト挿入孔7a,8aを打ち抜く。図5(c)で孔明けが済んだナックルブラケット4の半製品を図5(c)中の破線で折り曲げる曲げ加工を行えば、連結片9と取付片7,8とが直角に折り曲げられ、ナックルブラケット4を製造することができる。
【0028】
このようにナックルブラケット4は製造されるが、挟持片5,6、取付片7,8および連結片9の2つの三面交点がそれぞれ切欠10,11によって切除されており、挟持片5,6と連結片9および各取付片7,8の境とが地続きになっていないので、連結片9と各取付片7,8との境で折り曲げる成型を行う際に挟持片5,6が折り曲げ成型の邪魔にならない。よって、挟持片5,6、取付片7,8および連結片9との三面交点ができてしまう形状のナックルブラケット4であっても無理なく成型できる。なお、挟持片5,6が折り曲げ成型の邪魔にならないよう、挟持片5,6の上面を挟持片5,6の周方向の先端側へ向かって軸方向長さが短くなるように傾斜させることも考えられるが、このように傾斜させる場合、傾斜させない場合と比較して成型しづらく溶接長が短くなる恐れがある。
【0029】
こうして得られたナックルブラケット4における挟持片5,6の湾曲した内周面をアウターシェル2の外周面に当接させると、アウターシェル2の軸方向に対して直交する水平な連結片9の側面がアウターシェル2の外周面に当接する。
【0030】
そして、挟持片5の上端の先端側から連結片9の側面の上方を経由して反対側の挟持片6の上端の先端側にかけてアウターシェル2にアーク溶接するとともに、各挟持片5,6の先端をアウターシェル2の外周に軸方向に沿ってアーク溶接することで、ナックルブラケット4は、アウターシェル2に固定される。
【0031】
このように、本実施の形態の緩衝器Dでは、挟持片5の上端の反取付片側端の近傍から連結片9の側面の上方を経由して反対側の挟持片6の上端の反取付片側端の近傍までにかけてC形の溶接部B1が形成されるとともに、アウターシェル2の軸方向に沿って各挟持片5,6の反取付片側端の上端近傍から下端近傍までにかけて直線状の溶接部B2が形成される。なお、溶接部B1,B2は、ナックルブラケット4およびアウターシェル2の被溶接材料と溶接材料とが溶融して形成される。
【0032】
ナックルブラケット4は、各挟持片5,6の上端および反取付片側端と、連結片9とがアウターシェル2の外周に溶接されてアウターシェル2に取り付けられるので、挟持片5,6が従来のナックルブラケットの抱持部のようにアウターシェル2の周囲を取り巻いていなくともアウターシェル2に強固に固定される。
【0033】
また、ナックルブラケット4は、取付片7,8の上端同士を接続する連結片9と備えていて、取付片7,8と連結片9とで箱形を形成しているため高い強度を実現でき、車両の車輪を支持するナックルから入力される曲げ、せん断或いは引っ張りなどの種々の荷重にも十分に耐え得る。
【0034】
このように、高強度のナックルブラケット4を得るためには、取付片7,8の上端の挟持片5,6の付根から当該上端同士を接続する連結片9が不可欠であるが、切欠10,11を設けない場合、挟持片5,6、取付片7,8および連結片9の3つの面の交点である三面交点が母材に残ってしまい、連結片9に対して取付片7,8を直角に折り曲げる加工が難しく、ナックルブラケット4を成型することが非常に困難となってしまう。ところが、本実施の形態の緩衝器Dでは、ナックルブラケット4が挟持片5,6、取付片7,8および連結片9とが交わる三面交点を切除する切欠10,11を備えているので、連結片9と各取付片7,8との境で折り曲げる成型を行う際に挟持片5,6が折り曲げ成型の邪魔にならないナックルブラケット4を無理なく成型できる。
【0035】
以上のように、本実施の形態の緩衝器Dは、円筒状のアウターシェル2と、アウターシェル2内に移動自在に挿入されるロッド3とを有する緩衝器本体1と、アウターシェル2の下端外周に取り付けられるナックルブラケット4とを備え、ナックルブラケット4は、一枚の金属板を母材として曲げ加工して形成されており、アウターシェル2の外周に沿って湾曲するとともにアウターシェル2を挟持する一対の挟持片5,6と、各挟持片5,6の周方向の端部からそれぞれアウターシェル2の径方向へ延びて互いに対向する一対の取付片7,8と、取付片7,8の端同士を連結する連結片9と、挟持片5,6、取付片7,8および連結片9とが交わる三面交点を切除する一対の切欠10,11とを備えている。
【0036】
このように構成された緩衝器Dでは、ナックルブラケット4の挟持片5,6がアウターシェル2の外周を取り巻いていなくとも、ナックルブラケット4をアウターシェル2に強固に固定できるとともに、取付片7,8と連結片9とで箱形を形成しているためナックルブラケット4の強度を高くしてナックルから入力される荷重にも耐え得る。そして、ナックルブラケット4が挟持片5,6、取付片7,8および連結片9とが交わる三面交点を切除する一対の切欠10,11とを備えているので、アウターシェル2に強固に固定できるとともに高強度のナックルブラケット4を無理なく成型できる。
【0037】
そして、ナックルブラケット4は、従来のナックルブラケットのようにアウターシェル2を取り巻く抱持部を備えていないので、従来のナックルブラケットと比較して小型になるため、製造に必要な材料が少なくて済み、重量も軽量化される。
【0038】
以上より、本実施の形態の緩衝器Dによれば、小型軽量なナックルブラケット4の利用が可能となるので、ナックルブラケット4の製造に関して材料歩留まりが改善されるため、緩衝器Dの製造に係るコストと緩衝器Dの全体の重量を低減できるのである。
【0039】
なお、前述したところでは、ナックルブラケット4は、取付片7,8の上端が連結片9で接続されている構造となっているが、取付片7,8の下端が連結片で接続される構造となっている場合には、切欠10,11は、取付片7,8の下端において挟持片5,6と連結片とが交わる三面交点を切除するように設けられればよい。
【0040】
また、本実施の形態の緩衝器Dでは、切欠10,11が矩形であって角部にR面形状に面取りが施されているので、切欠10,11を設けることによってナックルブラケット4にナックルから荷重が入力される際の応力集中を緩和できる。
【0041】
なお、切欠10,11の幅寸法および長さ寸法については、前記三面交点を切除できれば任意に設計できるが、ナックルブラケット4の強度の著しい低下を招かず、図5(a)に示したナックルブラケット4を展開した形状の平板を打ち抜く金型寿命および保全性を考慮して設計されるとよい。
【0042】
さらに、本実施の形態の緩衝器Dでは、ナックルブラケット4における切欠10,11が挟持片5,6、取付片7,8および連結片9の三面に亘って切除するように設けられている。このように構成された緩衝器Dによれば、挟持片5,6、取付片7,8および連結片9が互いに相手方の変形を阻害するのを抑制できるからナックルブラケット4の成型後のスプリングバックを効果的に防止できる。
【0043】
なお、ナックルブラケット4の取付片7,8および連結片9の形状および寸法は、前述した効果を失わない限りにおいてアウターシェル2の外径、車両のナックルの形状等に応じて適宜設計変更できる。また、挟持片5,6の周方向の先端は、アウターシェル2への溶接に支障が無ければアウターシェル2の半分を超えて反取付片側へ延びていても突出させることも可能であるが、挟持片5,6の重量増加を招くとともにアウターシェル2を側方から挟持片5,6間に挿入できなくなるので、挟持片5,6の周方向の反取付片側端となる先端がアウターシェル2の軸線方向から見てアウターシェル2の半分を超えないようにする方が好ましい。なお、挟持片5,6の周方向の先端のアウターシェル2の軸方向における長さについては、仕様上要求される接合強度に応じて適宜設計変更できる。
【0044】
また、図6に示したように、ナックルブラケット4Aは、ナックルブラケット4に対して、挟持片5a,6aおよび取付片7a,8aが上方に延長されて、連結片9aがアウターシェル2に対して傾斜姿勢となる構造を備えていてもよい。このように構成されたナックルブラケット4Aにあっても、挟持片5a,6a、取付片7a,8aおよび連結片9aの三面交点を切除する切欠10a,11aを備えることで、アウターシェル2に強固に固定され得るとともに、無理なく成型でき、高強度を実現できる。よって、このように構成されたナックルブラケット4Aを利用した緩衝器によれば、ナックルブラケット4Aの製造に関して材料歩留まりが改善されるため、緩衝器の製造に係るコストと緩衝器の全体の重量を低減できる。
【0045】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
【符号の説明】
【0046】
1・・・緩衝器本体、2・・・アウターシェル、3・・・ロッド、4,4A・・・ナックルブラケット、5,5a,6,6a・・・挟持片、7,7a,8,8a・・・取付片、9,9a・・・連結片、10,10a,11,11a・・・切欠、D・・・緩衝器
図1
図2
図3
図4
図5
図6