(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091503
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】ロック機構及び建物点検口
(51)【国際特許分類】
E04F 19/08 20060101AFI20230623BHJP
【FI】
E04F19/08 101K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206278
(22)【出願日】2021-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000110479
【氏名又は名称】ナカ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永谷 有弘
(72)【発明者】
【氏名】小野木 渉
(57)【要約】
【課題】操作軸の不用意な回転を確実に防止でき、且つ内枠への取付けが容易なロック機構と、このようなロック機構を備えた建物点検口と、を得る。
【解決手段】ロック機構1は、内枠における外枠の内面に対向する位置に設けられる操作軸8と、内枠に操作軸8を回転可能に取り付ける軸受9と、操作軸8に設けられ、操作軸8への回転操作を受ける操作受部8Eと、操作軸8に設けられ、操作軸8の回転により外枠に係脱可能に係止する係止部10と、軸受9と操作軸8との間に差入れられ、操作軸8を間に挟み込む挟み部11Cを有するバネ部材11と、を備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物点検口の外枠の内側に内枠が位置した状態で前記内枠を前記外枠に対しロックするロック機構であって、
前記内枠における前記外枠の内面に対向する位置に設けられる操作軸と、
前記内枠に前記操作軸を回転可能に取り付ける軸受と、
前記操作軸に設けられ、前記操作軸への回転操作を受ける操作受部と、
前記操作軸に設けられ、前記操作軸の回転により前記内枠を前記外枠に係脱可能に係止する係止部と、
前記軸受と前記操作軸との間に差入れられ、前記操作軸を間に挟み込む挟み部を有する介挿部材と、
を備えるロック機構。
【請求項2】
前記軸受における前記操作軸を回転可能に保持する保持部が、前記介挿部材の前記挟み部を前記操作軸に押し付けている請求項1に記載のロック機構。
【請求項3】
前記介挿部材が、一対の前記挟み部の端部同士を連結する弾性連結部を有する請求項1又は請求項2に記載のロック機構。
【請求項4】
前記軸受には、前記介挿部材の前記弾性連結部が挿入される挿入部が設けられている請求項3に記載のロック機構。
【請求項5】
前記介挿部材の前記挟み部には、前記操作軸の外周面に沿って湾曲する湾曲部が設けられている請求項1~請求項4の何れか一項に記載のロック機構。
【請求項6】
建物の開口部に嵌め込まれる外枠と、
前記外枠の内側に位置する閉位置及び前記外枠から抜け出る開位置を採る内枠と、
請求項1~請求項5の何れか一項に記載のロック機構と、
を有する建物点検口。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の開示する技術は、ロック機構及び建物点検口に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、天井点検口において、内枠に回転自在に取り付けられ上下方向に向くロック軸を回してロック軸の下端近傍に設けた爪片を外枠に係止させることにより内枠の閉塞状態を保持するためのロック手段を備えた構造が記載されている。
【0003】
この構造では、ロック軸には背面に偏平部を備えて爪片が立ち上がり壁の外面に対して直角に向いたロック状態において偏平部が立ち上がり壁の外面に当接するように構成され、さらにロック軸はこの偏平部に繋がる偏平部を備えている。そして、これら偏平部の繋がり部には角部が形成され、バネによりロック軸を内枠の立ち上がり壁の外面に押し当てることにより、ロック解除方向への回転を規制するクリック機構が構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
屋外の建物点検口では、建物点検口の内枠のロック軸に対し風等による振動が作用しても、ロック軸が不用意にロック解除方向へ回転しないようにすることが望まれる。
【0006】
たとえば、特許文献1に記載の構造では、上記したように、バネによってロック軸を内枠の立ち上がり壁の外面に押し当てることで、ロック解除方向へのロック軸の回転を規制している。
【0007】
しかし、内枠の立ち上がり壁の孔部にバネの端部を差し込み、バネによってロック軸を内枠の立ち上がり壁に押し当てる構造では、所望の回転規制力を生じさせるようにバネを内枠に取り付けることは難しい。
【0008】
また、このような構造では、ロック軸の回転により、バネの内枠への取付が緩むおそれがある。
【0009】
本発明の目的は、操作軸の不用意な回転を確実に防止でき、且つ内枠への取付けが容易なロック機構と、このようなロック機構を備えた建物点検口と、を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第一態様のロック機構は、建物点検口の外枠の内側に内枠が位置した状態で前記内枠を前記外枠に対しロックするロック機構であって、前記内枠における前記外枠の内面に対向する位置に設けられる操作軸と、前記内枠に前記操作軸を回転可能に取り付ける軸受と、前記操作軸に設けられ、前記操作軸への回転操作を受ける操作受部と、前記操作軸に設けられ、前記操作軸の回転により前記内枠を前記外枠に係脱可能に係止する係止部と、前記軸受と前記操作軸との間に差入れられ、前記操作軸を間に挟み込む挟み部を有する介挿部材と、を備える。
【0011】
このロック機構では、軸受と操作軸との間に介挿部材を差入れて、介挿部材の挟み部を操作軸の間に挟み込むので、内枠への取付けが容易である。また、ロック機構は、軸受が介挿部材の回転を規制すると共に、挟み部が操作軸を挟み込んで接触しているので、操作軸の回転に摩擦力が作用し、操作軸の回転の抵抗となるため、バネによって操作軸を内枠に押し当てる構成と比較して、操作軸の不用意な回転を確実に防止することができる。
【0012】
第二態様のロック機構では、前記軸受における前記操作軸を回転可能に保持する保持部が、前記介挿部材の前記挟み部を前記操作軸に押し付けている。
【0013】
軸受の保持部により、介挿部材の挟み部は操作軸に押し付けられるため、操作軸に対する摩擦力をより強く生じさせることができ、また、挟み部が操作軸を挟み込む力の緩みを防止することができる。
【0014】
第三態様のロック機構では、前記介挿部材が、一対の前記挟み部の端部同士を連結する弾性連結部を有する。
【0015】
弾性連結部の弾性により、挟み部を操作軸に押し付けることができるため、挟み部が操作軸を挟み込む力の緩みを防止することができ、また、介挿部材の取付けも容易に行うことができる。
【0016】
第四態様のロック機構では、前記軸受には、前記介挿部材の前記弾性連結部が挿入される挿入部が設けられている。
【0017】
介挿部材の弾性連結部が軸受の挿入部に挿入されているので、介挿部材の回転が規制され、操作軸に対する摩擦力をより強く生じさせることができ、また挟み部が操作軸を挟み込んだ状態を確実に維持できる。
【0018】
第五態様のロック機構では、前記介挿部材の前記挟み部には、前記操作軸の外周面に沿って湾曲する湾曲部が設けられている。
【0019】
介挿部材の挟み部に湾曲部を設けることにより、挟み部と操作軸との接触面積が増加し、操作軸に対する摩擦力をより強く生じさせることができ、また挟み部が操作軸を挟み込んだ状態を確実に維持できる。
【0020】
第六態様の建物点検口では、建物の開口部に嵌め込まれる外枠と、前記外枠の内側に位置する閉位置及び前記外枠から抜け出る開位置を採る内枠と、第一~第五の何れか1つの態様のロック機構と、を有する。
【0021】
この建物点検口では、内枠のロック機構の取付が容易に行うことができ、また、操作軸の不用意な回転を防止することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、操作軸の不用意な回転を確実に防止することができ、且つ内枠への取付けが容易なロック機構と、このようなロック機構を備えた建物点検口と、を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は第一実施形態のロック機構を備えた建物点検口を閉状態で建物の開口部と共に下側から示す斜視図である。
【
図2】
図2は第一実施形態のロック機構を備えた建物点検口を開状態で下側から示す斜視図である。
【
図3】
図3は第一実施形態のロック機構を備えた建物点検口を閉状態で上側から示す斜視図である。
【
図4】
図4は第一実施形態の建物点検口をロック機構の近傍で部分的に拡大して示す斜視図である。
【
図5】
図5は第一実施形態の建物点検口をロック機構の近傍で部分的に拡大して示す斜視図である。
【
図6】
図6は第一実施形態の建物点検口をロック機構の近傍で部分的に拡大して示す斜視図である。
【
図7】
図7は第一実施形態のロック機構を示す分解斜視図である。
【
図8A】
図8Aは第一実施形態のロック機構を係止部が外枠に係止している状態で操作軸と直交する断面にて示す断面図である。
【
図9A】
図9Aは第一実施形態のロック機構を係止部が外枠に係止していない状態で操作軸と直交する断面にて示す断面図である。
【
図10A】
図10Aは第二実施形態のロック機構を係止部が外枠に係止する状態で操作軸と直交する断面にて示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本願の実施形態の一例を詳細に説明する。
【0025】
図1には、第一実施形態のロック機構1と、このロック機構1が備えられる天井点検口2が示されている。また
図2及び
図3には、第一実施形態のロック機構1を備えた天井点検口2が示されている。さらに、
図4~
図7には、ロック機構1が拡大して示されている。
【0026】
天井点検口2は、建物点検口の一例である。建物点検口としては、天井点検口2の他にも、たとえば建物の壁面に設けられた壁点検口であってもよい。
【0027】
天井点検口2は、外枠3及び内枠4を有している。外枠3は天井5の開口部6(
図1参照)に嵌め込まれるようになっており、実質的に天井点検口2の外形部分を成している。本願の開示の例では、外枠3は正方形の枠状の部材である。外枠3及び内枠4は、例えば、アルミニウムの押出材により形成されている。また、
図8A~
図9Bに示されるように、外枠3のロック機構1の下方には切欠部3Cが設けられており、内枠4の開閉時の干渉を防止する。内枠4が閉位置にある状態では、切欠部3Cは下フランジ4Bで隠蔽されて露出しない。
【0028】
内枠4は外枠3の内側に配置されている。本願の開示の例では、内枠4は外枠3に対応する正方形の枠状の部材である。
【0029】
内枠4の内側には内板7が固定されており、内枠4の内側が内板7によって覆われている。
【0030】
内枠4の一辺4Aと外枠の一辺3Aとの間には、図示しないヒンジが設けられている。内枠4はこのヒンジによって、
図2に示す矢印S1方向及び矢印S2方向に回転可能に外枠3に取り付けられている。そして、内枠4は回転により、
図1及び
図3に示される閉位置と、
図2に示される開位置とを採る。
【0031】
内枠4が閉位置にある状態(
図1及び
図3に示す状態)では、外枠3の内側に内枠4があり、内板7を含む内枠4によって、天井点検口2が閉じられた状態にある。この状態で、内板7は天井5と面一になり、天井5と一体化された外観を成す。
【0032】
これに対し、内枠4が開位置にある状態(
図2に示す状態)では、内板7を含む内枠4は外枠3から抜け出る位置を採っており、天井点検口2は開かれた状態にある。このように天井点検口2を開かれた状態とすることで、天井5の下側(室内側)から天井5の上側(天井裏)にアクセス可能となる。
【0033】
図4~
図6に示されるように、内枠4には、下フランジ4B、上フランジ4C及び中間フランジ4Dが形成されている。下フランジ4Bは、内枠4から外向き(矢印D1で示す向き)及び内向き(矢印D2で示す向き)に延出されている。これに対し、上フランジ4C及び中間フランジ4Dは内枠4から外向きに延出されている。
【0034】
内枠4にはロック機構1が設けられている。本実施形態では、内枠4において、ヒンジが設けられた一辺4Aと反対側の対辺4Eにおいて、内枠4の外側にロック機構1が設けられている(
図2参照)。
【0035】
図7にも示されるように、ロック機構1は、操作軸8、軸受9、係止部10及びバネ部材11を有している。バネ部材11は、介挿部材の一例である。
【0036】
操作軸8は、円柱状の部材であり、軸受9によって回転可能に、内枠4に取り付けられている。操作軸8の位置は、対辺4Eにおいて、外枠3の内面3B(
図8A及び
図8B参照)と対向する位置である。
【0037】
操作軸8の下端側には、軸本体部8Aよりも径が太い太径部8Bが形成されており、軸本体部8Aと太径部8Bとの間は段差部8Cになっている。操作軸8は、太径部8Bの位置で下フランジ4Bに形成された貫通孔に挿入されており、操作軸8の下端は下フランジ4Bの下側に突出している。
【0038】
操作軸8の下端には、操作受溝8Dが形成されている。操作受溝8Dは、操作受部の一例であり、操作軸8を回転操作する際に、たとえばドライバ等の工具から、操作軸8に対する回転力を受ける部分である。具体的には、操作軸8に周方向(矢印R1方向及び矢印R2方向:
図7参照)の回転力を作用させて操作軸8を回転させることができる。操作受溝8Dは操作受部の一例である。操作受部としては、操作受溝8Dに代えて、たとえば使用する工具にあわせた形状のものを採用できる。
【0039】
操作軸8の上端側は、上フランジ4Cに形成された溝状の凹部にあてがわれており、上端部8Fは、上フランジ4Cの上方に突出している。操作軸8の上端部8Fには、係止部10が取り付けられている。具体的には、上端部8Fは係止部10を貫通しており、操作軸8の上端を加締ることで係止部10は操作軸8に固定されている。これにより、係止部10は操作軸8と一体で回転するようになっている。中間フランジ4Dにおいて、軸本体部8Aの取付部には、軸本体部8Aを逃げるように溝状の凹部が設けられ、軸本体部8Aが納まるように形成されている。
【0040】
係止部10は、上フランジ4Cの上面に接触しており、これにより、内枠4に対する操作軸8及び係止部10の下方向への移動が規制されている。
【0041】
係止部10は、操作軸8の回転角度に応じて、内枠4の外側への張出量が大きい係止位置(
図4及び
図6参照)と、この張出量が小さい非係止位置(
図5参照)とを採る。
【0042】
内枠4が外枠3の内側に位置している状態で、係止部10が係止位置となっている場合、
図3に示されるように、係止部10は外枠3の上端に係止され、外枠3に対する内枠4の矢印S1方向への回転が規制され、内枠4は外枠3に対しロックされる。
【0043】
これに対し、係止部10が非係止位置となっている場合は、係止部10は外枠3の上端に係止されず、係止部10は外枠3に対し係脱可能である。係止部10が非係止位置になっている場合、天井点検口2を閉じている状態の内枠4は、矢印S2方向への回転を規制されず、内枠4は矢印S1方向に回転して天井点検口2を開くことが可能である。
【0044】
係止部10にはストッパ10Aが形成されている。
図8A及び
図8Bに示されるように、係止部10が非係止位置から係止位置へと矢印R1方向に回転した状態で、ストッパ10Aは、内枠4に対向している。そして、係止部10及び操作軸8がそれ以上矢印R1方向に回転しようとするとストッパ10Aは内枠4に当たって、この回転を阻止する。また、ストッパ10Aは、これとは逆に、
図9A及び
図9Bに示されるように、係止部10が非係止位置から係止位置へと矢印R2方向に回転した状態でも、内枠4に当たって、係止部10及び操作軸8のそれ以上の矢印R2方向の回転を阻止する。
【0045】
軸受9は、幅方向の中央に形成された保持部9Aと、この保持部9Aの幅方向両側に形成された一対の取付部9Bと、を有している。取付部9Bには取付孔9Cが貫通されており、この取付孔9Cと、内枠4に形成された取付孔4F(
図8A参照)を挿通させたリベット12により、軸受9が内枠4に固定されている。
【0046】
保持部9Aは、操作軸8の軸本体部8Aを内枠4の反対側から囲うように湾曲形状に形成されている。保持部9Aの内面は軸本体部8Aの外周を囲んでおり、操作軸8を内枠4に対し回転可能に保持している。
【0047】
また、
図8Bに示されるように、保持部9Aの下面9Dは、段差部8Cに接触しており、これにより、軸受9及び内枠4に対する操作軸8及び係止部10の上方向への移動が規制されている。
【0048】
図7に示されるように、軸受9と操作軸8との間には、バネ部材11が差入れられている。
【0049】
バネ部材11は、線状の金属材を所定位置で曲げて形成されており、中央部分には、小径円弧状に曲げられた弾性連結部11Aが形成されている。弾性連結部11Aから両端部11Bまでの部分は一対の挟み部11Cとされており、弾性連結部11Aは、挟み部11Cの端部同士を連結している。そして、挟み部11Cには、弾性連結部11Aの弾性により、互いに接近する方向に付勢されており、バネ部材11は、これら一対の挟み部11Cで操作軸8を間に挟み込むようになっている。
【0050】
特に本実施形態では、操作軸8の軸本体部8Aに、周方向に沿った環状の嵌込溝8Eが形成されている。また、挟み部11Cの一部には、操作軸8の外周面に沿って湾曲する湾曲部11Dが形成されている。そして、2つの湾曲部11Dが嵌込溝8Eに嵌め込まれることで、バネ部材11が操作軸8に装着されて支持されている。この状態で、2つの湾曲部11Dは、嵌込溝8Eにおいて操作軸8に線状(円弧状)に接触している。
【0051】
本実施形態では、弾性連結部11Aが操作軸8よりも内枠4から遠い位置にあり、弾性連結部11Aから内枠4に向かって挟み部11Cが斜めに延在する向きで、バネ部材11が配置されている。
【0052】
バネ部材11において2つの湾曲部11Dの間隔(弾性連結部11Aによる曲げ角度)は、バネ部材11が操作軸8に装着された状態で、バネ部材11の弾性により湾曲部11Dが嵌込溝8Eに密着するように設定されている。したがって、バネ部材11は、操作軸8を挟み込むように2か所の湾曲部11Dで操作軸8に対し接触している。そして、バネ部材11が操作軸8に接触することで、バネ部材11に対する操作軸8の回転に対し摩擦力(抵抗力)が作用するようになっている。
【0053】
バネ部材11が操作軸8に装着されて支持された状態で、軸受9の保持部9Aの内面側は、バネ部材11に接触しており、保持部9Aはバネ部材11の挟み部11Cを操作軸8に押し付けている。
【0054】
軸受9の保持部9Aには、中央部に板厚方向に貫通する挿入孔9Eが形成されている。挿入孔9Eには、バネ部材11の弾性連結部11Aが挿入されており、弾性連結部11Aは、内枠4の反対側から部分的に突出している。バネ部材11は、内枠4と軸受9との間に位置しているが、弾性連結部11Aがこの挿入孔9Eに嵌合されることで、バネ部材11が軸受9から部分的に露出した状態となっている。そして、挿入孔9Eに、バネ部材11の一部である弾性連結部11Aが挿入されることで、軸受9に対しバネ部材11が固定され、操作軸8まわりに不用意に回転しないようになっている。挿入孔9Eは挿入部の一例である。
【0055】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0056】
図3、
図8A及び
図8Bに示されるように、内枠4が外枠3の内側に位置した状態で、係止部10が係止位置にある場合、係止部10が外枠3に係止されるので、内枠4は外枠3に対し閉位置でロックされる。
【0057】
この状態で、操作受溝8Dを用いて操作軸8を矢印R2方向に回転させ、
図5、
図9A及び
図9Bに示されるように、係止部10を非係止位置に回転させると係止部10は外枠3に係止されなくなり、外枠3に対する内枠4のロックは解除されるので、内枠4は閉位置から開位置へ回転可能となる。
【0058】
ところで、天井点検口2が建物外に設置される場合には、たとえば風等による振動で、内枠4に対し操作軸8に回転力が作用することがある。
【0059】
本実施形態では、バネ部材11の挟み部11Cが操作軸8を挟み込む2か所で操作軸8に接触しており、操作軸8の回転に対し抵抗となる摩擦力を作用させている。したがって、操作軸8の回転に対しこのような抵抗を生じさせる部材を有さない構成や、バネによって操作軸を内枠に押し付けて摩擦力を作用させる従来の構成と比較して、操作軸8の回転に確実に抵抗力を作用させることができる。これにより、風等による振動で操作軸8に回転力が作用した場合でも、操作軸8の回転を阻止することができ、係止状態から被係止状態への操作軸8及び係止部10の不用意な回転を防止することが可能である。
【0060】
しかも、従来の構成において、操作軸8及び係止部10の不用意な回転を防止するための力(たとえば操作軸8に対する押付力)として所望の大きさの力を安定的に得るための押付部材等を内枠4に取り付けるには、内枠4の構造や形状に困難が生じることがある。また、操作軸8の回転によって、内枠4に対するこの押付部材等の緩みが生じるおそれもある。これに対し、本発明において開示する技術では、バネ部材11は内枠4には固定されないので、バネ部材11から操作軸8の回転に対する抵抗となる摩擦力を安定的に発揮可能な状態を維持できる。たとえば操作軸8が回転した場合でも、バネ部材11の取付が緩むことはない。
【0061】
また、バネ部材11において、挟み部11Cは弾性連結部11Aによって連結されており、弾性連結部11Aの弾性により、挟み部11Cで操作軸8を間に挟み込んで押し付けている。したがって、従来の構成と比較して、操作軸8の回転に対する抵抗(挟み部11Cとの摩擦力)をより強く作用させることができる。
【0062】
また、軸受9の保持部9Aによって、バネ部材11の挟み部11Cは操作軸8に押し付けられている。したがって、従来の構成と比較して、操作軸8に対する摩擦力をより強く生じさせることができる。
【0063】
また、バネ部材11の弾性連結部11Aは、軸受9の挿入孔9Eに挿入されており、バネ部材11は弾性連結部11Aにより、軸受9に支持されている。したがって、軸受9に対する位置及び姿勢を安定的に維持できる。たとえば操作軸8の周方向に不用意にバネ部材11が回転することを防止でき、操作軸8に対するバネ部材11の位置も安定するので、挟み部11Cが操作軸8を挟み込んだ状態を安定的に維持できる。
【0064】
また、軸受9の挿入孔9Eは軸受9の保持部9Aを板厚方向に貫通しているので、バネ部材11の弾性連結部11Aは操作軸8の反対側に露出しており、弾性連結部11Aを視認できる。
【0065】
ただし、バネ部材11の弾性連結部11Aの挿入部としては、軸受9を貫通する挿入孔9Eに代えて、軸受9を貫通することなく、たとえば操作軸8側で単に凹んでいる形状であってもよい。すなわち、この凹み部分に弾性連結部11Aを嵌合させることで、軸受9によりバネ部材11を支持する構造を実現できる。軸受9の凹部に弾性連結部11Aを嵌合させた構造では、バネ部材11は軸受9から露出しない。
【0066】
また、バネ部材11の湾曲部11Dは、操作軸8の外周面(本実施形態では嵌込溝8E)に沿って湾曲しており、湾曲部11Dは操作軸8の外周面に線接触している。したがって、バネによって操作軸を内枠に押し付けて摩擦力を作用させる従来の構成と比較して、接触状態を安定的に維持できると共に、操作軸8の外周面の摩耗を抑制できる。
【0067】
また、バネ部材11の湾曲部11Dが、操作軸8の嵌込溝8Eに嵌め込まれているので、バネ部材11の位置、特に操作軸8の軸方向(長手方向)での位置を安定的に維持できる。
【0068】
ただし、このような嵌込溝8Eがない構造であっても、バネ部材11の湾曲部11Dを操作軸8の外周面に沿って湾曲させることで、湾曲部11Dが操作軸8の外周面に線接触している構造を実現できる。
【0069】
次に、第二実施形態について説明する。第二実施形態において、第一実施形態と同様の要素、部材等については同一符号を付して、詳細な説明を省略する。また、第二実施形態における天井点検口の具体的構造は第一実施形態と同様であるので、図示及び説明を省略する。
【0070】
図10A及び
図10Bに示されるように、第二実施形態のロック機構21では、第一実施形態と比較して、バネ部材11の配置および形状が異なる。すなわち、第二実施形態では、弾性連結部11Aが内枠4の対辺4Eに近い位置となり、両端部11Bが軸受9に向けて延在する向きに配置されている。また、弾性連結部11Aには上向きに曲げられた曲げ部11Fが形成されており、操作軸8と対辺4Eとの隙間が狭くても、弾性連結部11Aがこの隙間に配置できるようになっている。
【0071】
また、第二実施形態では、軸受9の挿入孔9Eが、第一実施形態の軸受9の挿入孔9Eよりも大径化(もしくは長孔化)されており、2つの両端部11Bが1つの挿入孔9Eに挿入されている。
【0072】
このような構成とされた第二実施形態においても、風等による振動で操作軸8に回転力が作用した場合に、操作軸8の回転を阻止することができ、係止状態から被係止状態への不用意な回転を防止することが可能である。また、この他の点においても、第一実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0073】
本願において開示する技術では、操作軸8の不用意な回転を防止するために、実質的にバネ部材11を軸受9と操作軸8との間に配設すれば足り、他の部材を接合したり、軸受9及び操作軸8を加工したりする必要がない。このため、低コストでロック機構1、62及び天井点検口2を構成でき、また、ロック機構1、21を構成する各部材の組付も容易である。
【0074】
しかも、軸受9と操作軸8との間にバネ部材11を差入れた状態で、軸受9によって操作軸8を内枠4に回転可能に取り付ければよいので、内枠4の加工も少なくて済む。これにより、天井点検口2を容易に、かつ低コストで製造することが可能である。
【0075】
さらには、バネ部材11として物性、たとえば弾性連結部11Aの弾性力が異なるものを用いることで、操作軸8の回転に作用する抵抗力を所望の大きさに容易に設定できる。
【符号の説明】
【0076】
1・・・ロック機構 2・・・天井点検口 3・・・外枠 3B・・・内面 4・・・内枠 5・・・天井 6・・・開口部 8・・・操作軸 8D・・・操作受溝 8E・・・嵌込溝 9・・・軸受 9A・・・保持部 9C・・・取付孔 9D・・・下面 9E・・・挿入孔 10・・・係止部 11・・・バネ部材 11A・・・弾性連結部 11B・・・両端部 11C・・・挟み部 11D・・・湾曲部