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特開2023-91508塗工紙、及び該塗工紙を用いた包装体又は容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091508
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】塗工紙、及び該塗工紙を用いた包装体又は容器
(51)【国際特許分類】
   D21H 19/20 20060101AFI20230623BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230623BHJP
   B32B 29/06 20060101ALI20230623BHJP
   D21H 19/22 20060101ALI20230623BHJP
   D21H 19/82 20060101ALI20230623BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
D21H19/20 A
B32B27/00 H
B32B29/06
D21H19/22
D21H19/82
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206286
(22)【出願日】2021-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】310000244
【氏名又は名称】DICグラフィックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100193725
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 幸子
(74)【代理人】
【識別番号】100163038
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 武志
(72)【発明者】
【氏名】田中 克則
(72)【発明者】
【氏名】菊池 浩
(72)【発明者】
【氏名】榎本 肇
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4L055
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AD01
3E086AD02
3E086AD05
3E086AD06
3E086AD23
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA14
3E086BA15
3E086BB01
3E086BB62
3E086BB71
3E086CA01
3E086CA15
3E086CA29
3E086CA35
3E086DA01
4F100AA05C
4F100AA06C
4F100AA17C
4F100AA19C
4F100AA20C
4F100AA21C
4F100AA27C
4F100AB01C
4F100AB09C
4F100AB10C
4F100AB11C
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4F100AB18C
4F100AB19C
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4F100AL01A
4F100AL01D
4F100AL01E
4F100BA04
4F100BA05
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4L055AG03
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4L055AG58
4L055AG63
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4L055AG89
4L055AG94
4L055AJ01
4L055BE08
4L055BE20
4L055FA19
4L055FA30
4L055GA05
4L055GA47
4L055GA48
(57)【要約】
【課題】紙リサイクル効率を低下させない、ポリエチレンフィルム代替品となる塗工紙であって、耐油性、耐水性、及び水蒸気や酸素などのバリア性の全てに優れた塗工紙の提供。
【解決手段】 紙基材の一方の面に、蒸着層、オーバーコート層がこの順番で積層され、かつ塗工層が、前記紙基材の他方の面か、前記紙基材と前記蒸着層の間か、もしくは前記蒸着層と前記オーバーコート層の間に設けられ、前記オーバーコート層及び前記塗工層が、スチレン類と(メタ)アクリレートとの共重合体からなるスチレンアクリル共重合体を含有する、塗工紙である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材の一方の面に、蒸着層、オーバーコート層がこの順番で積層され、かつ
塗工層が、前記紙基材の他方の面か、前記紙基材と前記蒸着層の間か、もしくは前記蒸着層と前記オーバーコート層の間に設けられ、
前記オーバーコート層及び前記塗工層が、スチレン類と(メタ)アクリレートとの共重合体からなるスチレンアクリル共重合体を含有する、塗工紙。
【請求項2】
前記塗工層が含有するスチレンアクリル共重合体が、スチレンとαメチルスチレンと(メタ)アクリレートとのスチレンアクリル共重合体である、請求項1に記載の塗工紙。
【請求項3】
前記塗工層が含有するスチレンアクリル共重合体が、スチレンとαメチルスチレンと(メタ)アクリレートとのスチレンアクリル共重合体と、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリレートとの共重合体とからなるスチレンアクリル共重合体である、請求項2に記載の塗工紙。
【請求項4】
前記オーバーコート層又は前記塗工層に含有されるスチレンアクリル共重合体が、コアシェル構造を有するスチレンアクリル共重合体である、請求項1~3のいずれかに記載の塗工紙。
【請求項5】
前記オーバーコート層が、さらにワックスを含有する、請求項1~4のいずれかに記載の塗工紙。
【請求項6】
前記ワックスが、前記スチレンアクリル共重合体のコアシェル構造内に存在する、請求項5に記載の塗工紙。
【請求項7】
さらに印刷層が積層されている、請求項1~6のいずれかに記載の塗工紙。
【請求項8】
前記印刷層は、紙基材の前記一方の面であって、前記蒸着層と前記オーバーコート層の間に設けられている、請求項7に記載の塗工紙。
【請求項9】
さらに、前記蒸着層に隣接して蒸着アンカー層、及び/又は前記印刷層に隣接してプライマー層が設けられている、請求項1~8のいずれかに記載の塗工紙。
【請求項10】
前記蒸着層の表面が、コロナ処理されている、請求項1~9のいずれかに記載の塗工紙。
【請求項11】
前記蒸着層が、金属、または、金属の酸化物もしくはフッ化物からなる蒸着膜である、請求項1~10のいずれかに記載の塗工紙。
【請求項12】
前記蒸着層が、アルミニウム、クロム、亜鉛、金、銀、プラチナ、ニッケル、ケイ素、チタン、ジルコニウム、マグネシウムから選ばれる金属、または、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、フッ化マグネシウムから選ばれる金属の酸化物もしくはフッ化物からなる蒸着膜である、請求項11に記載の塗工紙。
【請求項13】
さらにヒートシール層が積層されている、請求項1~12のいずれかに記載の塗工紙。
【請求項14】
前記ヒートシール層が、紙基材の前記他方の面に設けられている、請求項13に記載の塗工紙。
【請求項15】
前記ヒートシール層が、塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体系樹脂、(メタ)アクリレート系樹脂、オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体系樹脂、ポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂から選ばれるヒートシール剤を含有してなる層である、請求項13または14に記載の塗工紙。
【請求項16】
請求項1~15のいずれかに記載の塗工紙を用いた、包装体又は容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗工紙、及び該塗工紙を用いた包装体又は容器に関する。
【背景技術】
【0002】
紙袋、紙箱、紙カップ等の紙包装材は、各種の用途・目的に応じて従来より使用されてきた。近年では、マイクロプラスチックを始めとする海洋プラスチックごみ問題がクローズアップされる中で、「再利用可能」「生分解性を有する」などの機能を持つ素材の一つとして、プラスチック材料に代わり、再生可能な資源である「木」を原料とする「紙」を使用する動きが高まってきている。
【0003】
現在広く普及している紙製容器の1つとして、飲料用やアイスクリーム、ヨーグルト等の容器として使用される紙カップ類がある。紙カップ類は、紙であるものの原料の一部にポリエチレンフィルムを使用することにより耐水性が付与されている。このような紙カップ類は、熱で溶かしたポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等をフィルム状に押し出したポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等を紙基材に貼り合わせて得る。ポリエチレンフィルムが紙カップ成型時には、バーナーや熱風等の間接加熱下による熱溶融で接着剤の役目を果たし、且つ、ポリエチレンフィルムが紙カップ内側に存在するので紙基材が直接内容物と接触する事なく防水性、防湿性や強度が付与される。
【0004】
しかしながら貼り合わされたポリエチレンフィルムは、紙リサイクル時に紙リサイクル処理で使用するアルカリ溶液に溶解しないため物理的に除去する必要があり、リサイクル効率の低下につながる。またプラスチックごみの海洋への流出による海洋汚染が世界的に問題となっている。持続可能な開発目標(SDGs)のターゲットとして「2025年までに、海洋ごみや富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する」という目標が掲げられ、サミット(主要国首脳会議)でも取り組み強化が合意されるなど世界的な重要テーマとなっている。従って、これらの用途に適用可能で且つ紙リサイクル効率を低下させない、ポリエチレンフィルム代替品が求められている。
【0005】
このようなポリエチレンフィルム代替品として、例えば、特許文献1では特定のスチレンアクリル共重合体を含有する塗工層を用いた塗工紙が開示されている。
【0006】
ところで、従来から、食品、医療品、電子部品等の包装において、内容物の品質低下を防止するために、水蒸気をバリアする水蒸気バリア性や、水蒸気以外のガスをバリアするガスバリア性、特に、酸素をバリアする酸素バリア性に優れた包装材の提供も望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2020-203346号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献1に記載の塗工紙は、耐油・耐水性にある程度優れてはいるものの、より優れた耐水性を示し、かつより優れた水蒸気や酸素バリア性を示す塗工紙を提供するという観点からは、検討の余地があった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、紙リサイクル効率を低下させない、ポリエチレンフィルム代替品となる塗工紙であって、耐油性、耐水性、及び水蒸気や酸素などのバリア性の全てに優れた塗工紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の態様を包含するものである。
[1] 紙基材の一方の面に、蒸着層、オーバーコート層がこの順番で積層され、かつ
塗工層が、前記紙基材の他方の面か、前記紙基材と前記蒸着層の間か、もしくは前記蒸着層と前記オーバーコート層の間に設けられ、
前記オーバーコート層及び前記塗工層が、スチレン類と(メタ)アクリレートとの共重合体からなるスチレンアクリル共重合体を含有する、塗工紙。
[2] 前記塗工層が含有するスチレンアクリル共重合体が、スチレンとαメチルスチレンと(メタ)アクリレートとのスチレンアクリル共重合体である、[1]に記載の塗工紙。
[3] 前記塗工層が含有するスチレンアクリル共重合体が、スチレンとαメチルスチレンと(メタ)アクリレートとのスチレンアクリル共重合体と、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリレートとの共重合体とからなるスチレンアクリル共重合体である、[2]に記載の塗工紙。
[4] 前記オーバーコート層又は前記塗工層に含有されるスチレンアクリル共重合体が、コアシェル構造を有するスチレンアクリル共重合体である、[1]~[3]のいずれかに記載の塗工紙。
[5] 前記オーバーコート層が、さらにワックスを含有する、[1]~[4]のいずれかに記載の塗工紙。
[6] 前記ワックスが、前記スチレンアクリル共重合体のコアシェル構造内に存在する、[5]に記載の塗工紙。
[7] さらに印刷層が積層されている、[1]~[6]のいずれかに記載の塗工紙。
[8] 前記印刷層は、紙基材の前記一方の面であって、前記蒸着層と前記オーバーコート層の間に設けられている、[7]に記載の塗工紙。
[9] さらに、前記蒸着層に隣接して蒸着アンカー層、及び/又は前記印刷層に隣接してプライマー層が設けられている、[1]~[8]のいずれかに記載の塗工紙。
[10] 前記蒸着層の表面が、コロナ処理されている、[1]~[9]のいずれかに記載の塗工紙。
[11] 前記蒸着層が、金属、または、金属の酸化物もしくはフッ化物からなる蒸着膜である、[1]~[10]のいずれかに記載の塗工紙。
[12] 前記蒸着層が、アルミニウム、クロム、亜鉛、金、銀、プラチナ、ニッケル、ケイ素、チタン、ジルコニウム、マグネシウムから選ばれる金属、または、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、フッ化マグネシウムから選ばれる金属の酸化物もしくはフッ化物からなる蒸着膜である、[11]に記載の塗工紙。
[13] さらにヒートシール層が積層されている、[1]~[12]のいずれかに記載の塗工紙。
[14] 前記ヒートシール層が、紙基材の前記他方の面に設けられている、[13]に記載の塗工紙。
[15] 前記ヒートシール層が、塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体系樹脂、(メタ)アクリレート系樹脂、オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体系樹脂、ポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂から選ばれるヒートシール剤を含有してなる層である、[13]または[14]に記載の塗工紙。
[16] [1]~[15]のいずれかに記載の塗工紙を用いた、包装体又は容器。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、紙リサイクル効率を低下させない、ポリエチレンフィルム代替品となる塗工紙であって、耐油性、耐水性、及び水蒸気や酸素などのバリア性の全てに優れた塗工紙を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、以下に記載する構成要件の説明は、本発明を説明するための例示であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
【0013】
[塗工紙]
本発明の塗工紙は、紙基材の一方の面に、蒸着層、オーバーコート層がこの順番で積層されている。かつ本発明の塗工紙は、塗工層が、紙基材の他方の面か、紙基材と蒸着層の間か、もしくは蒸着層とオーバーコート層の間に設けられている。
上記オーバーコート層及び上記塗工層は、スチレン類と(メタ)アクリレートの共重合体がコアシェル構造を形成したスチレンアクリル共重合体を含有する。
【0014】
(層構成)
本発明の塗工紙の層構成としては、例えば、以下の態様が挙げられる。
・塗工層-紙基材-蒸着層-オーバーコート層
・紙基材-塗工層-蒸着層-オーバーコート層
・紙基材-蒸着層-塗工層-オーバーコート層
【0015】
また、本発明の塗工紙の好ましい実施態様として、さらに印刷層が積層されている塗工紙が挙げられる。
印刷層の積層順序は特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、紙基材の一方の面であって、蒸着層とオーバーコート層の間に設けられているとよい。好ましくは、例えば、紙基材の一方の面に、蒸着層、印刷層、オーバーコート層がこの順番で積層されているとよい。
印刷層を有する場合、本発明の塗工紙の好ましい態様としては、例えば、以下の層構成の塗工紙が挙げられる。
・塗工層-紙基材-蒸着層-印刷層-オーバーコート層
・紙基材-塗工層-蒸着層-印刷層-オーバーコート層
・紙基材-蒸着層-塗工層-印刷層-オーバーコート層
・紙基材-蒸着層-印刷層-塗工層-オーバーコート層
【0016】
さらに、本発明の塗工紙は、蒸着層に隣接して蒸着アンカー層、及び/又は印刷層と隣接してプライマー層(アンカー層)が設けられているとよい。
例えば、紙基材と蒸着層の間、もしくは、塗工層と蒸着層の間に、蒸着用のアンカー層(以下、蒸着アンカー層ともいう)が設けられていると好ましい。
蒸着アンカー層を有する場合、本発明の塗工紙の好ましい態様としては、例えば、以下の層構成の塗工紙が挙げられる。
・塗工層-紙基材-蒸着アンカー層-蒸着層-印刷層-オーバーコート層
・紙基材-塗工層-蒸着アンカー層-蒸着層-印刷層-オーバーコート層
・紙基材-蒸着アンカー層-蒸着層-塗工層-印刷層-オーバーコート層
・紙基材-蒸着アンカー層-蒸着層-印刷層-塗工層-オーバーコート層
【0017】
例えば、印刷層の密着性を高める等のために、プライマー層(アンカー層)が設けられていると好ましい。
プライマー層(アンカー層)を有する場合、本発明の塗工紙の好ましい態様としては、例えば、以下の層構成の塗工紙が挙げられる。
・塗工層-紙基材-蒸着アンカー層-蒸着層-プライマー層(アンカー層)-印刷層-オーバーコート層
・紙基材-塗工層-蒸着アンカー層-蒸着層-プライマー層(アンカー層)-印刷層-オーバーコート層
・紙基材-蒸着アンカー層-蒸着層-塗工層-プライマー層(アンカー層)-印刷層-オーバーコート層
・紙基材-蒸着アンカー層-蒸着層-プライマー層(アンカー層)-印刷層-塗工層-オーバーコート層
【0018】
また、本発明の塗工紙の好ましい実施態様として、さらにヒートシール層が積層されている塗工紙が挙げられる。
ヒートシール層は、紙基材の他方の面(紙基材に対し蒸着層が設けられている面とは反対面)に設けられていることが好ましい。
ヒートシール層、紙基材、塗工層がこの順で積層されているか、ヒートシール層、塗工層、紙基材がこの順で積層されているか態様であると、より好ましい。
ヒートシール層を有する場合、本発明の塗工紙の好ましい態様としては、例えば、以下の層構成の塗工紙が挙げられる。
・ヒートシール層-塗工層-紙基材-蒸着アンカー層-蒸着層-プライマー層(アンカー層)-印刷層-オーバーコート層
・ヒートシール層-紙基材-塗工層-蒸着アンカー層-蒸着層-プライマー層(アンカー層)-印刷層-オーバーコート層
・ヒートシール層-紙基材-蒸着アンカー層-蒸着層-塗工層-プライマー層(アンカー層)-印刷層-オーバーコート層
・ヒートシール層-紙基材-蒸着アンカー層-蒸着層-プライマー層(アンカー層)-印刷層-塗工層-オーバーコート層
【0019】
上述した層構成からなる本発明の塗工紙は、紙リサイクル効率を低下させない、ポリエチレンフィルム代替品となる塗工紙であって、耐油性、耐水性、及び水蒸気や酸素などのバリア性の全てに優れている。例えば、本発明の塗工紙を食品の包装材として使用する際は、食品に触れる内側に上記塗工層や上記ヒートシール層側がくるように用い、上記オーバーコート層は外側に用いるとよい。本発明に係る塗工層やヒートシール層は、食品に接しても安全性が高い組成で形成されており、本発明に係るオーバーコート層は非常に耐水性が高い組成で形成されているからである。
以下、本発明の塗工紙を構成する各層について、詳しく説明する。
【0020】
(塗工層)
本発明の塗工紙には、塗工層が積層されており、該塗工層は、スチレン類と(メタ)アクリレートとの共重合体からなるスチレンアクリル共重合体を含有する。
本発明に係る塗工層は、耐油性・耐水性に優れたコート層である。
塗工層は、スチレンとαメチルスチレンと(メタ)アクリレートとのスチレンアクリル共重合体(A)を含有することが好ましく、例えば、スチレンとαメチルスチレンと(メタ)アクリレートとのスチレンアクリル共重合体(A)を含有するエマルジョンと、水性媒体とを含有するコーティング組成物(CS)により形成されることがより好ましい。
さらに、塗工層は、スチレンとαメチルスチレンと(メタ)アクリレートとのスチレンアクリル共重合体(A)と、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリレートとのアクリル共重合体(B)とからなるスチレンアクリル共重合体を含有することが好ましい。
また、上記スチレンアクリル共重合体は、コアシェル構造を有しているスチレンアクリル共重合体であることが好ましい。
【0021】
<スチレンアクリル共重合体(A)を含有するコーティング組成物(CS)>
<<スチレンアクリル共重合体(A)を含有するエマルジョン>>
まず、スチレンとαメチルスチレンと(メタ)アクリレートとのスチレンアクリル共重合体(A)を含有するエマルジョンについて説明する。尚、本発明において(メタ)アクリレートは、アクリレートとメタクリレートの総称を表し、(メタ)アクリル酸はアクリル酸とメタクリル酸の総称を表す。
【0022】
本発明において、スチレンアクリル共重合体(A)中のαメチルスチレンは、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレンのいずれかまたは混合物を表す。
【0023】
また、スチレンアクリル共重合体(A)は、上記スチレンや上記αメチルスチレン以外のスチレン誘導体(p-ジメチルシリルスチキシスチレン、p-tert-ブチルジメチルシロキシスチレン、p-tert-ブチルスチレン)、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、1,1-ジフェニルエチレンらを本発明の範囲を損なわない範囲において一部使用してもよい。
【0024】
(メタ)アクリレートとしては特に限定はなく、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸iso-プロピル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸iso-ブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸n-アミル、(メタ)アクリル酸iso-アミル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ラウリル、(メタ)アクリル酸n-トリデシル、(メタ)アクリル酸n-ステアリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸4-tert-ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタジエニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸テトラフルオロプロピル、メタクリル酸ペンタフルオロプロピル、メタクリル酸オクタフルオロペンチル、メタクリル酸ペンタデカフルオロオクチル、メタクリル酸ヘプタデカフルオロデシル、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリロニトリル、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリアルキレンオキサイド基含有(メタ)アクリル単量体等、汎用の(メタ)アクリレートを使用することが出来る。中でも、アクリレートを有するホモポリマーがより低いガラス転移温度を呈することから好ましく、炭素原子数1~20のアルキル基を有するアクリレートを主成分とすることが好ましく、炭素原子数1~12のアルキル基を有するアクリレートを主成分とすることが好ましい。このような炭素原子数1~12のアルキル基を有するアクリレートとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸iso-プロピル、アクリル酸アリル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸iso-ブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸n-アミル、アクリル酸iso-アミル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ラウリル等が挙げられる。
【0025】
本発明のスチレンアクリル共重合体(A)の構成成分として用いられる(メタ)アクリレートは、1種類であっても2種類以上であってもよいが、2種類以上の(メタ)アクリレートを用いることが好ましく、中でも、炭素原子数1~12のアルキル基を有するアクリレート2種類以上を主成分として用いることが好ましい。
【0026】
スチレンアクリル共重合体(A)を含有するエマルジョンは、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリレートとの共重合体を更に含有することが好ましい。(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリレートとの共重合体は、(メタ)アクリル酸と上記(メタ)アクリレートとの共重合体である(アクリル共重合体(B)ともいう)。上記(メタ)アクリレートとしては特に限定はないが、中でも炭素原子数1~20のアルキル基を有するアクリレートであることが好ましく、アクリレートを有するホモポリマーがより低いガラス転移温度を呈することから好ましく、炭素原子数1~20のアルキル基を有するアクリレートを主成分とすることが好ましく、炭素原子数1~12のアルキル基を有するアクリレートを主成分とすることが好ましい。このような炭素原子数1~12のアルキル基を有するアクリレートとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸iso-プロピル、アクリル酸アリル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸iso-ブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸n-アミル、アクリル酸iso-アミル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ラウリル等が挙げられる。
【0027】
スチレンアクリル共重合体(A)を含有するエマルジョンは、上記スチレンアクリル共重合体(A)と上記アクリル共重合体(B)とを含有することが好ましいが、これは、乳化重合や転送乳化等の公知の水性媒体を使用する重合法で重合した上記スチレンアクリル共重合体(A)のエマルジョンと、乳化重合や転送乳化等の公知の水性媒体を使用する重合法で重合した上記アクリル共重合体(B)のエマルジョンとを適宜混合したエマルジョンであってもよいし、上記スチレンアクリル共重合体(A)と上記アクリル共重合体(B)とがコアシェル構造を形成する樹脂のエマルジョンであってもよい。なお、「スチレンアクリル共重合体(A)を含む樹脂」は、例えば、スチレンアクリル共重合体(A)からなるコアシェル構造を形成する樹脂であってもよいし、上記スチレンアクリル共重合体(A)と上記アクリル共重合体(B)とがコアシェル構造を形成する樹脂であってもよい。
【0028】
なお、コアシェル構造とは、「スチレンアクリル共重合体(A)」が多く存在する領域と、「アクリル共重合体(B)」が多く存在する領域を有することにより、コアシェル構造を形成するものである。該コアシェル構造において、例えば、「スチレンアクリル共重合体(A)」が多く存在する領域に「アクリル共重合体(B)」が存在していてもよいし、また、これらの共重合体が互いに重合していてもよい。
【0029】
スチレンアクリル共重合体(A)を含有するエマルジョンは、スチレンアクリル共重合体(A)を少なくとも含む樹脂を含有し、最低造膜温度が-30℃~30℃の範囲であることが好ましく、-10~25℃の範囲がより好ましく、-5~20℃の範囲が更に好ましい。本発明において最低造膜温度は、合成ゴムラテックスの水分が蒸発して乾燥するとき、連続したフィルムが形成されるのに必要な最低の温度であり、温度勾配板法により得られるものである。
【0030】
スチレンアクリル共重合体(A)を含有するエマルジョンのガラス転移温度(以下Tgと称する場合がある)は、-40℃~30℃の範囲であることが好ましく、中でも-35~25℃の範囲が好ましく、-30~23℃の範囲がより好ましい。本発明においてガラス転移温度は、示差走査熱量計による測定により得られるものである。
【0031】
また上記エマルジョンの酸価は30~80mgKOH/gの範囲であることが好ましく、中でも40~75mgKOH/gの範囲が好ましく、50~70mgKOH/gの範囲がより好ましい。本発明において酸価は、JIS試験方法K0070-1992に準拠した測定方法により得られるものである。
【0032】
スチレンアクリル共重合体(A)のエマルジョンを含むコーティング組成物(CS)は、ピンホール等の欠陥の無い緻密な造膜性を有するため、耐水性、耐油性に優れる。そのため、積層体の耐水性、耐油性を向上させることができる。また、コーティング組成物(CS)は接着性も有するため、ヒートシール性コート層及び/又は紙基材との接着性に優れ、また、ヒートシール性コート層の機能を損なうこともないことから、ヒートシール性コート層と組み合わせて用いた場合の相性に優れている。
【0033】
また、本発明の組成物はスチレンアクリル共重合体(A)を含むため、耐熱性が向上する。そのため、収容物が加熱食品などの高温の場合にも適応可能である。
【0034】
<<スチレンアクリル共重合体(A)を含有するエマルジョンの製造方法>>
本発明においてエマルジョンは特に限定なく公知の乳化重合や転送乳化等の公知の水性媒体を使用する重合法で重合して得ることができる。また水性媒体にポリマーが分散した形態にはエマルジョンやディスパージョン、懸濁液等様々な表現があるが本発明においてはエマルジョンに統一する。
【0035】
例えば水性媒体中にモノマー混合物を供給して、開始剤の存在下、このモノマー混合物を重合させてエマルジョンを重合する。
【0036】
上記スチレンアクリル共重合体(A)のエマルジョンと、上記アクリル共重合体(B)のエマルジョンとを適宜混合したエマルジョンの場合は、それぞれのモノマー混合物を重合させたエマルジョンを混合させることで得られる。
【0037】
また、コアシェル構造を形成するエマルジョンの場合は、コアポリマーを形成するモノマー混合物を供給して、開始剤の存在下、このモノマー混合物を重合させてコアポリマーを形成する工程(1)と、シェルポリマーを形成するモノマー混合物を工程(1)のコアポリマーに供給し、開始剤の存在下、このモノマー混合物を重合させてコアポリマーにシェルを形成する工程(2)により得られる。また、シェルポリマーを形成するモノマー混合物を供給して、開始剤の存在下、このモノマー混合物を重合させてシェルポリマーを形成する工程(i)と、コアポリマーを形成するモノマー混合物を工程(i)のシェルポリマーに供給し、開始剤の存在下、このモノマー混合物を重合させてコアポリマーにシェルを形成する工程(ii)により得られる。
【0038】
開始剤としては特に限定なく、乳化重合法等で使用される過酸化物、過硫酸塩、アゾ化合物、又はレドックス系、或いはこれらの混合物を使用すればよい。過酸化物としては、例えば、過酸化水素、過酸化アンモニウム、過酸化ナトリウム、又は過酸化カリウム、t-ブチルペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、及びベンゼンペルオキシドが挙げられる。また過硫酸塩としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、又は過硫酸カリウムが挙げられる。またアゾ化合物としては、例えば、2,2-アゾビスイソブチロニトリル、及び4,4’-(4-シアノバレリン酸)が挙げられる。またレドックス系は酸化剤と還元剤とから成り、酸化剤としては、例えば、先に挙げたうちの1の過酸化物、過硫酸塩、若しくはアゾ化合物、又は塩化ナトリウム若しくは塩化カリウム、又は臭化ナトリウム若しくは臭化カリウムが挙げられる。還元剤としては、例えば、アスコルビン酸、グルコース、又はアンモニウム、硫酸水素ナトリウム若しくは硫酸水素カリウム、亜硫酸水素ナトリウム若しくは亜硫酸水素カリウム、ナトリウムチオスルフェート若しくはカリウムチオスルフェート、又は硫化ナトリウム若しくは硫化カリウム、又は鉄(II)アンモニウムスルフェートが挙げられる。中でも過硫酸塩、より好ましくは過硫酸アンモニウムが好ましい。
【0039】
上記モノマー混合物の重合は、例えば界面活性剤、連鎖移動剤、キレート剤等の添加剤の存在下で、例えば、界面活性剤及び連鎖移動剤の存在下で行うことができる。これらの添加剤は、工程(1)で使用する水性媒体に予め添加させておいてもよいし、工程(1)あるいは工程(2)で供給するモノマー混合物と混合させておいてもよい。
【0040】
界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、二ナトリウムドデシルジフェニルオキシド、ジスルホン酸塩等が挙げられる。また連鎖移動剤としても特に限定されないが、例えば、α-メチルスチレン二量体、チオグリコール酸、亜リン酸水素ナトリウム、2-メルカプトエタノール、N-ドデシルメルカプタン、及びt-ドデシルメルカプタン等が挙げられる。キレート剤としては特に限定されないが、例えば、エチレンジアミン四酢酸が挙げられる。
【0041】
コアシェル構造を形成する場合、水媒体中での安定性を高めるためには、酸性基を有する上記アクリル共重合体(B)がシェルとなることが好ましいが合成中に全ての上記アクリル共重合体(B)がシェルとなっておらず一部上記スチレンアクリル共重合体(A)がシェルとなっている構造を有するエマルジョンであっても問題ない。
【0042】
また中和が必要な場合は、中和剤としてアンモニア、トリエチルアミン、アミノメチルプロパノール、モノエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム,水酸化カリウム等の塩基類等を使用することができる。
【0043】
<<その他の樹脂>>
本発明に係るコーティング組成物(CS)は、スチレンアクリル共重合体(A)やアクリル共重合体(B)以外のその他の樹脂を含有してもよい。その他の樹脂の材料は特に限定されるものではないが、本発明に係るコーティング組成物(CS)の耐油性、耐熱性等の特性を損なわないために、スチレンアクリル共重合体であることが好ましく、上記スチレンアクリル共重合体(A)を含む樹脂と同様の材料であることがより好ましい。また、その他の樹脂の含有量は本発明の効果を損なわない範囲で適宜調節可能であるが、スチレンアクリル共重合体(A)を含む樹脂とその他の樹脂との重量比(スチレンアクリル共重合体(A)/その他の樹脂)が100/0~50/50であることが好ましく、100/0~60/40であることが好ましい。
【0044】
<<水性溶剤>>
コーティング組成物(CS)は、水を含有する。水としては、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、または超純水を用いることができる。また、上記水としては、紫外線照射または過酸化水素添加等によって滅菌された水を用いることが、組成物を長期保存する場合に、カビまたはバクテリアの発生を防止することができるため好適である。中でも水を用いることが最も好ましい。
【0045】
水に溶解するアルコール類等の水溶性有機溶剤等を混合して用いてもよい。アルコール類としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、ブチルアルコール、ペンチルアルコールなどを挙げることができる。これらのアルコール類は、単独または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0046】
<<その他の添加剤>>
コーティング組成物(CS)は、その他シリカ、アルミナ、ポリエチレンワックス、消泡剤、レベリング剤、粘着性付与剤、防腐剤、抗菌剤、防錆剤等も配合することができる。
【0047】
コーティング組成物(CS)は、ワックスを含有してもよい。ワックスとしては、脂肪酸アミドワックス、カルナバワックス、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、みつろう、マイクロクリスタリンワックス、酸化ポリエチレン-ワックス、アマイドワックスなどのワックスを挙げることができる。これらは単独で使用してもよいし併用してもよい。
【0048】
中でも脂肪酸アミドワックス、カルナバワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックスを使用することが好ましく、特にカルナバワックス、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックスを使用することが好ましい。
【0049】
脂肪酸アミドワックスの具体例としては、例えば、ペラルゴン酸アミド、カプリン酸アミド、ウンデシル酸アミド、ラウリン酸アミド、トリデシル酸アミド、ミリスチン酸アミド、ペンタデシル酸アミド、パルミチン酸アミド、ヘプタデシル酸アミド、ステアリン酸アミド、ノナデカン酸アミド、アラキン酸アミド、ベヘン酸アミド、リグノセリン酸アミド、オレイン酸アミド、セトレイン酸アミド、リノール酸アミド、リノレン酸アミド、これらの混合物及び動植物油脂脂肪酸アミド等が挙げられる。
【0050】
上記カルナバワックスの具体例としてはMICROKLEAR418(Micro Powders,Inc.社製)、精製カルナバワックス1号粉末(日本ワックス株式会社)等が挙げられる。
【0051】
上記オレフィンワックスの具体例としては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスが挙げられ、例えばMPP-635VF(MicroPowders,Inc.)、MP-620VF XF(Micro Powders,Inc)等が挙げられる。
【0052】
上記パラフィンワックスの具体例としては、例えばMP-28C、MP-22XF、MP-28C(Micro Powders,Inc.)等が挙げられる。
【0053】
上記ワックスの配合量は、ワックス総量がコーティング組成物(CS)中の固形分100質量%全量に対し1.5~20質量%であることが好ましい。ワックス総量がコーティング組成物(CS)中の固形分100%全量に対し3質量%以上であれば耐ブロッキング性を保持できる傾向にあり、ワックス総量がコーティング組成物(CS)の固形分100%全量に対し15質量%以下であればヒートシール性が保持できる傾向にある。
【0054】
また、ワックスの融点は、耐油性、耐熱性の観点から、80℃~130℃の範囲であることが好ましい。上記ワックスは、スチレンアクリル共重合体(A)を含む樹脂のエマルジョンに直接添加し混合分散させてもよいし、ワックスの分散体を作製した後、エマルジョンと混合させてもよい。分散方法としては、公知の方法、例えばメディアを用いた分散装置として、ペイントシェーカー、ボールミル、アトライター、バスケットミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、スパイクミル、アジテーターミル等を使用することができ、メディアを用いないものとして超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ナノマイザー、デゾルバー、ディスパー、高速インペラー分散機等で分散することができる。
【0055】
粉体のワックスを使用する場合は、ワックスを均一分散させるために、メディアを用いて練肉を行ったり、ワックスの分散体を作製した後配合を行ったりすることが好ましい。
練肉方法は公知の方法で行うことができる。
【0056】
また複数種のワックスを併用する際には、複数種のワックスを同時に添加してもよいし、複数の工程に分けて添加してもよい。
【0057】
また、コーティング組成物(CS)は、各種コーターを使用してコーティングする際に組成物が泡立つことを防止するため、ポリマー系消泡剤、シリコン系消泡剤、フッ素系消泡剤が好ましく使用される。これら消泡剤としては乳化分散型及び可溶化型などいずれも使用できる。中でもポリマー系消泡剤が好ましい。
【0058】
上記消泡剤の添加量としては、コーティング組成物(CS)は全量の0.005重量%~0.1重量%が好ましい。
【0059】
(紙基材)
本発明の塗工紙に積層されている紙基材としては、木材パルプ等の製紙用天然繊維を用いて公知の抄紙機にて製造されるが、その抄紙条件は特に規定されるものではない。
製紙用天然繊維としては、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ等の木材パルプ、マニラ麻パルプ、サイザル麻パルプ、亜麻パルプ等の非木材パルプ、およびそれらのパルプに化学変性を施したパルプ等が挙げられる。パルプの種類としては、硫酸塩蒸解法、酸性・中性・アルカリ性亜硫酸塩蒸解法、ソーダ塩蒸解法等による化学パルプ、グランドパルプ、ケミグランドパルプ、サーモメカニカルパルプ等を使用することができる。また、市販の各種上質紙やコート紙、裏打ち紙、含浸紙、ボール紙や板紙などを用いることもできる。
【0060】
上記紙基材は、目的に応じ紙の種類、厚み等を逐次選択する事ができる。例えばバーガーラップであれば米坪対応20グラム/m程度、紙コップであれば米坪対応200~300グラム/m、紙皿、紙スプーン、紙マドラー等であれば米坪対応50~500グラム/mのカップ原紙等の食品用原紙が好ましい。これらの用紙は、リサイクル効率やコスト低減の観点から、ポリエチレン-フィルムやアルミ等をラミネートされていないことが好ましい。
【0061】
(蒸着層)
本発明の塗工紙には、蒸着層が積層されている。
蒸着層は、金属、または、金属の酸化物もしくはフッ化物からなる蒸着膜であることが好ましい。
より具体的には、蒸着層は、アルミニウム、クロム、亜鉛、金、銀、プラチナ、ニッケル、ケイ素、チタン、ジルコニウム、マグネシウムから選ばれる金属、または、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、フッ化マグネシウムから選ばれる金属の酸化物もしくはフッ化物からなる蒸着膜であることが好ましい。
蒸着膜の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、及びイオンプレ-ティング法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)、あるいは、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、及び光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)等を挙げることができる。
蒸着層の表面は、コロナ処理されていてもよい。また、蒸着層の上に印刷層を設ける場合は、蒸着層の表面をプライマー塗工することが好ましい。
【0062】
(オーバーコート層)
本発明の塗工紙には、オーバーコート層が積層されており、該オーバーコート層は、スチレン類と(メタ)アクリレートとの共重合体からなるスチレンアクリル共重合体を含有する。
本発明に係るオーバーコート層は、特に耐水性に優れたコート層である。
本発明では、オーバーコート層が最外層となる態様が好ましい。
オーバーコート層は、スチレン類と(メタ)アクリレートとのスチレンアクリル共重合体を含有することが好ましく、例えば、水性溶剤と、スチレンアクリル系共重合体とワックスを少なくとも含有するオーバーコート層形成用の耐水コート組成物により形成されることが好ましい。
【0063】
<水性溶剤>
水性溶剤としては、上記<スチレンアクリル共重合体(A)を含有するコーティング組成物(CS)>の欄の上記<<水性溶剤>>に記載した水性溶剤と同様のものを用いることができる。
【0064】
<スチレンアクリル系共重合体>
スチレンアクリル系共重合体は、スチレン類と(メタ)アクリレートとの共重合体からなる共重合体であるか、スチレン類と(メタ)アクリレートとの共重合体、及びスチレン類と(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体からなる共重合体であることが好ましい。
また、上記スチレンアクリル系共重合体は、コアシェル構造を有しているスチレンアクリル系共重合体であることがより好ましい。
【0065】
スチレンアクリル共重合体の構成成分として用いられるスチレン類及び(メタ)アクリレートは、上述した塗工層におけるスチレンアクリル共重合体(A)に用いられるものと同様のものを用いることができる。
【0066】
スチレンアクリル共重合体の構成成分として、スチレン類、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸以外の他の公知の重合性化合物を含有していてもよい。
【0067】
耐水コート組成物に含有されるスチレンアクリル系共重合体(A)中には、後述するワックスを含有することが好ましい。スチレンアクリル系共重合体(A)中にワックスを含有することにより、耐水性をより向上させることができる。ワックスは、コア部に存在していてもシェル部に存在していてもよい。スチレンアクリル系共重合体の表面に存在していてもよい。
【0068】
耐水コート組成物に含有されるスチレンアクリル系共重合体(A)において、「スチレン類と(メタ)アクリレートとの共重合体」と「スチレン類と(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体」の割合は、質量比で20:80~95:5の範囲が好ましく、30:70~92:8の範囲がより好ましく、40:60~90:10の範囲が最も好ましい。
【0069】
スチレン類と(メタ)アクリレートとの共重合体において、スチレン類と(メタ)アクリレートの割合は、質量比で20:80~80:20の範囲が好ましく、30:70~70:30の範囲がより好ましく、40:60~60:40の範囲が最も好ましい。
【0070】
スチレン類と(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体において、スチレン類の割合は10~90質量%であることが好ましく、20~80質量%であることがより好ましく、30~70質量%であること最もが好ましい。また、スチレン類と(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体において、(メタ)アクリレートの割合は10~80質量%であることが好ましく、15~70質量%であることがより好ましく、20~60質量%であることが最も好ましい。また、スチレン類と(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体において、(メタ)アクリル酸の割合は10~70質量%であることが好ましく、15~60質量%であることがより好ましく、20~50質量%であることが最も好ましい。
【0071】
スチレンアクリル共重合体(A)において、スチレン類、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸以外の他の公知の重合性化合物を含有する場合は、スチレンアクリル共重合体(A)における他の重合性化合物の割合は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることが好ましい。
【0072】
スチレンアクリル共重合体(A)のガラス転移温度(以下Tgと称する場合がある)は、-30℃~10℃の範囲であり、好ましくは-25℃~5℃の範囲であり、より好ましくは-20℃~0℃の範囲である。本発明においてガラス転移温度は、示差走査熱量計による測定により得られるものである。
【0073】
スチレンアクリル共重合体は公知の方法により製造することができる。中でも、スチレンアクリル共重合体は、モノマー混合物の重合をワックスの存在下で行うことが好ましい。つまり、ワックスを水性媒体に予め添加させておくか、又はモノマー混合物と混合させておくことにより、スチレンアクリル共重合体中にワックスがとりこまれた状態のコアシェル構造が形成できる。
【0074】
<ワックス>
耐水コート組成物は、ワックスをさらに含有することにより、耐水性をより向上させることができる。ワックスは、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、酸化ポリエチレン ワックス、アマイドワックスから選ばれる少なくとも一つ以上のワックスが好ましく、パラフィンワックス又はマイクロクリスタリンワックスがより好ましい。これらは単独で使用してもよいし併用してもよい。
【0075】
ワックスの融点は、30℃~130℃の範囲であることが好ましく、50℃~100℃の範囲であることがより好ましい。ワックスの配合量は、スチレンアクリル共重合体100質量%に対して0.5~20質量%であることが好ましく、1~15質量%であることが好ましい。
【0076】
ワックスは、耐水コート組成物中に分散して存在していればよいが、上述のように、スチレンアクリル共重合体のコア部及び/又はシェル部に存在することにより、スチレンアクリル共重合体と一体化して存在することが好ましい。耐水コート組成物において、ワックスが、スチレンアクリル共重合体中に含まれる形で存在するものと、スチレンアクリル共重合体中に含まれずに存在するものとが混在していてもよい。
【0077】
<その他の添加剤>
耐水コート組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲において、上述した成分の他に、更に、シリカ、アルミナ、ワックス、消泡剤、レベリング剤、粘着性付与剤、防腐剤、抗菌剤、防錆剤等の添加剤が配合されていてもよい。また、スチレンアクリル系共重合体以外の他の樹脂が配合されていてもよい。中でも、レベリング剤及び/又はワックスが更に配合されていることが好ましい。
【0078】
本発明の塗工紙は、上述した塗工層、紙基材、蒸着層、オーバーコート層の他に、以下に記載する蒸着アンカー層や、プライマー層(アンカー層)や、印刷層や、ヒートシール層をさらに積層させてもよい。
【0079】
(蒸着アンカー層)
本発明の塗工紙には、蒸着アンカー層が積層されていてもよい。
上記の蒸着層を成膜する前に、あらかじめ紙基材に蒸着アンカー層をコートしてもよい。蒸着アンカー層を施すことにより、紙基材と蒸着層との平滑性や密着性を高めることができ、本発明の塗工紙のガスバリア性をより向上させることができる。
蒸着アンカー層を構成する樹脂、架橋剤、化合物等の種類としては特に限定されず、ニトロセルロース系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ビニル系樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、又はこれらの樹脂より2種以上を含む混合物、ポリビニルアセタールとポリエステルポリオールとイソシアネート化合物とシランカップリング剤を組み合わせたもの、テトラエトキシシランやテトラメトキシシランをはじめとした珪素化合物あるいはその加水分解物と水酸基を有する水溶性高分子との混合物、シリコン系樹脂、ポリシラザン系樹脂とシラン化合物系樹脂との混合物等を用いることができる。
【0080】
(プライマー層(アンカー層))
本発明の塗工紙に印刷層を設ける場合は、印刷層の下にプライマー層(アンカー層)が積層されていてもよい。印刷層の下に設けるプライマー層は、蒸着層を有する面と印刷層との密着性を高める役割を有する各種の樹脂が用いられる。各種の樹脂の種類としては特に限定されず、例えば、ウレタン系樹脂、ポリエチレンイミン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、塩ビ系樹脂、酢ビ系樹脂等を用いることができ、また、これらの2種以上の樹脂を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
(印刷層)
本発明の塗工紙には、印刷層が積層されていてもよい。
印刷層は、例えば、印刷インキを印刷して形成された層であり、印刷層は、装飾、内容物の表示、賞味期間の表示、製造者、販売者等の表示、その他等の表示や美感の付与のために、文字、数字、絵柄、図形、記号、模様等の所望の任意の印刷模様を形成する層である。
印刷層は、紙基材や蒸着層よりも外面側に位置する態様が好ましく、上述したように、紙基材の一方の面に、蒸着層、印刷層、オーバーコート層がこの順番で積層されていることが好ましい。また、印刷層は、全面に設けてもよく、あるいは一部に設けてもよい。
印刷層を構成する材料としては、グラビア印刷用のインキやフレキソ印刷用のインキ等、公知のものを用いることができる。印刷層数は1層であってもよく、複数層であってもよい。印刷を複数色にして意匠性を向上させるためには、複数層からなる印刷層があると好ましい。
印刷層は、従来公知の顔料や染料を用いて形成することができ、その形成方法は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。
印刷インキの層は、例えば、バインダー樹脂、顔料、溶剤、必要に応じて添加剤を含む印刷インキで形成された層であることが好ましい。以下に限定されるものではないが、印刷インキを構成するバインダー樹脂としては、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ウレタン系樹脂、繊維素系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などの塩化ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、石油樹脂等であることが好ましい。
【0082】
(ヒートシール層)
本発明の塗工紙には、ヒートシール層が積層されていてもよい。
ヒートシール層は、ヒートシール剤を含有するコート層をいう。該ヒートシール層は、公知のヒートシール塗工剤(ヒートシール剤(HS)ともいう)を用いて形成することができる。
以下、ヒートシール剤の組成例を説明する。
【0083】
<ヒートシール剤(HS)>
ヒートシール剤(HS)は、耐水性を向上させるために、塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体系樹脂、(メタ)アクリレート系樹脂、オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体系樹脂、ポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましく、塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体系樹脂、(メタ)アクリレート系樹脂、オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体系樹脂から選ばれる少なくとも一種を含むことがより好ましい。
【0084】
塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体系樹脂としては、塩化ビニルと酢酸ビニルが共重合したものであれば、特段限定されない。ヒートシール性を向上させる観点から、酸基を含む塩化ビニル酢酸ビニル共重合体であることが好ましく、酸変性された塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体系樹脂がより好ましい。酸基としてはマレイン酸、もしくはフマル酸を使用したものが好ましい。
【0085】
(メタ)アクリレート系樹脂としては、(メタ)アクリレートの単独重合体もしくは共重合体であれば特に制限は無く、共重合体としては(メタ)アクリレートと共重合しうるビニルモノマーとを共重合させた共重合体があげられる。また、水性溶剤を用いる場合は水分散性や水溶性を付与する目的から酸価を有する共重合体であることが好ましい。
【0086】
(メタ)アクリレートの単独重合体もしくは共重合体の構成成分として用いられる(メタ)アクリレートとしては特に限定はなく、上述したスチレンアクリル共重合体(A)において用いられる(メタ)アクリレートと同様のものが用いられる。
【0087】
また、(メタ)アクリレートや(メタ)アクリレートと共重合しうるビニルモノマーの例としては、ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート;2-ヒドロドキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー;メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のアルキルポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;パーフルオロアルキルエチル(メタ)アクリレート等のフッ素系(メタ)アクリレート;スチレン、スチレン誘導体(p-ジメチルシリルスチレン、(p-ビニルフェニル)メチルスルフィド、p-ヘキシニルスチレン、p-メトキシスチレン、p-tert-ブチルジメチルシロキシスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、α-メチルスチレン等)、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、1,1-ジフェニルエチレン等の芳香族ビニル化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールテトラ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1,3-ジアクリロキシプロパン、2,2-ビス[4-(アクリロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートトリシクロデカニル(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ウレタン(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート化合物;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアルキルアミノ基を有する(メタ)アクリレート;2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、ナフチルビニルピリジン等のビニルピリジン化合物;1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-シクロヘキサジエン等の共役ジエンなどが挙げられる。これらのモノマーは、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0088】
また、カルボキシル基及びカルボキシル基が塩基性化合物によって中和されたカルボキシレート基からなる群より選ばれる1種以上の酸性基を導入することを目的として、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、β-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンサクシネート、β-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート等のカルボキシル基を有する(メタ)アクリルモノマーを共重合させることで、酸価を有するコポリマーを得ることができる。
【0089】
酸性基を導入する場合は、酸価が所望の範囲となるようにモノマー量を適宜調整することが好ましい。
【0090】
(メタ)アクリレートの単独重合体もしくは共重合体は、例えば、重合開始剤の存在下、50℃~180℃の温度領域で1種又は2種以上のモノマーを重合させることにより製造することができ、80℃~150℃の温度領域であればより好ましい。重合の方法は、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等が挙げられる。また、重合様式は、例えば、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等が挙げられる。また、コポリマーはコアシェル型であってもよい。
【0091】
オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体系樹脂としては、オレフィンと、α,β-不飽和カルボン酸、α,β-不飽和カルボン酸の金属塩、及び、α,β-不飽和カルボン酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーとの共重合体等が挙げられる。具体的には、α,β-不飽和カルボン酸、α,β-不飽和カルボン酸の金属塩又はα,β-不飽和カルボン酸エステルとオレフィンとの共重合体であり、オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体、エチレン-アクリル酸-無水マレイン酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル-無水マレイン酸共重合体、エチレン-メタクリル酸-無水マレイン酸共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル-無水マレイン酸共重合体、及びこれらの金属塩等が挙げられる。これらの共重合体は、単独であっても2種以上の混合物であってもよい。
【0092】
中でも、オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体が好ましい。オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体としては、エチレンとα,β-不飽和カルボン酸のランダム共重合体またはブロック共重合体が挙げられる。
【0093】
上記オレフィンとしては、例えばエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、4-メチル-1-ペンテン、ブタジエン、ジシクロペンタジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネンなどが挙げられる。中でもエチレンが好ましい。
上記α,β-不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸が好適に用いられる。これらのα,β-不飽和カルボン酸は、単独あるいは2種以上混合して用いてもよい。
【0094】
上記α,β-不飽和カルボン酸エステルとしては、特に限定なく公知のアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル、ヒドロキシアルキルエステル、アルコキシアルキルエステル等を使用することができる。例えば具体的にはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸nプロピル、アクリル酸nブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸nオクチル、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-メトキシエチルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸nプロピル、メタクリル酸nブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸nへキシル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸nラウリル、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-エトキシエチルなどのメタクリル酸エステルを例示することができる。これらは1種又は2種以上組合せて使用することができる。
【0095】
上記オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体の製造方法としては、公知の方法、例えば高温、高圧下のラジカル共重合により得ることができる。
【0096】
上記オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体中のα,β-不飽和カルボン酸の含有量は、8~24重量%、好ましくは18~23重量%であることが望ましい。α,β-不飽和カルボン酸の含有量が8重量%未満の場合、エチレン-単位に由来する非極性な性質のために水系分散媒に対する分散性に劣り、優れたオレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体樹脂水性分散液を得ることが難しくなるおそれがある。また、α,β-不飽和カルボン酸の含有量が24重量%を超える場合、得られた皮膜の耐ブロッキング性が悪くなるおそれがある。
【0097】
ヒートシール剤において使用するオレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体は、水性溶剤に分散させた水分散体として使用することが好ましい。水性溶剤に分散させる方法としては特に限定されず公知の方法で行えばよい。例えば界面活性剤で乳化し水性溶剤中に分散させる方法や、オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体を塩基性化合物で中和したのち水性溶剤中に分散させる方法等が挙げられる。
【0098】
上記乳化させる際に使用する界面活性剤としては、公知の各種アニオン性、カチオン性、ノニオン性界面活性剤、もしくは各種水溶性高分子を適宜併用して使用することができる。
【0099】
また上記中和する際に使用する塩基性化合物としては、例えばアンモニア、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物が挙げられる。これらの塩基性化合物は単独、あるいは2種以上併用して用いてもよい。
【0100】
塩基性化合物による中和度は、オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体が水性溶媒中で安定に存在する中和度であればよい。例えば該共重合体のカルボキシル基の30~100モル%であればよく、より好ましくは40~90モル%であることが望ましい。
【0101】
上記分散方法としては、公知の方法、例えばメディアを用いた分散装置として、ペイントシェーカー、ボールミル、アトライター、バスケットミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、スパイクミル、アジテーターミル等を使用することができ、メディアを用いないものとして超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ナノマイザー、デゾルバー、ディスパー、高速インペラー分散機等で分散することができる。
【0102】
本発明で使用するオレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体の水分散体の固形分は特に限定はなく、ヒートシール剤として適用させる際の所望される粘度や、ヒートシール剤適用後の乾燥条件、皮膜の膜厚等により適宜決定すればよい。一般には、固形分濃度が10~40質量%の範囲で適用することが多い。
【0103】
<溶剤>
ヒートシール剤(HS)は、塗布性能をあげるために、上述した樹脂を各種有機溶剤又は水性溶剤に溶解して使用することが好ましい。例えば、塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体系樹脂、(メタ)アクリレート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂を使用する場合は、有機溶剤を用いることが好ましい。
【0104】
有機溶剤としては、特に制限はないが、たとえばトルエン、キシレン、ソルベッソ#100、ソルベッソ#150等の芳香族炭化水素系、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル系の各種有機溶剤が挙げられる。また、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、シクロハキサノン等のケトン系、エチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、エチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、モノブチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル等のグリコールエーテル系、溶解性の良好な有機溶剤として、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶剤の各種有機溶剤が挙げられる。これらのうち通常は乾燥速度が速いトルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチルや、これらの混合物を使用するのが好ましい。
【0105】
(メタ)アクリレート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂を用いる場合は、水性溶剤を用いることが好ましい。水性溶剤としては、上述のコーティング組成物(CS)において用いられる水性溶剤と同様のものを用いることができる。中でも、水を用いることが好ましい。
【0106】
<ワックス>
ヒートシール剤(HS)は、ワックスを含有することが好ましい。ワックスを含有することで耐ブロッキング性を保つことができる。上記ワックスとしては、脂肪酸アミドワックス、カルナバワックス、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、みつろう、マイクロクリスタリンワックス、酸化ポリエチレン-ワックス、アマイドワックスなどのワックス、ヤシ油脂肪酸や大豆油脂肪酸などを挙げることができる。これらは単独で使用してもよいし併用してもよい。
【0107】
中でも脂肪酸アミドワックス、カルナバワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックスを使用することが好ましく、特に脂肪酸アミドワックス、カルナバワックスを使用することが好ましい。
【0108】
脂肪酸アミドワックスの具体例としては、例えば、ペラルゴン酸アミド、カプリン酸アミド、ウンデシル酸アミド、ラウリン酸アミド、トリデシル酸アミド、ミリスチン酸アミド、ペンタデシル酸アミド、パルミチン酸アミド、ヘプタデシル酸アミド、ステアリン酸アミド、ノナデカン酸アミド、アラキン酸アミド、ベヘン酸アミド、リグノセリン酸アミド、オレイン酸アミド、セトレイン酸アミド、リノール酸アミド、リノレン酸アミド、これらの混合物及び動植物油脂脂肪酸アミド等が挙げられる。
上記カルバナワックスの具体例としてはMICROKLEAR 418(Micro Powders,Inc.社製)、精製カルナバワックス1号粉末(日本ワックス株式会社等が挙げられる。
【0109】
上記ワックスの配合量は、ワックスの総量がヒートシール剤(HS)の固形分100質量%全量に対し1.5~20質量%であることが好ましい。ワックスの総量がヒートシール剤(HS)の固形分100%全量に対し3質量%以上であれば耐ブロッキング性を保持できる傾向にあり、ワックスの総量がヒートシール剤(HS)の固形分100%全量に対し15質量%以下であればヒートシール性が保持できる傾向にある。
【0110】
上記ワックスのうち、上記脂肪酸アミドワックスと上記カルナバワックスとを併用すると、耐ブロッキング性が更に向上しより好ましい。併用する場合、その比率には特に限定はないが好ましくは、脂肪酸アミドワックス:カルバナワックス=1:1~1:10の範囲が好ましく、1:1~1:5の範囲がなお好ましい。
【0111】
また、上記ワックスのうち、ポリオレフィンワックスとパラフィンワックスとを併用すると、耐ブロッキング性が更に向上しより好ましい。併用する場合、その比率には特に限定はないが好ましくは、ポリオレフィンワックス:パラフィンワックス=1:1~10:1の範囲が好ましく、1:1~5:1の範囲がなお好ましい。
【0112】
水性溶剤を使用する場合にワックスを更に用いることが好ましく、中でも、上記オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体、又は(メタ)アクリル系樹脂と組み合わせて用いることが好ましい。この場合、ワックスはオレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体又は(メタ)アクリル樹脂の水分散体に直接添加し混合分散させてもよいし、上記オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体又は(メタ)アクリル樹脂を水性溶剤に分散させる際に同時に添加し混合分散させてもよい。分散方法は上述の上記オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体の水性溶剤への分散方法で使用する方法を適宜用いることができる。
【0113】
また複数種のワックスを併用する際には、複数種のワックスを同時に添加してもよいし、複数の工程に分けて添加してもよい。例えば第一のワックスを上記オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体又は(メタ)アクリル樹脂の水性溶剤に分散させる際に加えた後、第二のワックスを、得られた第一のワックスと上記オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体又は(メタ)アクリル樹脂との水性分散液に更に追加する方法で、ヒートシール剤(HS)を得ることができる。
【0114】
ヒートシール剤(HS)は、本発明の目的を阻害しない範囲において上記成分の他に、シリカ、アルミナ、消泡剤、粘度調整剤、レベリング剤、粘着性付与剤、防腐剤、抗菌剤、防錆剤、酸化防止剤、シリコーンオイル等の添加剤が配合されていてもよい。
【0115】
また、ヒートシール剤(HS)では、各種コーターを使用してコーティングする際に泡立つことを防止するため、ポリマー系消泡剤、シリコン系消泡剤、フッ素系消泡剤が好ましく使用される。これら消泡剤としては乳化分散型及び可溶化型などいずれも使用できる。中でもポリマー系消泡剤が好ましい。上記消泡剤の添加量としては、水性ヒートシール剤全量の0.005重量%~0.1重量%が好ましい。
【0116】
ヒートシール剤(HS)は、袋、箱等の紙包装材や紙容器を製造する際のヒートシール剤として使用することができるし、シール(接着)部位以外の塗工部分は、スチレンアクリル共重合体を含有する塗工層との積層により、積層体の耐水性をより向上させることができる。ヒートシール部分を貼り合わせることにより、袋、箱、容器等の種々の包装材を用途に合わせて作製でき、加工性に優れている。
【0117】
(塗工紙の特性)
本発明の塗工紙において、塗工層の塗布量は、0.5~10.0g/mであり、1.0~5.0g/mであることがより好ましい。
本発明の塗工紙において、オーバーコート層の塗布量は、1~10g/mであり、1~5g/mであることがより好ましい。
本発明の塗工紙において、ヒートシール層の塗布量は、0.5~12g/mであることが好ましく、2.0~8.0g/mであることがより好ましい。
【0118】
(塗工紙の製造方法)
本発明の塗工紙は、例えば、以下に記載の製造方法により形成することができる。
例えば、上記(層構成)の欄に記載した各態様のうち、いくつかの態様について、下記第1の製造方法、及び下記第2の製造方法を例にして塗工紙を製造する方法について説明する。
【0119】
<第1の製造方法>
本発明の塗工紙は、紙基材上の一方の面に、蒸着膜を蒸着し(蒸着アンカー層を積層させる場合には蒸着アンカー層を塗布した後、蒸着膜を蒸着し)その上に、オーバーコート層を塗布する。そして、紙基材上の他方の面に、塗工層を塗布することにより形成することができる。なお、印刷層を設ける場合には、蒸着膜を蒸着し蒸着層を形成した後、該蒸着層上に印刷を施し(プライマー層を積層させる場合には、プライマー層を塗布した後、印刷層を形成し)、形成した印刷層上に、オーバーコート層を塗布すればよい。
【0120】
<第2の製造方法>
本発明の塗工紙は、紙基材上の一方の面に、塗工層を塗布し、該塗工層上に蒸着膜を蒸着し(蒸着アンカー層を積層させる場合には蒸着アンカー層を塗布した後、蒸着膜を蒸着し)その上に、オーバーコート層を塗布することにより形成することができる。なお、印刷層を設ける場合には、蒸着膜を蒸着し蒸着層を形成した後、該蒸着層上に印刷を施し(プライマー層を積層させる場合には、プライマー層を塗布した後、印刷層を形成し)、形成した印刷層上に、オーバーコート層を塗布すればよい。
【0121】
また、本発明の塗工紙が、ヒートシール層を有する場合で、例えば、上記第1の製造方法により塗工紙を作製する場合には、紙基材上の他方の面に、塗工層、及びヒートシール層を順に塗布することにより形成することができる。
さらに、ヒートシール層を有する場合で、例えば、上記第2の製造方法により塗工紙を作製する場合には、紙基材上の他方の面に、ヒートシール層を塗布することにより形成することができる。
【0122】
塗工用の組成物を、紙基材やその他各層上に塗布する場合の方法としては、コンマコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、ダイレクトグラビアコーター、リバースグラビアコーター、オフセットグラビアコーター、ロールキスコーター、リバースキスコーター、キスグラビアコーター、リバースキスグラビアコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、リップコーター、ディップコーター、ブレードコーター、ブラシコーター、カーテンコーター、ダイスロットコーター、フレキソコーター、含浸コーター、キャストコーター、スプレイコーター、オフセット印刷機、スクリーン印刷機等のいずれかもしくは二つ以上の塗工方法を組み合わせて用いることができる。
【0123】
また、紙基材、又は紙基材やその他の層を含む積層体を、組成物中に含浸させることにより、紙基材、又は紙基材を含む積層体上に積層させたい塗布層を設けてもよい。また塗工後オーブン等で乾燥工程を設けてもよい。
【0124】
本発明の塗工紙における蒸着層の積層方法は、特に限定されず、本発明の目的を損なわない限り公知の製造方法を採用することができる。
例えば金属材料を真空蒸着法、スパッター法、イオンブレーティングなどのPVD法(物理蒸着法)、あるいは、CVD法(化学蒸着法)などで蒸着する方法が挙げられる。これらの中でも、特に生産の速度や安定性の観点から真空蒸着法が好ましい。真空蒸着法における加熱方式としては、抵抗加熱、高周波誘導加熱、電子ビーム加熱等を用いることができる。また、反応性ガスとして、酸素、窒素、水蒸気等を導入したり、オゾン添加、イオンアシスト等の手段を用いた反応性蒸着を用いたりしてもよい。また、紙基材にバイアス等を加える、紙基材の温度を上昇あるいは冷却する等、本発明の目的を損なわない限りは条件を変更してもよい。
【0125】
[包装体又は容器]
本発明の塗工紙は、箱、袋、容器等に加工することができ、包装体または容器として用いることができる。
【0126】
包装体は、例えば、パッケージ用の袋、紙袋、紙箱、段ボール、ラップ紙、封筒、カップスリーブ、蓋等が挙げられる。容器としては、紙容器、紙皿、トレイ、カップホルダー、紙コップ等が挙げられる。本発明の塗工紙は、耐水性、耐油性に優れていることから、耐水性・耐油性を必要とする食品、肥料等の包装材に利用することが好ましい。また、本発明の塗工紙は、水蒸気バリア性、ガスバリア性に優れていることから、水蒸気バリア性、ガスバリア性を必要とする食品、肥料等の包装材に利用することが好ましい。
例えば、カップ麺、アイスクリーム、プリン、ゼリー等のデザート用のカップ又は蓋、菓子、穀類、豆類、粉体、ペット用のフード、肥料等を収容する袋又は箱、ハンバーガーやホットドックのラップ紙、ピザ等の持ち帰り用容器、から揚げやポテト等のホットスナック用容器、納豆等の総菜を対象とするカップ類等の食品用紙容器又包装材や、洗剤、サニタリー用品をはじめとする衛生品用の袋又は箱等が挙げられる。
【0127】
例えば、本発明の塗工紙を用いて紙コップを作製する場合、容器内面及び容器を組み立てる際の貼り合わせ部にヒートシール層を設けて接着するとよい。すなわち、紙コップは、本発明の塗工紙を丸めて重ね合わせた両端部の貼り合わせ面を接着した胴部材(1)と、上記胴部材(1)の下端に接着された板状の底部材(2)とを有し、接着部に設けられたヒートシール層はヒートシール機能により接着し、接着部以外の部分に設けられたヒートシール層や塗工層は耐水性、耐油性の機能を発揮できる。接着部以外の部分に設けられたヒートシール層や塗工層は、人体及び環境安全性が高いことから、食品と直接接して収容することも可能である。更に、紙コップの外側にオーバーコート層として耐水性に優れたコート層を設けることにより、長時間使用した場合にも優れた耐水性を得られる。
【0128】
同様に、紙箱、紙袋等も本発明の塗工紙を用いてヒートシールすることにより製造できる。
【0129】
ヒートシールの具体的な方法として、塗工紙の2つの部位のうち、少なくとも片方の部位(両方の部位であってもよい)に、ヒートシール層を配し、2つの部位を重ね合わせて加熱により軟化させる方法が好ましい。ヒートシール剤はバーナーや熱風で加熱することにより容易に軟化し紙同士または紙と他素材とを接着させることができ、その後冷却することで接着部分が固化し紙同士または紙と他素材とを強固にシールすることができる。
なお、本発明の塗工紙における各種層の積層順番としては、上述したように好ましいパターンがいくつかあるため、ヒートシール層とヒートシール層との重ね合わせや、ヒートシール層とオーバーコート層とを重ね合わせてヒートシールするだけでなく、紙基材とオーバーコート層とを重ね合わせてヒートシールしたり、塗工層とオーバーコート層とを重ね合わせてヒートシールしてもよい。ヒートシール層を設けてヒートシールする場合に比べるとヒートシール層を設けずこれらの層をヒートシールする場合は、シール性は若干劣るが、本発明の組成の塗工層やオーバーコート層を用いてヒートシールするため、良好なシール性を確保することができる。
【0130】
上記加熱方法としては、バーナー等の熱源、熱風、電熱、赤外線、電子線等の従来公知の手段を用いる事ができるが、具体的にはバーナーや熱風で加熱する方法や、成形の形によっては熱溶着シール法や超音波シール法、あるいは高周波シール法が好ましい。この時の加熱温度は200~500℃、加熱時間は0.1~3秒が好ましい。
【0131】
また、ヒートシール剤(HS)は、ヒートシールバー等の直接熱源と接触させて溶融化させる方法以外に、非接触の加熱であっても容易に加熱軟化し、且つ、熱源から離れてもある程度の時間ヒートシール機能が持続する。本発明の塗工紙は、紙基材を使用するため、直接熱源と接触させると紙が焦げる可能性があるが本発明のヒートシール剤は非接触の加熱でヒートシール機能が発現し且つその機能が持続することから、高速のラインスピードが要求される紙容器の工業生産向けヒートシール剤として特に有用である。
【0132】
ヒートシール剤(HS)を塗工し該塗工部位を加熱軟化させた後、該塗工部位と、もう1つの部位とを重ね合わせた状態で圧着させることにより、ヒートシール剤として使用できる。圧着方法としては特に限定なく、熱板方式、超音波シール、高周波シールの方法で行うことができる。
【実施例0133】
以下に、本発明の内容および効果を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるわけではない。
以下の実施例中の「部」は「質量部」を表し、「%」は「質量%」を表す。
【0134】
(スチレンアクリル共重合体(A)を含有するコーティング組成物(CS)の調整)
窒素ガス置換した四つ口フラスコに、イソプロピルアルコールを100部仕込み、温度を80~82℃に上げた後、滴下ロートに仕込んだミリスチルアクリレート1部、スチレン30部、アクリル酸10部、メチルメタクリレート5部、過酸化ベンゾイル1部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、過酸化ベンゾイル0.5部を追加し、更に2時間反応させた。温度を40℃に下げ、ジメチルエタノールアミン、イオン交換水を添加した。その後、反応フラスコの温度を80~82℃に上げ、ストリッピングを行ない、最終的に固形分30%の水溶性樹脂を得た。
【0135】
上記で得た水溶性樹脂に、イオン交換水10部を反応フラスコに仕込み、温度を80℃~82℃に上げた後、過硫酸カリウムを2部添加し、スチレン15部、αメチルスチレン5部、2-エチルヘキシルアクリレート24部、ブチルアクリレート10部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、過硫酸カリウム0.2部を添加し、2時間反応させた。このようにして得られたアクリルエマルジョン(樹脂1)の固形分は40%であり、最低造膜温度は1℃、ガラス転移点は-27℃、固形分の酸価は64mgKOH/gであった。
【0136】
上記アクリルエマルジョン(樹脂1)を85部、ポリマー系消泡剤0.03部、及びイオン交換水14.97部の合計100部を25℃にて15分間、ディスパーにて十分撹拌しコーティング組成物(CS1)を作製した。
【0137】
(ヒートシール剤(HS)の調整)
エチレンアクリル酸エチルアクリル酸共重合体(エチレン77.8部/アクリル酸エチル11.1部/アクリル酸11.2部)を30部と、共重合体の酸価に対し中和率100%となるアンモニア、水性溶剤として水、及びワックス(W1)として脂肪酸アミドワックス1.5部を仕込み、更に、組成物中の水/イソプロピルアルコールの混合比率が67/3になるようにイソプロピルアルコールを混合して撹拌し、オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体のヒートシール剤(HS)を得た。
【0138】
(スチレンアクリル共重合体(B)の調整)
<製造例1>
窒素ガス置換した四つ口フラスコに、イソプロピルアルコールを100部仕込み、温度を80~82℃に上げた後、滴下ロートに仕込んだスチレン30部、2-エチルヘキシルアクリレート15部、(メタ)アクリル酸20部、メチルメタクリレート5部、過酸化ベンゾイル1部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、過酸化ベンゾイル0.5部を追加し、更に2時間反応させた。温度を40℃に下げ、ジメチルエタノールアミン、イオン交換水を添加した。その後、反応フラスコの温度を80~82℃に上げ、ストリッピングを行ない、最終的に固形分30%の水溶性樹脂を得た。
上記で得た水溶性樹脂に、ワックス類(W2)としてパラフィンワックス(パラフィンワックス155、日本精蝋株式会社製)を2質量部を仕込み、撹拌してワックス分散体を作製した。続いて、ワックス分散体に、イオン交換水10部を反応フラスコに仕込み、温度を80℃~82℃に上げた後、過硫酸カリウムを2部添加し、スチレン30部、2-エチルヘキシルアクリレート24部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、過硫酸カリウム0.2部を添加し、2時間反応させた。このようにして得られたスチレンアクリル系共重合体の水分散体(B-1)の固形分は35%であり、ガラス転移点は-10℃であった。
【0139】
<製造例2>
スチレンアクリル系共重合体(B-1)の合成において、パラフィンワックスの代わりにマイクロクリスタリンワックス(Hi-Mic-1080、日本精蝋株式会社製)を添加した以外はスチレンアクリル系共重合体(B-1)の合成と同様にして、スチレンアクリル系共重合体の水分散体(B-2)を得た。水分散体(B-2)の固形分は35%であり、ガラス転移点は-10℃であった。
【0140】
<製造例3>
スチレンアクリル系共重合体(B)として、スチレン類と(メタ)アクリレートとの共重合体、及びスチレン類と(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体がコアシェル構造を形成し、ガラス転移温度が-30℃~10℃の範囲である市販のスチレンアクリル系共重合体の水分散体(B-3)を用いた。水分散体(B-3)の固形分は40%であり、ガラス転移点は-21℃であった。
【0141】
(塗工紙(積層体)の作製)
<実施例1>
紙基材(純白ロール紙 白銀 日本製紙株式会社製、坪量50g)を準備し、紙基材の一方の面に、蒸着アンカー層を塗布した。蒸着アンカー層は水性アクリルを主樹脂とした塗剤を1g/m塗布した。
その後、10-5Torrの真空状態に保たれた蒸着釜に導入されアルミニウムを蒸着した。蒸着厚みは約50nmである。
次に、蒸着釜から出したシートの蒸着面にグラビア輪転印刷機で印刷層を施した。印刷層の主成分は水性アクリル系樹脂である。80℃の熱風で溶剤である水を乾燥させた。
その後、印刷層上にオーバーコート層を以下のようにして塗布した。上記の水分散体(B-1)を使用し、表1の組成に従って混合した組成物をディスパーにて十分撹拌しオーバーコート層用組成物を調整した。該オーバーコート層用組成物を、膜厚の厚みが6g/mになるように塗布し、乾燥機を用いて150℃にて20秒乾燥させた。
次に、紙基材の他方の面に、塗工層を以下のようにして塗布した。上記のコーティング組成物(CS1)を使用し、表1に記載した塗工層用の組成物を膜厚の厚みが3g/mになるように塗布し、乾燥機を用いて100℃にて30秒乾燥させた。
このようにして、実施例1の塗工紙を作製した。
【0142】
<実施例2~4>
実施例1において、上記の水分散体(B-1)を、表1に記載するように変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2~4の塗工紙を作製した。
【0143】
<比較例1>
オーバーコート層用組成物を塗布せずオーバーコート層を含まない塗工紙を作製した。
【0144】
<比較例2>
工業用硝化綿13部、イソプロピルアルコール55部、酢酸エチル32部を含有する比較用溶剤系ニスをオーバーコート層用組成物に用いた以外は実施例1と同様にして、比較例2の塗工紙を得た。
【0145】
<比較例3>
スチレンアクリル系樹脂28%、イソプロピルアルコール4部、イオン交換水68部を含有する比較用水性ニスをオーバーコート層用組成物に用いた以外は実施例1と同様にして、比較例3の塗工紙を得た。
【0146】
(評価)
各実施例及び比較例で作製された塗工紙に対し、下記評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0147】
<耐水性>
水道水をスポイトに採取し、0.1mLを評価用の塗工紙試験片におけるオーバーコート層の面に滴下した。
水道水を滴下後、25℃にて1時間経過後、4時間経過後、5時間経過後、8時間経過後の各時間において、水道水を拭き取り、表面及び裏面を下記評価基準に従って目視で評価した。
[評価基準]
○:表面に滴下の跡や、水による膨れがなく、裏面への浸透もない。
△:表面に滴下の跡があり水の浸透はあるものの、裏面への浸透はない。
×:表面に滴下の跡や、水による膨れがあり、裏面への浸透がある。
【0148】
<接触角>
水道水をスポイトに採取し、0.1mLを評価用の塗工紙試験片におけるオーバーコート層の面に滴下した直後と、30分後及び40分後の接触角を測定した。接触角の測定には、協和界面化学株式会社製の自動接触角計を用いた。
【0149】
<耐ブロッキング性>
作製した塗工紙のオーバーコート層とオーバーコート層が接触するように重ね合わせ、10kgf/cmの加重をかけ、40℃の環境下に48時間経時させ、取り出し後、オーバーコート層とオーバーコート層との層間における接着具合とオーバーコート層と隣接する他の層との接着具合を、次の4段階で目視評価した。
[評価基準]
◎:全くブロッキングが見られない。
〇:部分的に僅かにブロッキングが見られる。
△:部分的にブロッキングが見られる。
×:全面に渡ってブロッキングが見られる。
【0150】
<滑り角>
作製した塗工紙のオーバーコート層とオーバーコート層が接触するように重ね合わせて、傾斜法により、塗工紙が滑り始める傾斜角を滑り角として測定した。滑り角の測定は滑り角傾斜測定装置(HEIDON社製)を用いて行った。なお、滑り角の値が小さすぎると重ねた時に荷崩れを起こしやすい。大きすぎると塗工物がスタックする可能性がある。そのため適度な滑角を有すると積層した状態の塗工紙から1枚ずつ塗工紙を取り出す等の扱いが容易となり、作業性が向上する。
【0151】
<ヒートシール性>
ヒートシール性は、例えば、カップ成型する場合、塗工紙を丸めてヒートシールするが、その際の最外層と最内層との接着性を評価するものである。
作製した塗工紙を丸めて、オーバーコート層と塗工層とを重ね合わせ、周波数20KHz、振幅7、溶着時間0.5秒、保持時間0.5秒の条件で超音波シールを施し、ヒートシール部を設けた。
密着状況は、ヒートシール部を剥がすことにより、紙剥け、紙切れの発生状況から密着強度を評価した。
[評価基準]
〇:面積の90%以上が接着
△:面積の50%接着
×:接着しない
【0152】
<水蒸気透過率(MVTR)>
ステンレス製のカップを準備し、カップ中に水7gを入れた。評価用の塗工紙を蜜蝋にてカップ上部を封印する。続いて、カップからはみ出した部分を切り落とし、サンプル瓶を作製した。サンプル瓶の初期重量を測定し、温度40℃、湿度50%Rh条件下で保存して24時間経過した際のサンプル重量を測定し、蒸発した水分量を算出した。
【0153】
【表1】

表中のワックス(W3)は、ケミパールW-400(三井化学(株)製)を使用した。
また、表中のレベリング剤は、サーフィノール420(日信化学工業(株)製)を使用した。
【0154】
実施例1~4、及び比較例1~3より、本発明の塗工紙は、耐水性や水蒸気バリア性に優れていることが確認できた。
【0155】
<実施例5>
紙基材(純白ロール紙 白銀 日本製紙株式会社製、坪量50g)を準備し、紙基材の一方の面に、塗工層を以下のようにして塗布した。上記のコーティング組成物(CS1)を使用し、表1に記載した塗工層用の組成物を膜厚の厚みが3g/mになるように塗布し、乾燥機を用いて100℃にて30秒乾燥させた。
塗工層上に蒸着アンカー層を塗布した。蒸着アンカー層は水性アクリルを主樹脂とした塗剤を1g/m塗布した。
その後、10-5Torrの真空状態に保たれた蒸着釜に導入されアルミニウムを蒸着した。蒸着厚みは約50nmである。
次に、蒸着釜から出したシートの蒸着面にグラビア輪転印刷機で印刷層を施した。印刷層の主成分は水性アクリル系樹脂である。80℃の熱風で溶剤である水を乾燥させた。
その後、印刷層上にオーバーコート層を以下のようにして塗布した。上記の水分散体(B-1)を使用し、表1の組成に従って混合した組成物をディスパーにて十分撹拌しオーバーコート層用組成物を調整した。該オーバーコート層用組成物を、膜厚の厚みが6g/mになるように塗布し、乾燥機を用いて150℃にて20秒乾燥させた。
次に、紙基材の他方の面に、ヒートシール層を以下のようにして塗布した。上記のヒートシール剤(HS)を使用し、膜厚の厚みが2g/mになるように塗布し、乾燥機を用いて100℃にて30秒乾燥させた。
このようにして、実施例5の塗工紙を作製した。
【0156】
実施例5の塗工紙は、上記実施例1の塗工紙と同様、耐水性や水蒸気バリア性に優れた結果を示した。特に、塗工紙を丸めて、オーバーコート層とヒートシール層とを重ね合わせ、ヒートシール部を作製し、実施例1と同様に評価したヒートシール性の結果は、実施例1より良好なヒートシール性を示すものであった。