(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091536
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】水中空気浮力利用発電システム
(51)【国際特許分類】
F03B 17/02 20060101AFI20230623BHJP
【FI】
F03B17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206328
(22)【出願日】2021-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】592126577
【氏名又は名称】猿谷 進
(71)【出願人】
【識別番号】507415233
【氏名又は名称】猿谷 侑花
(74)【代理人】
【識別番号】100067758
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 綾雄
(72)【発明者】
【氏名】猿谷 進
【テーマコード(参考)】
3H074
【Fターム(参考)】
3H074AA10
3H074AA12
3H074BB11
3H074CC08
3H074CC34
(57)【要約】
【課題】
自然エネルギーを利用して作った圧縮空気を用いて、水を入れた発電用パイプから効率よく電力を得ることができる水中空気浮力利用の発電システムを提供する。
【解決手段】
自然エネルギーを利用した発電機の出力により駆動するエアーコンプレッサーと、圧縮空気貯蔵タンクと、水タンク用導管と、発電用パイプと、圧縮空気供給パイプとを備えている。発電用パイプの管路に発電装置の回転体を配置し、該回転体の軸体を発電用パイプの管路の軸方向に対して直角に、発電用パイプの管壁に取り付ける。発電用パイプの下端に、発電用パイプの軸方向と平行な方向に所定長さ延びるエアーノズルを複数本配置し、発電スタート時、全エアーノズルを一斉に開放して圧縮空気を一挙に発電パイプ内に吐出する。発電用パイプ内の水流が安定したところで、選択した1本のエアーノズルを残して1本ずつエアーノズルを閉じる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然エネルギーを利用した発電機の出力により駆動されるエアーコンプレッサー40と、エアーコンプレッサー40に接続する圧縮空気貯蔵タンク36と、地上に設置した水タンク用導管4と、地上に設置した発電用パイプ6と、圧縮空気貯蔵タンク36にバルブ手段を介して連結する圧縮空気供給パイプ32とを備え、前記発電用パイプ6の管路に発電装置の回転体50を配置し、該回転体50の軸体52を発電用パイプ6の管路の軸方向に対して直角に、発電用パイプ6の管壁に取り付け、発電用パイプ6の管壁に、発電装置を複数個取付、該発電装置の発電機58と回転体50の軸体52とを接続し、発電用パイプ6の上端と下端を水タンク用導管4の上端と下端に連結し、圧縮空気供給パイプ32から発電用パイプ6の下端内部に圧縮空気を送り込み、発電用パイプ6内に気泡を発生させ、気泡のエネルギーにより発電用パイプ6内に水流を発生させ、水タンク用導管4内と発電用パイプ6内を一方向に水が循環するようにした発電システムであって、発電用パイプ6の下端に、発電用パイプ6の軸方向と平行な方向に所定長さ延びるエアーノズル26を複数本配置し、各エアーノズル26を電磁バルブ28を介して圧縮空気供給パイプ32に連結し、発電スタート時、全エアーノズル26を一斉に開放して圧縮空気を一挙に発電パイプ6内に吐出し、発電用パイプ6内の水流が安定したところで、選択した1本のエアーノズル26を残して1本ずつエアーノズル26を閉じるようにしたことを特徴とする水中空気浮力利用発電システム。
【請求項2】
前記エアーノズル26の本数を5本以上としたことを特徴とする請求項1に記載の水中空気浮力利用発電システム。
【請求項3】
前記発電装置に、回転体50の軸体52の回転と連動して回転するフライホイル60を設けたことを特徴とする請求項1に記載の水中空気浮力利用発電システム。
【請求項4】
前記水タンク用導管4に移動体76を水タンク用導管4の軸方向にスライド自在に配置し、該移動体76を往復運動駆動装置70のピストンロッド78に連結し、前記移動体76に通孔80を設け、該通孔80に該通孔80を水圧により自動的に開閉する開閉蓋84を配置し、前記往復運動駆動装置70によって前記移動体76を往復駆動し、水タンク用導管4内に一方向に水流を発生させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の水中空気浮力利用発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中圧縮空気の浮力を利用した発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地上に水を充満させた重力分配導管と浮力導管を設置し、浮力導管の下端に圧縮空気を供給し、圧縮空気の浮力によって、浮力導管内に水流を発生させ、重力分配導管と浮力導管の間を水流が循環するようにし、この水流によって流体タービンを駆動する発電システムが知られている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特表2020-531748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の発電システムにおいては、1本のエアーノズルから圧縮空気をパイプの下端に供給しているが、1本のエアーノズルから噴出する圧縮空気の気泡の浮力では、迅速に発電用のパイプの水流を加速させることができず、発電のスタートから発電が所定のレベルに達するまでに時間がかかるという問題点がある。
本発明は、上記問題点を解決することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、本発明は、自然エネルギーを利用した発電機の出力により駆動されるエアーコンプレッサー40と、エアーコンプレッサー40に接続する圧縮空気貯蔵タンク36と、地上に設置した水タンク用導管4と、地上に設置した発電用パイプ6と、圧縮空気貯蔵タンク36にバルブ手段を介して連結する圧縮空気供給パイプ32とを備え、前記発電用パイプ6の管路に発電装置の回転体50を配置し、該回転体50の軸体52を発電用パイプ6の管路の軸方向に対して直角に、発電用パイプ6の管壁に取り付け、発電用パイプ6の管壁に、発電装置を複数個取付、該発電装置の発電機58と回転体50の軸体52とを接続し、発電用パイプ6の上端と下端を水タンク用導管4の上端と下端に連結し、圧縮空気供給パイプ32から発電用パイプ6の下端内部に圧縮空気を送り込み、発電用パイプ6内に気泡を発生させ、気泡のエネルギーにより発電用パイプ6内に水流を発生させ、水タンク用導管4内と発電用パイプ6内を一方向に水が循環するようにした発電システムであって、発電用パイプ6の下端に、発電用パイプ6の軸方向と平行な方向に所定長さ延びるエアーノズル26を複数本配置し、各エアーノズル26を電磁バルブ28を介して圧縮空気供給パイプ32に連結し、発電スタート時、全エアーノズル26を一斉に開放して圧縮空気を一挙に発電パイプ6内に吐出し、発電用パイプ6内の水流が安定したところで、選択した1本のエアーノズル26を残して1本ずつエアーノズル26を閉じるようにしたことを特徴とする。
また本発明は、前記エアーノズル26の本数を5本以上としたことを特徴とする。
また本発明は、前記発電装置に、回転体50の軸体52の回転と連動して回転するフライホイル60を設けたことを特徴とする。
また本発明は、前記水タンク用導管4に移動体76を水タンク用導管4の軸方向にスライド自在に配置し、該移動体76を往復運動駆動装置70のピストンロッド78に連結し、前記移動体76に通孔80を設け、該通孔80に該通孔80を水圧により自動的に開閉する開閉蓋84を配置し、前記往復運動駆動装置70によって前記移動体76を往復駆動し、水タンク用導管4内に一方向に水流を発生させるようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、発電用のパイプの下端に複数のエアーノズルを配置し、発電スタート時、全エアーノズルから一挙に圧縮空気を放出することで、短時間に発電用パイプ内の流速を高めることができる。
また、水が流れる発電用パイプの管路に複数の発電装置を設けることができ、発電パイプから効率よく電力を取り出すことができる。
また、水タンク用導管内にピストン運動をする移動体を設けることで、水タンク用導管内の水流の速度を高め、発電効果を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に本発明の構成を添付した図面を参照して詳細に説明する。
地上2に、長さ10メートル以上の水タンク用導管4と、発電用パイプ6が地面に対して垂直に配置され、これらは地上に立設された建造物(図示省略)によって保持されている。発電用パイプ6は、1本又は複数本が導管4に平行に配置されている。各発電パイプ6の上端は、箱状の取付体8内に配置され、取付体8の内部はパイプ10を介して水タンク用導管4に連結している。パイプ10には、開閉バルブ12が設けられている。各発電用パイプ6の上端内部には、パイプ6内に上昇水流を生じさせるスクリュー14が配置され、該スクリュー14は、取付体8に取り付けられたスクリュー駆動部16によって駆動されるように構成されている。
【0008】
各取付体8には、エアー抜き用のパイプ18が設けられている。導管4の上端には開閉バルブの付いた給水口20が設けられ、下端には開閉バルブの付いた水抜きドレン排水口22が設けられている。導管4の下端は開閉バルブ24を介して発電用パイプ6の下端膨大部に連結している。発電用パイプ6の下端膨大部には、発電用パイプ6の軸方向と平行な方向に所定長さ延びる細長いパイプ形状の9本のエアーノズル26が、束になって配置されている。各エアーノズル26の径は、発電用パイプ6の径に比し、極めて小径に形成され、発電用パイプ6の下端の内部に少なくとも5本以上配置することが望ましい。
【0009】
各エアーノズル26は、発電用パイプ6の底壁の穴に密嵌保持され、各先端が、発電用パイプ6内に開口している。各エアーノズル26の下端には、電磁バルブ28が設けられ、各電磁バルブ28は、容体30の天板に保持されている。容体30には、空気室30aが設けられ、各電磁バルブ28は、空気室30aに連結している。空気室30aには、圧縮空気供給パイプ32の一端が連結し、該圧縮空気供給パイプ32の他端は、気圧調整手段34を介して圧縮空気貯蔵タンク36に連結している。発電用パイプ6の下端膨大部には、水抜きドレンバルブ38が設けられている。
【0010】
圧縮空気貯蔵タンク36は、地上2に設置されたコンプレッサー40にパイプを介して連結し、コンプレッサー40から圧縮空気が供給されるように構成されている。地上には、自然エネルギーを利用した風車42を備えた風力発電機44が設置され、コンプレッサー40を駆動するように構成されている。各発電用パイプ6の管壁には複数個の発電部46が取り付けられている。48は、発電タービンの回転体50を保持するケーシングであり、該ケーシング48は、帯板状の周壁50aと、円盤状の両側壁50bを備え、周壁50aと両側壁50で囲まれた回転体収納部にインペラを有する回転体50が回転自在に配置されている。
【0011】
回転体50の中心の軸体52は、ケーシング48の両側壁48bに回転自在に支承されている。ケーシング48は、発電用パイプ6の管壁に一体的に取り付けられている。各ケーシング48内の回転体50の一部は、発電用パイプ6の流通路に配置されている。ケーシング48の周壁48aの、発電用パイプ6の内部に配置される部分には、開口部54,56が形成されている。発電用パイプ6の管壁に固定されたケーシング48は、周壁48aの開口部54,56を通じて、ケーシング48内部の回転体収納空間が、発電用パイプ6の流通路に連通している。各ケーシング48の側面には支持体が取り付けられ、該支持体に発電機58が取り付けられている。発電機58の入力部は、フライホイル60、クラッチ62、ベルト式動力伝達機構64を介して回転体50の軸体52に連結している。図中、符号66はレベル計、符号68はエアー抜きを示している。
【0012】
図3は、導管4に装置された水鉄砲型水流加速用往復運動駆動装置70の構成説明図を示している。導管4の上部の内部にシリンダー72が固定配置され、シリンダー72内にピストン74が配置されている。導管4内に移動体76がスライド自在に配置され、該移動体76は、ピストンロッド78を介して、ピストン74に連結している。移動体76には、水流通孔80が設けられている。該水流通孔80は、移動体76に揺動自在に軸82支されたバネ付きの開閉蓋84によって、自動的に開閉するように構成されている。開閉蓋84は、バネ力によって移動板76の下面に当接支、通孔80を閉じる方向に付勢されている。導管4には、管状のピストンカバー86が取り付けられ、これにピストンロッド78の上部が昇降自在に嵌挿配置されている。
【0013】
ピストンカバー86の上端部には、ピストンロッド78の最上昇位置を検出するためのピストンスイッチ88が設けられている。シリンダー72の上下端部には、圧縮エアータンク36の出力部に空気切替弁96とパイプ98を介して連結する空気取り入れパイプ92,94が連結している。また、シリンダー72の上下端部には、空気排出口100,102が設けられ、空気排出口100は、調整弁104を介して空気排出パイプ108の下端に連結している。導管94の上端には、空気排出口110が設けられている。シリンダー72の下端には、ピストン74の最下降位置を検出するピストンスイッチ90が設けられている。
本実施形態において、上記した電磁バルブ28、空気弁、調整弁その他の電子機器は、コンピュータによって制御されるように構成されている。
図3に示す往復運動駆動装置70は、
図1,2では、図面の複雑化を避けるため図示省略されている。
【0014】
次に本実施形態の動作について説明する。
圧縮エアータンク36内には、風力発電機44の出力電力により駆動されるコンプレッサ40により圧縮エアーが充填されている。また水タンク用導管4内及び発電用パイプ6内は、給水口20を通じて水が供給され、充満した状態となっている。
上記したシステムの状態において、発電をスタートさせるときは、気圧調整手段34の弁を開き、エアーパイプ32を通じて容体30内に圧縮空気を充満させ、しかる後にすべてのエアーノズル26の電磁バルブ28を同時に開き、すべてのエアーノズル26から圧縮空気を一挙に発電用パイプ6の下端から上方に放出する。複数の細いエアーノズル26から放出された圧縮空気は気泡となって、垂直に発電用パイプ6の管路内を上昇するエネルギーが発生し、このエネルギーによって各発電部46の回転体50が回転し、フライホイル60が連動して回転して、発電機58が発電する。一方、導管4内で、空圧により、ピストン74を上下動させる。これにより、移動体76が、導管4内を上下動して、導管4内の水を下方に加圧し、導管4内と発電用パイプ6内の水を勢いよく循環させる。
【0015】
この移動体76の昇降運動による発電用パイプ6と導管4間の水流の循環により、発電用パイプ6の水流が加速され、これにより回転体50の回転力が増大し、発電効果が高まる。シリンダー72内へのエアーの供給と排出は、切替弁96と調整弁104,106によって制御される。ピストン74をエアーによって押し下げるときは、切替弁96はパイプ98とパイプ92を連通させ、調整弁104は閉じ、調整弁106は開く。ピストン74の下降はスイッチ90オンで停止し、パイプ92からのエアー供給は停止する。次に切替弁96が働いて、パイプ98とパイプ94が連通氏、パイプ92は遮断され、弁106が閉じ、ピストン74は上昇する。このとき、調整弁104は開き、シリンダー72内のエアーは、パイプ108から排出される。ロッド78の上端がスイッチ88をオンとすると、パイプ94からのエアーの供給が停止し、ピストン74の上昇が停止する。
【0016】
移動体76が下降するとき、水圧で蓋84は、バネの弾力に抗して閉じ、上昇するときは、ばね力で元の状態に自動的に復帰し、水流通孔80を開く。発電スタート後、所定時間が経過し、フライホイル60が高速回転に達し、発電用パイプ6と導管4内の水流の循環が安定したところで、エアーノズル26の電磁バルブ28を制御して、エアーを吐出するエアーノズル26の本数を順次減らし、最後に残った1本のエアーノズル26のみで、圧縮空気の吐出を行う。尚、発電動作中、空気排出パイプ108から排出されるエアーは、別個で設けた空気供給パイプを通じて発電用パイプ6の下端に供給されるように構成してもよい。尚、往復運動駆動装置70は、駆動時間をタイマーにより設定し、駆動と停止を所定時間ごとに繰り返すようにしてもよい。
【符号の説明】
【0017】
2 地上
4 水タンク用導管
6 発電用パイプ
8 取付体
10 パイプ
12 バルブ
14 スクリュー
16 スクリュー駆動部
18 パイプ
20 給水口
22 排水口
24 開閉バルブ
26 エアーノズル
28 電磁バルブ
30 容体
30a 空気室
32 圧縮空気供給パイプ
34 気圧調整手段
36 圧縮空気貯蔵タンク
38 水抜きドレンバルブ
40 コンプレッサー
42 風車
44 風力発電機
46 発電部
48 ケーシング
48a 周壁
48b 側壁
50 回転体
52 軸体
54 開口部
56 開口部
58 発電機
60 フライホイル
62 クラッチ
64 ベルト式動力伝達機構
66 レベル計
68 エアー抜き
70 往復運動駆動装置
72 シリンダー
74 ピストン
76 移動体
78 ピストンロッド
80 水流通孔
82 軸
84 開閉蓋
86 ピストンカバー
88 スイッチ
90 スイッチ
92 空気取り入れパイプ
94 空気取り入れパイプ
96 空気切替弁
98 パイプ
100 空気排出口
102 空気排出口
104 調整弁
106 調整弁
108 空気排出パイプ
110 空気排出口
112 水