(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091542
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】鉄筋籠組み立て装置及び鉄筋籠組み立て方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/12 20060101AFI20230623BHJP
B21F 31/00 20060101ALI20230623BHJP
E02D 5/34 20060101ALI20230623BHJP
E04C 5/06 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
E04G21/12 105A
B21F31/00 E
E02D5/34 Z
E04C5/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206338
(22)【出願日】2021-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】502107621
【氏名又は名称】株式会社向山工場
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】向山 敦
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 豊孝
(72)【発明者】
【氏名】小谷野 浩
(72)【発明者】
【氏名】松谷 輝雄
【テーマコード(参考)】
2D041
2E164
4E070
【Fターム(参考)】
2D041AA01
2D041DA03
2D041EB10
2E164AA01
2E164CA14
4E070AA01
4E070AB07
4E070AC06
4E070AD02
4E070BA02
4E070BA18
(57)【要約】
【課題】シンプルな構造で鉄筋籠を効率良く組み立て可能な鉄筋籠組み立て装置及び鉄筋籠組み立て方法を提供する。
【解決手段】鉄筋籠組み立て装置1は、複数の枠状のフープ筋B1と、フープ筋B1の周面に沿って取り付けられる長尺な複数の主筋B2と、を有する鉄筋籠Bを組み立てる装置である。当該装置1は、複数のフープ筋B1を水平方向に間隔を空けて並ぶように位置決めし、位置決めされた複数のフープ筋B1をそれぞれ周方向に回転可能となるように保持するフープ筋保持部材20と、フープ筋保持部材20によって保持された複数のフープ筋B1の周面に主筋B2を取り付け可能な位置で、主筋B2を下方から支持する主筋受け部材40と、主筋B2を保持する主筋保持部材50と、主筋保持部材50を上下方向に移動させる昇降装置60と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の枠状のフープ筋と、前記フープ筋の周面に沿って取り付けられる長尺な複数の主筋と、を有する鉄筋籠を組み立てるための鉄筋籠組み立て装置であって、
複数の前記フープ筋を水平方向に所定の間隔を空けて並ぶように位置決めし、位置決めされた複数の前記フープ筋をそれぞれ前記フープ筋の周方向に回転可能となるように保持するフープ筋保持部材と、
前記フープ筋保持部材によって保持された複数の前記フープ筋の周面に前記主筋を取り付け可能な位置で、前記主筋を下方から支持する主筋受け部材と、
前記主筋受け部材とは異なる位置に設けられ、前記主筋を保持する主筋保持部材と、
前記主筋保持部材を上下方向に移動させる昇降装置と、を備えていることを特徴とする鉄筋籠組み立て装置。
【請求項2】
前記主筋保持部材は、前記主筋を保持する主筋保持部を有し、
前記主筋保持部は、前記主筋保持部材の本体に対して、前記主筋を保持することが可能な保持位置と、前記主筋から離れた離間位置との間で移動するように取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の鉄筋籠組み立て装置。
【請求項3】
前記主筋受け部材及び前記主筋保持部材とは異なる位置に設けられ、前記主筋を保持する第2主筋保持部材をさらに備え、
前記主筋保持部材は、前記主筋受け部材よりも上方位置において前記フープ筋の周面に取り付けられた第1の主筋を保持し、
前記第2主筋保持部材は、前記フープ筋の周面に取り付けられた第2の主筋を保持することを特徴とする請求項2に記載の鉄筋籠組み立て装置。
【請求項4】
前記主筋受け部材は、前記主筋を支持する主筋受け部を有し、
前記主筋受け部は、前記主筋受け部材の本体に対して、前記主筋を支持することが可能な支持位置と、前記主筋から離れた離間位置との間で移動するように取り付けられ、
前記第2主筋保持部材は、前記主筋を保持する第2主筋保持部を有し、
前記第2主筋保持部は、前記第2主筋保持部材の本体に対して、前記主筋を保持することが可能な保持位置と、前記主筋から離れた離間位置との間で移動するように取り付けられることを特徴とする請求項3に記載の鉄筋籠組み立て装置。
【請求項5】
前記フープ筋保持部材は、前記フープ筋を下方から保持する複数のフープ筋保持部を有し、
複数の前記フープ筋保持部は、
前記フープ筋保持部材の本体に対して上下方向に移動可能に取り付けられ、かつ、
前記フープ筋保持部材の本体に対して、前記主筋の長尺方向及び上下方向それぞれと直交する方向に移動可能となるように取り付けられることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の鉄筋籠組み立て装置。
【請求項6】
前記主筋の長尺方向において前記主筋受け部材よりも外側位置に設けられ、前記主筋受け部材によって支持された前記主筋の長尺方向の端面に当接することで、前記主筋の長尺方向における位置決めを行う位置決め部材をさらに備え、
前記位置決め部材は、前記主筋受け部材の周辺位置に配置され、
前記位置決め部材において前記主筋の端面に当接する当接面が、前記主筋の長尺方向及び上下方向それぞれと直交する方向において前記フープ筋保持部材よりも幅狭となるように形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の鉄筋籠組み立て装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の鉄筋籠組み立て装置を用いた鉄筋籠組み立て方法であって、
前記フープ筋保持部材上に複数の前記フープ筋を水平方向に所定の間隔を空けて並ぶように配置するフープ筋配置工程と、
前記主筋受け部材上に前記主筋を配置する主筋配置工程と、
前記フープ筋保持部材によって保持された複数の前記フープ筋の周面に、前記主筋受け部材によって支持された前記主筋を取り付ける主筋取り付け工程と、
前記主筋を保持する前記主筋保持部材を前記昇降装置によって上方に移動させる主筋移動工程と、を含み、
前記主筋移動工程では、前記主筋保持部材を上方へ移動させることで前記主筋を上方へ移動させるとともに、前記主筋に連結された複数の前記フープ筋をそれぞれ前記フープ筋の周方向に回転させることを特徴とする鉄筋籠組み立て方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋籠組み立て装置及び鉄筋籠組み立て方法に係り、特に、複数のフープ筋及び複数の主筋を有する鉄筋籠を組み立てるための鉄筋籠組み立て装置及び鉄筋籠組み立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、場所打ちコンクリート杭工法に用いられる鉄筋籠を組み立てる際には、環状の補強リングを設置する工程と、当該補強リングに長尺な主筋を所定の間隔を空けて複数固定する工程と、当該複数の主筋をせん断補強筋によって外側から巻き込む工程と、当該せん断補強筋の重なり部分をフレア溶接によって固定する工程と、を行う組み立て方法が一般的に採用されている。
そうしたなかで、上記鉄筋籠を効率良く組み立てるための鉄筋籠組み立て装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の鉄筋籠組み立て装置は、複数の環状のフープ筋を水平方向に所定の間隔を空けて並ぶように配置するフープ筋保持手段と、フープ筋保持手段によって保持された各フープ筋の外径よりも長い載置面を有し、各フープ筋の周面に沿って主筋を配置する主筋保持アームと、主筋保持アームを昇降させる主筋昇降手段と、を備えている。
上記構成により、主筋昇降手段によって主筋保持アームをフープ筋の最上部から最下部まで移動させることで、各フープ筋に対し主筋を順次取り付けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような鉄筋籠組み立て装置では、比較的大型な装置になってしまい、また複雑な装置になってしまう虞があった。例えば、フープ筋の周面に沿って主筋を順次取り付けるべく、フープ筋よりも長尺な主筋保持アームを昇降させる必要があったため大型かつ複雑な装置となっていた。また、フープ筋の周面に沿って間隔を空けて主筋を順次取り付ける必要があるため、作業者が移動しながら主筋を順次取り付けていく必要があった。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、シンプルな構造でありながら、鉄筋籠を効率良く組み立てることが可能な鉄筋籠組み立て装置及び鉄筋籠組み立て方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、鉄筋籠の組み立て作業の省力化、また鉄筋籠の品質向上を果たすことが可能な鉄筋籠組み立て装置及び鉄筋籠組み立て方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明の鉄筋籠組み立て装置によれば、複数の枠状のフープ筋と、前記フープ筋の周面に沿って取り付けられる長尺な複数の主筋と、を有する鉄筋籠を組み立てるための鉄筋籠組み立て装置であって、複数の前記フープ筋を水平方向に所定の間隔を空けて並ぶように位置決めし、位置決めされた複数の前記フープ筋をそれぞれ前記フープ筋の周方向に回転可能となるように保持するフープ筋保持部材と、前記フープ筋保持部材によって保持された複数の前記フープ筋の周面に前記主筋を取り付け可能な位置で、前記主筋を下方から支持する主筋受け部材と、前記主筋受け部材とは異なる位置に設けられ、前記主筋を保持する主筋保持部材と、前記主筋保持部材を上下方向に移動させる昇降装置と、を備えていること、により解決される。
上記構成により、シンプルな構造でありながら、鉄筋籠を効率良く組み立てることが可能な鉄筋籠組み立て装置を実現することができる。
詳しく述べると、鉄筋籠組み立て装置は、複数のフープ筋をそれぞれ周方向に回転可能となるように保持するフープ筋保持部材と、主筋受け部材と、主筋保持部材と、主筋保持部材を上下方向に移動させる昇降装置と、を兼ね備えている。そのため、例えば、フープ筋の周面に第1の主筋を取り付けた後に、第1の主筋を保持する主筋保持部材を上方へ移動させることで複数のフープ筋を周方向に回転させることができる。そして、第1の主筋を取り付けた位置と同じ位置においてフープ筋の周面に第2の主筋を取り付けることができる。これら組み立て作業を繰り返すことで、作業者が移動せずとも主筋取り付け作業(配筋作業)を行うことができる。すなわち、シンプルな構造でありながら、作業の省力化を果たし、鉄筋籠を効率良く組み立てることが可能となる。また、鉄筋籠組み立て装置の大型化を抑制することもできる。
【0008】
このとき、前記主筋保持部材は、前記主筋を保持する主筋保持部を有し、前記主筋保持部は、前記主筋保持部材の本体に対して、前記主筋を保持することが可能な保持位置と、前記主筋から離れた離間位置との間で移動するように取り付けられると良い。
上記構成により、主筋保持部材が、主筋を保持する「保持位置」と、主筋から離れた「離間位置」との間で移動することができる。そうすることで、主筋保持部材が、フープ筋の周面に沿って取り付けられる各主筋を順に保持することができ、主筋取り付け作業を効率良く行うことができる。
なお、主筋保持部材が、フープ筋に取り付けられた主筋を保持することで、フープ筋が意図せず回転してしまうこと(自転)を防止することができる。つまり、鉄筋籠組み立て装置が、フープ筋の自転を防止するブレーキングシステムを搭載している。
【0009】
このとき、前記主筋受け部材及び前記主筋保持部材とは異なる位置に設けられ、前記主筋を保持する第2主筋保持部材をさらに備え、前記主筋保持部材は、前記主筋受け部材よりも上方位置において前記フープ筋の周面に取り付けられた第1の主筋を保持し、前記第2主筋保持部材は、前記フープ筋の周面に取り付けられた第2の主筋を保持すると良い。
上記構成により、主筋保持部材及び第2主筋保持部材のどちらか一方が、フープ筋に取り付けられた主筋を常に保持しておくことができる。そうすることで、フープ筋が意図せず自転してしまうことを防止できる。
特に、フープ筋に対し一定数以上の主筋を取り付けたときに、フープ筋が周方向において主筋受け部材側とは反対側の向きへ自転してしまうことを防止できる。また、組み立て中の鉄筋籠が損傷することを抑制し、鉄筋籠の品質向上を図ることもできる。
【0010】
このとき、前記主筋受け部材は、前記主筋を支持する主筋受け部を有し、前記主筋受け部は、前記主筋受け部材の本体に対して、前記主筋を支持することが可能な支持位置と、前記主筋から離れた離間位置との間で移動するように取り付けられ、前記第2主筋保持部材は、前記主筋を保持する第2主筋保持部を有し、前記第2主筋保持部は、前記第2主筋保持部材の本体に対して、前記主筋を保持することが可能な保持位置と、前記主筋から離れた離間位置との間で移動するように取り付けられると良い。
上記構成により、主筋受け部が、「支持位置」と「離間位置」の間で移動することができる。そうすることで、例えば、鉄筋籠の組み立て作業が完了した後に、主筋受け部を「支持位置」から「離間位置」へ移動させることで、鉄筋籠をクレーン等の吊り上げ装置によって垂直に吊り上げることが容易になる。また、組み立てた鉄筋籠が意図せず損傷することを抑制し、鉄筋籠の品質向上を図ることもできる。
【0011】
このとき、前記フープ筋保持部材は、前記フープ筋を下方から保持する複数のフープ筋保持部を有し、複数の前記フープ筋保持部は、前記フープ筋保持部材の本体に対して上下方向に移動可能に取り付けられ、かつ、前記フープ筋保持部材の本体に対して、前記主筋の長尺方向及び上下方向それぞれと直交する方向に移動可能となるように取り付けられると良い。
上記構成により、鉄筋籠の大きさ、形状(フープ筋の大きさ、形状)に対応させて、フープ筋保持部の上下方向及び水平方向における位置を適宜調整することができる。そうすることで、フープ筋保持部が、大きさや形状の異なるフープ筋を好適に保持することができる。
【0012】
このとき、前記主筋の長尺方向において前記主筋受け部材よりも外側位置に設けられ、前記主筋受け部材によって支持された前記主筋の長尺方向の端面に当接することで、前記主筋の長尺方向における位置決めを行う位置決め部材をさらに備え、前記位置決め部材は、前記主筋受け部材の周辺位置に配置され、前記位置決め部材において前記主筋の端面に当接する当接面が、前記主筋の長尺方向及び上下方向それぞれと直交する方向において前記フープ筋保持部材よりも幅狭となるように形成されていると良い。
上記構成により、位置決め部材が主筋の長尺方向における位置決めを行うことができ、各フープ筋の周面における適切な位置に主筋を取り付けることができる。
また、各フープ筋を周方向に回転させることで、各フープ筋に対し常に同じ位置で新たな主筋を取り付ける構成となっている。そのため、コンパクトな位置決め部材にすることができる。言い換えれば、組み立て装置を主筋の長尺方向から見たときに、位置決め部材の当接面と、主筋受け部材に設置される主筋とが重なっていれば良いため、位置決め部材を小型化することができる。
【0013】
また前記課題は、上記鉄筋籠組み立て装置を用いた鉄筋籠組み立て方法であって、前記フープ筋保持部材上に複数の前記フープ筋を水平方向に所定の間隔を空けて並ぶように配置するフープ筋配置工程と、前記主筋受け部材上に前記主筋を配置する主筋配置工程と、前記フープ筋保持部材によって保持された複数の前記フープ筋の周面に、前記主筋受け部材によって支持された前記主筋を取り付ける主筋取り付け工程と、前記主筋を保持する前記主筋保持部材を前記昇降装置によって上方に移動させる主筋移動工程と、を含み、前記主筋移動工程では、前記主筋保持部材を上方へ移動させることで前記主筋を上方へ移動させるとともに、前記主筋に連結された複数の前記フープ筋をそれぞれ前記フープ筋の周方向に回転させること、によっても解決される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の鉄筋籠組み立て装置、鉄筋籠組み立て方法によれば、シンプルな構造でありながら、鉄筋籠を効率良く組み立てることが可能となる。
また、鉄筋籠の組み立て作業の省力化、鉄筋籠の品質向上を果たすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図3】フープ筋保持部材の斜視図であって、「基準位置」にいる状態を示す図である。
【
図4】フープ筋保持部材の斜視図であって、「移動位置」にいる状態を示す図である。
【
図5A】フープ筋保持部の正面図であって、フープ筋保持部がフープ筋を保持した状態を示す図である。
【
図6A】主筋受け部材、第2主筋保持部材の斜視図であって、それぞれ「離間位置」にいる状態を示す図である。
【
図6B】主筋受け部材、第2主筋保持部材の斜視図であって、それぞれ「受け位置」、「保持位置」にいる状態を示す図である。
【
図7A】主筋保持部材、昇降装置の斜視図であって、主筋保持部材が「保持位置」にいる状態を示す図である。
【
図7B】主筋保持部材、昇降装置の斜視図であって、昇降装置が動作した状態を示す図である。
【
図8A】鉄筋籠の組み立て方法を説明する図である(その1)。
【
図8B】鉄筋籠の組み立て方法を説明する図である(その2)。
【
図8C】鉄筋籠の組み立て方法を説明する図である(その3)。
【
図8D】鉄筋籠の組み立て方法を説明する図である(その4)。
【
図10】第2主筋保持部材の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態について
図1~
図10を参照して説明する。
本実施形態は、複数のフープ筋及び複数の主筋を有する鉄筋籠を組み立てる鉄筋籠組み立て装置であって、複数のフープ筋を水平方向に間隔を空けて並ぶように位置決めし、位置決めされた複数のフープ筋をそれぞれ周方向に回転可能となるように保持するフープ筋保持部材と、複数のフープ筋の周面に主筋を取り付け可能な位置で、主筋を下方から支持する主筋受け部材と、主筋受け部材とは異なる位置に設けられ、主筋を保持する主筋保持部材と、主筋保持部材を上下方向に移動させる昇降装置と、を備えていることを主な特徴とする「鉄筋籠組み立て装置」の発明に関するものである。
また、当該鉄筋籠組み立て装置を用いた「鉄筋籠組み立て方法」の発明に関するものである。
【0017】
<鉄筋籠組み立て装置>
本実施形態の鉄筋籠組み立て装置1は、
図1に示すように、複数のフープ筋B1及び複数の主筋B2を有する鉄筋籠Bを組み立てる際に用いられる組み立て装置である。例えば、場所打ちコンクリート杭工法に使用される鉄筋籠Bを組み立てる際に用いられるものであえる。
具体的には、鉄筋籠組み立て装置1は、複数の主筋B2を保管し、主筋B2を水平方向へ送り出すことが可能な送り出しテーブル10と、送り出しテーブル10に隣接して配置され、複数のフープ筋B1を水平方向に間隔を空けて並ぶように保持するフープ筋保持部材20と、フープ筋保持部材20の幅方向の端部に間隔を空けて取り付けられる複数の支柱30と、各支柱30にそれぞれ取り付けられ、各フープ筋B1の周面に主筋B2を取り付け可能な位置で、主筋B2を支持する主筋受け部材40と、主筋B2を保持する主筋保持部材50及び第2主筋保持部材70と、主筋保持部材50を上下方向に移動させる昇降装置60と、を備えている。
また、鉄筋籠組み立て装置1は、支柱30に取り付けられ、送り出しテーブル10より送り出された主筋B2の位置決めを行う板状の位置決め部材80をさらに備えている。
【0018】
先に鉄筋籠Bについて説明すると、鉄筋籠Bは、
図2に示すように、複数の環状のフープ筋B1と、各フープ筋B1の周面に沿って間隔を空けて取り付けられる長尺な複数の主筋B2と、から主に構成されている。
フープ筋B1は、溶接閉鎖型せん断補強筋(帯筋)とも称され、例えば電気抵抗溶接等によって閉合された環状(円状)の鉄筋である。フープ筋B1は、円状の鉄筋に限定されるものではなく、楕円状、四角形状、その他多角形状等の枠状の鉄筋であっても良い。
フープ筋B1は、フープ筋B1の軸方向に沿って所定の間隔を空けて並ぶように複数配置されている。
なお、フープ筋B1は、せん断補強筋をスパイラル状に巻き、当該せん断補強筋の重なり部分(ラップ部分)をフレア溶接によって固定した鉄筋とは異なるものである。
【0019】
主筋B2は、フープ筋B1の軸方向に沿って長尺に延びている棒状の鉄筋である。
主筋B2は、各フープ筋B1の周面(内周面)に沿って所定の間隔を空けて複数配置され、それぞれ各フープ筋B1の内周面に結束されている。
なお、鉄筋籠Bは、フープ筋B1及び主筋B2のほか、環状の補強リングをさらに備えていても良い。
【0020】
鉄筋籠B(フープ筋B1、主筋B2)の仕様としては、例えば以下の通りである。なお、下記仕様に特に限定されるものではない。
フープ筋の加工直径:60cm~300cm
フープ筋の径 :6mm~41mm
フープ筋の降伏強度(0.2%耐力):295KN/mm2~1275KN/mm2
主筋の長さ :1m~15m
主筋の径 :16mm~51mm
主筋の降伏強度(0.2%耐力):345KN/mm2~1275KN/mm2
フープ筋に対する主筋のピッチ:100mm~150mm
フープ筋に対する主筋の最大本数 :88本
【0021】
送り出しテーブル10は、
図1に示すように、複数の主筋B2を保管しておくとともに、主筋B2を主筋受け部材40に向けて送り出すための作業テーブルである。
具体的には、送り出しテーブル10は、テーブル本体11と、テーブル本体11に載置された主筋B2を水平方向へ送り出す送りローラ12(回転ローラ)と、を備えている。
【0022】
フープ筋保持部材20は、
図1、
図3、
図4に示すように、複数のフープ筋B1を水平方向に間隔を空けて並ぶように位置決めし、位置決めされた複数のフープ筋B1をそれぞれフープ筋B1の周方向に回転可能となるように保持する保持架台である。
具体的には、フープ筋保持部材20は、鉄筋籠B(主筋B2)の長尺方向に沿って長尺に延びている固定フレーム21と、固定フレーム21上に取り付けられる移動フレーム22と、固定フレーム21に対し移動フレーム22を上下方向に移動させるハイトリンク装置23と、移動フレーム22上に取り付けられ、フープ筋B1を保持するフープ筋保持部24と、移動フレーム22に対しフープ筋保持部24を鉄筋籠Bの幅方向(短尺方向)に移動させるレール装置25と、を備えている。
【0023】
ハイトリンク装置23は、
図3、
図4に示すように、パンタグラフ機構(平行リンク機構)を有し、固定フレーム21に対し移動フレーム22を上下方向に移動させるとともに、移動フレーム22をロックすることが可能な装置である。
レール装置25は、移動フレーム22に取り付けられ、フープ筋保持部材20の幅方向に沿って延びている固定レール25aと、固定レール25aに対し摺動可能に支持されるスライダー25b、25cと、固定レール25aに対してスライダー25b、25cを摺動不能にロックする不図示のロック部材と、当該ロック部材のロック状態を解除するための不図示の操作レバーと、を備えている。
【0024】
固定レール25aは、フープ筋保持部材20の長さ方向に間隔を空けて複数配置されており、本実施形態では4つの固定レール25aが移動フレーム22の内部に取り付けられている。
スライダー25b、25cも同様に、フープ筋保持部材20の長さ方向に所定の間隔を空けて複数配置されており、それぞれ固定レール25aに支持されている。
詳しく述べると、スライダー25b、25cは、移動フレーム22の上面に形成された開口穴を通じて移動フレーム22内に設けられた固定レール25aに支持されている。
第1スライダー25b、第2スライダー25cは、フープ筋保持部材20の幅方向において一対となるように配置され、それぞれ独立して固定レール25a上をスライド移動することができる。
【0025】
なお、フープ筋保持部材20の長さ方向の外側に位置するスライダー25b、25cは、スライダー本体と、スライダー本体上に取り付けられ、フープ筋保持部材を軸支する回転軸25dと、を有している。
一方で、フープ筋保持部材20の長さ方向の中央側に位置するスライダー25b、25cは、スライダー本体と、スライダー本体に軸支される一対の回転ローラ25eと、を有している。
スライダー25b、25cは、回転軸25d及び回転ローラ25eを介してフープ筋保持部24を回転可能となるように支持している。
【0026】
フープ筋保持部24は、
図3~
図5A、Bに示すように、フープ筋保持部材20の長さ方向に長尺に延びており、各フープ筋B1を下方から支持する棒状の保持部材である。
フープ筋保持部24は、固定フレーム21(移動フレーム22)上に取り付けられる第1フープ筋保持部24A及び第2フープ筋保持部24Bと、支柱30の上方部分にブラケット31を介して取り付けられる第3フープ筋保持部24Cと、を有している。
フープ筋保持部24A、24B、24Cは、それぞれの中心軸を中心として固定フレーム21、支柱30に対して回転可能となるように取り付けられている。
つまり、フープ筋保持部24は、フープ筋B1をフープ筋B1の周方向に沿って回転可能となるように保持することができる。
【0027】
なお、フープ筋保持部24A、24B、24Cは、それぞれの中心軸を中心として自由に回転することとしているが、不図示の駆動モータによって駆動制御されて回転することとしても良い。
【0028】
フープ筋保持部24は、その延出方向において交互に隣接して並ぶように形成された複数の凸部24a及び凹部24bを有しており、凸部24a及び凹部24bによって蛇腹形状を有している。言い換えれば、そろばん珠が連続して並ぶそろばん珠形状を有している。
凸部24a、凹部24bは、それぞれフープ筋保持部24の外面にV字形状の凸部(突起部)、逆V字形状の凹部(溝部)として形成されている。
上記構成において、
図5A、Bに示すように、フープ筋B1が凹部24b上に入り込み、当該凹部24bの両隣に位置する凸部24aによって挟まれた状態となってフープ筋保持部24に保持される。
そうすることで、フープ筋保持部24が、フープ筋B1を好適に位置決めすることができ、かつ、フープ筋B1を回転可能となるように保持することができる。
フープ筋保持部24は、各フープ筋B1を位置決めし、フープ筋B1間のピッチを定めることから、フープ筋ピッチローラとも称される。
【0029】
また上記構成において
図3、
図4に示すように、フープ筋保持部材20が、フープ筋保持部材20の本体に対して上下方向に移動可能に取り付けられ、かつ、主筋B2の長尺方向及び上下方向それぞれと直交する方向に移動可能に取り付けられる。
具体的には、フープ筋保持部材20が、ハイトリンク装置23及びレール装置25によって、フープ筋保持部24の上下方向の位置及び水平方向の位置を変更することができる。
そのため、フープ筋B1の大きさ、形状に合わせてフープ筋保持部24の位置を適宜調整することができ、種々の大きさ、形状の鉄筋籠Bを容易に組み立てることが可能となる。
【0030】
支柱30は、
図1に示すように、フープ筋保持部材20(固定フレーム21)の幅方向の一端部に取り付けられており、フープ筋保持部材20の長さ方向に間隔を空けて複数配置されている。
図6Aに示すように、支柱30の外側面のうち、送り出しテーブル10側とは反対側の外側面には、主筋受け部材40、第2主筋保持部材70及び位置決め部材80が取り付けられている。
また
図7Aに示すように、支柱30の外側面のうち、送り出しテーブル10側の外側面には、主筋保持部材50及び昇降装置60が取り付けられている。
【0031】
主筋受け部材40は、
図6A、Bに示すように、フープ筋保持部材20によって保持された複数のフープ筋B1の内周面の所定位置に主筋B2を取り付けるために、当該所定位置において主筋B2を下方から支持する部材である。
具体的には、主筋受け部材40は、支柱30の外側面に取り付けられ、支柱30からフープ筋保持部材20側へ水平に延びている固定レール41と、固定レール41に対しスライド移動可能に支持される支持レール42と、支持レール42上に配置され、支持レールに対し回転可能に取り付けられる主筋受けローラ43(主筋受け部)と、を有している。
また、主筋受け部材40は、支柱30の外側面に取り付けられる駆動部材44(駆動シリンダ)と、駆動部材44の先端部に取り付けられ、固定レール41を貫通し、支持レール42に連結される可動ブレード45(可動体)と、をさらに有している。
【0032】
駆動部材44は、例えば駆動シリンダであって、不図示の油圧ポンプから作動油を流入及び流出させることで、シリンダ本体に対しピストンロッド44aを伸縮動作させるものである。
なお、駆動部材44は、油圧シリンダに限定されず、油圧シリンダ以外の油圧アクチュエータであっても良い。あるいは、油圧アクチュエータに限定されることなく、主筋受けローラ43を水平方向に移動させることが可能な駆動部材であれば良い。
可動ブレード45は、駆動部材44の駆動動作に伴って水平方向に移動する可動体であって、固定レール41を貫通し、支持レール42と連結されている。
詳しく述べると、固定レール41の底面には、固定レール41の長さ方向に沿って形成された長尺な貫通溝が形成されている。可動ブレード45は、固定レール41の底面を貫通し、固定レールに沿って支持レール42とともに移動することができる。
【0033】
上記構成により、
図6A、Bに示すように、主筋受けローラ43は、主筋保持部材50の本体に対して、主筋B2から離れた「離間位置」と、主筋B2を受けることが可能な「受け位置」との間で移動することができる。
そうすることで、鉄筋籠Bの組み立て作業が完了した後に、主筋受けローラ43を「支持位置」から「離間位置」へ移動させることで、鉄筋籠Bをクレーン等の吊り上げ装置によって垂直に吊り上げることが容易になる。
【0034】
主筋保持部材50は、
図7Aに示すように、支柱30の外側面において主筋受け部材40とは異なる位置に設けられ、主筋B2を保持する部材である。
主筋保持部材50は、主筋受け部材40よりもやや上方に配置されており、主筋B2の長尺方向において主筋受け部材40よりも中央側に配置されている。
【0035】
具体的には、主筋保持部材50は、支柱30の外側面に配置される駆動部材51(駆動シリンダ)と、駆動部材51の先端部に取り付けられ、主筋B2を外側から挟み込むU字形状の主筋保持部52と、を有している。
駆動部材51は、駆動シリンダであって、駆動部材の本体に対し、ピストンロッド51aを伸縮動作させるものである。
主筋保持部52は、ピストンロッド51aの先端部に取り付けられ、上下方向に長尺な本体壁部52aと、本体壁部52aの上下方向の両端部からそれぞれ突出し、上下方向において主筋B2を挟持する突出壁部52b、52cと、を有している。
【0036】
上記構成により、
図7Aに示すように、主筋保持部52は、主筋保持部材50の本体に対して、主筋B2から離れた「離間位置」と、主筋B2を保持することが可能な「保持位置」との間で移動することができる。
【0037】
昇降装置60は、
図7A、Bに示すように、支柱30の外側面に取り付けられ、主筋保持部材50を下方から支持する位置に配置され、主筋保持部材50を上下移動可能となるように支持するものである。
具体的には、昇降装置60は、支柱30の外側面に不図示のブラケットを介して取り付けられる駆動部材61(駆動シリンダ)と、駆動部材61の先端部に取り付けられ、主筋保持部材50を支持する支持部材62と、を有している。
駆動部材61は、駆動シリンダであるが、特に限定されることなく、主筋保持部材50を上下方向に移動させることが可能な駆動部材であれば良い。
支持部材62は、ピストンロッド61aの先端部に取り付けられ、主筋保持部材50の長さ方向に沿って長尺に延びている。
【0038】
上記構成により、昇降装置60は、主筋保持部52を
図7Aに示す「基準位置」と、基準位置よりも上方へ移動させた
図7Bに示す「移動位置」との間で移動させることができる。
このとき、主筋保持部材50が主筋B2を保持した状態であって、主筋B2がフープ筋B1に取り付けられた状態の場合には、
図7Bに示すように、主筋保持部材50の上方移動に伴って、主筋B2及びフープ筋B1がフープ筋B1の周方向に沿って回転移動することになる。
【0039】
第2主筋保持部材70は、
図6A、Bに示すように、支柱30の外側面において主筋受け部材40及び主筋保持部材50とは異なる位置に設けられ、主筋B2を保持する部材である。
詳しく述べると、第2主筋保持部材70は、主筋受け部材40よりもやや上方に配置され、主筋B2の長尺方向において主筋受け部材40よりもやや中央側に配置されている。
また、第2主筋保持部材70は、主筋保持部材50と同じ高さ位置に配置され、主筋B2の長尺方向において主筋保持部材50よりも外側に配置されている。
【0040】
第2主筋保持部材70は、主筋保持部材50と同様の構成であって、駆動部材71と、U字形状の第2主筋保持部72と、を有している。
第2主筋保持部72は、
図6A、Bに示すように、第2主筋保持部材70の本体に対して、主筋B2から離れた「離間位置」と、主筋B2を保持することが可能な「保持位置」との間で移動することができる。
【0041】
位置決め部材80は、
図1、
図6A、Bに示すように、主筋B2の長尺方向において主筋受け部材40よりも外側位置に設けられ、主筋受け部材40によって支持された主筋B2の長尺方向の端面に当接することで、主筋B2の長尺方向における位置決めを行う部材である。
位置決め部材80は、矩形板状の位置決め板であって、支柱30の外側面に不図示のブラケットを介して取り付けられている。
つまり、位置決め部材80の当接面81は、主筋B2の長尺方向において支柱30から一定の間隔を空けた(一定の距離だけ離れた)位置に配置されている。
位置決め部材80の当接面81に主筋B2を当接させることで、各フープ筋B1の周面における適切な位置に主筋B2を結束させることができる。
【0042】
上記構成において、
図1に示すように、位置決め部材80は、主筋受け部材40の周辺位置に配置されている。当接面81の上下方向の長さは、支柱30の長さよりも小さくなるように形成されている。また当接面81は、フープ筋保持部材20の幅方向においてフープ筋保持部材よりも幅狭となるように形成されている。
つまり、位置決め部材80(当接面81)は、比較的コンパクトな大きさとなっている。
そうすることで、鉄筋籠組み立て装置1の大きさを小型化することができる。
【0043】
なお、位置決め部材80は、支柱30に対して主筋B2の長尺方向に可動することが可能な可動式の位置決め部材であっても良い。そうすることで、主筋B2の位置をより正確に決定することが可能となる。
【0044】
上記鉄筋籠組み立て装置1であれば、
図7Bに示すように、フープ筋B1の周面に第1の主筋B2を取り付けた後に、第1の主筋B2を保持する主筋保持部材50を上方移動させることで複数のフープ筋B1を回転させることができる。そして、第1の主筋B2を取り付けた位置と同じ高さ位置でフープ筋B1の周面に第2の主筋B2を取り付けることができる。これら組み立て作業を繰り返すことで、作業者(配筋工)が移動せずとも主筋取り付け作業(配筋作業)を行うことができる。すなわち、配筋工が常に作業し易い高さ位置で配筋作業を行うことができる。
また、例えばロボットを複数設置することで、フープ筋B1及び主筋B2の配筋作業を自動化することもできる。
このようにシンプルな構造でありながら、作業の省力化を果たし、鉄筋籠Bを効率良く組み立てることが可能な鉄筋籠組み立て装置1を実現することができる。
【0045】
<鉄筋籠組み立て方法>
次に、鉄筋籠組み立て装置1を用いた鉄筋籠組み立て方法について、
図8A~
図8Dに基づいて順に説明する。
図8A~
図8Dに示す組み立て(1)~組み立て(16)は、鉄筋籠組み立て方法の一連の作業の流れを説明するものである。
なお、組み立て(1)~組み立て(16)において、主筋B2の白塗りは、主筋B2がフープ筋B1に結束されていない「非取り付け状態」であることを意味する。また、主筋B2の黒塗りは、主筋B2がフープ筋B1に結束された「取り付け状態」であることを意味する。
【0046】
図8Aに示す組み立て(1)では、フープ筋保持部材20上に複数のフープ筋B1を水平方向に所定の間隔を空けて並ぶように配置し、主筋受け部材40上に第1の主筋B2を配置した状態を示している。また、フープ筋B1の内周面に第1の主筋B2を取り付けた状態を示している。
なお、フープ筋保持部材20については図示を省略している。
【0047】
続いて組み立て(2)では、主筋保持部52が、主筋B2から離れた「離間位置」から主筋B2を保持可能な「保持位置」まで水平移動し、主筋受け部材40上に載置された第1の主筋B2を保持した状態を示している。
組み立て(3)では、昇降装置60が、主筋保持部材50を「基準位置」から「移動位置」へ上方移動させた状態を示している。また、主筋受け部材40上に第2の主筋B2を配置した状態を示している。
このとき、主筋保持部材50が主筋B2を保持し、主筋B2がフープ筋B1に取り付けられた状態となっている。そのため、主筋保持部材50の上方移動に伴って、主筋B2及びフープ筋B1がフープ筋B1の周方向に沿って回転移動する。
組み立て(4)では、回転後のフープ筋B1の内周面に第2の主筋B2を取り付けた状態を示している。
【0048】
続いて
図8Bに示す組み立て(5)では、主筋保持部52が、「保持位置」から「離間位置」まで水平移動し、第1の主筋B2から離れた状態を示している。
このとき、主筋受け部材40が、取り付け状態の第2の主筋B2を支持しているため、フープ筋B1が自転してしまうことはない。
組み立て(6)では、昇降装置60が、主筋保持部材50を「移動位置」から「基準位置」へ下方移動させた状態を示している。
組み立て(7)では、主筋保持部52が、「離間位置」から「保持位置」まで水平移動し、主筋受け部材40上に載置された第2の主筋B2を保持した状態を示している。
組み立て(8)では、昇降装置60が、主筋保持部材50を「基準位置」から「移動位置」へ上方移動させた状態を示している。また、主筋受け部材40上に第3の主筋B2を配置した状態を示している。
このようにして、フープ筋B1を周方向に回転させながら、フープ筋B1の内周面に第4の主筋B2、第5の主筋B2を取り付けていく。
【0049】
続いて
図8Cに示す組み立て(9)では、昇降装置60が、第5の主筋B2を保持した主筋保持部材50を「基準位置」から「移動位置」へ上方移動させた状態を示している。また、主筋受け部材40上に第6の主筋B2を配置した状態を示している。
組み立て(10)では、回転後のフープ筋B1の内周面に第6の主筋B2を取り付けた状態を示している。また、第2主筋保持部72が、「保持位置」から「離間位置」まで水平移動し、第6の主筋B2を保持した状態を示している。
【0050】
続いて組み立て(11)では、主筋保持部52が、「保持位置」から「離間位置」まで水平移動し、第5の主筋B2から離れた状態を示している。
このとき、第2主筋保持部材70が、取り付け状態の第6の主筋B2を保持しているため、フープ筋B1が自転してしまうことはない。
仮に第2主筋保持部材70が第6の主筋B2を保持していない場合には、フープ筋B1が周方向において主筋受け部材40側とは反対側の向き(図面視において反時計回りの向き)へ自転してしまう。そのため、フープ筋B1に対し一定数以上の主筋B2を取り付けた場合には、主筋保持部材50、第2主筋保持部材70のどちらか一方が、主筋B2を常に保持しておく必要がある。
組み立て(12)では、昇降装置60が、主筋保持部材50を「移動位置」から「基準位置」へ下方移動させた状態を示している。
【0051】
続いて組み立て(13)では、主筋保持部52が、「保持位置」から「離間位置」まで水平移動し、第6の主筋B2を保持した状態を示している。また、第2主筋保持部72が、「保持位置」から「離間位置」まで水平移動し、第6の主筋B2から離れた状態を示している。
つまり、第6の主筋B2を保持する保持部材が、主筋保持部材50と第2主筋保持部材70の間で切り替わっている。
組み立て(14)では、昇降装置60が、第6の主筋B2を保持した主筋保持部材50を「基準位置」から「移動位置」へ上方移動させた状態を示している。また、主筋受け部材40上に第7の主筋B2を配置した状態を示している。
このようにして、主筋保持部材50、第2主筋保持部材70のどちらか一方が主筋B2を常に保持しながら、フープ筋B1を周方向に回転させてフープ筋B1の内周面に新たな主筋B2を取り付けていく。
【0052】
続いて組み立て(15)では、昇降装置60が、第9の主筋B2を保持した主筋保持部材50を「基準位置」から「移動位置」へ上方移動させた状態を示している。また、主筋受け部材40上に最後となる第10の主筋B2を配置した状態を示している。
組み立て(16)では、フープ筋B1の内周面に最後となる第10の主筋B2を取り付けた状態を示している。また、主筋保持部52が「保持位置」から「離間位置」まで水平移動し、かつ、主筋受けローラ43が「受け位置」から「離間位置」へ水平移動した状態を示している。
このようにして、鉄筋籠Bの組み立て作業を完了させ、完成した鉄筋籠Bをクレーン等の吊り上げ装置によって上方へ吊り上げることとなる。
【0053】
次に、鉄筋籠組み立て方法の作業工程について
図9に基づいて説明する。
まずは、
図9に示すように、作業者が、フープ筋保持部材20上に複数のフープ筋B1を水平方向に所定の間隔を空けて並ぶように配置する「フープ筋配置工程」(ステップS1)から始まる。
【0054】
その後、作業者が、主筋受け部材40上に主筋B2を配置する「主筋配置工程」を行い(ステップS2)、さらにフープ筋保持部材20によって保持された各フープ筋B1の内周面に、主筋受け部材40によって支持された主筋B2を取り付ける「主筋取り付け工程」を行う(ステップS3)。
【0055】
その後、作業者が、主筋B2を保持する主筋保持部材50を昇降装置60によって上方へ移動させる「主筋移動工程」を行う(ステップS4)。
当該「主筋移動工程」では、主筋保持部材50を上方移動させることで主筋B2を上方へ移動させるとともに、主筋B2に連結された各フープ筋B1をフープ筋B1の周方向に回転させることとなる。
【0056】
その後、作業者が、主筋受け部材40上に新たな主筋B2を配置する「第2主筋配置工程」を行い(ステップS5)、さらに各フープ筋B1の内周面に、主筋受け部材40によって支持された新たな主筋B2を取り付ける「第2主筋取り付け工程」を行う(ステップS6)。
このようにして、作業者が、各フープ筋B1を周方向へ回転させながら、各フープ筋B1の内周面に新たな主筋B2を順に取り付ける作業を行う。
【0057】
その後、作業者が、各フープ筋B1の内周面に全ての主筋B2を取り付ける作業を終えた場合には(ステップS7:Yes)、一連の作業工程を終了する。
一方で、作業者が、各フープ筋B1の内周面に全ての主筋B2を取り付ける作業を終えていない場合には(ステップS7:Nо)、主筋B2を保持する主筋保持部材50を昇降装置60によって上方移動させる「第2主筋移動工程」を行い(ステップS8)、ステップS5に戻る。つまり、作業者が、各フープ筋B1の内周面に残りの主筋B2を取り付ける作業を行う。
【0058】
上記鉄筋籠組み立て方法であれば、従来の場所打ちコンクリート杭の組み立て方法と比較して、大型のクレーンを使用することなく、鉄筋籠Bを効率良く組み立てることができる。また、作業員の省力化を果たすことができる。
さらには、大型トラックが作業現場へ進入できない敷地環境であっても、作業現場で鉄筋籠組み立て装置1を利用し、鉄筋籠Bを組み立てることが可能となる。
【0059】
また上記鉄筋籠組み立て方法であれば、作業現場又は工場でフレア溶接を用いることがなく、溶接閉鎖型せん断補強筋を用いた鉄筋籠Bを好適に組み立てることができ、鉄筋籠Bの品質向上を確保できる。また、建設予定地の立地条件、道路条件、そして施工条件に対応させた工場内での加工作業が容易になる。
【0060】
また、高強度の鉄筋を用いることで、JIS鉄筋よりも鉄筋配筋比を落とすことなく、高耐力、高靭性の杭部材を実現することができる。また、近年の主筋の太径化、高強度化に対応して高強度のせん断補強筋を採用することで、部材間のバランスを図ることもできる。
【0061】
なお、鉄筋籠Bの組み立て作業にあたっては、溶接閉鎖型せん断補強筋を用いるため、原則として工場内での組み立て作業が中心となる。高強度のせん断補強筋鉄筋を用いることで、例えば杭径が大型化した場合であっても、組み立て時の円形を保持し易くなり、鉄筋籠Bの重量低減化を図ることができる。場所打ちコンクリート杭の工事自体の施工性を向上させることもできる。
【0062】
<その他の実施形態>
上記実施形態では、
図6A、Bに示すように、第2主筋保持部材70が水平方向に沿って配置され、第2主筋保持部72が「離間位置」と「保持位置」との間で水平移動するものであったが、特に限定されるものではない。
例えば
図10に示すように、第2主筋保持部材70が傾斜方向(斜め下方向)に沿って配置され、第2主筋保持部72が「離間位置」から「保持位置」へ斜め下向きに移動するものであっても良い。
また例えば、第2主筋保持部材70が傾斜方向(斜め上方向)に沿って配置され、第2主筋保持部72が「離間位置」から「保持位置」へ斜め上向きに移動するものであっても良い。
なお、主筋保持部材50についても同様の構成になっていても良い。
【0063】
上記実施形態では、
図6A、B、
図7A、Bに示すように、主筋保持部材50(第2主筋保持部材70)が、U字形状の主筋保持部52(第2主筋保持部72)を有しているが、特に限定されるものではない。
例えば、主筋保持部52(第2主筋保持部72)がY字形状を有していても良い。あるいは、主筋B2を挟持可能な形状であれば種々の形状を有していても良い。
【0064】
上記実施形態では、
図7Bに示すように、主筋保持部材50が上下方向に移動可能となっているが、主筋保持部材50だけでなく、第2主筋保持部材70も同様に上下方向に移動可能となっていても良い。
また、第1フープ筋保持部24A、第2フープ筋保持部24Bが上下方向に移動可能となっているが、第3フープ筋保持部24Cも同様に上下方向に移動可能となっていても良い。
【0065】
上記実施形態では、
図6A、Bに示すように、主筋受けローラ43が、「離間位置」と「受け位置」との間で水平移動できるが、特に限定されず、主筋受けローラ43が移動できなくても良い。
その場合には、支柱30又はフープ筋保持部材20が鉄筋籠Bに対して水平移動可能な機構を有していると良い。あるいは、鉄筋籠組み立て装置1が水平移動可能な機構を有していると良い。
そうすることで、完成した鉄筋籠Bをクレーン等の吊り上げ装置によって垂直に吊り上げることが容易になる。
【0066】
上記実施形態では、フープ筋B1が溶接閉鎖型のせん断補強筋であるところ、当該フープ筋B1の溶接瘤が幾分大きくなると、フープ筋保持部材20がフープ筋B1を回転可能となるように好適に保持できない場合がある。
そのため、好ましくは、上記溶接瘤が削り取られたフープ筋B1を用いると良い。
あるいは、フープ筋B1が周方向に回転するときに、フープ筋B1の溶接瘤と、フープ筋保持部24とが当接するタイミングで、フープ筋保持部材20(ハイトリンク装置23)によってフープ筋保持部24を昇降させて、フープ筋保持部24が上記溶接瘤を乗り越えるように制御しても良い。
【0067】
上記実施形態では、主として本発明に係る鉄筋籠組み立て装置及び鉄筋籠組み立て方法に関して説明した。
ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0068】
B 鉄筋籠
B1 フープ筋
B2 主筋
1 鉄筋籠組み立て装置
10 送り出しテーブル
11 テーブル本体
12 送りローラ(回転ローラ)
20 フープ筋保持部材
21 固定フレーム
22 移動フレーム
23 ハイトリンク装置
24、24A~24C フープ筋保持部、第1~第3フープ筋保持部
24a 凸部
24b 凹部
25 レール装置
25a 固定レール
25b 第1スライダー
25c 第2スライダー
25d 回転軸
25e 回転ローラ
30 支柱
31 ブラケット
40 主筋受け部材
41 固定レール
42 支持レール
43 主筋受けローラ(主筋受け部)
44 駆動部材(駆動シリンダ)
44a ピストンロッド
45 可動ブレード(可動体)
50 主筋保持部材
51 駆動部材
51a ピストンロッド
52 主筋保持部
52a 本体壁部
52b、52c 突出壁部
60 昇降装置
61 駆動部材
61a ピストンロッド
62 支持部材
70 第2主筋保持部材
71 駆動部材
72 第2主筋保持部
80 位置決め部材(位置決め板)
81 当接面