(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091544
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】ポリシロキサン系樹脂およびその利用
(51)【国際特許分類】
C08G 77/442 20060101AFI20230623BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
C08G77/442
C08F290/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206342
(22)【出願日】2021-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】横井 宙是
【テーマコード(参考)】
4J127
4J246
【Fターム(参考)】
4J127AA03
4J127BA151
4J127BB041
4J127BB091
4J127BB151
4J127BC051
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4J246FC091
4J246FC211
4J246HA57
(57)【要約】
【課題】可撓性および耐候性に優れる硬化物を提供し得る、ポリシロキサン系樹脂を提供する。
【解決手段】特定のシラン化合物(A)に由来する構成単位(a)と、両末端に加水分解性シリル基を有する重合体(B)に由来する構成単位(b)と、を含む、ポリシロキサン系樹脂。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I):
R1
n-Si-(OR2)4-n ・・・(I)
(式中、R1は、それぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基、または非置換もしくは置換アリール基であり、R2は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1~10のアルキル基であり、nは、0~3の整数である。)で示されるシラン化合物(A)に由来する構成単位(a)と、
両末端に加水分解性シリル基を有する重合体(B)に由来する構成単位(b)と、
を含む、ポリシロキサン系樹脂。
【請求項2】
前記重合体(B)の主鎖が、ポリアルキレンオキサイド重合体、ポリ(メタ)アクリル重合体、およびポリイソブチレン重合体からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のポリシロキサン系樹脂。
【請求項3】
さらに、ラジカル重合性不飽和基および加水分解性シリル基を有するシラン化合物(C)に由来する構成単位(c)と、
ラジカル重合性不飽和基を有し、かつ、加水分解性シリル基を有さない単量体(D)に由来する構成単位(d)と、
を含む、請求項1または2に記載のポリシロキサン系樹脂。
【請求項4】
前記単量体(D)が、酸と塩基からなる塩構造を有する単量体を含む、請求項3に記載のポリシロキサン系樹脂。
【請求項5】
前記構成単位(a)、構成単位(b)、構成単位(c)および構成単位(d)の合計量を100重量%とした場合、前記構成単位(a)が10~90重量%、前記構成単位(b)が1~10重量%、前記構成単位(c)が1~10重量%、前記構成単位(d)が5~85重量%である、請求項3または4に記載のポリシロキサン系樹脂。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のポリシロキサン系樹脂を含み、
前記ポリシロキサン系樹脂が、水に均一に分散または可溶な状態となっている水溶液。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載のポリシロキサン系樹脂を含む、塗料。
【請求項8】
下記一般式(I):
R1
n-Si-(OR2)4-n ・・・(I)
(式中、R1は、それぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基、または非置換もしくは置換アリール基であり、R2は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1~10のアルキル基であり、nは、0~3の整数である。)で示されるシラン化合物(A)と、
両末端に加水分解性シリル基を有する重合体(B)と、を縮合する縮合工程を含む、ポリシロキサン系樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記縮合工程は、前記シラン化合物(A)および前記重合体(B)と、さらに、ラジカル重合性不飽和基および加水分解性シリル基を有するシラン化合物(C)と、を縮合する工程である、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記縮合工程の後に、ラジカル重合性不飽和基を有し、かつ、加水分解性シリル基を有さない単量体(D)を添加し、ラジカル重合を行うラジカル重合工程を含む、請求項8または9に記載の製造方法。
【請求項11】
請求項1~5のいずれか1項に記載のポリシロキサン系樹脂を、水に分散、乳化、または溶解する工程を含む、ポリシロキサン系樹脂を含む水溶液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリシロキサン系樹脂およびその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリシロキサン系樹脂のような無機的な性質を有する樹脂に対し、有機的な性質を有するアクリル等をグラフトしたポリシロキサン樹脂(ポリシロキサン系樹脂)は、無機・有機ハイブリッド樹脂として興味深い特性があることから、産業的に注目されている。
【0003】
ポリシロキサン系樹脂は、高い耐久性を示す硬化物(塗膜)が得られることが知られており、コーティング剤、建築用シーリング材、接着剤、塗料等の広範な用途に使用されている。なかでも、塗料の分野において、ポリシロキサン系樹脂を含む水系塗料は、人体や環境に対して悪影響が少ないことから、市場への普及が進んでおり、様々な用途でのニーズが高まっている。
【0004】
このようなポリシロキサン系樹脂として、特許文献1には、ポリシロキサンと、アクリルシリコンと、を含むポリシロキサン系樹脂が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2017/169459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した技術は優れたものであるが、ポリシロキサン系樹脂を硬化させて得られる硬化物(硬化膜)の可撓性および耐候性の観点からさらなる改善の余地がある。
【0007】
そこで、本発明の一態様は、可撓性および耐候性に優れる硬化物を提供し得る、ポリシロキサン系樹脂を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、シラン系化合物に由来する構成単位と、両末端に加水分解性シリル基を有する重合体に由来する構成単位と、を含むポリシロキサン系樹脂によれば、可撓性および耐候性に優れる硬化物を提供できることを初めて見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
したがって、本発明の一態様は、下記一般式(I):
R1
n-Si-(OR2)4-n・・・(I)
(式中、R1は、それぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基、または非置換もしくは置換アリール基であり、R2は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1~10のアルキル基であり、nは、0~3の整数である。)で示されるシラン化合物(A)に由来する構成単位(a)と、両末端に加水分解性シリル基を有する重合体(B)に由来する構成単位(b)と、を含む、ポリシロキサン系樹脂である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、可撓性および耐候性に優れる硬化物を提供し得る、ポリシロキサン系樹脂を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の一形態について、以下に詳細に説明する。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。また、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」および/または「メタアクリル」を意味する。さらに、本明細書中に記載された文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。
【0012】
〔1.本発明の概要〕
ポリシロキサン樹脂を硬化してなる硬化物(硬化膜)は、シロキサン結合に由来する、その高い結合エネルギーから、高い耐久性を示す硬化物(塗膜)が得られる。一方で、ポリシロキサン樹脂を硬化してなる硬化物は可撓性が低くなる傾向があり、硬化物に割れが生じるなどの問題があった。
【0013】
ポリシロキサン樹脂を硬化してなる硬化物の可撓性を改善し、割れの発生を抑制する方法として、ポリシロキサン樹脂に(メタ)アクリル系単量体をグラフトすることで、得られる硬化物の弾性を向上する方法が提案されている。係る方法においては、割れの発生を抑制するためには、多量の(メタ)アクリル系単量体をポリシロキサン系樹脂にグラフトする必要があるが、このように多量の(メタ)アクリル系単量体をグラフトしたポリシロキサン系樹脂を硬化した場合、得られる硬化物の耐候性が低下するという問題が生じること、すなわち、従来技術では、ポリシロキサン樹脂の優れた可撓性と、耐候性との両立ができない場合があることを本発明者らは見出した。
【0014】
このような状況にあって、本発明者らは、可撓性および耐候性に優れる硬化物を提供し得る、ポリシロキサン系樹脂を提供することを目的として鋭意検討した結果、特定のシラン化合物に由来する構成単位と、両末端に加水分解性シリル基を有する重合体に由来する構成単位と、を含む、ポリシロキサン系樹脂によれば、多量の(メタ)アクリル系単量体をグラフトすることなく(すなわち、少量の(メタ)アクリル系単量体をグラフトするか、あるいは、(メタ)アクリル系単量体をグラフトしない場合であっても)得られる硬化物の可撓性を改善できること、すなわち、可撓性および耐候性に優れる硬化物を提供できることを新たに見出し、本発明を完成させるに至った。さらに、係るポリシロキサン系樹脂は、貯蔵安定性にも優れることも見出した。
【0015】
上述の通り、従来のポリシロキサン系樹脂は、得られる硬化物の可撓性と、耐候性とを両立することができなかった。このような状況下にあって、可撓性および耐候性の両方に優れる硬化物を提供できるポリシロキサン系樹脂(本発明の一実施形態に係るポリシロキサン系樹脂)を見出したことは、驚くべき発見であると言える。また、このようなポリシロキサン系樹脂は、特に塗料の分野において極めて有用である。
【0016】
さらに、本発明の一実施形態に係るポリシロキサン系樹脂は、当該ポリシロキサン系樹脂が、水に均一に分散または可溶な状態となっている水溶液(水系媒体の溶液または分散液)とした場合であっても、可撓性および耐候性の両方に優れる硬化物(硬化膜)を提供できる。このことから、本発明の一実施形態に係るポリシロキサン系樹脂は、水系塗料としても極めて有用である。
【0017】
また、このようなポリシロキサン系樹脂が、水に均一に分散または可溶な状態となっている水溶液は、人体や環境に対して悪影響が少ない。したがって、例えば、目標12「持続可能な消費生産形態を確保する」等の持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献できる。
【0018】
〔2.ポリシロキサン系樹脂〕
本発明の一実施形態に係るポリシロキサン系樹脂は、シラン化合物(A)に由来する構成単位(a)(以下、「構成単位(a)」と称する場合がある)と、両末端に加水分解性シリル基を有する重合体(B)(以下、「重合体(B)」と称する場合がある)に由来する構成単位(b)(以下、「構成単位(b)」と称する場合がある)と、を含む、ポリシロキサン系樹脂である。
【0019】
本明細書において、「本発明の一実施形態に係る、シラン化合物(A)に由来する構成単位(a)と、両末端に加水分解性シリル基を有する重合体(B)に由来する構成単位(b)と、を含む、ポリシロキサン系樹脂」を、「本ポリシロキサン系樹脂」と称する場合がある。
【0020】
本ポリシロキサン系樹脂は、上記構成を有することにより、可撓性および耐候性に優れる硬化物を提供し得る、という効果を奏する。また、本ポリシロキサン系樹脂は、貯蔵安定性にも優れるものである。
【0021】
本発明の一実施形態において、本ポリシロキサン系樹脂は、上記構成単位(a)および構成単位(b)に加え、シラン化合物(C)に由来する構成単位(c)と、単量体(D)に由来する構成単位(d)と、を含んでもよい。
【0022】
本ポリシロキサン系樹脂は、シラン化合物(A)と、重合体(B)と、任意で、シラン化合物(C)と、を縮合してなるポリシロキサン系樹脂に、単量体(D)をグラフトしてなるグラフト重合ポリシロキサン系樹脂であるとも言える。
【0023】
<シラン化合物(A)に由来する構成単位(a)>
本ポリシロキサン樹脂は、シラン化合物(A)に由来する構成単位(a)を含む。
【0024】
(シラン化合物(A))
シラン化合物(A)は、下記一般式(I)で示される、加水分解性シリル基を有する化合物である:
R1
n-Si-(OR2)4-n ・・・(I)
(式中、R1は、それぞれ独立して炭素数1~10の置換もしくは非置換アルキル基、または非置換もしくは置換アリール基であり、R2は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1~10のアルキル基であり、nは、0~3の整数である。)
シラン化合物(A)は、後述する重合体(B)とともに、本ポリシロキサン系樹脂の主鎖であるポリシロキサン鎖を構成する主要成分である。シラン化合物(A)は、前記一般式(I)で示される、加水分解性シリル基を有し、かつ、ラジカル重合性不飽和基を有さないシラン化合物であるとも言える。
【0025】
一般式(I)のR1におけるアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基等が挙げられる。
【0026】
一般式(I)のR1におけるアリール基の具体例としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基等が挙げられる。
【0027】
一般式(I)のR2は水素原子または炭素数1~10のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。
【0028】
一般式(I)で示される具体的な化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリイソプロポキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリイソプロポキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリイソプロポキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、トリメチルモノメトキシシラン、トリフェニルモノメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトピロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0029】
一般式(I)におけるnは0~3の整数であればよいが、特に、nが1であることが好ましい。すなわち、シラン化合物(A)は、トリアルコキシシラン化合物であることが好ましい。nが1である場合、架橋性の加水分解性シリル基が3つとなり、網目構造のポリマーを形成することができる。nが1の化合物の具体例としては、入手性の観点から好適な化合物として、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0030】
シラン化合物(A)と、両末端に加水分解性シリル基を有する重合体(B)とを縮合させやすいという観点から、一般式(I)におけるR2のアルキル基の炭素数は1~3が好ましく、最も好ましくは1である。
【0031】
本ポリシロキサン系樹脂中の構成単位(a)の量は、前記ポリシロキサン系樹脂の全量100重量%に対して10重量%~90重量%であることが好ましく、20重量%~80重量%であることがより好ましく、30重量%~70重量%であることがさらに好ましい。構成単位(a)の量が、ポリシロキサン系樹脂の全量100重量%に対して10重量%~90重量%であると、得られる硬化物の耐久性および耐候性がより良好となる。
【0032】
<両末端に加水分解性シリル基を有する重合体(B)に由来する構成単位(b)>
本ポリシロキサン系樹脂は、両末端に加水分解性シリル基を有する重合体(B)に由来する構成単位(b)を含む。以下において、「両末端に反応性シリル基を有する重合体(B)」を、単に「重合体(B)」と称する場合がある。
【0033】
(両末端に加水分解性シリル基を有する重合体(B))
本発明の一実施形態に係る、重合体(B)は、両末端に存在する反応性シリル基と、主鎖(主鎖骨格)である重合体(分子鎖)と、を含む重合体である。重合体(B)は、テレケリックオリゴマーであるとも言える。
【0034】
(反応性シリル基)
重合体(B)の両末端に存在する反応性シリル基としては、下記一般式(II)で表される基があげられる;
-[Si(R3)2-b(Y)bO]m-Si(R4)3-a(Y)a ・・・(II)
{式中、R3、R4は、いずれも炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基、または(R’)3SiO-(R’は炭素数1~20の1価の炭化水素基であって、3個のR’は同一であってもよく、異なっていてもよい)で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R3またはR4が2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Yは水酸基または加水分解性基を示し、Yが2個以上存在するときそれらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0,1,2,または3を、また、bは0,1,または2を示す。mは0~19の整数である。ただし、a+mb≧1であることを満足するものとする。}。
【0035】
加水分解性基としては、たとえば、水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基などの一般に使用されている基があげられる。これらのうちでは、アルコキシ基、アミド基、アミノオキシ基が好ましいが、加水分解性がマイルドで取り扱い易いという点から、アルコキシ基がとくに好ましい。
【0036】
一般式(II)で表される反応性シリル基としては、より具体的には、メチルジメトキシシリル基、トリメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基等が挙げられる。
【0037】
重合体(B)の両末端に存在する反応性シリル基は同一でもよく異なっていてもよいが、分子鎖同士の絡み合いを解きほぐすためには、自由鎖末端が架橋構造全体として均一に存在する方がよいので、反応性に大きな差が無い方が好ましい。
【0038】
重合体(B)において、反応性シリル基は両末端にのみ有していても良いが、両末端以外に主鎖中にも有していてもかまわない。重合体(B)は、反応性シリル基を1分子に平均して1.0個より多く有しており、1.5~3.0個有していることがより好ましく、1.8~2.5個有していることがよりさらに好ましい。
【0039】
(主鎖)
重合体(B)の主鎖は、特に限定されないが、合成が容易という利点があることから、ポリアルキレンオキサイド系重合体、ポリ(メタ)アクリル系重合体、およびポリイソブチレン系重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、特に、耐候性に優れる硬化物が得られるという利点があることから、ポリ(メタ)アクリル重合体であることがより好ましい。
【0040】
(ポリアルキレンオキサイド系重合体)
本発明の一実施形態において、重合体(B)の主鎖は、ポリアルキレンオキサイド系重合体であってもよい。ポリアルキレンオキサイド系重合体の主要な構成単位(アルキレンオキサイド系モノマー単位)としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、等が挙げられる。
【0041】
本発明の一実施形態において、ポリアルキレンオキサイド系重合体は、アルキレンオキサイド系モノマーと、その他の従来公知なモノマーとを共重合、更にはブロック共重合させてなる重合体であっても構わない。なお、ポリアルキレンオキサイド系重合体が、アルキレンオキサイド系モノマーに加え、その他の従来公知なモノマーを含む場合、ポリアルキレンオキサイド系重合体の全量100重量%中、アルキレンオキサイド系モノマーに由来する構成単位が40重量%以上含まれていることが好ましい。
【0042】
(ポリ(メタ)アクリル系重合体)
本発明の一実施形態において、重合体(B)の主鎖は、ポリ(メタ)アクリル系重合体であることが好ましい。ポリ(メタ)アクリル系重合体の主要な構成単位((メタ)アクリル系モノマー単位)としては、各種のものを用いることができる。例示するならば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸-tert-ブチル、(メタ)アクリル酸-n-ペンチル、(メタ)アクリル酸-n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸-n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸-n-オクチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸-2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸-3-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2-アミノエチル、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物等の(メタ)アクリル酸系モノマーである。
【0043】
これらの(メタ)アクリル酸系モノマーは、単独で用いても良いし、複数を共重合させても構わない。なかでも、生成されるポリ(メタ)アクリル系重合体の物性等の観点から、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーが好ましく、より好ましくは、アクリル酸エステルモノマーであり、特に好ましくは(メタ)アクリル酸とエステル結合しているアルキル基を有する、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーである。(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとしては、より具体的には、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸イソプロポキシエチル等のアルキル基を有しており、かつ、上記アルキル基は炭素数が1~5のアルコキシ基を有している(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、tert-ブチル(メタ)アクリル酸tert-ブチル等のアルキル基の炭素数が1~5個の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル等のアルキル基の炭素数が6~15個の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸イコシル、(メタ)アクリル酸ドコシル等のアルキル基の炭素数が16~25個の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー;等が挙げられる。
【0044】
本発明の一実施形態において、ポリ(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル系モノマーと、その他の従来公知なモノマーとを共重合、更にはブロック共重合させてなる重合体であっても構わない。なお、ポリ(メタ)アクリル系重合体が、(メタ)アクリル系モノマーに加え、その他の従来公知なモノマーを含む場合、ポリ(メタ)アクリル系重合体の全量100重量%中、(メタ)アクリル系モノマーに由来する構成単位が40重量%以上含まれていることが好ましい。
【0045】
(ポリイソブチレン系重合体)
本発明の一実施形態において、重合体(B)の主鎖は、ポリイソブチレン系重合体であってもよい。ポリイソブチレン系重合体は、イソブチレン単位を主要な構成単位とする重合体である。
【0046】
本発明の一実施形態において、ポリイソブチレン系重合体は、イソブチレンと、その他の従来公知なモノマーとを共重合、更にはブロック共重合させてなる重合体であっても構わない。なお、ポリイソブチレン系重合体が、イソブチレンに加え、その他の従来公知なモノマーを含む場合、ポリイソブチレン系重合体の全量100重量%中、イソブチレンに由来する構成単位が40重量%以上含まれていることが好ましい。
【0047】
(重合体(B)の物性)
重合体(B)のガラス転移温度(Tg)は、特に限定されないが、0℃以下であることが好ましく、-10℃以下であることがより好ましく、-20℃以下がさらに好ましい。重合体(B)のTgが0℃以下である場合、可撓性および耐候性により優れるポリシロキサン系樹脂を得ることができる。また、重合体(B)のTgの下限は特に限定されないが、例えば、-150℃以上であり得る。
【0048】
重合体(B)の数平均分子量は特に制限はないが、500~1,000,000の範囲が好ましく、1000~100,000が更に好ましい。分子量分布(重量平均分子量と数平均分子量の比)は、特に限定されないが、好ましくは1.8未満であり、好ましくは1.7以下であり、より好ましくは1.6以下であり、さらに好ましくは1.5以下であり、特に好ましくは1.4以下であり、最も好ましくは1.3以下である。
【0049】
重合体(B)の数平均分子量および重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により求められる。通常、移動相としてクロロホルムを用い、測定はポリスチレンゲルカラムにておこない、数平均分子量等はポリスチレン換算で求めることができる。
【0050】
(重合体(B)の製造方法)
重合体(B)の製造方法は、主鎖である重合体の両末端に、反応性シリル基を導入できる限り特に限定されず、従来公知な方法により、主鎖の量末端に反応性シリル基を導入することができるが、構造制御(分子量、分子量分布、末端官能化率など)の容易性の観点から、リビングラジカル重合法、リビングカチオン重合法、リビングアニオン重合法等のリビング重合法が挙げられる。特に、精度よく両末端に加水分解性シリル基を導入できることから、リビングラジカル重合法が好ましい。リビングラジカル重合法の例としては、以下が挙げられる:
・原子移動ラジカル重合(Atom Transfer Radical Polymerization;ATRP(J. Am. Chem. Soc. 1995, 117, 5614; Macromolecules. 1995, 28, 1721を参照))
・一電子移動重合(Sigle Electron Transfer Polymerization;SET-LRP(J. Am.
Chem. Soc. 2006, 128, 14156; JPSChem 2007, 45, 1607を参照))
・可逆移動触媒重合(Reversible Chain Transfer Catalyzed Polymerization;RTCP(「有機触媒で制御するリビングラジカル重合」『高分子論文集』68, 223-231 (2011);
特開2014-111798を参照))
・可逆的付加-開裂連鎖移動重合法(RAFT重合)
・ニトロキシラジカル法(NMP法)
・有機テルル化合物を用いる重合法(TERP)法
・有機アンチモン化合物を用いる重合法(SBRP法)
・有機ビスマス化合物を用いる重合法(BIRP)
・ヨウ素移動重合法。
【0051】
重合体(B)の製造方法としては、より具体的には、リビングラジカル重合において反応性シリル基を有する開始剤を使用し、主鎖を構成するモノマー(例えば、(メタ)アクリル系モノマー)を重合する方法や、反応性シリル基に変換可能な官能基を有する開始剤を用いて主鎖を構成するモノマーの重合を行い、重合後に反応性シリル基に変換する方法などにより、開始剤由来の末端にシリル基が導入された重合体を製造することができる。またリビングラジカル重合により製造される分子鎖(主鎖)の重合生長末端(好ましくはハロゲン末端)を反応性シリル基に変換することも可能である。これらの方法によって、重合体(B)を製造することができる。また、一般的なテレケリックポリマーの製造方法も利用できる。例えば、2官能性の開始剤を用いてリビングラジカル重合を行い、両端の重合生長末端(好ましくはハロゲン末端)を従来公知な方法で反応性シリル基に変換することで重合体(B)が得られる。
【0052】
本ポリシロキサン系樹脂中の構成単位(b)の量は、前記ポリシロキサン系樹脂の全量100重量%に対して1重量%~10重量%であることが好ましく、3重量%~7重量%であることがより好ましい。構成単位(b)の量が、ポリシロキサン系樹脂の全量100重量%に対して1重量%~10重量%であると、得られる硬化物の耐久性および耐候性がより良好となる。
【0053】
本ポリシロキサン系樹脂が、構成単位(a)および構成単位(b)からなるポリシロキサン系樹脂である場合(すなわち、後述する構成単位(c)および構成単位(d)を含まない場合)、本ポリシロキサン系樹脂における各成分の量は、前記構成単位(a)および構成単位(b)の合計量を100重量%とした場合、前記構成単位(a)が90~99重量%であり、前記構成単位(b)が1~10重量%であることが好ましく、前記構成単位(a)が93~97重量%であり、前記構成単位(b)が3~7重量%であることがより好ましい。
【0054】
<シラン化合物(C)に由来する構成単位(c)>
本ポリシロキサン系樹脂は、シラン化合物(C)に由来する構成単位(c)(以下、「構成単位(c)」と称する場合がある)を含むことが好ましい。
【0055】
(シラン化合物(C))
シラン化合物(C)は、ラジカル重合性不飽和基および加水分解性シリル基を有するシラン化合物である。本発明の一実施形態において、シラン化合物(C)は、下記一般式(III)で示される、加水分解性シリル基を有する化合物である:
R5
cR6
d-Si-(OR7)4-c-d ・・・(III)
(式中、R5は重合性不飽和基を有する炭素数1~10の置換アルキル基、アルケニル基、または重合性不飽和基を有しかつ任意にそれ以外の置換基を有しても良いアリール基であり、R6はそれぞれ独立して炭素数1~10の非置換もしくは置換アルキル基、または非置換もしくは置換アリール基であり、R7はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1~10のアルキル基であり、cは1~3の整数であり、dは0~2の整数であり、c+dは1~3の整数である)。なお、上記一般式(III)において、R5およびR6は、Si(ケイ素)に直接結合する基である。
【0056】
一般式(III)において、cは1~3の整数であり、dは0~2の整数であり、c+dは1~3の整数であればよいが、cが1であり、dが0または1であることが好ましく、特に、cが1であり、dが0であるが好ましい。すなわち、シラン化合物(C)は、トリアルコキシシラン化合物であることが好ましい。
【0057】
一般式(III)のR5は、ラジカル重合性不飽和基を有する炭素数1~10の置換アルキル基、アルケニル基、ラジカル重合性不飽和基を有する非置換または置換アリール基である。ラジカル重合性不飽和基としては、特に限定されないが、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基等が挙げられる。反応性の高さおよび汎用性の観点から、ビニル基または(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0058】
R5がラジカル重合性不飽和基を有するアルキル基であるシラン化合物(C)としては、例えば、(メタ)アクリロキシメチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジメチルメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジメチルエトキシシラン、2-(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、2-(メタ)アクリロキシエチルメチルジメトキシシラン、2-(メタ)アクリロキシエチルジメチルメトキシシラン、2-(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、2-(メタ)アクリロキシエチルメチルジエトキシシラン、2-(メタ)アクリロキシエチルジメチルエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、4-(メタ)アクリロキシブチルトリメトキシシラン、4-(メタ)アクリロキシブチルメチルジメトキシシラン、4-(メタ)アクリロキシブチルジメチルメトキシシラン、4-(メタ)アクリロキシブチルトリエトキシシラン、4-(メタ)アクリロキシブチルメチルジエトキシシラン、4-(メタ)アクリロキシブチルジメチルエトキシシラン、5-(メタ)アクリロキシペンチルトリメトキシシラン、5-(メタ)アクリロキシペンチルメチルジメトキシシラン、5-(メタ)アクリロキシペンチルジメチルメトキシシラン、5-(メタ)アクリロキシペンチルトリエトキシシラン、5-(メタ)アクリロキシペンチルメチルジエトキシシラン、5-(メタ)アクリロキシペンチルジメチルエトキシシラン、6-(メタ)アクリロキシヘキシルトリメトキシシラン、6-(メタ)アクリロキシヘキシルメチルジメトキシシラン、6-(メタ)アクリロキシヘキシルジメチルメトキシシラン、6-(メタ)アクリロキシヘキシルトリエトキシシラン、6-(メタ)アクリロキシヘキシルメチルジエトキシシラン、6-(メタ)アクリロキシヘキシルジメチルエトキシシラン等が挙げられる。
【0059】
R5がアルケニル基であるシラン化合物(C)としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン等が挙げられる。
【0060】
R5が重合性不飽和基を有しかつ任意にそれ以外の置換基を有しても良いアリール基であるシラン化合物(C)としては、例えば、p-スチリルトリメトキシシラン、p-スチリルメチルジメトキシシラン、p-スチリルジメチルメトキシシラン、p-スチリルトリエトキシシラン、p-スチリルメチルジエトキシシラン、p-スチリルジメチルエトキシシラン等が挙げられる。
【0061】
これらの中でも、反応性の高さおよび汎用性の観点から、R5としては、(メタ)アクリロイル基置換アルキル基またはビニル基置換アルキル基が好ましい。
【0062】
一般式(III)のR6はそれぞれ独立して炭素数1~10の非置換もしくは置換アルキル基、または非置換もしくは置換アリール基である。
【0063】
一般式(III)のR6におけるアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基等が挙げられる。
【0064】
一般式(III)のR6におけるアリール基の具体例としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基等が挙げられる。
【0065】
一般式(III)のR6は、cが1であり、dが1である場合、メチル基であることが好ましい。
【0066】
一般式(III)のR7は水素原子または炭素数1~10のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。
【0067】
シラン化合物(C)と、シラン化合物(A)および重合体(B)とを縮合させやすいという観点から、一般式(III)におけるR7のアルキル基の炭素数は1~3が好ましく、最も好ましくは1である。特に、一般式(III)のR7は、cが1であり、dが1である場合、メチル基であることが好ましい。
【0068】
シラン化合物(A)および重合体(B)と、シラン化合物(C)と、を脱水縮合して得られる共縮合物(共縮合物)の数平均分子量は特に制限はないが、500~100000の範囲が好ましく、1000~10000が更に好ましい。
【0069】
ここで、縮合物の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により求められる。通常、移動相としてクロロホルムを用い、測定はポリスチレンゲルカラムにて行い、数平均分子量はポリスチレン換算で求めることができる。
【0070】
本ポリシロキサン系樹脂が構成単位(c)を含む場合、本ポリシロキサン系樹脂中の構成単位(c)の量は、前記ポリシロキサン系樹脂の全量100重量%に対して1重量%~10重量%であることが好ましく、1.5重量%~8重量%であることがより好ましく、2重量%~6重量%であることがさらに好ましい。構成単位(c)の量が、ポリシロキサン系樹脂の全量100重量%に対して1重量%~10重量%であると、単量体(D)に由来するグラフト鎖を形成する際に、ゲル化が発生しにくいという利点がある。
【0071】
<単量体(D)に由来する構成単位(d)>
本ポリシロキサン系樹脂は、単量体(D)に由来する構成単位(d)(以下、「構成単位(d)」と称する場合がある)を含むことが好ましい。
【0072】
(単量体(D))
単量体(D)は、ラジカル重合性不飽和基を有し、かつ、加水分解性シリル基を有さない単量体である。単量体(D)中のラジカル重合性不飽和基は、シラン化合物(C)に由来するラジカル重合性不飽和基との間でラジカル重合を行い、シラン化合物(A)および重合体(B)と、シラン化合物(C)と、を脱水縮合してなる縮合物に対して前記単量体(D)に由来するグラフト鎖を形成する。
【0073】
単量体(D)としては、ラジカル重合性不飽和基を有し、かつ、加水分解性シリル基を有さない単量体であれば特に限定されないが、例えば、以下に示すような酸と塩基からなる塩構造を有する単量体、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、およびその他の単量体が挙げられる。これらの各単量体の1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。中でも、本ポリシロキサン系樹脂を水に均一に分散または可溶な状態となっている水溶液にできるという利点があることから、単量体(D)は、酸と塩基からなる塩構造を有する単量体を含むことが好ましい。
【0074】
(酸と塩基からなる塩構造を有する単量体)
本発明の一実施形態に係る酸と塩基からなる塩構造を有する単量体における、塩構造は、例えば、強酸と強塩基との中性塩の構造、強酸と弱塩基との中性塩の構造、弱酸と強塩基との中性塩の構造、または弱酸と弱塩基との中性塩の構造であり得る。より具体的な塩構造としては、例えば、スルホン酸ナトリウム、スルホン酸カリウム、スルホン酸カルシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸カルシウム等(強酸と強塩基との中性塩の構造)、スルホン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム等(強酸と弱塩基との中性塩の構造)、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム等(弱酸と強塩基との中性塩の構造)、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等(弱酸と弱塩基との中性塩の構造)等が挙げられる。本発明の一実施形態において、塩構造は、好ましくは、スルホン酸ナトリウムまたはスルホン酸アンモニウムである。なお、本明細書において、「酸と塩基からなる塩構造を有する単量体」は、「ラジカル重合性不飽和基を有し、加水分解性シリル基を有さず、かつ、酸と塩基からなる塩構造を有する単量体」であるとも言える。
【0075】
酸と塩基からなる塩構造を有する単量体としては、より具体的には、ADEKA(株)製アデカリアソープSR-05、SR-10、SR-20、SR-1025、SR-2025、SR-3025、SR-10S、NE-10、NE-20、NE-30、NE-40、SE-10、SE-20、ER-10、ER-20、ER-30、ER-40、日本乳化剤(株)製Antox-MS-60、RMA-1120、RMA-564、RMA-568、RMA-506、MA-30、MA-50、MA-100、MA-150、RMA-1120、MPG130-MA、MPG-130MA、RMA-150M、RMA-300M、RMA-450M、RA-1020、RA-1820、第一工業製薬(株)製アクアロンKH-05、KH-10、RN-20、RN-30、RN-50、RN-2025、HS-10、HS-20、HS-1025、BC05、BC10、BC0515、BC1025、三洋化成工業(株)製エレミノールJS-2、JS-20、RS-30、花王(株)製ラテムルS-180、S-180A、PD-104、PD-420、PD-430、スルホエチルメタクリル酸ナトリウム、アクリルアミド-tブチルスルホン酸ナトリウム、2-(メタクリロイルオキシ)エタンスルホン酸ナトリウム、アクリルアミド-tブチルスルホン酸ナトリウム、2-(メタクリロイルオキシ)エタンスルホン酸カリウム、アクリルアミド-tブチルスルホン酸カリウム、2-(メタクリロイルオキシ)エタンスルホン酸カルシウム、アクリルアミド-tブチルスルホン酸カルシウム、スルホエチルメタクリル酸アンモニウム、アクリルアミド-tブチルスルホン酸アンモニウム、2-(メタクリロイルオキシ)エタンスルホン酸アンモニウム、アクリルアミド-tブチルスルホン酸アンモニウム、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、アクリル酸カルシウム、アクリル酸アンモニウム、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸カリウム、メタクリル酸カルシウム、メタクリル酸アンモニウム等が挙げられる。
【0076】
((メタ)アクリル酸アルキルエステル)
本発明の一実施形態において、(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、炭素数1~18個のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであり、水酸基、エポキシ基等の官能基を含まない(メタ)アルキル単量体であり得る。本発明の一実施形態において、(メタ)アクリル酸アルキルエステル中のアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、また、環状であるシクロアルキル基であってもよい。その具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)メタクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0077】
((メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の単量体)
(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の単量体としては、例えば、(メタ)アクリロニトリル等のニトリル基含有ラジカル重合性単量体;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有ラジカル重合性単量体;2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;2-スルホエチルメタクリレートナトリウム、2-スルホエチルメタクリレートアンモニウム、ポリオキシアルキレン鎖を有するラジカル重合性単量体等の親水性を有するラジカル重合性単量体;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等の重合性の不飽和結合を2つ以上有する単量体;トリフルオロ(メタ)アクリレート、ペンタフルオロ(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピルメタクリレート、β-(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート等のふっ素含有ラジカル重合性単量体;等が挙げられる。
【0078】
また、上記ポリオキシアルキレン鎖を有するラジカル重合性単量体としては、特に限定されないが、ポリオキアルキレン鎖を有するアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルが好ましい。その具体例としては、例えば、日本油脂(株)製ブレンマーPE-90、PE-200、PE-350、AE-90、AE-200、AE-350、PP-500、PP-800、PP-1000、AP-400、AP-550、AP-800、700PEP-350B、10PEP-550B、55PET-400、30PET-800、55PET-800、30PPT-800、50PPT-800、70PPT-800、PME-100、PME-200、PME-400、PME-1000、PME-4000、AME-400、50POEP-800B、50AOEP-800B、AEP、AET、APT、PLE、ALE、PSE、ASE、PKE、AKE、PNE、ANE、PNP、ANP、PNEP-600、共栄社化学(株)製ライトエステル130MA、041MA、MTG、ライトアクリレートEC-A、MTG-A、130A、DPM-A、P-200A、NP-4EA、NP-8EA、EHDG-A、日本乳化剤(株)製MA-30、MA-50、MA-100、MA-150、RMA-1120、RMA-564、RMA-568、RMA-506、MPG130-MA、Antox MS-60、MPG-130MA、RMA-150M、RMA-300M、RMA-450M、RA-1020、RA-1120、RA-1820、新中村化学工業(株)製NK-ESTER M-20G、M-40G、M-90G、M-230G、AMP-10G、AMP-20G、AMP-60G、AM-90G、LA等があげられる。
【0079】
本ポリシロキサン系樹脂が構成単位(d)を含む場合、本ポリシロキサン系樹脂中の構成単位(d)の量は、前記ポリシロキサン系樹脂の全量100重量%に対して5重量%~85重量%であることが好ましく、10重量%~70重量%であることが好ましく、30重量%~60重量%であることが好ましい。構成単位(a)の量が、ポリシロキサン系樹脂の全量100重量%に対して5重量%~85重量%であると、合成が簡便になるという利点がある。
【0080】
(グラフト重合ポリシロキサン系樹脂)
本ポリシロキサン系樹脂が、上記構成単位(c)および、構成単位(d)を含む場合、本ポリシロキサン系樹脂は、グラフト鎖を有するポリシロキサン系樹脂(グラフト重合ポリシロキサン系樹脂)となる。
【0081】
本明細書において、「グラフト重合ポリシロキサン系樹脂」とは、主鎖である共縮合体(シラン化合物(A)および重合体(B)と、シラン化合物(C)と、を脱水縮合して得られる共縮合体)にグラフト鎖が結合した構造体を意味する。グラフト重合ポリシロキサン系樹脂は、グラフト重合共縮合物であるとも言える。
【0082】
本ポリシロキサン系樹脂が、グラフト重合ポリシロキサン系樹脂である場合、耐久性に優れる硬化物を提供し得る。そのため、本ポリシロキサン系樹脂は、グラフト重合ポリシロキサン系樹脂であることが好ましい。
【0083】
すなわち、本ポリシロキサン系樹脂は、シラン化合物(A)および重合体(B)に加え、ラジカル重合性不飽和基および加水分解性シリル基を有するシラン化合物(C)に由来する構成単位(c)と、前記シラン化合物(A)およびシラン化合物(C)以外の、ラジカル重合性不飽和基を有し、かつ、加水分解性シリル基を有さない単量体(D)に由来する構成単位(d)と、を含むことが好ましい。
【0084】
本ポリシロキサン系樹脂が、構成単位(a)、構成単位(b)、構成単位(c)および構成単位(d)を含む場合、本ポリシロキサン系樹脂における各成分の量は、前記構成単位(a)、構成単位(b)、構成単位(c)および構成単位(d)の合計量を100重量%とした場合、前記構成単位(a)が10~90重量%、前記構成単位(b)が1~10重量%、前記構成単位(c)が1~10重量%、前記構成単位(d)が5~85重量%であることが好ましく、前記構成単位(a)が20~70重量%、前記構成単位(b)が1.5~9重量%、前記構成単位(c)が1.5~8重量%、前記構成単位(d)が10~70重量%であることがより好ましく、前記構成単位(a)が30~60重量%、前記構成単位(b)が2~8重量%、前記構成単位(c)が2~6重量%、前記構成単位(d)が30~60重量%であることがさらに好ましい。
【0085】
<本ポリシロキサン系樹脂の製造方法>
本ポリシロキサン系樹脂の製造方法(以下、「本製造方法」と称する場合がある)は、特に限定されず、公知方法によって製造することができるが、(i)以下の工程(1)の方法、または(ii)以下の工程(1)に加え、以下の工程(2)を含む方法により製造することが好ましい:
・工程(1):シラン化合物(A)と、重合体(B)と、必要に応じて、シラン化合物(C)と、を縮合する縮合工程;
・工程(2):製造した縮合物(構成単位(a)~(c)を含む縮合物)に、単量体(D)をラジカル重合するラジカル重合工程。
【0086】
(工程(1))
工程(1)は、シラン化合物(A)と、重合体(B)と、必要に応じて、シラン化合物(C)と、水(純水)および脱水縮合触媒の存在下で混合し、縮合(脱水縮合)する工程である。工程(1)は、シラン化合物(A)と、重合体(B)と、(必要に応じて、シラン化合物(C)と)の共重合体を製造する工程であるといえ、構成単位(a)~(c)を含む縮合物を得る工程であるとも言える。特に、本ポリシロキサン系樹脂の製造方法において、工程(2)を行わない場合(すなわち、本ポリシロキサン系樹脂が構成単位(c)および構成単位(d)を含まない場合)、工程(1)によって製造される縮合物が、本ポリシロキサン系樹脂となる。
【0087】
本発明の一実施形態において、シラン化合物(A)と、重合体(B)と、必要に応じて、シラン化合物(C)と、を脱水縮合させるために添加する水(縮合水)のモル数(当量)は、各成分の合計モル数に対して、例えば、0.25倍以上であり、好ましくは、0.5倍以上である。水のモル数が、各成分の合計モル数に対して、0.25倍以上であると、適切に縮合を行うことができ、十分な耐水性、耐候性、低タック性が期待できる。水のモル数は、多い分には特に制限はないが、貯蔵安定性の観点から、各成分の合計モル数に対して、4.0倍以下に抑えることが好ましい。これらの観点を踏まえ、工程(1)で添加する水のモル数は、各成分の合計モル数に対して、0.25~4.0倍が好ましく、0.5~3.0倍がさらに好ましく、1.0~2.5倍が特に好ましい。通常、2倍程度の比較的多くの水を添加した場合、縮合中に溶液のゲル化が生じ、縮合物(ポリシロキサン系樹脂)を得ることが実質的に不可能となる傾向があるが、本ポリシロキサン系樹脂は、2.0倍以上の水を添加した場合であっても、ゲル化を生じることなく製造できるため、十分な縮合を安定的に行うことができる。
【0088】
工程(1)において使用する脱水縮合触媒は、シラン化合物(A)と、重合体(B)と、必要に応じて、シラン化合物(C)と、を含む混合物の脱水縮合反応を促進することが可能な物質であれば、特に限定されず、例えば、中性塩触媒、酸性触媒、塩基性触媒等が挙げられる。中でも合成の容易性や貯蔵安定性から、中性塩触媒が好ましい。
【0089】
本明細書において、中性塩触媒とは、酸と、塩基とから生成する塩(中性塩)を意図する。具体的には、第一族元素イオン、第二族元素イオン、テトラアルキルアンモニウムイオン、およびグアニジウムイオンよりなる群から選ばれるいずれかのカチオンと、フッ化物イオンを除く第十七族元素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、および過塩素酸イオンよりなる群から選ばれるいずれかのアニオンとの組合せからなる塩である。中性塩触媒として使用される中性塩としては、例えば、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化ルビジウム、塩化セシウム、塩化フランシウム、塩化ベリリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ストロンチウム、塩化バリウム、塩化ラジウム、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラプロピルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラペンチルアンモニウム、塩化テトラヘキシルアンモニウム、塩化グアニジウム;臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化ルビジウム、臭化セシウム、臭化フランシウム、臭化ベリリウム、臭化マグネシウム、臭化カルシウム、臭化ストロンチウム、臭化バリウム、臭化ラジウム、臭化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラプロピルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラペンチルアンモニウム、臭化テトラヘキシルアンモニウム、臭化グアニジウム;ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ルビジウム、ヨウ化セシウム、ヨウ化フランシウム、ヨウ化ベリリウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化ストロンチウム、ヨウ化バリウム、ヨウ化ラジウム、ヨウ化テトラメチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラプロピルアンモニウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、ヨウ化テトラペンチルアンモニウム、ヨウ化テトラヘキシルアンモニウム、ヨウ化グアニジウム;硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸ルビジウム、硫酸セシウム、硫酸フランシウム、硫酸ベリリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸ストロンチウム、硫酸バリウム、硫酸ラジウム、硫酸テトラメチルアンモニウム、硫酸テトラエチルアンモニウム、硫酸テトラプロピルアンモニウム、硫酸テトラブチルアンモニウム、硫酸テトラペンチルアンモニウム、硫酸テトラヘキシルアンモニウム、硫酸グアニジウム;硝酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸ルビジウム、硝酸セシウム、硝酸フランシウム、硝酸ベリリウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸バリウム、硝酸ラジウム、硝酸テトラメチルアンモニウム、硝酸テトラエチルアンモニウム、硝酸テトラプロピルアンモニウム、硝酸テトラブチルアンモニウム、硝酸テトラペンチルアンモニウム、硝酸テトラヘキシルアンモニウム、硝酸グアニジウム;過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム、過塩素酸ルビジウム、過塩素酸セシウム、過塩素酸フランシウム、過塩素酸ベリリウム、過塩素酸マグネシウム、過塩素酸カルシウム、過塩素酸ストロンチウム、過塩素酸バリウム、過塩素酸ラジウム、過塩素酸テトラメチルアンモニウム、過塩素酸テトラエチルアンモニウム、過塩素酸テトラプロピルアンモニウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、過塩素酸テトラペンチルアンモニウム、過塩素酸テトラヘキシルアンモニウム、過塩素酸グアニジウム等が挙げられる。これら中性塩は、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を組合せて使用することもできる。
【0090】
酸性触媒としては、前記シラン化合物(A)、重合体(B)、および、シラン化合物(C)、あるいは、希釈溶媒との相溶性の観点から、有機酸の触媒が好ましく、リン酸エステルやカルボン酸を好適に用いることができる。有機酸の具体例としては、例えば、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ジブチルピロホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、イソトリデシルアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、ビス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、ギ酸、酢酸、酪酸、イソ酪酸等が挙げられる。これらの酸性触媒は、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を組合せて使用することもできる。
【0091】
塩基性触媒としては、前記シラン化合物(A)、重合体(B)、および、シラン化合物(C)、あるいは、希釈溶媒との相溶性の観点から、有機塩基の触媒が好ましく、アミン化合物を好適に用いることができる。有機塩基の具体例としては、例えば、トリエチルアミン、ジアザビシクロウンデセン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。これらの塩基性触媒は、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を組合せて使用することもできる。
【0092】
脱水縮合触媒の量は、前記シラン化合物(A)、重合体(B)、および、シラン化合物(C)の合計量に対して、0.1ppm~50000ppmが好ましく、1ppm~10000ppmがより好ましく、5ppm~1000ppmが特に好ましく、10ppm~500ppmが最も好ましい。脱水縮合触媒の量が0.1ppm以上であると、触媒として適切に作用する。脱水縮合触媒の量は、多い程反応時間を短縮することができるものの、反応終了後にポリシロキサンから分離除去することが容易ではないことが多い。残存した触媒は、本製造方法により得られるポリシロキサン系樹脂の貯蔵安定性を低下させることがあるため、製造時間との兼ね合いもあるが、実用面を考えると少ない程、好適である。
【0093】
工程(1)において、前記シラン化合物(A)、重合体(B)、シラン化合物(C)、水および脱水縮合触媒の他に、希釈溶媒を使用してもよい。前記シラン化合物(A)、重合体(B)、シラン化合物(C)は疎水性であり、反応時に水を使用することから、希釈溶媒は水溶性であることが好ましい。希釈溶媒の量に制限はないが、多くなると得られるポリシロキサンの濃度が低くなるため、生産コストの面から好ましくない。希釈溶媒の具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、ポリシロキサン系樹脂の製造後や塗膜の形成時に揮発させる可能性を考慮すると、メタノール、エタノール、2-プロパノールが特に好ましい。
【0094】
(工程(2))
工程(2)は、工程(1)で作製した縮合物(構成単位(a)~(c)を含む縮合物)に対して、前記単量体(D)と、ラジカル重合開始剤とを添加する工程である。工程(B2)は、工程(1)で作製した縮合物に、単量体(D)をグラフト重合させる工程である、とも言える。すなわち、工程(1)、および、工程(2)を実施することによって、グラフト重合ポリシロキサン系樹脂(構成単位(a)~(d)を含むポリシロキサン系樹脂)を製造することができる。
【0095】
ラジカル重合開始剤は、工程(1)で作製した縮合物中の、前記シラン化合物(C)に由来するラジカル重合性不飽和基と、単量体(D)に由来するラジカル重合性不飽和基との間でラジカル重合反応を開始させることが可能な物質であれば、特に限定されない。
【0096】
本発明の一実施形態において、ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、tert-ブチルパーオキシピバレート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート等が挙げられる。
【0097】
本発明の一実施形態において、ラジカル重合開始剤の量は、例えば、工程(2)に供する縮合物の全量100重量%に対して0.01~10重量%であり、好ましくは、0.05~7重量%であり、より好ましくは、0.1~5重量%である。かかるラジカル重合開始剤の量が0.01重量%以上であると、重合が適切に進行する。また、ラジカル重合開始剤の量が10重量%以下であると、適切な分子量の重合体を得ることができる。
【0098】
工程(2)では、単量体(D)およびラジカル重合開始剤の他に、本発明の効果を奏する範囲内で、任意の添加剤を添加してもよい。そのような添加剤については、当業者により、適宜選択され得る。
【0099】
<硬化物>
本ポリシロキサン系樹脂を公知の方法で硬化させることにより、硬化物を得ることができる。本ポリシロキサン系樹脂を硬化してなる硬化物は、可撓性および耐候性に優れる。
【0100】
〔3.本ポリシロキサン系樹脂を含む水溶液〕
本発明の一実施形態において、本ポリシロキサン系樹脂を含む水溶液(以下、「本水溶液」と称する場合がある)を提供する。本水溶液は、本ポリシロキサン系樹脂が、水に均一に分散または可溶な状態となっている、水溶液であるとも言える。
【0101】
なお、本明細書において、「水に均一に分散または可溶な状態」とは、以下の方法でポリシロキサン系樹脂を含む水溶液を評価したときに、「沈殿物」が生じないものを意味する:ポリシロキサン系樹脂を含む水溶液を25℃の条件下で1週間静置し、目視にて観察することで、水溶液外観を評価する。上記の評価を行った際に、「沈殿物」が見られた場合は「水に均一に分散または可溶な状態」には該当しない。
【0102】
本水溶液は、水性塗料として使用可能であって、さらに、本ポリシロキサン系樹脂を含むため、水性塗料として用いた場合に、得られる塗膜(硬化物)が可撓性および耐候性に優れるとの効果を奏する。このため、本水溶液は、水性塗料用途において極めて有用である。
【0103】
(本ポリシロキサン系樹脂を含む水溶液の製造方法)
本ポリシロキサン系樹脂を、水に分散、乳化、または溶解することにより、本水溶液を提供することができる。すなわち、本発明の一実施形態において、本ポリシロキサン系樹脂を水に分散、乳化、または溶解する工程を含む、ポリシロキサン系樹脂を含む水溶液の製造方法を提供する。ポリシロキサン系樹脂を、水に分散、乳化、または溶解する工程は、ポリシロキサン系樹脂と、水と、を混合する工程であるとも言える。
【0104】
〔4.本ポリシロキサン系樹脂を含む塗料〕
本発明の一実施形態において、本ポリシロキサン系樹脂を含む、塗料(以下、「本塗料」と称する場合がある。)を提供する。本塗料は本ポリシロキサン系樹脂を含むため、可撓性および耐候性に優れる塗膜を提供でき、さらに、貯蔵安定性に優れるものとなる。本塗料は、人体や環境に対する悪影響を低減できることから、水性塗料であることが好ましい。
【0105】
本塗料は、本発明の効果を奏する範囲で、当該技術分野において通常用いられる添加剤を含んでいてもよい。そのような添加剤としては、例えば、顔料、充填剤、可塑剤、成膜助剤、湿潤・分散剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤、酸化防止剤、沈降防止剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、凍結防止剤、抗菌剤、抗かび剤、粘着付与剤、防錆剤等が挙げられる。添加剤としては、1種のみが含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。これら添加剤の量は、その使用目的に応じて当業者が適宜設定可能である。
【0106】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0107】
すなわち、本発明の一態様は、以下を含む。
<1>下記一般式(I):
R1
n-Si-(OR2)4-n ・・・(I)
(式中、R1は、それぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基、または非置換もしくは置換アリール基であり、R2は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1~10のアルキル基であり、nは、0~3の整数である。)で示されるシラン化合物(A)に由来する構成単位(a)と、両末端に加水分解性シリル基を有する重合体(B)に由来する構成単位(b)と、を含む、ポリシロキサン系樹脂。
<2>前記重合体(B)の主鎖が、ポリアルキレンオキサイド重合体、ポリ(メタ)アクリル重合体、およびポリイソブチレン重合体からなる群より選択される少なくとも1種である、<1>に記載のポリシロキサン系樹脂。
<3>さらに、ラジカル重合性不飽和基および加水分解性シリル基を有するシラン化合物(C)に由来する構成単位(c)と、ラジカル重合性不飽和基を有し、かつ、加水分解性シリル基を有さない単量体(D)に由来する構成単位(d)と、を含む、<1>または<2>に記載のポリシロキサン系樹脂。
<4>前記単量体(D)が、酸と塩基からなる塩構造を有する単量体を含む、<3>に記載のポリシロキサン系樹脂。
<5>前記構成単位(a)、構成単位(b)、構成単位(c)および構成単位(d)の合計量を100重量%とした場合、前記構成単位(a)が10~90重量%、前記構成単位(b)が1~10重量%、前記構成単位(c)が1~10重量%、前記構成単位(d)が5~85重量%である、<3>または<4>に記載のポリシロキサン系樹脂。
<6><1>~<5>のいずれか1つに記載のポリシロキサン系樹脂を含み、前記ポリシロキサン系樹脂が、水に均一に分散または可溶な状態となっている水溶液。
<7><1>~<5>のいずれか1つに記載のポリシロキサン系樹脂を含む、塗料。
<8>下記一般式(I):
R1
n-Si-(OR2)4-n ・・・(I)
(式中、R1は、それぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基、または非置換もしくは置換アリール基であり、R2は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1~10のアルキル基であり、nは、0~3の整数である。)で示されるシラン化合物(A)と、両末端に加水分解性シリル基を有する重合体(B)と、を縮合する縮合工程を含む、ポリシロキサン系樹脂の製造方法。
<9>前記縮合工程は、前記シラン化合物(A)および前記重合体(B)と、さらに、ラジカル重合性不飽和基および加水分解性シリル基を有するシラン化合物(C)と、を縮合する工程である、<8>に記載の製造方法。
<10>前記縮合工程の後に、ラジカル重合性不飽和基を有し、かつ、加水分解性シリル基を有さない単量体(D)を添加し、ラジカル重合を行うラジカル重合工程を含む、<8>または<9>に記載の製造方法。
<11><1>~<5>のいずれかに記載のポリシロキサン系樹脂を、水に分散、乳化、または溶解する工程を含む、ポリシロキサン系樹脂を含む水溶液の製造方法。
【実施例0108】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0109】
〔材料〕
実施例および比較例において、以下の材料を使用した。
【0110】
<シラン化合物(A)>
メチルトリメトキシシラン(略称「M-TMS」):ダウ・東レ(株)製の「Z-6033」
フェニルトリメトキシシラン(略称「Ph-TMS」):ダウ・東レ(株)製の「Z-6124」
<重合体(B)>
両末端に加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体:(カネカ株式会社製XMAPSA120S、ガラス転移温度(Tg)-40℃)
<シラン化合物(C)>
ビニルトリメトキシシラン(略称「Vi-TMS」):モメンティブ社製の「A-171」
<単量体(D)>
メチルメタクリレート(略称「MMA」):三菱ガス化学株式会社製
ブチルアクリレート(略称「BA」):株式会社日本触媒製
エーテルサルフェート型アンモニウム塩(略称「SR-10」):ADEKA(株)社
製の「アデカリアソープSR-10」
アクリルアミドターシャルブチルスルホン酸ナトリウム:東亜合成(株)製の「ATB
S」
<その他の成分>
(脱水縮合触媒)
塩化リチウム(略称「LiCl」):関東化学株式会社製、中性塩
(ラジカル重合開始剤)
2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル):富士フイルム和光純薬株式
会社製の「V-65」
(その他)
縮合水(純水)
2-プロパノール:ナカライテスク(株)製
〔測定および評価方法〕
実施例および比較例における測定および評価を、以下の方法で行った。
【0111】
(合成)
実施例および比較例に記載の方法により、ポリシロキサン系樹脂を製造した際に、ポリシロキサン系樹脂の合成(重合)途中にゲル化が発生しない場合を「○(良好)」、ゲル化が発生した場合を「×(不良)」と評価した。
【0112】
(貯蔵安定性)
固形分濃度を40%に調整したポリシロキサン系樹脂を含む水溶液をガラス瓶内に密閉した状態で、50℃に昇温した熱風乾燥機内に静置した。50℃で10日の保存により、水溶液のゲル化が発生しない場合を「○(良好)」、水溶液のゲル化が発生した場合を「×(不良)」と評価した。
【0113】
(耐候性(光沢保持率))
国際公開第2016/052636号公報および特許第5555449号公報を参照して、得られたポリシロキサン系樹脂を硬化してなる硬化物の耐候性の評価を行った。
【0114】
簡潔には、メタルハライドランプ灯式試験機〔ダイプラ・ウィンテス株式会社製、型式KU-R5CI-A〕を用いて、後述する方法で作製した試験片上の硬化膜(硬化物)の促進耐候性試験を実施した。促進耐候性試験400時間前後における硬化膜の60°光沢値を測定し、光沢保持率を算出した。光沢保持率が高いほど、耐候性が良好であることを示す。
【0115】
なお、促進耐候性試験の試験条件は、次の通りである。
【0116】
照度:85mW/cm2
照射 63℃ 50% 6時間
結露 30℃ 98% 2時間
シャワー 結露の前後に30秒。
【0117】
(可撓性)
JIS A6909を参照し、得られたポリシロキサン系樹脂を硬化してなる硬化物の可撓性を測定した。簡潔には、厚みが0.3mmの亜鉛鉄板に膜厚を50μmで、ポリシロキサン系樹脂を塗布後、23℃、50%RHで2週間養生して塗膜(硬化物)を形成した。養生後、亜鉛鉄板を曲率直径10mmで90度折り曲げることにより、塗膜(硬化物)の可撓性を測定した。折り曲げ時に塗膜に割れが発生しない場合を「良」とし、塗膜に割れが発生した場合を「不良」とした。
【0118】
〔実施例1〕
(共縮合物の作製)
攪拌機、温度計および還流冷却器を備えた反応器に、表1に記載の量および種類のシラン化合物(A)、重合体(B)およびシラン化合物(C)と、脱水縮合触媒であるLiClと、縮合水として純水と、を仕込み、反応温度65℃にて3時間還流撹拌しながら縮合反応させることで、共縮合物を得た(縮合工程)。なお、縮合反応中に、ゲル化は発生しなかった。
【0119】
(グラフト共縮合物の作製)
攪拌機、温度計、還流冷却器、窒素ガス導入管および滴下ロートを備えた反応器に、
縮合工程で得られた共縮合物を仕込み、窒素ガスを導入しつつ65℃に昇温した後、表1に記載の量および種類の単量体(D)と、重合開始剤であるV-65を0.1重量部との混合溶液を滴下ロートから5時間かけて等速滴下した。その後、引き続き、65℃で2時間攪拌した後、室温まで冷却し、グラフト共縮合物として、ポリシロキサン系樹脂を得た(ラジカル重合工程)。
【0120】
(ポリシロキサン系樹脂を含む水溶液の作製)
作製したポリシロキサン樹脂について、ロータリーエバポレーターにより不揮発成分が90%以上になるまで脱揮を行った。続いて、得られた脱揮したポリシロキサン系樹脂を、不揮発成分が40%になるよう水に溶解し、室温まで冷却することで、ポリシロキサン系樹脂を含む水溶液を得た。
【0121】
(水性塗料の作成)
得られたポリシロキサン系樹脂を含む水溶液について、表2に示す配合処方で各成分を配合し、ポリシロキサン系樹脂を含む水性塗料(白色主剤塗料)を作製した。
【0122】
(試験片の作製)
国際公開第2016/052636号公報を参照して、「耐候性」を測定および評価するための試験片を作製した。簡潔には、上記で作製した水性塗料を、プライマーとしてハイポンファインプライマーII(日本ペイント製)を塗布したアルミ板(50mm×150mm)上に、エアスプレ-を用いて、乾燥膜厚が約40μmとなるように塗布し、23℃、50%RHにて1週間乾燥して、塗装板(硬化物が塗装されたアルミ板)を得た。この塗装板を試験片として用いた。
【0123】
〔実施例2~4、比較例1~5〕
各成分の種類および量を表1および表2に記載の通りに変更したこと以外は、実施例1と同様に、ポリシロキサン系樹脂、ポリシロキサン系樹脂を含む溶液、および、水性塗料を作製した。得られたポリシロキサン樹脂および当該ポリシロキサン系樹脂を硬化してなる硬化物について、合成途中のゲル化の有無、貯蔵安定性、耐候性および可撓性を測定・評価した。結果を表1に示す。
【0124】
【0125】
表1中、各数値の単位は、縮合水の当量数を除き、重量部である。
【0126】
【0127】
表2中、各数値の単位は、重量部である。
【0128】
〔結果〕
表1より、実施例1~4のポリシロキサン系樹脂は、可撓性および耐候性に優れる硬化物を提供できることが分かる。また、実施例1~4のポリシロキサン系樹脂は、合成途中にゲル化が発生せず、かつ、貯蔵安定性にも優れることが分かる。すなわち、本発明の一実施形態によれば、可撓性および耐候性に優れる硬化物を提供できる、ポリシロキサン系樹脂を提供でき、また、当該ポリシロキサン樹脂は貯蔵安定性にも優れることが示された。
【0129】
一方で、実施例1~4と、比較例1および2との比較より、重合体(B)を使用しなかった場合(重合体(B)を使用せず、単量体(D)を多量にグラフトした場合)、得られる樹脂を硬化してなる硬化物は、可撓性が不良となることが分かる。また、実施例1~4と、比較例3との比較により、重合体(B)を使用せず、かつ、無機成分であるシラン化合物(A)およびシラン化合物(C)の使用量を極端に低減した場合、得られる樹脂を硬化してなる硬化物は、耐候性が不良となることが分かる。実施例1~4と、比較例4および5との比較により、重合体(B)を使用せず、かつ、単量体(D)の使用量を低減した場合、得られる樹脂の貯蔵安定性が低下するとともに、樹脂を硬化してなる硬化物の可撓性が不良となることが明らかに分かる。さらに、比較例5より、このような樹脂は、水の多い条件下で合成した場合、ゲル化が発生し、実質的に樹脂を得ることができないことが分かる。以上より、重合体(B)を使用しない場合、得られる樹脂を硬化してなる硬化物の可撓性および耐候性を両立できない、あるいは、樹脂の合成自体が出来ないことが示された。
本発明によれば、可撓性および耐候性に優れる硬化物を提供し得る、ポリシロキサン系樹脂を提供できる。可撓性および耐候性に優れる硬化物は、コーティング剤、水系塗料等に好適に利用することができる。