(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091545
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】ポリシロキサン系樹脂およびポリシロキサン系樹脂溶液の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 290/04 20060101AFI20230623BHJP
【FI】
C08F290/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206343
(22)【出願日】2021-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】横井 宙是
(72)【発明者】
【氏名】松尾 陽一
【テーマコード(参考)】
4J127
【Fターム(参考)】
4J127AA03
4J127BB021
4J127BB101
4J127BB22
4J127BC021
4J127BC151
4J127BD061
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4J127BE12X
4J127BE341
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4J127BG171
4J127BG17Z
4J127CB12
4J127DA12
4J127FA07
4J127FA14
4J127FA15
(57)【要約】
【課題】可撓性および耐候性に優れる硬化物を提供し得る、ポリシロキサン系樹脂を提供する。
【解決手段】特定のシラン化合物(A)およびシラン化合物(B)を縮合してなる縮合物と、特定のラジカル重合性不飽和基を有する単量体(C)と、特定のラジカル重合性不飽和基を有するオリゴマー(D)と、を重合する重合工程を含む、ポリシロキサン系樹脂の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I):
R1
n-Si-(OR2)4-n ・・・(I)
(式中、R1は、それぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基、または非置換もしくは置換アリール基であり、R2は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1~10のアルキル基であり、nは、0~3の整数である。)で示されるシラン化合物(A)と、
ラジカル重合性不飽和基および加水分解性シリル基を有するシラン化合物(B)と、
の縮合物と、
ラジカル重合性不飽和基を有し、かつ、加水分解性シリル基を有さない単量体(C)と、
ラジカル重合性不飽和基を有し、主鎖が炭素原子を含み、かつ、Si-O-Si結合を含まず、数平均分子量が1000~100000であるオリゴマー(D)と、
をラジカル重合する重合工程を含む、ポリシロキサン系樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記オリゴマー(D)の主鎖が、ポリアルキレンオキサイド重合体、ポリ(メタ)アクリル重合体、およびポリイソブチレン重合体からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のポリシロキサン系樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記オリゴマー(D)が有するラジカル重合性不飽和基の数が1個または2個である、請求項1または2に記載のポリシロキサン系樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記オリゴマー(D)が、末端にラジカル重合性不飽和基を有するものである、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリシロキサン系樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記縮合物の有する、シラン化合物(B)に由来するラジカル重合性不飽和基の総数と、
前記オリゴマー(D)が有するラジカル重合性不飽和基の総数と、
の比率が、200:1~5:1である、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリシロキサン系樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記単量体(C)として、酸と塩基からなる塩構造を有する単量体を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリシロキサン系樹脂の製造方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法により得られたポリシロキサン系樹脂を、水に分散、乳化、または、溶解する工程を含む、ポリシロキサン系樹脂溶液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリシロキサン系樹脂およびポリシロキサン系樹脂溶液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリシロキサン系樹脂のような無機的な性質を有する樹脂に対し、有機的な性質を有するアクリル等をグラフトしたポリシロキサン樹脂(ポリシロキサン系樹脂)は、無機・有機ハイブリッド樹脂として興味深い特性があることから、産業的に注目されている。
【0003】
ポリシロキサン系樹脂は、高い耐久性を示す硬化物(塗膜)が得られることが知られており、コーティング剤、建築用シーリング材、接着剤、塗料等の広範な用途に使用されている。なかでも、塗料の分野において、ポリシロキサン系樹脂を含む水系塗料は、人体や環境に対して悪影響が少ないことから、市場への普及が進んでおり、様々な用途でのニーズが高まっている。
【0004】
このようなポリシロキサン系樹脂として、特許文献1には、ポリシロキサンと、アクリルシリコンと、を含むポリシロキサン系樹脂が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2017/169459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した技術は優れたものであるが、ポリシロキサン系樹脂を硬化させて得られる硬化物(硬化膜)の可撓性および耐候性の観点からさらなる改善の余地がある。
【0007】
そこで、本発明の一態様は、可撓性および耐候性に優れる硬化物を提供し得るポリシロキサン系樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のシラン化合物を縮合してなる縮合物に、ラジカル重合性不飽和基を有する単量体と、ラジカル重合性不飽和基を有するオリゴマーと、をラジカル重合することで、可撓性および耐候性に優れる硬化物を提供し得るポリシロキサン系樹脂を提供できることを初めて見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
したがって、本発明の一態様は、下記一般式(I):
R1
n-Si-(OR2)4-n ・・・(I)
(式中、R1は、それぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基、または非置換もしくは置換アリール基であり、R2は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1~10のアルキル基であり、nは、0~3の整数である。)で示されるシラン化合物(A)と、ラジカル重合性不飽和基および加水分解性シリル基を有するシラン化合物(B)と、の縮合物と、ラジカル重合性不飽和基を有し、かつ、加水分解性シリル基を有さない単量体(C)と、ラジカル重合性不飽和基を有し、主鎖が炭素原子を含み、かつ、Si-O-Si結合を含まず、数平均分子量が1000~100000であるオリゴマー(D)と、をラジカル重合する重合工程を含む、ポリシロキサン系樹脂の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、可撓性および耐候性に優れる硬化物を提供し得る、ポリシロキサン系樹脂の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の一形態について、以下に詳細に説明する。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。また、本明細書中に記載された文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。
【0012】
〔1.本発明の概要〕
ポリシロキサン樹脂を硬化してなる硬化物(硬化膜)は、シロキサン結合に由来する、その高い結合エネルギーから、高い耐久性を示す硬化物(塗膜)が得られる。一方で、ポリシロキサン樹脂を硬化してなる硬化物は可撓性が低くなる傾向があり、硬化物に割れが生じるなどの問題があった。
【0013】
ポリシロキサン樹脂を硬化してなる硬化物の可撓性を改善し、割れの発生を抑制する方法として、ポリシロキサン樹脂に(メタ)アクリル系単量体のようなラジカル重合性不飽和基を有する単量体をグラフトする方法が提案されている。係る方法においては、割れの発生を抑制するためには、多量のラジカル重合性不飽和基を有する単量体をポリシロキサン系樹脂にグラフトする必要がある。しかしながら、多量のラジカル重合性不飽和基を有する単量体を使用した場合、ラジカル重合性不飽和基を有する単量体の一部が、ポリシロキサン樹脂に重合せず、ラジカル重合性不飽和基を有する単量体同士で重合してしまうことを本発明者らは新たに見出した。さらに、ラジカル重合性不飽和基を有する単量体同士が重合してなる重合体は、フリーポリマー(FP)として、得られるポリシロキサン系樹脂中に残存してしまうこと、ならびに、このようなフリーのアクリルを含むポリシロキサン系樹脂を硬化してなる硬化物は、耐候性が不良となることも新たに見出した。また、単にラジカル重合性不飽和基を有する単量体の使用量を低減した場合は、ポリシロキサン樹脂を硬化してなる硬化物の可撓性を改善することが困難となる。
【0014】
このような状況にあって、本発明者らは、可撓性および耐候性に優れる硬化物を提供し得る、ポリシロキサン系樹脂を提供することを目的として鋭意検討した結果、特定のシラン化合物を縮合してなる縮合物(ポリシロキサン系樹脂)に対して、ラジカル重合性不飽和基を有する単量体と、ラジカル重合性不飽和基を有するオリゴマーと、をグラフト重合することにより、可撓性および耐候性に優れる硬化物を提供し得るポリシロキサン系樹脂を提供できることを新たに見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、ラジカル重合性不飽和基を有する単量体のみをポリシロキサン系樹脂にグラフト重合する場合、フリーの単量体が多く残存してしまう問題があったところ、本願発明者らは、ラジカル重合性不飽和基を有する単量体の一部を、あらかじめ少し高分子量化(オリゴマー化)したものに置き換えることにより、フリーの単量体を減らすことができ、その結果、得られる硬化物の物性として、耐候劣化し難く、かつ可撓性も付与できることを見出した。
【0015】
上述の通り、従来のポリシロキサン系樹脂は、得られる硬化物の可撓性と耐候性とを両立することができなかった。このような状況下にあって、可撓性および耐候性の両方に優れる硬化物を提供できるポリシロキサン系樹脂の製造方法(本発明の一実施形態に係るポリシロキサン系樹脂の製造方法)を見出したことは、驚くべき発見である。また、このようなポリシロキサン系樹脂は、特に塗料の分野において極めて有用である。
【0016】
さらに、本発明の一実施形態に係るポリシロキサン系樹脂の製造方法により提供されるポリシロキサン系樹脂を水系媒体(例えば、水)に分散または乳化することで、ポリシロキサン系樹脂溶液を提供することができる。本発明の一実施形態に係るポリシロキサン系樹脂の製造方法により提供されるポリシロキサン系樹脂は、ポリシロキサン系樹脂溶液とした場合であっても、可撓性および耐候性の両方に優れる硬化物(硬化膜)を提供できる。このことから、本発明の一実施形態に係るポリシロキサン系樹脂溶液の製造方法は、水系塗料の製造方法として極めて有用である。
【0017】
〔2.ポリシロキサン系樹脂の製造方法〕
本発明の一実施形態に係るポリシロキサン系樹脂の製造方法(以下、「本製造方法」と称する場合がある)は、下記一般式(I):
R1
n-Si-(OR2)4-n ・・・(I)
(式中、R1は、それぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基、または非置換もしくは置換アリール基であり、R2は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1~10のアルキル基であり、nは、0~3の整数である。)で示されるシラン化合物(A)(以下、単にシラン化合物(A)と称する場合がある)と、ラジカル重合性不飽和基および加水分解性シリル基を有するシラン化合物(B)(以下、単にシラン化合物(B)と称する場合がある)と、の縮合物(以下、単に縮合物と称する場合がある)と、ラジカル重合性不飽和基を有し、かつ、加水分解性シリル基を有さない単量体(C)(以下、単に単量体(C)と称する場合がある)と、ラジカル重合性不飽和基を有し、主鎖が炭素原子を含み、かつ、Si-O-Si結合を含まず、数平均分子量が1000~100000であるオリゴマー(D)(以下、単にオリゴマー(D)と称する場合がある)と、をラジカル重合する重合工程を含む。
【0018】
本製造方法は、上記の構成を有するために、可撓性および耐候性に優れる硬化物を提供し得る、ポリシロキサン系樹脂を提供することができる。
【0019】
<縮合物>
本発明の一実施形態に係る縮合物(以下、本縮合物と称する場合がある)は、シラン化合物(A)と、シラン化合物(B)と、を縮合してなる縮合物である。本縮合物は、シラン化合物(A)に由来する構成単位と、シラン化合物(B)に由来する構成単位と、がSi-O-Si結合を介して重合してなる縮合物であるとも言え、シラン化合物(A)に由来する構成単位と、シラン化合物(B)に由来する構成単位とを含む縮合物であるとも言える。
【0020】
本縮合物の数平均分子量は特に制限はないが、500~100000の範囲が好ましく、1000~10000が更に好ましい。
【0021】
ここで、本縮合物の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により求められる。通常、移動相としてクロロホルムを用い、測定はポリスチレンゲルカラムにて行い、数平均分子量はポリスチレン換算で求めることができる。
【0022】
(シラン化合物(A))
本発明の一実施形態に係るシラン化合物(A)は、下記一般式(I)で示される、加水分解性シリル基を有する化合物である:
R1
n-Si-(OR2)4-n ・・・(I)
(式中、R1は、それぞれ独立して炭素数1~10の置換もしくは非置換アルキル基、または非置換もしくは置換アリール基であり、R2は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1~10のアルキル基であり、nは、0~3の整数である。)
シラン化合物(A)は、後述するシラン化合物(B)とともに、本縮合物の主鎖であるポリシロキサン鎖を構成する主要成分である。シラン化合物(A)は、前記一般式(I)で示される、加水分解性シリル基を有し、かつ、ラジカル重合性基を有さないシラン化合物であるとも言える。
【0023】
一般式(I)のR1におけるアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基等が挙げられる。
【0024】
一般式(I)のR1におけるアリール基の具体例としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基等が挙げられる。
【0025】
一般式(I)のR2は水素原子または炭素数1~10のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。
【0026】
一般式(I)で示される具体的な化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリイソプロポキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリイソプロポキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリイソプロポキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、トリメチルモノメトキシシラン、トリフェニルモノメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトピロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0027】
一般式(I)におけるnは0~3の整数であればよいが、特に、nが1であることが好ましい。すなわち、シラン化合物(A)は、トリアルコキシシラン化合物であることが好ましい。nが1である場合、架橋性の加水分解性シリル基が3つとなり、より強固な網目構造のポリマーを形成することができる。nが1の化合物の具体例としては、入手性の観点から好適な化合物として、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0028】
シラン化合物(A)と、シラン化合物(B)とを縮合させやすいという観点から、一般式(I)におけるR2のアルキル基の炭素数は1~3が好ましく、最も好ましくは1である。
【0029】
(シラン化合物(B))
本発明の一実施形態に係るシラン化合物(B)は、ラジカル重合性基および加水分解性シリル基を有するシラン化合物である。本発明の一実施形態において、シラン化合物(B)は、下記一般式(III)で示される、加水分解性シリル基を有する化合物であることが好ましい:
R3
cR4
d-Si-(OR5)4-c-d ・・・(III)
(式中、R3は重合性不飽和基を有する炭素数1~10の置換アルキル基、アルケニル基、または重合性不飽和基を有しかつ任意にそれ以外の置換基を有しても良いアリール基であり、R4はそれぞれ独立して炭素数1~10の非置換もしくは置換アルキル基、または非置換もしくは置換アリール基であり、R5はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1~10のアルキル基であり、cは1~3の整数であり、dは0~2の整数であり、c+dは1~3の整数である)。なお、上記一般式(III)において、R3およびR4は、Si(ケイ素)に直接結合する基である。
【0030】
一般式(III)において、cは1~3の整数であり、dは0~2の整数であり、c+dは1~3の整数であればよいが、cが1であり、dが0または1であることが好ましく、特に、cが1であり、dが0であるが好ましい。すなわち、シラン化合物(B)は、トリアルコキシシラン化合物であることが好ましい。
【0031】
一般式(III)のR3は、ラジカル重合性不飽和基を有する炭素数1~10の置換アルキル基、アルケニル基、ラジカル重合性不飽和基を有する非置換または置換アリール基である。ラジカル重合性不飽和基としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基等が挙げられる。反応性の高さおよび汎用性の観点から、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0032】
R3がラジカル重合性不飽和基を有するアルキル基であるシラン化合物(B)としては、例えば、(メタ)アクリロキシメチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジメチルメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジメチルエトキシシラン、2-(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、2-(メタ)アクリロキシエチルメチルジメトキシシラン、2-(メタ)アクリロキシエチルジメチルメトキシシラン、2-(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、2-(メタ)アクリロキシエチルメチルジエトキシシラン、2-(メタ)アクリロキシエチルジメチルエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、4-(メタ)アクリロキシブチルトリメトキシシラン、4-(メタ)アクリロキシブチルメチルジメトキシシラン、4-(メタ)アクリロキシブチルジメチルメトキシシラン、4-(メタ)アクリロキシブチルトリエトキシシラン、4-(メタ)アクリロキシブチルメチルジエトキシシラン、4-(メタ)アクリロキシブチルジメチルエトキシシラン、5-(メタ)アクリロキシペンチルトリメトキシシラン、5-(メタ)アクリロキシペンチルメチルジメトキシシラン、5-(メタ)アクリロキシペンチルジメチルメトキシシラン、5-(メタ)アクリロキシペンチルトリエトキシシラン、5-(メタ)アクリロキシペンチルメチルジエトキシシラン、5-(メタ)アクリロキシペンチルジメチルエトキシシラン、6-(メタ)アクリロキシヘキシルトリメトキシシラン、6-(メタ)アクリロキシヘキシルメチルジメトキシシラン、6-(メタ)アクリロキシヘキシルジメチルメトキシシラン、6-(メタ)アクリロキシヘキシルトリエトキシシラン、6-(メタ)アクリロキシヘキシルメチルジエトキシシラン、6-(メタ)アクリロキシヘキシルジメチルエトキシシラン等が挙げられる。
【0033】
R3がアルケニル基であるシラン化合物(B)としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン等が挙げられる。
【0034】
R3が重合性不飽和基を有しかつ任意にそれ以外の置換基を有しても良いアリール基であるシラン化合物(B)としては、例えば、p-スチリルトリメトキシシラン、p-スチリルメチルジメトキシシラン、p-スチリルジメチルメトキシシラン、p-スチリルトリエトキシシラン、p-スチリルメチルジエトキシシラン、p-スチリルジメチルエトキシシラン等が挙げられる。
【0035】
これらの中でも、反応性の高さおよび汎用性の観点から、R3としては、(メタ)アクリロイル基置換アルキル基またはビニル基置換アルキル基が好ましい。
【0036】
一般式(III)のR4はそれぞれ独立して炭素数1~10の非置換もしくは置換アルキル基、または非置換もしくは置換アリール基である。
【0037】
一般式(III)のR4におけるアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基等が挙げられる。
【0038】
一般式(III)のR4におけるアリール基の具体例としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基等が挙げられる。
【0039】
一般式(III)のR4は、cが1であり、dが1である場合、メチル基であることが好ましい。
【0040】
一般式(III)のR5は水素原子または炭素数1~10のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。
【0041】
シラン化合物(B)と、シラン化合物(A)とを縮合させやすいという観点から、一般式(III)におけるR5のアルキル基の炭素数は1~3が好ましく、最も好ましくは1である。
【0042】
<縮合物の製造方法>
本縮合物の製造方法は特に限定されないが、例えば、シラン化合物(A)と、シラン化合物(B)と、を縮合する縮合工程により、本縮合物を提供することができる。本製造方法は、重合工程の前に、シラン化合物(A)と、シラン化合物(B)と、を縮合する縮合工程を含むことが好ましい。
【0043】
(縮合工程)
縮合工程は、シラン化合物(A)と、シラン化合物(B)とを、水(純水)および脱水縮合触媒の存在下で混合し、縮合(脱水縮合)する工程である。
【0044】
縮合工程におけるシラン化合物(A)と、シラン化合物(B)と、との使用量の比率は、適度な数のラジカル重合性不飽和基を縮合物に導入し、重合工程における縮合物同士の過剰なラジカル重合を低減する観点から、シラン化合物(A)と、シラン化合物(B)との合計量を100モル%に対し、シラン化合物(A)を80~99モル%、シラン化合物(B)を1~20モル%使用することが好ましく、シラン化合物(A)を85~97モル%、シラン化合物(B)を3~15モル%使用することがより好ましく、シラン化合物(A)を90~95モル%、シラン化合物(B)を5~10モル%使用することがさらに好ましい。
【0045】
本発明の一実施形態において、シラン化合物(A)と、シラン化合物(B)と、を脱水縮合させるために添加する水(縮合水)のモル数(当量)は、各成分の合計モル数に対して、例えば、0.25倍以上であり、好ましくは、0.5倍以上である。水のモル数が、各成分の合計モル数に対して、0.25倍以上であると、適切に縮合を行うことができ、十分な耐水性、耐候性、低タック性が期待できる。水のモル数は、多い分には特に制限はないが、貯蔵安定性の観点から、各成分の合計モル数に対して、4.0倍以下に抑えることが好ましい。これらの観点を踏まえ、縮合工程で添加する水のモル数は、各成分の合計モル数に対して、0.25~4.0倍が好ましく、0.5~3.0倍がさらに好ましく、1.0~2.5倍が特に好ましい。
【0046】
縮合工程において使用する脱水縮合触媒は、シラン化合物(A)と、シラン化合物(B)と、を含む混合物の脱水縮合反応を促進することが可能な物質であれば、特に限定されず、例えば、中性塩触媒、酸性触媒、塩基性触媒等が挙げられる。中でも、合成の容易性および、得られるポリシロキサン系樹脂の貯蔵安定性の観点から、中性塩触媒が好ましい。
【0047】
本明細書において、中性塩触媒とは、強酸と、強塩基とから生成する塩(中性塩)を意図する。具体的には、第一族元素イオン、第二族元素イオン、テトラアルキルアンモニウムイオン、およびグアニジウムイオンよりなる群から選ばれるいずれかのカチオンと、フッ化物イオンを除く第十七族元素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、および過塩素酸イオンよりなる群から選ばれるいずれかのアニオンとの組合せからなる塩である。中性塩触媒として使用される中性塩としては、例えば、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化ルビジウム、塩化セシウム、塩化フランシウム、塩化ベリリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ストロンチウム、塩化バリウム、塩化ラジウム、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラプロピルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラペンチルアンモニウム、塩化テトラヘキシルアンモニウム、塩化グアニジウム;臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化ルビジウム、臭化セシウム、臭化フランシウム、臭化ベリリウム、臭化マグネシウム、臭化カルシウム、臭化ストロンチウム、臭化バリウム、臭化ラジウム、臭化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラプロピルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラペンチルアンモニウム、臭化テトラヘキシルアンモニウム、臭化グアニジウム;ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ルビジウム、ヨウ化セシウム、ヨウ化フランシウム、ヨウ化ベリリウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化ストロンチウム、ヨウ化バリウム、ヨウ化ラジウム、ヨウ化テトラメチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラプロピルアンモニウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、ヨウ化テトラペンチルアンモニウム、ヨウ化テトラヘキシルアンモニウム、ヨウ化グアニジウム;硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸ルビジウム、硫酸セシウム、硫酸フランシウム、硫酸ベリリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸ストロンチウム、硫酸バリウム、硫酸ラジウム、硫酸テトラメチルアンモニウム、硫酸テトラエチルアンモニウム、硫酸テトラプロピルアンモニウム、硫酸テトラブチルアンモニウム、硫酸テトラペンチルアンモニウム、硫酸テトラヘキシルアンモニウム、硫酸グアニジウム;硝酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸ルビジウム、硝酸セシウム、硝酸フランシウム、硝酸ベリリウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸バリウム、硝酸ラジウム、硝酸テトラメチルアンモニウム、硝酸テトラエチルアンモニウム、硝酸テトラプロピルアンモニウム、硝酸テトラブチルアンモニウム、硝酸テトラペンチルアンモニウム、硝酸テトラヘキシルアンモニウム、硝酸グアニジウム;過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム、過塩素酸ルビジウム、過塩素酸セシウム、過塩素酸フランシウム、過塩素酸ベリリウム、過塩素酸マグネシウム、過塩素酸カルシウム、過塩素酸ストロンチウム、過塩素酸バリウム、過塩素酸ラジウム、過塩素酸テトラメチルアンモニウム、過塩素酸テトラエチルアンモニウム、過塩素酸テトラプロピルアンモニウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、過塩素酸テトラペンチルアンモニウム、過塩素酸テトラヘキシルアンモニウム、過塩素酸グアニジウム等が挙げられる。これら中性塩は、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を組合せて使用することもできる。
【0048】
酸性触媒としては、前記シラン化合物(A)、および、シラン化合物(B)、あるいは、希釈溶媒との相溶性の観点から、有機酸の触媒が好ましく、リン酸エステルやカルボン酸を好適に用いることができる。有機酸の具体例としては、例えば、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ジブチルピロホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、イソトリデシルアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、ビス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、ギ酸、酢酸、酪酸、イソ酪酸等が挙げられる。これらの酸性触媒は、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を組合せて使用することもできる。
【0049】
塩基性触媒としては、前記シラン化合物(A)、および、シラン化合物(B)、あるいは、希釈溶媒との相溶性の観点から、有機塩基の触媒が好ましく、アミン化合物を好適に用いることができる。有機塩基の具体例としては、例えば、トリエチルアミン、ジアザビシクロウンデセン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。これらの塩基性触媒は、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を組合せて使用することもできる。
【0050】
脱水縮合触媒の量は、前記シラン化合物(A)とシラン化合物(B)の合計量に対して、0.1ppm~50000ppmが好ましく、1ppm~10000ppmがより好ましく、5ppm~1000ppmが特に好ましく、10ppm~500ppmが最も好ましい。脱水縮合触媒の量が0.1ppm以上であると、触媒として適切に作用する。脱水縮合触媒の量は、多い程反応時間を短縮することができるものの、反応終了後にポリシロキサンから分離除去することが容易ではないことが多い。残存した触媒は、本製造方法により得られるポリシロキサン系樹脂の貯蔵安定性を低下させることがあるため、製造時間との兼ね合いもあるが、実用面を考えると少ない程、好適である。
【0051】
縮合工程において、シラン化合物(A)、シラン化合物(B)、水および脱水縮合触媒の他に、希釈溶媒を使用してもよい。シラン化合物(A)およびシラン化合物(B)は疎水性であり、反応時に水を使用することから、希釈溶媒は水溶性であることが好ましい。希釈溶媒の量に制限はないが、多くなると得られるポリシロキサンの濃度が低くなるため、生産コストの面から好ましくない。希釈溶媒の具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、ポリシロキサン系樹脂の製造後や塗膜の形成時に揮発させる可能性を考慮すると、メタノール、エタノール、2-プロパノールが特に好ましい。
【0052】
<重合工程>
重合工程は、本縮合物に対して、単量体(C)と、オリゴマー(D)とをラジカル重合する工程である。重合工程は、ラジカル重合開始剤を用いて、本縮合物と、単量体(C)およびオリゴマー(D)と、をラジカル重合する工程である、とも言える。
【0053】
(単量体(C))
単量体(C)は、ラジカル重合性不飽和基を有し、かつ、加水分解性シリル基を有さない単量体である。単量体(C)中のラジカル重合性不飽和基は、シラン化合物(B)に由来するラジカル重合性不飽和基との間でラジカル重合を行い、本縮合物に対して前記単量体(C)に由来するグラフト鎖を形成する。
【0054】
単量体(C)としては、ラジカル重合性不飽和基を有し、かつ、加水分解性シリル基を有さない単量体であれば特に限定されないが、例えば、以下に示すような酸と塩基からなる塩構造を有する単量体、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、およびその他の単量体が挙げられる。これらの各単量体の1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。中でも、得られるポリシロキサン系樹脂が、水に均一に分散または可溶なポリシロキサン系樹脂となり、ポリシロキサン系樹脂水溶液として好適に利用できるという利点があることから、単量体(C)は、酸と塩基からなる塩構造を有する単量体を含むことが好ましい。
【0055】
(酸と塩基からなる塩構造を有する単量体)
本発明の一実施形態に係る酸と塩基からなる塩構造を有する単量体における、塩構造は、例えば、強酸と強塩基との中性塩の構造、強酸と弱塩基との中性塩の構造、弱酸と強塩基との中性塩の構造、または弱酸と弱塩基との中性塩の構造であり得る。より具体的な塩構造としては、例えば、スルホン酸ナトリウム、スルホン酸カリウム、スルホン酸カルシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸カルシウム等(強酸と強塩基との中性塩の構造)、スルホン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム等(強酸と弱塩基との中性塩の構造)、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム等(弱酸と強塩基との中性塩の構造)、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等(弱酸と弱塩基との中性塩の構造)等が挙げられる。本発明の一実施形態において、塩構造は、好ましくは、スルホン酸ナトリウムまたはスルホン酸アンモニウムである。なお、本明細書において、「酸と塩基からなる塩構造を有する単量体」は、「ラジカル重合性不飽和基を有し、加水分解性シリル基を有さず、かつ、酸と塩基からなる塩構造を有する単量体」であるとも言える。
【0056】
酸と塩基からなる塩構造を有する単量体としては、より具体的には、ADEKA(株)製アデカリアソープSR-05、SR-10、SR-20、SR-1025、SR-2025、SR-3025、SR-10S、NE-10、NE-20、NE-30、NE-40、SE-10、SE-20、ER-10、ER-20、ER-30、ER-40、日本乳化剤(株)製Antox-MS-60、RMA-1120、RMA-564、RMA-568、RMA-506、MA-30、MA-50、MA-100、MA-150、RMA-1120、MPG130-MA、MPG-130MA、RMA-150M、RMA-300M、RMA-450M、RA-1020、RA-1820、第一工業製薬(株)製アクアロンKH-05、KH-10、RN-20、RN-30、RN-50、RN-2025、HS-10、HS-20、HS-1025、BC05、BC10、BC0515、BC1025、三洋化成工業(株)製エレミノールJS-2、JS-20、RS-30、花王(株)製ラテムルS-180、S-180A、PD-104、PD-420、PD-430、スルホエチルメタクリル酸ナトリウム、アクリルアミド-tブチルスルホン酸ナトリウム、2-(メタクリロイルオキシ)エタンスルホン酸ナトリウム、アクリルアミド-tブチルスルホン酸ナトリウム、2-(メタクリロイルオキシ)エタンスルホン酸カリウム、アクリルアミド-tブチルスルホン酸カリウム、2-(メタクリロイルオキシ)エタンスルホン酸カルシウム、アクリルアミド-tブチルスルホン酸カルシウム、スルホエチルメタクリル酸アンモニウム、アクリルアミド-tブチルスルホン酸アンモニウム、2-(メタクリロイルオキシ)エタンスルホン酸アンモニウム、アクリルアミド-tブチルスルホン酸アンモニウム、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、アクリル酸カルシウム、アクリル酸アンモニウム、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸カリウム、メタクリル酸カルシウム、メタクリル酸アンモニウム等が挙げられる。
【0057】
((メタ)アクリル酸アルキルエステル)
本発明の一実施形態において、(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、炭素数1~18個のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであり、水酸基、エポキシ基等の官能基を含まない(メタ)アルキル単量体であり得る。本発明の一実施形態において、(メタ)アクリル酸アルキルエステル中のアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、また、環状であるシクロアルキル基であってもよい。その具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)メタクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0058】
((メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の単量体)
(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の単量体としては、例えば、(メタ)アクリロニトリル等のニトリル基含有ラジカル重合性単量体;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有ラジカル重合性単量体;2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;2-スルホエチルメタクリレートナトリウム、2-スルホエチルメタクリレートアンモニウム、ポリオキシアルキレン鎖を有するラジカル重合性単量体等の親水性を有するラジカル重合性単量体;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等の重合性の不飽和結合を2つ以上有する単量体;トリフルオロ(メタ)アクリレート、ペンタフルオロ(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピルメタクリレート、β-(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート等のふっ素含有ラジカル重合性単量体;等が挙げられる。
【0059】
また、上記ポリオキシアルキレン鎖を有するラジカル重合性単量体としては、特に限定されないが、ポリオキアルキレン鎖を有するアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルが好ましい。その具体例としては、例えば、日本油脂(株)製ブレンマーPE-90、PE-200、PE-350、AE-90、AE-200、AE-350、PP-500、PP-800、PP-1000、AP-400、AP-550、AP-800、700PEP-350B、10PEP-550B、55PET-400、30PET-800、55PET-800、30PPT-800、50PPT-800、70PPT-800、PME-100、PME-200、PME-400、PME-1000、PME-4000、AME-400、50POEP-800B、50AOEP-800B、AEP、AET、APT、PLE、ALE、PSE、ASE、PKE、AKE、PNE、ANE、PNP、ANP、PNEP-600、共栄社化学(株)製ライトエステル130MA、041MA、MTG、ライトアクリレートEC-A、MTG-A、130A、DPM-A、P-200A、NP-4EA、NP-8EA、EHDG-A、日本乳化剤(株)製MA-30、MA-50、MA-100、MA-150、RMA-1120、RMA-564、RMA-568、RMA-506、MPG130-MA、Antox MS-60、MPG-130MA、RMA-150M、RMA-300M、RMA-450M、RA-1020、RA-1120、RA-1820、新中村化学工業(株)製NK-ESTER M-20G、M-40G、M-90G、M-230G、AMP-10G、AMP-20G、AMP-60G、AM-90G、LA等があげられる。
【0060】
重合工程における単量体(C)の使用量は特に限定されないが、過剰なフリーポリマーの発生を低減する観点から、本縮合物の有するラジカル重合性不飽和基の総数(モル)と、単量体(C)の有するラジカル重合性不飽和基の総数(モル)との比率が、1:1~1:100であることが好ましく、1:2~1:50であることがより好ましく、1:5~1:25であることがさらに好ましい。なお、本縮合物の有するラジカル重合性不飽和基は、シラン化合物(B)に由来する。そのため、本縮合物の有するラジカル重合性不飽和基の総数(モル)は、本縮合物の含むシラン化合物(B)の総数(モル)に、該シラン化合物(B)の有するラジカル重合性不飽和基の数を乗じた値となる。
【0061】
(オリゴマー(D))
オリゴマー(D)は、ラジカル重合性不飽和基を有し、主鎖が炭素原子を含み、かつ、Si-O-Si結合を含まず、数平均分子量が1000~100000である。オリゴマー(D)中のラジカル重合性不飽和基は、シラン化合物(B)に由来するラジカル重合性不飽和基および/または単量体(C)に由来するラジカル重合性不飽和基との間でラジカル重合を行い、本縮合物に対してグラフト鎖を形成する。また、オリゴマー(D)の構造は、直鎖状であってもよく、分枝状であってもよい。
【0062】
本明細書において、「オリゴマー(D)の主鎖が炭素原子を含む」とは、該オリゴマーの主鎖を構成する構成単位が、-C-O-結合、あるいは、-C-C-結合により結合していることを意図する。本発明の一実施形態に係るオリゴマー(D)の主鎖は、少なくとも2つの構成単同士が-C-O-結合、あるいは、-C-C-結合により結合していればよく、全ての構成単位が-C-O-結合、あるいは、-C-C-結合により結合していてもよい。
【0063】
本明細書において、「オリゴマー(D)の主鎖がSi-O-Si結合を含まない」とは、該オリゴマーの主鎖を構成する構成単位同士が、Si-O-Si結合(シロキサン結合と称する場合もある)により結合していないことを意図する。すなわち、オリゴマー(D)は、加水分解性シリル基を有する化合物を脱水縮合してなる縮合物である(換言すると、加水分解性シリル基を有する化合物に由来する構成単位を、Si-O-Si結合を介して重合してなる重合体である)、本縮合物とは異なる物質である。
【0064】
本発明の一実施形態に係るオリゴマー(D)の主鎖は、合成が容易という利点があることから、ポリアルキレンオキサイド系重合体、ポリ(メタ)アクリル系重合体、およびポリイソブチレン系重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、特に、より耐候性に優れる硬化物を提供できることから、ポリ(メタ)アクリル重合体であることがより好ましい。
【0065】
(ポリアルキレンオキサイド系重合体)
本発明の一実施形態において、オリゴマー(D)の主鎖は、ポリアルキレンオキサイド系重合体であってもよい。ポリアルキレンオキサイド系重合体の主要な構成単位(アルキレンオキサイド系モノマー単位)としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が挙げられる。主鎖がポリアルキレンオキサイド系重合体であるオリゴマー(D)は、例えば、アルキレンオキサイド系モノマーを公知の方法で重合することにより得ることができる。
【0066】
本発明の一実施形態において、主鎖がポリアルキレンオキサイド系重合体であるオリゴマー(D)の主鎖は、アルキレンオキサイド系モノマーと、その他の従来公知なモノマーとを共重合、更にはブロック共重合させてなる重合体であっても構わない。なお、鎖がポリアルキレンオキサイド系重合体であるオリゴマー(D)の主鎖が、アルキレンオキサイド系モノマーに加え、その他の従来公知なモノマーを含む場合、オリゴマー(D)の主鎖の全量100重量%中、アルキレンオキサイド系モノマーに由来する構成単位が40重量%以上含まれていることが好ましい。
【0067】
(ポリ(メタ)アクリル系重合体)
本発明の一実施形態において、オリゴマー(D)の主鎖は、ポリ(メタ)アクリル系重合体であることが好ましい。ポリ(メタ)アクリル系重合体の主要な構成単位((メタ)アクリル系モノマー単位)としては、各種のものを用いることができる。例示するならば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸-tert-ブチル、(メタ)アクリル酸-n-ペンチル、(メタ)アクリル酸-n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸-n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸-n-オクチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸-2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸-3-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2-アミノエチル、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物等の(メタ)アクリル酸系モノマーである。主鎖がポリ(メタ)アクリル系重合体であるオリゴマー(D)は、例えば、これらの(メタ)アクリル系モノマーを公知の方法で重合することにより得ることができる。
【0068】
これらの(メタ)アクリル酸系モノマーは、単独で用いても良いし、複数を共重合させても構わない。なかでも、生成されるポリ(メタ)アクリル系重合体を主鎖とするオリゴマー(D)の物性等の観点から、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーが好ましく、より好ましくは、アクリル酸エステルモノマーであり、特に好ましくは(メタ)アクリル酸とエステル結合しているアルキル基を有する、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーである。(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとしては、より具体的には、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸イソプロポキシエチル等のアルキル基を有しており、かつ、上記アルキル基は炭素数が1~5のアルコキシ基を有している(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、tert-ブチル(メタ)アクリル酸tert-ブチル等のアルキル基の炭素数が1~5個の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル等のアルキル基の炭素数が6~15個の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸イコシル、(メタ)アクリル酸ドコシル等のアルキル基の炭素数が16~25個の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー;等が挙げられる。
【0069】
本発明の一実施形態において、主鎖がポリ(メタ)アクリル系重合体であるオリゴマー(D)の主鎖は、(メタ)アクリル系モノマーと、その他の従来公知なモノマーとを共重合、更にはブロック共重合させてなる重合体であっても構わない。なお、主鎖がポリ(メタ)アクリル系重合体であるオリゴマー(D)の主鎖が、(メタ)アクリル系モノマーに加え、その他の従来公知なモノマーを含む場合、オリゴマー(D)の主鎖の全量100重量%中、(メタ)アクリル系モノマーに由来する構成単位が40重量%以上含まれていることが好ましい。
【0070】
(ポリイソブチレン系重合体)
本発明の一実施形態において、オリゴマー(D)の主鎖は、ポリイソブチレン系重合体であってもよい。ポリイソブチレン系重合体は、イソブチレン単位を主要な構成単位とする重合体である。主鎖がポリイソブチレン系重合体であるオリゴマー(D)は、例えば、イソブチレン系モノマーを公知の方法で重合することにより得ることができる。
【0071】
本発明の一実施形態において、主鎖がポリイソブチレン系重合体であるオリゴマー(D)は、イソブチレンと、その他の従来公知なモノマーとを共重合、更にはブロック共重合させてなる重合体であっても構わない。なお、主鎖がポリイソブチレン系重合体であるオリゴマー(D)の主鎖が、イソブチレンに加え、その他の従来公知なモノマーを含む場合、オリゴマー(D)の主鎖の全量100重量%中、イソブチレンに由来する構成単位が40重量%以上含まれていることが好ましい。
【0072】
オリゴマー(D)の数平均分子量は1000~100000であればよいが、5000~50000が好ましく、10000~25000がより好ましい。オリゴマー(D)の数平均分子量が上記の範囲内であることにより、可撓性および耐候性に優れる硬化物を提供できる。
【0073】
ここで、オリゴマー(D)の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により求められる。通常、移動相としてクロロホルムを用い、測定はポリスチレンゲルカラムにて行い、数平均分子量はポリスチレン換算で求めることができる。
【0074】
オリゴマー(D)の有するラジカル重合性不飽和基の数は、1個以上である限り特に限定されないが、オリゴマー(D)中にラジカル重合性不飽和基が3個以上存在する場合、合成中にゲル化が発生する虞があるため、オリゴマー(D)の有するラジカル重合性不飽和基の数は、1個または2個であることが好ましい。
【0075】
オリゴマー(D)は、(1)主鎖中にラジカル重合性不飽和基を有していてもよく、(2)主鎖の末端にラジカル重合性不飽和基を有していてもよく、あるいは、(3)主鎖中と、主鎖の末端の両方にラジカル重合性不飽和基を有していてもよい。中でも、合成が容易であることから、オリゴマー(D)は、(2)主鎖の末端にラジカル重合性不飽和基を有するものであることが好ましい。
【0076】
重合工程におけるオリゴマー(D)の使用量は特に限定されないが、過剰なフリーポリマーの発生を低減する観点から、本縮合物の有する、シラン化合物(B)に由来するラジカル重合性不飽和基の総数(モル)と、オリゴマー(D)の有するラジカル重合性不飽和基の総数(モル)との比率が、200:1~5:1であることが好ましく、100:1~10:1であることがより好ましく、80:1~20:1であることがさらに好ましい。
【0077】
(ラジカル重合開始剤)
ラジカル重合開始剤は、本縮合物中の、シラン化合物(B)に由来するラジカル重合性基と、単量体(C)およびオリゴマー(D)に由来するラジカル重合性基との間でラジカル重合反応を開始させることが可能な物質であれば、特に限定されない。
【0078】
本発明の一実施形態において、ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、tert-ブチルパーオキシピバレート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート等が挙げられる。
【0079】
本発明の一実施形態において、ラジカル重合開始剤の量は、例えば、重合工程に供する縮合物の全量100重量%に対して0.01~10重量%であり、好ましくは、0.05~7重量%であり、より好ましくは、0.1~5重量%である。かかるラジカル重合開始剤の量が0.01重量%以上であると、ラジカル重合が適切に進行する。また、ラジカル重合開始剤の量が10重量%以下であると、適切な分子量の重合体を得ることができる。
【0080】
重合工程において、本縮合物、単量体(C)、オリゴマー(D)およびラジカル重合開始剤の他に、本発明の効果を奏する範囲内で、任意の添加剤を添加してもよい。そのような添加剤については、当業者により、適宜選択され得る。
【0081】
〔3.ポリシロキサン系樹脂溶液の製造方法〕
本製造方法により得られたポリシロキサン系樹脂を、水に分散、乳化、または溶解することにより、ポリシロキサン系樹脂溶液を提供することができる。すなわち、本発明の一実施形態に係るポリシロキサン系樹脂溶液の製造方法(以下、本樹脂溶液の製造方法と称する場合がある)は、本製造方法により得られたポリシロキサン系樹脂を、水に分散、乳化、または溶解する工程を含む。ポリシロキサン系樹脂を、水に分散、乳化、または溶解する工程は、ポリシロキサン系樹脂と、水と、を混合する工程であるとも言える。
【0082】
本樹脂溶液の製造方法により得られるポリシロキサン系樹脂溶液は、本ポリシロキサン系樹脂を含むため、可撓性および耐候性に優れた硬化物を提供することができる。そのため、水系塗料の用途に好適に使用することができる。
【0083】
本樹脂溶液の製造方法において、本製造方法により得られたポリシロキサン系樹脂を水と混合する際に、本発明の効果を奏する範囲で、当該技術分野(とりわけ、塗料の分野)において通常用いられる添加剤をさらに混合してもよい。そのような添加剤としては、例えば、硬化触媒、顔料、充填剤、可塑剤、成膜助剤、湿潤剤、分散剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤、酸化防止剤、沈降防止剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、凍結防止剤、抗菌剤、防カビ・防藻剤、粘着付与剤、防錆剤等が挙げられる。添加剤としては、1種のみが含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。これら添加剤の量は、その使用目的に応じて当業者が適宜設定可能である。
【0084】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0085】
すなわち、本発明の一態様は、以下を含む。
<1>下記一般式(I):R1
n-Si-(OR2)4-n ・・・(I)
(式中、R1は、それぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基、または非置換もしくは置換アリール基であり、R2は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1~10のアルキル基であり、nは、0~3の整数である。)で示されるシラン化合物(A)と、ラジカル重合性不飽和基および加水分解性シリル基を有するシラン化合物(B)と、
の縮合物と、ラジカル重合性不飽和基を有し、かつ、加水分解性シリル基を有さない単量体(C)と、ラジカル重合性不飽和基を有し、主鎖が炭素原子を含み、かつ、Si-O-Si結合を含まず、数平均分子量が1000~100000であるオリゴマー(D)と、をラジカル重合する重合工程を含む、ポリシロキサン系樹脂の製造方法。
<2>前記オリゴマー(D)の主鎖が、ポリアルキレンオキサイド重合体、ポリ(メタ)アクリル重合体、およびポリイソブチレン重合体からなる群より選択される少なくとも1種である、<1>に記載のポリシロキサン系樹脂の製造方法。
<3>前記オリゴマー(D)が有するラジカル重合性不飽和基の数が1個または2個である、<1>または<2>に記載のポリシロキサン系樹脂の製造方法。
<4>前記オリゴマー(D)が、末端にラジカル重合性不飽和基を有するものである、<1>~<3>のいずれかに記載のポリシロキサン系樹脂の製造方法。
<5>前記縮合物の有する、シラン化合物(B)に由来するラジカル重合性不飽和基の総数と、前記オリゴマー(D)が有するラジカル重合性不飽和基の総数と、
の比率が、200:1~5:1である、<1>~<4>のいずれかに記載のポリシロキサン系樹脂の製造方法。
<6>前記単量体(C)として、酸と塩基からなる塩構造を有する単量体を含む、<1>~<5>のいずれかに記載のポリシロキサン系樹脂の製造方法。
<7><1>~<6>のいずれかに記載の製造方法により得られたポリシロキサン系樹脂を、水に分散、乳化、または溶解する工程を含む、ポリシロキサン系樹脂溶液の製造方法。
【実施例0086】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0087】
〔材料〕
実施例および比較例において、以下の材料を使用した。
【0088】
<シラン化合物(A)>
メチルトリメトキシシラン(略称「M-TMS」):ダウ・東レ(株)製の「Z-6033」
フェニルトリメトキシシラン(略称「Ph-TMS」):ダウ・東レ(株)製の「Z-6124」
<シラン化合物(B)>
ビニルトリメトキシシラン(略称「Vi-TMS」):モメンティブ社製の「A-171」
<単量体(C)>
メチルメタクリレート(略称「MMA」):三菱ガス化学株式会社製
ブチルアクリレート(略称「BA」):株式会社日本触媒製
エーテルサルフェート型アンモニウム塩(略称「SR-10」):ADEKA(株)社
製の「アデカリアソープSR-10」
アクリルアミド-tブチルスルホン酸ナトリウム:東亜合成(株)製の「ATS」
<オリゴマー(D)の材料>
エチル2-ブロモアジペート(東京化成工業株式会社製)
臭化第一銅:富士フイルム和光純薬株式会社製
アセトニトリル:富士フイルム和光純薬株式会社製
ペンタメチルジエチレントリアミン(略称「トリアミン」):東京化成工業株式会社製
トルエン:三菱ケミカル株式会社製
アクリル酸カリウム:日本触媒製
4-ヒドロキシ-TEMPO:シグマ アルドリッチ社製
ジメチルアセトアミド:三菱ガス化学株式会社製
<その他の成分>
(脱水縮合触媒)
塩化リチウム(略称「LiCl」):関東化学株式会社製、中性塩
(ラジカル重合開始剤)
2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル):富士フイルム和光純薬株式
会社製の「V-65」
(その他)
縮合水(純水)
〔測定および評価方法〕
実施例および比較例における測定および評価を、以下の方法で行った。
【0089】
(合成)
実施例および比較例に記載の方法により、ポリシロキサン系樹脂を製造した際に、ポリシロキサン系樹脂の合成(重合)途中にゲル化が発生しない場合を「○(良好)」、ゲル化が発生した場合を「×(不良)」と評価した。
【0090】
(耐候性(光沢保持率))
国際公開第2016/052636号公報および特許第5555449号公報を参照して、得られたポリシロキサン系樹脂を硬化してなる硬化物の耐候性の評価を行った。
【0091】
簡潔には、メタルハライドランプ灯式試験機〔ダイプラ・ウィンテス株式会社製、型式KU-R5CI-A〕を用いて、後述する方法で作製した試験片上の硬化膜(硬化物)の促進耐候性試験を実施した。促進耐候性試験400時間前後における硬化膜の60°光沢値を測定し、光沢保持率を算出した。光沢保持率が高いほど、耐候性が良好であることを示す。
【0092】
なお、促進耐候性試験の試験条件は、次の通りである。
【0093】
照度:85mW/cm2
照射 63℃ 50% 6時間
結露 30℃ 98% 2時間
シャワー 結露の前後に30秒。
【0094】
(可撓性)
JIS A6909を参照し、得られたポリシロキサン系樹脂を硬化してなる硬化物の可撓性を測定した。簡潔には、厚みが0.3mmの亜鉛鉄板に膜厚を50μmで、ポリシロキサン系樹脂を塗布後、23℃、50%RHで2週間養生して塗膜(硬化物)を形成した。養生後、亜鉛鉄板を曲率直径10mmで90度折り曲げることにより、塗膜(硬化物)の可撓性を測定した。折り曲げ時に塗膜に割れが発生しない場合を「良」とし、塗膜に割れが発生した場合を「不良」とした。
【0095】
〔合成例1〕
(オリゴマー(D)の作製)
脱酸素状態にした反応器に、臭化第一銅0.42重量部、および、ブチルアクリレート20.0重量部を添加し、80℃で加熱攪拌した。さらに、重合溶媒としてアセトニトリル8.8重量部と、開始剤としてエチル2-ブロモアジペート1.90重量部とを、反応器内に添加し、80℃で混合した。混合液の温度を約80℃に調節し、トリアミン0.02重量部を添加して、重合反応を開始した。重合反応開始後、ブチルアクリレート80.0重量部を反応器内に逐次添加し、重合反応を進めた。重合反応中、適宜トリアミンを追加で添加することで、重合反応の速度を調整した。重合反応に使用したトリアミンの総量は0.15重量部であった。モノマー転化率(重合反応率)が約95%以上となった時点で重合反応を停止し、揮発分を減圧脱揮して除去することで、重合体濃縮物を得た。
【0096】
得られた濃縮物をトルエンで希釈し、ろ過助剤、吸着剤(キョーワード700SEN:協和化学製)、ハイドロタルサイト(キョーワード500SH:協和化学製))を添加し、80~100℃程度で加熱攪拌した後、固形成分を濾過除去した。さらに、ろ液を減圧濃縮することで、重合体粗精製物を得た。
【0097】
得られた重合体粗精製物に、アクリル酸カリウム1.98重量部、4-ヒドロキシ-TEMPO100ppm、および、溶剤としてジメチルアセトアミド(三菱ガス化学株式会社製)100重量部を添加し、70℃で3時間反応させた。反応後、溶媒を減圧留去し、重合体濃縮物を得た。得られた濃縮物をトルエンで希釈し、固形成分を濾過除去した。ろ液を減圧濃縮することで、片末端に1つのラジカル重合性不飽和基であるアクリロイル基を有し、数平均分子量が14,000であるオリゴマー(D)を得た。
【0098】
〔実施例1〕
(縮合物の作製)
攪拌機、温度計および還流冷却器を備えた反応器に、表1に記載の量および種類のシラン化合物(A)およびシラン化合物(B)と、脱水縮合触媒であるLiClと、縮合水として純水と、を仕込み、反応温度65℃にて3時間還流撹拌しながら縮合反応させることで、縮合物を得た(縮合工程)。なお、縮合反応中に、ゲル化は発生しなかった。
【0099】
(重合工程)
攪拌機、温度計、還流冷却器、窒素ガス導入管および滴下ロートを備えた反応器に、上記縮合工程で得られた縮合物を仕込み、窒素ガスを導入しつつ65℃に昇温した後、表1に記載の量および種類の単量体(C)および上記〔製造例1〕で作製したオリゴマー(D)と、重合開始剤であるV-65を0.1重量部との混合溶液を滴下ロートから5時間かけて等速滴下した。その後、引き続き、65℃で2時間攪拌した後、室温まで冷却し、ポリシロキサン系樹脂を得た。
【0100】
(ポリシロキサン系樹脂溶液の作製)
作製したポリシロキサン樹脂について、ロータリーエバポレーターにより不揮発成分が90%以上になるまで脱揮を行った。続いて、得られた脱揮したポリシロキサン系樹脂を、不揮発成分が40%になるよう水に溶解し、室温まで冷却することで、ポリシロキサン系樹脂を含む水溶液を得た。
【0101】
(水性塗料の作成)
得られたポリシロキサン系樹脂溶液について、表2に示す配合処方で各成分を配合し、ポリシロキサン系樹脂を含む水性塗料(白色主剤塗料)を作製した。
【0102】
(試験片の作製)
国際公開第2016/052636号公報を参照して、「耐候性」を測定および評価するための試験片を作製した。簡潔には、上記(水性塗料の作成)で作製した水性塗料を、プライマーとしてハイポンファインプライマーII(日本ペイント製)を塗布したアルミ板(50mm×150mm)上に、エアスプレ-を用いて、乾燥膜厚が約40μmとなるように塗布し、23℃、50%RHにて1週間乾燥して、塗装板(硬化物が塗装されたアルミ板)を得た。この塗装板を試験片として用いた。得られた試験片を用いて、得られたポリシロキサン系樹脂を硬化してなる硬化物の耐候性および可撓性を測定・評価した。結果を表1に示す。
【0103】
〔実施例2~3、比較例1~3〕
各成分の種類および量(合成処方)を表1および表2に記載の通りに変更したこと以外は、実施例1と同様に、ポリシロキサン系樹脂、ポリシロキサン系樹脂溶液、および、水性塗料を作製した。得られたポリシロキサン樹脂および当該ポリシロキサン系樹脂を硬化してなる硬化物について、合成途中のゲル化の有無、耐候性および可撓性を測定・評価した。結果を表1に示す。
【0104】
【0105】
表1中、各数値の単位は、特記しない限り重量部である。
【0106】
【0107】
表2中、各数値の単位は、特記しない限り重量部である。
【0108】
〔結果〕
表1より、本製造方法により得られた実施例1~3のポリシロキサン系樹脂は、可撓性および耐候性に優れる硬化物を提供できることが分かる。また、実施例1~3のポリシロキサン系樹脂は、合成途中にゲル化が発生せず、安定的に生産できることも分かる。すなわち、本製造方法によれば、可撓性および耐候性に優れる硬化物を提供できる、ポリシロキサン系樹脂を提供でき、また、当該ポリシロキサン樹脂はゲル化を生じることなく安定的に生産できることが示された。
【0109】
一方で、実施例1~3と、比較例1との比較より、オリゴマー(D)を使用しなかった場合、得られるポリシロキサン系樹脂を硬化してなる硬化物は、耐候性が不良となることが分かる。また、実施例3と、比較例2および3との比較により、オリゴマー(D)を使用せず、かつ、縮合物の量(シラン化合物(A)およびシラン化合物(B)の使用量)を大きくした場合、得られるポリシロキサン系樹脂を硬化してなる硬化物は、可撓性が不良となることが分かる。以上より、オリゴマー(D)を使用しない場合、得られるポリシロキサン系樹脂を硬化してなる硬化物の可撓性および耐候性を両立することが出来ないことが示された。
本発明によれば、可撓性および耐候性に優れる硬化物を提供し得る、ポリシロキサン系樹脂の製造方法を提供できる。可撓性および耐候性に優れる硬化物は、コーティング剤、水系塗料等に好適に利用することができる。