(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091564
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】乳含有食品の凝集を抑制する方法、乳含有食品の凝集抑制剤、及び乳含有食品
(51)【国際特許分類】
A23C 9/00 20060101AFI20230623BHJP
A23C 9/152 20060101ALI20230623BHJP
A23L 11/65 20210101ALI20230623BHJP
A23L 11/60 20210101ALI20230623BHJP
A23C 11/00 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
A23C9/00
A23C9/152
A23L11/65
A23L11/60
A23C11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206368
(22)【出願日】2021-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】591014097
【氏名又は名称】サンエイ糖化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】林 佳奈子
(72)【発明者】
【氏名】深見 健
【テーマコード(参考)】
4B001
4B020
【Fターム(参考)】
4B001AC02
4B001AC45
4B001AC46
4B001AC99
4B001BC07
4B001BC08
4B001EC53
4B001EC99
4B020LB18
4B020LG05
4B020LG09
4B020LK01
4B020LK03
4B020LP03
4B020LP19
4B020LQ06
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、乳含有食品の凝集を抑制する方法、乳含有食品の凝集抑制剤、及び乳含有食品を提供することである。
【解決手段】本発明は、マルトビオン酸及びマルトビオン酸塩から選択される少なくとも1つ以上の成分と、塩基性化合物とを、乳含有食品に配合することにより、乳含有食品の凝集を抑制する方法であって、成分の質量に対する前記塩基性化合物の質量の割合は、0.015以上である方法、乳含有食品の凝集抑制剤及び乳含有食品を提供する。前記マルトビオン酸塩は、マルトビオン酸カルシウムやマルトビオン酸マグネシウムであることが好ましく、前記塩基性化合物が、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、クエン酸三ナトリウム、又はクエン酸三カリウムであることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルトビオン酸及びマルトビオン酸塩から選択される少なくとも1つ以上の成分と、塩基性化合物とを、乳含有食品に配合することにより、乳含有食品の凝集を抑制する方法であって、
前記成分の質量に対する前記塩基性化合物の質量の割合は、0.015以上である、方法。
【請求項2】
前記マルトビオン酸塩が、マルトビオン酸カルシウム又はマルトビオン酸マグネシウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記塩基性化合物が、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、クエン酸三ナトリウム、又はクエン酸三カリウムである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記乳含有食品に、前記塩基性化合物を配合した後に、前記成分を配合する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
マルトビオン酸及びマルトビオン酸塩から選択される少なくとも1つ以上の成分と、塩基性化合物とを含み、
前記成分の質量に対する前記塩基性化合物の質量の割合が、質量基準で、0.015以上である、乳含有食品の凝集抑制剤。
【請求項6】
請求項5に記載の凝集抑制剤を含有する、乳含有食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳含有食品の凝集を抑制する方法、乳含有食品の凝集抑制剤、及び乳含有食品に関する。
【背景技術】
【0002】
国民栄養調査によると、カルシウムの摂取量は多くの世代で摂取目安量を下回っており、摂取量の向上が望まれる。乳や乳製品は、カルシウム補給のために選択されることもあり、乳や乳製品を含む食品(乳含有食品)のカルシウム含量を高めることができれば、カルシウム摂取を望む消費者に対し、高い訴求力を持った商品開発が可能となる。しかし、乳含有食品にカルシウムを添加すると、殺菌等の加熱処理で、乳に含まれるタンパク質とカルシウムが反応して凝集を生じ、嗜好性を著しく損なう。
【0003】
このような乳含有食品の凝集を抑制しカルシウム含量の高い乳含有食品を調製する方法として、乳酸グルコン酸クエン酸カルシウムを加え熱処理して粘性のある飲料を得る方法(特許文献1参照)や、水に難溶性又は不溶性のカルシウム塩を結晶セルロース及びゲル化能を有する多糖類で分散させる方法(特許文献2参照)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2007-512825号公報
【特許文献2】特開2001-178411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、乳含有食品の凝集を抑制して、より商品価値を高めることができる、その他の方法が望まれる。
【0006】
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、乳含有食品の凝集を抑制する方法、乳含有食品の凝集抑制剤、及び乳含有食品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、マルトビオン酸及びマルトビオン酸塩から選択される少なくとも1つ以上の成分と塩基性化合物とを、特定の割合で乳含有食品に添加することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下を提供する。
【0008】
(1) マルトビオン酸及びマルトビオン酸塩から選択される少なくとも1つ以上の成分と、塩基性化合物とを、乳含有食品に配合することにより、乳含有食品の凝集を抑制する方法であって、
前記成分の質量に対する前記塩基性化合物の質量の割合は、0.015以上である、方法。
【0009】
(2) 前記マルトビオン酸塩が、マルトビオン酸カルシウム又はマルトビオン酸マグネシウムである、(1)に記載の乳含有食品。
【0010】
(3) 前記塩基性化合物が、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、クエン酸三ナトリウム、又はクエン酸三カリウムである、(1)又は(2)に記載の乳含有食品。
【0011】
(4) 前記乳含有食品に、前記塩基性化合物を配合した後に、前記成分を配合する、(1)~(3)のいずれか1つに記載の方法。
【0012】
(5) マルトビオン酸及びマルトビオン酸塩から選択される少なくとも1つ以上の成分と、塩基性化合物とを含み、
前記成分の質量に対する前記塩基性化合物の質量の割合が、質量基準で、0.015以上である、乳含有食品の凝集抑制剤。
【0013】
(6) (5)に記載の凝集抑制剤を含有する、乳含有食品。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、乳含有食品の凝集を抑制する方法、乳含有食品の凝集抑制剤、及び乳含有食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨を限定するものではない。
【0016】
<乳含有食品の凝集を抑制する方法>
本発明の乳含有食品の凝集を抑制する方法(以下「本発明の凝集抑制方法」ともいう)は、マルトビオン酸及びマルトビオン酸塩から選択される少なくとも1つ以上の成分と、塩基性化合物とを、乳含有食品に配合することにより、乳含有食品の凝集を抑制する方法であって、前記成分の質量に対する前記塩基性化合物の質量の割合は、0.015以上である。
【0017】
(乳含有食品)
本明細書において、「乳含有食品」は、乳及び乳製品から選択される少なくとも一種を含有する食品を指す。具体例としては、加工乳やカフェオレ、ドレッシング等のように液状食品として提供されるもの、ゼリー、プリンのように半固形状態で提供されるもの、ルウのように溶かして喫食に提供されるもの、ヨーグルトのように発酵させるもの等が挙げられる。
【0018】
乳及び乳製品とは、乳及び乳製品の成分規格に関する省令(昭和26年12月27日厚生省令第52号)に規定される乳及び乳製品を含み、具体的には、乳として、生乳、牛乳、特別牛乳、生山羊乳、殺菌生山羊乳、生めん羊乳、成分調整牛乳、低脂肪牛乳、無脂肪牛乳、及び加工乳が挙げられ、乳製品として、クリーム、バター、バターオイル、チーズ、濃縮ホエイ、アイスクリーム類、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、たんぱく質濃縮ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調製粉乳、はっ酵乳、乳酸菌飲料、及び乳飲料が挙げられる。また、乳及び乳製品は、植物質の原料等を用いて上記に列挙したものに近づけた食品、すなわち疑似乳(豆乳、アーモンドミルク、オーツミルク、ココナッツミルク等)や疑似乳製品(チーズアナログ等)でもよい。
【0019】
(その他の成分)
乳含有食品は、本発明の効果を阻害しない範囲で、任意の成分を含んでいてもよい。このような任意の成分としては、例えば、水、香料、増粘剤、甘味料(砂糖、グラニュー糖、異性化糖、ぶどう糖、果糖、果糖ぶどう糖液糖、ぶどう糖果糖液糖、はちみつ、水飴、粉飴、マルトデキストリン、ソルビトール、マルチトール、還元水飴、マルトース、トレハロース、黒糖等)、食物繊維、タンパク質(豆、ビーフエキス、チキンエキス、ポークエキス、魚肉エキス、ゼラチン等)、酸味料(クエン酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸等の有機酸)、ミネラル類(カルシウム、マグネシウム、鉄、カリウム、亜鉛、銅等や、これらを含む成分(例えば、乳酸カルシウムや炭酸カルシウム))、アミノ酸類(アルギニン、バリン、ロイシン、イソロイシン等)、香辛料(ニンニク、ショウガ、ごま、唐辛子、わさび、山椒、ミョウガ等)、乳化剤、酵素、機能性成分、保存料、安定剤、酸化防止剤、ビタミン類、コーヒー顆粒、果汁や、野菜汁等が挙げられる。これらの成分の添加量は、得ようとする効果に応じて適宜調整できる。
なお、これら任意の成分を含む乳含有食品に、マルトビオン酸及びマルトビオン酸塩や塩基性化合物を配合(添加)してもよいが、これら任意の成分は、マルトビオン酸及びマルトビオン酸塩や塩基性化合物を配合(添加)した後に、乳含有食品に添加してもよいし、マルトビオン酸及びマルトビオン酸塩や塩基性化合物を配合(添加)する時に、乳含有食品に添加してもよい。任意成分が、乳酸カルシウムや炭酸カルシウム等のカルシウムを含む成分(カルシウム素材)の場合、例えば、カルシウムを含む成分をマルトビオン酸と混合した後に塩基性化合物を添加し、これを乳含有食品に添加するようにしてもよい。
【0020】
(マルトビオン酸及びマルトビオン酸塩)
本発明においては、乳含有食品に、マルトビオン酸及びマルトビオン酸塩から選択される少なくとも1つ以上の成分が、塩基性化合物と共に配合される。当該成分は、単独で使用してよく、2種以上を併用してもよい。
マルトビオン酸塩としては、マルトビオン酸のミネラル塩が挙げられる。ミネラルとしては、食品に配合され得るものであれば特に限定されず、1価でも2価以上でもよい。マルトビオン酸塩の具体例としては、マルトビオン酸カルシウム、マルトビオン酸マグネシウム、マルトビオン酸ナトリウム、マルトビオン酸カリウム、マルトビオン酸鉄等が挙げられる。
【0021】
マルトビオン酸及びマルトビオン酸塩の形態は、マルトオリゴ糖酸化物、水飴酸化物、粉飴酸化物又はデキストリン酸化物の形態であってもよい。
【0022】
マルトビオン酸及びマルトビオン酸塩の形態は、液体(シロップ等)であっても粉末であってもよい。
【0023】
なお、マルトビオン酸及びマルトビオン酸塩は、常法に従って製造することができる。
マルトビオン酸の製造方法としては、例えば、(1)澱粉分解物を化学的な酸化反応により酸化する方法、(2)澱粉分解物に対し、オリゴ糖酸化能を有する微生物又は酸化酵素を作用させる反応による方法等が挙げられる。
上記のうち、(2)の方法としては、例えば、Acremonium chrysogenum等の、オリゴ糖酸化能を有する微生物から酸化酵素を抽出し、該酵素を作用させる方法等が挙げられる。
【0024】
マルトビオン酸とミネラルとの塩は、例えば、マルトビオン酸にミネラル(塩類)を添加することで製造することができる。
例えば、マルトビオン酸カルシウムを製造する場合、マルトビオン酸溶液に炭酸カルシウム等のカルシウム源を2:1のモル比となるように添加し、溶解させることで、マルトビオン酸カルシウムを調製することができる。この際に使用されるカルシウム源は、可食性のカルシウムであれば特に限定されず、例えば、天然素材(卵殻粉末、サンゴ粉末、骨粉末、貝殻粉末等)、化学合成品(炭酸カルシウム、塩化カルシウム等)のいずれであってもよい。
【0025】
(塩基性化合物)
本発明においては、乳含有食品に、塩基性化合物が、マルトビオン酸及びマルトビオン酸塩から選択される少なくとも1つ以上の成分と共に配合される。
塩基性化合物としては、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム等の有機酸塩や、炭酸水素ナトリウム(重曹)、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩等が挙げられ、味質の面で炭酸水素ナトリウムが好ましい。
【0026】
(配合割合)
本発明において、マルトビオン酸及びマルトビオン酸塩から選択される少なくとも1つ以上の成分、及び塩基性化合物は、マルトビオン酸及びマルトビオン酸塩から選択される少なくとも1つ以上の成分の質量(A)に対する、塩基性化合物の質量(B)の割合(B/A)が、0.015以上で、より好ましくは0.025以上、さらに好ましくは0.050以上で、乳含有食品に配合(添加)される。なお、マルトビオン酸及びマルトビオン酸塩から選択される少なくとも1つ以上の成分の質量(A)は、マルトビオン酸及びマルトビオン酸塩の合計質量であり、塩基性化合物の質量(B)は、塩基性化合物の合計質量である。
【0027】
このように、特定の配合割合で、マルトビオン酸及びマルトビオン酸塩から選択される少なくとも1つ以上の成分と、塩基性化合物とを配合(添加)することにより、乳含有食品の加熱による凝集を抑制することができる。なお、本明細書において、「凝集」は、沈殿物や塊の発生、又は分離等により、不均一な状態となることを意味する。
なお、塩基性化合物の配合量が多くなると塩基性化合物由来の異味が付与され得るため、マルトビオン酸及びマルトビオン酸塩から選択される少なくとも1つ以上の成分の質量に対する塩基性化合物の質量の割合(B/A)は、好ましくは1以下となるように、より好ましくは0.8以下、さらに好ましくは0.6以下となるように配合する。
また、マルトビオン酸及びマルトビオン酸塩から選択される少なくとも1つ以上の成分、及び塩基性化合物は、乳含有食品のpHが6.4以上になるように配合することが好ましい。
【0028】
(配合方法)
マルトビオン酸やマルトビオン酸塩と、塩基性化合物とを、乳含有食品に配合する方法は特に限定されない。
例えば、乳含有食品にマルトビオン酸やマルトビオン酸塩と塩基性化合物とをそのまま添加してもよく、マルトビオン酸やマルトビオン酸と塩基性化合物とを適当な溶媒(例えば水)に溶解させてから乳含有食品に添加してもよい。
また、マルトビオン酸やマルトビオン酸塩と塩基性化合物とを、乳含有食品に、同時に添加しても、別々に添加してもよい。別々に添加する場合、マルトビオン酸やマルトビオン酸塩を添加した後に塩基性化合物を添加してもよく、塩基性化合物を添加した後にマルトビオン酸やマルトビオン酸塩を添加してもよいが、塩基性化合物を添加した後に、マルトビオン酸やマルトビオン酸塩を添加することが好ましい。
また、マルトビオン酸、マルトビオン酸塩や、塩基性化合物は、加熱等により殺菌した後に、乳含有食品に添加してもよい。
【0029】
(凝集抑制の原理)
特定の配合割合(マルトビオン酸及びマルトビオン酸塩から選択される少なくとも1つ以上の成分の質量(A)に対する、塩基性化合物の質量(B)の割合(B/A)が、0.015以上)で、マルトビオン酸及びマルトビオン酸塩から選択される少なくとも1つ以上の成分と、塩基性化合物とを、乳含有食品に配合することにより、その後の乳含有食品の加熱による凝集を抑制することができる。
このように乳含有食品の加熱による凝集を抑制することができる機構は不明であるが、以下のように推測される。
【0030】
乳含有食品の強化等のためには、カルシウムやマグネシウム等の2価のミネラル成分や、有機酸を添加することにより、これらの含有量を高めることが好ましい。
しかしならが、一般に、乳含有食品に、カルシウムやマグネシウム等の2価のミネラル成分や有機酸(クエン酸や乳酸等)等の酸性成分を添加した状態で加熱処理すると、凝集が生じる。
ここで、乳含有食品には、タンパク質として、カゼイン、ホエータンパク等が含まれ、乳の凝集にはカゼインが寄与することが知られている。
乳のタンパク質は水に分散した状態で存在するが、乳のタンパク質は、乳酸カルシウム等の2価のミネラルを含む成分や有機酸(クエン酸や乳酸等)と強い反応性を持ち、特に殺菌等の加熱の際に、乳のタンパク質の凝集を生じやすい。
一方、マルトビオン酸やマルトビオン酸塩は、乳酸やクエン酸等の有機酸とは異なり、1つのカルボキシ基と複数のヒドロキシ基を持つ糖カルボン酸である。
したがって、マルトビオン酸やマルトビオン酸塩を配合すると、マルトビオン酸やマルトビオン酸塩は、カルシウム等の2価のミネラルと弱いイオン結合状態となり、タンパク質とカルシウム等の2価のミネラルの反応が抑制傾向となる。また、マルトビオン酸やマルトビオン酸塩は、糖カルボン酸であるため、乳酸やクエン酸等の有機酸よりも、乳含有食品のタンパク質と反応し難い。そこへ、特定の配合割合で塩基性化合物を併用配合することで、タンパク質に負の荷電が付与され、カルシウム等の2価のミネラルや有機酸と、乳のタンパク質との反応が相乗的に抑制され、2価のミネラル成分が可溶化状態を保つことができる。このため、加熱されても安定な状態を保っているものと考えられる。
【0031】
このように、特定の配合割合で、マルトビオン酸及びマルトビオン酸塩から選択される少なくとも1つ以上の成分と、塩基性化合物とを配合することにより、乳含有食品に含まれるタンパク質の加熱による凝集を抑制することができるため、乳含有食品にカルシウム等の2価のミネラルを添加することで2価のミネラルの含有量を高めつつ、且つ2価のミネラルの添加により生じる加熱による凝集を抑制することができる。
【0032】
例えば、乳含有食品がカルシウムを添加した液状食品である場合、マルトビオン酸やマルトビオン酸塩と塩基性化合物を上述の特定の配合割合で併用配合することで、カルシウムを乳含有食品に高濃度に添加しても加熱による凝集を抑えることができる。このため、カルシウムを高濃度で含有し且つ加熱による凝集が抑制された乳含有食品とすることができる。
【0033】
乳含有食品へのマルトビオン酸やマルトビオン酸塩の配合量(添加量)は、凝集抑制効果を発揮できる量であれば限定されない。例えば、乳含有食品が含有する乳(例えば、牛乳や豆乳)100質量部に対して、マルトビオン酸及びマルトビオン酸塩の合計が、好ましくは0.05質量部以上になるように、より好ましくは2質量部以上になるように配合する。また、乳含有食品が含有する乳100質量部に対して、マルトビオン酸及びマルトビオン酸塩の合計が、好ましくは10重量部以下となるように、より好ましくは5質量部以下となるように配合する。0.05重量部以上であると乳の凝集抑制効果が得られやすく、10重量部以下であると、乳の凝集抑制効果が適度となる。
【0034】
乳含有食品への塩基性化合物の配合量(添加量)は、凝集抑制効果を発揮できる量であれば限定されない。例えば、乳含有食品が含有する乳100質量部に対して、塩基性化合物の合計が、好ましくは0.001質量部以上になるように、より好ましくは0.01質量部以上になるように配合する。また、乳含有食品が含有する乳100質量部に対して、塩基性化合物の合計が、好ましくは5重量部以下となるように、より好ましくは1質量部以下となるように配合する。0.001重量部以上であると乳の凝集抑制効果が得られやすく、5重量部以下であると、乳の凝集抑制効果が適度となる。
【0035】
本発明の乳含有食品の凝集を抑制する方法が適用された乳含有食品、すなわち、上述の特定の配合割合でマルトビオン酸及びマルトビオン酸塩から選択される少なくとも1つ以上の成分と塩基性化合物とが配合(添加)された乳含有食品は、加熱による乳のタンパク質の凝集を抑制できるため、例えば凝集を生じることなく加熱することができる。加熱することにより、乳含有食品を殺菌等することができる。
加熱条件は特に限定されないが、加熱温度の下限値は、例えば65℃、好ましくは75℃、より好ましくは80℃である。また、加熱温度の上限値は、例えば145℃、好ましくは120℃、より好ましくは110℃である。
加熱時間の下限値は、例えば数秒、好ましくは1分、より好ましくは2分である。加熱時間の上限値は、例えば40分、好ましくは30分、より好ましくは20分である。
【0036】
<乳含有食品の凝集抑制剤>
本発明の乳含有食品の凝集抑制剤(以下、「本発明の凝集抑制剤」ともいう)は、マルトビオン酸及びマルトビオン酸塩から選択される少なくとも1つ以上の成分と、塩基性化合物とを含み、マルトビオン酸及びマルトビオン酸塩から選択される少なくとも1つ以上の成分の質量(A)に対する塩基性化合物の質量(B)の割合(B/A)が、質量基準で、0.015以上である。
本発明の凝集抑制剤を、乳含有食品に配合することにより、その後に加熱した時に、カルシウム等の2価のミネラルに起因するタンパク質の凝集を抑制することができる。このため、乳含有食品にカルシウム等の2価のミネラルを添加することで2価のミネラルの含有量を高めつつ、且つ2価のミネラルの添加により生じる加熱による凝集を抑制することができる。
【0037】
本発明の凝集抑制剤における、乳含有食品、マルトビオン酸及びマルトビオン酸塩から選択される少なくとも1つ以上の成分、塩基性化合物、配合割合、配合方法や、加熱等は、上記<乳含有食品の凝集を抑制する方法>と同様である。
なお、本発明の凝集抑制剤は、マルトビオン酸及びマルトビオン酸塩から選択される少なくとも1つ以上の成分と塩基性化合物との混合物を含む凝集抑制剤でもよいが、マルトビオン酸及びマルトビオン酸塩から選択される少なくとも1つ以上の成分と、塩基性化合物とを、別個に含み、これらを同時又は別々に乳含有食品に添加する凝集抑制剤(例えば2液型の凝集抑制剤)でもよい。
【0038】
<乳含有食品>
本発明の乳含有食品は、上述の本発明の凝集抑制剤を含有する。したがって、本発明の乳含有食品は、本発明の凝集抑制剤が含む、マルトビオン酸及びマルトビオン酸塩から選択される少なくとも1つ以上の成分と、塩基性化合物とを含有する。
本発明の乳含有食品は、本発明の凝集抑制剤を含有するため、カルシウム等の2価のミネラルに起因する加熱によるタンパク質の凝集が抑制されている。このため、本発明の乳含有食品は、2価のミネラルが添加された乳含有食品であっても、加熱時に凝集し難く、加熱後も分散性に優れる。
【0039】
本発明の乳含有食品は、乳含有食品に、本発明の凝集抑制剤を添加することにより製造することができる。
例えば、本発明の乳含有食品は、乳含有食品に本発明の乳含有食品の凝集を抑制する方法を適用する、すなわち、マルトビオン酸及びマルトビオン酸塩から選択される少なくとも1つ以上の成分と、塩基性化合物とを、マルトビオン酸及びマルトビオン酸塩から選択される少なくとも1つ以上の成分の質量(A)に対する塩基性化合物の質量(B)の割合(B/A)が、質量が0.015以上となる量で、乳含有食品に配合(添加)することにより、製造することができる。
また、配合した後に、さらに、乳含有食品を加熱することにより、加熱された乳含有食品としてもよい。
【0040】
本発明の乳含有食品おける、乳含有食品、マルトビオン酸及びマルトビオン酸塩から選択される少なくとも1つ以上の成分、塩基性化合物、配合割合、配合方法や、加熱等は、上記<乳含有食品の凝集を抑制する方法>と同様である。
【実施例0041】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0042】
(材料)
乳及び乳製品として、下記を用いた。
牛乳:(株)明治製
豆乳:キッコーマン(株)製
アーモンドミルク:江崎グリコ(株)製
ヨーグルト:(株)明治製
【0043】
マルトビオン酸及びマルトビオン酸塩として、下記を用いた。
マルトビオン酸カルシウム(粉末):サンエイ糖化(株)製
マルトビオン酸シロップ(マルトビオン酸70質量%、水30質量%):サンエイ糖化(株)製
【0044】
塩基性化合物として、下記を用いた。
炭酸水素ナトリウム:関東化学(株)製
クエン酸三ナトリウム:関東化学(株)製
クエン酸三カリウム:関東化学(株)製
【0045】
その他の成分として、下記を用いた。
炭酸カルシウム:三共精粉(株)製
乳酸カルシウム:扶桑化学工業(株)製
コーヒー顆粒:(株)セイコー珈琲製
グラニュー糖:日新製糖(株)製
乳酸:関東化学(株)製
【0046】
<試験1:牛乳に直接添加>
以下の方法で試験食品1を調製した。なお、表1のCa(mg%)(試験食品100g当りのカルシウムの量(mg))は、マルトビオン酸カルシウム、乳酸カルシウムとして添加された量を示す。また、マルトビオン酸及びマルトビオン酸塩から選択される少なくとも1つ以上の成分の質量(A)に対する、塩基性化合物の質量(B)の割合(B/A)を、表の「B/A」欄に記載する。また、(1)で調製した試験食品のpH(すなわち、(2)の加熱を行う前の試験食品のpH)を、表の「pH(加熱前)」欄に記載する。
【0047】
(1)表1に記載した質量の牛乳に、表1に記載した量の塩基性化合物(炭酸水素ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム)を添加した後、マルトビオン酸カルシウム又は乳酸カルシウムを添加することで、試験食品1(牛乳液)を調製した。
(2)(1)の試験食品1(牛乳液)を80℃達温2分加熱処理し、常温で放冷した。
放冷後の試験食品1について、外観及び茶こしにあけた際の固形物を、目視にて観察し、凝集の有無を評価した。沈殿物や塊の発生、及び/又は、分離により、不均一な状態となっているものを、凝集有とし、沈殿物や塊の発生及び分離が生じず均一な状態となっているものを、凝集無とした。結果を表1の「凝集(80℃2分加熱後)」欄に記載する。
【0048】
【0049】
表1に示されるとおり、マルトビオン酸及びマルトビオン酸塩から選択される少なくとも1つ以上の成分の質量(A)に対する、塩基性化合物の質量(B)の割合(B/A)が0.015以上となる量で、マルトビオン酸カルシウムと塩基性化合物とを添加した実施例では、加熱による凝集が生じなかった。
一方、マルトビオン酸カルシウムや塩基性化合物を添加しない比較例や、マルトビオン酸カルシウム及び塩基性化合物を添加するがB/Aは0.015未満である比較例では、加熱による凝集が生じていた。例えば、マルトビオン酸カルシウムを添加せず乳酸カルシウムを添加した比較例では、塩基性化合物を配合しても、細かい沈殿物が確認され、凝集を抑制することができなかった。
したがって、マルトビオン酸カルシウムと塩基性化合物とを、特定の割合(B/A≧0.015)で牛乳に添加することにより、加熱による凝集を抑制できることがわかる。
また、カルシウム素材としてマルトビオン酸カルシウムを添加すると共に塩基性化合物を併用し且つマルトビオン酸カルシウムと塩基性化合物とを特定の配合割合とすることにより、牛乳において、マルトビオン酸カルシウムの添加によりカルシウム含有量を増加しつつ加熱による凝集も抑制できることがわかる。
【0050】
<試験2:水溶液として添加>
以下の方法で試験食品2を調製した。なお、表2のCa(mg%)(試験食品100g当りのカルシウムの量(mg))は、乳酸カルシウム、炭酸カルシウムとして添加された量を示す。また、マルトビオン酸及びマルトビオン酸塩から選択される少なくとも1つ以上の成分の質量(A)に対する、塩基性化合物の質量(B)の割合(B/A)を、表の「B/A」欄に記載する。また、(2)の混合用水溶液のpHを、表の「混合水溶液のpH」欄に記載し、(3)で調製した試験食品のpH(すなわち、(4)の加熱を行う前の試験食品のpH)を、表の「試験食品(加熱前)のpH」欄に記載する。
【0051】
(1)表2に記載した、牛乳及び塩基性化合物(炭酸水素ナトリウム、クエン酸三ナトリウム)以外の材料を混合し、溶解させた。
(2)(1)に、表2に記載の塩基性化合物(炭酸水素ナトリウム、クエン酸三ナトリウム)を混合し、混合用水溶液を調製した。
(3)(2)の混合用水溶液に牛乳を添加して、試験食品2(牛乳液)を調製した。
(4)(3)の試験食品2(牛乳液)を80℃達温2分加熱処理し、常温で放冷した。
放冷後の試験食品2について、試験1と同様にして、凝集の有無を評価した。また、(2)の混合用水溶液での沈殿物の有無も、目視にて評価した。結果をそれぞれ表2の「凝集(80℃2分加熱後)」欄及び「混合用水溶液の沈殿」欄に記載する。
【0052】
【0053】
表2に示されるとおり、マルトビオン酸及びマルトビオン酸塩から選択される少なくとも1つ以上の成分の質量(A)に対する、塩基性化合物の質量(B)の割合(B/A)が0.015以上となる量で、マルトビオン酸と塩基性化合物とを添加した実施例では、加熱による凝集が生じなかった。また、いずれの実施例でも、(2)の混合用水溶液(牛乳を添加する前のカルシウム水溶液)でも沈殿が観察されず凝集は生じていなかった。
一方、塩基性化合物を添加するがマルトビオン酸を添加しない比較例では、加熱による凝集が生じていた。また、比較例では、塩基性化合物以外の材料を混合した時点では透明な水溶液であったが、これに塩基性化合物を添加した(2)の混合用水溶液では沈澱物が生じており、さらに牛乳を添加した試験食品とした後も沈澱物は解消されなかった。
したがって、マルトビオン酸と塩基性化合物とを、特定の割合(B/A≧0.015)で牛乳に添加することにより、加熱による凝集を抑制できることがわかる。
また、マルトビオン酸と塩基性化合物とを特定の割合で配合することにより、牛乳において、乳酸カルシウム等の水溶性カルシウムだけなく、炭酸カルシウム等の不溶性カルシウムによりカルシウム含有量を増加しつつ、加熱による凝集も抑制できることがわかる。
【0054】
<試験3:疑似乳を用いた場合>
牛乳の代わりに疑似乳(豆乳、アーモンドミルク)を使用し、表3に記載の材料及び量としたことの他は、試験1と同様にして、試験食品3(疑似乳飲料)を調製した。表3のCa(mg%)(試験食品100g当りのカルシウムの量(mg))は、マルトビオン酸カルシウムとして添加された量を示す。また、マルトビオン酸及びマルトビオン酸塩から選択される少なくとも1つ以上の成分の質量(A)に対する、塩基性化合物の質量(B)の割合(B/A)を、表の「B/A」欄に記載する。また、(1)で調製した試験食品のpH(すなわち、(2)の加熱を行う前の試験食品のpH)を、表の「pH(加熱前)」欄に記載する。
【0055】
試験食品3(疑似乳飲料)を80℃達温2分加熱処理し、常温で放冷した。
放冷後の試験食品3について、試験1と同様にして、凝集の有無を評価した。結果を表3の「凝集(80℃2分加熱後)」欄に記載する。
【0056】
【0057】
表3に示されるとおり、マルトビオン酸及びマルトビオン酸塩から選択される少なくとも1つ以上の成分の質量(A)に対する、塩基性化合物の質量(B)の割合(B/A)が0.015以上となる量で、マルトビオン酸カルシウムと塩基性化合物とを添加した実施例では、加熱による凝集が生じなかった。
したがって、マルトビオン酸カルシウムと塩基性化合物とを、特定の割合(B/A≧0.015)で、豆乳やアーモンドミルク等の疑似乳に添加することにより、加熱による凝集を抑制できることがわかる。
また、カルシウム素材としてマルトビオン酸カルシウムを添加すると共に塩基性化合物を併用し且つマルトビオン酸カルシウムと塩基性化合物とを特定の配合割合とすることにより、豆乳やアーモンドミルク等の疑似乳において、マルトビオン酸カルシウムの添加によりカルシウム含有量を増加しつつ、加熱時の凝集を抑制できることを確認した。
【0058】
<試験4:カフェオレ>
以下の方法で試験食品4を調製した。なお、表4のCa(mg%)(試験食品100g当りのカルシウムの量(mg))は、マルトビオン酸カルシウムとして添加された量を示す。また、マルトビオン酸及びマルトビオン酸塩から選択される少なくとも1つ以上の成分の質量(A)に対する、塩基性化合物の質量(B)の割合(B/A)を、表の「B/A」欄に記載する。また、(2)で調製した試験食品のpH(すなわち、(3)の加熱を行う前の試験食品のpH)を、表の「pH(加熱前)」欄に記載する。
【0059】
(1)コーヒー顆粒を水に溶かし、コーヒー液を調製した。
(2)コーヒー液に、コーヒー顆粒及び水以外の表4に記載の材料を混合し、試験食品4(カフェオレ)を調製した。
(3)(2)の試験食品4をスチームコンベクションオーブン(TANICO株式会社製)にて85℃で30分スチーム加熱し、常温で放冷した。
放冷後の試験食品4について、試験1と同様にして、凝集の有無を評価した。結果を表4の「凝集(85℃30分加熱後)」欄に記載する。
【0060】
【0061】
表4に示されるとおり、マルトビオン酸及びマルトビオン酸塩から選択される少なくとも1つ以上の成分の質量(A)に対する、塩基性化合物の質量(B)の割合(B/A)が0.015以上となる量で、マルトビオン酸カルシウムと塩基性化合物とを添加した実施例では、加熱による凝集が生じなかった。
したがって、マルトビオン酸カルシウムと塩基性化合物とを、特定の割合(B/A≧0.015)で、添加することにより、加熱による凝集を抑制できることがわかる。
また、カルシウム素材としてマルトビオン酸カルシウムを添加すると共に塩基性化合物を併用し且つマルトビオン酸カルシウムと塩基性化合物とを特定の配合割合とすることにより、カフェオレにおいて、マルトビオン酸カルシウムの添加によりカルシウム含有量を増加しつつ、加熱時の凝集を抑制できることを確認した。
【0062】
<試験5:ヨーグルト>
以下の方法で試験食品5を調製した。なお、表5のCa(mg%)(試験食品100g当りのカルシウムの量(mg))は、マルトビオン酸カルシウムとして添加された量を示す。また、マルトビオン酸及びマルトビオン酸塩から選択される少なくとも1つ以上の成分の質量(A)に対する、塩基性化合物の質量(B)の割合(B/A)を、表の「B/A」欄に記載する。また、(1)で調製した牛乳液のpH(すなわち、(2)の加熱を行う前の牛乳液のpH)を、表の「牛乳液のpH(80℃2分加熱前)」欄に記載し、試験食品のpHを、表の「試験食品(発酵後)のpH」欄に記載する。
【0063】
(1)牛乳に炭酸水素ナトリウムを混合した後、マルトビオン酸カルシウムを混合して牛乳液を調製した。なお、比較例においては、牛乳に炭酸水素ナトリウムを添加せず、マルトビオン酸カルシウムを混合した。
(2)(1)の牛乳液を80℃達温2分加熱し、常温で放冷した後、冷蔵庫で冷却した。
(3)冷蔵庫で冷却した後の牛乳液に、ヨーグルトを添加し、40℃で5時間発酵させ、試験食品5(ヨーグルト)を調製した。
試験食品5について、試験1と同様にして、凝集の有無を評価した。なお、官能評価(舌触り)でも、凝集の有無を評価した。結果を表5の「凝集(発酵後)」欄に記載する。
【0064】
【0065】
表5に示されるとおり、マルトビオン酸及びマルトビオン酸塩から選択される少なくとも1つ以上の成分の質量(A)に対する、塩基性化合物の質量(B)の割合(B/A)が0.015以上となる量で、マルトビオン酸カルシウムと塩基性化合物とを添加した実施例では、加熱による凝集が生じなかった。
したがって、マルトビオン酸カルシウムと塩基性化合物とを、特定の割合(B/A≧0.015)で、ヨーグルトに配合することにより、加熱による凝集を抑制できることがわかる。
また、カルシウム素材としてマルトビオン酸カルシウムを添加すると共に塩基性化合物を併用し且つマルトビオン酸カルシウムと塩基性化合物とを特定の配合割合とすることにより、ヨーグルトにおいて、マルトビオン酸カルシウムの添加によりカルシウム含有量を増加しつつ、加熱時の凝集を抑制できることを確認した。