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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009161
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】車両用ガラスモジュール
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20230112BHJP
   H01R 12/71 20110101ALI20230112BHJP
【FI】
H01R13/52 D
H01R12/71
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179465
(22)【出願日】2022-11-09
(62)【分割の表示】P 2018175049の分割
【原出願日】2018-09-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004008
【氏名又は名称】日本板硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴目 善信
(72)【発明者】
【氏名】森下 浩成
(72)【発明者】
【氏名】中野 雄太
【テーマコード(参考)】
5E087
5E223
【Fターム(参考)】
5E087LL02
5E087LL17
5E087MM09
5E087QQ04
5E087RR12
5E223AA21
5E223AC03
5E223BA01
5E223BA10
5E223BB01
5E223CC09
5E223CD01
5E223DB11
5E223FA10
(57)【要約】
【課題】結露による回路基板への影響が低減されたオンガラスコネクタを有する車両用ガラスモジュールを提供する。
【解決手段】車両用ガラスモジュール1は、導電パターン4が形成された車両用窓ガラス2と、車両用窓ガラス2に取り付けられたオンガラスコネクタ3とを有する。オンガラスコネクタ3は、中空部11と、中空部11内に配置された回路基板6とを有する。中空部11の一部を画成する仕切り壁14に設けられた貫通孔15によって、中空部11はケース5の外部に連通している。貫通孔15は、回路基板6よりも下方に位置する。中空部11内に結露によって生じた水は、貫通孔を介して外部に排出される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
破壊検知用の導電パターンが形成された車両用窓ガラスと、前記車両用窓ガラスの面に取り付けられ、前記導電パターン及び車両システムを互いに電気的に接続するオンガラスコネクタとを有する車両用ガラスモジュールであって、
前記オンガラスコネクタは、
中空部を有するケースと、
前記中空部内に配置された回路基板と、
前記回路基板を前記導電パターンに電気的に接続する1対のガラス側導体と、
前記回路基板を前記車両システムに電気的に接続する1対のシステム側導体とを有し、
前記ケースにおける前記中空部の一部を画成する仕切り壁に貫通孔が設けられたことを特徴とする車両用ガラスモジュール。
【請求項2】
前記貫通孔は、前記回路基板の導電部よりも下方に位置することを特徴とする請求項1に記載の車両用ガラスモジュール。
【請求項3】
前記ケースは、前記車両システムに電気的に接続されたプラグが差し込まれるプラグ受容部を有し、
前記中空部及び前記プラグ受容部は、それぞれ、前記ケースの長手方向の上側及び下側に配置され、
前記貫通孔は、前記中空部と前記プラグ受容部とを連通させ、
前記プラグ受容部は前記長手方向の下側が開口されており、
前記長手方向は、前記車両用窓ガラスに略平行であり、
1対の前記システム側導体における前記プラグ受容部内に配置された側の端部は、前記長手方向に延在することを特徴とする請求項2に記載の車両用ガラスモジュール。
【請求項4】
前記ケースは、前記回路基板が載置される床部を有し、
前記床部は、突条を有し、
前記回路基板は前記突条の突端に載置されたことを特徴とする請求項2又は3に記載の車両用ガラスモジュール。
【請求項5】
前記突条は、前記仕切り壁に対して近接離間する方向に延在するように1対設けられ、
1対の前記突条と前記回路基板とに囲まれた空間が前記貫通孔に連通するように、1対の前記突条と前記仕切り壁との間に溝が形成されたことを特徴とする請求項4に記載の車両用ガラスモジュール。
【請求項6】
前記ケースは、前記仕切り壁を有する本体と、前記本体と協働して前記中空部を画成するカバーとを有し、
前記カバーにおける前記回路基板に対向する面の少なくとも一部は、前記貫通孔を画成する内周面の一部に面一となっていることを特徴とする請求項2~5の何れか一項に記載の車両用ガラスモジュール。
【請求項7】
1対の前記ガラス側導体及び1対の前記システム側導体における、前記回路基板に接続する側の端部は、何れも、前記回路基板における互いに同じ側の面から前記回路基板に突入していることを特徴とする請求項1~6の何れか一項に記載の車両用ガラスモジュール。
【請求項8】
前記ケースは硬質樹脂を素材とすることを特徴とする請求項1~7の何れか一項に記載の車両用ガラスモジュール。
【請求項9】
前記回路基板の表面にはワニスが塗布されたことを特徴とする請求項1~8の何れか一項に記載の車両用ガラスモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、導電パターンが形成された車両用窓ガラスと、車両用窓ガラスに取り付けられ、導電パターン及び車両システムを互いに電気的に接続するオンガラスコネクタとを有する車両用ガラスモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の窓ガラスの表面に、特定波長帯の送受信用のアンテナパターンやガラスの割れ検知用に、各々の機能を司る車両システムの一部として導電パターンが配設されることがある。この導電パターンは、結合用の端子面を有する。オンガラスコネクタは、導体パターンと車両システムを接合するために窓ガラスの表面上に配置される。
【0003】
オンガラスコネクタは、導電パターンの結合用の端子面に電気的に接続できる構造と、ガラス面に固定される構造と、車両システムに接合する構造とを有する。また、オンガラスコネクタは、導通する電流・電圧・信号の調整機能を有する電気回路を搭載した回路基板を内包することもある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-313513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
オンガラスコネクタは、冬期においては、車室内の暖房で暖められるとともに、冷たい外気によって冷やされた窓ガラスに接触するため、結露が生じやすい。特許文献1に記載のオンガラスコネクタでは、回路基板を保持するケース内に軟質樹脂を充填して回路基板を密閉し、回路基板を結露から保護している。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のオンガラスコネクタは、ガラス面の結合用の端子面に金属はんだで電気的な接合とガラス面への固定を行っている。これは、接合部を高温に加熱して、オンガラスコネクタとガラス面とを互いに接合するものである。この時に発生した熱が、接合部の金属部を伝播し、回路基板を密閉している軟質樹脂を容易に溶損、変質又は剥離させる。このため、軟質樹脂の損傷部から水が浸入し、侵入水により内部の電子回路構成部品を破壊する懸念がある。
【0007】
このような問題に鑑み、本発明は、結露による回路基板への影響が低減されたオンガラスコネクタを有する車両用ガラスモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、導電パターン(4)が形成された車両用窓ガラス(2)と、前記車両用窓ガラスに取り付けられ、前記導電パターン及び車両システム(8)を互いに電気的に接続するオンガラスコネクタ(3)とを有する車両用ガラスモジュール(1)であって、前記オンガラスコネクタは、中空部(11)を有するケース(5)と、前記中空部内に配置された回路基板(6)と、前記回路基板を前記導電パターンに電気的に接続する1対のガラス側導体(7)と、前記回路基板を前記車両システムに電気的に接続する1対のシステム側導体(9)とを有し、前記ケースにおける前記中空部の一部を画成する仕切り壁(14)に貫通孔(15)が設けられたことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、貫通孔によって、結露した水が中空部から排出されるため、結露による回路基板への影響が低減される。この貫通孔による結露した水の排出構造は、軟質樹脂によって回路基板を密閉する構造と異なり、はんだ付けの熱による影響を受けない。また、回路基板を軟質樹脂で覆って密閉する必要がないため、オンガラスコネクタを軽量化できる。さらに、軟質樹脂で密閉する際の熱ストレスによる電子回路構成部品への影響を受けないため、耐熱性の低い電子回路構成部品を使用でき、軟質樹脂流動時の圧力による電子回路構成部品への影響も受けない。
【0010】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成において、前記貫通孔は、前記回路基板の導電部よりも下方に位置することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、蒸発して気体になった水分だけでなく、液体の状態の水も、回路基板の導電部に長時間滞留することなく、重力によって中空部から排出できる。
【0012】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成において、前記ケースは、前記車両システムに電気的に接続されたプラグが差し込まれるプラグ受容部(13)を有し、前記中空部及び前記プラグ受容部は、それぞれ、前記ケースの長手方向の上側及び下側に配置され、前記貫通孔は、前記中空部と前記プラグ受容部とを連通させ、前記プラグ受容部は前記長手方向の下側が開口されており、前記長手方向は、前記車両用窓ガラスに略平行であり、1対の前記システム側導体における前記プラグ受容部内に配置された側の端部は、前記長手方向に延在することを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、中空部内で結露した水が、貫通孔及びプラグ受容部を介してケースの外部に排出されるとともに、組み付け時に、車両用窓ガラスの表面に平行にプラグが差し込まれるため、車両用窓ガラスに面直に負荷がかかることを抑制できる。
【0014】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成において、前記ケースは、前記回路基板が載置される床部(16)を有し、前記床部は、突条(17)を有し、前記回路基板は前記突条の突端に載置されたことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、回路基板と床部との互いの接触面積が小さくなるため、表面張力によって回路基板と床部との間に滞留する水の量を減らせる。
【0016】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成において、前記突条は、前記仕切り壁に対して近接離間する方向に延在するように1対設けられ、1対の前記突条と前記回路基板とに囲まれた空間が前記貫通孔に連通するように、1対の前記突条と前記仕切り壁との間に溝(19)が形成されたことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、1対の突条と回路基板とに囲まれた空間に結露した水が溝を介して排出される。
【0018】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、貫通孔が回路基板よりも下方に位置する上記構成の何れかにおいて、前記ケースは、前記仕切り壁を有する本体と、前記本体と協働して前記中空部を画成するカバーとを有し、前記カバーにおける前記回路基板に対向する面の少なくとも一部は、前記貫通孔を画成する内周面の一部に面一となっていることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、カバーの裏面と貫通孔の内周面の一部が面一であるため、カバーの裏面に結露した水が排出されやすくなる。
【0020】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成の何れかにおいて、1対のガラス側導体及び1対の前記システム側導体における、前記回路基板に接続する側の端部は、何れも、前記回路基板における互いに同じ側の面から前記回路基板に突入していることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、1対のガラス側導体及び1対の前記システム側導体を回路基板の同じ側の面からはんだ付けでき、回路基板を片面基板とすることができる。
【0022】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成の何れかにおいて、前記ケースは硬質樹脂を素材とすることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、硬質樹脂製のカバーが回路基板をピッキング等の行為から保護することによって、回路基板が損傷することを抑制できる。
【0024】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成の何れかにおいて、前記回路基板の表面にはワニスが塗布されたことを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、ワニスを塗布することにより、一時的に中空部に滞留する水が短絡等の回路基板の機能不全を引き起こすことを防止できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、オンガラスコネクタを有する車両用ガラスモジュールにおいて、結露による回路基板への影響を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施形態に係る車両用ガラスモジュールの一部の斜視図
図2】実施形態に係るオンガラスコネクタ(カバー及び回路基板を除く)の斜視図
図3】実施形態に係るオンガラスコネクタのケースの本体の平面図
図4】実施形態に係る1対のガラス側導体を示す斜視図
図5】実施形態に係る1対のシステム側導体を示す斜視図
図6】実施形態に係るオンガラスコネクタ(カバーを除く)の平面図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1に示すように、実施形態に係る車両用ガラスモジュール1は、車両用窓ガラス2と、車両用窓ガラス2に取り付けられたオンガラスコネクタ3とを有する。
【0029】
車両用窓ガラス2は、フロントガラス、リヤガラス、又はサイドガラスの何れでもよい。車両用窓ガラス2には、導電パターン4が形成されている。導電パターン4は、例えば、アンテナパターン、又は車両用窓ガラス2の破壊検出用のパターン等である。
【0030】
オンガラスコネクタ3は、車両用窓ガラス2の車室内側の表面に取り付けられる。オンガラスコネクタ3は、ケース5と、ケース5内に配置されて導通する電流、電圧及び信号等の調整機能を有する回路基板6と、回路基板6を導電パターン4に電気的に接続する1対のガラス側導体7,7と、回路基板6を車両システム8に電気的に接続する1対のシステム側導体9,9とを有する。
【0031】
ケース5は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂等の硬質樹脂を素材とする。例えば、車両用ガラスモジュール1が、車両用窓ガラス2の破壊による盗難を検知するセキュリティシステムを有する場合、ピッキング等の行為により回路基板6の回路が短絡すると破壊検知に支障が生じる。硬質樹脂からなるケース5は、ピッキング等の行為から回路基板6を保護できる。
【0032】
図1図3に示すように、ケース5は、本体10と、本体10と協働して回路基板6が配置される中空部11を画成するカバー12とを有する。ケース5は、概ね直方体形状をなし、車両用窓ガラス2のオンガラスコネクタ3を取り付けた表面に略平行な長手方向と、その表面に略平行かつ長手方向に直交する短手方向と、長手方向及び短手方向に直交する厚さ方向とを有する。長手方向が、車両における上下方向、又は、前後及び/若しくは左右に傾斜した上下方向となる。従って、本実施形態における長手方向は、重力の影響を受ける方向となる。本体10は、概ね、直方体形状のケース5から、長手方向の上側かつ厚さ方向の車両用窓ガラス2に対する遠位側(以下、厚さ方向において、車両用窓ガラスに対する近位側を単に「近位側」と記し、車両用窓ガラス対する遠位側を単に「遠位側」と記す)の部分を、長手方向に直交する断面及び厚さ方向に直交する断面で切り取った形状をなし、カバー12は、概ね、その切り取った部分を覆う形状をなす。
【0033】
ケース5は、長手方向の上側かつ厚さ方向の遠位側に中空部11を有し、長手方向の下側に車両システム8に電気的に接続されたプラグ(図示せず)が差し込まれるプラグ受容部13を有する。プラグ受容部13の長手方向の下側は、開口しており、プラグを差し込めるようになっている。プラグと車両システム8との電気的接続手段は、特に限定されないが、例えば同軸ケーブルを使用できる。プラグ受容部13は本体10によって画成される。本体10は、中空部11とプラグ受容部13とを仕切る仕切り壁14を有する。仕切り壁14は、長手方向に直交する平板状をなし、厚さ方向の遠位側に貫通孔15を有する。貫通孔15は、例えば、長手方向から見て、ケース5の短手方向及び厚さ方向にそれぞれ長辺及び短辺を有する矩形をなし、長手方向に沿って直線状に延在して、中空部11とプラグ受容部13とを連通させる。貫通孔15は、回路基板6の回路素子6aや回路パターン(図示せず)等の導電部よりも車両における下方に位置する。中空部11に結露した水は、貫通孔15及びプラグ受容部13を介して外部に排出可能である。また、カバー12における回路基板6に対向する面の一部は、貫通孔15の厚さ方向における遠位側の内面に面一となっており、カバー12から貫通孔15へ結露した水が流れやすくなっている。なお、貫通孔15の形状は、矩形に限定されず、例えば、長手方向からみて、厚さ方向における遠位側の内面を、中央部分が遠位側に膨らんだ円弧状等にしてもよい。
【0034】
本体10は、仕切り壁14よりも長手方向の上方に、中空部11における厚さ方向の近位側の面であって、厚さ方向の遠位側を向いた床部16を有する。床部16は、短手方向の両縁部近傍に配置されて長手方向に沿って延在する1対の突条17,17を有する。1対の突条17,17の突端は、車両用窓ガラス2の表面に略平行な面からなり、厚さ方向への突出長は互いに等しい。回路基板6は、短手方向の両端縁において、1対の突条17,17の突端に載置されるため、車両用窓ガラス2の表面に略平行に配置される。回路基板6が車両用窓ガラス2の表面に略平行となるため、オンガラスコネクタ3の厚さを薄くすることができる。また、1対の突条17,17は、カバー12をスライドさせて本体10に取り付ける際のガイドレールとして機能する。例えば、カバー12の厚さ方向近位側の長手方向に延在する両側縁に摺動可能に係合するように、1対の突条17,17には短手方向の外側の面における厚さ方向の近位側が凹設されて、また、短手方向において、回路基板6の両端部は、1対の突条17,17の外側には突出していないことによって、1対の突条17,17はガイドレールとして機能する。なお、カバー12を取り付ける前に少なくとも一方の突条17のカバー12との摺接面に接着剤を塗布しておくことにより、カバー12は本体10に接着される。また、1対の突条17,17の突端を、車両用窓ガラス2の表面に略平行な面に代えて、凹凸を有する面として、複数の点で回路基板6を支持してもよい。
【0035】
仕切り壁14と床部16との境界の隅部には、仕切り壁14及び床部16から膨出して、短手方向に延在する直方体形状の膨出部18が形成されている。膨出部18の厚さ方向への膨出長は、1対の突条17,17の突出長に等しく、膨出部18には回路基板6の長手方向の下側の端部が載置される。1対の突条17,17の長手方向の下側の端部は、膨出部18よりも長手方向の上側に位置し、膨出部18の短手方向の両端部は、カバー12から離間し、回路基板6は、カバー12及び仕切り壁14から離間している。このため、回路基板6及び1対の突条17,17で覆われた空間は、1対の突条17,17の長手方向の下側の端部と膨出部18との間、及び膨出部18の短手方向の両端部とカバー12との間に形成された溝19を介して貫通孔15に連通している。従って、回路基板6及び1対の突条17,17で覆われた空間に結露した水は、液体の状態で溝19、仕切り壁14と回路基板6の隙、仕切り壁14の表面、貫通孔15及びプラグ受容部13を介して外部に排出可能である。
【0036】
図2及び図4に示すように、1対のガラス側導体7,7は、それぞれ、鋼板を屈曲させた形状をなす。1対のガラス側導体7,7の各々の一端側は、本体10の長手方向における互いに反対側の端部から延出して、導電パターン4にはんだによって電気的に接続されるとともに固定される。1対のガラス側導体7,7の各々の他端側は、本体10の厚さ方向の近位側の面から、本体10に設けられた第1取付孔20に突入して、床部16から厚さ方向の遠位側に向かって突出し、互いに短手方法に対向している。1対のガラス側導体7,7は、接着剤や係合構造によって本体10に固定される。
【0037】
図2及び図5に示すように、1対のシステム側導体9,9は、それぞれ、長手方向に延在する第1部分9aと、厚さ方向に延在する第2部分9bとを有するL字上の金属製のピンからなる。1対のシステム側導体9,9の一方は、他方を短手方向に平行移動させたように配置される。第1部分9aは、膨出部18及び仕切り壁14に跨って設けられた第2取付孔21に膨出部18から突入し、その長手方向の下側の端部は、プラグ受容部13内に配置されてプラグに接続される。第2部分9bは、第1部分9aの長手方向の上側の端部から厚さ方向の遠位側に延出している。第1部分9aは、第2部分9bの近傍に、短手方向に拡幅された拡幅部9cを有する。1対のシステム側導体9,9は、各々の拡幅部9cが第2取付孔21に圧入していることにより、本体10に固定される。組み付け時に、プラグが、長手方向に沿って、すなわち、車両用窓ガラス2の表面と平行にプラグ受容部13に挿入されるため、車両用窓ガラス2に面直に負荷がかかることを抑制できる。
【0038】
図1及び図6に示すように、1対のガラス側導体7,7の他端側は、回路基板6の裏面(厚さ方向の近位側を向く面)側から回路基板6に設けられた第1切穴22に突入し、回路基板6の表面(厚さ方向の遠位側を向く面)ではんだ付けされる。同様に、1対のシステム側導体9,9の第2部分9bは、回路基板6の裏面側から回路基板6に設けられた第2切穴23に突入し、回路基板6の表面(厚さ方向の遠位側を向く面)ではんだ付けされる。従って、回路基板6は、1対のガラス側導体7,7及び1対のシステム側導体9,9を介して本体10に固定される。また、1対のガラス側導体7,7及び1対のシステム側導体9,9の回路基板6へのはんだ付けを表面側のみから行えるため、回路基板6を片面基板とすることができる。なお、回路基板6を両面基板としてもよい。
【0039】
1対のシステム側導体9,9間の距離はプラグの形状によって決まり、一般に1対のガラス側導体7,7間の距離よりも狭い。1対のシステム側導体9,9の第2部分9bの回路基板6へのはんだ付け部分24間の距離を1対のシステム側導体9,9間の距離と略同じにすることで、1対のシステム側導体9,9をL字状のような簡単な形状にすることができる。第1部分9aを途中で曲げると本体10に固定する際に差し込みづらく、第2部分9bは短いので途中で曲げづらいため、1対のシステム側導体9,9をL字状とすることが好適である。また、はんだ付け部分24間の距離は、1対のガラス側導体7,7の回路基板へのはんだ付け部分25間の距離よりも短い。そのため、第2部分9bの回路基板6へのはんだ付け部分24は、はんだから発生したウィスカによる回路故障を抑えるため、厚さ方向から見て、円形から互いの近接部分を切り欠いたD字形状をなす。
【0040】
図1図2図5及び図6に示すように、プラグの挿入によって1対のシステム側導体9,9に加わった力は、拡幅部9cが圧入された仕切り壁14及び膨出部18、並びに回路基板6に分散し、回路基板6に伝わった力は、回路基板の面に平行な方向に作用する。このため、回路基板6の回路パターン(図示せず)や回路素子6aへの負荷が大幅に軽減される。
【0041】
中空部11内に結露した水は一時的に中空部11内に滞留するため、回路基板6の回路パターンや回路素子6aを実装した面にはワニスを塗布してもよい。これにより、短絡等の機能不全をより確実に防止できる。
【0042】
車両用ガラスモジュール1は、結露に対して以下の作用効果を奏する。貫通孔15によって、中空部11がケース5の外部に連通しているため、中空部11内に結露した水分を排出することができる。また、貫通孔15が中空部11の下方、特に回路基板6の導電部よりも下方に位置するため、蒸発して気体になった水分が排出されるだけでなく、液体の状態の水も重力によって排出される。
【0043】
回路基板6がコ字上に配置された1対の突条17,17及び膨出部18によって支持されるため、回路基板6と床部16との接触面積が小さくなる。そのため、表面張力によって両者間に滞留する水の量を減らせる。さらに、溝19によって、回路基板6、1対の突条17,17及び膨出部18に囲まれた空間に結露した水を排出できる。
【0044】
このように、中空部11には一時的に結露した水が滞留するものの、その水はケース5の外部に排出されるため、中空部11に軟質樹脂を充填せずに回路基板6を保護でき、オンガラスコネクタ3を軽量化できる。回路基板6にワニスを塗布することによって、一時的に滞留する水から回路基板6が保護される。また、中空部11に軟質樹脂を充填する従来技術に比べて、軟質樹脂で密閉する際の熱ストレスによる回路基板6の電子回路構成部品への影響を受けないため、耐熱性の低い電子回路構成部品を使用でき、軟質樹脂流動時の圧力による電子回路構成部品への影響も受けない。
【0045】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。突条の数及び配置を変更し、例えば、突条及び膨出部を、「ヨ」、「ロ」、又は「日」の字状に配置してもよい。
【符号の説明】
【0046】
1:車両用ガラスモジュール
2:車両用窓ガラス
3:オンガラスコネクタ
5:ケース
6:回路基板
7:ガラス側導体
9:システム側導体
10:本体
11:中空部
12:カバー
13:プラグ受容部
14:仕切り壁
15:貫通孔
16:床部
17:突条
18:膨出部
19:溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6