(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009163
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】測定器
(51)【国際特許分類】
G01R 13/02 20060101AFI20230112BHJP
G01R 13/20 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
G01R13/02
G01R13/20 R
G01R13/20 T
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179833
(22)【出願日】2022-11-09
(62)【分割の表示】P 2018098617の分割
【原出願日】2018-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596157780
【氏名又は名称】横河計測株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(72)【発明者】
【氏名】中山 悦郎
(57)【要約】
【課題】リアルタイム演算機能を有する測定器において、入力信号と演算結果との表示の同期性を改善する。
【解決手段】入力信号のデータが格納される波形メモリ部120は、波形メモリ122と入力信号のデータを前記波形メモリに格納するためのアドレス情報を出力する第1のメモリ制御部121とを有し、演算部130は、測定区間ごとに所定の演算を行う信号演算部132と、演算データを前記アドレス情報と関連付ける第2のメモリ制御部133と、前記アドレス情報と前記演算データとを格納する演算結果メモリ134を有する。表示制御部141は、前記演算結果メモリ134に格納された前記アドレス情報に基づいて前記演算データと前記波形メモリ122に格納された前記入力信号のデータとを関連付けることで、前記演算データを前記演算を行った測定区間に対応する位置に表示させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号を表示する表示部を有する測定器において、
前記入力信号に対し、測定区間ごとに所定のリアルタイム演算を行う演算部と、
前記表示部に前記演算部から出力された演算データを、前記演算を行った測定区間に対応する位置に表示させる表示制御部と、
前記入力信号のデータが格納される信号メモリと、
前記入力信号のデータを前記信号メモリに格納するためのアドレス情報を出力する第1のメモリ制御部と、を有し、
前記演算部は、前記入力信号に対し前記測定区間ごとに所定の演算を行う信号演算部と、前記演算データを前記アドレス情報と関連付ける第2のメモリ制御部と、前記アドレス情報と前記演算データとを格納する演算メモリを有し、
前記表示制御部は、前記演算メモリに格納された前記アドレス情報に基づいて前記演算データと前記信号メモリに格納された前記入力信号のデータとを関連付けることで、前記演算データを前記演算を行った測定区間に対応する位置に表示させ、
前記表示制御部は、
前記入力信号を、当該入力信号が入力されている測定区間にリアルタイムで表示させ、
前記演算データを、当該演算データを演算するための前記入力信号が入力された測定区間の次の測定区間に移ったときに、前記演算を行った測定区間に対応する位置に表示させることを特徴とした測定器。
【請求項2】
前記第2のメモリ制御部は、前記測定区間のうち任意の測定区間に対して前記演算が行われていない場合は、非表示コードを前記任意の測定区間に対応する前記アドレス情報と関連付けて前記演算メモリに格納し、
前記任意の測定区間に対して前記演算が行われた場合は、前記非表示コードを前記任意の測定区間に対応する前記演算データに書き換えることを特徴とした請求項1に記載の測定器。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記任意の測定区間に対応する前記アドレス情報と関連付けられた前記非表示コードが前記演算メモリに格納されている場合は、前記演算データを前記表示部の前記任意の測定区間に対応する位置に表示させず、
前記非表示コードが前記任意の測定区間に対応する演算データに書き換えられた場合は、前記演算データを前記表示部の前記演算を行った測定区間に対応する位置に表示させることを特徴とした請求項2に記載の測定器。
【請求項4】
前記演算部は、前記入力信号の周期を検出し、この周期を前記測定区間として前記信号演算部に出力する周期決定部を有することを特徴とした請求項1から3のいずれか一項に記載の測定器。
【請求項5】
前記演算部は、任意に設定された時間を前記測定区間として前記信号演算部に出力する決定部を有することを特徴とした請求項1から3のいずれか一項に記載の測定器。
【請求項6】
前記入力信号は、電圧信号および電流信号であり、
前記演算部は、前記電圧信号と前記電流信号を基に電力を演算することを特徴とした請求項1から5のいずれか一項に記載の測定器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定器に関し、詳しくは、リアルタイム演算機能を有する測定器において、入力信号と演算結果との表示の同期性の改善に関するものである。
【背景技術】
【0002】
測定器の一種に、入力信号に対してリアルタイムで演算を行いながら、その演算結果を波形記録とともに表示するように構成されたものがある(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】中山悦郎,山本千秋「スコープコーダDL850 リアルタイム演算機能」,横河技報,Vol. 55,No. 1,2012.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、測定器が信号の測定区間に渡って演算を行う場合、演算を行う測定区間が確定してからでないと演算結果が確定しない。そのため、演算データを表示する場合、ある測定区間における信号の演算データは、その測定区間から遅れて表示される。
【0005】
このため測定を行なうユーザーは、ある測定区間の入力信号と、その測定区間の入力信号を基に演算された演算データとの比較が行いにくく、入力信号と演算データの関係を把握することが困難であるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、
入力信号を表示する表示部を有する測定器において、
前記入力信号に対し、測定区間ごとに所定のリアルタイム演算を行う演算部と、
前記表示部に前記演算部から出力された演算データを、前記演算を行った測定区間に対応する位置に表示させる表示制御部と、
を有する。
【0007】
本発明の他の態様は、
前記入力信号のデータが格納される信号メモリと、
前記入力信号のデータを前記信号メモリに格納するためのアドレス情報を出力する第1のメモリ制御部とをさらに有し、
前記演算部は、前記入力信号に対し前記測定区間ごとに所定の演算を行う信号演算部と、前記演算データを前記アドレス情報と関連付ける第2のメモリ制御部と、前記アドレス情報と前記演算データとを格納する演算メモリを有し、
前記表示制御部は、前記演算メモリに格納された前記アドレス情報に基づいて前記演算データと前記信号メモリに格納された前記入力信号のデータとを関連付けることで、前記演算データを前記演算を行った測定区間に対応する位置に表示させる。
【0008】
本発明の他の態様は、
前記第2のメモリ制御部は、前記測定区間のうち任意の測定区間に対して前記演算が行われていない場合は、非表示コードを前記任意の測定区間に対応する前記アドレス情報と関連付けて前記演算メモリに格納し、
前記任意の測定区間に対して前記演算が行われた場合は、前記非表示コードを前記任意の測定区間に対応する前記演算データに書き換える。
【0009】
本発明の他の態様は、
前記表示制御部は、前記任意の測定区間に対応する前記アドレス情報と関連付けられた前記非表示コードが前記演算メモリに格納されている場合は、前記演算データを前記表示部の前記任意の測定区間に対応する位置に表示させず、
前記非表示コードが前記任意の測定区間に対応する演算データに書き換えられた場合は、前記演算データを前記表示部の前記演算を行った測定区間に対応する位置に表示させる。
【0010】
本発明の他の態様は、
前記演算部は、前記入力信号の周期を検出し、この周期を前記測定区間として前記信号演算部に出力する周期決定部を有する。
【0011】
本発明の他の態様は、
前記演算部は、任意に設定された時間を前記測定区間として前記信号演算部に出力する周期決定部を有する。
【0012】
本発明の他の態様は、
前記入力信号は、電圧信号および電流信号であり、
前記演算部は、前記電圧信号と前記電流信号を基に電力を演算する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、入力信号を表示する表示部を有する測定器において、入力信号と演算データとを対応する位置に表示することで、ユーザーが、ある測定区間の入力信号と、その測定区間の測定信号を基に演算された演算データとの比較が行いやすく、入力信号と演算データの関係を把握し易い測定器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態による波形測定器の概略構成を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態による波形測定器におけるメモリ制御部121が入力信号に対してアドレスを付与する例を示す図である。
【
図3】メモリ制御部133の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図4】メモリ制御部133が、測定区間T1~T3に渡って動作を行い、演算結果メモリ134にデータを格納する例を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態による波形測定器における表示部142が、測定区間T1の時刻において入力信号と演算データを表示する例を示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態による波形測定器における表示部142が、測定区間T2の時刻において入力信号と演算データを表示する例を示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態による波形測定器における表示部142が、測定区間T3の時刻において入力信号と演算データを表示する例を示す図である。
【
図8】関連技術の波形測定器の概略構成を示す図である。
【
図9】関連技術の波形測定器における表示部210が、入力信号と演算データを表示する例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0016】
図8は本実施形態に係る測定器の関連技術である、波形測定器200の構成を示すブロック図である。
【0017】
図8の波形測定器200において、チャンネル1(CH1)の電圧アナログ入力信号はアンプ201に入力され、あらかじめ設定されたレンジに応じてゲイン調整され、A/D変換器202に入力されて電圧デジタル信号に変換される。
【0018】
チャンネル2(CH2)の電流アナログ入力信号はアンプ203に入力され、あらかじめ設定されたレンジに応じてゲイン調整され、A/D変換器204に入力されて電流デジタル信号に変換される。
【0019】
メモリ制御部205は、A/D変換器202および204から入力される電圧デジタル信号および電流デジタル信号のデータを波形メモリ208へ格納する。また、メモリ制御部205は、演算部207から入力される演算データを波形メモリ208へ格納する。
【0020】
周期決定部206は、A/D変換器202から入力される電圧デジタル信号のゼロクロスの立ち上がりを検出することで電圧デジタル信号の周期を検出し、測定区間を決定する。電圧デジタル信号のゼロクロスの立ち上がりから次のゼロクロスの立ち上がりまでの1周期を1測定区間とする。周期決定部206は、検出した立ち上がりの時刻の情報を立ち上がり信号として演算部207に出力する。
【0021】
演算部207は、A/D変換器202および204から入力される電圧デジタル信号および電流デジタル信号に対して、周期決定部206より入力される立ち上がり信号を基に電力のリアルタイム演算を行う。電力は、立ち上がり信号に基づいて電圧デジタル信号のゼロクロスの立ち上がりから次のゼロクロスの立ち上がりまでの測定区間において、電圧デジタル信号および電流デジタル信号を乗算し、積分した後に、測定区間の時間で除算することで求められる。
【0022】
表示制御部209は、波形メモリ208に格納されている電圧デジタル信号および電流デジタル信号のデータを表示するための表示波形データと、演算データを表示するための表示演算データを、あらかじめ設定された描画周期T’ごとに作成する。
【0023】
表示制御部209は、描画周期T’が更新され表示演算データを作成した際に、ある測定区間の演算データが揃っている場合は、その測定区間の表示演算データを表示部210へと出力する。一方、表示制御部209は、描画周期T’が更新され表示演算データを作成した際に、ある測定区間の演算データが揃っていない場合は、その測定区間の表示演算データを表示部210へと出力しない。
【0024】
表示部210は、表示制御部209から入力される表示波形データおよび表示演算データをもとに、電圧デジタル信号、電流デジタル信号および演算データをリアルタイムに表示する。表示部210は、電圧デジタル信号、電流デジタル信号を、その電圧デジタル信号、電流デジタル信号がメモリ制御部205に入力された時刻に対応する箇所に表示する。表示部210は、演算データを、その演算データが取得された時刻に対応する箇所に表示する。
【0025】
しかし、
図8の構成によれば、演算部207が信号の測定区間に渡って演算を行う場合、その測定区間が完了するまでは演算に必要なデータが揃わないため、その測定区間の演算結果を確定させることができない。そのため、表示部210では、ある測定区間における演算データは、その測定区間の終了時以降に遅れて表示される。
【0026】
図9は、関連技術において、表示部210が電圧デジタル信号、電流デジタル信号および演算データを表示する例である。周期決定部206が電圧デジタル信号を基に検出した電圧デジタル信号のゼロクロスの立ち上がりを立ち上がりS1、立ち上がりS2、立ち上がりS3とそれぞれ表し、立ち上がりS1からS2の区間を測定区間T1、立ち上がりS2からS3の区間を測定区間T2、立ち上がりS3以降の区間を測定区間T3として表している。
【0027】
また、
図9の描画周期T’1、T’2、T’3・・・T’nは、表示制御部209が表示波形データと表示演算データを作成する描画周期T’である。図示していないが、測定区間T2以降においても、描画周期T’は繰り返されるものとして設定されている。なお、描画周期T’は、測定区間Tの時間よりも十分短い。また、表示制御部209は、測定区間Tの時間よりも十分短い描画周期T’ごとに表示波形データおよび表示演算データを繰り返し作成している。
【0028】
測定区間T1の信号から得られる演算データは、測定区間T1が終了する立ち上がりS2の後に得られるため、表示制御部209が測定区間T1の表示演算データを表示部210に出力する時刻は、測定区間T2の表示波形データを表示部210に出力する時刻と重なる。その結果、表示部210では測定区間T1の演算データは測定区間T2の領域に表示される。同様に、測定区間T2の演算データは測定区間T3の領域に表示される。つまり演算データは、演算の基となった入力信号に対して遅れが生じ、演算の基となった入力信号に対応した位置に表示されない。
【0029】
このため測定を行なうユーザーは、ある測定区間の入力信号と、その測定区間の入力信号を基に演算された演算データとの比較が行いにくく、入力信号と演算データの関係を把握しづらいという課題があった。
【0030】
そこで本実施形態に係る測定器では、入力信号を表示する表示部を有する測定器において、入力信号と演算データとを対応する位置に表示することで、ユーザーが、ある測定区間の入力信号と、その測定区間の入力信号を基に演算された演算データとの比較が行いやすく、入力信号と演算データの関係を把握し易い測定器を提供する。
【0031】
以下に、本実施形態に係る測定器として、入力される電圧アナログ信号および電流アナログ信号を基に電力演算を行う波形測定器について説明する。
【0032】
図1は、本発明の一実施形態による波形測定器100の概略構成を示すブロック図である。波形測定器100は、アンプ111、A/D変換器112、アンプ113、A/D変換器114、メモリ制御部121、波形メモリ122、周期決定部131、信号演算部132、メモリ制御部133、演算結果メモリ134により構成される。
【0033】
ここで、アンプ111、A/D変換器112およびアンプ113、A/D変換器114をまとめて入力部110と称する。メモリ制御部121、波形メモリ122をまとめて波形メモリ部120と称する。また、周期決定部131、信号演算部132、メモリ制御部133、演算結果メモリ134をまとめて演算部130と称する。
【0034】
図1において、チャンネル1(CH1)の電圧アナログ入力信号はアンプ111に入力され、あらかじめ設定されたレンジに応じてゲイン調整される。アンプ111から出力されたゲイン調整された電圧アナログ信号はA/D変換器112に入力されて電圧デジタル信号に変換される。
【0035】
チャンネル2(CH2)の電流アナログ入力信号はアンプ113に入力され、あらかじめ設定されたレンジに応じてゲイン調整される。アンプ113から出力されたゲイン調整された電流アナログ信号はA/D変換器114に入力されて電流デジタル信号に変換される。
【0036】
メモリ制御部121は、A/D変換器112および114から入力される電圧デジタル信号のデータおよび電流デジタル信号のデータを、波形メモリ122に格納するためのアドレス情報を作成する。メモリ制御部121は、電圧デジタル信号のデータおよび電流デジタル信号のデータと、作成したアドレス情報とを波形メモリ122に出力する。また、メモリ制御部121は、アドレス情報を周期決定部131に出力する。
【0037】
図2は電圧デジタル信号とメモリ制御部121が付与したアドレス情報とを示す図である。
【0038】
電圧デジタル信号はA/D変換器112によりサンプリング周期に従ってデジタル化される。
図2に示す白丸は、サンプリング周期に従ってデジタル化された電圧デジタル信号のデジタルデータを示している。
【0039】
メモリ制御部121は、測定開始時に得られた電圧デジタル信号から順に、アドレスn0、アドレスn1、アドレスn2…とアドレスを付与する。ここでは電圧デジタル信号へのアドレスの付与の例を示したが、メモリ制御部121は電流デジタル信号に関しても同様の方法でアドレスを付与し波形メモリ122および周期決定部131に出力する。
【0040】
波形メモリ122は、メモリ制御部121から入力される電圧デジタル信号および電流信号を、メモリ制御部121から入力されたアドレスに格納する。
【0041】
周期決定部131は、A/D変換器112から入力される電圧デジタル信号のゼロクロスの立ち上がりを検出することで電圧デジタル信号の周期を検出し、測定区間を決定する。測定区間は、電圧デジタル信号のゼロクロスの立ち上がりから次のゼロクロスの立ち上がりまでの周期である。周期決定部131は、検出した立ち上がりの時刻の情報を立ち上がり信号として信号演算部132およびメモリ制御部133に出力する。
【0042】
図2には周期決定部131が検出する、電圧デジタル信号のゼロクロスの立ち上がりの時間軸上の位置を示している。測定開始後に最初に得られたゼロクロスの立ち上がりから順に、立ち上がりS1、立ち上がりS2、立ち上がりS3として示している。また、立ち上がりS1からS2の間の区間を測定区間T1、立ち上がりS2からS3の間の区間を測定区間T2、立ち上がりS3以降の区間を測定区間T3として示している。また、描画周期T’1、T’2、T’3・・・T’nは、表示制御部140が表示波形データと表示演算データを作成する描画周期T’である。図示していないが、測定区間T2以降においても、描画周期T’は繰り返されるものとして設定されている。なお、描画周期T’は、測定区間Tの時間よりも十分短い。
【0043】
信号演算部132は、A/D変換器112および114から入力される電圧デジタル信号および電流デジタル信号に対して、周期決定部131より入力される立ち上がり信号を基に電力のリアルタイム演算を行う。電力は、電圧デジタル信号のゼロクロスの立ち上がりから次のゼロクロスの立ち上がりまでの測定区間において、電圧デジタル信号および電流デジタル信号を乗算し、積分した後に、測定区間の時間で除算することで求められる。
【0044】
例えば
図2における測定区間T1の電力演算を行う場合は、立ち上がりS1と立ち上がりS2の時刻間に含まれるアドレスn0~アドレスn99に対応する電圧デジタル信号および電流デジタル信号を乗算し、積分した後に、測定区間T1の時間で除算することで電力が求められる。
【0045】
メモリ制御部133は、周期決定部131から入力されるアドレス情報のうち演算データの基となった測定区間に含まれる最初のゼロクロスの立ち上がりに位置する波形メモリ122のアドレスと、信号演算部132から入力される演算データを演算結果メモリ134に格納する。
【0046】
ここで、メモリ制御部133は、波形メモリ122のアドレスおよび演算データが得られた順に、同じ測定区間のデータである波形メモリ122のアドレスと演算データとを組として演算結果メモリ134の同じアドレスa(n)へと格納する。例えば、
図2における波形メモリ122のアドレスn0と測定区間T1の演算データはアドレスa1に格納し、波形メモリ122のアドレスn100と測定区間T2の演算データはアドレスa2に格納する。
【0047】
図3は、演算部130の動作を示すフローチャートである。
【0048】
周期決定部131が、A/D変換器112から入力される電圧デジタル信号に対してゼロクロスの立ち上がりの検出を行い、測定区間T(n)の始点にあたる立ち上がりを検出した場合、ステップS102へと進む(ステップS101:YES)。ここで、測定開始時はn=1とする。立ち上がりを検出しない場合は立ち上がりの検出を繰り返す(ステップS101:NO)。
【0049】
メモリ制御部133は、周期決定部131が検出した立ち上がりを基に、測定区間T(n)の始点のアドレスと、演算結果メモリ134のアドレスa(n)に測定区間T(n)において演算結果が得られていないことを示す非表示コードを演算結果メモリ134のアドレスa(n)に格納する。例えば、n=1の場合、T(n)=T1となり、測定区間T1の始点のアドレスn0と非表示コードを演算結果メモリ134のアドレスa1に格納する(ステップS102)。
【0050】
周期決定部131が、測定区間T(n)の次の測定区間T(n+1)の始点を示す立ち上がりを検出した場合(ステップS103:YES)、ステップS104へ進む。立ち上がりが検出されない場合は立ち上がりの検出を繰り返す(ステップS103:NO)。
【0051】
メモリ制御部133は、周期決定部131が検出した周期を基に、測定区間T(n+1)の始点のアドレスと非表示コードを演算結果メモリ134のアドレスa(n+1)に格納する。例えば、n=1の場合、T(n+1)=T2となり、測定区間T2の始点のアドレスn100と非表示コードを演算結果メモリ134のアドレスa2に格納する(ステップS104)。
【0052】
信号演算部132は、測定区間Tに対応する立ち上がりを基に、測定区間T(n)について電力演算を行う(ステップS105)。例えば、n=1の場合、T(n)=T1となり、測定区間T1について電力演算を行なう。そしてメモリ制御部133は、演算結果メモリ134のアドレスa(n)に格納されている測定区間T(n)の始点のアドレスと非表示コードを削除し、測定区間T(n)の始点のアドレスと測定区間T(n)の演算データをアドレスa(n)に格納する(ステップS106)。例えば、n=1の場合、T(n)=T1、a(n)=a1となり、演算結果メモリ134のアドレスa1に格納されている測定区間T1の始点のアドレスn0と非表示コードを削除し、測定区間T1の始点のアドレスn0と測定区間T1の演算データをアドレスa1に格納する。
【0053】
入力信号が入力されなくなり、メモリ制御部121が波形メモリ122に対して電圧デジタル信号および電流デジタル信号の格納を終了した場合は、動作を終了する(ステップS107:YES)。測定が継続している場合は動作を継続しステップS108へと進む(ステップS107:NO)。
【0054】
上述のT(n)、T(n+1)、a(n)、a(n+1)に含まれるnをn+1と置き換え、ステップS103に戻る(ステップS108)。以下、電圧デジタル信号および電流デジタル信号の格納が終了するまでステップS103からステップS108を繰り返し行う。
【0055】
図4は、メモリ制御部133が、測定区間T1~T3に渡って動作を行い、演算結果メモリ134にデータを格納する例を示した図である。
【0056】
図4(a)~(c)は、測定区間T1~測定区間T3のそれぞれの時刻における演算結果メモリ134に格納されるデータを示している。
図4(a)~(c)の表の左欄は演算結果メモリ134のアドレスを示している。中央欄と右欄は演算結果メモリ134のメモリ領域であり、中央欄には演算結果メモリ134に格納された波形メモリ122に格納するためのアドレスを示す。また、右欄には演算結果メモリ134に格納された演算データもしくは非表示コードを示す。
【0057】
図4(a)は、測定区間T1の時刻における演算結果メモリ134に格納されているデータを示している。メモリ制御部133は、周期決定部131が測定区間T1の始点の立ち上がりを検出した場合、演算結果メモリ134に測定区間T1に対応するアドレスn0と非表示コードをアドレスa1に格納する。
【0058】
図4(b)は、測定が測定区間T1から測定区間T2に移った時刻における演算結果メモリ134に格納されているデータを示している。メモリ制御部133は、周期決定部131が測定区間T2の始点の立ち上がりを検出した場合、演算結果メモリ134に測定区間T2に対応するアドレスn100と非表示コードをアドレスa2に格納する。さらに、メモリ制御部133は、信号演算部133が測定区間T1に対して電力演算を行い測定区間T1の演算データが得られるため、演算結果メモリ134のアドレスa1に格納されているアドレスn0と非表示コードを削除し、アドレスn0と測定区間T1の演算データをアドレスa1に格納する。
【0059】
図4(c)は、測定が測定区間T2から測定区間T3に移った時刻における演算結果メモリ134に格納されているデータを示している。メモリ制御部133は、周期決定部131が測定区間T3の始点の立ち上がりを検出した場合、演算結果メモリ134に測定区間T3に対応するアドレスn200と非表示コードをアドレスa3に格納する。さらに、メモリ制御部133は、信号演算部133が測定区間T2に対して電力演算を行い測定区間T2の演算データが得られるため、演算結果メモリ134のアドレスa2に格納されているアドレスn100と非表示コードを削除し、アドレスn100と測定区間T2の演算データをアドレスa2に格納する。以降の測定区間における動作も同様である。
【0060】
表示制御部141は、あらかじめ設定された描画周期T’が更新されるごとに、波形メモリ122に格納されている電圧デジタル信号および電流デジタル信号のデータをもとに表示波形データを作成する。また、表示制御部141は、描画周期T’が更新されるごとに、演算結果メモリ134に格納されている演算データをもとに表示演算データを作成する。そして表示波形データと表示演算データを表示部142へと出力する。
【0061】
ここで、表示制御部141は、描画周期T’が更新された際に、演算結果メモリ134にある測定区間に対応する演算データが格納されている場合、その測定区間の演算データを表示させる表示演算データを作成する。一方、表示制御部141は、描画周期T’が更新された際に、演算結果メモリ134にある測定区間に対応する非表示コードが格納されている場合、その測定区間に対応する表示演算データを作成しない。
【0062】
表示部142は、表示制御部141から入力される表示波形データと表示演算データをもとに、電圧デジタル信号、電流デジタル信号および演算データをリアルタイムに表示する。ここで、表示部142は演算データを演算を行った測定区間の電圧デジタル信号と電流デジタル信号に対応する位置に表示する。また、表示部142にある測定区間において表示演算データが入力されていない場合は、表示部142には、その測定区間に対応する位置に演算データは表示されない。
【0063】
図5~
図7は、表示部142が測定区間T1からT3に渡って電圧デジタル信号、電流デジタル信号および演算データをリアルタイムに表示する様子を示した図である。また、
図5~
図7において、描画周期T’1、T’2、T’3・・・T’nは、表示制御部140が表示波形データと表示演算データを作成する描画周期T’である。
【0064】
図5は、周期決定部131が立ち上がりS1を検出した後、測定区間T1が確定していない状態におけるデータ表示の例である。
図5(a)はチャンネル1(CH1)の電圧デジタル信号、
図5(b)はチャンネル2(CH2)の電流デジタル信号が表示される欄を示している。また、
図5(c)は演算データが表示される電力演算結果の欄を示している。
図6と
図7についても同様である。
【0065】
図5の状態の場合は、演算結果メモリ134のアドレスa1には、測定区間T1の始点のアドレスn0とともに非表示コードが格納されているため、測定区間T1の電力演算結果の項目には演算データは表示されない。
【0066】
図6は、測定が測定区間T1から測定区間T2へと移った場合におけるデータ表示の例である。測定区間T1が確定し、信号演算部132は測定区間T1の演算データを出力する。そしてメモリ制御部133により、演算結果メモリ134のアドレスa1に格納されている非表示コードは測定区間T1の演算データに書き換えられ、表示部142には測定区間T1の電力演算結果の項目に測定区間T1の演算データが表示される。一方、演算結果メモリ134のアドレスa2には測定区間T2の始点のアドレスとともに非表示コードが格納されているため、測定区間T2の電力演算結果の項目には演算データは表示されない。
【0067】
図7は、測定が測定区間T2から測定区間T3へと移った場合におけるデータ表示の例である。測定区間T2が確定し、信号演算部132は測定区間T2の演算データを出力する。そしてメモリ制御部133により、演算結果メモリ134のアドレスa2に格納されている非表示コードは測定区間T2の演算データに書き換えられ、表示部142には測定区間T2区間の電力演算結果の項目に測定区間T2区間の演算データが表示される。一方、演算結果メモリ134のアドレスa3には測定区間T3の始点のアドレスとともに非表示コードが格納されているため、測定区間T3の電力演算結果の項目には演算データは表示されない。
【0068】
以上に説明したように、本実施形態によれば、電力の演算データを、演算の基となった入力信号に対応する位置に表示することができる。これにより測定を行なうユーザーは、ある測定区間の入力信号と、その測定区間の入力信号を基に演算された電力の演算データとを容易に比較することができ、入力信号と演算データの関係を把握し易くなる。
【0069】
また本実施形態によれば、表示制御部141は、演算結果メモリ134にある測定区間に対応する非表示コードが格納されている場合、その測定区間に対応する表示演算データを作成せず、その測定区間に対応する非表示コードが演算データに書き換えられると同時に、その測定区間に対応する表示演算データを作成するため、表示制御部141が行なう表示演算データの作成のアルゴリズムを簡略化することができる。
【0070】
本実施形態では、電圧信号と電流信号を基に電力を演算するとしたが、本発明の形態はこれに限られない。例えば入力信号の周期に基づいて演算が行なわれる実効値の測定や周波数の測定に応用してもよい。また入力チャンネルも2つに限られず、1つのチャンネルの信号を測定、演算するものや、3つ以上のチャンネルの信号を測定、演算するものであってもよい。
【0071】
また本実施形態では、周期決定部131はA/D変換器112から入力される電圧デジタル信号のゼロクロスの立ち上がりを検出することで測定区間を決定するものとしたが、電圧デジタル信号のゼロクロスの立ち下がりを検出することで電圧デジタル信号の測定区間を決定してもよい。
【0072】
また本実施形態では、周期決定部131が検知した電圧デジタル信号の立ち上がりによって決定される測定区間において演算を行なうものとしたが、本発明の形態はこれに限られない。例えば測定区間を任意の時間ごとに設定して、演算や測定を行なってもよい。
【0073】
また本実施形態では、
図5~7において波形測定器の測定対象である信号の測定区間T1からT3の時間間隔は一定であるとして示したが、本発明の形態はこれに限られない。例えば、周期が変化する信号に対してゼロクロスの立ち上がりもしくは立ち下がりを基に測定区間を決定し、演算を行ってもよい。周期が変化する信号の例として、モータの起動時に生じる電圧、電流信号が挙げられる。
【0074】
なお、本実施形態の波形メモリ122は請求項2に記載の信号メモリに相当する。
【0075】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0076】
110…入力部、111…アンプ、112…A/D変換器、120…波形メモリ部、121…メモリ制御部(第1のメモリ制御部)、122…波形メモリ(信号メモリ)、130…演算部、131…周期決定部、132…信号演算部、133…メモリ制御部(第2のメモリ制御部)、134…演算結果メモリ(演算メモリ)、141…表示制御部、142…表示部