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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091650
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】車両用気体燃料の供給配管
(51)【国際特許分類】
   F02M 55/02 20060101AFI20230623BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20230623BHJP
   F02M 55/00 20060101ALI20230623BHJP
   F02M 21/02 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
F02M55/02 310C
F02M37/00 321Z
F02M37/00 D
F02M55/00 E
F02M55/02 350D
F02M55/02 330D
F02M21/02 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206494
(22)【出願日】2021-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000120249
【氏名又は名称】臼井国際産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝又 宏行
(72)【発明者】
【氏名】神田 孝則
【テーマコード(参考)】
3G066
【Fターム(参考)】
3G066AB05
3G066BA22
3G066BA61
3G066BA67
3G066CB03
3G066CB12
(57)【要約】
【課題】気体燃料の圧力脈動を抑える際、コストや重量の増加を抑制すると共に、レイアウト自由度を高めることができる車両用気体燃料の供給配管を提供すること。
【解決手段】車両に搭載されたエンジンEに供給される気体燃料が流通するメインパイプ12と、メインパイプ12とは別体のサブタンク13と、メインパイプ12とサブタンク13とを連結する連結部材14と、を備えた車両用気体燃料の供給配管10である。そして、メインパイプ12に対し、連結部材14を介してサブタンク13が連結されている構成とした。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された内燃機関に供給される気体燃料が流通するメインパイプと、
前記メインパイプとは別体のサブタンクと、
前記メインパイプと前記サブタンクとを連結する連結部材と、を備え、
前記メインパイプに対し、前記連結部材を介して前記サブタンクが連結されている
ことを特徴とする車両用気体燃料の供給配管。
【請求項2】
請求項1に記載された車両用気体燃料の供給配管において、
前記メインパイプは、前記気体燃料を貯留する燃料タンクに連通した供給パイプが連結されるインレット部と、前記内燃機関に前記気体燃料を噴射するインジェクタが接続されるインジェクタ取付部と、を有し、
前記連結部材は、前記メインパイプの端部又は周面に連結されている
ことを特徴とする車両用気体燃料の供給配管。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に形成された車両用気体燃料の供給配管において、
前記サブタンクは、細長い筒状に形成され、
前記連結部材は、前記メインパイプの一方の端部と前記サブタンクの一方の端部と、を連結する
ことを特徴とする車両用気体燃料の供給配管。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載された車両用気体燃料の供給配管において、
前記サブタンクは、細長い筒状に形成され、前記サブタンクの軸方向が前記メインパイプの軸方向と並列になる姿勢で配置された
ことを特徴とする車両用気体燃料の供給配管。
【請求項5】
請求項4に記載された車両用気体燃料の供給配管において、
前記連結部材は、複数設けられ、
前記メインパイプと前記サブタンクとの間の前記気体燃料の流通は、複数の前記連結部材を介して行われる
ことを特徴とする車両用気体燃料の供給配管。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載された車両用気体燃料の供給配管において、
前記連結部材は、両端が開放した金属製の連結管を有し、
前記連結管は、少なくとも一方の端部が前記メインパイプ又は前記サブタンクに形成された突当部に突き当てられ、ネジ構造を介して連結されている
ことを特徴とする車両用気体燃料の供給配管。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載された車両用気体燃料の供給配管において、
前記連結部材は、両端が開放した金属製の連結管と、前記連結管の一端に形成されて前記メインパイプに連結される第1連結部と、前記連結管の他端に形成されて前記サブタンクに連結される第2連結部と、を有し、
前記第1連結部又は前記第2連結部の少なくとも一方は、前記メインパイプ又は前記サブタンクにろう付けによって固定されている
ことを特徴とする車両用気体燃料の供給配管。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載された車両用気体燃料の供給配管において、
前記連結管は、所望の方向に屈曲可能である
ことを特徴とする車両用気体燃料の供給配管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用気体燃料の供給配管に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載された内燃機関に供給される燃料が流通する燃料供給管に、燃料の圧力脈動を抑制する脈動抑制機構が設けられた燃料の供給配管が知られている(例えば、特許文献1~特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-60786号公報
【特許文献2】特開2004-232472号公報
【特許文献3】特開2018-31271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の燃料の供給配管に設けられた脈動抑制機構は、特許文献1及び特許文献2に記載のように、燃料供給管に接続されたチャンバー内にゴム等の弾性部材やダイヤフラムが設けられ、弾性部材やダイヤフラムが変形することで燃料の圧力脈動を低減する。しかしながら、内燃機関に供給される燃料が気体燃料である場合、液体燃料を供給するときよりも脈動による燃料供給管内の圧力変動が小さい。そのため、気体燃料を内燃機関に供給するための燃料供給配管では、弾性部材やダイヤフラムを用いて圧力脈動を低減する必要がない。つまり、気体燃料の供給配管に弾性部材やダイヤフラムを用いて圧力脈動を低減する脈動抑制機構を設けると、コストや車両重量が不要に増加するという問題が生じる。
【0005】
また、特許文献3に記載のように、燃料供給管に設けた空間部によって脈動抑制機構を構成する場合では、燃料供給管を空間部の分だけ拡大する必要がある。しかしながら、内燃機関の周辺には、様々な部品や配管が複雑に配置され、空間的な余裕が少ない。そのため、燃料供給配管のレイアウト自由度が低く、空間部を有するような大型の燃料供給管を車両に搭載することは容易ではない。
【0006】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、気体燃料の圧力脈動を抑える際、コストや重量の増加を抑制すると共に、レイアウト自由度を高めることができる車両用気体燃料の供給配管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、車両に搭載された内燃機関に供給される気体燃料が流通するメインパイプと、前記メインパイプとは別体のサブタンクと、前記メインパイプと前記サブタンクとを連結する連結部材と、を備えている。そして、前記メインパイプに対し、前記連結部材を介して前記サブタンクが連結されている。
【発明の効果】
【0008】
よって、本発明の車両用気体燃料の供給配管では、気体燃料の圧力脈動を抑える際、コストや重量の増加を抑制すると共に、レイアウト自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1の車両用気体燃料の供給配管が適用された内燃機関の燃料供給システムを示す概略構成図である。
図2】実施例1の車両用気体燃料の供給配管を示す斜視図である。
図3】実施例1の第1接続部とメインパイプとの連結構造を示す説明図である。
図4】実施例2の車両用気体燃料の供給配管を模式的に示す斜視図である。
図5】実施例2の車両用気体燃料の供給配管を模式的に示す断面図である。
図6】本発明の車両用気体燃料の供給配管が適用された内燃機関の燃料供給システムの変形例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の車両用気体燃料の供給配管を実施するための形態を、図面に示す実施例1及び実施例2に基づいて説明する。
【0011】
(実施例1)
実施例1の車両用気体燃料の供給配管(以下、「燃料供給配管10」という)は、例えば、シリンダ内に気体燃料(水素ガス等)を高圧で直接噴射する直噴型のエンジンE(内燃機関)に燃料を供給する燃料供給システム100に適用される。ここで、図1に示すように、燃料供給システム100は、燃料タンク101と、燃圧レギュレータ102と、インジェクタ103と、燃料供給配管10と、を備えている。
【0012】
燃料タンク101は、高圧状態の気体燃料を貯留するガスタンクである。燃料タンク101は、第1供給パイプ10aを介して燃圧レギュレータ102に接続されている。
【0013】
第1供給パイプ10aは、一端が燃料タンク101に接続され、他端が燃圧レギュレータ102に接続されており、気体燃料は、燃料タンク101から燃圧レギュレータ102へと流通する。すなわち、第1供給パイプ10aは、燃料タンク101に連通している。第1供給パイプ10aの途中位置には、第1遮断弁104aと、第2遮断弁104bと、が設けられている。第1遮断弁104aは、燃料タンク101から吐出される気体燃料の流通を適宜遮断する。第2遮断弁104bは、第1遮断弁104aと燃圧レギュレータ102との間に配置され、第1供給パイプ10a内の気体燃料の流通を許容する開き位置と、第1供給パイプ10a内の気体燃料の流通を遮断する閉じ位置との間で動作する。
【0014】
燃圧レギュレータ102は、燃料タンク101に貯留された高圧状態(例えば、70MPa)の気体燃料を、インジェクタ103の噴射供給圧(4~15MPa)まで減圧する。噴射供給圧は、燃圧レギュレータ102によって可変制御されてもよい。燃圧レギュレータ102は、第2供給パイプ10bを介してメインパイプ12に接続されている。
【0015】
第2供給パイプ10bは、一端が燃圧レギュレータ102に接続され、他端がメインパイプ12に接続され、燃圧レギュレータ102によって減圧された気体燃料が流通する。すなわち、第2供給パイプ10bは、燃料タンク101に連通している。
【0016】
インジェクタ103は、エンジンEの気筒数に応じて設けられており、連結管103aを介して、メインパイプ12に連結されている。各インジェクタ103は、エンジンEの運転状態に応じた適切なタイミングで開閉駆動制御され、メインパイプ12内の気体燃料をエンジンEの各気筒内へ直接噴射する。
【0017】
そして、燃料供給配管10は、燃料タンク101からエンジンEに供給される気体燃料が流通する配管であり、第1供給パイプ10aと、第2供給パイプ10bと、メインパイプ12と、サブタンク13と、連結部材14と、を備えている。
【0018】
メインパイプ12は、第2供給パイプ10bが連結されると共に、エンジンEのシリンダ配置と同軸方向(エンジンEの気筒配列方向)に延在した直線状のパイプである。メインパイプ12は、一方の端部12aが開放し、他方の端部12bが閉鎖している。メインパイプ12には、図2に示すように、第2供給パイプ10bが連結されるインレット部15aと、エンジンEの気筒数に応じた数のインジェクタ取付部15bと、複数の取付用ボス15cと、第1接続部16aと、が形成されている。
【0019】
インレット部15a及びインジェクタ取付部15bは、それぞれ図2に示すように、メインパイプ12の周面に形成され、メインパイプ12の軸方向に並んでいる。なお、実施例1では、インレット部15aが、メインパイプ12の一方の端部12aに近い位置に配置されている。また、第1接続部16aは、メインパイプ12の一方の端部12aに形成されており、インレット部15a及びインジェクタ取付部15bとは干渉しない位置に配置されている。また、メインパイプ12の周面又は端面には、図2では図示しないが、例えば燃圧センサーを取り付けるためのボス等の燃料の噴射制御に関係するセンサー等を取り付ける構造が配置される。
【0020】
第1接続部16aは、図3に示すように、ボス部21と、ボス内流路22と、ボス部21の外周面に形成された雄ネジ部23と、ボス内流路22の先端開口22bに形成された突当部24と、を有している。
【0021】
ボス部21は、メインパイプ12の開放した一方の端部12aに、ろう付けや溶接、捩じ込み等によって固定された金属製の円筒部材である。ボス内流路22は、メインパイプ12の軸方向に沿ってボス部21を貫通する。ボス内流路22は、一方の開口22aがメインパイプ12に連通しており、メインパイプ12内の気体燃料は、一方の開口22aからボス内流路22に流入する。また、ボス内流路22の他方の開口である先端開口22bの内側は、中心から開口縁に向かうにつれて径方向外側に傾いたテーパ形状を呈している。このテーパ形状となった先端開口22bの内側が、突当部24となる。また、ボス内流路22の内径寸法W1は、メインパイプ12の内径寸法W2よりも小径に設定されている。
【0022】
サブタンク13は、メインパイプ12とは別体の細長い筒状に形成された中空筐体である。サブタンク13の容積は、気体燃料の脈動低減に必要な容積に設定されている。サブタンク13は、長手方向の一端13a(一方の端部)が開放し、長手方向の他端13bが閉鎖している。開放したサブタンク13の一端13aには、連結部材14を接続するための第2接続部16bが設けられている。なお、第2接続部16bは、メインパイプ12に形成された第1接続部16aと同様の構成であり、図示しないがボス部と、ボス内流路と、雄ネジ部と、突当部とを有している。そのため、第2接続部16bの詳細な説明は省略する。
【0023】
連結部材14は、両端が開放した金属製の連結管17と、連結管17の一端を第1接続部16aに固定する第1ナット18aと、連結管17の他端を第2接続部16bに固定する第2ナット18bと、を有している。
【0024】
連結管17は、両端が開放した金属パイプであり、メインパイプ12及びサブタンク13よりも小径に設定されている。実施例1の連結管17は、図2に示すように、途中位置がほぼ直角に屈曲されている。また、連結管17の両端部(図3では一方の端部のみを示す)は、いずれも塑性加工によって外周面が凸円弧状に湾曲したヘッド部17aが形成されている。なお、ヘッド部17aは、切削加工等により連結管17とは別体部品として形成されていてもよい。この場合、ヘッド部17aは、ろう付けや溶接によって連結管17の端部に固定される。
【0025】
ヘッド部17aは、ボス内流路22の先端開口22bに差し込まれ、先端部17bが突当部24に気密状態で接触する。そして、連結管17は、両端部に形成されたヘッド部17aが第1接続部16a或いは第2接続部16bに突き当てられた状態で、ネジ構造(雄ネジ部23と後述する雌ネジ部43とによる締結構造)を介して第1接続部16a或いは第2接続部16bに固定される。これにより、連結管17の開口の周囲を取り囲む環状のシール面が形成され、気体燃料の漏れが防止される。
【0026】
第1ナット18aは、外形に二面幅(一般的には六角形)を持つ袋状ナットであり、一端に第1接続部16aのボス部21を挿入可能な開口部41を有し、他端に連結管17が貫通する貫通孔42が形成されている。また、第1ナット18aの内周面には、ボス部21の外周面に形成された雄ネジ部23に螺合する雌ネジ部43が形成されており、第1接続部16aを挿入可能な中空の円筒形状を呈している。さらに、貫通孔42の周囲には押圧部44が形成されている。
【0027】
ここで、貫通孔42は、内径W4が、ヘッド部17aの最大外径W3よりも小さく、連結管17の外径W5よりも大きくなるように設定されている。これにより、貫通孔42の内側に形成された押圧部44は、ヘッド部17aのバルジ状の背面17cに対向する。そして、雌ネジ部43が雄ネジ部23に螺合し、第1ナット18aがメインパイプ12に近づいていくことで、押圧部44は、ヘッド部17aを突当部24に向かって押圧する。これにより、連結管17の端部(ヘッド部17aの先端部17b)が第1接続部16aに突き当てられ、ネジ構造(雄ネジ部23と後述する雌ネジ部43とによる締結構造)を介して固定される。
【0028】
連結管17の他方の端部及び第2ナット18bの構成は、連結管17の一方の端部及び第1ナット18aと同様の構成であり、詳細な説明を省略する。
【0029】
以下、実施例1の燃料供給配管10(車両用気体燃料の供給配管)における作用を説明する。
【0030】
実施例1の燃料供給配管10では、車両に搭載されたエンジンEに供給される気体燃料が流通するメインパイプ12と、メインパイプ12とは別体のサブタンク13と、メインパイプ12とサブタンク13とを連結する連結部材14と、を備えている。そして、メインパイプ12に対し、連結部材14を介してサブタンク13が連結されている。このように、メインパイプ12にサブタンク13を連結することで、実施例1の燃料供給配管10は、メインパイプ12を単体で使用する場合よりも、第2供給パイプ10bの下流側で、インジェクタ103までに気体燃料が流れる部分の容積を増やすことができ、インジェクタ103に供給される気体燃料の圧力脈動を抑制することができる。つまり、実施例1の燃料供給配管10は、実質的にメインパイプ12の容積を増大したことと同様の効果を得ることができる。
【0031】
つまり、実施例1の燃料供給配管10は、弾性部材やダイヤフラムを用いることなく、実質的なメインパイプ12の容積増加を図ることでメインパイプ12を流れる気体燃料の圧力脈動を抑えることができる。よって、実施例1の燃料供給配管10は、気体燃料の圧力脈動を抑制する際、コストや重量の増加を抑えることができる。
【0032】
また、サブタンク13は、メインパイプ12とは別体であり、連結部材14を介してメインパイプ12に連結される。このため、実施例1の燃料供給配管10では、サブタンク13のレイアウトに制限が少なく、エンジンEやメインパイプ12の周辺に生じている隙間にサブタンク13を適宜配置することができる。これにより、実施例1の燃料供給配管10は、メインパイプ12の周辺空間を最適に利用して実質的なメインパイプ12の容積増加を図ることが可能となり、メインパイプ12を流れる気体燃料の圧力脈動を抑える際、レイアウト自由度を高めることができる。
【0033】
ここで、圧力脈動を抑制する別の方法として、メインパイプ12の長さを変更することなく大径化することでメインパイプ12の容積を増加する場合を考える。この場合、燃料噴射によりメインパイプ12を流れる気体燃料の圧力上昇と圧力下降とが繰り返されると、メインパイプ12は膨張と収縮を繰り返すことになる。このため、メインパイプ12の他方の端部12bや一方の端部12aの結合部分の際に対し、応力集中が発生する。この結果、疲労破壊の懸念が生じるので、これを抑制するためにはメインパイプ12を肉厚化して、メインパイプ12の変形量を抑え、メインパイプ12の耐圧性を確保する必要がある。そのため、メインパイプ12の重量が増加してしまう。また、抑制したい圧力脈動の大きさに応じて多様な径のメインパイプ12が必要となり、コストアップにつながってしまう。
【0034】
これに対し、実施例1の燃料供給配管10では、メインパイプ12に別体のサブタンク13を連結して実質的にメインパイプ12の容量を増やすため、サブタンク13の容量(形状)を変更することでメインパイプ12の容量を調整することができる。つまり、抑制したい圧力脈動の大きさに拘らず、メインパイプ12を共通化することができ、メインパイプ12自身は管径を変化させず、肉厚化する必要もなくなる。そのため、メインパイプ12の重量の増加を抑制することができる。また、一般的にサブタンク13の方がメインパイプ12よりも形状が単純で、低コストで製造することが可能である。そのため、実施例1の燃料供給配管10は、比較的コストが高いメインパイプ12を多数の径ごとに用意する必要がなく、コストの増加を抑えることが可能となる。
【0035】
つまり、サブタンク13及び連結部材14として、大きさ(容量)や形状等が異なる複数種類のものを予め用意しておくことで、例えばエンジンEの仕様の違いなどによりメインパイプ12の周辺の空間の大きさや位置が異なるものに対しても、メインパイプ12自体を変更することなく、予め用意された大きさ(容量)や形状等の異なる複数種類のサブタンク13及び連結部材14のうちから、メインパイプ12の周辺の空間の大きさや位置に適したものを選択してメインパイプ12に取り付けることで、実質的にメインパイプ12の容積を増大したのと同様の効果を得ることができる。したがって、エンジンEの仕様違いに簡単に対応することができる。
【0036】
また、実施例1の燃料供給配管10では、メインパイプ12が、気体燃料を貯留する燃料タンク101に連通する第2供給パイプ10bが連結されるインレット部15aと、エンジンEに気体燃料を噴射するインジェクタ103が接続されるインジェクタ取付部15bと、を有している。そして、連結部材14は、メインパイプ12の一方の端部12aに連結されている。
【0037】
このため、メインパイプ12は、エンジンEの気筒ごとに気体燃料を分配するいわゆるフューエルデリバリパイプとなる。これにより、実施例1の燃料供給配管10は、実質的にフューエルデリバリパイプの容量を増加し、気体燃料の圧力脈動を抑制することができる。
【0038】
また、実施例1の燃料供給配管10では、サブタンク13が、細長い筒状に形成され、連結部材14は、メインパイプ12の開放した一方の端部12aと、サブタンク13の開放した一端13aと、を連結する。これにより、メインパイプ12とサブタンク13とを直列状態で接続することができる。
【0039】
また、実施例1の燃料供給配管10では、連結部材14が、両端が開放した金属製の連結管17と、連結管17の一端を第1接続部16aに固定することでメインパイプ12に連結される第1ナット18aと、連結管17の他端を第2接続部16bに固定することでサブタンク13に接続される第2ナット18bと、を有している。そして、連結管17の一方の端部は、メインパイプ12に固定されたボス部21に形成された突当部24に突き当てられ、ネジ構造(雄ネジ部23と雌ネジ部43とによる締結構造)を介してメインパイプ12に連結されている。また、連結管17の他方の端部(不図示)は、サブタンク13に固定されたボス部(不図示)に形成された突当部(不図示)に突き当てられ、図示しないネジ構造を介してサブタンク13に連結されている。
【0040】
これにより、実施例1の燃料供給配管10は、連結管17の両端において、第1ナット18a又は第2ナット18bのねじ込み量を調整することで、連結管17の端部におけるシール性能を調整したり、第1ナット18a又は第2ナット18bを締め直すことで、シール性能を回復させたりできる。すなわち、実施例1の燃料供給配管10は、連結部材14とメインパイプ12及びサブタンク13との間のシール性能の調整や回復が可能である。さらに、実施例1の燃料供給配管10は、メインパイプ12に対してサブタンク13を着脱することができる。
【0041】
(実施例2)
以下、実施例2の車両用気体燃料の供給配管(以下、「燃料供給配管10A」という)の構成を、図4に基づいて説明する。なお、図4では、インジェクタ取付部15b及び取付用ボス15cを省略しているが、実施例2においても、実施例1と同様にメインパイプ12にインジェクタ取付部15b及び取付用ボス15cが形成されている。
【0042】
実施例2の燃料供給配管10Aでは、メインパイプ12とは別体のサブタンク13が、細長い筒状に形成されると共に、図4に示すように、サブタンク13の軸方向O2がメインパイプ12の軸方向O1に対して並列になる姿勢で配置されている。また、メインパイプ12とサブタンク13とは、いずれもエンジンEのシリンダ配置と同軸方向に延びており、軸方向O1、O2は平行に設定されている。なお、図4に示すサブタンク13は、メインパイプ12とほぼ同じ管径に設定されると共に、メインパイプ12とほぼ同じ長さに設定されている。しかしながら、サブタンク13の管径及び長さは、気体燃料の脈動低減に必要な容積と、メインパイプ12の周辺のレイアウト要件とに基づいて任意に設定することができる。また、メインパイプ12とサブタンク13とは、エンジンEのシリンダ配置の方向に対して平面視で並列に並び、車両の上下方向(高さ方向)の位置が一致した状態で軸方向O1、O2が平行であってもよい。また、メインパイプ12とサブタンク13とは、車両の上下方向(高さ方向)に沿って並列に並び、エンジンEのシリンダ配置と同軸方向に延びた状態で軸方向O1、O2が平行であってもよい。さらに、メインパイプ12とサブタンク13とは、エンジンEのシリンダ配置の方向に対して平面視で並列に並び且つ車両の上下方向の位置がずれた状態で、軸方向O1、O2が平行であってもよい。さらに、メインパイプ12とサブタンク13とは、軸方向O2が軸方向O1に対して並列になる姿勢で配置されていれば、必ずしも同じ方向(例えば、エンジンEのシリンダ配置と同軸の方向)に延在されなくてもよい。つまり、軸方向O1、O2は、必ずしも平行でなくてもよい。
【0043】
そして、図5に示すように、サブタンク13は、長手方向の両端13a、13bがいずれも閉鎖しており、周面にタンク側開口部13cが二つ(複数)形成されている。
【0044】
一方、メインパイプ12は、図5に示すように、両端部12a、12bがそれぞれ閉鎖され、周面にパイプ側開口部12cが二つ(複数)形成されている。
【0045】
そして、実施例2の燃料供給配管10Aでは、連結部材14Aが二つ(複数)設けられ、二つ(複数)の連結部材14Aを介して、メインパイプ12とサブタンク13とが連結されている。すなわち、二つずつ形成されたパイプ側開口部12cとタンク側開口部13cとがそれぞれ連結部材14Aを介して連通し、気体燃料の流通は、メインパイプ12とサブタンク13との間で二つの連結部材14Aを介して行なわれる。
【0046】
さらに、実施例2の燃料供給配管10Aでは、連結部材14Aが、両端が開放した金属製の連結管17Aと、連結管17Aの一端に形成されてメインパイプ12に連結される第1連結部19aと、連結管17Aの他端に形成されてサブタンク13に連結される第2連結部19bと、を有している。なお、連結管17Aと第1連結部19aと第2連結部19bとは一体成型物である。
【0047】
実施例2の連結管17Aは、両端が開放した金属パイプであり、メインパイプ12及びサブタンク13とほぼ同径に設定されている。実施例2の連結管17Aは、図4及び図5に示すように、直線状に延びている。
【0048】
第1連結部19aは、連結管17Aの一端に形成されたフランジ部分であり、メインパイプ12の外周面に沿うように円弧状に湾曲している。そして、連結部材14Aでは、連結管17Aの一端がパイプ側開口部12cに対向した状態で、第1連結部19aの周縁部がメインパイプ12に対してろう付けによって固定されている。
【0049】
第2連結部19bは、連結管17Aの他端に形成されたフランジ部分であり、サブタンク13の外周面に沿うように円弧状に湾曲している。そして、連結部材14Aでは、連結管17Aの他端がタンク側開口部13cに対向した状態で、第2連結部19bの周縁部がサブタンク13に対してろう付けによって固定されている。
【0050】
以下、実施例2の燃料供給配管10A(車両用気体燃料の供給配管)における作用を説明する。
【0051】
実施例2の燃料供給配管10Aでは、サブタンク13が細長い筒状に形成され、サブタンク13の軸方向O2がメインパイプ12の軸方向O1と並列になる姿勢で配置されている。
【0052】
これにより、実施例2の燃料供給配管10Aでは、メインパイプ12の周辺の隙間に応じてサブタンク13を適切に配置することができる。このため、実施例2の燃料供給配管10Aは、メインパイプ12の周囲に狭い隙間しかなくても、第2供給パイプ10bの下流側で、インジェクタ103までに気体燃料が流れる部分の容積を増やすことができる。この結果、実質的にメインパイプ12の容積を増大したことと同様の効果を得ることができ、インジェクタ103に供給される気体燃料の圧力脈動を抑制することができる。
【0053】
また、実施例2の燃料供給配管10Aでは、連結部材14Aが、二つ(複数)設けられ、メインパイプ12とサブタンク13との間の気体燃料の流通が、二つの連結部材14Aを介して行われる。このため、メインパイプ12とサブタンク13との間を流れる気体燃料の流量を、例えば実施例1の燃料供給配管10Aよりも多くすることができる。これにより、気体燃料の急激な圧力変動を緩和し、例えば耐圧安全上メインパイプ12に設けられているリリーフバルブ(不図示)の開放動作を防止することができる。
【0054】
さらに、実施例2の燃料供給配管10Aでは、連結部材14Aが、両端が開放した金属製の連結管17Aと、連結管17Aの一端に形成されてメインパイプ12に連結される第1連結部19aと、連結管17Aの他端に形成されてサブタンク13に接続される第2連結部19bと、を有している。そして、第1連結部19aは、メインパイプ12にろう付けにより固定され、第2連結部19bは、サブタンク13にろう付けにより固定されている。
【0055】
このため、実施例2の燃料供給配管10Aは、連結部材14とメインパイプ12及びサブタンク13との間を精密に接合することができる。また、実施例2の燃料供給配管10Aは、母材を傷つけずに第1連結部19a及び第2連結部19bをメインパイプ12やサブタンク13に固定することができる。
【0056】
以上、本発明の車両用気体燃料の供給配管を実施例1及び実施例2に基づいて説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加などは許容される。
【0057】
実施例1では、本発明の車両用気体燃料の供給配管が適用される燃料供給システム100として、インジェクタ103が、連結管103aを介してメインパイプ12に連結されている例が示された。しかしながら、連結管103aは必ずしも必要ではなく、インジェクタ103は、図6に示すように、メインパイプ12に形成されたインジェクタ取付部15bに直接差し込まれて、固定されていてもよい。
【0058】
また、実施例1及び実施例2では、いずれもサブタンク13が細長い筒状に形成された例が示された。しかしながら、本発明の車両用気体燃料の供給配管は、サブタンク13の形状を、メインパイプ12の周辺空間を最適に利用可能な任意の形状とすることができる。
【0059】
また、実施例1では、連結部材14の連結管17の両端が、それぞれメインパイプ12又はサブタンク13に突き当てられて、ネジ構造(雄ネジ部23と雌ネジ部43とによる締結構造)によって連結される例が示された。さらに、実施例2では、連結部材14Aの第1連結部19a及び第2連結部19bが、いずれもろう付けによってメインパイプ12又はサブタンク13に固定される例が示された。しかしながら、メインパイプ12及びサブタンク13と連結部材14とは、例えば溶接等の他の連結方法によって連結してもよい。また、本発明の車両用気体燃料の供給配管は、連結管17の一方の端部をメインパイプ12に突き当てて第1ナット18aを用いたネジ構造で連結する一方、連結管17の他方の端部をろう付けによってサブタンク13に固定してもよい。つまり、連結部材14は、メインパイプ12側とサブタンク13側とで異なる連結方法によって連結されてもよい。
【0060】
また、実施例1及び実施例2では、メインパイプ12にインレット部15aとインジェクタ取付部15bとが形成され、メインパイプ12がいわゆるフューエルデリバリパイプである例が示されたが、本発明の車両用気体燃料の供給配管は、これに限らない。メインパイプ12は、インレット部15a及びインジェクタ取付部15bが必ずしも形成されていなくてもよいし、インレット部15a又はインジェクタ取付部15bのいずれか一方のみが形成されてもよい。さらに、メインパイプ12は、フューエルデリバリパイプでなくてもよく、メインパイプ12は、例えば第1供給パイプ10aや第2供給パイプ10bであってもよい。
【0061】
また、実施例1では、第1ナット18a、第2ナット18bを締め付けて連結管17の端部に形成されたヘッド部17aを押圧し、連結管17を第1接続部16a或いは第2接続部16bに固定する例が示された。しかしながら、連結管17をメインパイプ12又はサブタンク13に突き当てて、ネジ構造で固定する連結方法はこれに限らない。例えば、本発明の車両用気体燃料の供給配管は、メインパイプ12やサブタンク13に、内周面に雌ネジ部及び突当部が形成されたボス部を形成し、連結管17の両端部の外周面に雄ネジ部を形成してもよい。この場合、連結管17の先端がボス部の底面に接触するまでボス部に連結管17の端部を捩じ込むことで、連結管17がメインパイプ12又はサブタンク13に突き当てられると同時にネジ構造を介して固定される。
【0062】
さらに、実施例1及び実施例2では、連結部材14、14Aの連結管17、17Aが金属製で固定された形状の管である例が示された。しかしながら、連結管17、17Aは、所望の方向に屈曲可能なフレキシブル管であってもよい。これにより、本発明の車両用気体燃料の供給配管は、メインパイプ12に連結した状態でサブタンク13の配置位置を変更することができる。
【0063】
また、実施例1では、連結管17の途中位置がほぼ直角に屈曲した例が示されたが、連結管17の屈曲角度は直角に限らない。連結管17は、サブタンク13の車載レイアウトに適宜合わせた角度に屈曲されることが可能であり、途中位置が屈曲していなくてもよい。
【0064】
また、実施例2では、サブタンク13の軸方向O2がメインパイプ12の軸方向O1と並列になる姿勢で配置されると共に、メインパイプ12とサブタンク13とが複数の連結部材14Aによって連結された例が示された。しかしながら、本発明の車両用気体燃料の供給配管は、サブタンク13の軸方向O2がメインパイプ12の軸方向O1と並列になる姿勢で配置された状態であっても、実施例1のように、メインパイプ12の一方の端部12aとサブタンク13の一端13aとを、連結部材14によって連結してもよい。さらに、本発明の車両用気体燃料の供給配管は、メインパイプ12の周面とサブタンク13の周面とを、一つの連結部材14Aによって連結してもよい。
【0065】
また、実施例1及び実施例2では、メインパイプ12の両端部12a、12bがそれぞれ閉鎖された例が示された。しかしながら、メインパイプ12は、例えば燃圧センサーが端部に配置されることもあり、両端部12a、12bの形状は適宜変更される。
【0066】
さらに、本発明の車両用気体燃料の供給配管は、メインパイプ12とは別体で形成されたサブタンク13と、メインパイプ12とサブタンク13とを連結する連結部材14とによって、気体燃料の供給配管用のサブタンクユニットを構成してもよい。サブタンク13と連結部材14とによってサブタンクユニットを構成することで、サブタンク13に所定の連結部材14を予め設けておくことができる。これにより、本発明の車両用気体燃料の供給配管は、第2供給パイプ10bの下流側で、インジェクタ103までに気体燃料が流れる部分の容積を容易に増大させることができる。特に、エンジンEの仕様に応じて複数種類のサブタンクユニットを用意しておくことで、エンジンEの仕様違いに簡単に対応することができる。
【符号の説明】
【0067】
100 燃料供給システム
101 燃料タンク
102 燃圧レギュレータ
103 インジェクタ
E エンジン(内燃機関)
10、10A 車両用気体燃料の供給配管(燃料供給配管)
12 メインパイプ
12a 一方の端部
13 サブタンク
13a 一端(一方の端部)
14、14A 連結部材
15a インレット部
15b インジェクタ取付部
15c 取付用ボス
16a 第1接続部
16b 第2接続部
17 連結管
18a 第1ナット
18b 第2ナット
19a 第1連結部
19b 第2連結部
図1
図2
図3
図4
図5
図6