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特開2023-91652カテーテルハンドルおよびそれを備えたカテーテル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091652
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】カテーテルハンドルおよびそれを備えたカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/092 20060101AFI20230623BHJP
【FI】
A61M25/092 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206497
(22)【出願日】2021-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 卓弥
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA01
4C267AA32
4C267BB04
4C267CC08
4C267CC20
4C267CC26
4C267GG04
4C267GG06
4C267GG07
4C267GG08
4C267GG09
4C267GG22
(57)【要約】
【課題】新規の構造のカテーテルハンドルを提供する。
【解決手段】ハンドル本体2に対して回転可能に設けられた回転ノブ3と、ハンドル本体2のシャフト4の外側に配置され、長手方向を回転軸として回転可能な駆動ギア5と、長手方向に垂直な回転軸Q1を有し、駆動ギア5に係合した第1ギア7と、回転軸Q1を有し、シャフト4に対して第1ギア7の反対側に配置され、駆動ギア5に係合した第2ギア9と、回転軸Q1と平行な回転軸Q2,Q3を有する第1プーリー11と第2プーリー13と、第1ギア7と第1プーリー11に環状に架け渡された第1線状部材15と、第2ギア9と第2プーリー13に環状に架け渡された第2線状部材16と、遠位部がチューブ32の内腔に配置され、近位部がシャフト4に対して一方側にある第1線状部材15と第2線状部材16にそれぞれ固定された第1ワイヤ17と第2ワイヤ18とを有するカテーテルハンドル1。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルのチューブを操作するためのハンドルであって、
長手方向に延びる内腔を有するハンドル本体と、
前記ハンドル本体に対して前記長手方向を回転軸として回転可能に設けられた回転ノブと、
前記ハンドル本体の内腔に配置された第1線状部材と、
前記ハンドル本体の内腔に配置された第2線状部材と、
遠位部が前記チューブの内腔に配置され、近位部が前記ハンドル本体の内腔に配置された第1ワイヤと、
遠位部が前記チューブの内腔に配置され、近位部が前記ハンドル本体の内腔に配置された第2ワイヤと、
前記ハンドル本体の内腔に配置され、前記長手方向に延び、前記ハンドル本体に固定されたシャフトと、
前記シャフトの外側に配置され、前記長手方向に延びる回転軸を有し、前記回転ノブの回転と連動して回転可能に設けられた駆動ギアと、
前記長手方向の垂直方向に延びる回転軸(以下、「第1垂直回転軸」と称する)を有し、前記駆動ギアに係合する係合部を有するとともに、前記第1垂直回転軸の周りに前記第1線状部材が当接する当接部を有する第1ギアと、
前記第1垂直回転軸を回転軸として有し、前記シャフトに対して前記第1ギアの反対側に配置され、前記駆動ギアに係合する係合部を有するとともに、前記第1垂直回転軸の周りに前記第2線状部材が当接する当接部を有する第2ギアと、
前記第1ギアよりも近位側または遠位側に配置され、前記第1垂直回転軸と平行に延びる回転軸(以下、「第2垂直回転軸」と称する)を有し、前記第2垂直回転軸の周りに前記第1線状部材が当接する当接部を有する第1プーリーと、
前記第2ギアよりも近位側または遠位側に配置され、前記第1垂直回転軸と平行に延びる回転軸(以下、「第3垂直回転軸」と称する)を有し、前記第3垂直回転軸の周りに前記第2線状部材が当接する当接部を有する第2プーリーとを有し、
前記第1線状部材は、前記第1ギアと前記第1プーリーを架け渡して環状に設けられ、
前記第2線状部材は、前記第2ギアと前記第2プーリーを架け渡して環状に設けられ、
前記第1ワイヤの近位部は、前記環状の第1線状部材の前記第1ギアと前記第1プーリーの間の部分であって、前記シャフトの延在方向と前記第1垂直回転軸の延在方向とから形成される仮想平面に対し一方側の部分に固定され、
前記第2ワイヤの近位部は、前記環状の第2線状部材の前記第2ギアと前記第2プーリーの間の部分であって、前記仮想平面に対して前記一方側の部分に固定されているカテーテルハンドル。
【請求項2】
前記環状の第1線状部材の前記第1ギアと前記第1プーリーの間の部分であって、前記仮想平面に対して前記一方側の部分に取り付けられた第1固定具と、
前記環状の第2線状部材の前記第2ギアと前記第2プーリーの間の部分であって、前記仮想平面に対して前記一方側の部分に取り付けられた第2固定具とをさらに有し、
前記第1ワイヤの近位部は前記第1固定具に固定され、
前記第2ワイヤの近位部は前記第2固定具に固定されている請求項1に記載のカテーテルハンドル。
【請求項3】
前記第2垂直回転軸の延長上に前記第3垂直回転軸が存在する請求項1または2に記載のカテーテルハンドル。
【請求項4】
前記駆動ギアに対する前記第1ギアのギア比が1より大きく、
前記駆動ギアに対する前記第2ギアのギア比が1より大きい請求項1~3のいずれか一項に記載のカテーテルハンドル。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のカテーテルハンドルと、
前記カテーテルハンドルの遠位側に設けられたチューブとを有するカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルに用いられるハンドルと、それを備えたカテーテルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
カテーテルは、通常、血管や消化管や尿管などの体腔に挿入するためのチューブと、チューブの近位側に設けられたハンドルとから構成されている。カテーテルには、手元側のハンドルを操作してチューブの遠位端部を屈曲できるように構成されたものが知られている。このようなカテーテルは、チューブの内腔にワイヤが配され、ワイヤの遠位端部がチューブの遠位端部に固定され、ワイヤの近位端部がハンドルに接続され、ハンドルを操作することによりチューブの遠位端部を屈曲できるようになっている。例えば、チューブの内腔にワイヤが2本配されたカテーテルでは、ハンドルを操作することにより、2本のワイヤの一方を近位側に引っ張ることでチューブの遠位端部を一方側に屈曲させ、他方を引っ張ることでチューブの遠位端部を他方側に屈曲させることができる。
【0003】
このようなカテーテルハンドルとして、例えば特許文献1には、先端部がカテーテルの先端領域に結合された2つの制御ワイヤを備えたカテーテルハンドルであって、ハウジングと、ハウジング内に配置され、ハウジング内で直線的に並進するように構成された摺動アセンブリと、ハウジングに対して回転自在に設けられた制御ノブを有し、前記2つの制御ワイヤの基端部がハウジング内に配置され、摺動アセンブリを直線的に並進させることによって摺動アセンブリが2つの制御ワイヤのそれぞれを別個に操作するように構成され、制御ノブを第1の回転方向へ回転させることによって、摺動アセンブリが先端側へ変位して2つの制御ワイヤの一方に張力をかけ、それによりカテーテルが第1の偏向方向に偏向し、制御ノブを第2の回転方向へ回転させることによって、摺動アセンブリが基端側へ変位して2つの制御ワイヤの他方に張力をかけ、それによりカテーテルが第2偏向方向に偏向するように構成されたカテーテルハンドルが開示されている。特許文献2には、カテーテルの遠位部分を偏向させるカテーテルハンドルであって、第1の直径を有し、第1のワイヤが連結される第1の回転部材と、前記第1の直径より小さい第2の直径を有し、第2のワイヤが連結される第2の回転部材とを有し、第2の回転部材は、第2の回転部材の中心点が第1の回転部材の中心点からずれるように、第1の回転部材に連結され、第1および第2の回転部材は、第1のワイヤを介した第1の回転部材の回転が、第2の回転部材および第2のワイヤを回転させて、カテーテルの遠位部分を偏向させるように構成されたカテーテルハンドルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2015-523892号公報
【特許文献2】特表2018-515215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、従来様々なカテーテルハンドルが提案されており、本発明の目的は、新規の構造のカテーテルハンドルとそれを備えたカテーテルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決することができた本発明のカテーテルハンドルとは、カテーテルのチューブを操作するためのハンドルであって;長手方向に延びる内腔を有するハンドル本体と;ハンドル本体に対して長手方向を回転軸として回転可能に設けられた回転ノブと;ハンドル本体の内腔に配置された第1線状部材と;ハンドル本体の内腔に配置された第2線状部材と;遠位部がチューブの内腔に配置され、近位部がハンドル本体の内腔に配置された第1ワイヤと;遠位部がチューブの内腔に配置され、近位部がハンドル本体の内腔に配置された第2ワイヤと;ハンドル本体の内腔に配置され、長手方向に延び、ハンドル本体に固定されたシャフトと;シャフトの外側に配置され、長手方向に延びる回転軸を有し、回転ノブの回転と連動して回転可能に設けられた駆動ギアと;長手方向の垂直方向に延びる回転軸(以下、「第1垂直回転軸」と称する)を有し、駆動ギアに係合する係合部を有するとともに、第1垂直回転軸の周りに第1線状部材が当接する当接部を有する第1ギアと;第1垂直回転軸を回転軸として有し、シャフトに対して第1ギアの反対側に配置され、駆動ギアに係合する係合部を有するとともに、第1垂直回転軸の周りに第2線状部材が当接する当接部を有する第2ギアと;第1ギアよりも近位側または遠位側に配置され、第1垂直回転軸と平行に延びる回転軸(以下、「第2垂直回転軸」と称する)を有し、第2垂直回転軸の周りに第1線状部材が当接する当接部を有する第1プーリーと;第2ギアよりも近位側または遠位側に配置され、第1垂直回転軸と平行に延びる回転軸(以下、「第3垂直回転軸」と称する)を有し、第3垂直回転軸の周りに第2線状部材が当接する当接部を有する第2プーリーとを有し;第1線状部材は、第1ギアと第1プーリーを架け渡して環状に設けられ;第2線状部材は、第2ギアと第2プーリーを架け渡して環状に設けられ;第1ワイヤの近位部は、環状の第1線状部材の第1ギアと第1プーリーの間の部分であって、シャフトの延在方向と第1垂直回転軸の延在方向とから形成される仮想平面に対し一方側の部分に固定され;第2ワイヤの近位部は、環状の第2線状部材の第2ギアと第2プーリーの間の部分であって、前記仮想平面に対して一方側の部分に固定されているところに特徴を有する。
【0007】
カテーテルハンドルは、環状の第1線状部材の第1ギアと第1プーリーの間の部分であって、前記仮想平面に対して一方側の部分に取り付けられた第1固定具と、環状の第2線状部材の第2ギアと第2プーリーの間の部分であって、仮想平面に対して一方側の部分に取り付けられた第2固定具とをさらに有し、第1ワイヤの近位部が第1固定具に固定され、第2ワイヤの近位部が第2固定具に固定されていることが好ましい。
【0008】
第2垂直回転軸の延長上に第3垂直回転軸が存在することが好ましい。また、駆動ギアに対する第1ギアのギア比は1より大きく、駆動ギアに対する第2ギアのギア比は1より大きいことが好ましい。
【0009】
本発明はまた、本発明のカテーテルハンドルと、カテーテルハンドルの遠位側に設けられたチューブとを有するカテーテルも提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のカーテルハンドルおよびカテーテルによれば、回転ノブを回転させる操作により、カテーテルハンドルの遠位側に設けられたチューブを操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】カテーテルハンドルを備えたカテーテルの全体図の一例を表す。
図2図1に示したカテーテルに設けられたカテーテルハンドルの内部構造の一例を表し、内部構造の側面図を表す。
図3図2に示したカテーテルハンドルの内部構造の上面図を表す。
図4図2に示したカテーテルハンドルの内部構造であって、駆動ギアと第1ギアと第2ギアと第1プーリーと第2プーリーを長手方向に沿って一部切除した断面図を表す。
図5図2に示したカテーテルハンドルの内部構造の駆動ギアと第1ギアと第2ギアの拡大図を表す。
図6図5に示した駆動ギアと第1ギアと第2ギアの変形例を表す。
図7図5に示した駆動ギアと第1ギアと第2ギアの変形例を表す。
図8】カテーテルハンドルを備えたカテーテルの全体図の他の例を表す。
図9図8に示したカテーテルに設けられたカテーテルハンドルの内部構造の一例を表し、内部構造の側面図を表す。
図10図9に示したカテーテルハンドルの内部構造の上面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、下記実施の形態に基づき本発明のカテーテルハンドルと当該ハンドルを備えたカテーテルを具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0013】
図1および図8を参照して、カテーテルハンドルを備えたカテーテルの全体を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るカテーテルの全体図を表し、図8は、本発明の他の実施形態に係るカテーテルの全体図を表す。
【0014】
本発明の実施の形態に係るカテーテル31は、カテーテルハンドル1(以下、「ハンドル1」と称する)と、ハンドル1の遠位側に設けられたチューブ32とを有する。カテーテル31は、例えば、チューブ32を患者の血管や消化管などの体腔に挿入して、治療や検査に用いられる。
【0015】
本発明において、カテーテルの近位側とは、カテーテルの延在方向に対して使用者の手元側の方向を指し、遠位側とは近位側の反対方向、すなわち処置対象側の方向を指す。
【0016】
チューブ32は、可撓性を有する管状構造を有しており、例えば、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレンやポリプロピレン)、ポリアミド樹脂(例えば、ナイロン)、ポリエステル樹脂(例えば、PET)、芳香族ポリエーテルケトン樹脂(例えば、PEEK)、ポリエーテルポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂(例えば、PTFE、PFA、ETFE)等の合成樹脂や、ステンレス鋼、炭素鋼、ニッケルチタン合金等の金属から構成することができる。金属材料は、合成樹脂チューブ内に埋め込まれた金属線材としても用いることができる。チューブ32の軸方向(遠近方向)の長さは、ハンドル1の同方向の長さの数倍から数十倍程度長くなっており、例えば、500mm~1200mm程度である。チューブ32の外径は、例えば、0.6mm~5mm程度とすればよく、0.6mm~3mmであることが好ましい。
【0017】
チューブ32は内腔を有しており、内部に1つの内腔を有するシングルルーメン構造であっても、複数の内腔を有するマルチルーメン構造のいずれであってもよい。チューブ32は、複数の同軸の内腔が設けられたコアキシャル構造を有するものであってもよい。チューブ32の内腔には、チューブ32を操作するためのワイヤが配置される。ワイヤは、例えばチューブ32の遠位端部の曲がりを制御するために設けられる。この場合、ワイヤの遠位端部はチューブ32の遠位端部、例えばチューブ32の遠位側1/3の部分に固定されることが好ましい。チューブ32の内腔には、導線、光ファイバ、内視鏡などが配置されてもよく、ガイドワイヤや別の処置具を挿通するための内腔が設けられたり、薬剤や造影剤、任意の流体を流通させるための内腔が設けられてもよい。
【0018】
ハンドル1はチューブ32の近位側に設けられ、カテーテルとして組み立てた際には、チューブ32の内腔に配されたワイヤの近位端部がハンドル1に接続される。
【0019】
カテーテルハンドルの詳細について、図2図4図9および図10を参照して説明する。図2図4は、図1に示したカテーテルに設けられたカテーテルハンドルの内部構造の一例を表し、図9および図10は、図8に示したカテーテルに設けられたカテーテルハンドルの内部構造の一例を表す。図2および図9は、カテーテルハンドルの内部構造の側面図を表し、図3および図10は、カテーテルハンドルの内部構造の上面図を表し、図4は、図2に示したカテーテルハンドルの内部構造であって、駆動ギアと第1ギアと第2ギアと第1プーリーと第2プーリーを長手方向に沿って一部切除した断面図を表す。図2図4図9および図10では、カテーテルハンドルのハウジングとなるハンドル本体と回転ノブを軸方向に沿って切除し、内部構造が見えるようにしたカテーテルハンドルが示されている。また、図5には、図2に示したカテーテルハンドルの内部構造の駆動ギアと第1ギアと第2ギアの拡大図が示されている。
【0020】
本発明の実施の形態に係るハンドル1は、長手方向xに延びる内腔を有するハンドル本体2と、ハンドル本体2に対して長手方向xを回転軸として回転可能に設けられた回転ノブ3と、ハンドル本体2の内腔に配置され、長手方向xに延び、ハンドル本体2に固定されたシャフト4とを有する。ハンドル1において、長手方向xとは、回転ノブ3の回転軸が延びる方向に相当し、長手方向xに対する一方側と他方側として、近位側と遠位側が定められる。また、長手方向xに対する直交方向として径方向が定められる。図面に示したハンドル1では、図面の右側が近位側に相当し、図面の左側が遠位側に相当する。
【0021】
ハンドル本体2は、長手方向xに延びる内腔を有する。ハンドル本体2の内腔は、長手方向xに長い形状に形成されていることが好ましく、長手方向xを軸とした円筒状(円柱状)や多角柱状に形成された部分を有することが好ましい。
【0022】
回転ノブ3は、ハンドル本体2に対して長手方向xを回転軸として回転可能に設けられる。ハンドル本体2は、遠位側と近位側の少なくとも一方がオープンに形成され、回転ノブ3は、オープンに形成されたハンドル本体2の遠位側または近位側に配置されることが好ましい。図2図4に示したハンドル1では、ハンドル本体2の遠位側がオープンに形成され、回転ノブ3がハンドル本体2の遠位側に配置されている。図9および図10に示したハンドル1では、ハンドル本体2の近位側がオープンに形成され、回転ノブ3がハンドル本体2の近位側に配置されている。ハンドル1は、ハンドル本体2と回転ノブ3が外側に露出しており、例えば、一方の手でハンドル本体2を持って、もう一方の手で回転ノブ3を持ってハンドル本体2に対して回転させることにより、ハンドル1を操作することができる。回転ノブ3の一部は、ハンドル本体2の内腔に配置されていてもよい。
【0023】
ハンドル本体2の内腔には、シャフト4が長手方向xに延びるように配置される。シャフト4はハンドル本体2に固定され、ハンドル本体2に対して回転したり移動しないように設けられる。シャフト4はハンドル本体2と一体的に形成されてもよい。シャフト4は、回転ノブ3の回転軸となる位置に配置されることが好ましい。シャフト4は、長手方向xに対して、ハンドル本体2から回転ノブ3にかけて設けられることが好ましく、ハンドル本体2と回転ノブ3よりも遠位側および/または近位側に延びるように設けられてもよい。従って、回転ノブ3は長手方向xに延びる内腔を有し、当該内腔にシャフト4が配置されることが好ましい。
【0024】
シャフト4の遠位側にはチューブ32が接続されることが好ましい。シャフト4とチューブ32の接続部は、ハンドル1の内部空間にあってもよく、ハンドル1の内部空間よりも遠位側にあってもよく、ハンドル1の外側にあってもよい。シャフト4はチューブ32と一体的に形成されてもよい。
【0025】
シャフト4は、中実状に形成されてもよく、中空状に形成されてもよい。なお、シャフト4は中空状に形成され、シャフト4の内腔がチューブ32の内腔と連通していることが好ましい。これにより、シャフト4の内腔およびチューブ32の内腔を通して、カテーテル31の手元側から処置対象部に処置具を送達したり、薬剤や造影剤を注入することができる。処置具としては、電極カテーテル、アブレーションカテーテル、マッピングカテーテル、バルーンカテーテル、マイクロカテーテル、鉗子、レーザープローブ、ファイバースコープ、高周波処置具、電気水圧衝撃破砕プローブ等が挙げられる。シャフト4は、このような処置具の挿入を可能とするために、シャフト4はハンドル1の外側に近位側開口を有することが好ましい。シャフト4は分岐部を有していてもよく、シャフト4の分岐部に切り替えコックが設けられていてもよい。これにより、例えば、処置具の挿入口と薬剤等の注入口とを分けて設けることができる。
【0026】
ハンドル1の内部には、シャフト4の外側に、長手方向xに延びる回転軸を有する駆動ギア5が設けられている。駆動ギア5は、後述する第1ギア7と第2ギア9に係合する係合部を有する。駆動ギア5は、回転ノブ3の回転と連動して回転可能に設けられており、回転ノブ3を回転させることにより、駆動ギア5が長手方向xを回転軸として、すなわちシャフト4を回転軸として、回転することができる。
【0027】
図面に示したハンドル1では、駆動ギア5が回転ノブ3に接合されており、これにより、回転ノブ3の回転に連動して駆動ギア5が長手方向xを回転軸として回転することができる。具体的には、駆動ギア5は長手方向xに延びる筒状部材6を備え、当該筒状部材6の内腔にシャフト4が挿通され、駆動ギア5がシャフト4に対して長手方向xを回転軸として回転可能に設けられている。筒状部材6は、筒状部材6の内腔にシャフト4を挿通した状態で、回転ノブ3の内腔に配置され、筒状部材6が回転ノブ3に回転不能に取り付けられている。これにより、回転ノブ3とともに駆動ギア5を回転させることができる。駆動ギア5は回転ノブ3と一体的に形成されていてもよい。なお、図面には示されていないが、回転ノブ3と駆動ギア5の間に別の歯車が設けられ、当該別の歯車を介して、駆動ギア5が回転ノブ3の回転と連動して回転するように構成されていてもよい。
【0028】
ハンドル1には、長手方向xの垂直方向に延びる回転軸を有し、駆動ギア5に係合する係合部を有する第1ギア7が設けられている。駆動ギア5と第1ギア7は、駆動ギア5の係合部に設けられた歯と第1ギア7の係合部に設けられた歯が互いに係合するように形成されている。このように駆動ギア5と第1ギア7が設けられることにより、駆動ギア5の長手方向xを回転軸とした回転移動を、第1ギア7の長手方向xの垂直方向を回転軸とした回転移動に変換することができる。以下、第1ギア7の回転軸を、「第1垂直回転軸Q1」と称する。第1垂直回転軸Q1は、その延長上にシャフト4が存在するように形成されることが好ましい。
【0029】
ハンドル1には、第1垂直回転軸Q1を有し、シャフト4に対して第1ギア7の反対側に配置され、駆動ギア5に係合する係合部を有する第2ギア9がさらに設けられている。駆動ギア5と第2ギア9は、駆動ギア5の係合部に設けられた歯と第2ギア9の係合部に設けられた歯が互いに係合するように形成されている。このように駆動ギア5と第2ギア9が設けられることにより、駆動ギア5の長手方向xを回転軸とした回転移動を、第2ギア9の長手方向xの垂直方向を回転軸とした回転移動に変換することができる。駆動ギア5はシャフト4を回転軸として回転し、第2ギア9はシャフト4を挟んで第1ギア7と対向して配置されているため、駆動ギア5を回転させると、第2ギア9は第1ギア7と反対方向に回転することとなる。
【0030】
駆動ギア5と第1ギア7と第2ギア9の種類は、第1ギア7と第2ギア9の回転軸が駆動ギア5の回転軸に対して垂直に交差するように設けることができるものであれば、特に限定されない。駆動ギア5と第1ギア7と第2ギア9の組み合わせ(詳細には、駆動ギア5の係合部と第1ギア7の係合部と第2ギア9の係合部の組み合わせ)としては、例えば、駆動ギア5がかさ歯車で第1ギア7と第2ギア9がかさ歯車の組み合わせ、駆動ギア5が平歯車で第1ギア7と第2ギア9がクラウン歯車の組み合わせ、駆動ギア5がクラウン歯車で第1ギア7と第2ギア9が平歯車の組み合わせ等が挙げられる。歯車は、歯が回転軸に対して平行に延びているすぐば歯車であってもよく、歯が回転軸に対して斜めに延びている斜歯歯車であってもよく、歯がカーブしている曲がり歯車であってもよい。例えばかさ歯車は斜歯かさ歯車であってもよく、斜歯かさ歯車はかさ歯車に含まれる。また、平歯車において歯が回転軸に対して平行に延びていないものも、平歯車に含まれるものとする。図5図7には駆動ギア5と第1ギア7と第2ギア9の構成例を示したが、図5には、駆動ギア5がかさ歯車で第1ギア7と第2ギア9がかさ歯車で構成された例が示され、図6には、駆動ギア5が平歯車で第1ギア7と第2ギア9がクラウン歯車で構成された例が示され、図7には、駆動ギア5がクラウン歯車で第1ギア7と第2ギア9が平歯車で構成された例が示されている。
【0031】
駆動ギア5に対する第1ギア7のギア比と駆動ギア5に対する第2ギア9のギア比は特に限定されないが、回転ノブ3を回転させた際により細かい制御が可能になる点から、駆動ギア5に対する第1ギア7のギア比と駆動ギア5に対する第2ギア9のギア比は1より大きいことが好ましい。すなわち、駆動ギア5が1回転したときの第1ギア7と第2ギア9の回転数は1未満となることが好ましい。駆動ギア5に対する第1ギア7のギア比と駆動ギア5に対する第2ギア9のギア比は1.2以上がより好ましく、1.5以上がさらに好ましい。駆動ギア5に対する第1ギア7のギア比と駆動ギア5に対する第2ギア9のギア比の上限は特に限定されず、例えば6.0以下、5.0以下または4.0以下であってもよい。駆動ギア5に対する第1ギア7のギア比は、第1ギア7の歯数/駆動ギア5の歯数で求めることができ、駆動ギア5に対する第2ギア9のギア比は、第2ギア9の歯数/駆動ギア5の歯数で求めることができる。なお、このようにギア比を設定することが容易な点から、駆動ギア5と第1ギア7と第2ギア9の組み合わせは、駆動ギア5がかさ歯車で第1ギア7と第2ギア9がかさ歯車の組み合わせ、または、駆動ギア5が平歯車で第1ギア7と第2ギア9がクラウン歯車の組み合わせが好ましい。
【0032】
駆動ギア5に対する第1ギア7のギア比と駆動ギア5に対する第2ギア9のギア比は、略同値であることが好ましい。駆動ギア5に対する第1ギア7のギア比は、駆動ギア5に対する第2ギア9のギア比の0.90倍以上が好ましく、0.95倍以上がより好ましく、また1.10倍以下が好ましく、1.05倍以下がより好ましい。
【0033】
第1ギア7は、ハンドル本体2の内腔に配置されることが好ましい。例えば、第1ギア7の回転軸となる位置に第1軸部材8が設けられ、ハンドル本体2の内腔において、第1軸部材8がハンドル本体2の内面および/またはシャフト4に固定されることが好ましい。この場合、第1ギア7は、第1軸部材8に対して回転可能に設けられる。あるいは、第1ギア7は、第1ギア7と一体的に回転する軸部を有し、ハンドル本体2の内面および/またはシャフト4に第1ギア7の軸部の嵌合部(例えば凹部)が設けられ、当該嵌合部に第1ギア7の軸部が嵌合されてもよい。
【0034】
第2ギア9は、ハンドル本体2の内腔に配置されることが好ましい。例えば、第2ギア9の回転軸となる位置に第2軸部材10が設けられ、ハンドル本体2の内腔において、第2軸部材10がハンドル本体2の内面および/またはシャフト4に固定されることが好ましい。この場合、第2ギア9は、第2軸部材10に対して回転可能に設けられる。第2軸部材10は、第1軸部材8と一体的に形成されていてもよい。あるいは、第2ギア9は、第2ギア9と一体的に回転する軸部を有し、ハンドル本体2の内面および/またはシャフト4に第2ギア9の軸部の嵌合部(例えば凹部)が設けられ、当該嵌合部に第2ギア9の軸部が嵌合されてもよい。
【0035】
ハンドル1には、第1ギア7よりも近位側または遠位側に、第1垂直回転軸Q1と平行な回転軸を有する第1プーリー11が設けられる。図2図4に示したハンドル1のように、回転ノブ3がハンドル本体2の遠位側に配置される場合は、第1プーリー11は第1ギア7よりも近位側に配置されることが好ましい。一方、図9および図10に示したハンドル1のように、回転ノブ3がハンドル本体2の近位側に配置される場合は、第1プーリー11は第1ギア7よりも遠位側に配置されることが好ましい。第1プーリー11は、ハンドル1を遠位側または近位側から見て、第1ギア7と重なる位置に設けられることが好ましい。以下、第1プーリー11の回転軸を、「第2垂直回転軸Q2」と称する。
【0036】
第1プーリー11は、第2垂直回転軸Q2を回転軸として回転可能に設けられた部材である。第2垂直回転軸Q2は、その延長上にシャフト4が存在していることが好ましい。第1プーリー11は、第2垂直回転軸Q2を軸とした円柱形状に形成されることが好ましく、円柱形の高さ方向の長さが短い(例えば、円柱形の円の直径の1/2以下の長さの)円盤形状に形成されることがより好ましい。
【0037】
第1プーリー11はハンドル本体2の内腔に配置されることが好ましい。例えば、第1プーリー11の第2垂直回転軸Q2となる位置に第3軸部材12が設けられ、ハンドル本体2の内腔において、第3軸部材12がハンドル本体2の内面および/またはシャフト4に固定されることが好ましい。この場合、第1プーリー11は、第3軸部材12に対して回転可能に設けられる。あるいは、第1プーリー11は、第1プーリー11と一体的に回転する軸部を有し、ハンドル本体2の内面および/またはシャフト4に第1プーリー11の軸部の嵌合部(例えば凹部)が設けられ、当該嵌合部に第1プーリー11の軸部が嵌合されてもよい。
【0038】
ハンドル本体2の内腔には第1線状部材15が配置され、第1線状部材15は第1ギア7と第1プーリー11を架け渡して環状に設けられる。従って、第1ギア7は、第1垂直回転軸Q1の周りに第1線状部材15が当接する当接部7Aを有し、第1プーリー11は、第2垂直回転軸Q2の周りに第1線状部材15が当接する当接部を有する。第1線状部材15は、第1ギア7と第1プーリー11の間で長手方向xに延びるように、第1ギア7と第1プーリー11に架け渡されることが好ましい。また、第1線状部材15は、第1ギア7と第1プーリー11の間をテンションがかかった状態で架け渡されることが好ましい。
【0039】
第1ギア7において、当接部7Aは、駆動ギア5に係合する係合部とは第1垂直回転軸Q1の延在方向に対してずれた位置に形成されることが好ましい。第1ギア7において、係合部は当接部7Aよりもシャフト4の近くに形成されることが好ましく、これにより、駆動ギア5と第1ギア7が回転した際に、第1線状部材15が駆動ギア5の係合部や第1ギア7の係合部に巻き込まれることを防ぐことができる。特に、第1ギア7の係合部がかさ歯車またはクラウン歯車である場合は、第1ギア7の係合部は当接部7Aよりもシャフト4の近くに位置することが好ましい。
【0040】
第1ギア7は、第1線状部材15の当接部7Aが形成される部分で第1垂直回転軸Q1を軸とした円柱形状に形成されることが好ましく、円柱形状の周面に溝が形成され、当該溝が第1線状部材15の当接部7Aとなることが好ましい。第1プーリー11は、上記に説明したように、第2垂直回転軸Q2を軸とした円柱形状または円盤形状に形成されることが好ましく、円柱形状または円盤形状の周面に溝が形成され、当該溝が第1線状部材15の当接部となることが好ましい。
【0041】
第1ギア7と第1プーリー11の間を環状に架け渡された第1線状部材15は、回転ノブ3を回転させることにより、第1ギア7と第1プーリー11の間を回転しながら移動することができる。すなわち、回転ノブ3を回転させることにより駆動ギア5が長手方向xを回転軸として回転し、さらに駆動ギア5に係合した第1ギア7が第1垂直回転軸Q1を中心に回転する。第1線状部材15は第1ギア7の当接部7Aに当接しており、第1ギア7の回転に伴い、第1線状部材15が第1ギア7の当接部7Aとともに移動する。第1線状部材15は、第1ギア7と第1プーリー11の間を環状に架け渡されているため、第1線状部材15が第1ギア7の当接部7Aとともに移動すると、それに応じて第1プーリー11の当接部において第1線状部材15が第1プーリー11の当接部とともに移動する。その結果、第1ギア7と第1プーリー11の間を環状に架け渡された第1線状部材15が、第1ギア7と第1プーリー11の間を回転しながら移動することができる。
【0042】
ハンドル1には、第2ギア9よりも近位側または遠位側に、第1垂直回転軸Q1と平行な回転軸を有する第2プーリー13が設けられる。図2図4に示したハンドル1のように、回転ノブ3がハンドル本体2の遠位側に配置される場合は、第2プーリー13は第2ギア9よりも近位側に配置されることが好ましい。一方、図9および図10に示したハンドル1のように、回転ノブ3がハンドル本体2の近位側に配置される場合は、第2プーリー13は第2ギア9よりも遠位側に配置されることが好ましい。第2プーリー13は、ハンドル1を遠位側または近位側から見て、第2ギア9と重なる位置に設けられることが好ましい。以下、第2プーリー13の回転軸を、「第3垂直回転軸Q3」と称する。
【0043】
第2プーリー13は、第3垂直回転軸Q3を回転軸として回転可能に設けられた部材である。第3垂直回転軸Q3は、その延長上にシャフト4が存在していることが好ましい。第2プーリー13は、第3垂直回転軸Q3を軸とした円柱形状に形成されることが好ましく、円柱形の高さ方向の長さが短い(例えば、円柱形の円の直径の1/2以下の長さの)円盤形状に形成されることがより好ましい。
【0044】
第2プーリー13はハンドル本体2の内腔に配置されることが好ましい。例えば、第2プーリー13の第3垂直回転軸Q3となる位置に第4軸部材14が設けられ、ハンドル本体2の内腔において、第4軸部材14がハンドル本体2の内面および/またはシャフト4に固定されることが好ましい。この場合、第2プーリー13は、第4軸部材14に対して回転可能に設けられる。あるいは、第2プーリー13は、第2プーリー13と一体的に回転する軸部を有し、ハンドル本体2の内面および/またはシャフト4に第2プーリー13の軸部の嵌合部(例えば凹部)が設けられ、当該嵌合部に第2プーリー13の軸部が嵌合されてもよい。
【0045】
第2プーリー13の第3垂直回転軸Q3は、第1プーリー11の第2垂直回転軸Q2の延長上にあってよく、第1プーリー11の第2垂直回転軸Q2よりも近位側または遠位側にあってもよい。前者の態様のように第1プーリー11と第2プーリー13を設けた場合は、第1プーリー11の第3軸部材12と第2プーリー13の第4軸部材14を共通化することができ、第3軸部材12と第4軸部材14を1つの部材から構成することができる。これにより、ハンドル1の部品点数を減らして、ハンドル1の製造を容易にすることができる。
【0046】
ハンドル本体2の内腔には第2線状部材16が配置され、第2線状部材16は第2ギア9と第2プーリー13を架け渡して環状に設けられる。従って、第2ギア9は、第1垂直回転軸Q1の周りに第2線状部材16が当接する当接部9Aを有し、第2プーリー13は、第3垂直回転軸Q3の周りに第2線状部材16が当接する当接部を有する。第2線状部材16は、第2ギア9と第2プーリー13の間で長手方向xに延びるように、第2ギア9と第2プーリー13に架け渡されることが好ましい。また、第2線状部材16は、第2ギア9と第2プーリー13の間をテンションがかかった状態で架け渡されることが好ましい。
【0047】
第2ギア9において、当接部9Aは、駆動ギア5に係合する係合部とは第1垂直回転軸Q1の延在方向に対してずれた位置に形成されることが好ましい。第2ギア9において、係合部は当接部9Aよりもシャフト4の近くに形成されることが好ましく、これにより、駆動ギア5と第2ギア9が回転した際に、第2線状部材16が駆動ギア5の係合部や第2ギア9の係合部に巻き込まれることを防ぐことができる。特に、第2ギア9の係合部がかさ歯車またはクラウン歯車である場合は、第2ギア9の係合部は当接部9Aよりもシャフト4の近くに位置することが好ましい。
【0048】
第2ギア9は、第2線状部材16の当接部9Aが形成される部分で第1垂直回転軸Q1を軸とした円柱形状に形成されることが好ましく、円柱形状の周面に溝が形成され、当該溝が第2線状部材16の当接部9Aとなることが好ましい。第2プーリー13は、上記に説明したように、第3垂直回転軸Q3を軸とした円柱形状または円盤形状に形成されることが好ましく、円柱形状または円盤形状の周面に溝が形成され、当該溝が第2線状部材16の当接部となることが好ましい。
【0049】
第2ギア9と第2プーリー13の間を環状に架け渡された第2線状部材16は、回転ノブ3を回転させることにより、第2ギア9と第2プーリー13の間を回転しながら移動することができる。すなわち、回転ノブ3を回転させることにより駆動ギア5が長手方向xを回転軸として回転し、さらに駆動ギア5に係合した第2ギア9が第1垂直回転軸Q1を中心に回転する。第2線状部材16は第2ギア9の当接部9Aに当接しており、第2ギア9の回転に伴い、第2線状部材16が第2ギア9の当接部9Aとともに移動する。第2線状部材16は、第2ギア9と第2プーリー13の間を環状に架け渡されているため、第2線状部材16が第2ギア9の当接部9Aとともに移動すると、それに応じて第2プーリー13の当接部において第2線状部材16が第2プーリー13の当接部とともに移動する。その結果、第2ギア9と第2プーリー13の間を環状に架け渡された第2線状部材16が、第2ギア9と第2プーリー13の間を回転しながら移動することができる。ただし、第2線状部材16の回転方向は第1線状部材15の回転方向とは逆方向になる。すなわち、図3図10のように第1線状部材15と第2線状部材16を環状に視認できる状態で、第1線状部材15が時計回りに回転すると第2線状部材16は反時計回りに回転し、第1線状部材15が反時計回りに回転すると第2線状部材16は時計回りに回転する。
【0050】
ハンドル本体2の内腔には第1ワイヤ17と第2ワイヤ18が配置される。第1ワイヤ17と第2ワイヤ18はそれぞれ、遠位部がチューブ32の内腔に配置され、近位部がハンドル本体2の内腔に配置される。第1ワイヤ17は、遠位端部がチューブ32の遠位端部に固定されることが好ましく、第2ワイヤ18は、遠位端部がチューブ32の遠位端部に固定されることが好ましい。この場合、ハンドル1を操作して第1ワイヤ17を近位側に引っ張ることにより、チューブ32の遠位端部を一方向に曲げることができ、ハンドル1を操作して第2ワイヤ18を近位側に引っ張ることにより、チューブ32の遠位端部を他方向に曲げることができる。第1ワイヤ17の遠位端部は、例えば第1ワイヤ17の遠位端から近位側に100mm以内の部分として規定することができ、第2ワイヤ18の遠位端部は、例えば第2ワイヤ18の遠位端から近位側に100mm以内の部分として規定することができる。チューブ32の遠位端部は、例えばチューブ32の遠位端から近位側に100mm以内の部分として規定することができる。
【0051】
第1ワイヤ17の近位部と第2ワイヤ18の近位部は、ハンドル本体2の内腔で、シャフト4またはチューブ32の内腔からその外側に延出することが好ましく、第1ギア7の第1垂直回転軸Q1と第1プーリー11の第2垂直回転軸Q2の中間点よりも遠位側でシャフト4またはチューブ32の内腔からその外側に延出することがより好ましい。図2および図3に示すように第1ギア7が第1プーリー11よりも遠位側に配置され、第2ギア9が第2プーリー13よりも遠位側に配置される場合は、第1ワイヤ17の近位部と第2ワイヤ18の近位部は、駆動ギア5よりも近位側でシャフト4またはチューブ32の内腔からその外側に延出することが好ましい。一方、図9および図10に示すように第1プーリー11が第1ギア7よりも遠位側に配置され、第2プーリー13が第2ギア9よりも遠位側に配置される場合は、第1ワイヤ17の近位部と第2ワイヤ18の近位部は、第1プーリー11の第2垂直回転軸Q2または第2プーリー13の第3垂直回転軸Q3よりも近位側でシャフト4またはチューブ32の内腔からその外側に延出してもよく、第1プーリー11の第2垂直回転軸Q2または第2プーリー13の第3垂直回転軸Q3よりも遠位側でシャフト4またはチューブ32の内腔からその外側に延出してもよい。
【0052】
ハンドル本体2の内腔において、第1ワイヤ17の近位部は第1線状部材15に固定され、第2ワイヤ18の近位部は第2線状部材16に固定される。詳細には、ハンドル本体2の内腔において、シャフト4の延在方向と第1垂直回転軸Q1の延在方向とから形成される仮想平面を想定したとき、第1ワイヤ17の近位部は、環状の第1線状部材15の第1ギア7と第1プーリー11の間の部分であって、前記仮想平面に対して一方側の部分に固定され、第2ワイヤ18の近位部は、環状の第2線状部材16の第2ギア9と第2プーリー13の間の部分であって、前記仮想平面に対して同じく一方側の部分に固定される。すなわち、第1ワイヤ17の近位部と第2ワイヤ18の近位部は、前記仮想平面に対して同じ側にある第1線状部材15の部分と第2線状部材16の部分にそれぞれ固定される。例えば、図3および図10に示すように第1線状部材15と第2線状部材16を環状に視認できる状態において、第1ワイヤ17の近位部は、シャフト4に対して一方側にある第1線状部材15の一部に固定され、第2ワイヤ18の近位部は、シャフト4に対して同じく一方側にある第2線状部材16の一部に固定される。
【0053】
第1ワイヤ17の近位部は直接第1線状部材15に固定されてもよく、図面に示すように、第1線状部材15に取り付けられた第1固定具19に第1ワイヤ17の近位部が固定されてもよい。第2ワイヤ18の近位部は直接第2線状部材16に固定されてもよく、図面に示すように、第2線状部材16に取り付けられた第2固定具20に第2ワイヤ18の近位部が固定されていてもよい。第1ワイヤ17の第1線状部材15への固定方法、第2ワイヤ18の第2線状部材16への固定方法、第1ワイヤ17の第1固定具19への固定方法、第2ワイヤ18の第2固定具20への固定方法、第1固定具19の第1線状部材15への固定方法、第2固定具20の第2線状部材16への固定方法としては、接着剤による接着、溶着、結索、嵌合、カシメ、ネジ止め等が挙げられる。
【0054】
上記のように構成されたハンドル1は、回転ノブ3を回転させることにより、第1ワイヤ17を近位側に引っ張ったり、第2ワイヤ18を近位側に引っ張ることができる。回転ノブ3を回転させると、第1線状部材15は第1ギア7と第1プーリー11の間を回転しながら移動し、第2線状部材16は第2ギア9と第2プーリー13の間を第1線状部材15とは逆方向に回転しながら移動する。そのため、図面に示されたハンドル1において、回転ノブ3を一方向(図2および図3では手元側から見て左回りであり、図9および図10では手元側から見て右回り)に回転させると、第1線状部材15に固定された第1ワイヤ17が近位側に引っ張られ、回転ノブ3を他方向(図2および図3では手元側から見て右回りであり、図9および図10では手元側から見て左回り)に回転させると、第2線状部材16に固定された第2ワイヤ18を近位側に引っ張ることができる。その結果、例えば、チューブ32の遠位端部の曲がりを制御したりすることができる。
【0055】
第1ワイヤ17の第1線状部材15への固定部と第2ワイヤ18の第2線状部材16への固定部は、回転ノブ3の回転操作に関わらず、常にシャフト4(すなわち上記に説明した仮想平面)に対して一方側に位置することが好ましい。第1ワイヤ17が第1固定具19に固定される場合は、第1固定具19は、回転ノブ3の回転操作に関わらず、常にシャフト4(すなわち上記に説明した仮想平面)に対して一方側に位置することが好ましい。第2ワイヤ18が第2固定具20に固定される場合は、第2固定具20は、回転ノブ3の回転操作に関わらず、常にシャフト4(すなわち上記に説明した仮想平面)に対して一方側に位置することが好ましい。なお、このように第1線状部材15を制御することが容易な点から、第1ワイヤ17は第1固定具19に固定され、第2ワイヤ18は第2固定具20に固定されることが好ましい。第1線状部材15に第1固定具19が取り付けられ、第2線状部材16に第2固定具20が取り付けられることにより、回転ノブ3を一方向または他方向に回し続けても、第1固定具19が第1ギア7または第1プーリー11に引っ掛かり、第2固定具20が第2ギア9または第2プーリー13に引っ掛かり、それ以上回転ノブ3が一方向または他方向に回転しなくなる。そのため、第1固定具19および第1ワイヤ17の近位部が常にシャフト4に対して一方側に位置し、同じく第2固定具20および第2ワイヤ18の近位部が常にシャフト4に対して一方側に位置するようにこととなる。
【0056】
第1線状部材15と第2線状部材16と第1ワイヤ17と第2ワイヤ18としては、ステンレス鋼、炭素鋼、ニッケルチタン合金等の金属線材や、ポリアミド樹脂(例えば、ナイロン)、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレンやポリプロピレン)、ポリエステル樹脂(例えば、PET)、芳香族ポリエーテルケトン樹脂(例えば、PEEK)、ポリイミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂(例えば、アラミド)、フッ素樹脂(例えば、PTFE、PFA、FEP、ETFE)等の合成樹脂から形成された樹脂線材(すなわち繊維材料)を用いることができる。これらの金属線材や樹脂線材は、モノフィラメント構造を有していてもよく、マルチフィラメント構造を有していてもよい。第1線状部材15と第2線状部材16と第1ワイヤ17と第2ワイヤ18は、コイル状の金属や合成樹脂によって形成された筒体によって被覆されていてもよい。第1線状部材15と第2線状部材16と第1ワイヤ17と第2ワイヤ18の径(直径)としては、例えば、100μm~1500μm程度とすることができる。
【0057】
第1線状部材15と第2線状部材16はロープから構成されていることが好ましい。これにより、第1線状部材15と第2線状部材16の強度を確保しつつ、第1線状部材15を第1ギア7の当接部7Aや第1プーリー11の当接部でスムーズに屈曲させやすくなり、第2線状部材16を第2ギア9の当接部9Aや第2プーリー13の当接部でスムーズに屈曲させやすくなる。ロープは、繊維材料から構成されたファイバーロープであっても、金属材料から構成されたワイヤロープであってもよいが、ファイバーロープであることが好ましい。これにより第1線状部材15がスムーズに屈曲しやすくなる。ファイバーロープは、破断を防止する点から高強度の繊維材料から構成されることが好ましく、いわゆるスーパー繊維から構成されることが好ましい。スーパー繊維としては、例えば、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、ポリアリレート繊維、超高強力ポリビニルアルコール繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維、ポリフェニレンサルファイド(PPS)繊維等が挙げられる。スーパー繊維は、例えば、引張強度が1GPa以上、好ましく2GPa以上であり、弾性率が25GPa以上、好ましく50GPa以上であることが好ましい。
【0058】
図9および図10に示すように、第1プーリー11が第1ギア7よりも遠位側に配置され、第2プーリー13が第2ギア9よりも遠位側に配置される場合は、第1ワイヤ17の近位部と第2ワイヤ18の近位部は、第1プーリー11の第2垂直回転軸Q2と第2プーリー13の第3垂直回転軸Q3よりも遠位側でシャフト4またはチューブ32の内腔からその外側に延出することが好ましい。このように構成されたハンドル1は、回転ノブ3を回転操作して第1ワイヤ17の第1線状部材15への固定部や第1固定具19を最も遠位側の位置から近位側に移動させ、第2ワイヤ18の第2線状部材16への固定部や第2固定具20を最も遠位側の位置から近位側に移動させても、第1ワイヤ17と第2ワイヤ18をスムーズに近位側に引っ張ることができる。
【0059】
以上、本発明のカテーテルハンドルについて説明したが、本発明のカテーテルハンドルは、チューブの内腔で第1ワイヤと第2ワイヤを遠位側または近位側に変位させるものであれば、チューブの遠位端部の曲がりを制御するものに限定されない。例えば、カテーテルハンドルを操作することによって、第1ワイヤおよび/または第2ワイヤをチューブの遠位端から出し入れできるものであってもよい。あるいは、第1ワイヤの遠位端部や第2ワイヤの遠位端部にナイフやスネアなどの処置具を取り付け、カテーテルハンドルを操作することによって、第1ワイヤの遠位端部や第2ワイヤの遠位端部に取り付けた処置具がチューブの遠位端から出し入れできるものであってもよい。
【符号の説明】
【0060】
1:カテーテルハンドル
2:ハンドル本体
3:回転ノブ
4:シャフト
5:駆動ギア
6:筒状部材
7:第1ギア、7A:当接部
8:第1軸部材
9:第2ギア、9A:当接部
10:第2軸部材
11:第1プーリー
12:第3軸部材
13:第2プーリー
14:第4軸部材
15:第1線状部材
16:第2線状部材
17:第1ワイヤ
18:第2ワイヤ
19:第1固定具
20:第2固定具
Q1:第1垂直回転軸
Q2:第2垂直回転軸
Q3:第3垂直回転軸
31:カテーテル
32:チューブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10