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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091658
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】自動水栓装置
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/05 20060101AFI20230623BHJP
【FI】
E03C1/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206504
(22)【出願日】2021-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 陽子
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 幸人
【テーマコード(参考)】
2D060
【Fターム(参考)】
2D060BA03
2D060BB01
2D060BF03
2D060CA04
2D060CA15
2D060CA20
(57)【要約】
【課題】2つの吐水モードを備える自動水栓を容易に実現することができる自動水栓装置を提供すること。
【解決手段】実施形態に係る自動水栓装置は、スパウト本体と、所定の検知範囲内の対象物を検知する検知センサを有する検知手段と、検知センサの検知結果に基づいてスパウト本体からの吐止水を制御する制御部と、スパウト本体から所定の形態で吐水する第1吐水モードと、スパウト本体から第1吐水モードとは異なる形態で吐水する第2吐水モードとを備え、検知手段は、検知センサの向きを判定する向き判定手段を有し、検知センサの向きが変更自在となるようにスパウト本体外かつスパウト本体とは別体で設けられ、制御部は、スパウト本体から検知センサの検知結果に基づいた吐水を行うときに、向き判定手段の判定結果に基づいて第1吐水モードおよび第2吐水モードのいずれを実行するかを選択する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐水可能なスパウト本体と、
所定の検知範囲内の対象物を検知する検知センサを有する検知手段と、
前記検知センサの検知結果に基づいて前記スパウト本体からの吐止水を制御する制御部と、
前記制御部によって実行され、前記スパウト本体から所定の形態で吐水する第1吐水モードと、
前記制御部によって実行され、前記スパウト本体から前記第1吐水モードとは異なる形態で吐水する第2吐水モードと
を備え、
前記検知手段は、前記検知センサの向きを判定する向き判定手段を有し、前記検知センサの向きが変更自在となるように前記スパウト本体外かつ該スパウト本体とは別体で設けられ、
前記制御部は、前記スパウト本体から前記検知センサの検知結果に基づいた吐水を行うときに、前記向き判定手段の判定結果に基づいて前記第1吐水モードおよび前記第2吐水モードのいずれを実行するかを選択する
ことを特徴とする自動水栓装置。
【請求項2】
前記向き判定手段は、前記検知センサの向きを判定可能な慣性センサを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の自動水栓装置。
【請求項3】
前記検知センサの検知結果に基づいて前記スパウト本体内の流路を開閉する電磁弁と、
前記検知センサとは異なる入力手段に基づいて前記スパウト本体内の流路を開閉する開閉弁と
を備え、
前記検知手段は、該検知手段へ駆動電源を供給するバッテリを有し、
前記電磁弁は、前記バッテリが切れているときには開いた状態となる
ことを特徴とする請求項1または2に記載の自動水栓装置。
【請求項4】
前記第1吐水モードは、前記検知センサが対象物を検知している間吐水する自動モードであり、
前記第2吐水モードは、止水状態で前記検知センサが対象物を検知したときに吐水を開始し、吐水状態で前記検知センサが対象物を検知したときに吐水を停止する連続モードである
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の自動水栓装置。
【請求項5】
前記向き判定手段は、前記検知センサが水平方向側を向いているか鉛直方向側を向いているかを判定可能であり、
前記制御部は、前記向き判定手段によって前記検知センサが水平方向側を向いていると判定されたときには前記第1吐水モードを選択し、前記向き判定手段によって前記検知センサが鉛直方向側を向いていると判定されたときには前記第2吐水モードを選択する
ことを特徴とする請求項4に記載の自動水栓装置。
【請求項6】
前記検知手段は、前記スパウト本体に取り付け可能であり、
前記向き判定手段は、前記検知手段の取り付け位置に対して前記検知センサが前後、左右、上下のうちのいずれを向いているかを判定可能であり、
前記制御部は、前記向き判定手段によって前記検知センサが前方側または下方側を向いていると判定されたときには前記第1吐水モードを選択し、前記向き判定手段によって前記検知センサが左方側、右方側または上方側を向いていると判定されたときには前記第2吐水モードを選択する
ことを特徴とする請求項4に記載の自動水栓装置。
【請求項7】
前記向き判定手段の判定結果に基づいて、前記検知センサの検知信号条件または前記制御部の吐水開始条件を異ならせる
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一つに記載の自動水栓装置。
【請求項8】
前記向き判定手段の判定結果に基づいて表示状態を変更する表示手段
をさらに備える
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一つに記載の自動水栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、自動水栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スパウト本体内に設けられた検知センサによる検知に基づいてスパウト本体からの吐止水を行う自動水栓が広く知られている(たとえば、特許文献1参照)。また、従来、複数(たとえば、2つ)の吐水モードを有する自動水栓が知られている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-186178号公報
【特許文献2】特開2016-141957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、感染症対策のために使用者が非接触で操作可能な自動水栓の需要が高まっている。
【0005】
しかしながら、世の中には手動操作によって吐止水を行う水栓が数多く設置されており、これらを上記したような自動水栓へ変更したい場合、水栓自体を取り替える必要があり、経済的な負担が大きいなど、困難である。また、自動水栓に複数(2つ)の吐水モードを付加したい場合も、上記したような自動水栓では吐水モードを変更するための手動操作が必要となり、非接触の観点から好ましくない。
【0006】
実施形態の一態様は、2つの吐水モードを備える自動水栓を容易に実現することができる自動水栓装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の一態様に係る自動水栓装置は、吐水可能なスパウト本体と、所定の検知範囲内の対象物を検知する検知センサを有する検知手段と、前記検知センサの検知結果に基づいて前記スパウト本体からの吐止水を制御する制御部と、前記制御部によって実行され、前記スパウト本体から所定の形態で吐水する第1吐水モードと、前記制御部によって実行され、前記スパウト本体から前記第1吐水モードとは異なる形態で吐水する第2吐水モードとを備え、前記検知手段は、前記検知センサの向きを判定する向き判定手段を有し、前記検知センサの向きが変更自在となるように前記スパウト本体外かつ該スパウト本体とは別体で設けられ、前記制御部は、前記スパウト本体から前記検知センサの検知結果に基づいた吐水を行うときに、前記向き判定手段の判定結果に基づいて前記第1吐水モードおよび前記第2吐水モードのいずれを実行するかを選択することを特徴とする。
【0008】
このような構成によれば、検知手段の向きに応じて2つの吐水モードが切り替え可能であり、たとえば、検知手段を別途後付けすれば、既存のスパウト本体を変えることなく、2つの吐水モードを備える自動水栓へ変更することができる。このように、2つの吐水モードを備える自動水栓を容易に実現することができる。
【0009】
また、上記した自動水栓装置において、前記向き判定手段は、前記検知センサの向きを判定可能な慣性センサを有することを特徴とする。
【0010】
このような構成によれば、慣性センサによって、簡素な構成で向き判定手段を実現することができる。
【0011】
また、上記した自動水栓装置において、前記検知センサの検知結果に基づいて前記スパウト本体内の流路を開閉する電磁弁と、前記検知センサとは異なる入力手段に基づいて前記スパウト本体内の流路を開閉する開閉弁とを備え、前記検知手段は、該検知手段へ駆動電源を供給するバッテリを有し、前記電磁弁は、前記バッテリが切れているときには開いた状態となることを特徴とする。
【0012】
このような構成によれば、検知手段がバッテリ切れのときでも、検知センサとは異なる入力手段から吐止水の操作が可能となる。これにより、検知手段のバッテリ切れによる操作不能を防ぐことができる。
【0013】
また、上記した自動水栓装置において、前記第1吐水モードは、前記検知センサが対象物を検知している間吐水する自動モードであり、前記第2吐水モードは、止水状態で前記検知センサが対象物を検知したときに吐水を開始し、吐水状態で前記検知センサが対象物を検知したときに吐水を停止する連続モードであることを特徴とする。
【0014】
このような構成によれば、既存のスパウト本体を変えることなく、自動モードおよび連続モードを切り替え可能な自動水栓を実現することができる。
【0015】
また、上記した自動水栓装置において、前記向き判定手段は、前記検知センサが水平方向側を向いているか鉛直方向側を向いているかを判定可能であり、前記制御部は、前記向き判定手段によって前記検知センサが水平方向側を向いていると判定されたときには前記第1吐水モードを選択し、前記向き判定手段によって前記検知センサが鉛直方向側を向いていると判定されたときには前記第2吐水モードを選択することを特徴とする。
【0016】
このような構成によれば、検知手段を、使用者が自動モードおよび連続モードの使い分けを行いやすい向きの配置とすることができる。
【0017】
また、上記した自動水栓装置において、前記検知手段は、前記スパウト本体に取り付け可能であり、前記向き判定手段は、前記検知手段の取り付け位置に対して前記検知センサが前後、左右、上下のうちのいずれを向いているかを判定可能であり、前記制御部は、前記向き判定手段によって前記検知センサが前方側または下方側を向いていると判定されたときには前記第1吐水モードを選択し、前記向き判定手段によって前記検知センサが左方側、右方側または上方側を向いていると判定されたときには前記第2吐水モードを選択することを特徴とする。
【0018】
このような構成によれば、検知手段がスパウト本体に取り付け可能であるため、検知手段が設けられる位置(検知手段の設置位置)の自由度を高めることができる。また、検知手段を、使用者が自動モードおよび連続モードの使い分けを行いやすい向きの配置とすることができる。
【0019】
また、上記した自動水栓装置において、前記向き判定手段の判定結果に基づいて、前記検知センサの検知信号条件または前記制御部の吐水開始条件を異ならせることを特徴とする。
【0020】
このような構成によれば、吐水モードごとに適切な検知条件・吐水開始条件へ変更することができる。
【0021】
また、上記した自動水栓装置において、前記向き判定手段の判定結果に基づいて表示状態を変更する表示手段をさらに備えることを特徴とする。
【0022】
このような構成によれば、検知センサが対象物を検知したときの吐水モードを、吐水が開始される前に使用者が視覚的に知ることができる。すなわち、使用者は、表示手段を見れば、第1吐水モードおよび第2吐水モードのいずれであるかを知ることができる。
【発明の効果】
【0023】
実施形態の一態様によれば、2つの吐水モードを備える自動水栓を容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、実施形態に係る自動水栓装置の概略斜視図である。
図2図2は、実施形態に係る自動水栓装置の構成を示すブロック図である。
図3図3は、検知手段の概略斜視図である。
図4図4は、検知手段の配置・向きを示す図である。
図5図5は、検知手段の配置・向きと吐水モードとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する自動水栓装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0026】
<自動水栓装置の構成>
まず、図1を参照して実施形態に係る自動水栓装置1の構成について説明する。図1は、実施形態に係る自動水栓装置1の概略斜視図である。
【0027】
なお、図1には、鉛直上向き(上方)を正方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を示している。以下では、説明の便宜上、X軸の正方向を左方、X軸の負方向を右方、Y軸の正方向を前方、Y軸の負方向を後方と規定している。このため、以下では、X軸方向を左右方向、Y軸方向を前後方向、Z軸方向を上下方向という。
【0028】
図1に示すように、自動水栓装置1は、たとえば、手洗い器に用いられ、後述する水栓本体10から吐出される水を受けるボウル部2付近に設置される。自動水栓装置1は、使用者の手などの対象物の検知に応じて、吐水と吐水停止(止水)とを自動で行う。なお、本明細書において、「水」には、加温された湯も含まれる。
【0029】
自動水栓装置1は、水栓本体10と、検知手段20と、制御部30(図2参照)と、給水路40(図2参照)とを備える。水栓本体10は、たとえば、シングルレバー混合水栓であり、スパウト本体11と、レバーハンドル(以下、ハンドルという)12とを備える。
【0030】
水栓本体10は、使用者によって手動操作される場合には、1つのハンドル12の操作によって、水の温調・流調が可能なものである。なお、本実施形態では、手動水栓である水栓本体10としてシングルレバー混合水栓を例示しており、後述する検知手段20が後付けされることで、このような手動水栓が自動水栓へと変更可能となる。
【0031】
検知手段20は、たとえば、矩形箱状であり、矩形箱状の場合、複数の面のうち1つの面が検知面20aとなる。検知手段20は、その筐体内に後述する検知センサである赤外センサ21(図2参照)を有し、検知面20aから赤外線を照射して所定の検知範囲内の対象物(使用者の手など)を検知する。また、検知手段20は、その筐体内に後述する向き判定手段を構成する慣性センサ22(図2参照)を有し、赤外センサ21の向きを判定する。
【0032】
このように、検知手段20は、赤外センサ21の向きを判定する向き判定手段(慣性センサ)22を有することで、赤外センサ21の向きが変更自在となるように設けられる。また、検知手段20は、スパウト本体11外に設けられるとともに、スパウト本体11とは別体で設けられる。
【0033】
なお、図1に示し例では、複数(2つ)の検知手段20が設置されているが、検知手段20は、1つだけ設置されてもよいし、2つ以上が設置されてもよい。
【0034】
制御部30(図2参照)は、自動水栓装置1の各部を制御するとともに、赤外センサ21の検知結果に基づいて、スパウト本体11の吐水口11aからの吐止水を制御する。
【0035】
給水路40(図2参照)は、水栓本体10へ向けて水を供給する流路であり、たとえば、冷水が流れる流路41(図2参照)と、温水(湯)が流れる流路42(図2参照)とを有する。各流路41,42には、後述する、温度センサ43、流量センサ44および電磁弁45(いずれも、図2参照)などが設けられる。なお、温度センサ43、流量センサ44および電磁弁45は、自動水栓装置1の機能部を構成する。
【0036】
また、自動水栓装置1は、第1吐水モードと、第2吐水モードとを備える。第1吐水モードは、スパウト本体11から所定の形態で吐水するモードである。第2吐水モードは、スパウト本体11から第1吐水モードとは異なる形態で吐水するモードである。
【0037】
制御部30は、第1吐水モードおよび第2吐水モードをそれぞれ実行する。また、制御部30は、スパウト本体11から赤外センサ21の検知結果に基づいた吐水を行うときに、第1吐水モードおよび第2吐水モードのいずれを実行するかを選択する。この場合、制御部30は、赤外センサ21の向きに基づいて、第1吐水モードおよび第2吐水モードのいずれを実行するかを選択する。
【0038】
なお、図1に示す例では、第1吐水モードが、赤外センサ21が使用者の手などの対象物を検知している間吐水する自動モードであり、第2吐水モードが、赤外センサ21が対象物を検知したときに吐水を開始し、赤外センサ21が対象物を再度検知したときに吐水を停止する連続モードである場合を例示している。
【0039】
この場合、第1吐水モード(自動モード)では、検知手段20は、検知面20aが水平方向において前方側(具体的には、吐水口11a側)を向くように配置され、使用者の吐水口11aへとかざした手を検知する。第2吐水モード(連続モード)では、検知手段20は、検知面20aが鉛直方向において上方側を向くように配置され、使用者の検知面20aの上方へとかざした手を検知する。
【0040】
このように、本実施形態では、検知手段20の配置・向きに基づいて、制御部30によって第1吐水モードおよび第2吐水モードのいずれかが自動で選択される。なお、制御部30による第1吐水モードおよび第2吐水モードの選択については、図3~5を用いて後述する。
【0041】
次に、図2を参照して実施形態に係る自動水栓装置1の構成についてさらに説明する。図2は、実施形態に係る自動水栓装置1の構成を示すブロック図である。
【0042】
図2に示すように、スパウト本体11は、湯水を混合するシングルカートリッジ(以下、カートリッジという)13をさらに備える。カートリッジ13は、給水路40における流路41から供給される冷水と、給水路40における流路42から供給される温水(湯)とを混合する。カートリッジ13は、水の温調・流調を行う。
【0043】
検知手段20は、上記したように、検知センサである赤外センサ21と、赤外センサ21の向きを判定可能な慣性センサ22とを有する。赤外センサ21は、赤外線を照射して対象物を検知するセンサである。なお、検知センサ21としては、マイクロ波センサなどの電波センサなどが用いられてもよい。慣性センサ22は、赤外センサ21の向きを判定可能なセンサである。慣性センサ22としては、たとえば、ジャイロセンサを用いることができる。
【0044】
検知手段20は、制御部30と無線通信可能に接続される。この場合、検知手段20は、たとえば、Wi-fi(登録商標)やBluetooth(登録商標)などの近距離無線通信によって、制御部30と無線通信可能に接続される。
【0045】
また、検知手段20は、バッテリ23と、表示手段24とをさらに備える。バッテリ23は、検知手段20へ駆動電源を供給する。表示手段24は、向き判定手段である慣性センサ22の判定結果に基づいて、表示状態を変更する。これにより、表示手段24は、赤外センサ21の向きから現在の吐水モードを表示することができる。表示手段24は、たとえば、検知手段20の1つの面に設けられるLEDランプによる点灯状態の変更や点灯色の変更などで表示する。
【0046】
制御部30は、上記したように、自動水栓装置1の各部を制御する。なお、制御部30は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などによって、記憶部(図示せず)に記憶されたプログラムを、RAM(Random Access Memory)を作業領域として実行することで実現される。また、記憶部は、たとえば、RAMやフラッシュメモリなどの半導体メモリ素子などによって実現される。
【0047】
流路41,42には、上記したように、温度センサ43、流量センサ44および電磁弁45が設けられる。電磁弁45は、赤外センサ21の検知結果に基づいて、スパウト本体11内の流路を含む流路(流路41,42なども含む)を開閉する。なお、電磁弁45は、制御部30によって駆動制御される。また、温度センサ43および流量センサ44の検知結果は、制御部30へ出力される。制御部30は、温度センサ43および流量センサ44の検知結果に基づいて、電磁弁45の開閉を制御する。
【0048】
また、自動水栓装置1では、たとえば、既存のスパウト本体11を使用して自動水栓を構成するため、温度センサ43が、スパウト本体11の先端側ではなく、スパウト本体11の基端側に配置される。このため、自動水栓装置1では、次の数式(1)を用いて混合水の温度(「Tm」)を測定(算出)しながら吐水する。なお、数式(1)において、「T(T,T)」は温度、「Q(Q,Q)」は流量である。
【0049】
(数1)
Tm=T*Q+T*Q/Q+Q・・・(1)
【0050】
第1吐水モードが自動モードの場合、自動モードでは使用者の火傷防止のため、温度センサ43および流量センサ44の検知結果から高温出湯が予測される場合には電磁弁45を閉じる制御を行う。このように、高温出湯が予測される場合、電磁弁45が閉じているため、ハンドル12が開いていても水が出ない状態となる。
【0051】
また、自動水栓装置1においては、通常、ハンドル12が流路開放するように操作されており、この状態で電磁弁45によって流路41,42の開閉が制御される。電磁弁45は、検知手段20のバッテリ23が切れているときに閉じた状態となると自動吐水ができなくなるため、バッテリ23が切れているときには開いた状態となる。そして、検知手段20とは異なる入力手段であるハンドル12からの操作で電磁弁45とは異なる開閉弁であるカートリッジ13を制御することで、吐止水可能となる。これにより、検知手段20のバッテリ23切れによる操作不能を防ぐことができる。
【0052】
電磁弁45が閉じた状態のまま検知手段20がバッテリ切れになってしまうと、たとえば、使用者がボウル部2(図1参照)の下に潜り込んで電磁弁45を開ける必要があるが、検知手段20がバッテリ切れのときに電磁弁45が開いた状態であることによって、通常の手動水栓として使用することができる。
【0053】
<検知手段>
次に、図3を参照して検知手段20についてさらに説明する。図3は、検知手段20の概略斜視図である。
【0054】
図3に示すように、検知手段20は、検知面20aを基準とする赤外センサ21の向きについて、水平方向となる前後方向および左右方向、鉛直方向となる上下方向が規定される。より具体的には、検知手段20は、赤外センサ21の向きについて、左方側X1、右方側X2、前方側Y1、後方側Y2、上方側Z1および下方側Z2が規定される。
【0055】
検知手段20は、慣性センサ22によって、検知面20a(赤外センサ21)が左方X1側、右方X2側、前方Y1側、後方Y2側、上方Z1側および下方Z2側のいずれを向いているかを判断することができる。
【0056】
<検知手段の配置・向き>
次に、図4および5を参照して検知手段20の配置・向きについて説明する。図4は、検知手段20の配置・向きを示す図である。なお、図4には、検知手段20の配置(検知手段20の設置位置)をP1,P2,・・・で示し、検知手段20の向きを矢線X1,X2,・・・で示している。図5は、検知手段20の配置・向きと吐水モード(第1吐水モードおよび第2吐水モード)との関係を示す図である。
【0057】
上記したように、第1吐水モードは、たとえば、赤外センサ21(図2参照)が使用者の手などの対象物を検知している間吐水する自動モードであり、第2吐水モードは、たとえば、止水状態で赤外センサ21が対象物を検知したときに吐水を開始し、吐水状態で赤外センサ21が対象物を検知したときに吐水を停止する連続モードである。以下、第1吐水モードを自動モードといい、第2吐水モードを連続モードという。
【0058】
検知手段20においては、慣性センサ22(図2参照)は、赤外センサ21が水平方向(前後方向または左右方向)側を向いているか鉛直方向(上下方向)側を向いているかを判定する。
【0059】
制御部30(図2参照)は、慣性センサ22によって、赤外センサ21が水平方向側を向いていると判定されたときには自動モードを選択する。制御部30は、慣性センサ22によって、赤外センサ21が鉛直方向側を向いていると判定されたときには連続モードを選択する。
【0060】
また、検知手段20は、スパウト本体11に取り付け可能なものである。検知手段20においては、検知手段20の取り付け位置に対して赤外センサ21が前後方向、左右方向および上下方向のうちのいずれを向いているかを判定する。なお、慣性センサ22で水平方向から前後方向および左右方向をさらに判別するためには、たとえば、慣性センサ22を斜め配置するなどすれば判別可能となる。
【0061】
図4および5に示すように、制御部30は、慣性センサ22によって、赤外センサ21が前方Y1側を向いていると判定されたときには自動モードを選択する。この場合、検知手段20は、たとえば、位置P1に配置される。また、制御部30は、慣性センサ22によって、赤外センサ21が下方Z2側を向いていると判定されたときには自動モードを選択する。この場合、検知手段20は、たとえば、位置P2に配置される。
【0062】
また、制御部30は、慣性センサ22によって、赤外センサ21が左方X1側を向いていると判定されたときには連続モードを選択する。この場合、検知手段20は、たとえば、位置P3に配置される。また、制御部30は、慣性センサ22によって、赤外センサ21が右方X2側を向いていると判定されたときには連続モードを選択する。この場合、検知手段20は、たとえば、位置P4に配置される。
【0063】
また、制御部30は、慣性センサ22によって、赤外センサ21が上方Z1側を向いていると判定されたときには連続モードを選択する。この場合、検知手段20は、たとえば、ボウル部2の後部の位置P5に配置される。また、この場合、検知手段20は、たとえば、ボウル部2が設置されるカウンタ3上の位置P6に配置される。
【0064】
また、制御部30は、慣性センサ22の判定結果に基づいて、赤外センサ21の検知信号条件または制御部30の吐水開始条件(閾値など)を異ならせる。すなわち、第1吐水モード(自動モード)および第2吐水モード(連続モード)のそれぞれに対して適切な信号および閾値などが存在するため、各吐水モードに応じて信号および閾値などが設定される。
【0065】
なお、図5に示すように、自動モードにおいては、使用者がスパウト本体11の吐水口11a(図1参照)へと手をかざすことから、吐水口11aから高温の水(湯)が吐出されることが予測されるため、火傷防止の観点から高温出湯規制「あり」として設定されている。なお、検知手段20が下方Z2側を向いている場合には、学習機能「あり」として設定される。
【0066】
以上説明したように、実施形態に係る自動水栓装置1によれば、検知手段20の向きに応じて2つの吐水モード(第1吐水モードおよび第2吐水モード)が切り替え可能であり、たとえば、検知手段20を別途後付けすれば、既存のスパウト本体11を変えることなく、2つの吐水モードを備える自動水栓へ変更することができる。このように、2つの吐水モードを備える自動水栓を容易に実現することができる。
【0067】
また、検知手段20が慣性センサ22を有することで、簡素な構成で向き判定手段を実現することができる。
【0068】
また、第1吐水モードが自動モードであり、第2吐水モードが連続モードであるため、既存のスパウト本体11を変えることなく、自動モードおよび連続モードを切り替え可能な自動水栓を実現することができる。
【0069】
また、制御部30が、赤外センサ21が水平方向側を向いていると判定されたときには第1吐水モード(自動モード)を選択し、赤外センサ21が鉛直方向側を向いていると判定されたときには第2吐水モード(連続モード)を選択することで、検知手段20を、使用者が自動モードおよび連続モードの使い分けを行いやすい向きの配置とすることができる。
【0070】
また、検知手段20がスパウト本体11に取り付け可能であるため、検知手段20が設けられる位置(検知手段20の設置位置)の自由度を高めることができる。また、制御部30が、赤外センサ21が前方Y1側または下方Z2側を向いていると判定されたときには第1吐水モード(自動モード)を選択し、赤外センサ21が左方X1側、右方X2側または上方Z1側を向いていると判定されたときには第2吐水モード(連続モード)を選択することで、検知手段20を、使用者が自動モードおよび連続モードの使い分けを行いやすい向きの配置とすることができる。
【0071】
また、慣性センサ22の判定結果に基づいて、赤外センサ21の検知信号条件または制御部30の吐水開始条件を異ならせることで、吐水モードごとに適切な検知条件・吐水開始条件へ変更することができる。
【0072】
また、慣性センサ22の判定結果に基づいて表示状態を変更する表示手段24を備えることで、赤外センサ21が対象物を検知したときの吐水モードを、吐水が開始される前に使用者が視覚的に知ることができる。すなわち、使用者は、表示手段24を見れば、第1吐水モード(自動モード)および第2吐水モード(連続モード)のいずれであるかを知ることができる。
【0073】
なお、上記した実施形態では、第1吐水モードが自動モードであり、第2吐水モードが連続モードであるが、これに限定されず、たとえば、第1吐水モードが水道水を吐水するような吐水モードであり、第2吐水モードが電解水を吐水するような吐水モードであってもよい。この場合、第2吐水モードで吐水される「電解水」としては、電気分解によって得られる除菌機能を有する水であれば何でもよい。「電解水」の代表的なものとして、たとえば、次亜塩素酸を含有する電解水が挙げられる。一般に、上水または中水は、塩素イオンを含有するため、電気分解により遊離塩素が生成される。遊離塩素は、酸性では次亜塩素酸(HClO)として存在し、この形態ではアルカリ性での存在形態である次亜塩素酸イオン(ClO)と比較して約10倍殺菌力が強い。また、中性でもその中間程度の強力な殺菌力が得られる。
【0074】
また、たとえば、第1吐水モードが原水を吐水するような吐水モードであり、第2吐水モードが浄水を吐水するような吐水モードであってもよい。
【0075】
また、上記した実施形態では、表示手段24が検知手段に設けられたLEDランプなどの点灯状態の変更や点灯色の変更で現在の吐水モードを使用者が知ることができる構成であるが、これに限定されず、たとえば、検知手段20が半透明部材で形成され、検知手段20全体がほのかに光る構成で発光色を変更するなどの構成であってもよい。
【0076】
また、上記した実施形態では、表示手段24が矩形箱状で、複数の面のうちの1つの面に検知面20aが設けられる構成であるが、これに限定されず、矩形箱状以外の形状であっても、外周面のうちのある領域を検知面20aとして設定し、この領域の向きを検知する構成であってもよい。
【0077】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 自動水栓装置
11 スパウト本体
12 入力手段(ハンドル)
13 開閉弁(カートリッジ)
20 検知手段
21 検知センサ(赤外センサ)
22 向き判定手段(慣性センサ)
24 バッテリ
24 表示手段
30 制御部
45 電磁弁
X1 左方
X2 右方
Y1 前方
Z1 上方
Z2 下方
図1
図2
図3
図4
図5