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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091659
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】試験方法、及び眼用レンズ
(51)【国際特許分類】
   G01N 19/02 20060101AFI20230623BHJP
   G01N 3/46 20060101ALI20230623BHJP
   G02C 7/02 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
G01N19/02 A
G01N3/46
G02C7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206505
(22)【出願日】2021-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】300035870
【氏名又は名称】株式会社ニコン・エシロール
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(72)【発明者】
【氏名】石村 圭
(57)【要約】
【課題】目視しなくても、コート付きレンズの表面の傷に対する耐性を評価できる試験方法を提供する。
【解決手段】本発明の第1の態様においては、眼用レンズの膜の傷に対する耐性を評価するための試験方法を提供する。試験方法は、針に一定の荷重を与えて膜を引っ掻くことを含んでよい。試験方法は、膜を引っ掻いているときの摩擦力を測定することを含んでよい。試験方法は、1回の引っ掻きにおける摩擦力のばらつきが特定値よりも小さい場合、針に与える荷重を増やして、再び膜を引っ掻いて摩擦力を測定してよい。試験方法は、1回の引っ掻きにおける摩擦力のばらつきが特定値を超えるまで、膜を引っ掻くことと、そのときの摩擦力を測定することと、を繰り返してよい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼用レンズの膜の傷に対する耐性を評価するための試験方法であって、
針に一定の荷重を与えて前記膜を引っ掻くことと、
前記膜を引っ掻いているときの摩擦力を測定することと、を含み、
1回の引っ掻きにおける摩擦力のばらつきが特定値よりも小さい場合、前記針に与える荷重を増やして、再び前記膜を引っ掻いて摩擦力を測定し、
1回の引っ掻きにおける摩擦力のばらつきが特定値を超えるまで、前記膜を引っ掻くことと、そのときの摩擦力を測定することと、を繰り返す、試験方法。
【請求項2】
1回の引っ掻きにおける摩擦力のばらつきが1.3よりも小さい場合、前記針に与える荷重を増やして、再び前記膜を引っ掻いて摩擦力を測定し、
1回の引っ掻きにおける摩擦力のばらつきが1.3を超えるまで、前記膜を引っ掻くことと、そのときの摩擦力を測定することと、を繰り返す、請求項1に記載の試験方法。
【請求項3】
前記膜を引っ掻くにあたり、サファイア製の針を使用する、請求項1又は請求項2に記載の試験方法。
【請求項4】
前記膜を引っ掻くにあたり、先端の径が0.1mm以下の針を使用する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の試験方法。
【請求項5】
眼の測定、補正及び保護の少なくとも1つのために使用する眼用レンズであって、
レンズの1つ又はそれ以上の特性を変えるために付加された単層又は多層の膜を備え、
前記膜は、針に一定の荷重を与えて前記膜を引っ掻くことと、前記膜を引っ掻いているときの摩擦力を測定することと、を含み、1回の引っ掻きにおける摩擦力のばらつきが特定値よりも小さい場合、前記針に与える荷重を増やして、再び前記膜を引っ掻いて摩擦力を測定し、1回の引っ掻きにおける摩擦力のばらつきが特定値を超えるまで、前記膜を引っ掻くことと、そのときの摩擦力を測定することと、を繰り返す、前記膜の傷に対する耐性を評価するための試験方法において、前記針に与える荷重が200gを超えても1回の引っ掻きにおける摩擦力のばらつきが1.3を超えない耐性を有する、眼用レンズ。
【請求項6】
見掛けを変えるために使用する眼用レンズであって、
レンズの1つ又はそれ以上の特性を変えるために付加された単層又は多層の膜を備え、
前記膜は、針に一定の荷重を与えて前記膜を引っ掻くことと、前記膜を引っ掻いているときの摩擦力を測定することと、を含み、1回の引っ掻きにおける摩擦力のばらつきが特定値よりも小さい場合、前記針に与える荷重を増やして、再び前記膜を引っ掻いて摩擦力を測定し、1回の引っ掻きにおける摩擦力のばらつきが特定値を超えるまで、前記膜を引っ掻くことと、そのときの摩擦力を測定することと、を繰り返す、前記膜の傷に対する耐性を評価するための試験方法において、前記針に与える荷重が200gを超えても1回の引っ掻きにおける摩擦力のばらつきが1.3を超えない耐性を有する、眼用レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験方法、及び眼用レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、表示装置の表面、例えば陰極線管のフェース面などに貼着される用途を持つ機能性フィルムの傷のつきやすさを判定する方法に関する。特許文献1には、機能性フィルムの傷のつきやすさを詳細に判定できる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-185553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の試験方法は、目視しなければ、傷つきやすさを判定できない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様においては、眼用レンズの膜の傷に対する耐性を評価するための試験方法を提供する。試験方法は、針に一定の荷重を与えて膜を引っ掻くことを含んでよい。試験方法は、膜を引っ掻いているときの摩擦力を測定することを含んでよい。試験方法は、1回の引っ掻きにおける摩擦力のばらつきが特定値よりも小さい場合、針に与える荷重を増やして、再び膜を引っ掻いて摩擦力を測定してよい。試験方法は、1回の引っ掻きにおける摩擦力のばらつきが特定値を超えるまで、膜を引っ掻くことと、そのときの摩擦力を測定することと、を繰り返してよい。
【0006】
本発明の第2の態様においては、眼の測定、補正及び保護の少なくとも1つのために使用する眼用レンズを提供する。眼用レンズは、レンズの1つ又はそれ以上の特性を変えるために付加された単層又は多層の膜を備えてよい。膜は、針に一定の荷重を与えて膜を引っ掻くことと、膜を引っ掻いているときの摩擦力を測定することと、を含み、1回の引っ掻きにおける摩擦力のばらつきが特定値よりも小さい場合、針に与える荷重を増やして、再び膜を引っ掻いて摩擦力を測定し、1回の引っ掻きにおける摩擦力のばらつきが特定値を超えるまで、膜を引っ掻くことと、そのときの摩擦力を測定することと、を繰り返す、膜の傷に対する耐性を評価するための試験方法において、針に与える荷重が200gを超えても1回の引っ掻きにおける摩擦力のばらつきが1.3を超えない耐性を有してよい。
【0007】
本発明の第3の態様においては、見掛けを変えるために使用する眼用レンズを提供する。眼用レンズは、レンズの1つ又はそれ以上の特性を変えるために付加された単層又は多層の膜を備えてよい。膜は、針に一定の荷重を与えて膜を引っ掻くことと、膜を引っ掻いているときの摩擦力を測定することと、を含み、1回の引っ掻きにおける摩擦力のばらつきが特定値よりも小さい場合、針に与える荷重を増やして、再び膜を引っ掻いて摩擦力を測定し、1回の引っ掻きにおける摩擦力のばらつきが特定値を超えるまで、膜を引っ掻くことと、そのときの摩擦力を測定することと、を繰り返す、膜の傷に対する耐性を評価するための試験方法において、針に与える荷重が200gを超えても1回の引っ掻きにおける摩擦力のばらつきが1.3を超えない耐性を有してよい。
【0008】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】耐性評価システムRESの一例を概略的に示す。
図2】コンピュータ200の構成の一例を概略的に示す。
図3】耐性評価システムRESによる、眼用レンズOLの膜の傷に対する耐性を評価するための試験方法の手順の一例を概略的に示す。
図4】眼用レンズOLの膜を針SNで引っ掻く手順の一例を概略的に示す。
図5】眼用レンズOLの膜を針SNで引っ掻く手順の一例を概略的に示す。
図6】眼用レンズOLの膜を針SNで引っ掻く手順の一例を概略的に示す。
図7】眼用レンズOLの膜を針SNで引っ掻く手順の一例を概略的に示す。
図8】摩擦力の計測値と針SNの移動距離との関係の一例を概略的に示す。
図9】摩擦力の計測値と針SNの移動距離との関係の一例を概略的に示す。
図10】実施例における摩擦力のばらつきを測定した試験結果を示す。
図11】実施例における摩擦力のばらつきを測定した試験結果を示す。
図12】実施例における摩擦力のばらつきを測定した試験結果を示す。
図13】実施例における摩擦力のばらつきを測定した試験結果を示す。
図14】実施例における摩擦力のばらつきを測定した試験結果を示す。
図15】実施例と比較例における摩擦力のばらつきを測定した試験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0011】
図1は、耐性評価システムRESの一例を概略的に示す。耐性評価システムRESは、眼用レンズOLの膜の傷に対する耐性を評価するための試験を行う試験者が利用するシステムである。眼用レンズOLは、眼の測定、補正及び保護の少なくとも1つのために使用するレンズである。眼用レンズOLは、眼球に接触せずに、眼の前方に掛ける眼鏡レンズとして使用される。
【0012】
耐性評価システムRESは、摩擦試験機100及びコンピュータ200を備える。本実施形態の説明では、図1に示すとおり、針SNの軸AXの延伸方向をZ方向とし、Z軸に直交する平面をXY平面とする場合がある。XYZ軸は右手系をなす。
【0013】
摩擦試験機100は、試験片と相手材とを摩擦し、そのときに発生する摩擦力を測定する装置である。摩擦試験機100は、試料テーブル110、直交バランスアーム120及び支持部130を備える。
【0014】
試料テーブル110は、試験片を取り付ける部材である。試料テーブル110は、X方向ステージ111、治具112及びX駆動部113を備える。
【0015】
X方向ステージ111は、X方向における試料テーブル110の位置を調整するためのステージである。X方向ステージ111は、摩擦試験機100のベースBUの上面において、X方向に移動可能に設けられる。
【0016】
治具112は、試料テーブル100において、試験片を固定する器具である。治具112は、X方向ステージ111の上面において、XY平面における試験片から離れる方向と、XY平面における試験片に近づく方向とに移動可能に設けられる。例えば、治具112は、試験片の側面を挟むことにより、試験片を固定する。この例では、治具112は、試験片として眼用レンズOLを固定している。
【0017】
X駆動部113は、コンピュータ200が出力した電気信号を、物理的運動に変換する、試料テーブル110を構成する機械要素である。X駆動部113は、コンピュータ200と電気的に接続される。X駆動部113は、コンピュータ200が出力した電気信号を受信すると、その電気信号を、X方向ステージ111をX方向に移動させる物理的運動に変換する。
【0018】
直交バランスアーム120は、針SNが試験片に当接するときに、針SNに一定の荷重を与える機構である。直交バランスアーム120は、Y方向ステージ121、支柱122,アーム123、及びY駆動部124を備える。
【0019】
Y方向ステージ121は、Y方向における直交バランスアーム120の位置を調整するためのステージである。Y方向ステージ121は、摩擦試験機100のベースBUの上面において、Y方向に移動可能に設けられる。
【0020】
支柱122は、アーム123を支えるために用いる柱状の部材である。支柱122は、Y方向ステージ121の上面に設けられる。支柱122は、アーム123を軸支する回転軸ARを有する。
【0021】
アーム123は、試料テーブル100に固定された試験片の直上に針SNが位置するように、支持部130を保持する部材である。アーム123は、回転軸ARによってθX方向に回動自在に軸支される。
【0022】
Y駆動部124は、所定の物理的運動を、他の物理的運動に変換する、直交バランスアーム120を構成する機械要素である。Y駆動部124は、試験者が回転させることが可能な回転ハンドルに接続される。Y駆動部124は、回転ハンドルが回転すると、その物理的運動を、Yステージ121をY方向に移動させる物理的運動に変換する。
【0023】
支持部130は、針SNを支持する部材である。支持部130は、棒状体131及び荷重変換器132を備える。
【0024】
棒状体131は、鉛直方向に長さを有する棒状の部材である。棒状体131は、下端部において、針SNの鋭角の先端が下方を向くように、針SNを支持する。棒状体131は、アーム123が回動しても、針SNの軸AXの延伸方向が常に鉛直方向となるように、アーム123に保持される。また、棒状体131は、分銅Wを取り付け可能である。分銅Wは、針SNに一定の荷重を与えるために使う質量基準となる金属塊である。
【0025】
荷重変換器132は、起わい体にはり付けられたひずみゲージで検出した荷重信号を質量に変換することによって摩擦力を計測する機器である。荷重変換器132は、棒状体131における針SNの直上の位置に設けられ、コンピュータ200と電気的に接続される。荷重変換器132は、摩擦力を計測すると、その計測値を示す電気信号を、コンピュータ200に出力する。
【0026】
コンピュータ200は、与えられた手順に従って複雑な計算と制御とを自動的に行う機械である。例えば、コンピュータ200は、摩擦試験機100の状態を制御する。また、例えば、コンピュータ200は、荷重変換器132により計測された摩擦力の計測値を用いて複雑な計算を行う。
【0027】
耐性評価システムRESによれば、針SNに一定の荷重を与えて眼用レンズOLの膜を引っ掻くことができる。また、耐性評価システムRESによれば、眼用レンズOLの膜を引っ掻いているときの摩擦力を測定することができる。
【0028】
図2は、コンピュータ200の構成の一例を概略的に示す。コンピュータ200は、制御装置210、演算装置220、記憶装置230、入力装置240及び出力装置250を備える。
【0029】
制御装置210は、演算装置220、記憶装置230、入力装置240及び出力装置250の制御を行う装置である。例えば、制御装置210は、眼用レンズOLの膜を引っ掻く長さが試験者により設定された長さとなるように、X駆動部113を制御する制御データを演算装置220に生成させる。また、例えば、制御装置210は、演算装置220により生成された制御データによって示される制御内容に従ってX駆動部113を制御する電気信号を出力装置250に出力させる。また、例えば、制御装置210は、荷重変換器132により計測された摩擦力のばらつきを演算させるように、演算装置220を制御する。また、例えば、制御装置210は、摩擦力のばらつきを示す情報を出力させるように、出力装置250を制御する。
【0030】
演算装置220は、算術演算、論理演算等の計算を行う装置である。例えば、演算装置220は、眼用レンズOLの膜を引っ掻く長さが試験者により設定された長さとなるようにX駆動部113を制御する制御データを生成する。また、例えば、演算装置220は、荷重変換器132により計測された摩擦力のばらつきを算出する。
【0031】
記憶装置230は、データ及びプログラムの保存、記憶を行うための装置である。例えば、記憶装置230は、摩擦試験機100のユーザにより入力された情報に基づいて、X駆動部113の制御量を演算するためのプログラムを記憶する。また、例えば、記憶装置230は、荷重変換器132により計測された摩擦力の計測値を示すデータを記憶する。また、例えば、記憶装置230は、荷重変換器132により計測された摩擦力のばらつきを演算するためのプログラムを記憶する。
【0032】
入力装置240は、コンピュータ200に、データ、情報、指示等を与えるための装置である。例えば、入力装置240は、摩擦試験機100のユーザが摩擦試験機100を操作するための情報を入力するタッチパネル等の装置を含む。また、例えば、入力装置240は、荷重変換器132から出力される電気信号を入力する入力ポート等の装置を含む。
【0033】
出力装置250は、コンピュータ200の外部にデータ、信号を出力する装置である。例えば、出力装置250は、X駆動部113に電気信号を出力する出力ポート等の装置を含む。また、例えば、出力装置250は、摩擦力のばらつきを示す情報を表示するタッチパネル等の装置を含む。
【0034】
図3は、耐性評価システムRESによる、眼用レンズOLの膜の傷に対する耐性を評価するための試験方法の手順の一例を概略的に示す。図4から図7は、眼用レンズOLの膜を針SNで引っ掻く手順の一例を概略的に示す。図8及び図9は、摩擦力の計測値と針SNの移動距離との関係の一例を概略的に示す。ここでは、図3から図9を参照し、耐性評価システムRESによる、眼用レンズOLの膜の傷に対する耐性を評価するための試験方法の流れについて説明する。また、ここでは、試料テーブル110に眼用レンズOLをセットし、Yステージ121をY方向に移動させて眼用レンズOLの膜を引っ掻く開始位置SPに針SNを位置させた状態を開始状態として説明する。例えば、試験者は、図4に示すように、XY平面において、眼用レンズOLの中心から「25mm」離れた位置を開始位置SPとする。
【0035】
まず、試験を行う試験者は、眼用レンズOLの膜を引っ掻いているときに針SNに与える荷重の初期値を設定する(S101)。例えば、試験者は、針SNに与える荷重の初期値を「10g」に設定し、棒状体131に「10g」の分銅Wを取り付ける。
【0036】
次に、試験者は、眼用レンズOLの膜を引っ掻く長さを設定する(S102)。S102において、試験者は、入力装置240を用いて、膜を引っ掻く長さを入力する。膜を引っ掻く長さが入力されると、演算装置220は、眼用レンズOLの膜を引っ掻く長さが設定された長さとなるようにX駆動部113を制御する制御データを生成し、制御データを記憶装置230に記憶する。例えば、試験者は、眼用レンズOLを引っ掻く長さを「10mm」に設定する。
【0037】
次に、試験者は、眼用レンズOLの膜の引っ掻きと、膜を引っ掻いているときの摩擦力の測定とを開始する(S103)。S103において、試験者は、入力装置240を用いて、眼用レンズOLの膜の引っ掻きと、膜を引っ掻いているときの摩擦力の測定とを開始するよう指示する情報を入力する。情報が入力されると、出力装置250は、記憶装置230に記憶されているX駆動部113の制御データを読み出し、制御データに従ってX駆動部113を制御する電気信号をX駆動部113に出力する。X駆動部113は、電気信号を受信すると、電気信号によって示される制御内容に従ってX方向ステージ111を駆動する。X駆動部113が制御されることにより、針SNは、試験者により指定された一定の荷重が与えられながら、開始位置SPから眼用レンズOLの中心に向かって眼用レンズOLの膜を引っ掻くことになる。眼用レンズOLの膜を針SNが引っ掻いているとき、荷重変換器132は、摩擦力を測定し、摩擦力の計測値を示す電気信号を出力する。入力装置240は、電気信号を入力すると、摩擦力の計測値と針SNの移動距離とを関連付けたデータを記憶装置230に記憶する。
【0038】
試験者により設定された長さまで針SNが移動していない場合(S104;NO)、摩擦試験機100は、眼用レンズOLの膜の引っ掻きと、膜を引っ掻いているときの摩擦力の測定とを継続して実行する。
【0039】
図5に示すように、試験者により設定された長さまで針SNが移動すると(S104;YES)、摩擦試験機100は、眼用レンズOLの膜の引っ掻きと、膜を引っ掻いているときの摩擦力の測定とを終了する(SNは、105)。
【0040】
眼用レンズOLの膜の引っ掻きと、膜を引っ掻いているときの摩擦力の測定とが終了すると、試験者は、摩擦力のばらつきが特定値を超えたかを確認する(S106)。S106において、演算装置210は、記憶装置230に記憶されている摩擦力の計測値と針SNの移動距離とを関連付けたデータを読み出し、摩擦力のばらつきを算出する。例えば、演算装置210は、針SNにより引っ掻いた経路のうち、試験者により指定された区間における摩擦力のばらつきを算出する。摩擦力のばらつきが算出されると、出力装置250は、摩擦力のばらつきを示す情報を出力する。例えば、試験者は、静止摩擦の影響を除くために、摩擦力のばらつきを算出する対象の区間として、開始位置SPから針SNが「2mm」移動した後の区間を指定する。例えば、試験者は、摩擦力のばらつきが「1.3」を超えたかを確認する。摩擦力のばらつきが「1.3」を超えていない場合、摩擦力の計測値と針SNの移動距離との関係は、図8に示すような関係にあり、開始位置SPから針SNが「2mm」移動した後に、摩擦力があまり変化しない。一方、摩擦力のばらつきが「1.3」を超えている場合、摩擦力の計測値と針SNの移動距離との関係は、図9に示すような関係にあり、開始位置SPから針SNが「2mm」移動した後も、摩擦力が大きく変化する。
【0041】
S106において摩擦力のばらつきが特定値を超えていない場合(S106;NO)、試験者は、眼用レンズOLの中心を軸にして、眼用レンズOLを回転させる(S107)。S106において、試験者は、再び眼用レンズOLの膜を引っ掻くにあたり、次に引っ掻く経路が既に引っ掻いた経路に重複及び交差しない経路となるように、眼用レンズOLを回転させる。例えば、試験者は、試料テーブル110に固定されている眼用レンズOLを取り外し、図6に示すように、眼用レンズOLを回転させて、再び試料テーブル110に固定する。S106において眼用レンズOLを回転させることにより、次に引っ掻くときの開始位置SPは、図7に示すように、次に引っ掻く経路が既に引っ掻いた経路に重複及び交差しない経路となり得る位置となる。
【0042】
そして、試験者は、針SNに与える荷重を再設定する(S108)。例えば、試験者は、針SNに与える荷重を、現在の荷重よりも「10g」増やした値に設定し、現在の荷重よりも「10g」増やした値となるように、棒状体131に分銅Wを取り付ける。
【0043】
そして、試験者は、S106において摩擦力のばらつきが特定値を超えるまで、S102からS108の手順を繰り返す。
【0044】
S106において摩擦力のばらつきが特定値を超えると(S106;YES)、試験者は、図3に示す試験方法を終了する。
【0045】
図3に示す試験方法により、試験者は、試験片とした眼用レンズOLについて、膜の傷に対する耐性を評価することができる。具体的に、試験者は、摩擦力のばらつきが特定値を超えたときに針SNにかけていた荷重の値と、針SNの素材と、針SNの先端形状とを参考にして、膜の傷に対する耐性を評価することができる。
【0046】
図10から図15は、実施例と比較例における摩擦力のばらつきを測定した試験結果を示す。出願人は、実施例と比較例とにおいて、摩擦試験機100として、「新東科学株式会社」が販売している「トライボギア TYPE:40」を使用して試験を行った。また、出願人は、針SNに与える荷重の初期値を「10g」として試験を行った。また、出願人は、XY平面において、眼用レンズOLの中心から「25mm」離れた位置を開始位置SPとして試験を行った。また、出願人は、XY平面において、開始位置SPから眼用レンズOLの中心に向かって「10mm」離れた位置を終了位置EPとして試験を行った。また、出願人は、開始位置SPから針SNが「2mm」移動した位置から終了位置EPまでの区間を、摩擦力のばらつきを算出する対象の区間として試験を行った。また、出願人は、眼用レンズOLの膜を針SNで引っ掻いたときに、目視で容易に確認できる傷が入るまで、引っ掻く度に針SNに与える荷重を大きくし、繰り返し試験を行った。
【0047】
実施例1において、出願人は、凸面曲率「1.25K」、ハードコート膜厚「3μm」、反射防止膜層数「5層」、トップコートの種類「撥油」の眼用レンズOLを試験片とした。また、実施例1において、出願人は、材質「サファイア」、先端形状「R0.05mm 60度」の針SNを使用した。実施例1において、出願人は、針SNに「80g」の荷重を与えたときに、目視で容易に確認できる傷が入ったことを確認した。このときの摩擦力のばらつきは、「2.48」であった。
【0048】
実施例2において、出願人は、凸面曲率「2.00K」、ハードコート膜厚「3μm」、反射防止膜層数「5層」、トップコートの種類「撥油」の眼用レンズOLを試験片とした。また、実施例2において、出願人は、材質「サファイア」、先端形状「R0.05mm 60度」の針SNを使用した。実施例2において、出願人は、針SNに「100g」の荷重を与えたときに、目視で容易に確認できる傷が入ったことを確認した。このときの摩擦力のばらつきは、「1.92」であった。
【0049】
実施例3において、出願人は、凸面曲率「3.00K」、ハードコート膜厚「3μm」、反射防止膜層数「5層」、トップコートの種類「撥油」の眼用レンズOLを試験片とした。また、実施例3において、出願人は、材質「サファイア」、先端形状「R0.05mm 60度」の針SNを使用した。実施例3において、出願人は、針SNに「50g」の荷重を与えたときに、目視で容易に確認できる傷が入ったことを確認した。このときの摩擦力のばらつきは、「1.56」であった。
【0050】
実施例4において、出願人は、凸面曲率「4.50K」、ハードコート膜厚「3μm」、反射防止膜層数「5層」、トップコートの種類「撥油」の眼用レンズOLを試験片とした。また、実施例4において、出願人は、材質「サファイア」、先端形状「R0.05mm 60度」の針SNを使用した。実施例4において、出願人は、針SNに「70g」の荷重を与えたときに、目視で容易に確認できる傷が入ったことを確認した。このときの摩擦力のばらつきは、「1.84」であった。
【0051】
実施例5において、出願人は、凸面曲率「1.25K」、ハードコート膜厚「3μm」、反射防止膜層数「5層」、トップコートの種類「撥油」の眼用レンズOLを試験片とした。また、実施例5において、出願人は、材質「サファイア」、先端形状「R0.05mm 90度」の針SNを使用した。実施例5において、出願人は、針SNに「70g」の荷重を与えたときに、目視で容易に確認できる傷が入ったことを確認した。このときの摩擦力のばらつきは、「1.72」であった。
【0052】
実施例6において、出願人は、凸面曲率「1.25K」、ハードコート膜厚「3μm」、反射防止膜層数「5層」、トップコートの種類「撥油」の眼用レンズOLを試験片とした。また、実施例6において、出願人は、材質「サファイア」、先端形状「R0.01mm 60度」の針SNを使用した。実施例6において、出願人は、針SNに「10g」の荷重を与えたときに、目視で容易に確認できる傷が入ったことを確認した。このときの摩擦力のばらつきは、「3.36」であった。
【0053】
実施例7において、出願人は、凸面曲率「1.25K」、ハードコート膜厚「3μm」、反射防止膜層数「5層」、トップコートの種類「撥水」の眼用レンズOLを試験片とした。また、実施例7において、出願人は、材質「サファイア」、先端形状「R0.05mm 60度」の針SNを使用した。実施例7において、出願人は、針SNに「40g」の荷重を与えたときに、目視で容易に確認できる傷が入ったことを確認した。このときの摩擦力のばらつきは、「4.98」であった。
【0054】
実施例8において、出願人は、凸面曲率「2.00K」、ハードコート膜厚「3μm」、反射防止膜層数「5層」、トップコートの種類「撥水」の眼用レンズOLを試験片とした。また、実施例8において、出願人は、材質「サファイア」、先端形状「R0.05mm 60度」の針SNを使用した。実施例8において、出願人は、針SNに「60g」の荷重を与えたときに、目視で容易に確認できる傷が入ったことを確認した。このときの摩擦力のばらつきは、「2.56」であった。
【0055】
実施例9において、出願人は、凸面曲率「3.00K」、ハードコート膜厚「3μm」、反射防止膜層数「5層」、トップコートの種類「撥水」の眼用レンズOLを試験片とした。また、実施例9において、出願人は、材質「サファイア」、先端形状「R0.05mm 60度」の針SNを使用した。実施例9において、出願人は、針SNに「50g」の荷重を与えたときに、目視で容易に確認できる傷が入ったことを確認した。このときの摩擦力のばらつきは、「1.82」であった。
【0056】
実施例10において、出願人は、凸面曲率「4.50K」、ハードコート膜厚「3μm」、反射防止膜層数「5層」、トップコートの種類「撥水」の眼用レンズOLを試験片とした。また、実施例10において、出願人は、材質「サファイア」、先端形状「R0.05mm 60度」の針SNを使用した。実施例10において、出願人は、針SNに「50g」の荷重を与えたときに、目視で容易に確認できる傷が入ったことを確認した。このときの摩擦力のばらつきは、「2.23」であった。
【0057】
実施例11において、出願人は、凸面曲率「1.25K」、ハードコート膜厚「3μm」、反射防止膜層数「5層」、トップコートの種類「撥水」の眼用レンズOLを試験片とした。また、実施例11において、出願人は、材質「サファイア」、先端形状「R0.05mm 90度」の針SNを使用した。実施例11において、出願人は、針SNに「40g」の荷重を与えたときに、目視で容易に確認できる傷が入ったことを確認した。このときの摩擦力のばらつきは、「2.13」であった。
【0058】
実施例12において、出願人は、凸面曲率「1.25K」、ハードコート膜厚「3μm」、反射防止膜層数「5層」、トップコートの種類「撥水」の眼用レンズOLを試験片とした。また、実施例12において、出願人は、材質「サファイア」、先端形状「R0.01mm 60度」の針SNを使用した。実施例12において、出願人は、針SNに「10g」の荷重を与えたときに、目視で容易に確認できる傷が入ったことを確認した。このときの摩擦力のばらつきは、「2.63」であった。
【0059】
実施例13において、出願人は、凸面曲率「0.50K」、ハードコート膜厚「10μm」、反射防止膜層数「8層」、トップコートの種類「撥油」の眼用レンズOLを試験片とした。また、実施例13において、出願人は、材質「サファイア」、先端形状「R0.05mm 60度」の針SNを使用した。実施例13において、出願人は、針SNに「160g」の荷重を与えたときに、目視で容易に確認できる傷が入ったことを確認した。このときの摩擦力のばらつきは、「11.12」であった。
【0060】
実施例14において、出願人は、凸面曲率「0.50K」、ハードコート膜厚「3μm」、反射防止膜層数「8層」、トップコートの種類「撥油」の眼用レンズOLを試験片とした。また、実施例14において、出願人は、材質「サファイア」、先端形状「R0.05mm 60度」の針SNを使用した。実施例14において、出願人は、針SNに「80g」の荷重を与えたときに、目視で容易に確認できる傷が入ったことを確認した。このときの摩擦力のばらつきは、「9.37」であった。
【0061】
実施例15において、出願人は、凸面曲率「1.25K」、ハードコート膜厚「3μm」、反射防止膜層数「5層」、トップコートの種類「撥油」の眼用レンズOLを試験片とした。また、実施例15において、出願人は、材質「サファイア」、先端形状「R0.05mm 60度」の針SNを使用した。実施例15において、出願人は、針SNに「100g」の荷重を与えたときに、目視で容易に確認できる傷が入ったことを確認した。このときの摩擦力のばらつきは、「2.37」であった。
【0062】
実施例16において、出願人は、凸面曲率「0.50K」、ハードコート膜厚「3μm」、反射防止膜層数「5層」、トップコートの種類「撥油」の眼用レンズOLを試験片とした。また、実施例16において、出願人は、材質「サファイア」、先端形状「R0.05mm 60度」の針SNを使用した。実施例16において、出願人は、針SNに「90g」の荷重を与えたときに、目視で容易に確認できる傷が入ったことを確認した。このときの摩擦力のばらつきは、「1.40」であった。
【0063】
比較例1において、出願人は、凸面曲率「1.25K」、ハードコート膜厚「3μm」、反射防止膜層数「8層」、トップコートの種類「撥油」の眼用レンズOLを試験片とした。また、比較例1において、出願人は、材質「ダイヤモンド」、先端形状「R0.05mm 90度」の針SNを使用した。比較例1において、出願人は、針SNに「50g」の荷重を与えたときに、目視で容易に確認できる傷が入ったことを確認した。このときの摩擦力のばらつきは、「0.78」であった。
【0064】
比較例2において、出願人は、凸面曲率「1.25K」、ハードコート膜厚「3μm」、反射防止膜層数「5層」、トップコートの種類「撥水」の眼用レンズOLを試験片とした。また、比較例2において、出願人は、材質「ダイヤモンド」、先端形状「R0.05mm 90度」の針SNを使用した。比較例2において、出願人は、針SNに「40g」の荷重を与えたときに、目視で容易に確認できる傷が入ったことを確認した。このときの摩擦力のばらつきは、「0.96」であった。
【0065】
実施例1から実施例4、実施例14、及び実施例15は、凸面曲率が互いに異なり、ハードコート膜厚、及びトップコートの種類が同じ眼用レンズOLを試験片としている。また、実施例1から実施例4、実施例14、及び実施例15は、材質と先端形状とが同じ針SNを使用している。実施例1から実施例4、実施例14、及び実施例15によれば、眼用レンズOLの凸面曲率が異なっていても、摩擦力のばらつきが「1.3」を超えた時点で、目視で容易に確認できる傷が入ることが分かる。
【0066】
実施例1、実施例5及び実施例6は、凸面曲率、ハードコート膜厚、及びハードコートの種類が同じ眼用レンズOLを試験片としている。また、実施例1、実施例5及び実施例6は、先端形状が互いに異なり、材質が同じ針SNを使用している。実施例1、実施例5及び実施例6によれば、針SNの先端形状が異なっていても、摩擦力のばらつきが「1.3」を超えた時点で、目視で容易に確認できる傷が入ることが分かる。
【0067】
実施例1及び実施例7は、トップコートの種類が互いに異なり、凸面曲率及びハードコート膜厚が同じ眼用レンズOLを試験片としている。また、実施例1及び実施例7は、材質及び先端形状が同じ針SNを使用している。実施例1及び実施例7によれば、トップコートの種類が異なっていても、摩擦力のばらつきが「1.3」を超えた時点で、目視で容易に確認できる傷が入ることが分かる。
【0068】
実施例7から実施例10は、凸面曲率が互いに異なり、ハードコート膜厚、及びトップコートの種類が同じ眼用レンズOLを試験片としている。また、実施例7から実施例10は、材質及び先端形状が同じ針SNを使用している。実施例7から実施例10によれば、凸面曲率が異なっていても、摩擦力のばらつきが「1.3」を超えた時点で、目視で容易に確認できる傷が入ることが分かる。
【0069】
実施例7、実施例11及び実施例12は、凸面曲率、ハードコート膜厚、及びトップコートの種類が同じ眼用レンズOLを試験片としている。また、実施例7、実施例11及び実施例12は、先端形状が互いに異なり、材質が同じ針SNを使用している。実施例7、実施例11及び実施例12によれば、針SNの先端形状が異なっていても、摩擦力のばらつきが「1.3」を超えた時点で、目視で容易に確認できる傷が入ることが分かる。
【0070】
実施例13及び実施例14は、ハードコート膜厚が互いに異なり、凸面曲率、及びトップコートの種類が同じ眼用レンズOLを試験片としている。また、実施例13及び実施例14は、材質及び先端形状が同じ針SNを使用している。実施例13及び実施例14によれば、ハードコート膜厚が異なっていても、摩擦力のばらつきが「1.3」を超えた時点で、目視で容易に確認できる傷が入ることが分かる。
【0071】
実施例5及び比較例1は、凸面曲率、ハードコート膜厚、及びトップコートの種類が同じ眼用レンズOLを試験片としている。また、実施例5及び比較例1は、材質が互いに異なり、先端形状が同じ針SNを使用している。実施例5及び比較例1によれば、「サファイア」の針SNを使用すれば、摩擦力のばらつきが「1.3」を超えた時点で、目視で容易に確認できる傷が入ることが分かる。また、実施例5及び比較例1によれば、「ダイヤモンド」の針SNを使用すると、摩擦力のばらつきが「1.3」を超えていないにもかかわらず、目視で容易に確認できる傷が入ってしまうことが分かる。
【0072】
実施例11及び比較例2は、凸面曲率、ハードコート膜厚、及びトップコートの種類が同じ眼用レンズOLを試験片としている。また、実施例11及び比較例2は、材質が互いに異なり、先端形状が同じ針SNを使用している。実施例11及び比較例2によれば、「サファイア」の針SNを使用すれば、摩擦力のばらつきが「1.3」を超えた時点で、目視で容易に確認できる傷が入ることが分かる。また、実施例11及び比較例2によれば、「ダイヤモンド」の針SNを使用すると、摩擦力のばらつきが「1.3」を超えていないにもかかわらず、目視で容易に確認できる傷が入ってしまうことが分かる。
【0073】
実施例4、実施例15及び実施例16によれば、摩擦力のばらつきが「1.2」を超えても傷が入らず、摩擦力のばらつきが「1.3」を超えた時点で、目視で容易に確認できる傷が入ることが分かる。
【0074】
実施例13は、摩擦力のばらつきが「1.3」を超えたときに針SNに与えていた荷重が他の実施例における荷重よりも大きい。このことから、出願人は、実施例13において試験片とした眼用レンズOLが優れた耐傷性能を有していることを確認できた。
【0075】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0076】
上記実施の形態においては、眼用レンズOLの膜の傷に対する耐性を評価する試験方法の対象となる眼用レンズOLが、眼の測定、補正及び保護の少なくとも1つのために使用するレンズである例について説明した。しかし、試験方法の対象となる眼用レンズOLは、他のレンズであってもよい。例えば、試験方法の対象となる眼用レンズOLは、見掛けを変えるために使用するレンズであってもよい。
【0077】
特許請求の範囲、明細書、及び図面中において示した装置、システム、プログラム及び方法における動作、手順、ステップ及び段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現し得ることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、及び図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0078】
100 摩擦試験機、110 試料テーブル、111 X方向ステージ、112 治具、113 X駆動部、120 直交バランスアーム、121 Y方向ステージ、122 支柱、123 アーム、124 Y駆動部、130 支持部、131 棒状体、132 荷重変換器、200 コンピュータ、210 制御装置、220 演算装置、230 記憶装置、240 入力装置、250 出力装置、AR 回転軸、AX 軸、BU ベース、EP 終了位置、OL 眼用レンズ、RES 耐性評価システム、SN 針、SP 開始位置、W 分銅
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