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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091661
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】熱転写記録媒体
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/382 20060101AFI20230623BHJP
   B41M 5/52 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
B41M5/382 800
B41M5/52 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206522
(22)【出願日】2021-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000237237
【氏名又は名称】フジコピアン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】植嶋 之博
(72)【発明者】
【氏名】森 聡
(72)【発明者】
【氏名】林 友理
【テーマコード(参考)】
2H111
【Fターム(参考)】
2H111AA26
2H111AB05
2H111BA03
2H111BA07
2H111BA53
2H111BA54
2H111BA62
2H111BA71
2H111BA78
(57)【要約】
【課題】従来よりも中間転写記録媒体から被転写体への転写時の転写層剥離力を小さくした中間転写記録媒体であっても、中間転写記録媒体の転写層上にマスク層を転写することにより、中間転写記録媒体の転写層が被転写体へ転写される際に、マスク層が転写された部分の中間転写記録媒体転写層のみを被転写体に確実に転写されないようにすることができるマスク層を有する熱転写記録媒体の提供。
【解決手段】中間転写記録媒体用の熱転写記録媒体であって、基材の一方の面上に融点が80℃以上のワックス、フッソ系粒子、及びセルロースアセテート樹脂を少なくとも含有するマスク層を有する熱転写記録媒体。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間転写記録媒体用の熱転写記録媒体であって、基材の一方の面上に融点が80℃以上のワックス、フッソ系粒子、及びセルロースアセテート樹脂を少なくとも含有するマスク層を有することを特徴とする熱転写記録媒体。
【請求項2】
前記ワックスの含有量が前記マスク層固形分中の10重量%以上50重量%以下であり、前記フッソ系粒子の含有量が前記マスク層固形分中の20重量%以上70重量%以下であり、前記セルロースアセテート樹脂の含有量が前記マスク層固形分中の5重量%以上60重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱転写記録媒体。
【請求項3】
前記フッソ系粒子の平均粒子径が0.5μm以上4μm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱転写記録媒体。
【請求項4】
前記中間転写記録媒体がカード印刷用であることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の熱転写記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間転写記録媒体を介して被転写体に画像や文字を転写するために用いられる熱転写記録媒体に関する発明であり、詳しくは、マスク層を中間転写記録媒体上に転写することにより、中間転写記録媒体上でマスク層の下となる部分の転写層が被転写体へ転写されないマスク層を有する熱転写記録媒体に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来から印画物の製造において、中間転写記録媒体の転写したい部分の転写層のみを、被転写体上に正確に転写することが可能となる熱転写シート(熱転写記録媒体)と中間転写記録媒体の組合せや、中間転写記録媒体と組み合わせて用いられる熱転写シートが開示されている。
【0003】
特許文献1では、このような目的で用いられる熱転写記録媒体として、中間転写記録媒体と組み合わせて用いられる熱転写シートであって、基材1上にブロック層2(マスク層)が設けられ、前記ブロック層2がカルナバワックスを含有している熱転写シートが開示されている。特許文献1では、前記ブロック層2がカルナバワックスを含有することにより、中間転写記録媒体の転写したい部分の転写層のみを、被転写体上に正確に転写することが可能となることが記載されている。
【0004】
また特許文献2には、カード(被転写体)の材質によらず、中間転写記録媒体からカードへの転写層の転写性を良好なものとし、かつ生産効率の低下を抑制することを目的として、熱転写記録媒体の色材層により画像が形成される受容層を有する中間転写記録媒体と前記カードとを重ね合わせて送りながら前記中間転写記録媒体を加熱し、前記画像が形成された前記転写層を前記カード上に転写する転写部において、カードの材質に基づいて前記転写部におけるカード送り速度を制御する制御部と、を備える熱転写プリンターが開示されている。特許文献2の発明では、カード送り速度をカード材質に合わせることによって、カードの材質によらず、中間転写記録媒体からカードへの転写層の転写性を良好なものとしている。
【0005】
ところで、中間転写記録媒体からのカードへの転写層の転写性が最も悪いカード材質でも、転写層の転写性が良好になるようにすれば、熱転写プリンターのカード送り速度を、カード材質に合わせて制御するような制御部を設けなくても、すべてのカードに対して、中間転写記録媒体からの転写層の転写性を良好にすることができる。転写時の中間転写記録媒体からの転写層の剥離力を小さくすれば、中間転写記録媒体からのカードへの転写層の転写性が最も悪いカード材質でも転写層の転写性を良好にすることができる。
【0006】
しかしながら、転写時の中間転写記録媒体からの転写層の剥離力を小さくした中間転写記録媒体に、従来のマスク層が設けられた熱転写記録媒体を使用すると、マスク層が機能せず、マスク層を転写した部分まで、中間転写記録媒体から被転写体であるカードに転写層が転写されるという問題が発生した。中間転写記録媒体から転写層を被転写体に転写する際に、マスク層が被転写体に接着する接着力が、中間転写記録媒体転写層の基材に接着する接着力、及びマスク層が中間転写記録媒体転写層に接着する接着力よりも小さく、マスク層が転写された部分が被転写体に接着しなければ、マスク層が転写された部分の中間転写記録媒体の転写層は被転写体に再転写されない。このためマスク層は接着性が小さい層であることが好ましいが、マスク層が熱転写記録媒体から中間転写記録媒体に転写される際には、マスク層は中間転写記録媒体の受像層、または先に転写され画像を形成する熱転写記録媒体の色材層などに、しっかりと接着することができなければ、中間転写記録媒体から被転写体へ再転写するときまで、マスク層が中間転写記録媒体上に接着した状態を維持することができない。このため、マスク層には中間転写記録媒体にしっかりと接着するだけの接着性が要求される。
【0007】
しかしながら、従来のマスク層では、中間転写記録媒体にしっかりと接着するだけの接着性を確保しようとすると、再転写時の被転写体に対するマスク層の接着力も大きくなる。このため、従来のマスク層では、中間転写記録媒体にしっかりと接着するだけの接着性を確保しようとすると、転写性が最も悪い材質の被転写体に対する転写層の転写性を良好にするために、再転写時の転写層の剥離力を小さくした中間転写記録媒体では、マスク層の被転写体に対する接着力が、中間転写記録媒体からの転写層の剥離力を上回ることがあり、マスク層が機能しないことがあった。すなわち、マスク層の被転写体に対する接着力が、中間転写記録媒体からの転写層の剥離力を上回るために、マスク層が設けられた部分の中間転写記録媒体の転写層まで、被転写体に転写されるという問題が発生したのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2019/151378号公報
【特許文献2】特開2019-104207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであって、本発明が解決しようとする課題は、被転写体の送り速度を制御する制御部などの特別な機能を有する熱転写プリンターを使用しなくても、従来よりも中間転写記録媒体から被転写体への転写時の転写層剥離力を小さくすることによって、被転写体の材質によらず中間転写記録媒体から被転写体への転写層の転写性を良好なものとした中間転写記録媒体に使用することができるマスク層を有する熱転写記録媒体の提供であり、従来よりも中間転写記録媒体から被転写体への転写時の転写層剥離力を小さくした中間転写記録媒体であっても、中間転写記録媒体の転写層上にマスク層を転写することにより、中間転写記録媒体の転写層が被転写体へ転写される際に、マスク層が転写された部分の中間転写記録媒体転写層のみを被転写体に確実に転写されないようにすることができるマスク層を有する熱転写記録媒体の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明は、中間転写記録媒体用の熱転写記録媒体であって、基材の一方の面上に融点が80℃以上のワックス、フッソ系粒子、及びセルロースアセテート樹脂を少なくとも含有するマスク層を有することを特徴とする熱転写記録媒体である。
【0011】
第2発明は、前記ワックスの含有量が前記マスク層固形分中の10重量%以上50重量%以下であり、前記フッソ系粒子の含有量が前記マスク層固形分中の20重量%以上70重量%以下であり、前記セルロースアセテート樹脂の含有量が前記マスク層固形分中の5重量%以上60重量%以下であることを特徴とする第1発明に記載の熱転写記録媒体である。
【0012】
第3発明は、前記フッソ系粒子の平均粒子径が0.5μm以上4μm以下であることを特徴とする第1発明又は第2発明に記載の熱転写記録媒体である。
【0013】
第4発明は、前記中間転写記録媒体がカード印刷用であることを特徴とする第1発明~第3発明のいずれかに記載の熱転写記録媒体である。
【発明の効果】
【0014】
熱転写記録媒体のマスク層を融点が80℃以上のワックス、フッソ系粒子、及びセルロースアセテート樹脂を少なくとも含有するマスク層とすることにより、熱転写記録媒体から中間転写記録媒体への熱転写時には、マスク層が中間転写記録媒体の転写層に確実に接着するが、マスク層が積層された中間転写記録媒体の転写層を被転写体に転写する際には、マスク層が被転写体に接着することはない。このため、本発明の熱転写記録媒体は、被転写体の送り速度を制御する制御部などの特別な機能を有する熱転写プリンターを使用しなくても、従来よりも中間転写記録媒体から被転写体への転写時の転写層剥離力を小さくすることによって、被転写体の材質によらず中間転写記録媒体から被転写体への転写層の転写性を良好なものとした中間転写記録媒体に使用することができる。すなわち、本発明の熱転写記録媒体のマスク層を使用することにより、従来よりも中間転写記録媒体から被転写体への転写時の転写層剥離力を小さくした中間転写記録媒体の転写層に使用しても、中間転写記録媒体の転写層を被転写体へ転写する際に、マスク層が転写された部分の中間転写記録媒体の転写層のみを被転写体に確実に転写しないようにすることができるマスク層を有する熱転写記録媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の熱転写記録媒体の一例であるマスク層付熱転写記録媒体Aの層構成を示す図である。
図2】本発明の熱転写記録媒体とともに使用される、色材層(31)が設けられた熱転写記録媒体の一例である色材層付熱転写記録媒体Cの層構成を示す図である。
図3】本発明の熱転写記録媒体とともに使用する中間転写記録媒体の一例である中間転写記録媒体Bの層構成を示す図である。
図4】一次転写として、色材層付熱転写記録媒体Cの色材層(31)及びマスク層付熱転写記録媒体Aのマスク層(11)が中間転写記録媒体Bへ転写された状態を示す模式図である。
図5】二次転写(再転写)として、色材層付熱転写記録媒体Cの色材層(31)及びマスク層付熱転写記録媒体Aのマスク層(11)が転写された中間転写記録媒体Bから、色材層(31)などの転写層が被転写体であるカードDへ転写された状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の熱転写記録媒体を、さらに詳しく説明する。
【0017】
〔マスク層付熱転写記録媒体〕
本発明の熱転写記録媒体は、少なくとも1層のマスク層を基材の一方の面上に設けた熱転写記録媒体である。本発明のマスク層を中間転写記録媒体上に転写することにより、中間転写記録媒体上の転写層をカードなどの被転写体へ転写する際には、マスク層が転写された部分の転写層のみを被転写体に転写されないようにすることができる。本発明の熱転写記録媒体の一例であるマスク層付熱転写記録媒体Aを図1に示す。本発明の熱転写記録媒体は、図1に示すように、基材(10)の一方の面にマスク層(11)が積層された熱転写記録媒体である。本発明の熱転写記録媒体は、図1に示すように、基材(10)のもう1方の面に耐熱滑性層(12)を設けることが好ましい。また、本発明の熱転写記録媒体は、マスク層(11)と基材(10)の間に更に離型層を設けることもでき、マスク層(11)を複数の層を積層した層としてもよい。本発明の熱転写記録媒体は、図2に示すような中間転写記録媒体に転写して、印字、及び/又は印画を中間転写記録媒体上に作製するための色材層を有する熱転写記録媒体とともに使用することが好ましい。中間転写記録媒体上に作製した印字、印画を再度被転写体に再転写することによって、被転写体上に印字、印画を作製することができる。また、本発明の熱転写記録媒体は、基材の一方の側の長手方向に面順次、1又は2以上の色材層とともにマスク層を設けたものとすることもできる。
【0018】
(基材)
本発明の熱転写記録媒体に使用する基材としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムなどのポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアミドフィルム、アラミドフィルムその他この種の熱転写記録媒体の基材用フィルムとして一般に使用されている各種のプラスチックフィルムが使用できる。また、コンデンサーペーパーのような高密度の薄い紙も使用できる。基材の厚さは通常は2~10μm程度であり、熱伝達を良好にするためには、2~6μmの範囲が好ましい。
【0019】
(マスク層)
基材とマスク層間に離型層等を設けない場合には、マスク層は基材に直接積層される。マスク層はバインダーである樹脂成分に加え、ワックス成分及び粒子を含有することにより、熱転写記録媒体から中間転写記録媒体への熱転写時には、マスク層が中間転写記録媒体の転写層に確実に接着するが、マスク層が転写された中間転写記録媒体の転写層を被転写体に転写する際には、マスク層が被転写体には接着しないようにすることができる。このため、マスク層が、バインダーである樹脂成分に加え、ワックス成分及び粒子を含有することにより、従来よりも中間転写記録媒体から被転写体への転写時の転写層剥離力を小さくした中間転写記録媒体の転写層上にマスク層を転写した場合であっても、中間転写記録媒体に転写したマスク層が確実に被転写体に転写されないようにすることができる。
【0020】
(樹脂成分)
マスク層に含有する樹脂成分は、セルロースアセテート樹脂が好ましい。セルロースアセテート樹脂としては、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートが例示される。セルロースアセテート樹脂は接着性が低い樹脂であるため、マスク層にセルロースアセテート樹脂を含有することにより、再転写時にマスク層が被転写体に接着しにくく、マスク層としての機能を確実に発揮することができる。また、上記のように、マスク層には樹脂成分に加えて、ワックスと粒子を含有することが好ましい。マスク層にワックスと粒子を含有すると、熱転写記録媒体から中間転写記録媒体への転写時(以下、一次転写と言う)、及び中間転写記録媒体から被転写体への再転写時(以下、二次転写と言う)に、マスク層が割れやすくなる。一次転写時や二次転写時に、マスク層が割れると、マスク層が意図した形状に転写されないおそれがある。マスク層に含有する樹脂成分をセルロースアセテート樹脂とすることにより、マスク層に膜強度を付与することができる。このため、マスク層の成分として、樹脂成分に加えて、ワックスと粒子を含有する場合でも、樹脂成分としてセルロースアセテートを使用すれば、マスク層に十分な膜強度を与えることができ、マスク層の一次転写時、及び二次転写時にマスク層が割れることがなく、マスク層を確実に意図した形状で転写することができる。
【0021】
マスク層に含有するセルロースアセテートの含有量は、マスク層固形分中の5重量%以上60重量%以下が好ましい。含有量が5重量%を下回ると、マスク層の膜強度が不足し、未使用時にマスク層の一部が粉状になって、マスク層から脱落する所謂粉落ちが発生し易くなり、一次、二次転写時に転写されるマスク層に割れが発生し易くなり、意図した形状にマスク層が転写されなくなるおそれがある。一方、含有量が60重量%を超えると、マスク層の膜強度が強くなり過ぎて、熱転写後に中間転写記録媒体から熱転写記録媒体が剥離される際に、転写しようとした部分のマスク層まで中間転写記録媒体から剥がされて、マスク層が中間転写記録媒体へ転写されなかったり、不必要な部分にもマスク層が転写される、所謂面状剥離が発生し易くなるとともに、二次転写時にマスク層が被転写体へ転写され易くなり、マスク層としての機能を発揮できなくなるおそれがある。
【0022】
(ワックス)
マスク層に含有するワックスは、融点が80℃以上のワックスである。融点が80℃未満のワックスを使用すると、一次転写時に精細な転写(印字、印画)ができなくなり、二次転写時にマスク層によって転写されなかった部分の周囲の見た目が悪くなる。マスク層に含有するワックスの含有量は、マスク層固形分中の10重量%以上50重量%以下が好ましい。含有量が10重量%を下回ると、一次転写時のマスク層の転写性が悪くなり、中間転写記録媒体上に意図した形状の転写をすることができないおそれがある。一方、含有量が50重量%を超えると、二次転写時にマスク層が被転写体へ転写され易くなり、マスク層としての機能を発揮できなくなるおそれがある。
【0023】
マスク層に含有するワックスは、融点が80℃以上のワックスであれば、任意のワックスが使用可能であり、1種のワックスを単独で使用してもよいし、2種以上のワックスを併用してもよい。融点が80℃以上のワックスの中でも、炭化水素系合成ワックスであるフィッシャー・トロプシュワックス又はポリエチレンワックスは融点が安定しているため、特に好ましく用いることができる。
【0024】
(フッソ系粒子)
マスク層に含有する粒子としてはフッソ系粒子が好ましい。フッソ系粒子としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂粒子、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-ビニリデンフルオライド(THV)樹脂粒子、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)系樹脂粒子、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)系樹脂粒子、クロロトリフルオロエチレン-エチレン(ECTFE)系樹脂粒子、テトラフルオロエチレン-エチレン(ETFE)系樹脂粒子、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン(FEP)系樹脂粒子、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)系樹脂粒子等が挙げられる。これらの中でも、二次転写時にマスク層が被転写体に転写されないマスク性能の向上、及び一次転写時のマスク層のキレ性向上に効果が大きいため、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂粒子が好ましい。
【0025】
マスク層に含有するフッソ系粒子の含有量は、マスク層固形分中の20重量%以上70重量%以下が好ましい。含有量が20重量%を下回ると、一次転写時のマスク層のキレ性が低下するおそれがある。含有量が70重量%を超えると中間転写記録媒体へのマスク層の接着力が不足し、マスク層の中間転写記録媒体への転写不良が発生するおそれがある。
【0026】
マスク層に含有するフッソ系粒子の平均粒子径は0.5μm以上4.0μm以下であることが好ましい。平均粒子径が0.5μmを下回ると、フッソ系粒子を含有させた効果が得られず、一時転写時のマスク層のキレ性が低下するおそれがある。一方、平均粒子径が4.0μmを超えると、一次転写時のマスク層の転写性が悪化し、転写しようとしたマスク層の一部が中間転写記録媒体の受像層に転写されなくなるおそれがある。フッソ系粒子の平均粒子径は、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。
【0027】
マスク層厚さ(乾燥後厚さ、以下同様)は、0.5μm以上1.5μm以下であることが好ましい。マスク層厚みが0.5μmを下回ると、二次転写時のマスク性能が低下し、マスク層を転写した部分の中間転写記録媒体の転写層の一部が被転写体に転写されるおそれがある。一方、マスク層厚みが1.5μmを超えると、一次転写時のマスク層のキレ性と転写性が悪化し、転写しようとしたマスク層の一部が中間転写記録媒体の受像層に転写されなくなるおそれがある。
【0028】
マスク層は、上記材料を適当な溶媒へ分散又は溶解して、塗工液とし、ロールコート法、リバースロールコート法、グラビアコート法、リバースグラビアコート法、バーコート法及びロッドコート法等の公知の手段により、基材上に塗工して塗膜を形成させ、これを乾燥させることにより形成できる。
【0029】
マスク層には、マスク層に要求される各種の機能を阻害しない範囲内であれば、各種の添加剤を含有しても良い。前記添加剤としては、可塑剤、消泡剤、界面活性剤、酸化防止剤、分散剤、粘着付与剤などがあげられる。
【0030】
(耐熱滑性層)
本発明のマスク層を有する熱転写記録媒体では、マスク層を設けた面とは反対側の基材面に耐熱滑性層を設けることが好ましい。耐熱滑性層を設けることにより、中間転写記録媒体への印字時のプリンターの転写ヘッドによる熱転写記録媒体の基材ダメージを少なくすることができる。基材がダメージを受けると、印字時に転写ヘッドが基材に貼りついてスムーズに移動できなくなる、所謂スティックが発生することがある。耐熱滑性層を設けることにより、このようなスティックを防止することができる。
【0031】
耐熱滑性層の材料としては、熱転写記録媒体で従来から採用されているものが特に制限無く使用できる。サーマルヘッドに対する耐熱性、高温時での動摩擦係数を小さくする点やコストを考慮すると、これらの中でも、シリコーン変性ウレタン樹脂、シリコーン変性アクリル樹脂、シリコーン樹脂、またはその混合物が、耐熱滑性層の材料として特に好ましい。
【0032】
耐熱滑性層には、粒子、滑剤、帯電防止剤など、その他の添加剤を配合してもよい。
【0033】
耐熱滑性層の厚み(乾燥後厚み、以下同様)は、良好なスティック防止効果を達成しかつ熱伝導性の悪化を防止する点から、0.05~ 0.80μmが好ましい。耐熱滑性層の厚みが0.05μm未満では、耐熱性が不十分で印字時にスティックが発生することや、基材が溶融して印字不能となることがある。0.80μmを超えると、熱伝導性が悪化して印字に支障をきたすことがある。
【0034】
耐熱滑性層の形成方法は、マスク層と同様の方法が使用可能である。
【0035】
(中間転写記録媒体)
本発明の熱転写記録媒体のマスク層を中間転写記録媒体の受像層上に転写することによって、マスク層が転写された部分の中間転写記録媒体の転写層を、中間転写記録媒体からカードなどの被転写体へ再転写(二次転写)しないようにすることができる。マスク層が転写された部分の中間転写記録媒体の転写層とは、後述する中間転写記録媒体例では、受像層、剥離層、及び熱転写記録媒体から転写された色材層により受像層上に作製された印字や印画のうち、マスク層が転写された部分である。
【0036】
本発明の熱転写記録媒体のマスク層を使用する中間転写記録媒体としては、マスク層を受像することができる受像層を有するものであれば、任意の中間転写記録媒体が使用可能であるが、中間転写記録媒体からの受像層の再転写性が悪い被転写体に対しても、良好な再転写を実現するという観点から、基材からの受像層の剥離力を調整することが可能な中間転写記録媒体であることが好ましい。このような中間転写記録媒体としては、受像層と基材間に基材からの受像層の剥離力を調整するための剥離層を有する中間転写記録媒体であることが好ましい。図3に、基材(20)と受像層(22)間に剥離層(21)を設けた中間転写記録媒体の模式図を示す。このような中間転写記録媒体では、基材(20)、剥離層(21)、及び受像層(22)が必須の構成要素であり、必要に応じて、前記基材(20)の剥離層(21)を設けた面とは反対側の基材(20)面上に耐熱滑性層などの背面層を、また、剥離層(21)と受像層(22)間に、受像層の受像性能の向上などに効果がある別の層を設けることもできる。
【0037】
(基材)
本発明の熱転写記録媒体とともに使用する中間転写記録媒体の基材としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムなどのポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアミドフィルム、アラミドフィルムその他この種の基材として一般に使用されている各種のプラスチックフィルムが使用できる。また、コンデンサーペーパーのような高密度の薄い紙も使用できる。基材の厚さは通常は5~30μm程度であり、熱伝達を良好にするためには、5~20μmの範囲が好ましい。
【0038】
(剥離層)
本発明の熱転写記録媒体とともに使用する中間転写記録媒体は、基材と後述する受像層の間に、剥離層を有することが好ましい。本発明の熱転写記録媒体とともに使用する中間転写記録媒体は、カードなどの被転写体の材質に関わらず、中間転写記録媒体から被転写体への転写層の転写性が良好なものであることが好ましい。カードなどの被転写体の材質に関わらず、中間転写記録媒体から被転写体への転写層の転写性が良好なものするためには、中間転写記録媒体からの剥離層の剥離力が、小さいことが好ましい。
【0039】
被転写体がカードである場合に、中間転写記録媒体からの受像層などの転写層の転写性が最も悪い部分は、カード表面に磁気層を印刷又は貼り付けた部分であることが多い。カード表面の磁気層は、カード所有者の情報などを書き込むために設けられた層である。このような磁気層上に、中間転写記録媒体を使用した二次転写により、中間転写記録媒体の受像層及び受像層上に熱転写記録媒体で作製された印字・印画を二次転写するためには、下記測定方法で測定した中間転写記録媒体からの剥離層の剥離力を0.08N/18mm以上0.9N/18mm以下とすることが好ましく、より好ましくは、0.2N/18mm以上0.6N/18mm以下である。中間転写記録媒体からの剥離層の剥離力が0.08N/18mm未満になると、被転写体であるカードの周囲から転写した転写層がバリ状になって飛び出すおそれがあるとともに、使用前に中間転写記録媒体から剥離層が剥離するおそれがあるので、好ましくない。一方、0.9N/18mmを超えると、磁気層上に転写した転写層にヒビ割れが生じやすくなるとともに、特に剥離力が大きくなると、中間転写記録媒体から被転写体への二次転写ができず、転写不良になるおそれがあるので、好ましくない。
【0040】
(中間転写記録媒体からの剥離層の剥離力の測定方法)
中間転写記録媒体を1インチ(25.4mm)幅にカットする。中間転写記録媒体の受像層面に、メンディングテープ「Scotch(登録商標)メンディングテープ810(住友スリーエム株式会社製)幅18mm」の粘着面を、中間転写記録媒体の長手方向の一方の端部を除いて、中間転写記録媒体とメンディングテープが平行となるように、かつ、メンディングテープが中間転写記録媒体からはみ出さないように貼り付ける。なお、受像層と粘着面の貼り付けの際には、受像層と粘着面間に気泡が入らないように貼り付ける。中間転写記録媒体とメンディングテープを2Kgのローラーを2往復させる方式で圧着し、圧着後室温で24時間放置する。中間転写記録媒体とメンディングテープを貼り合せた部分が重力方向下側となるようにして、中間転写記録媒体とメンディングテープのそれぞれのつまみ部分(一方の端部の未貼り合わせ部分)を測定機の固定具で保持する。次に測定機を作動させて、剥離力を測定する。剥離力測定は、新東科学(株)製引張試験機 HEIDON-14を用いT剥離モード(90度剥離)で、剥離速度3064mm/分の条件にて、25℃、60%RHの雰囲気下で測定する。
【0041】
本発明の熱転写記録媒体とともに使用する中間転写記録媒体では、剥離層の材料成分を調整することにより、中間転写記録媒体からの剥離層剥離力を、上記の好ましい範囲とすることができる。
【0042】
剥離層は、バインダーとなる樹脂と粒子を含有した層とすることが好ましい。なお、本発明において、バインダーとは、塗工により形成された各層の成分であり、各層はバインダーのみで構成することもでき、各層に着色剤、粒子、添加剤等の成分を含有する場合にはバインダーは、これらの含有物を各層中に保持するため使用する成分である。剥離層に求められる性質は、加熱することによって、基材から剥離しやすくなる熱時剥離性を有し、転写性が低い磁気層などの被転写体に転写する場合にも、受像層などの転写層を被転写体に確実に転写する一方、加熱されるまでは基材から受像層を剥離することなく保持することできる受像層保持性能の両方を満たすことである。
【0043】
このような熱時剥離性と受像層保持性能を合わせ持つ性能を発揮できる材料であれば、剥離層のバインダーとして使用可能であるが、剥離層の基材と受像層に対する密着力を付与する性能を持ち、含有量を調節することにより加熱時の基材からの剥離層の剥離力を調節することが可能な剥離力調整成分と、剥離層に膜強度を付与する成分である膜強度付与成分の混合物であることが好ましい。剥離力調整成分としては、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエステルウレタンが例示され、膜強度付与成分としては、アクリル、エポキシ、ポリエステル、塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体などの樹脂成分が例示される。これらの中でも、ポリエステルウレタンとアクリルの混合物が、熱時剥離性と受像層保持性能ともに優れた性能を発揮するので、特に好適に用いることができる。
【0044】
剥離層のバインダーとして、ポリエステルウレタンを含有する場合、剥離層固形中のポリエステルウレタンの含有割合は、0.8重量%以上4.0重量%以下であることが好ましく、より好ましくは1.8重量%以上3.2重量%以下である。含有割合が0.8重量%未満になると、被転写体であるカードの周囲から転写した転写層がバリ状になって飛び出すおそれがあるとともに、剥離力が軽くなり過ぎて、未使用時に剥離層が上層の受像層とともに粉状になって、基材から脱落する所謂粉落ちが発生するおそれがあり、剥離層に十分なキレ性を付与することができず、二次転写時に、面状剥離が発生するおそれもある。剥離層のキレ性とは、二次転写により剥離層が基材から剥離する際に、被転写体へ転写される部分の剥離層と被転写体へ転写されずに基材に残る剥離層との界面で、剥離層が切れる性能である。また、面状剥離とは、二次転写時に、被転写体へ転写される部分の剥離層と、被転写体へ転写されずに基材に残る剥離層が切れずに、本来転写されるべきでない部分の剥離層まで、被転写体へ転写される現象である。一方、含有割合が4.0重量%を超えると、磁気層上に転写した転写層にヒビ割れが生じやすくなるとともに、さらに剥離力が大きくなると、中間転写記録媒体から被転写体への二次転写ができず、転写不良になるおそれがあるので、好ましくない。
【0045】
剥離層のバインダーとしてアクリルを含有する場合、剥離層固形中のアクリルの含有割合は、10重量%以上50重量%以下であることが好ましい。含有割合が10重量%未満になると、剥離層の膜強度が不足し、基材からの剥離層の剥離が不安定になることによって、剥離層の転写不良が発生するおそれがある。一方、含有割合が50重量%を超えると、剥離層の膜強度が強くなり過ぎて、剥離層に十分なキレ性を付与することができず、二次転写時に、面状剥離が発生するおそれがある。
【0046】
剥離層をバインダーのみで構成すると、二次転写時の剥離層のキレ性が不足して、面状剥離が発生するおそれある。剥離層へバインダーに加えて粒子を含有させることで、剥離層に十分なキレ性を付与することができる。剥離層にキレ性を付与できる粒子としては、コロイダルシリカ、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、樹脂粒子(アクリル、メラミン、シリコーン等)などを例示することができる。これらの中でも、優れたキレ性を付与することができること、及び剥離層の透明性が確保しやすいという点で、コロイダルシリカを使用することが好ましい。
【0047】
剥離層にコロイダルシリカを含有する場合、剥離層固形中のコロイダルシリカの含有割合は、50重量%以上90重量%以下であることが好ましい。含有割合が50重量%未満になると、二次転写時に剥離層に十分なキレ性を付与することができず、面状剥離が発生するおそれがある。一方、含有割合が90重量%を超えると、剥離層の膜強度が不足し、転写不良が発生するおそれがある。コロイダルシリカの平均粒子径は、10nm以上50nm以下が好ましい。平均粒子径が10nm未満になると、剥離層に十分なキレ性を付与することできない。一方、平均粒子径が50nmを超えると、剥離層が白濁するので、好ましくない。本発明のコロイダルシリカの平均粒子径は、BET法による比表面積から換算する方法を利用して測定した値であり、粒子を真球と見なして、以下の式で平均粒子径を計算した値である。d=6000/(S×ρ)( d:平均粒子径(nm)、S:比表面積(m/g)、 ρ:真比重(g/cm))
【0048】
剥離層の厚さ(乾燥時厚さ、以下同様)は、0.5μm以上3.0μm以下が好ましい。剥離層の厚さが0.5μm未満になると、基材からの剥離層の剥離が不安定となり、中間転写記録媒体から被転写体への転写層の転写不良が発生するおそれがある。一方、剥離層の厚さが3.0μmを超えると、剥離層のキレ性が低下し、面状剥離が発生し易くなる。
【0049】
剥離層は、上記材料を適当な溶媒へ分散又は溶解して、塗工液とし、ロールコート法、リバースロールコート法、グラビアコート法、リバースグラビアコート法、バーコート法及びロッドコート法等の公知の手段により、基材上に塗工して塗膜を形成させ、これを乾燥させることにより形成できる。
【0050】
剥離層には、剥離層に要求される各種の機能を阻害しない範囲内であれば、各種の添加剤を含有しても良い。前記添加剤としては、可塑剤、消泡剤、界面活性剤、酸化防止剤、分散剤などがあげられる。
【0051】
(受像層)
本発明の熱転写記録媒体とともに使用する中間転写記録媒体は、剥離層上に直接、或いは他の層を介して受像層を設ける。受像層は最表層となる層であり、色材層を設けた熱転写記録媒体から一次転写される色材層を受像して、表面に熱転写記録媒体の色材で形成された印字や印画が設けられる層である。受像層は、本発明の熱転写記録媒体から熱転写するマスク層も受像する。また、受像層は、二次転写時には被転写体に対して接着性を発現して、被転写体へ接着する層でもある。
【0052】
したがって、受像層に求められる性能は、熱転写記録媒体から熱転写(一次転写)される色材層及びマスク層を確実に受像して表面に定着させる受像性能と、二次転写で、受像した印字、印画とともに、被転写体に転写されて、被転写体上に定着するための被転写体への転写性である。上記のように、本発明は、中間転写記録媒体の受像層の転写性が最も悪いカード表面に磁気層を印刷した部分にも、中間転写記録媒体からの二次転写を想定した発明である。したがって、本発明の熱転写記録媒体とともに用いる中間転写記録媒体の受像層は、このような磁気層に対しても、二次転写において十分な転写性を有する層である。
【0053】
受像層には加熱によって接着性を発現する樹脂をバインダーとして、好適に用いることができ、具体的には、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂等が例示され、これらの1種又は2種以上を含有することができる。
【0054】
受像層の厚さ(乾燥時厚さ、以下同様)は、0.3μm以上2.0μm以下であることが好ましい。受像層の厚さが0.3μm未満になると、熱転写記録媒体からの一次転写時のマスク層、色材層の転写性が低下するおそれがある。一方、受像層の厚さが2.0μmを超えると、受像層のキレ性が低下し、二次転写時に面状剥離が発生し易くなる。
【0055】
受像層は、上記材料を適当な溶媒へ分散又は溶解して、塗工液とし、ロールコート法、リバースロールコート法、グラビアコート法、リバースグラビアコート法、バーコート法及びロッドコート法等の公知の手段により、基材上に塗工して塗膜を形成させ、これを乾燥させることにより形成できる。
【0056】
受像層には、受像層に要求される各種の機能を阻害しない範囲内であれば、各種の添加剤を含有しても良い。前記添加剤としては、可塑剤、消泡剤、界面活性剤、酸化防止剤、分散剤、粘着付与剤などがあげられる。
【0057】
〔色材層付熱転写記録媒体〕
本発明の熱転写記録媒体であるマスク層付熱転写記録媒体を使用することができる中間転写記録媒体は、色材層を有する熱転写記録媒体を用いて、受像層上に一次転写した印字、印画を被転写体に二次転写することにより、被転写体上に印字、印画を形成することができる。また、中間転写記録媒体の受像層に一次転写された色材層上に、さらに本発明のマスク層を一次転写することにより、中間転写記録媒体上の受像層をカードなどの被転写体へ転写する際には、マスク層が転写された部分の色材層のみを被転写体に転写されないようにすることができる。
【0058】
本発明の熱転写記録媒体とともに用いることができる色材層付熱転写記録媒体(以下、色材層付熱転写記録媒体と言う。)は、少なくとも1層の色材層を基材の一方の面上に設けた熱転写記録媒体である。色材層付熱転写記録媒体の一例である色材層付熱転写記録媒体Cを図2に示す。色材層付熱転写記録媒体Cは、図2のように、基材(30)の一方の面に色材層(31)が積層された熱転写記録媒体であり、基材(30)のもう1方の面に耐熱滑性層(32)を有することが好ましい。また、色材層付熱転写記録媒体は、色材層(31)と基材(30)の間に更に離型層を有していてもよいし、色材層(31)を複数の層で形成してもよい。
【0059】
(基材)
色材層付熱転写記録媒体に使用する基材としては、本発明の熱転写記録媒体に使用することができるものとして、上記したものと同様の基材が使用可能である。また、上記のように、同一基材上の長手方向面順次に、本発明のマスク層と色材層を設けてもよい。
【0060】
(色材層)
基材と色材層間に離型層等を設けない場合には、色材層は基材に直接積層される層である。色材層は、バインダーとなる樹脂に色材である顔料又は染料に加えることに構成することができる。色材層には、転写時の色材層のキレ性向上等を目的として粒子を含有してもよいし、転写性等の向上を目的としてワックスを含有してもよい。また、顔料を使用する場合には、顔料を色材層中に分散させる目的で、顔料分散剤を使用することが好ましい。
【0061】
(樹脂成分)
色材層に含有する樹脂成分は、任意の樹脂が使用可能であるが、中間転写記録媒体への一次転写時の色材層のキレ性、受像層への接着性、及び二次転写時の被転写体への接着性を考慮すると、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等の接着性に優れた樹脂を使用することが好ましい。
【0062】
色材層に含有する樹脂成分の含有割合は、色材層固形分中の5重量%以上90重量%以下が好ましい。樹脂成分の含有割合が5重量%を下回ると、色材層の膜強度が不足し、未使用時に色材層の一部が粉状になって色材層や基材から脱落する所謂粉落ちが発生し易くなる。一方、樹脂成分の含有量が90重量%を超えると、色材の色にもよるが、含有できる顔料及び/又は染料の量が少ないため、十分な印字濃度が得られない。
【0063】
色材層厚さ(乾燥時厚さ、以下同様)は、0.3μm以上2.0μm以下であることが好ましい。色材層厚さが0.3μmを下回ると、色材層を転写することによって作製した印字、印画に十分な濃度が得られない。一方、色材層厚さが2.0μmを超えると、色材層を転写した部分の転写層の二次転写時のキレ性が低下し、転写層の面状剥離が発生しやすくなる。
【0064】
色材層は、上記材料を適当な溶媒へ分散又は溶解して、塗工液とし、マスク層と同様の公知の手段により、基材上に塗工して塗膜を形成させ、これを乾燥させることにより形成できる。
【0065】
色材層に要求される各種の機能を阻害しない範囲内であれば、色材層には、各種の添加剤を含有しても良い。前記添加剤としては、可塑剤、消泡剤、界面活性剤、酸化防止剤、分散剤、粘着付与剤などがあげられる。
【0066】
(耐熱滑性層)
色材層を有する熱転写記録媒体でも、色材層を設けた面とは反対側の基材面に耐熱滑性層を設けることが好ましい。耐熱滑性層の材料、層厚さとしては、マスク層を設ける熱転写記録媒体と同様のものが使用可能であり、耐熱滑性層の形成方法も、前記マスク層を設ける熱転写記録媒体の耐熱滑性層と同様の方法が使用可能である。
【0067】
(被転写体)
本発明のマスク層付熱転写記録媒体を使用して中間転写記録媒体の受像層に作製した印字、印画を二次転写する被転写体としては、様々な種類の被転写体が使用可能であるが、特にカード類が被転写体として好適である。カード類の材質としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン-co-1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PETG)等が例示される。また、カード表面に磁気層を印刷又は貼り付けした部分は、中間転写記録媒体からの受像層などの転写層の転写性が最も悪くなる。このような磁気層への転写性を改善するためには、中間転写記録媒体の剥離層剥離力を低くすることが有効であるが、このような剥離層剥離力を低くした中間転写記録媒体であっても、本発明のマスク層付熱転写記録媒体を使用すれば、マスク層が被転写体に強く接着することがなく、マスク層を転写した部分の中間転写記録媒体から、被転写体であるカード等へ、マスク層及びマスク層が転写された部分の中間転写記録媒体の受像層などの転写層が転写されることはない。
【0068】
(実施例)
本発明を、以下の実施例、比較例を用いて、更に具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。以下、各材料の配合量について、部と表示するものについては、特に断りがない限り、重量部を示すものとする。
【0069】
(マスク層付熱転写記録媒体)
(実施例1)
(耐熱滑性層)
(耐熱滑性層用プレミックスインク)
下記処方の材料を混練して耐熱滑性層用プレミックスインクを作製した。
シリコーンウレタン樹脂溶液(固形分25%) 32.33部
メラミン・ホルムアルデヒド樹脂粒子
(平均粒子径:0.2μm、固形分100%) 0.30部
メチルエチルケトン 67.37部
次に、下記処方の材料を混練して作製した耐熱滑性層用インクを、乾燥後の厚みが0.2μmになるように、基材として用いた厚さ4.5μmのPETフィルム上に塗工、乾燥させて耐熱滑性層を作製した。
(耐熱滑性層用インク)
耐熱滑性層用プレミックスインク 29.75部
ポリイソシアネート溶液(固形分45%) 4.50部
メチルエチルケトン 55.75部
トルオール 10.00部
【0070】
(マスク層)
下記処方の材料を混練してマスク層インクを作製し、前記基材の耐熱滑性層を積層した面とは反対側の基材上に乾燥後の厚みが0.7μmになるよう塗工、乾燥させてマスク層を作製して、実施例1のマスク層付熱転写記録媒体を得た。
PTFE樹脂粒子(平均粒子径2.8μm、固形分100%) 2.14部
フィッシャートロプシュワックス(融点105℃、固形分100%) 0.92部
セルロースアセテートプロピオネート(分子量25000、Tg142℃、固形分100%) 1.64部
トルエン 31.72部
イソプロピルアルコール 13.59部
【0071】
(実施例2)
マスク層インクを下記の処方に変更した以外は、実施例1のマスク層付熱転写記録媒体と同様の方法で実施例2のマスク層付熱転写記録媒体を得た。
PTFE樹脂粒子(平均粒子径2.8μm、固形分100%) 2.08部
フィッシャートロプシュワックス(融点105℃、固形分100%) 0.89部
セルロースアセテートプロピオネート(分子量25000、Tg142℃、固形分100%) 2.97部
トルエン 30.85部
イソプロピルアルコール 13.21部
【0072】
(実施例3)マスク層インクを下記の処方に変更した以外は、実施例1のマスク層付熱転写記録媒体と同様の方法で実施例3のマスク層付熱転写記録媒体を得た。
PTFE樹脂粒子(平均粒子径2.8μm、固形分100%) 1.19部
フィッシャートロプシュワックス(融点105℃、固形分100%) 1.19部
セルロースアセテートプロピオネート(分子量25000、Tg142℃、固形分100%) 3.56部
トルエン 30.85部
イソプロピルアルコール 13.21部
【0073】
(実施例4)マスク層インクを下記の処方に変更した以外は、実施例1のマスク層付熱転写記録媒体と同様の方法で実施例4のマスク層付熱転写記録媒体を得た。
PTFE樹脂粒子(平均粒子径2.8μm、固形分100%) 4.15部
フィッシャートロプシュワックス(融点105℃、固形分100%) 1.49部
セルロースアセテートプロピオネート(分子量25000、Tg142℃、固形分100%) 0.30部
トルエン 30.85部
イソプロピルアルコール 13.21部
【0074】
(実施例5)
マスク層インクを下記の処方に変更した以外は、実施例1のマスク層付熱転写記録媒体と同様の方法で実施例5のマスク層付熱転写記録媒体を得た。
PTFE樹脂粒子(平均粒子径2.8μm、固形分100%) 2.37部
フィッシャートロプシュワックス(融点105℃、固形分100%) 0.60部
セルロースアセテートプロピオネート(分子量25000、Tg142℃、固形分100%) 2.97部
トルエン 30.85部
イソプロピルアルコール 13.21部
【0075】
(実施例6)
マスク層インクを下記の処方に変更した以外は、実施例1のマスク層付熱転写記録媒体と同様の方法で実施例6のマスク層付熱転写記録媒体を得た。
PTFE樹脂粒子(平均粒子径2.8μm、固形分100%) 1.96部
フィッシャートロプシュワックス(融点105℃、固形分100%) 2.97部
セルロースアセテートプロピオネート(分子量25000、Tg142℃、固形分100%) 1.01部
トルエン 30.85部
イソプロピルアルコール 13.21部
【0076】
(実施例7)マスク層インクを下記の処方に変更した以外は、実施例1のマスク層付熱転写記録媒体と同様の方法で実施例7のマスク層付熱転写記録媒体を得た。
PTFE樹脂粒子(平均粒子径2.8μm、固形分100%) 1.13部
フィッシャートロプシュワックス(融点105℃、固形分100%) 1.19部
セルロースアセテートプロピオネート(分子量25000、Tg142℃、固形分100%) 3.62部
トルエン 30.85部
イソプロピルアルコール 13.21部
【0077】
(実施例8)マスク層インクを下記の処方に変更した以外は、実施例1のマスク層付熱転写記録媒体と同様の方法で実施例8のマスク層付熱転写記録媒体を得た。
PTFE樹脂粒子(平均粒子径2.8μm、固形分100%) 4.22部
フィッシャートロプシュワックス(融点105℃、固形分100%) 1.48部
セルロースアセテートプロピオネート(分子量25000、Tg142℃、固形分100%) 0.24部
トルエン 30.85部
イソプロピルアルコール 13.21部
【0078】
(実施例9)マスク層インクを下記の処方に変更した以外は、実施例1のマスク層付熱転写記録媒体と同様の方法で実施例9のマスク層付熱転写記録媒体を得た。
PTFE樹脂粒子(平均粒子径2.8μm、固形分100%) 2.44部
フィッシャートロプシュワックス(融点105℃、固形分100%) 0.54部
セルロースアセテートプロピオネート(分子量25000、Tg142℃、固形分100%) 2.97部
トルエン 30.85部
イソプロピルアルコール 13.21部
【0079】
(実施例10)
マスク層インクを下記の処方に変更した以外は、実施例1のマスク層付熱転写記録媒体と同様の方法で実施例10のマスク層付熱転写記録媒体を得た。
PTFE樹脂粒子(平均粒子径2.8μm、固形分100%) 1.78部
フィッシャートロプシュワックス(融点105℃、固形分100%) 3.03部
セルロースアセテートプロピオネート(分子量25000、Tg142℃、固形分100%) 1.13部
トルエン 30.85部
イソプロピルアルコール 13.21部
【0080】
(実施例11)
フィッシャートロプシュワックス(融点105℃)をマイクロクリスタリンワックス融点(融点84℃)に変更した以外は、実施例1のマスク層付熱転写記録媒体と同様の方法で実施例11のマスク層付熱転写記録媒体を得た。
【0081】
(比較例1)マスク層インクを下記の処方に変更した以外は、実施例1のマスク層付熱転写記録媒体と同様の方法で比較例1のマスク層付熱転写記録媒体を得た。
PTFE樹脂粒子(平均粒子径2.8μm、固形分100%) 3.56部
セルロースアセテートプロピオネート(分子量25000、Tg142℃、固形分100%) 2.38部
トルエン 30.85部
イソプロピルアルコール 13.21部
【0082】
(比較例2)
マスク層インクを下記の処方に変更した以外は、実施例1のマスク層付熱転写記録媒体と同様の方法で比較例2のマスク層付熱転写記録媒体を得た。
PTFE樹脂粒子(平均粒子径2.8μm、固形分100%) 3.56部
フィッシャートロプシュワックス(融点105℃、固形分100%) 2.38部
トルエン 30.85部
イソプロピルアルコール 13.21部
【0083】
(比較例3)マスク層インクを下記の処方に変更した以外は、実施例1のマスク層付熱転写記録媒体と同様の方法で比較例3のマスク層付熱転写記録媒体を得た。
フィッシャートロプシュワックス(融点105℃、固形分100%) 2.97部
セルロースアセテートプロピオネート(分子量25000、Tg142℃、固形分100%) 2.97部
トルエン 30.85部
イソプロピルアルコール 13.21部
【0084】
(比較例4)フィッシャートロプシュワックス(融点105℃)をマイクロクリスタリンワックス融点(融点75℃)に変更した以外は、実施例1のマスク層付熱転写記録媒体と同様の方法で比較例4のマスク層付熱転写記録媒体を得た。
【0085】
(色材層付熱転写記録媒体)
(耐熱滑性層)
(耐熱滑性層用プレミックスインク)
実施例1のマスク層付熱転写記録媒体に使用した耐熱滑性層用インクを、基材として用いた4.5μmのPETフィルムの上に乾燥後の厚みが0.20μmになるよう調整して前記基材上に塗工、乾燥させて耐熱滑性層を作製した。
【0086】
(色材層)
下記処方の材料を混練して作製した色材層インクを、乾燥後の厚みが0.7μmになるように、前記基材の耐熱滑性層を積層した面とは反対側の基材上に塗工、乾燥させて色材層を作製した。
アクリル樹脂(分子量30000、Tg75℃、固形分100%) 4.96部
エポキシ樹脂(分子量1650、軟化点97℃、エポキシ当量925、固形分100%) 1.65部
ポリエステル系高分子分散剤 (固形分100%) 2.99部
カーボンブラック 21.52部
メチルエチルケトン 35.77部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 3.11部
【0087】
(中間転写記録媒体1)
下記処方の材料を混練して剥離層インク、及び受像層インクを作製し、厚み12μmのPET基材の一方の面上に乾燥後厚みが1.1μmになるよう剥離層インク1を塗工、乾燥させて剥離層を作製し、剥離層上に乾燥後の厚みが1.0μmになるよう受像層インクを塗工、乾燥させて受像層を作製して、中間転写記録媒体1を得た。
(各層用塗工液の準備)
(剥離層インク1)
有機溶媒分散コロイダルシリカ(固形分30%平均粒子径12nm) 46.20部
飽和共重合ポリエステルウレタン樹脂(分子量32000、Tg-22℃、固形分30%) 0.66部
アクリル樹脂(分子量25000、Tg105℃、固形分100%) 2.97部
アクリル樹脂(分子量28000,Tg105℃、固形分100%) 2.97部
メチルエチルケトン 45.31部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 1.89部
【0088】
(受像層インク)
アクリル樹脂(分子量25000、Tg105℃、固形分100%) 15.00部
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(分子量3800、軟化点144℃、エポキシ当量2850、固形分100%) 4.00部
塩化ビニル・酢酸ビニル共重合物(分子量50000、Tg70℃、固形分100%)
1.00部
メチルエチルケトン 77.60部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 2.40部
【0089】
(中間転写記録媒体2)
剥離層インク1を下記処方の剥離層インク2に変更した以外は、中間転写記録媒体1と同様の方法で、中間転写記録媒体2を得た。
(剥離層インク2)
有機溶媒分散コロイダルシリカ(固形分30%平均粒子径12nm) 46.20部
飽和共重合ポリエステルウレタン樹脂(分子量32000、Tg-22℃、固形分30%) 1.35部
アクリル樹脂(分子量25000、Tg105℃、固形分100%) 2.97部
アクリル樹脂(分子量28000,Tg105℃、固形分100%) 2.97部
メチルエチルケトン 45.31部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 1.89部
【0090】
(中間転写記録媒体3)
剥離層インク1を下記処方の剥離層インク3に変更した以外は、中間転写記録媒体1と同様の方法で、中間転写記録媒体3を得た。
(剥離層インク3)
有機溶媒分散コロイダルシリカ(固形分30% 平均粒子径12nm) 45.58部
飽和共重合ポリエステルウレタン樹脂(分子量32000、Tg-22℃、固形分30%) 2.01部
アクリル樹脂(分子量25000、Tg105℃、固形分100%) 2.93部
アクリル樹脂(分子量28000,Tg105℃、固形分100%) 2.93部
メチルエチルケトン 44.69部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 1.86部
【0091】
(中間転写記録媒体4)
剥離層インク1を下記処方の剥離層インク4に変更した以外は、中間転写記録媒体1と同様の方法で、中間転写記録媒体4を得た。
(剥離層インク4)
有機溶媒分散コロイダルシリカ(固形分30% 平均粒子径12nm) 45.58部
飽和共重合ポリエステルウレタン樹脂(分子量32000、Tg-22℃、固形分30%) 2.55部
アクリル樹脂(分子量25000、Tg105℃、固形分100%) 2.93部
アクリル樹脂(分子量28000,Tg105℃、固形分100%) 2.93部
メチルエチルケトン 44.69部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 1.86部
【0092】
(中間転写記録媒体5)剥離層インク1を下記処方の剥離層インク5に変更した以外は、中間転写記録媒体1と同様の方法で、中間転写記録媒体5を得た。
(剥離層インク5)
有機溶媒分散コロイダルシリカ(固形分30% 平均粒子径12nm) 46.42部
飽和共重合ポリエステルウレタン樹脂(分子量32000、Tg-22℃、固形分30%) 0.20部
アクリル樹脂(分子量25000、Tg105℃、固形分100%) 2.98部
アクリル樹脂(分子量28000,Tg105℃、固形分100%) 2.98部
メチルエチルケトン 45.52部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 1.90部
【0093】
(中間転写記録媒体6)
剥離層インク1を下記処方の剥離層インク6に変更した以外は、中間転写記録媒体1と同様の方法で、中間転写記録媒体6を得た。
(剥離層インク6)
有機溶媒分散コロイダルシリカ(固形分30% 平均粒子径12nm) 44.94部
飽和共重合ポリエステルウレタン樹脂(分子量32000、Tg-22℃、固形分30%) 3.38部
アクリル樹脂(分子量25000、Tg105℃、固形分100%) 2.89部
アクリル樹脂(分子量28000,Tg105℃、固形分100%) 2.89部
メチルエチルケトン 44.07部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 1.84部
【0094】
(中間転写記録媒体7)剥離層インク1を下記処方の剥離層インク7に変更した以外は、中間転写記録媒体1と同様の方法で、中間転写記録媒体7を得た。
(剥離層インク7)
有機溶媒分散コロイダルシリカ(固形分30% 平均粒子径12nm) 43.32部
飽和共重合ポリエステルウレタン樹脂(分子量32000、Tg-22℃、固形分30%) 6.87部
アクリル樹脂(分子量25000、Tg105℃、固形分100%) 2.78部
アクリル樹脂(分子量28000,Tg105℃、固形分100%) 2.78部
メチルエチルケトン 42.47部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 1.77部
【0095】
(中間転写記録媒体剥離力評価方法)
中間転写記録媒体を1インチ(25.4mm)幅にカットする。中間転写記録媒体の受像層面に、メンディングテープ「Scotch(登録商標)メンディングテープ810(住友スリーエム株式会社製)幅18mm」の粘着面を、中間転写記録媒体の長手方向の一方の端部を除いて、中間転写記録媒体とメンディングテープが平行となるように、かつ、メンディングテープが中間転写記録媒体からはみ出さないように貼り付ける。なお、受像層と粘着面の貼り付けの際には、受像層と粘着面間に気泡が入らないように貼り付ける。中間転写記録媒体とメンディングテープを2Kgのローラーを2往復させる方式で圧着し、圧着後室温で24時間放置する。中間転写記録媒体とメンディングテープを貼り合せた部分が重力方向下側となるようにして、中間転写記録媒体とメンディングテープのそれぞれのつまみ部分(一方の端部の未貼り合わせ部分)を測定機の固定具で保持する。次に測定機を作動させて、剥離力を測定する。剥離力測定は、新東科学(株)製引張試験機 HEIDON-14を用いT剥離モード(90度剥離)で、剥離速度3064mm/分の条件にて、25℃、60%RHの雰囲気下で測定する。以上の方法で、中間転写記録媒体1~7の剥離力を測定した。評価結果を表1に示す。
【0096】
(中間転写記録媒体の転写評価)
中間転写記録媒体1~7のそれぞれの受像層に、上記色材層付熱転写記録媒体を用いて、下記一次転写の印字方法にて所定の印字パターンを転写する。次に、所定の印字パターンが転写された中間転写記録媒体1~7の受像層を、下記二次転写方法で、被転写体であるカード表面へ転写した。二次転写するカードは、材質がPVCで、二次転写する表面の一部に、磁気層(磁気ストライプ)が設けられたカードを使用した。
【0097】
各中間転写記録媒体で作製したカード表面の二次転写により形成した印字を目視、及び拡大率5倍の拡大レンズを使用して確認し、以下の基準により評価した。この評価結果を、表1に示す。
評価基準◎:被転写体を目視確認すると、磁気ストライプ部分を含め被転写体全面にすべ
ての転写層が確実に転写されていた。また、中間転写記録媒体側の転写層の
抜け後には、転写されずに残っている転写層は確認されなかった。
○:被転写体を目視確認すると、磁気ストライプ部分を含め被転写体全面にすべ
ての転写層が確実に転写されているように見えるが、中間転写記録媒体側の
転写層の抜け後には、転写されずに残っている微細な転写層が確認された。
△:被転写体を目視確認すると、磁気ストライプ部分に転写層の微細なヒビ割
れが確認された。または、被転写体であるカードの周囲から転写層がバリ
状に飛び出しているが、5倍の拡大レンズで確認すると、その飛び出し量は
0.5mm未満であった。
×:被転写体を目視確認すると、磁気ストライプ部分に転写層が転写されていな
い部分が確認された。または、被転写体であるカードの周囲から転写層が
バリ状に飛び出しており、5倍の拡大レンズで確認すると、その飛び出し量
は0.5mm以上であった。
【0098】
(一次転写の印字方法)
SATO株式会社製SG-408Rプリンターを用いて、中間転写記録媒体の受像層上に、上記色材層付熱転写記録媒体を使用して、印字速度4inch/秒、エネルギー3B、印字解像度200dpiにて、所定の印刷(印字パターン)を印字する。
【0099】
(二次転写方法)
一次転写により印字パターンを転写した各中間転写記録媒体の受像層面と被転写体が向き合うようにセットして、ロール式熱転写機により、一次転写で受像層上に形成した印字パターンとともに中間転写記録媒体の受像層を、被転写体へ転写する。ロール式熱転写機による転写条件は、転写ロールとして用いるシリコーンゴムロールの表面温度(転写温度):190℃、圧力(転写圧):118N(12kg)、中間転写記録媒体と被転写体の送り速度:35mm/秒とした。
【0100】
(表1)
【0101】
(マスク層付熱転写記録媒体の取扱い性評価)
各実施例、各比較例のマスク層付熱転写記録媒体を幅100mm長さ200mmのシート状にカットし、そのシートを手で揉んで、マスク層の脱落の有無を目視確認し、以下の基準により評価した。この評価結果を、表2に示す。
評価基準◎:手で揉んでも、基材からマスク層が脱落しない。
○:手で揉むと、基材からマスク層がわずかに脱落するが、脱落する量は、マ
スク層の機能に問題ないレベルである。
×:手で揉むと基材からマスク層が脱落する。(マスク層が脱落することにより
、マスク層付熱転写記録媒体を使用して、マスク層を転写しても、マスク層
としての機能が発揮できなくなるレベルである。)
【0102】
(マスク層付熱転写記録媒体の一次転写評価)
中間転写記録媒体2の受像層に、上記色材層付熱転写記録媒体を用いて、上記一次転写の印字方法にて所定の印字パターンを転写した。次に、色材層を転写した受像層上に、各実施例、各比較例のマスク層付熱転写記録媒体を用いて、色材層付熱転写記録媒体の印字パターンとは異なる所定の印字パターンを転写した。但し、マスク層付熱転写記録媒体の取扱い性評価の結果が×となったマスク層付熱転写記録媒体については、一次転写評価を実施しなかった。受像層上にマスク層を転写して形成した印字を目視、及び拡大率5倍の拡大レンズを使用して確認し、以下の基準により評価した。この評価結果を、表2に示す。
評価基準◎:幅0.125mmの細線(印字解像度200dpiのドットで描く最小の線幅)、文字高さ0.875mm(印字解像度200dpiで、縦7ドット×横5ドットで描く文字高さ)の小文字も、欠けることなく精細に印刷できている。
○:幅0.125mmの細線、文字高さ0.875mmの小文字では、印刷に
わずかな欠けがあり、文字の太りや本来エッジになる部分に丸みが生じて
いることが確認できるが、文字は判読可能なレベルである。
×:幅0.125mmの細線、文字高さ0.875mmの小文字では、欠けや潰
れにより、判読不能なレベルである。
【0103】
(マスク層付熱転写記録媒体の二次転写評価)
一次転写評価で、中間転写記録媒体2の受像層に、各実施例、各比較例のマスク層付熱転写記録媒体を用いて、マスク層を転写した中間転写記録媒体を使用して、中間転写記録媒体の受像層を、上記二次転写方法で、被転写体であるカード表面へ転写した。二次転写するカードは、材質がPVCで、二次転写する表面の一部に、磁気ストライプが設けられたカードを使用した。但し、上記一次転写評価の結果が×となったマスク層付熱転写記録媒体で作製した中間転写記録媒体については、二次転写評価を実施しなかった。被転写体上に転写して形成した印字を目視、及び拡大率5倍の拡大レンズを使用して確認し、以下の基準により評価した。この評価結果を、表2に示す。
評価基準◎:マスク層が全く転写されず、マスク層が完全に機能している。
○:マスク層の一部が転写されているが、中間転写記録媒体上でマスク
層が覆っている部分の中間転写記録媒体の受像層や色材層は転写さ
れておらず、マスク層が機能している。
×:マスク層が転写されることによって、中間転写記録媒体上でマスク
層が覆っていた中間転写記録媒体の受像層や色材層も転写され、マ
スク層が機能していない。
【0104】
(表2)
【符号の説明】
【0105】
10…基材(マスク層付熱転写記録媒体)
11…マスク層(マスク層付熱転写記録媒体)
12…耐熱滑性層(マスク層付熱転写記録媒体)
20…基材(中間転写記録媒体)
21…剥離層(中間転写記録媒体)
22…受像層(中間転写記録媒体)
30…基材(色材層付熱転写記録媒体)
31…色材層(色材層付熱転写記録媒体)
32…耐熱滑性層(色材層付熱転写記録媒体)
A…マスク層付熱転写記録媒体
B…中間転写記録媒体
C…色材層付熱転写記録媒体
D…被転写体(カード)
図1
図2
図3
図4
図5