(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091690
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】溶存酸素可視化装置
(51)【国際特許分類】
G01N 33/18 20060101AFI20230623BHJP
G01N 21/77 20060101ALI20230623BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
G01N33/18 D
G01N21/77 B
G01N21/27 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021215538
(22)【出願日】2021-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】516069878
【氏名又は名称】瀧 和夫
(72)【発明者】
【氏名】瀧 和夫
【テーマコード(参考)】
2G054
2G059
【Fターム(参考)】
2G054AA01
2G054AA02
2G054CA08
2G054EA01
2G054FA12
2G054FA32
2G054GA03
2G059AA01
2G059BB04
2G059BB06
2G059CC07
2G059EE01
2G059HH02
(57)【要約】
【課題】 従来の溶存酸素可視化においては、その検査装置において、検査容器部が抱えていた多数の汎用化学器具の組み合わせ、大気の混入、光線屈折・散乱、操作の複雑さなどの不具合が存在していた。本発明においては、上記不具合等の解消、及び、濁水環境条件下での沈水植物表面における光の強度調整可能な溶存酸素可視化装置の開発が求められていた。
【解決手段】本発明に係る溶存可視化装置は検査水及び沈水植物を収納可能で、検水の溶存酸素または過飽和酸素の量を目視確認可能な受光部ユニット、及び、沈水植物の光合成活性度を測る光源部ユニットから構成される溶存酸素可視化装置である。受光部ユニットは上部開放系の検査容器と密閉蓋で、また、光源部ユニットは光源と前記検査容器との光路上に設置の平行光レンズ及び減光制御機構で構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも検査水及び沈水植物を収納可能であって、検査水に溶存あるいは過飽和の酸素の存在とその量を目視確認するための受光部ユニット、及び、沈水植物の光合成活性を作り出すための光源部ユニットから構成されることを特徴とする溶存酸素可視化装置。
【請求項2】
請求項1に記載する受光部ユニットは、上部開放系の検査容器と当該検査容器内を閉鎖系に保つための密閉蓋から成り、検査容器は、その下部に指示液供給機構及び/若しくは調圧機構を連結するための管口を備え、密閉蓋は、前記検査容器の上部を覆い、前記検査容器に収納される検査水と大気との非接触可能な封印状態を作り出すことを特徴とする請求項1記載の溶存酸素可視化装置。
【請求項3】
請求項2に記載する受光部ユニットの検査容器は、少なくとも光源部ユニットに対向する面が透明な平面を持つことを特徴とする請求項1及び請求項2記載の溶存酸素可視化装置。
【請求項4】
請求項2に記載する受光部ユニットの密閉蓋は、凹部の中心部を頂点として下方に向けて傾斜を持つ内面を有すると共に、その頂点部に密閉可能な排気管を持つことを特徴とする請求項1及び請求項2記載の溶存酸素可視化装置。
【請求項5】
請求項4に記載する密閉蓋の頂部に設けられる排気管に目盛りを付し、過飽和酸素の補足及びその計量を行わせるための過飽和酸素捕捉管を兼ねさせるようにしたことを特徴とする請求項1、請求項2及び請求項4記載の溶存酸素可視化装置。
【請求項6】
請求項1に記載する光源部ユニットは光源及び当該光源と対向する前記検査容器との光路上に設けられた平行光レンズから構成されることを特徴とする請求項1記載の溶存酸素可視化装置。
【請求項7】
光源部ユニットの光源と受光部ユニットの検査容器間の光路上に設けられた減光板、受光部ユニットの検査容器内に設置した光量子センサー及び当該センサーの出力に基づいて減光板透過光強度を制御する光量制御器から構成される減光制御機構を備えたことを特徴とする請求項1記載の溶存酸素可視化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海、湖沼、河川などの水、またはその他の液体に溶存あるいは過飽和の酸素の存在を目視で簡便に確認、及びその量を繰り返し計測可能とする溶存酸素計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水中の酸素の存在と酸素の供給過程の体感的確認は人々の環境保全への意識を高める効果が得られる。今まで「水の中に大気と同じ酸素が溶け込んでいる」ことは座学による漠然とした知識に留まり、視覚を通した体感的確認は初等・中等教育では行われて来なかった。その為、児童生徒を含む多くの人々はその存在を知識の咀嚼にまで至っていないのが現状である。
【0003】
以上のことから、近年の沈水植物の活用による水質環境改善事業や養魚場の水質保全事業においても、沈水植物種選定は経験に基づくことが多く、溶存酸素の定量評価手法に拠ることは極稀であった。その為、水質環境改善事業の多くが十分な効果を得るまでに至らず、河川、湖沼、ダム等の沿岸域における沈水植物の環境保全への役割に対する意識は低い状態にあった。
【0004】
水中の溶存酸素の存在確認には、検査容器、ビューレット等の化学器具、溶存酸素酸化・還元剤等の試薬を用いた化学分析手法が長年用いられてきた。(例えば[非特許文献1]参照)ここで、溶存酸素酸化・還元剤等の試薬を化学天秤による秤量やビューレットによる滴定等については不慣れな児童生徒や社会人にとっては容易な作業とは言い難いものであった。
【0005】
沈水植物等の光合成の評価には、沈水植物を封じ込めた密閉検査容器(受光部)に過飽和酸素捕捉容器を組み合わせる必要があり(例えば[非特許文献3]参照)、更なる装置の複雑さを抱えることとなっていた。
【0006】
なお、通常の検査装置においては、検査容器には上部開放の円筒形状を有する透明容器が用いられることから、大気酸素の溶解、容器面での光の屈折・散乱や光むらが生じ易い状態にあった。更に、円筒形検査容器の開放系に対しては大気の溶解を防ぐ為に、ワセリン等の大気溶解遮断剤を用いる必要があった。
【0007】
また、沈水植物への光の強度調節は光源を受光部(検査容器)からの遠近移動によることが多く、その結果、必然的に大きな規模の装置となっていた。(例えば[非特許文献4]参照)
【0008】
更に、従来の比色法及び機器計測法の何れも視覚による溶存酸素の存在、及び沈水植物の光合成過程を連続的に遂次確認することは難しさを伴っていた。(例えば[[特許文献1]参照)
【0009】
加えて、酸素の化学反応を利用した比色法がある。(例えば[特許文献1]、[非特許文献1]参照)これらの簡易定量法及びDOメーター等の器機による精密定量法(例えば[非特許文献1]参照)であって、視覚を通しての溶存酸素の体感的確認手法とは馴染まないものである。
【0010】
また、より簡易なパックテストによる簡易検査においても、一旦検査容器から検水を抽出しなければならないなどの煩雑さを伴うものである。(例えば[非特許文献2]
【0011】
さらに、従来の溶存酸素の確認に使用する2液による検査では、強いアルカリ性薬品の還元剤及び腐食性/刺激性の薬品の酸化剤を調合する必要があるため、薬品の取り扱いに不慣れな児童生徒や社会人にとっては皮膚腐食性/刺激性などの有害性を伴うものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】「工場排水試験法-JIS K0102-2016」,日本工業標準調査会 審議、日本規格協会発行、2016年、pp.91-99.
【非特許文献2】「溶存酸素(DO)キット」,株式会社共立理化学研究所,URL:https://kyoritsu-lab.co.jp/products/az_do_10
【非特許文献3】「水草の光合成実験」,岐阜県河川環境研究所製作,p30.URL:http://www.cc.rd.pref.gifu.jp/fish
【非特許文献4】「光合成の授業におけるICTの活用とその有効性」,理科教育学研究,Vol.54,No.3,2014.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、[0002]から[0010]が抱える問題を解決しようとするものであり、視覚による現象の直接的な確認と過飽和溶存酸素の視覚による定量評価を可能とする簡便な装置の開発が求められていた。
【0015】
従来の検査容器部が抱えていた多数の汎用化学器具の組み合わせ、及び、器具接続部からの漏水、更に、開放容器上面からの大気の混入溶解等がないようにする必要があった。
【0016】
[0008]に記載の検査容器側面での光線屈折・散乱によって光源の光の強度と容器内の光の強度が一致しないため、沈水植物の光合成量との関係を必ずしも明確にされていないなどの欠点の解決が求められていた。
【0017】
上部開放系の検査容器では、大気溶解遮断剤使用後の残留空気や過飽和酸素が気泡となって蓋としての大気溶解遮断膜に付着するのを防ぐ工夫、及び、大気溶解遮断剤使用後の検査容器の洗浄を必要としない工夫が求められていた。
【0018】
更に、[0007]に記載の過飽和酸素量の計測に伴う新たな器具の導入と操作の複雑さに対し、簡便な定量評価を可能とする装置開発及び方法が必要とされていた。
【0019】
[0009]に記載の沈水植物の光合成活性量の調査においては、照射光強度の調整を光源と受光部(検査容器)との距離を変化させなければならないという不具合が存在していた。また、光源からの光が通常拡散光となる等の欠点の克服が求められていた。
【0020】
さらに、濁水を伴うような実務事業においては、光源あるいは受光部(検査容器)を移動させることなく種々の濁水環境条件下での沈水植物表面における光の強度調整可能な装置の開発が必要とされていた。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明に係る装置は、少なくとも検査水及び沈水植物を収納可能であって、検水に溶存あるいは過飽和の酸素の存在とその量を目視確認するための受光部ユニット、及び、沈水植物の光合成活性を作り出すための光源部ユニットから構成される溶存酸素可視化装置である。
【0022】
また、前記溶存酸素可視化装置の受光部ユニットは、上部開放系の検査容器と当該検査容器内を閉鎖系に保つための密閉蓋から成り、検査容器は、その下部に指示液供給機構及び/若しくは調圧機構を連結するための管口を備え、密閉蓋は、前記検査容器の上部を覆い、前記検査容器に収納される検査水と大気との非接触可能な封印状態を作り出す構造とした。
【0023】
加えて、[0022]に記載する受光部ユニットの検査容器は、少なくとも光源部ユニットに対向する面を透明な平面を持つことが望ましい。
【0024】
[0022]に記載する検査容器の密閉蓋は、凹部の中心部を頂点として下方に向けて傾斜を持つ内面を有すると共に、その頂点部に密閉可能な排気管を持つことが望ましい。
【0025】
前記密閉蓋の頂点部に設けられる排気管に目盛りを付し、過飽和酸素の補足及びその計量を行わせるための過飽和酸素捕捉管を兼ねさせるようにしても良い。
【0026】
また、[0021]に記載する光源部ユニットは、光源及び当該光源と対向する前記検査容器との光路上に設けられた平行光レンズから構成される。
【0027】
[0021]に記載する溶存酸素可視化装置においては、光源部ユニットの光源と受光部ユニットの検査容器間の光路上に設けられる減光板、受光部ユニットの検査容器内に設置した光量子センサー及び当該センサーの出力に基づいて減光板透過光強度を制御する光量制御器から構成される減光制御機構を備えても良い。
【発明の効果】
【0028】
本溶存酸素可視化装置は、少なくとも検査水及び沈水植物が収納可能であって、検水に溶存あるいは過飽和の酸素の存在とその量を目視確認するための受光部ユニット、及び、沈水植物の光合成活性を作り出すための光源部ユニットによる使用器具の簡素なユニット化が図られ、因って、容易な操作装置を提供できる。
【0029】
更に、[0022]に記載の検査容器において、密閉蓋を上部開放系の当該検査容器に設置することで、大気との非接触可能な封印状態を容易に作り出すという効果を発揮するものである。また、検査容器下部に設置の管口により、閉鎖系検査容器内への指示液供給及び検査容器内の調圧が、従来の複雑な準備・操作を経ずに容易に可能となるという効果を発揮するものである。
【0030】
また、[0023]に記載の検査容器の一側面が平面であるとから、検査容器内部の光量分布におけるムラが解消され、環境再生や養魚場等での沈水植物種の選定のための定量評価の検査容器として効果を発揮するものである。
【0031】
更に、検査容器に[0024]に記載の密閉蓋の設置により、試験・調査器具の準備の煩雑さ及び大気中の酸素の溶解に関わる問題解決を提供できる。更に、密閉蓋の活用により、開放系の容器に使用されていた大気溶解遮断剤を不要となることから、検査操作の簡素化に効果を発揮するものである。
【0032】
加えて、[0025]に記載の検査容器の密閉蓋への過飽和酸素捕捉管の設置は過飽和酸素量計測操作の直接定量評価の簡便さという効果を発揮するものである。
【0033】
[0026]に記載の光軸平行な光束の形成により、沈水植物の光合成反応が満遍なく行われる条件が作られ、その結果、環境改善水域や養殖池等の水質環境に合わせた再現光強度の効率的な設定の下、沈水植物の選定のための定量評価の効果を発揮するものである。
【0034】
光源部ユニットの光源と受光部ユニットの検査容器間の光路上に設けられた減光板、受光部ユニットの検査容器内に設置した光量子センサー及び当該センサーの出力に基づいて減光板透過光強度を制御する光量制御器から構成される減光制御機構を備えたことにより、光源あるいは受光部(検査容器)を移動させることなく種々の濁水環境条件下での光の強度調整を容易にするという効果を発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の実施形態を示す溶存酸素可視化装置の正面図
【
図2】本発明の実施形態を示す溶存酸素可視化装置の平面図
【
図3】溶存酸素可視化装置の受光部ユニットの一実施例の断面図
【
図4-1】密閉蓋頂部の概念図、密閉蓋頂部に設置の過飽和酸素捕捉管の一実施例の断面図
【
図4-2】密閉蓋頂部の概念図、密閉蓋頂部に設置の目盛付き過飽和酸素捕捉管の一実施例の断面図
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態の実施例を
図1~
図4に基づいて説明する。
【0037】
図1において、受光部ユニット1、及び、光源部ユニット3を示すもので、受光部ユニット1における主構成要素は検査容器4、検査容器の密閉蓋5、光量子センサー6、及び、過飽和酸素捕捉管7、また、光源部ユニット3にける主構成要素としては減光板8、光量制御器15,平行光レンズ9、及び、光源10より構成される。更に、指示液供給機構2には三口弁12,溶存酸素反応指示液収納容器18と指示液注入バルブ13で、また、減光制御機構19には光量子センサー6、光量制御器15、及び、減光板8より構成される。
【0038】
受光部ユニット1の検査容器4には、
図2及び
図3に示す検査水、光量子センサー6、及び沈水植物11の出し入れの利便性を考慮した上部開放型の容器を、更に、大気中の酸素の溶解防止を目的とする密閉蓋5を検査容器上部に設置されている。
【0039】
本溶存酸素可視化装置は、少なくとも検査水及び沈水植物が収納可能であって、検査水中の溶存酸素の有無を求める場合には、
図3に示す受光部ユニット1と指示液供給機構2との装置構成であっても良い。受光部ユニット1の検査容器4には検査水を、また、検査容器4に指示液供給機構2を接続により、検査水に含まれる溶存酸素を目視確認による体感的な客観評価が提供できる。
【0040】
更に、検査容器4は検査水及び沈水植物が収納可能であって、沈水植物の光合成活性度を求める場合には、
図2に示す受光部ユニット1と指示液供給機構2の構成に加え、光源部ユニット3を接続した装置構成により、酸素の存在とその量の目視確認による定量評価が提供できる。
【0041】
なお、検査容器4は少なくとも一側面は透明な平面を求めるもので、検査容器側面での光線の屈折・散乱による検査容器内の光量分布の均一性を保つものとする。これにより、環境再生や養魚場等での沈水植物種の選定のための定量評価の検査容器として提供できる。また、検査容器下部には三口弁12を設置し、その一方を指示液供給機構2に、他方は上部開放型の細管13に接続するのが望ましい。
【0042】
ここで、検査容器4の密閉蓋5は更に、
図4-1及び4-2の破線に見られるように、その内面を凹面となるように、中心部を頂点に傾斜を持たせ、且つ、密閉蓋5の内面凹に残存する残留空気を密閉蓋5の頂点に設置した密閉可能な排気管7によって排除する。
【0043】
また、検査容器上部に残存した残留空気は密閉蓋5を検査容器4の内面に沿って沈むように置くだけで、検査容器上部の残留空気は密閉蓋5の排気口14より余剰水と共に容易に排除される。これにより、検査容器4上面への新たなシーリングの手間は省かれる。
【0044】
ここで、排気7は溶存酸素の存在評価のみの場合には
図3のバルブ付き排気管を、沈水植物の光合成による過飽和酸素量の定性評価を求める場合には
図4-1のバルブ付き過飽和酸素捕捉管7を、また、過飽和酸素量の定量評価を求める場合には
図4-2に示すような目盛付き過飽和酸素捕捉管20を密閉蓋に取り付け交換可能としている。目盛付き過飽和酸素捕捉管20により、沈水植物の過飽和酸素発生量の客観的な定量評価が容易となり、生態系の修復事業及び養魚池などの広範な事業への利用が望まれる。
【0045】
次に、
図1及び
図2に記載の光源部ユニット3の光源と受光部ユニット1の検査容器間の光路上に設けられた減光板8、受光部ユニットの検査容器内に設置した光量子センサー6及び当該センサーの出力に基づいて減光板透過光強度を制御する光量制御器15から構成される減光制御機構19を備えたことにより、光源あるいは受光部(検査容器)を移動させることなく種々の濁水環境条件下での光の強度調整を容易にする。
【0046】
ここで、光源部ユニット3は光源10、光源からの光を平行光線束に整える平行光レンズ9、及び、光量調節のための減光制御機構19で構成している。
平行光レンズ9により、沈水植物による光合成のむらを防ぐことが出来る。なお、光源10は沈水植物の光合成有効光子束密度(光強度400~700 nmの可視領域)を持つ光源を選定し使用することが望ましい。
【0047】
減光板8を通過した平行光線は検査容器側面へ垂直に照射する。なお、[0052]に記載の減光制御機構19は光量子センサー6、減光板8、及び、減光板の光量制御のための光量制御器15で構成している。
減光制御機構19は沈水植物表面での光量子量の調整を可能とするもので、濁水を伴うような実務事業においても光源あるいは受光部(検査容器)を移動させることなく種々の濁水環境条件下での沈水植物表面における光の強度調整可能となる。ここで、減光制御機構19に偏光板等の減光板8を組み込むことにより、検査容器内の光量子センサー6との連携の下、種々の検水濁度環境下での照射光の強さを調整可能となり、簡易な装置操作を発揮する。あるいは、減光制御機構19に物理的な遮光板や濁質濃度可変の液体遮光板あるいは偏光板などの活用も可能である。
また、周囲の光源の影響を受けないように、当該溶存酸素可視化装置を遮光することが望ましい。
【0048】
以下、上記構成の動作による溶存酸素の視覚確認、及び過飽和溶存酸素量の定量評価方法を述べる。なお、
図2に記載の指示液供給機構2の主な構成要素は、
図3に記載の溶存酸素反応指示液収納容器18及び指示液注入バルブ13である。
【0049】
検査水中の溶存酸素の視覚的存在確認には、指示液供給機構2の溶存酸素反応指示液収納容器18に溶存酸素反応指示液を約300mL入れ、受光部ユニット1の検査容器4に検査水を満たす。次に、検査容器の上部より密閉蓋5を挿入し、検査容器が密閉状態となったことを確認後、検査容器4下部に設置の三口弁12を開いて指示液供給機構2の指示液注入バブル13を徐々に開き、適量注入する。その時の検査水中の溶存酸素と指示液とが反応し、検査溶液が青色に発色することを確認する。
【0050】
なお、検査水中の溶存酸素のみを調べる場合は、受光部ユニット1、指示液供給機構2の組み合わせを用い、検査容器4内の検査水に指示液供給機構2からの溶存酸素反応指示液18を指示液注入バブル13にて適量注入することによる検査水の青色への発色をもって溶存酸素の存在を視覚確認できる。
【0051】
沈水植物の光合成活性量の調査では、溶存酸素の視覚的存在確認と同様に、指示液供給機構2の溶存酸素反応指示液収納容器18に溶存酸素反応指示液を約300mL入れ、受光部ユニット1の検査容器4に光量子センサー6、検査する沈水植物11、及び無酸素状態の水を入れて密閉蓋5にて検査容器4を密封状態とする。次に、検査容器4下部に設置の三口弁12を開いて指示液供給機構2の指示液注入バブル13を徐々に開き、適量注入し、検査溶液が発色しないことを確認ができたら、速やかに検査容器4を遮光状態に保つ。なお、三口弁12に圧力調整のための細管を設けるのが望ましい。
【0052】
ここで、マグネチックスターラー16等の撹拌装置17の設置により、溶存酸素反応指示液を検査容器4内に満遍なく速やかに行き渡らす効果が発揮できる。
【0053】
続いて、光源ユニットの光源10を点灯する。光源10から平行光レンズ9、及び減光板8を通過した光は遮光状態を解除した検査容器4内の沈水植物11を照射する。この時、光合成によって生成された酸素は溶存酸素となって沈水植物近傍から徐々に検査容器4内の検査水を青色に変化させることから、沈水植物による溶存酸素の生成現象を視覚による体感にて確認される。そして、過飽状態となって
図4-1に例示する過飽和酸素捕捉管7へ気体酸素として捕集される。更に、
図4-2に例示されるような過飽和酸素捕捉管7に容量を示す目盛付き過飽和酸素捕捉管20を用いることによって、沈水植物の光合成活性量の定量評価を可能にできる。
【0054】
なお、検査水中の溶存酸素のみを調べる場合は、受光部ユニット1、指示液供給機構2の組み合わせを用い、検査容器4内の検査水に指示液供給機構2からの溶存酸素反応指示液18を指示液注入バブル13にて適量注入することによる検査水の青色への発色をもって溶存酸素の存在を視覚確認できる。
【0055】
ここで、減光制御機構19に偏光板等の減光板8を組み込むことにより、検査容器内の光量子センサー6との連携の下、種々の検水濁度環境下での照射光の強さを調整可能となり、装置操作の簡易性効果を発揮する。あるいは、減光制御機構19に物理的な遮光板や濁質濃度可変の液体遮光板などの活用も可能である。
【0056】
本発明に係る装置が有効に働くためには、一液方式の溶存酸素反応指示液を用いるのが望ましく、且つ、次の[0002]~[0006]、[0010]及び[0011]に記載の課題に対応するもので、溶存酸素との還元・酸化反応によって沈水植物の光合成の活性度あるいは検査水中の溶存酸素の存在を一液による溶存酸素反応指示薬の簡便な操作によって定量可能とする本装置の目的にかなうものである。
【0057】
更に溶存酸素指示液の操作においても、評価検査機器の挿入や簡易検査を目的とするパックテストでも、二液の指示液を用いる場合と同様に、一旦検査容器から検水を抽出しなければならない等の操作上の煩雑さを伴うものであった。(例えば[非特許文献2]参照)
【0058】
従来の溶存酸素の存在確認には、化学器具の取り扱い及び薬品の秤量操作の不慣れ、更には、複数の化学反応工程を経た二液を必要とする等、取り扱いの簡便な指示薬の開発が求められていた。
【0059】
また更に、検査水の非抽出及び沈水植物の光合成による酸素の生成過程の簡便な連続的評価が可能となる溶存酸素指示液の開発が求められていた。
【0060】
本発明に使用される溶存酸素指示液には、化学的力価の異なる酸化剤と還元剤、及び、溶存酸素の有無によって色素変化を持つ発色剤の効果的な使用が望まれる。
【0061】
溶存酸素指示液は検査水の溶存酸素との抵触によって発色剤の色変化が発現するように溶液状の一液とする。ここで、溶存酸素指示液に用いる発色剤の色調整には、既に発色剤と結合状態に在る酸素をアルカリ性還元剤にて除去、更に、過剰還元剤を酸化剤の滴定にて調整を行う。
【0062】
従来の酸化剤と還元剤の二液による溶存酸素の定量での試薬の滴定及び逆滴定時の操作の複雑さ及び試薬の危険性の解消と言う効果を発揮するものである。さらに、細心の取り扱いを要する化学器具と試薬の準備や計量、機器利用による専門的な知識と費用、検水の抽出などが検査水への一液の注入により軽減される。化学器具の取り扱い経験の浅い初心者や沈水植物の選定を日常業務とする事業者にとって、利便性の高い指示液という効果を発揮するものである。
【0063】
現在、溶存酸素を定量する方法としてWinkler法及びその変法、Alsterberg法、Rideal-Stewart法、Pomeroy-Kirschman法、アルカリ性次亜塩素酸法、ミョウバン法、Miller法、Amidol法、ガス分析法、電気的測定法、および、Standard color paper法などが挙げられる。その内、色素変化に基づく定量にはWinkler法及びその変法に代表される肉眼比色法が最もよいとされている。
【0064】
ここで、Amidol法等の比色定量はいずれも試薬、操作が煩雑で現場の測定法としてはあまり適当ではないように思われる。また、最も古くに提案された遊離ヨードの色を比色するStandard color paper法においては簡便な方法と考えられるが、標準紙が変色しやすく色調の点でも難点がある。更に、ガス分析法及び電気的測定法においても計測器に頼ることから、肉眼比色法と異なるものである。
【0065】
Winkler法及びその変法、Alsterberg法、Rideal-Stewart法、Pomeroy-Kirschman法、アルカリ性次亜塩素酸法、ミョウバン法、及び、Miller法は、溶存酸素の存在によって指示剤あるいは着色の方法を異にする。
【0066】
指示剤の代表的なものとしては、酸性では赤っぽく、塩基性では青っぽくなる酸塩基指示剤のアントシアニン、及び、中性溶液で鮮赤色のペラルゴニジンシ、紫色のアニジン、紫赤色のデルフィニジンがある。また、酸性条件下で赤色に変化し、塩基性条件下で青色ないしは青緑色に変化するシアニジン、pHによってその色素の色が変化するフラボノイド、酸化状態では青色であるが還元されると無色になるメチレンブルーがある。
【0067】
さらに、検査水に含まれる溶存酸素による指示剤の着色あるいは脱色の方法については、検査水にアルカリ性溶液を混合させた後、着色指示剤を入れ、更に、酸性溶液で逆滴定して定量する方法、あるいは、酸性溶液に着色指示剤を溶解させた溶液を検査水中の溶存酸素と反応させたアルカリ性溶液への滴定とがある。
以上に代表される指示薬の色変化の特性の下で溶存酸素の定量を行うものである。
【0068】
溶存酸素反応指示液一液を注入することで検査水中の溶存酸素の存在を容易に評価可能とする方法は、従来の酸化剤と還元剤を用いる2液法と比較して、利便性の高い指示薬として利用効果が得られるものである。更に、水に含まれる溶存酸素、あるいは、光合成による酸素の生成過程を視覚による評価へ導く効果が得られるものである。
【0069】
以下、本発明の溶存酸素指示液一液の実施例を説明する。
溶存酸素反応指示液供給機構において、[0060]および[0061]に記載の一液のみによる溶存酸素の存在確認は、従来の、酸化剤及び還元剤の二液を不要にするもので、かつ、化学器具の準備と試薬の計量、機器利用による専門的な知識を不必要とするものである。
この簡便さによって、器具や薬品の取り扱い経験の浅い初心者や沈水植物の選定を日常業務とする事業者にとって、利便性の高い指示液としての利用効果を発揮するものである。
【0070】
ここで、溶存酸素反応指示液の色素変化は溶存酸素と反応・呈色を持つ酸化剤、及び、脱色反応を持つ還元剤によるものであって、例えば、無色透明のロイコメチレンブルーが溶存酸素によって酸化され、青色のメチレンブルーに変化することを利用するものである。
【0071】
更に、具体的な例示として、例えば、水酸化ナトリウムとグルコース(ブドウ糖)とからなるメチレンブルー溶液に溶存酸素酸化剤として酒石酸ナトリウム-水酸化ナトリウム溶液5mL/水50mLを加え、還元剤として硫酸アンモニウム鉄(II)溶液をメチレンブルーの青色が消えるまで逆滴定・滴加し、再度ロイコメチレンブルーの無色透明になった状態を終点とした一液の溶存酸素反応指示液とするものである。
【0072】
当該溶存酸素可視化装置での溶存酸素反応指示液は検査水中の溶存酸素との化学反応によって青色に発色することをもって溶存酸素の存在を明らかにする。更に、沈水植物の光合成による酸素生成過程を溶存酸素反応指示液の経時的な変化を、直接視覚を通して確認評価する。
【0073】
以上、従来用いられていた沈水植物収納容器と発生過飽和酸素計測器具の一体化を図り、よって、追加の器具の導入を不要とすると同時に過飽和酸素量計測操作方法の簡便さと直接定量評価を推進可能とする。
【符号の説明】
【0074】
1 受光部ユニット
2 指示液供給機構
3 光源部ユニット
4 検査容器
5 密閉蓋
6 光量子センサー
7 過飽和酸素捕捉管
8 減光板
9 平行光レンズ
10 光源
11 沈水植物
12 三口弁
13 指示液注入バブル
14 バルブ付き排気口
15 光量制御器
16 マグネチックスターラー
17 撹拌装置
18 溶存酸素反応指示液収納容器
19 減光制御機構
20 目盛付き過飽和酸素捕捉管