(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091706
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20230623BHJP
【FI】
H01G4/30 201N
H01G4/30 201L
H01G4/30 512
H01G4/30 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078404
(22)【出願日】2022-05-11
(31)【優先権主張番号】10-2021-0182614
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ミン セオプ
(72)【発明者】
【氏名】チャ、キョウン ジン
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AD02
5E001AE04
5E001AF06
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE01
5E082FF05
5E082FG26
5E082GG10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】マージン部を介して、外部水分が最外殻に配置された内部電極に浸透することを防止する積層セラミック電子部品を提供する。
【解決手段】積層セラミック電子部品は、誘電体層111及び誘電体層を間に挟んで第1方向に積層される複数の内部電極121、122を含む本体と、本体の第1方向に垂直な第2方向に対向する両面に配置されるマージン部と、第1方向及び第2方向に垂直な第3方向に対向する両面に配置され、内部電極と連結された外部電極と、を含む。マージン部は、第1方向の上部及び下部の少なくとも一方の領域に複数の金属粒子が配置された保護領域112a、112b、113a、113bを含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層及び前記誘電体層を間に挟んで第1方向に積層される複数の内部電極を含む本体と、
前記本体の前記第1方向に垂直な第2方向に対向する両面に配置されるマージン部と、
前記第1方向及び第2方向に垂直な第3方向に対向する両面に配置され、前記複数の内部電極と連結された外部電極と、を含み、
前記マージン部は、前記第1方向の上部及び下部の少なくとも一方の領域に複数の金属粒子が配置された保護領域を含む、積層セラミック電子部品。
【請求項2】
前記保護領域は、前記マージン部の上面及び前記複数の内部電極のうち最上部に配置された内部電極の間のレベルと、上記マージン部の下面及び前記複数の内部電極のうち最下部に配置された内部電極の間のレベルとにそれぞれ形成される、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項3】
上記保護領域は、上記マージン部の第2方向の全体に亘って形成された、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項4】
上記保護領域は、上記マージン部の第3方向の全体に亘って形成された、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項5】
前記複数の金属粒子は、水素よりもイオン化傾向が大きい金属を含む、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項6】
前記複数の金属粒子は、Ni、Co、Sn、Zn、Mg、Mn、及びこれらの合金のうち少なくとも1種以上を含む、請求項5に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項7】
前記複数の金属粒子の直径は、0.05μm~2μmである、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項8】
前記複数の金属粒子は、前記積層セラミック電子部品の前記第3方向に垂直な断面において30個以上配置される、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項9】
前記積層セラミック電子部品の前記第3方向に垂直な断面に配置された前記複数の金属粒子のうち直径が1μm以上である金属粒子の個数割合は、45%以下である、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項10】
前記保護領域の前記第1方向の長さは、2μm~30μmである、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項11】
前記保護領域の前記第2方向の長さは、2μm~30μmである、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項12】
前記複数の金属粒子は、水素よりもイオン化傾向が大きい金属を含む、請求項2に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項13】
前記複数の金属粒子は、Ni、Co、Sn、Zn、Mg、Mn、及びこれらの合金のうち少なくとも1種以上を含む、請求項12に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項14】
前記保護領域の前記第1方向の長さは、2μm~30μmである、請求項2に記載の積層セラミック電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミック電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミック電子部品のうちの一つである積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multilayer Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン、及び携帯電話などの様々な電子製品の印刷回路基板に装着されて電気を充電又は放電させる役割を果たすチップ形態のコンデンサである。
【0003】
積層セラミックキャパシタは、内部電極が印刷された複数の誘電体層が積層されてなる本体と、本体の両側面に配置される外部電極とからなる。また、誘電体層の側面に内部電極が印刷されていないマージン部を含むことができる。
【0004】
かかる積層セラミックキャパシタは、小型でありながら高容量が保障され、実装が容易であるという利点により、様々な電子装置の部品として用いられることができる。コンピュータ、モバイル機器などの各種電子機器の小型化及び高出力化に伴って、積層セラミックキャパシタに対する小型化及び高容量化への要求も高まりつつある。
【0005】
また、近年は、自動車用電装部品に対する業界の関心が高まっており、積層セラミックキャパシタに対しても自動車やインフォテインメントシステムに使用されるべく、高信頼性及び高強度特性が求められている。
【0006】
このような積層セラミックキャパシタの高信頼性において問題になる原因としては、めっき工程中に発生するめっき液の浸透、外部衝撃によるクラックの発生、及び外部からの水分浸透などが挙げられる。
【0007】
特に、複数の内部電極のうち最外殻に配置された内部電極の場合、外部水分の浸透経路が短いことから、外部水分がマージン部を介して内部電極に容易に浸透することができる。これにより、積層セラミックキャパシタの品質低下が発生する。
【0008】
このような問題を解決すべく、以下の先行技術文献では、誘電体層とマージン部の誘電体の組成が異なるように調整しているが、別途のセラミックスラリーを注入するか、又は、別途の誘電体シートを付着する必要があるため、工程効率が低下するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2021-0081668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の様々な目的の一つは、外部水分がマージン部を介して最外殻に配置された内部電極に浸透することを防止するためである。
【0011】
本発明の様々な目的の一つは、積層セラミック電子部品の機械的強度を改善するためである。
【0012】
但し、本発明の目的は上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施形態に係る積層セラミック電子部品は、誘電体層及び上記誘電体層を間に挟んで第1方向に積層される複数の内部電極を含む本体と、上記本体の上記第1方向に垂直な第2方向に対向する両面に配置されるマージン部と、上記第1方向及び第2方向に垂直な第3方向に対向する両面に配置され、上記内部電極と連結された外部電極とを含み、上記マージン部は、上記第1方向の上部及び下部の少なくとも一方の領域に複数の金属粒子が配置された保護領域を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明の様々な効果の一つとして、外部水分がマージン部を介して最外殻に配置された内部電極に浸透することを防止し、高信頼性及び耐湿信頼性を確保することができる。
【0015】
本発明の様々な効果の一つとして、積層セラミック電子部品の機械的強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る積層セラミック電子部品を概略的に示した斜視図である。
【
図2】
図1のマージン部が配置された本体の外観を示す斜視図である。
【
図4】
図2のI-I'に沿った断面図を概略的に示したものである。
【
図5】
図4のA領域拡大図及び外部水分の浸透経路を概略的に示したものである。
【
図6】本発明の一実施形態に係るA領域拡大図を概略的に示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。しかしながら、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどは、より明確な説明のために拡大縮小表示(又は強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上の同一の符号で示される要素は同一の要素である。
【0018】
そして、図面において本発明を明確に説明するために、説明と関係のない部分は省略し、図面に示した各構成の大きさ及び厚さは説明の便宜上、任意に示しているため、本発明は必ずしも図示されたものに限定されない。なお、同一思想の範囲内の機能が同一である構成要素については、同一の参照符号を用いて説明する。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というとき、これは特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0019】
図面において、第1方向は積層方向又は厚さT方向、第2方向は幅W方向、第3方向は長さL方向と定義することができる。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る積層セラミック電子部品を概略的に示した斜視図であり、
図2は、
図1のマージン部が配置された本体の外観を示す斜視図であり、
図3は、
図2の本体の外観を示す斜視図であり、
図4は、
図2のI-I'に沿った断面図を概略的に示したものであり、
図5は、
図4のA領域拡大図及び外部水分の浸透経路を概略的に示したものであり、
図6は、本発明の一実施形態に係るA領域拡大図を概略的に示したものである。
【0021】
以下、
図1~
図6を参照して、本発明の一実施形態に係る積層セラミック電子部品について詳細に説明する。
【0022】
本発明の一実施形態に係る積層セラミック電子部品100は、誘電体層111及び上記誘電体層を間に挟んで第1方向に積層される複数の内部電極121、122を含む本体110と、上記本体の上記第1方向に垂直な第2方向に対向する両面に配置されるマージン部112、113と、上記第1方向及び第2方向に垂直な第3方向に対向する両面に配置され、上記内部電極と連結された外部電極131、132と、を含む。
【0023】
本体110は、誘電体層111と第1及び第2内部電極121、122とが交互に積層されている。
【0024】
本体110の具体的な形状に特に限定はないが、図示されたように、本体110は六面体形状やこれと類似の形状からなることができる。焼成過程で本体110に含まれたセラミック粉末の収縮や角部の研磨により、本体110は完全な直線を有する六面体形状ではないが、実質的に六面体形状を有することができる。
【0025】
本体110は、第1方向に互いに対向する第1及び第2面1、2、上記第1及び第2面1、2と連結され、第2方向に互いに対向する第3及び第4面3、4、第1及び第2面1、2と連結され且つ第3及び第4面3、4と連結され、第3方向に互いに対向する第5及び第6面5、6を有することができる。
【0026】
本体110を形成する複数の誘電体層111は焼成された状態であって、隣接する誘電体層111間の境界は、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化していることができる。
【0027】
上記誘電体層111を形成する材料は、十分な静電容量が得られる限り、特に制限されない。例えば、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料、又はチタン酸ストロンチウム系材料などを使用することができる。上記チタン酸バリウム系材料は、BaTiO3系セラミック粉末を含むことができ、上記セラミック粉末としては、例えば、BaTiO3、BaTiO3にCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)などが一部固溶された(Ba1-xCax)TiO3、Ba(Ti1-yCay)O3、(Ba1-xCax)(Ti1-yZry)O3、又はBa(Ti1-yZry)O3などが挙げられる。
【0028】
上記誘電体層111を形成する材料には、チタン酸バリウム(BaTiO3)などのパウダーに本発明の目的に応じて、多様なセラミック添加剤、有機溶剤、結合剤、分散剤などが添加されることができる。
【0029】
このとき、誘電体層111の厚さは、積層セラミック電子部品100の容量設計に合わせて任意に変更することができ、本体110の大きさと容量を考慮して、1層の厚さは焼成後に0.1μm~10μmとなるように構成することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0030】
内部電極121、122は、誘電体層111と交互に配置されることができ、第1内部電極121と第2内部電極122が誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように配置されることができる。
【0031】
すなわち、第1及び第2内部電極121、122は、互いに異なる極性を有する一対の電極であり、誘電体層111上に所定の厚さで導電性金属を含む内部電極用導電性ペーストを印刷して誘電体層111を間に挟んで誘電体層111の積層方向に沿って本体110の第5及び第6面5、6に交互に露出するように形成されることができ、中間に配置された誘電体層111により互いに電気的に絶縁されることができる。
【0032】
このような第1及び第2内部電極121、122の厚さは、用途に応じて決定されることができ、例えば、セラミック本体110の大きさと容量を考慮して0.2μm~1.0μmの範囲内にあるように決定されることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0033】
内部電極121、122に含まれる導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)、及びこれらの合金のうち1種以上であることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0034】
上記内部電極は、高容量の積層セラミック電子部品を実現するために、400層以上が積層されてもよいが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0035】
外部電極131、132は、本体110の外部に形成されて内部電極121、122と連結され、具体的には、本体110において互いに対向する第5及び第6面5、6にそれぞれ配置された第1及び第2外部電極131、132を含むことができる。これにより、第1外部電極131は、上記第5面に露出する複数の第1内部電極121と連結されることができ、第2外部電極132は、上記第6面に露出する複数の第2内部電極132と連結されることができる。
【0036】
このとき、外部電極131、132は、導電性金属及びガラスを含む焼成電極であってもよく、上記導電性金属は、例えば、銀(Ag)、鉛(Pb)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、及び銅(Cu)のうち1種又はこれらの合金などからなるものを使用することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0037】
上記外部電極131、132は、複数の層からなってもよく、特に、上記外部電極上にはめっき層が配置されることができる。上記めっき層は、積層セラミック電子部品100の実装特性を向上させる役割を果たすことができる。
【0038】
上記めっき層は、Ni、Sn、Cu、Pd、及びこれらの合金のうち1種以上を含んでもよく、複数の層からなってもよい。特に、外部電極131、132上に順に積層して形成されるニッケル(Ni)めっき層及びスズ(Sn)めっき層を含むことができる。
【0039】
本体110は、積層セラミック電子部品100の容量形成に寄与し、誘電体層111を間に挟んで複数の内部電極121、122が繰り返し積層されて形成された容量形成部と、上記容量形成部の上下面にそれぞれ第1方向又は厚さ方向に積層されて形成された上部及び下部カバー部とを含むことができる。
【0040】
本発明の一実施形態に係る積層セラミック電子部品100は、本体110の上記第1方向に垂直な第2方向に対向する両面である第3及び第4面3、4にそれぞれ配置される第1及び第2マージン部112、113を含むことができる。
【0041】
第1及び第2マージン部112、113は、本体110を第1及び第2方向に切断した断面において、内部電極121、122の両端と本体110との境界面の間の領域を意味することができる。
【0042】
第1及び第2マージン部112、113は、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0043】
図4を参照すると、マージン部112、113は、本体110の第3及び第4面3、4に配置された第1マージン部112及び第2マージン部113を含み、上記マージン部は、上記第1方向の上部及び下部の少なくとも一方の領域に複数の金属粒子が配置された保護領域112a、112b、113a、113bを含むことができる。
【0044】
具体的には、第1マージン部112は、上記第1方向の上部及び下部の少なくとも一方の領域に複数の金属粒子が配置された第1保護領域112a、112bを含み、上記第1保護領域は、第1方向の上部に配置された第1a保護領域112aと、第1方向の下部に配置された第1b保護領域112bとを含むことができる。
【0045】
また、第2マージン部113は、上記第1方向の上部及び下部の少なくとも一方の領域に複数の金属粒子が配置された第2保護領域113a、113bを含み、上記第2保護領域は、第1方向の上部に配置された第2a保護領域113aと、第1方向の下部に配置された第2b保護領域113bとを含むことができる。
【0046】
上記保護領域は、複数の金属粒子を含むことで、積層セラミック電子部品100の内部へ水分の浸透が発生しても上記金属粒子が先に水分を吸着し、化学的反応によって消耗させることで、水分が積層セラミック電子部品100の内部へ深く浸透することを防止することができる。
【0047】
図5を参照すると、外部水分が上記内部電極へ浸透する恐れがある最短経路に複数の金属粒子が配置されることで、最短経路による外部水分の浸透を抑制することができる。これにより、積層セラミック電子部品100の耐湿信頼性がさらに向上するようになる。
【0048】
上記保護領域に含まれた金属粒子は、下記式1のように、水分と化学的に反応することで酸化され、これにより、外部から浸透された水分が還元されることで除去されることができる。すなわち、上記金属粒子は、水分と反応して酸化されることで金属酸化物を形成し、水分を除去することができる。
【0049】
[化1]
M+H2O → MO+H2(Mは金属)
【0050】
また、上記保護領域が複数の金属粒子を含むことで本体110の内部の金属割合が高くなり、積層セラミック電子部品100の機械的強度が向上するようになる。よって、外部衝撃などによるクラック(crack)の発生頻度が減少するようになる。
【0051】
第1保護領域112a、112b及び第2保護領域113a、113bは、複数の金属粒子が配置された以外は、中央領域112c、113cと同じ誘電体を含むことができる。
【0052】
図5では上記金属粒子が球形を有する場合のみを図示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、
図6に示されたように、上記金属粒子は球形又はフレーク(flake)形の混合形であってもよい。
【0053】
このとき、保護領域112a、112b、113a、113bは、マージン部112、113の上面及び内部電極121、122のうち最上部に配置された内部電極の間のレベルと、マージン部112、113の下面及び内部電極121、122のうち最下部に配置された内部電極の間のレベルとにそれぞれ形成されることができる。
【0054】
図4を参照すると、第1a保護領域112a及び第2a保護領域113aは、マージン部112、113の上面及び内部電極121、122のうち最上部に配置された内部電極の間のレベルに形成されることができる。
【0055】
また、第1b保護領域112b及び第2b保護領域113bは、マージン部112、113の下面及び内部電極121、122のうち最下部に配置された内部電極の間のレベルに形成されることができる。
【0056】
マージン部112、113の上面及び下面は、マージン部112、113において第1方向に対向する両面を意味することができる。上記マージン部の上面は、上記本体の第1面と実質的に同じレベルに形成されることができ、上記マージン部の下面は、上記本体の第2面と実質的に同じレベルに形成されることができる。
【0057】
このとき、保護領域112a、112b、113a、113bの第1方向の長さは、2μm~30μmであることができる。上記保護領域の第1方向の長さが2μm未満であると、外部衝撃に対する機械的強度が低下する恐れがあり、外部水分の除去能力が低下することがある。上記保護領域の第1方向の長さが30μmを超えると、内部電極121、122の重なり面積が減少し、積層セラミック電子部品100の高容量の確保が困難になることがある。
【0058】
本発明の一実施形態において、上記保護領域は、マージン部112、113の第2方向の全体に亘って形成されることができる。また、上記保護領域は、マージン部112、113の第3方向の全体に亘って形成されることができる。
【0059】
これにより、マージン部112、113に含まれた上記保護領域に金属粒子が十分に配置されることで、保護領域に含まれた金属粒子によって外部水分が効果的に除去されることができる。これにより、積層セラミック電子部品100の耐湿信頼性がさらに向上するようになる。
【0060】
このとき、上記保護領域の第2方向の長さは、2μm~30μmであることができる。上記保護領域の第2方向の長さが2μm未満であると、外部衝撃に対する機械的強度が低下する恐れがあり、外部水分の除去能力が低下することがある。上記保護領域の第2方向の長さが30μmを超えると、内部電極121、122の重なり面積が減少し、積層セラミック電子部品100の高容量の確保が困難になることがある。
【0061】
本発明の一実施形態において、上記金属粒子は、水素よりもイオン化傾向が大きい金属を含むことができる。一般的に、イオン化傾向が大きい金属ほど酸化傾向が強い。すなわち、水素よりもイオン化傾向が大きい金属は、水分と反応して酸化されることで金属酸化物を形成し、水分を除去する能力に優れている。水素よりもイオン化傾向の小さい金属は、酸化傾向が弱く、水分の除去に不利になる。
【0062】
特に、上記金属粒子は、Ni、Co、Sn、Zn、Mg、Mn、及びこれらの合金のうち少なくとも1種以上を含むことができる。Ni、Co、Sn、Zn、Mg、及びMnは、水素よりもイオン化傾向が大きい金属であって、酸化傾向が強く、外部から浸透した水分を容易に除去することができる。
【0063】
上記金属粒子の直径は0.05μm~2μmであることができる。上記金属粒子の直径が上記範囲を満たす場合、外部から浸透した水分除去能力がさらに向上し、これにより、積層セラミック電子部品100の耐湿信頼性が向上するようになる。
【0064】
上記金属粒子の直径が0.05μm未満であると、金属粒子の水分吸着能力が低下することがある。上記金属粒子の直径が2μmを超えると、第1保護領域112a、112b及び第2保護領域113a、113b内に上記金属粒子が均一に配置されることができず、これにより、外部から浸透した水分除去能力が低下することがある。
【0065】
本発明の一実施形態において、上記金属粒子は、上記積層セラミック電子部品の上記第3方向に垂直な断面において30個以上配置されることができる。すなわち、
図4に示されたように、上記各保護領域112a、112b、113a、113bの断面に含まれた金属粒子の個数は、合計30個以上であることができる。上記断面に配置された金属粒子が30個以上であると、外部水分の除去能力がさらに向上し、積層セラミック電子部品100の耐湿信頼性が向上するようになる。
【0066】
上記断面に含まれた金属粒子の個数は、外部電極131、132の一部を除去することで露出した上記本体の第5面又は第6面5、6で測定されることができる。若しくは、積層セラミック電子部品100を第3方向に垂直な方向に切断することで露出した各保護領域112a、112b、113a、113bの断面で測定されることができる。
【0067】
上記金属粒子の個数を測定する方法は、上記断面を光学顕微鏡(OM:Optical Microscopy)、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)、透過電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)、ラマン(Raman)分析、及びエネルギー分散型分光分析(SEM-EDS,TEM-EDS)などを用いて測定することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0068】
本発明の一実施形態において、上記積層セラミック電子部品の上記第3方向に垂直な断面に配置された上記金属粒子のうち直径が1μm以上である金属粒子の個数割合は、45%以下であることができる。
【0069】
上記保護領域に配置された金属粒子のうち直径が1μm以上である金属粒子の個数割合が45%を超える場合、上記保護領域内に金属粒子が均一に分布されず、上記保護領域の水分除去能力が低下することがある。
【0070】
以下では、本発明の一実施形態に係る積層セラミック電子部品を製造する方法について具体的に説明するが、本発明はこれに制限されるものではなく、本実施形態の積層セラミック電子部品の製造方法に関する説明において、上述した積層セラミック電子部品における説明と重複する説明は省略する。
【0071】
本発明の一実施形態に係る積層セラミック電子部品を製造する方法は、先ず、チタン酸バリウム(BaTiO3)などのパウダーを含んで形成されたスラリーをキャリヤーフィルム(carrier film)上に塗布及び乾燥して複数のセラミックグリーンシートを設けることで、誘電体層を形成することができる。
【0072】
上記セラミックグリーンシートは、セラミック粉末、バインダー、及び溶剤を混合してスラリーを製造し、上記スラリーをドクターブレード法などで数μmの厚さを有するシート(sheet)状に作製したものである。
【0073】
次に、上記セラミックグリーンシート上に導電性金属を含む内部電極用導電性ペーストをスクリーン印刷工法又はグラビア印刷工法などで塗布して内部電極パターンを形成する。
【0074】
次いで、内部電極パターンが印刷されたセラミックグリーンシートを複数層積層し、積層体の上面及び下面に内部電極パターンが印刷されていないセラミックグリーンシートを複数層積層し、焼成することで本体を設けることができる。マージン部は、セラミックグリーンシート上にマージン部が形成される個所を除いて、内部電極パターンを形成してなるものであることができる。
【0075】
このとき、内部電極パターンが印刷されていないセラミックグリーンシートのマージン領域に犠牲金属粒子を添加した後、積層体の上面及び下面に上記内部電極が印刷されていないセラミックグリーンシートを積層して、上記マージン部が形成される領域に複数の金属粒子を添加することができる。その後、積層体を焼成することで、内部電極の積層方向を基準に上部及び下部の少なくとも一方の領域に複数の金属粒子が配置された保護領域を含むマージン部を形成することができる。
【0076】
積層体を焼成する段階は、複数の金属粒子が酸化されない条件下で行われることが好ましく、窒素(N2)気体と水素(H2)気体が混合された還元雰囲気下で行われることができる。
【0077】
また、マージン部は、複数のセラミックグリーンシートを積層し、内部電極が本体の側面に露出するように切断した後、セラミックグリーンシートを上記側面上に積層することで形成されたものであってもよい。
【0078】
このとき、上記側面に積層されたセラミックグリーンシートにおいて上記内部電極の積層方向を基準に上部及び下部の少なくとも一方の領域に複数の金属粒子を添加することができる。その後、積層体を焼成することで、内部電極の積層方向を基準に上部及び下部の少なくとも一方の領域に複数の金属粒子が配置された保護領域を含むマージン部を形成することができる。
【0079】
その後、上記本体の互いに対向する両面に外部電極用導電性ペーストを塗布した後、乾燥及び焼成することで、上記内部電極と連結される外部電極を形成することができる。
実験例
【0080】
チップの変形を最小化した条件で一定の温度と圧力を加えて内部電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートを積層し、側面にマージン部形成用のセラミックグリーンシートを付着して積層体を作製した。
【0081】
上記マージン部の形成にあたっては、上記側面に付着されたセラミックグリーンシートの一部の領域において、各試料に互いに異なる割合を有するNi金属粒子を添加することで保護領域を形成した。
【0082】
積層体を400℃以下、窒素雰囲気下でカ焼工程を経て焼成温度1250℃以下、水素濃度1%H2以下の条件で焼成して本体110を形成し、上記本体の互いに対向する両面に外部電極131、132を形成して、実施例及び比較例を用意した。
【0083】
次いで、本体の第5面及び第6面に配置された外部電極の一部をポリッシング(polishing)して除去することで、マージン部112、113の上部及び下部に形成された4個の保護領域112a、112b、113a、113bの断面を露出させ、上記断面に配置された金属粒子の個数及び金属粒子の直径割合をSEM-EDS分析によって測定した。
【0084】
金属粒子の個数は、本体の側面に配置されたそれぞれのマージン部112、113に対して、上部及び下部に形成された4個の保護領域112a、112b、113a、113bにおいてそれぞれ測定した個数の合計であり、直径が1μm以上である金属粒子の個数割合は、4個の保護領域の断面に配置された全体の金属粒子の個数に対する4個の保護領域の断面に配置された直径1μm以上の金属粒子の個数を示したものである。
【0085】
下記表1における金属粒子の個数及び直径1μm以上の粒子個数割合は、各50個のサンプルを測定して平均値を示したものであり、耐湿信頼性の評価は、1Vr~2Vr、8585条件(85℃、相対湿度85%)下で合計400個のサンプルに対して行われたものである。このとき、耐湿信頼性の故障が発生しなかった場合は良好(○)、故障頻度が400個のサンプルのうち10個以下であった場合は普通(△)、10個以上であった場合は不良(Χ)とした。
【0086】
【0087】
上記表1を参照すると、比較例1*及び2*は、上記断面に配置された金属粒子の数が30個未満であり、耐湿信頼性の故障頻度が高いことから、信頼性に問題があることが分かる。
【0088】
また、比較例7*及び8*は、上記断面に配置された金属粒子の数が30個以上であり、耐湿信頼性の故障頻度が比較例1*及び2*に比べて良好したものの、直径1μm以上の粒子個数割合が45%を超えていることから、耐湿信頼性の故障が発生したことが分かる。
【0089】
これに対し、実施例3~6では、本発明の数値範囲を満たす場合であって、耐湿信頼性に優れた積層セラミック電子部品を実現できることが分かる。
【0090】
本発明は、上述した実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定されるものとする。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で、当該技術分野における通常の知識を有する者により様々な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属すると言える。
【符号の説明】
【0091】
100 積層セラミック電子部品
110 本体
111 誘電体層
112 第1マージン部
113 第2マージン部
121 第1内部電極
122 第2内部電極
131 第1外部電極
132 第2外部電極
112a 第1a保護領域
112b 第1b保護領域
113a 第2a保護領域
113b 第2b保護領域
112c、113c 中央領域