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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091708
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】X線位相イメージングシステム
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/041 20180101AFI20230623BHJP
   G01N 23/04 20180101ALI20230623BHJP
【FI】
G01N23/041
G01N23/04 340
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083847
(22)【出願日】2022-05-23
(31)【優先権主張番号】P 2021206399
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【弁理士】
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】松花 文太
(72)【発明者】
【氏名】前田 祐人
(72)【発明者】
【氏名】増田 二朗
(72)【発明者】
【氏名】小島 佳奈
(72)【発明者】
【氏名】土岐 貴弘
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA09
2G001HA13
2G001PA11
2G001PA12
(57)【要約】
【課題】被写体と格子との配置関係を確認することが可能なX線位相イメージングシステムを提供する。
【解決手段】このX線位相イメージングシステム100は、X線源11からX線が照射される第1格子21と、第1格子21からのX線が照射される第2格子22とを含む複数の格子を備える。そして、X線位相イメージングシステム100は、被写体101と、第1格子21および第2格子22の一方または両方とを光学撮像する撮像部(第1撮像部41および第2撮像部42)を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体にX線を照射するX線源と、
前記X線源から照射されたX線を検出する検出器と、
前記X線源と前記検出器との間に配置され、前記X線源からX線が照射される第1格子と、前記第1格子からのX線が照射される第2格子とを含む複数の格子と、
前記被写体と、前記第1格子および前記第2格子の一方または両方とを光学撮像する撮像部と、を備える、X線位相イメージングシステム。
【請求項2】
前記撮像部は、
前記第1格子よりも前記X線源側の第1領域に前記被写体が配置される場合に、前記被写体と、前記複数の格子のうちの前記第1領域に隣接する格子とを光学撮像し、前記第1格子よりも前記検出器側の第2領域に前記被写体が配置される場合に、前記被写体と、前記複数の格子のうちの前記第2領域に隣接する格子とを光学撮像する、請求項1に記載のX線位相イメージングシステム。
【請求項3】
前記第1領域または前記第2領域に配置され、前記被写体が載置される載置台と、
前記載置台を移動させる入力操作を受け付ける操作部とをさらに備え、
前記撮像部は、前記操作部に対する入力操作に基づいて前記第1領域において移動している移動中の前記被写体を光学撮像し、前記操作部に対する入力操作に基づいて前記第2領域において移動している移動中の前記被写体を光学撮像するように構成されている、請求項2に記載のX線位相イメージングシステム。
【請求項4】
前記被写体が載置される載置台をさらに備え、
前記載置台は、前記被写体を載置した状態で前記被写体を回転させるように構成され、
前記撮像部は、前記載置台に載置され回転している前記被写体と、前記第1格子および前記第2格子の一方または両方とを光学撮像する、請求項1~3のいずれか1項に記載のX線位相イメージングシステム。
【請求項5】
前記複数の格子を移動させることと回転させることとの少なくとも一方を行う格子駆動部をさらに備え、
前記撮像部は、移動および回転の少なくとも一方を行っている、前記第1格子および前記第2格子の一方または両方を光学撮像する、請求項1~3のいずれか1項に記載のX線位相イメージングシステム。
【請求項6】
前記撮像部は、
前記第1格子よりも前記X線源側の第1領域に配置される前記被写体と、前記複数の格子のうちの前記第1領域に隣接する格子とを光学撮像する第1撮像部と、
前記第1撮像部とは別個に設けられ、前記第1格子よりも前記検出器側の第2領域に配置される前記被写体と、前記複数の格子のうちの前記第2領域に隣接する格子とを光学撮像する第2撮像部と、を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のX線位相イメージングシステム。
【請求項7】
前記第1撮像部は、前記第1領域において、X線照射軸に対して垂直な方向に配置されており、
前記第2撮像部は、前記第2領域において、X線照射軸に対して垂直な方向に配置されている、請求項6に記載のX線位相イメージングシステム。
【請求項8】
前記複数の格子を上方から保持する格子保持部が配置されるフレーム部材をさらに備え、
前記第1撮像部および前記第2撮像部は、前記フレーム部材に配置されている、請求項7に記載のX線位相イメージングシステム。
【請求項9】
前記第1撮像部によって光学撮像された第1撮像画像と、前記第2撮像部によって光学撮像された第2撮像画像とを選択的に表示装置に表示させる表示制御部をさらに備える、請求項6に記載のX線位相イメージングシステム。
【請求項10】
前記第1領域または前記第2領域に配置され、前記被写体が載置される載置台と、
前記載置台を、前記第1領域と前記第2領域との間において移動させる載置台駆動部とをさらに備え、
前記表示制御部は、前記載置台が前記第1領域に配置されている場合には、前記第1撮像画像を表示させ、前記載置台が前記第2領域に配置されている場合には、前記第2撮像画像を表示させるように構成されている、請求項9に記載のX線位相イメージングシステム。
【請求項11】
前記複数の格子は、前記X線源と前記第1格子との間に配置された第3格子をさらに含み、
前記撮像部は、
前記第1格子と前記第3格子との間の第1領域に前記被写体が配置される場合、前記被写体と、前記第1領域に隣接する前記第1格子および前記第3格子とを光学撮像し、
前記第1格子と前記第2格子との間の第2領域に前記被写体が配置される場合、前記被写体と、前記第2領域に隣接する前記第1格子および前記第2格子とを光学撮像するように構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のX線位相イメージングシステム。
【請求項12】
前記被写体に照明光を照射する照明部をさらに備え、
前記撮像部は、前記照明部からの照明光が照射された状態の前記被写体を光学撮像するように構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のX線位相イメージングシステム。
【請求項13】
前記撮像部は、1つ設けられており、
前記撮像部を移動させる撮像部駆動部をさらに備える、請求項1~3のいずれか1項に記載のX線位相イメージングシステム。
【請求項14】
前記撮像部は、前記被写体と、前記第1格子および前記第2格子の一方または両方とを光学撮像することによって、動画像としての撮像画像を撮像する、請求項1~3のいずれか1項に記載のX線位相イメージングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線位相イメージングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線位相イメージング装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に開示されているX線位相イメージング装置は、タルボ効果を利用することによって被写体の内部を画像化させ、位相コントラスト画像を生成する。このX線位相イメージング装置は、タルボ効果により自己像を形成するための位相格子である第1格子を備えている。そして、上記特許文献1に開示されているX線位相イメージング装置は、被写体が載置されるステージを、第1格子よりもX線源側から第1格子よりも検出器側へ、第1格子を越えて移動させることによって、位相コントラスト画像における被写体の拡大縮小率を変更する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-45412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
X線位相イメージング装置において、第1格子とX線源との間に被写体を配置する場合と、第1格子と検出器との間に被写体を配置する場合とのいずれにおいても、X線撮影中等に被写体が格子と接触した場合に、格子の位置ずれや異常が生じる。その場合には、正確な位相コントラスト画像を生成することができない。特に限定されないが、位相コントラスト画像のCT画像を取得する場合には、載置台に載置された被写体を回転させるので、ユーザにとって予期しない被写体と格子との接触が生じる恐れがある。特に限定されないが、X線位相イメージング装置において縞走査法を使用する場合には、X線撮影中に格子を光軸に垂直な面内方向に移動させることから、ユーザにとって予期しない被写体と格子との接触が生じる恐れがある。特に限定されないが、X線位相イメージング装置において、X線撮影中に格子を光軸に垂直な面内方向に回転させながら複数の位相コントラスト画像を生成する場合にも、ユーザにとって予期しない被写体と格子との接触が生じる恐れがある。従って、X線位相イメージング装置において、ユーザが被写体と格子との配置関係を確認することによって、被写体と格子とが接触するか否かを確認できるシステムが望まれている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、被写体と格子との配置関係を確認することが可能なX線位相イメージングシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の一の局面におけるX線位相イメージングシステムは、被写体にX線を照射するX線源と、X線源から照射されたX線を検出する検出器と、X線源と検出器との間に配置され、X線源からX線が照射される第1格子と、第1格子からのX線が照射される第2格子とを含む複数の格子と、被写体と、第1格子および第2格子の一方または両方とを光学撮像する撮像部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
撮像部が被写体と格子とを光学撮像することにより、被写体と格子との配置関係を確認することができる。そのため、被写体と格子とが接触するか否かを確認することができる。また、特に限定されないが、拡大縮小のためには被写体の光軸方向の位置を変更する必要があり、また、CT画像を撮影するためには被写体を回転させる必要がある。特に限定されないが、X線位相イメージングシステムにおいてはX線撮影中に格子を移動や回転させることがある。従って、X線位相イメージングシステムでは、通常のX線撮影装置と比して撮影中に移動または回転をさせる可能性のある格子が含まれることから、ユーザにとっては予期できないような被写体と格子との接触が生じる恐れがある。これを考慮して、本発明では、撮像部によって被写体と格子とが光学撮像されるので、ユーザが撮像部により撮影された撮像画像を見ることによって、被写体と格子とが接触するか否かを確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】X線位相イメージングシステムの構成を示した模式図である。
図2】第1格子を越えた載置台の移動を説明するための図である。
図3】載置台と、第1撮像部および第2撮像部との配置を説明するための図である。
図4】第1撮像部により撮像された第1撮像画像を示した図である。
図5】第2撮像部により撮像された第2撮像画像を示した図である。
図6】表示部の表示の一例を示した図である。
図7】表示部の表示の切り替えを説明するためのフローチャート図である。
図8】本発明の変形例によるX線位相イメージングシステムの構成を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
(X線位相イメージングシステムの構成)
図1図6を参照して、本実施形態によるX線位相イメージングシステム100の構成について説明する。X線位相イメージングシステム100は、被写体101を通過したX線の位相差を利用して、被写体101の内部を画像化するシステムである。また、X線位相イメージングシステム100は、タルボ(Talbot)効果を利用して、被写体101の内部を画像化するシステムである。X線位相イメージングシステム100は、たとえば、非破壊検査用途では、物体としての被写体101の内部の画像化に用いられる。
【0012】
〈測定系の構成〉
図1に示すように、X線位相イメージングシステム100は、X線源11と、検出器12と、複数の格子(第1格子21、第2格子22、および、第3格子23)とを備える。X線位相イメージングシステム100は、複数の格子(第1格子21、第2格子22、および、第3格子23)を用いたX線撮影を行うことにより、位相コントラスト画像2aを生成するように構成されている。
【0013】
具体的には、X線位相イメージングシステム100では、X線源11と、第3格子23と、第1格子21と、第2格子22と、検出器12とが、X線照射軸10の延びる方向(X方向)に沿って、この順に並んで配置されている。すなわち、第1格子21、第2格子22、および、第3格子23は、X線源11と検出器12との間に配置されている。なお、本明細書では、上下方向をZ方向とし、上方(天面側)をZ1方向、下方(底面側)をZ2方向とする。また、X線源11から検出器12に向かう方向をX方向とし、一方側(検出器12側)をX1方向、他方側(X線源11側)をX2方向とする。また、Z方向およびX方向と直交する方向をY方向とし、一方側(前面側)をY1方向、他方側(背面側)をY2方向とする。
【0014】
X線源11は、被写体101にX線を照射するように構成されている。具体的には、X線源11は、後述する制御部1aによる制御により、図示しない電源部から高電圧が印加されることにより、X線を発生させるX線管を含む。
【0015】
検出器12は、X線源11から照射されたX線を検出するように構成されている。また、検出器12は、検出されたX線を電気信号に変換するように構成されている。検出器12は、たとえば、FPD(Flat Panel Detector)である。検出器12は、複数の変換素子(図示せず)と複数の変換素子上に配置された画素電極(図示せず)とにより構成されている。複数の変換素子および画素電極は、所定の周期(画素ピッチ)で、Y方向およびZ方向に並んで配置されている。また、検出器12の検出信号(画像信号)は、後述するコンピュータ1の画像処理部1bに送られる。
【0016】
第1格子21は、いわゆる位相格子を有する。第1格子21は、X線源11と検出器12との間に配置され、X線源11からX線が照射される。具体的には、第1格子21は、第3格子23と第2格子22との間に配置されており、X線源11から照射されたX線により(タルボ効果によって)自己像を形成するために設けられている。第1格子21は、Z方向に所定の周期(格子ピッチ)で配列されるスリット部分およびX線位相変化部分を有している。各スリット部分およびX線位相変化部分は、Y方向に直線状に平行に延びるように形成されている。なお、タルボ効果は、可干渉性を有するX線が、スリット部分が形成された格子を通過すると、格子から所定の距離(タルボ距離)離れた位置に、格子の像(自己像)が形成されることを意味する。
【0017】
第2格子22は、いわゆる吸収格子を有する。第2格子22は、第1格子21からのX線が照射される。具体的には、第2格子22は、第1格子21と検出器12との間に配置されており、第1格子21により形成された自己像に干渉するように構成されている。第2格子22は、Z方向に所定の周期(格子ピッチ)で配列される複数のX線透過部分(スリット部分)およびX線吸収部分を有している。各X線透過部分およびX線吸収部分は、Y方向に直線状に平行に延びるように形成されている。そして、第2格子22は、自己像と第2格子22とを干渉させるために、第1格子21からタルボ距離だけ離れた位置に配置されている。第2格子22は、第1格子21の自己像と干渉して、検出器12の検出面上にモアレ縞を形成する。
【0018】
第3格子23は、X線源11からのX線の可干渉性を高める吸収格子を有する。第3格子23は、X線源11と第1格子21との間に配置されており、X線源11からX線が照射される。第3格子23は、Z方向に所定の周期(ピッチ)で配列される複数のスリット部分およびX線吸収部分を有している。各スリット部分およびX線吸収部分はそれぞれ、Y方向に直線状に平行に延びるように形成されている。第3格子23は、各スリット部分を通過したX線を、各スリット部分の位置に対応する線光源とするように構成されている。
【0019】
なお、本明細書では、第1格子21、第2格子22、および、第3格子23の各々は、格子のみならず格子を覆うカバー部材をも含むものとして記載している。
【0020】
〈筐体の構成〉
また、図1に示すように、X線位相イメージングシステム100は、筐体60を備える。筐体60は、X線源11、検出器12、および、複数の格子(第1格子21、第2格子22、および、第3格子23)を内部に収容する。また、筐体60は、後述する載置台31、駆動部32、第1撮像部41、第2撮像部42、および、照明部50を内部に収容する。なお、駆動部32は、特許請求の範囲における「載置台駆動部」の一例である。
【0021】
筐体60は、略直方体形状を有し、内部が中空となっている。また、筐体60は、前面側(Y1方向側)の面に、内部にアクセスするための図示しない扉部が設けられている。そして、筐体60は、前面側に設けられた扉部が閉められた状態において、筐体60の外部へのX線の漏洩を抑制する構造となっている。たとえば、筐体60は、X線源11からのX線の外部への漏洩を抑制するように、X線を遮蔽する鉛などの金属によって形成された壁面を有する。なお、X線撮影の最中(X線源11からX線が照射されている最中)、および、後述する載置台31を移動させている最中には、筐体60の内部にアクセスするための扉部は開放されないように構成されている。
【0022】
また、筐体60の内部には、被写体101が配置される第1領域60aと、第1領域60aとは異なる第2領域60bとが設けられている。第1領域60aは、第1格子21よりもX線源11側(X2方向側)の領域である。具体的には、第1領域60aは、第1格子21と第3格子23との間の領域である。また、第2領域60bは、第1格子21よりも検出器12側(X1方向側)の領域である。具体的には、第2領域60bは、第1格子21と第2格子22との間の領域である。第1領域60aと第2領域60bとでは、取得される位相コントラスト画像2aの拡大率が異なるように構成されている。拡大率を大きくして被写体101の微小な領域を観察したい場合には、被写体101は、第1領域60aに配置される。また、拡大率を小さくして被写体101の広域を観察したい場合には、被写体101は、第2領域60bに配置される。
【0023】
そして、筐体60は、内部にフレーム部材61を有する。フレーム部材61は、筐体60の内部の上方の天面側(Z1方向側)にX方向に延びるように設けられた棒状(梁状)の部材である。フレーム部材61には、複数の格子(第1格子21、第2格子22、および、第3格子23)を上方から保持する格子保持部21a、格子保持部22a、および、格子保持部23aが配置される。具体的には、格子保持部21a、格子保持部22a、および、格子保持部23aは、それぞれ、第1格子21、第2格子22、および、第3格子23を上方から吊るすように保持する。また、格子保持部21a、22a、および、23aは、それぞれ、アクチュエータなどの格子駆動部21b、格子駆動部22b、および、格子駆動部23bを有しており、第1格子21、第2格子22、および第3格子23の位置および角度を変更するように構成されている。具体的には、格子駆動部21b、格子駆動部22b、および、格子駆動部23bは、それぞれ、第1格子21、第2格子22、および、第3格子23を移動させるとともに、第1格子21、第2格子22、および、第3格子23を回転させる。例えば、位相コントラスト画像2aの生成に縞走査法を用いる場合には、駆動機構(格子駆動部21b、22b、および、23b)によって、第1格子21に対して第2格子22を相対的にZ方向に移動させる必要がある。例えば、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)の内部の炭素繊維を撮像する場合には、第1格子21、第2格子22、および、第3格子23を、それぞれ、格子駆動部21b、22b、および、23bによって、X線照射軸10(X方向)に直交する面内方向に複数の角度に回転させて、各角度における位相コントラスト画像2aが生成される。
【0024】
〈駆動系の構成〉
図1図3に示すように、X線位相イメージングシステム100は、載置台31と、駆動部32とを備える。X線位相イメージングシステム100は、載置台31を移動させることによって、被写体101の配置を変更するように構成されている。
【0025】
図1に示すように、本実施形態では、載置台31には、被写体101が載置される。また、載置台31は、被写体101を載置した状態で、Z方向(上下方向)を回転軸線として被写体101を回転させるように構成されている。X線位相イメージングシステム100は、載置台31自体または回転軸のみを回転させることによって、載置台31に載置された被写体101を回転させるように構成されている。そして、X線位相イメージングシステム100では、Z方向を回転軸線として被写体101を回転させながら、X線撮影が行われる。また、載置台31は、X方向における配置位置を変更可能に構成されている。
【0026】
具体的には、図2に示すように、載置台31は、駆動部32による駆動により、第1格子21のX線源11側と、第1格子21の検出器12側との間において、第1格子21を越えてX方向に移動可能に構成されている。すなわち、本実施形態では、載置台31は、第1格子21よりもX線源11側(X2方向側)の第1領域60aと、第1格子21よりも検出器12側(X1方向側)の第2領域60bとの間を移動可能に構成されている。言い換えれば、本実施形態では、載置台31は、第1領域60aまたは第2領域60bに択一的に(選択的に)配置される。なお、載置台31の第1格子21を超えた移動は、被写体101が載置されていない状態で行われることが好ましい。
【0027】
駆動部32は、第1駆動機構32aと、第2駆動機構32bを有する。第1駆動機構32aは、たとえば、ボールネジ部材およびモータを含み、載置台31を、Z方向に沿って上下に移動させる。また、第2駆動機構32bは、同様に、ボールネジ部材およびモータを含み、載置台31をX方向に沿って移動させるように構成されている。具体的には、載置台31は、第1格子21を越えて移動する場合には、駆動部32の第1駆動機構32aによって、Z2方向側に退避した後に、駆動部32の第2駆動機構32bにより、第1格子21の下方側(Z2方向側)をくぐるようにして、第1格子21を越えてX方向に移動するように構成されている。なお、駆動部32は、後述するコンピュータ1の制御部1aからの制御信号に基づいて、載置台31を移動させる。また、駆動部32は、モータの回転数(回転角)を取得する図示しないエンコーダを含み、制御部1aに対して、載置台31の位置を示す位置情報を送信するように構成されている。具体的には、駆動部32は、制御部1aに対して、エンコーダにより取得されたモータの回転数を示すパルス信号を位置情報として送信する。
【0028】
また、図3に示すように、載置台31は、後述する操作部3に対する入力操作に基づいて、第1格子21よりもX線源11側(第1領域60a)の位置P1、位置P2、および、位置P3と、第1格子21よりも検出器12側(第2領域60b)の位置P11、位置P12、および、位置P13との6つの位置に移動するように構成されている。位置P2は、第1領域60aにおいて、第1格子21と第3格子23とのX方向における中間の位置である。そして、位置P1は、第1領域60aにおいて位置P2よりも第3格子23側(X2方向側)の位置である。また、位置P3は、第1領域60aにおいて位置P2よりも第1格子21側(X1方向側)の位置である。位置P12は、第2領域60bにおいて、第1格子21と第2格子22とのX方向における中間の位置である。そして、位置P11は、第2領域60bにおいて位置P12よりも第1格子21側(X2方向側)の位置である。また、位置P13は、第2領域60bにおいて位置P12よりも第2格子22側(X1方向側)の位置である。
【0029】
また、載置台31は、操作部3に対する入力操作に基づいて、位置P1~P3および位置P11~P13の各々に配置された状態から、配置位置をX方向に沿って微調整可能に構成されている。
【0030】
〈外観画像の撮像のための構成〉
図1に示すように、X線位相イメージングシステム100は、被写体101および格子(第1格子21、第2格子22、および、第3格子23)を光学撮像する撮像部を備える。本実施形態では、撮像部は、第1撮像部41と、第1撮像部41とは別個に設けられている第2撮像部42とを含む。ここで言う「光学撮像」とは、被写体101の内部の撮像を行うX線撮像ではなく、被写体101の外観を撮像することを意味する。X線位相イメージングシステム100は、筐体60の内部に配置された被写体101の外観を撮像するように構成されている。第1撮像部41は、特許請求の範囲における「撮像部」および「第1撮像部」の一例である。第2撮像部42は、特許請求の範囲における「撮像部」および「第2撮像部」の一例である。
【0031】
第1撮像部41および第2撮像部42は、たとえば、CCDイメージセンサ(Charge―Coupled Deviceイメージセンサ)を複数の撮像素子として有しており、載置台31に載置された被写体101の外観を光学撮像する。また、第1撮像部41および第2撮像部42は、それぞれ、撮像素子による検出信号として撮像した画像(第1撮像画像2bおよび第2撮像画像2c)を後述するコンピュータ1の画像処理部1bに対して出力する。なお、第1撮像画像2bは、特許請求の範囲における「撮像画像」および「第1撮像画像」の一例である。また、第2撮像画像2cは、特許請求の範囲における「撮像画像」および「第2撮像画像」の一例である。
【0032】
図4に示すように、本実施形態では、第1撮像部41により、第1撮像画像2bが撮像される。具体的には、第1撮像部41は、第1領域60aに配置された被写体101と、第1領域60aに隣接する格子である第1格子21および第3格子23とを撮像するように構成されている。すなわち、第1撮像部41は、第1領域60aの全体が撮像されるように、第1格子21と第3格子23との両方を撮像可能な視野角を有する。
【0033】
また、図5に示すように、本実施形態では、第2撮像部42により、第2撮像画像2cが撮像される。具体的には、第2撮像部42は、第2領域60bに配置された被写体101と、第2領域60bに隣接する格子である第1格子21および第2格子22とを撮像するように構成されている。すなわち、第2撮像部42は、第2領域60bの全体が撮像されるように、第1格子21と第2格子22との両方を撮像可能な視野角を有する。
【0034】
また、図3に示すように、本実施形態では、第1撮像部41は、第1領域60aにおいて、被写体101が配置される位置から、X線源11から検出器12に向かうX線照射軸10(X方向)に対して垂直な方向(Z方向)に離間した位置に配置されている。同様に、第2撮像部42は、第2領域60bにおいて、被写体101が配置される位置から、X線照射軸10に対して垂直な方向(Z方向)に離間した位置に配置されている。ここで、X線照射軸10は、X線源11から検出器12に向かう軸線である。具体的には、X線照射軸10は、X線源11から照射されるX線の中心軸であり、X線の照射方向(X方向)に沿って延びるとともに、検出器12の検出面と垂直な軸線である。
【0035】
たとえば、第1撮像部41および第2撮像部42は、筐体60の内部の鉛直方向(Z方向)の上方(天面側、Z1方向側)に配置されている。具体的には、第1撮像部41は、第1領域60aの上方に配置されている。また、第2撮像部42は、第2領域60bの上方に配置されている。第1撮像部41および第2撮像部42は、筐体60の上方のフレーム部材61にネジなどの締結部材によりネジ止めされることによって配置されている。すなわち、第1撮像部41および第2撮像部42は、載置台31に載置された被写体101に対して、共通の方向から撮像するように構成されている。第1撮像部41および第2撮像部42は、複数の格子を保持する格子保持部21a、22a、および、23aが配置されている方向側から、被写体101および複数の格子を撮像するように配置されている。
【0036】
詳細には、第1撮像部41は、X線照射軸10(X方向)に対して、第1格子21と第3格子23とのX方向における中間の位置から垂直にZ方向に離間した位置に配置されている。そして、第1撮像部41は、X線照射軸10に対して垂直な方向に、下方向(Z2方向)に向けて撮像を行う。すなわち、第1撮像部41は、位置P2の直上に配置されている。したがって、第1撮像部41は、第1領域60aの位置P2において回転する載置台31(被写体101)の回転軸線上に配置されている。言い換えると、第1撮像部41は、第1領域60aに配置されている状態の載置台31(被写体101)の回転軸線に沿う方向に離間した位置に配置されている。
【0037】
同様に、第2撮像部42は、X線源11から検出器12に向かうX線照射軸10(X方向)に対して、第1格子21と第2格子22とのX方向における中間の位置から垂直にZ方向に離間した位置に配置されている。そして、第2撮像部42は、X線照射軸10に対して垂直な方向に、下方向(Z2方向)に向けて撮像を行う。すなわち、第2撮像部42は、位置P12の直上に配置されている。したがって、第2撮像部42は、第2領域60bの位置P12において回転する載置台31(被写体101)の回転軸線上に配置されている。言い換えると、第2撮像部42は、第2領域60bに配置されている状態の載置台31(被写体101)の回転軸線に沿う方向に離間した位置に配置されている。
【0038】
また、図1に示すように、本実施形態では、X線位相イメージングシステム100は、照明部50を備える。照明部50は、被写体101に照明光を照射する。照明部50は、たとえば、白色光を照射するLED(Light emitting diode)を有する。照明部50は、筐体60の天面(Z1方向側の面)の内部に配置されている。たとえば、照明部50は、第1撮像部41および第2撮像部42の各々に対応するように、2つ設けられている。また、照明部50は、X線位相イメージングシステム100の電源が投入された際に、照明光の照射を開始する。そして、照明部50は、X線源11からのX線の照射が開始される前のみならず、X線源11からのX線の照射が行われている最中(X線撮影が行われている最中)にも、継続して照明光の照射を行うように構成されている。すなわち、筐体60の図示しない扉部の開閉に係わらず、照明部50は、継続して照明光を照射するように構成されている。本実施形態では、第1撮像部41および第2撮像部42は、照明部50からの照明光が照射された状態の被写体101を撮像するように構成されている。
【0039】
〈画像の生成および表示のための構成〉
図1に示すように、本実施形態のX線位相イメージングシステム100は、コンピュータ1、表示部2、および、操作部3を備える。たとえば、コンピュータ1、表示部2、および、操作部3は、筐体60の外部(外表面)に配置されている。なお、表示部2は、特許請求の範囲における「表示装置」の一例である。
【0040】
コンピュータ1は、制御部1a、画像処理部1b、および、記憶部1cを備える。そして、コンピュータ1は、複数の格子(第1格子21、第2格子22、および、第3格子23)を用いたX線撮影を行うことによって、位相コントラスト画像2aを生成するように構成されている。また、コンピュータ1は、第1撮像部41によって撮像された第1撮像画像2bと、第2撮像部42によって撮像された第2撮像画像2cとを生成する。なお、制御部1aは、特許請求の範囲における「表示制御部」の一例である。
【0041】
制御部1aは、X線位相イメージングシステム100の各部の制御を行う。具体的には、制御部1aは、駆動部32の動作を制御するように構成されている。また、制御部1aは、X線源11によるX線の照射を制御する。また、制御部1aは、画像処理部1bにより生成された画像を表示部2に表示させる。制御部1aは、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などを含む。
【0042】
画像処理部1bは、検出器12から送られた検出信号に基づいて、位相コントラスト画像2aを生成するように構成されている。画像処理部1bは、たとえば、GPU(Graphics Processing Unit)や画像処理用に構成されたFPGA(Field-Programmable Gate Array)などのプロセッサを含む。位相コントラスト画像2aは、複数の格子(第1格子21、第2格子22、および、第3格子23)を使用して撮影した画像の総称であって、たとえば、吸収像、位相微分像、暗視野像の少なくとも1つを含む。吸収像は、被写体101によるX線の吸収度合の差に基づいて画像化したX線画像である。位相微分像は、X線の位相のずれに基づいて画像化したX線画像である。暗視野像は、物体の小角散乱に基づくVisibilityの変化によって得られる、Visibilty像のことである。また、暗視野像は、小角散乱像とも呼ばれる。「Visibility」とは、鮮明度のことである。
【0043】
また、画像処理部1bは、第1撮像画像2bおよび第2撮像画像2cを生成するように構成されている。具体的には、画像処理部1bは、第1撮像部41からの検出信号に基づいて、第1撮像部41により撮像された第1撮像画像2bを生成する。また、画像処理部1bは、第2撮像部42からの検出信号に基づいて、第2撮像部42により撮像された第2撮像画像2cを生成する。
【0044】
記憶部1cは、画像処理部1bが生成した位相コントラスト画像2a、制御部1aが実行する各種プログラムを記憶するように構成されている。記憶部1cは、HDD(Hard Disk Drive)、または、SSD(Solid State Drive)などの不揮発性のメモリを含む。
【0045】
X線位相イメージングシステム100では、載置台31を回転させることにより載置台31に載置された被写体101を回転させながら複数回のX線撮影を行う。画像処理部1bは、複数回のX線撮影によって、複数の位相コントラスト画像2aを生成するとともに、複数の位相コントラスト画像2aに基づいて、3次元の位相コントラスト画像2a(CT画像)を生成するように構成されている。
【0046】
表示部2は、たとえば、液晶モニタを含む。表示部2は、制御部1aによる制御により画像を表示する。具体的には、表示部2は、画像処理部1bにより生成された位相コントラスト画像2aを表示する。また、表示部2は、第1撮像部41により撮像された第1撮像画像2bと、第2撮像部42により撮像された第2撮像画像2cとを選択的に表示するように構成されている。表示部2の表示の制御の詳細は後述する。
【0047】
操作部3は、操作者の操作入力を受け付けるように構成されている。操作部3は、たとえば、キーボードやマウスなどの入力デバイスを含む。本実施形態では、操作部3は、載置台31を移動させる入力操作を受け付ける。また、操作部3は、位相コントラスト画像2aを生成するためのX線撮影を開始する入力操作を受け付ける。
【0048】
(X線位相イメージングシステムの制御の詳細)
本実施形態では、制御部1aは、操作部3に対する入力操作に基づいて、載置台31の位置を変更するように構成されている。また、制御部1aは、第1撮像部41により撮像された第1撮像画像2bまたは第2撮像部42により撮像された第2撮像画像2cを選択的に表示部2に表示させるように構成されている。
【0049】
具体的には、図6に示すように、制御部1aは、表示部2に、位相コントラスト画像2aと、第1撮像画像2bおよび第2撮像画像2cのいずれか一方とを並べて表示させる。また、制御部1aは、載置台31が、第1領域60aに配置されている場合には、第1撮像画像2bを表示部2に表示させる。そして、制御部1aは、載置台31が第2領域60bに配置されている場合には、第2撮像画像2cを表示部2に表示させる。載置台31の位置は、駆動部32からの位置情報に基づいて取得される。また、第1撮像画像2bおよび第2撮像画像2cは、動画像として表示部2に表示される。なお、図6では、載置台31は、第2領域60bの位置P12に配置されており、第2撮像画像2cが表示部2に表示されている例を示している。また、図6では、X線源11からのX線の照射を開始する前の状態を示している。したがって、位相コントラスト画像2aには何も表示されていない。
【0050】
また、制御部1aは、載置台31の現在の配置位置を示す表示を「ステージ位置」として表示部2の領域2dに表示する。そして、領域2dに対するクリック動作などの操作によって、載置台31の位置(位置P1~P3および位置P11~P13)を変更するための入力操作が操作部3によって受け付けられる。そして、制御部1aは、受け付けられた入力操作に基づいて、選択された位置に載置台31を移動させるように構成されている。なお、制御部1aは、筐体60の扉部が開放状態にある場合には、移動中の載置台31に作業者が接触しないように載置台31を移動させる入力操作を受け付けないように構成されている。
【0051】
ここで、本実施形態では、制御部1aは、駆動部32による載置台31の移動に基づいて、第1撮像画像2bの表示部2への表示と第2撮像画像2cの表示部2への表示とを切り替えるように構成されている。制御部1aは、駆動部32からの載置台31の位置情報に基づいて、載置台31の位置を取得するとともに、表示部2の表示を切り替えるように構成されている。具体的には、制御部1aは、駆動部32に含まれるエンコーダにより取得されたモータの回転数を示すパルス信号を位置情報として取得する。そして、制御部1aは、取得されたパルス信号のパルス数(モータの回転数)から、載置台31の駆動位置(配置位置)を算出する。また、制御部1aは、予め設定されている駆動位置と第1領域60aまたは第2領域60bとの対応関係に基づいて、載置台31が第1領域60aおよび第2領域60bのいずれに配置されているかを判定する。たとえば、制御部1aは、駆動部32による載置台31の移動に基づいて、載置台31が第1領域60aから第2領域60bに移動した場合には、第1撮像画像2bから切り替えて第2撮像画像2cを表示部2に表示させるように構成されている。なお、第1撮像画像2bおよび第2撮像画像2cは、表示部2の同一の領域において切り替えて表示される。
【0052】
また、本実施形態では、第1撮像部41は、操作部3に対する入力操作に基づいて第1領域60aにおいて移動している移動中の被写体101(載置台31)を撮像するように構成されている。そして、第2撮像部42は、操作部3に対する入力操作に基づいて第2領域60bにおいて移動している移動中の被写体101(載置台31)を撮像するように構成されている。そして、制御部1aは、移動中の被写体101(載置台31)を撮像した動画像としての第1撮像画像2bまたは第2撮像画像2cを表示部2に表示させるように構成されている。
【0053】
たとえば、制御部1aは、表示部2の領域2dに対する入力操作に基づいて、載置台31の位置を微調整することによって位相コントラスト画像2aにおける被写体101の拡大縮小を微調整する動作を実行する。具体的には、位相コントラスト画像2aを生成するためのX線撮影を開始する前に、作業者による被写体101の位置(載置台31の位置)を微調整する操作が操作部3によって受け付けられる。そして、制御部1aは、受け付けられた操作に基づいて、載置台31の位置を微調整するように駆動部32を制御する。位相コントラスト画像2aの被写体101を拡大させるための操作が受け付けられた場合には、制御部1aは、載置台31を現在の配置位置からX線源11側(X2方向側)に移動させる。また、位相コントラスト画像2aの被写体101を縮小させるための操作が受け付けられた場合には、制御部1aは、載置台31を現在の配置位置から検出器12側(X1方向側)に移動させる。そして、制御部1aは、載置台31に載置された被写体101の移動の様子を確認可能なように、移動中の被写体101を撮像した第1撮像画像2bまたは第2撮像画像2cを表示部2に表示させる。
【0054】
また、制御部1aは、表示部2の領域2dに対する入力操作に基づいて、載置台31を回転させる動作を実行する。たとえば、X線撮影を開始する前に、作業者による被写体101が載置された載置台31を回転させる操作が操作部3によって受け付けられる。制御部1aは、受け付けられた操作に基づいて、載置台31を回転させる。第1撮像部41は、第1領域60aにおいて回転する載置台31に載置された被写体101を撮像する。同様に、第2撮像部42は、第2領域60bにおいて回転する載置台31に載置された被写体101を撮像する。そして、制御部1aは、回転中の被写体101の様子を確認可能なように、回転中の被写体101を撮像した第1撮像画像2bまたは第2撮像画像2cを表示部2に表示させる。
【0055】
そして、制御部1aは、操作部3に対する入力操作に基づいて、位相コントラスト画像2aを生成するためのX線撮影を開始する。具体的には、制御部1aは、操作部3に対する入力操作に基づいて、X線源11からX線の照射を開始させる。そして、制御部1aは、画像処理部1bにより生成された位相コントラスト画像2aを表示部2に表示させる。
【0056】
なお、X線撮影中に、第1撮像部41は、第1領域60aにおいて回転する被写体101を撮像し、第2撮像部42は、第2領域60bにおいて回転する被写体101を撮像する。また、X線撮影中に、第1撮像部41は、移動または回転している、あるいは停止している第1格子21および第3格子23を撮像し、第2撮像部42は、移動または回転している、あるいは停止している第1格子21および第2格子22を撮像する。制御部1aは、X線撮影を行っている最中(X線源11からのX線が照射されている最中)にも、表示部2に、第1撮像画像2bまたは第2撮像画像2cを表示させるように構成されている。また、制御部1aは、X線撮影中において、処理負担を軽減するために第1撮像画像2bまたは第2撮像画像2cのフレームレートを減少させて表示部2に表示させる。そして、制御部1aは、X線撮影が終了された場合にも、表示部2に、継続して第1撮像画像2bまたは第2撮像画像2cを表示させるように構成されている。したがって、本実施形態のX線位相イメージングシステム100は、X線撮影が終了されることによって位相コントラスト画像2aの表示が終了された場合にも、作業者が第1撮像画像2bまたは第2撮像画像2cを確認することにより、筐体60の内部の被写体101および格子の配置を確認可能に構成されている。
【0057】
なお、被写体101が載置台31に載置されていない場合にも、制御部1aは、表示部2に第1撮像画像2bまたは第2撮像画像2cを表示させるように構成されている。
【0058】
(第1撮像画像と第2撮像画像との切り替え表示の制御処理フロー)
次に、図7を参照して、本実施形態のX線位相イメージングシステム100による第1撮像画像2bの表示と第2撮像画像2cの表示との切り替えの制御処理フローについて説明する。
【0059】
まず、ステップ201において、載置台31を移動させるための入力操作が受け付けられる。すなわち、操作部3に対する入力操作に基づいて、載置台31の位置を変更させるため入力操作が受け付けられる。
【0060】
次に、ステップ202において、操作部3により受け付けられた入力操作に基づいて、載置台31が移動される。具体的には、操作部3により受け付けられた入力操作に基づいて、駆動部32の動作が制御されることによって、載置台31が移動される。
【0061】
次にステップ203において載置台31の位置情報が取得される。具体的には、駆動部32に設けられたエンコーダからのパルス信号が載置台31の位置情報として取得される。すなわち、駆動部32からのフィードバック信号として位置情報が取得される。
【0062】
次に、ステップ204において、取得された位置情報に基づいて載置台31が第1領域60aと第2領域60bとのいずれに配置されているかが判断される。載置台31が第1領域60aに配置されていると判断された場合は、ステップ205に進む。また、載置台31が第2領域60bに配置されていると判断された場合は、ステップ206に進む。
【0063】
ステップ205では、載置台31が第1領域60aに配置されていると判断されたことにより、表示部2に第1撮像画像2bが表示される。すなわち、載置台31が第2領域60bに配置されており表示部2に第2撮像画像2cが表示されている状態の場合は、第2撮像画像2cから切り替えて第1撮像画像2bが表示部2に表示される。
【0064】
また、ステップ206では、載置台31が第2領域60bに配置されていると判断されたことにより、表示部2に第2撮像画像2cが表示される。すなわち、載置台31が第1領域60aに配置されており表示部2に第1撮像画像2bが表示されている状態の場合は、第1撮像画像2bから切り替えて第2撮像画像2cが表示部2に表示される。
【0065】
なお、ステップ203~ステップ206における位置情報の取得および第1撮像画像2bまたは第2撮像画像2cの表示の制御処理は、ステップ202における載置台31の移動が行われている期間において、所定の間隔毎に順次繰り返して実行されるようにしてもよいし、ステップ202における載置台31の移動が完了した後に実行されるようにしてもよい。また、ステップ201および202における載置台31の移動よりも前に、取得された位置情報に基づいて表示部2に第1撮像画像2bおよび第2撮像画像2cが表示される。
【0066】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0067】
本実施形態では、X線位相イメージングシステム100は、被写体101と格子(第1格子21、第2格子22、および、第3格子23)とを光学撮像する撮像部(第1撮像部41および第2撮像部42)を備えることにより、被写体101と格子との配置関係を確認することができる。そのため、被写体101と格子とが接触しないことを確認することができる。ここで、拡大縮小のためには被写体101の光軸方向(X線照射軸10に沿う方向)の位置を変更する必要があり、また、CT画像を撮影するためには被写体101を回転させる必要がある。そして、X線位相イメージングシステム100においてはX線撮影中に格子(第1格子21、第2格子22、および、第3格子23)を移動や回転させることがある。したがって、X線位相イメージングシステム100では、通常のX線撮影装置と比して撮影中に移動または回転をさせる可能性のある格子が含まれることから、ユーザ(作業者)にとっては予期できないような被写体101と格子(第1格子21、第2格子22、および、第3格子23)との接触が生じる恐れがある。これを考慮して、本実施形態では、第1撮像部41および第2撮像部42によって被写体101と格子とが光学撮像されるので、作業者が撮像部(第1撮像部41および第2撮像部42)により撮影された撮像画像(第1撮像画像2bおよび第2撮像画像2c)を見ることによって、被写体101と格子とが接触するか否かを確認することができる。
【0068】
また、本実施形態では、以下のように構成したことによって、更なる効果が得られる。
【0069】
すなわち、第1撮像部41および第2撮像部42(撮像部)は、第1格子21よりもX線源11側の第1領域60aに被写体101が配置される場合に、被写体101と、複数の格子のうちの第1領域60aに隣接する格子(第1格子21および第3格子23)とを光学撮像し、第1格子21よりも検出器12側の第2領域60bに被写体101が配置される場合に、被写体101と、複数の格子のうちの第2領域60bに隣接する格子(第1格子21および第3格子23)とを光学撮像する。このように構成すれば、第1格子21とX線源11との間に被写体101を配置する場合と、第1格子21と検出器12との間に被写体101を配置する場合とのいずれにおいても、作業者は、第1撮像部41および第2撮像部42により撮像された撮像画像(第1撮像画像2bおよび第2撮像画像2c)を視認することによって、被写体101と格子との配置関係を確認することができる。
【0070】
また、本実施形態では、上記のように、X線位相イメージングシステム100は、第1領域60aまたは第2領域60bに配置され、被写体101が載置される載置台31と、載置台31を移動させる入力操作を受け付ける操作部3とを備え、第1撮像部41および第2撮像部42(撮像部)は、操作部3に対する入力操作に基づいて第1領域60aにおいて移動している移動中の被写体101を光学撮像し、操作部3に対する入力操作に基づいて第2領域60bにおいて移動している移動中の被写体101を光学撮像するように構成されている。このように構成すれば、操作部3に対する入力操作に基づいて移動している最中の被写体101を撮像することができるので、作業者は、撮像された画像を確認しながら、被写体101の位置を変更することができる。そのため、被写体101の位置を微調整する場合に、被写体101が格子(第1格子21~第3格子23)と接触することを効果的に抑制することができる。
【0071】
また、本実施形態では、上記のように、X線位相イメージングシステム100は、被写体101が載置される載置台31を備え、載置台31は、被写体101を載置した状態で被写体101を回転させるように構成され、第1撮像部41および第2撮像部42(撮像部)は、載置台31に載置され回転している被写体101と、第1格子21および第2格子22の一方または両方とを光学撮像する。このように構成すれば、第1撮像部41および第2撮像部42によって、載置台31に載置された被写体101と、第1格子21および第2格子22の一方または両方とを撮像することができるので、撮像された画像(第1撮像画像2bおよび第2撮像画像2c)を作業者が確認することによって、回転する被写体101が、第1格子21および第2格子22に接触するか否かを判定することができる。その結果、回転する被写体101が格子と接触することを抑制することができる。
【0072】
複数の格子(第1格子21、第2格子22、および、第3格子23)を移動させることと回転させることとの少なくとも一方を行う格子駆動部21b、22b、および、23bを備え、第1撮像部41および第2撮像部42(撮像部)は、移動および回転の少なくとも一方を行っている、第1格子21および第2格子22の一方または両方を光学撮像する。このように構成すれば、第1撮像部41および第2撮像部42によって、移動および回転の少なくとも一方を行う格子(第1格子21および第2格子22の一方または両方)を光学撮像することができるので、撮像された画像(第1撮像画像2bおよび第2撮像画像2c)を作業者が確認することによって、被写体101が、第1格子21および第2格子22に接触するか否かを判定することができる。その結果、被写体101が移動および回転の少なくとも一方を行う格子と接触することを抑制することができる。
【0073】
また、上記のように、X線位相イメージングシステム100は、第1格子21よりもX線源11側の第1領域60aに配置される被写体101と、複数の格子のうちの第1領域60aに隣接する格子(第1格子21および第3格子23)とを光学撮像する第1撮像部41を備える。そして、X線位相イメージングシステム100は、第1撮像部41とは別個に設けられ、第1格子21よりも検出器12側の第2領域60bに配置される被写体101と、複数の格子のうちの第2領域60bに隣接する格子(第1格子21および第2格子22)とを光学撮像する第2撮像部42と、を備える。このように構成すれば、被写体101が第1領域60aに配置される場合、第1撮像部41によって被写体101と格子(第1格子21および第3格子23)とを撮像することができる。また、被写体101が第2領域60bに配置される場合、第2撮像部42によって被写体101と格子(第1格子21および第2格子22)とを撮像することができる。その結果、被写体101と格子とが接触しないことを確認するために、第1格子21とX線源11との間に被写体101を配置する場合と、第1格子21と検出器12との間に被写体101を配置する場合とのいずれにおいても、被写体101と格子との配置関係を確認することができる。また、1つの撮像部を、第1格子21を越えて移動させるように構成する場合には、1つの撮像部を移動させるための移動機構を設けることに起因して装置構成が複雑化することが考えられる。これに対して、本実施形態では、複雑化の要因となる移動機構を設ける必要がないので、装置構成の複雑化を抑制することができる。また、第1領域60aおよび第2領域60bの各々に撮像部を設けているのは、第1格子21の存在に起因して(つまり、第1格子21が第1領域60aおよび第2領域60bを光学的に仕切っているので)、第1領域60aおよび第2領域60bのいずれか一方に配置された1つの撮像部のみによって第1領域60aおよび第2領域60bの両方を撮像することが困難であることを本発明者が見出したことによる。
【0074】
また、本実施形態では、上記のように、第1撮像部41は、第1領域60aにおいて、X線照射軸10に対して垂直な方向(Z1方向側)に配置されており、第2撮像部42は、第2領域60bにおいて、X線照射軸10に対して垂直な方向(Z1方向側)に配置されている。このように構成すれば、第1撮像部41と第2撮像部42の両方において、載置台31に載置された状態の被写体101と格子との全体を撮像することができる。その結果、X線照射軸10に対して平行な方向(X方向)側、すなわち、被写体101から見てX線源11側、または、検出器12側から撮像する場合に比べて、被写体101が格子と接触しないことをより効果的に確認することができる。
【0075】
また、本実施形態では、上記のように、X線位相イメージングシステム100は、複数の格子(第1格子21、第2格子22、および、第3格子23)を上方から保持する格子保持部21a、格子保持部22a、および、格子保持部23aが配置されるフレーム部材61を備え、第1撮像部41および第2撮像部42は、フレーム部材61に配置されている。このように構成すれば、筐体60の壁面(天面)ではなくフレーム部材61に第1撮像部41および第2撮像部42を配置することによって、筐体60にネジ穴等の孔部を設けることなく第1撮像部41および第2撮像部42を被写体101の上方に配置することができる。そのため、X線を遮蔽するための筐体60に対して穴あけ加工を行うことなく第1撮像部41および第2撮像部42を設けることができる。その結果、第1撮像部41および第2撮像部42を設けるためにX線の遮蔽率が低下することを抑制することができる。
【0076】
また、本実施形態では、上記のように、X線位相イメージングシステム100は、第1撮像部41によって光学撮像された第1撮像画像2bと、第2撮像部42によって光学撮像された第2撮像画像2cとを選択的に表示部2(表示装置)に表示させる制御部1a(表示制御部)を備える。このように構成すれば、位相コントラスト画像2aの撮像を行う作業者は、表示部2に表示された第1撮像画像2bまたは第2撮像画像2cを視認することによって、被写体101の配置を容易に確認することができる。
【0077】
また、本実施形態では、上記のように、X線位相イメージングシステム100は、第1領域60aまたは第2領域60bに配置され、被写体101が載置される載置台31と、載置台31を、第1領域60aと第2領域60bとの間において移動させる駆動部32(載置台駆動部)とを備え、制御部1a(表示制御部)は、載置台31が第1領域60aに配置されている場合には、第1撮像画像2bを表示させ、載置台31が第2領域60bに配置されている場合には、第2撮像画像2cを表示させるように構成されている。このように構成すれば、制御部1aによって第1撮像画像2bと第2撮像画像2cとの表示を自動的に切り替えることができる。その結果、第1格子21を越えて被写体101を載置する載置台31を移動させる場合に、作業者は、載置台31の配置に対応する画像を容易に確認することができる。また、第1撮像画像2bと第2撮像画像2cとの表示を切り替えることにより、第1撮像画像2bと第2撮像画像2cとを並べて表示する場合に比べて、表示画面を簡略化することができる。
【0078】
また、本実施形態では、上記のように、複数の格子は、X線源11と第1格子21との間に配置された第3格子23を含み、第1撮像部41および第2撮像部42(撮像部)は、第1格子21と第3格子23との間の第1領域60aに被写体101が配置される場合、被写体101と、第1領域60aに隣接する第1格子21および第3格子23とを光学撮像し、第1格子21と第2格子22との間の第2領域60bに被写体101が配置される場合、被写体101と、第2領域60bに隣接する第1格子21および第2格子22とを光学撮像するように構成されている。このように構成すれば、作業者は、載置台31が第1領域60aに配置されている場合には、第1領域60aにおいて被写体101が接触する可能性のある第1格子21および第3格子23を含むように撮像された第1撮像画像2bを確認することができる。また、作業者は、載置台31が第2領域60bに配置されている場合には、第2領域60bにおいて被写体101が接触する可能性のある第1格子21および第2格子22を含むように撮像された第2撮像画像2cを確認することができる。その結果、被写体101が、第1領域60aと第2領域60bとのいずれに配置されている場合にも、作業者は、第1撮像画像2bおよび第2撮像画像2cを確認することによって、被写体101と格子との接触を効果的に抑制することができる。
【0079】
また、本実施形態では、上記のように、X線位相イメージングシステム100は、被写体101に照明光を照射する照明部50を備え、第1撮像部41および第2撮像部42(撮像部)は、照明部50からの照明光が照射された状態の被写体101を光学撮像するように構成されている。このように構成すれば、被写体101が配置される筐体60の内部が密閉されている場合に、照明部50による照明光を光源として、被写体101を撮像することができる。たとえば、移動中の載置台31に作業者が接触しないように筐体60の扉部を閉じた状態で載置台31を移動させるように構成されている場合にも、照明部50による照明光を光源として、筐体60の内部における被写体101を撮像して配置を確認することができる。また、X線が外部に漏洩することを抑制するために被写体101が配置された筐体60が密閉されている場合には、X線の照射が行われている最中の被写体101に対して、照明部50により照明光を照射することができる。そのため、X線撮影が行われている最中の被写体101を確認することができる。
【0080】
また、本実施形態では、第1撮像部41および第2撮像部42(撮像部)は、被写体101と、第1格子21および第2格子22の一方または両方を光学撮像することによって、動画像としての第1撮像画像2bおよび第2撮像画像2c(撮像画像)を撮像する。このように構成すれば、動画像としての第1撮像画像2bおよび第2撮像画像2cを確認することによって、被写体101と格子との配置関係をリアルタイムに確認することができる。そのため、被写体101と格子とが接触しないことをより確実に確認することができる。
【0081】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0082】
たとえば、上記実施形態では、X線位相イメージングシステム100を、載置台31に載置された被写体101を回転させて位相コントラスト画像2a(CT画像)を生成するように構成する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、X線位相イメージングシステム100を、被写体101を回転させずに位相コントラスト画像2a(透視画像)を生成するように構成してもよい。また、被写体101を、上下方向(Z方向)ではなくX線照射軸10の延びる方向(X方向)を回転軸として回転させるようにしてもよい。また、被写体101を回転させず、X線源11および検出器12を回転させながら(移動させながら)X線撮影を行うようにしてもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、第1撮像部41および第2撮像部42は、上方(Z1方向側、筐体60の天面側)のフレーム部材61に配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、第1撮像部41および第2撮像部42を、筐体60の上方の壁面(天面)の内部に直接的に配置するようにしてもよい。また、第1撮像部41および第2撮像部42を、筐体60内部(第1領域60aおよび第2領域60b)の上方ではなく側方に配置するようにしてもよい。また、第1撮像部41を、筐体60の内部のX線源11側(X2方向側)に配置するようにしてもよい。同様に、第2撮像部42を、筐体60の内部の検出器12側(X1方向側)に配置するようにしてもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、第1撮像部41および第2撮像部42の2つの撮像部が設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図8に示す変形例によるX線位相イメージングシステム300のように、1つの撮像部340が設けられていてもよい。この場合には、X線位相イメージングシステム300は、撮像部340を移動させる撮像部駆動部362を備えている。撮像部340は、コンピュータ301からの制御信号に基づいて、撮像部駆動部362により第1格子21を越えてX線照射軸10に沿う方向(X方向)に移動する。この場合、撮像部駆動部362は、載置台31が第1領域60aに位置する場合には撮像部340を第1領域60aの上方に位置するように移動させ、載置台31が第2領域60bに位置する場合には撮像部340も第2領域60bの上方に位置するように移動させる。すなわち、撮像部340は、撮像部駆動部362により移動することによって、第1領域60aに配置された載置台31に載置されている被写体101と、第1格子21および第3格子23とを光学撮像するとともに、第2領域60bに配置された載置台31に載置されている被写体101と、第1格子21および第2格子22とを光学撮像するように構成されている。
【0085】
これにより、1つの撮像部340を移動させることにより、第1格子21を越えて載置台31を移動させる場合にも、1つの撮像部340による撮像画像に基づいて、被写体101と、複数の格子(第1格子21、第2格子22、および、第3格子23)との配置関係を確認することができる。また、載置台31の移動に合わせて撮像部340を移動させることができるので、第1領域60a内、または、第2領域60b内において撮像画像における被写体101の拡大率を微調整するように載置台31をX線照射軸10に沿って移動させる場合にも、載置台31の真上(Z1方向側)に撮像部340を配置させることができる。そのため、載置台31に載置された被写体101を真上から撮像することができるので、被写体101と、格子(第1格子21、第2格子22、および、第3格子23)との配置関係を容易に確認することができる。
【0086】
また、上記実施形態では、X線源11および検出器12が水平方向(左右方向)に沿って筐体60の内部に配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、X線源11および検出器12が鉛直方向(上下方向)に沿って配置されるように構成してもよい。その場合には、被写体101が配置されている位置から、X線の照射軸に対して垂直な方向側に離間した位置(たとえば、側壁部分)に第1撮像部41および第2撮像部42を配置するようにすることが好ましい。
【0087】
また、上記実施形態では、筐体60の壁面に照明部50が配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、照明部50を、第1撮像部41および第2撮像部42と同様にフレーム部材61に配置するようにしてもよい。また、照明部50を第1撮像部41および第2撮像部42の各々に配置するようにしてもよい。
【0088】
また、上記実施形態では、駆動部32によって、載置台31を、第1領域60aと第2領域60bとの間において移動させる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、駆動部32を設けずに、第1領域60aおよび第2領域60bの両方の各々に載置台31を別個に配置するようにしてもよい。なお、その場合にも、被写体101は、第1領域60aまたは第2領域60bのいずれかに選択的に配置される。また、載置台31を取り外し可能に構成するとともに、第1領域60aおよび第2領域60bのいずれかに載置台31を取り付けることによって、載置台31を第1領域60aまたは第2領域60bに配置するようにしてもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、載置台31の移動に基づいて第1撮像画像2bと第2撮像画像2cとの表示を切り替えるように構成する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、操作部3に対する入力操作に基づいて、第1撮像画像2bと第2撮像画像2cとの表示を切り替えるようにしてもよい。
【0090】
また、上記実施形態では、第1撮像部41が、第1格子21と第3格子23との両方を撮像し、第2撮像部42が、第1格子21と第2格子22との両方を撮像する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、第1撮像部41が、第1格子21および第3格子23のいずれか一方のみを撮像可能な視野角を有していてもよい。また、第2撮像部42が、第1格子21および第2格子22のいずれか一方のみを撮像可能な視野角を有していてもよい。
【0091】
また、上記実施形態では、X線位相イメージングシステム100において、筐体60の外部にコンピュータ1(制御部1aおよび画像処理部1b)と、表示部2と、操作部3とが、配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、X線位相イメージングシステム100において、X線源11および検出器12が配置される筐体60から離間した位置にコンピュータ1(制御部1aおよび画像処理部1b)と、表示部2と、操作部3とを配置してもよい。また、タブレットPCのように、コンピュータ1に、表示部2と操作部3とが一体的に構成されていてもよい。
【0092】
また、上記実施形態では、コンピュータ1において、制御部1aと画像処理部1bとが別個に構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、制御部1aと画像処理部1bとを共通のハードウェア(プロセッサ)に構成してもよい。
【0093】
また、上記実施形態では、被写体101を直接的に載置台31に載置させる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、被写体101を保持する被写体保持部に被写体101を取り付けた状態で、載置台31に載置するようにしてもよい。
【0094】
また、上記実施形態では、第1撮像画像2bと第2撮像画像2cとのいずれかを切り替えて表示部2に表示させる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、第1撮像画像2bと第2撮像画像2cとを並べて表示させるようにしてもよい。
【0095】
また、上記実施形態では、複数の格子として、第1格子21と、第2格子22と、第3格子23との3つの格子を含む構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、複数の格子は、第3格子23を含んでいなくてもよい。複数の格子が第3格子23を含まない場合、X線位相イメージングシステム100は、可干渉性が高いX線を照射可能なX線源11を備えていればよい。また、その場合には、第1撮像部41を、X線源11(X線源11のカバー部材)と第1格子21とを撮像可能な視野角を有するように構成してもよい。
【0096】
[態様]
上記した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0097】
(項目1)
被写体にX線を照射するX線源と、
前記X線源から照射されたX線を検出する検出器と、
前記X線源と前記検出器との間に配置され、前記X線源からX線が照射される第1格子と、前記第1格子からのX線が照射される第2格子とを含む複数の格子と、
前記被写体と、前記第1格子および前記第2格子の一方または両方とを光学撮像する撮像部と、を備える、X線位相イメージングシステム。
【0098】
(項目2)
前記撮像部は、
前記第1格子よりも前記X線源側の第1領域に前記被写体が配置される場合に、前記被写体と、前記複数の格子のうちの前記第1領域に隣接する格子とを光学撮像し、前記第1格子よりも前記検出器側の第2領域に前記被写体が配置される場合に、前記被写体と、前記複数の格子のうちの前記第2領域に隣接する格子とを光学撮像する、項目1に記載のX線位相イメージングシステム。
【0099】
(項目3)
前記第1領域または前記第2領域に配置され、前記被写体が載置される載置台と、
前記載置台を移動させる入力操作を受け付ける操作部とをさらに備え、
前記撮像部は、前記操作部に対する入力操作に基づいて前記第1領域において移動している移動中の前記被写体を光学撮像し、前記操作部に対する入力操作に基づいて前記第2領域において移動している移動中の前記被写体を光学撮像するように構成されている、項目2に記載のX線位相イメージングシステム。
【0100】
(項目4)
前記被写体が載置される載置台をさらに備え、
前記載置台は、前記被写体を載置した状態で前記被写体を回転させるように構成され、
前記撮像部は、前記載置台に載置され回転している前記被写体と、前記第1格子および前記第2格子の一方または両方とを光学撮像する、項目1~3のいずれか1項に記載のX線位相イメージングシステム。
【0101】
(項目5)
前記複数の格子を移動させることと回転させることとの少なくとも一方を行う格子駆動部をさらに備え、
前記撮像部は、移動および回転の少なくとも一方を行っている、前記第1格子および前記第2格子の一方または両方を光学撮像する、項目1~4のいずれか1項に記載のX線位相イメージングシステム。
【0102】
(項目6)
前記撮像部は、
前記第1格子よりも前記X線源側の第1領域に配置される前記被写体と、前記複数の格子のうちの前記第1領域に隣接する格子とを光学撮像する第1撮像部と、
前記第1撮像部とは別個に設けられ、前記第1格子よりも前記検出器側の第2領域に配置される前記被写体と、前記複数の格子のうちの前記第2領域に隣接する格子とを光学撮像する第2撮像部と、を含む、項目1~5のいずれか1項に記載のX線位相イメージングシステム。
【0103】
(項目7)
前記第1撮像部は、前記第1領域において、X線照射軸に対して垂直な方向に配置されており、
前記第2撮像部は、前記第2領域において、X線照射軸に対して垂直な方向に配置されている、項目6に記載のX線位相イメージングシステム。
【0104】
(項目8)
前記複数の格子を上方から保持する格子保持部が配置されるフレーム部材をさらに備え、
前記第1撮像部および前記第2撮像部は、前記フレーム部材に配置されている、項目7に記載のX線位相イメージングシステム。
【0105】
(項目9)
前記第1撮像部によって光学撮像された第1撮像画像と、前記第2撮像部によって光学撮像された第2撮像画像とを選択的に表示装置に表示させる表示制御部をさらに備える、項目6~8のいずれか1項に記載のX線位相イメージングシステム。
【0106】
(項目10)
前記第1領域または前記第2領域に配置され、前記被写体が載置される載置台と、
前記載置台を、前記第1領域と前記第2領域との間において移動させる載置台駆動部とをさらに備え、
前記表示制御部は、前記載置台が前記第1領域に配置されている場合には、前記第1撮像画像を表示させ、前記載置台が前記第2領域に配置されている場合には、前記第2撮像画像を表示させるように構成されている、項目9に記載のX線位相イメージングシステム。
【0107】
(項目11)
前記複数の格子は、前記X線源と前記第1格子との間に配置された第3格子をさらに含み、
前記撮像部は、
前記第1格子と前記第3格子との間の第1領域に前記被写体が配置される場合、前記被写体と、前記第1領域に隣接する前記第1格子および前記第3格子とを光学撮像し、
前記第1格子と前記第2格子との間の第2領域に前記被写体が配置される場合、前記被写体と、前記第2領域に隣接する前記第1格子および前記第2格子とを光学撮像するように構成されている、項目1~10のいずれか1項に記載のX線位相イメージングシステム。
【0108】
(項目12)
前記被写体に照明光を照射する照明部をさらに備え、
前記撮像部は、前記照明部からの照明光が照射された状態の前記被写体を光学撮像するように構成されている、項目1~11のいずれか1項に記載のX線位相イメージングシステム。
【0109】
(項目13)
前記撮像部は、1つ設けられており、
前記撮像部を移動させる撮像部駆動部をさらに備える、項目1~5のいずれか1項に記載のX線位相イメージングシステム。
【0110】
(項目14)
前記撮像部は、前記被写体と、前記第1格子および前記第2格子の一方または両方とを光学撮像することによって、動画像としての撮像画像を撮像する、項目1~13のいずれか1項に記載のX線位相イメージングシステム。
【符号の説明】
【0111】
1a 制御部(表示制御部)
2 表示部(表示装置)
2b 第1撮像画像(撮像画像)
2c 第2撮像画像(撮像画像)
3 操作部
10 X線照射軸
11 X線源
12 検出器
21 第1格子
21a、22a、23a 格子保持部
21b、22b、23b 格子駆動部
22 第2格子
23 第3格子
31 載置台
32 駆動部(載置台駆動部)
41 第1撮像部(撮像部)
42 第2撮像部(撮像部)
50 照明部
60a 第1領域
60b 第2領域
61 フレーム部材
100、300 X線位相イメージングシステム
101 被写体
340 撮像部
362 撮像部駆動部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8