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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091710
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】糸条ミシン縫製構造
(51)【国際特許分類】
   D05B 35/06 20060101AFI20230623BHJP
【FI】
D05B35/06
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022090481
(22)【出願日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】110147654
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】521205342
【氏名又は名称】麗特絲股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】姚 明賢
(72)【発明者】
【氏名】姚 順泰
【テーマコード(参考)】
3B150
【Fターム(参考)】
3B150AA22
3B150BB07
3B150CE26
3B150CE27
3B150QA01
(57)【要約】
【課題】 糸条ミシン縫製構造を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明は、シート状物体と、少なくとも1本の上糸と、少なくとも1本の糸条とを備えた糸条ミシン縫製構造に関し、前記上糸及び糸条は前記シート状物体にミシンで縫製され、前記上糸が前記シート状物体の表面に位置する。前記糸条は、前記上糸の縫い方向にそって設けられ、前記上糸によって前記シート状物体の表面に固定される。これを介して、前記糸条は、前記上糸によって前記シート状物体の表面に固定され、前記物体を貫通する必要がないため、損傷することはなく、構造及び機能の完全性を保つことができる。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸条ミシン縫製構造であって、
表面及び前記表面と反対側の底面を有するシート状物体と、
前記シート状物体にミシンで縫製され、前記シート状物体の表面に位置する少なくとも1本の上糸と、
前記シート状物体の表面に位置し、前記上糸の縫い方向に沿って設けられ、前記上糸によって前記シート状物体の表面に固定される少なくとも1本の糸条と、
を備える糸条ミシン縫製構造。
【請求項2】
前記上糸は、前記シート状物体の表面上で縫い方向に沿って複数の縫い目を形成し、前記糸条が前記上糸の縫い目によって押し付けられる請求項1に記載の糸条ミシン縫製構造。
【請求項3】
前記糸条は、それぞれが1本の前記上糸によって固定され、かつ前記糸条は、前記上糸の両側から前記上糸を往復に回して通過する請求項1又は2に記載の糸条ミシン縫製構造。
【請求項4】
各前記糸条は、1本の前記上糸によって固定され、かつ前記糸条は、前記上糸の隣り合う縫い目を順次通す請求項2に記載の糸条ミシン縫製構造。
【請求項5】
前記糸条は、それぞれが1本の前記上糸によって固定され、かつ前記糸条は、前記上糸の隣り合わない縫い目を通し、隣り合わない縫い目によって固定される請求項2に記載の糸条ミシン縫製構造。
【請求項6】
前記糸条を固定する隣り合う2つの縫い目の間に1つ又は前記糸条を押し付けない複数の縫い目を隔てる請求項5に記載の糸条ミシン縫製構造。
【請求項7】
少なくとも1本の前記上糸によって固定される複数の糸条を備える請求項1に記載の糸条ミシン縫製構造。
【請求項8】
前記上糸の両側に対称になるように設けられた2本の糸条を含む請求項7に記載の糸条ミシン縫製構造。
【請求項9】
前記糸条は、反射糸、夜光糸、金属光沢を有する糸条又は導電性を有する糸条である請求項1に記載の糸条ミシン縫製構造。
【請求項10】
前記上糸及び前記上糸で固定された前記糸条は、それぞれ複合縫製糸を形成し、前記複合縫製糸が前記シート状物体に図案を刺繍することができる請求項1、2、4~9のいずれか一項に記載の糸条ミシン縫製構造。
【請求項11】
前記シート状物体の表面は、複数の上糸、及び1本又は複数の糸条を有する請求項1、2、4~6に記載の糸条ミシン縫製構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸条の損傷及び機能低下を避けるため、糸条を固定するミシン縫製構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
衣服は、人々の生活必需品であり、反射ストリップ又は反射シートを衣服に貼り付けて、光を反射させるなどの衣服に反射機能を持たせることで、夜間の人々の活動の安全性を高め、事故が発生する可能性を減らすことができる。
【0003】
反射効果の提供から言えば、上記反射ストリップ又は反射シートを貼り付ける以外に、別の方法として反射糸を衣服に縫い付けることであり、反射糸の表面に多数の微小ガラスビーズが接着され、これらガラスビーズを介して、反射糸が衣服に反射効果を与えることができる。
【0004】
反射糸にガラスビーズが埋め込まれることにより、切れやすくなるため、反射糸の裸糸を直接ミシンで縫製できず、他の糸と撚り合わせて双糸、三子糸にしてから反射糸を衣服にミシンで縫製することができる。しかしながら、上記の撚り合わせた複数の撚り糸の糸の太さは、太すぎて細くなく、ミシン縫製の貫通抵抗も大きくなってしまう。
【0005】
さらに、他の糸と撚り合わせて複数の撚り糸にすることで反射糸を衣服にミシンで縫い付けることができるが、生地を通過する過程で、反射糸の表面のガラスビーズが生地との摩擦により脱落し、反射糸を損傷し、表面のガラスビーズが不完全になり、反射糸の反射性に影響を与え、反射衣服の瑕疵となる。反射糸のガラスビーズがミシン縫製過程で脱落することは、当業者が解決できない難題であった。
【0006】
夜光粒子を有する夜光糸、表面に金属光沢を有する糸、又は表面に導電性材料を有する糸などの他の機能性糸も、ミシンで衣服に縫い付けた場合、同じ問題があり、表面上の物質がミシン縫製過程中の摩擦により脱落又は損傷して、不良品となっていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の欠点を解決することを意図し、糸体が損傷して使用機能に影響を与えないように、糸条を通過させることなく物体に固定できる糸条ミシン縫製構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明により提供される糸条ミシン縫製構造は、
ミシン糸をミシンで縫製できるためのシート状物体と、
前記シート状物体にミシンで縫製され、前記シート状物体の表面に位置する少なくとも1本の上糸と、
前記シート状物体の表面に位置し、前記上糸の縫い方向に沿って設けられ、前記上糸によって前記シート状物体の表面に固定される少なくとも1本の糸条とを備える。
【0009】
上記ミシン縫製構造を介して、前記糸条は前記上糸によって前記シート状物体の表面に固定され、前記物体を貫通する必要がないため、損傷することはなく、完全性及び既存の機能を保つことができる。さらに、糸条は、正常状態に維持し、前記糸条を含む物体が不良品にならない。
【0010】
また、前記糸条は、物体を通過する必要がなく固定されるため、裸糸として直接使用することができ、製造コストを削減でき、かつ複数の撚り糸として他の糸と撚り合わせる必要がないため、前記糸条の糸の太さが太くならず、元の糸の太さを維持できる。
【0011】
一実施態様において、前記上糸は、前記シート状物体の表面上で縫い方向に沿って複数の縫い目を形成し、前記糸条が前記上糸の縫い目によって押し付けられる。
【0012】
一実施態様において、前記糸条は、前記上糸の両側から前記上糸を往復に回して通過する。
【0013】
一実施態様において、前記糸条は、隣り合う縫い目を順次通し、これら縫い目によって押し付けられる。
【0014】
一実施態様において、前記糸条は、1つおきの縫い目を通し、1つおきの縫い目によって押し付けられる。
【0015】
上記の実施態様において、糸条を押し付ける2つの隣り合う縫い目の間に1つ又は複数の糸条を押し付けない縫い目を有する。
【0016】
一実施態様において、前記糸条ミシン縫製構造は、前記上糸の縫い方向に沿って設けられ、少なくとも1本の上糸によって押し付けられる複数の糸条を有する。
【0017】
一実施態様において、2本の糸条と、上糸とを含み、前記2本の糸条は、前記上糸の両側に対称的に設けられる。
【0018】
前記糸条は、反射糸、夜光糸、金属光沢を有する糸条又は導電性を有する糸条などの様々な糸体であり得る。複数の前述糸条を前記物体にミシンで縫う場合、機能の異なる糸条になり得る。
【0019】
前記上糸及び前記糸条は、複合縫製糸を形成し、前記シート状物体のミシン糸として、又は前記物体に様々な刺繍図案を刺繍するための刺繍糸とすることもできる。
【0020】
本発明の目的、特徴及び効果は、下記の好ましい実施例の説明及び図面から理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1の好ましい実施例に係る糸条ミシン縫製構造の構成要素を示す図である。
図2】本発明の第1の好ましい実施例に係る糸条ミシン縫製構造の上面図である。
図3図2の底面図である。
図4図2の4-4線に沿った断面図である。
図5】本発明の第1の好ましい実施例に係る糸条ミシン縫製構造の実物写真の上面図である。
図6図5の実物写真の底面図である。
図7A図2の糸条ミシン縫製構造のミシン縫製プロセスの概略図である。
図7B図2の糸条ミシン縫製構造のミシン縫製プロセスの概略図である。
図7C図2の糸条ミシン縫製構造のミシン縫製プロセスの概略図である。
図8】本発明の第2の好ましい実施例に係る糸条ミシン縫製構造の上面図である。
図9】本発明の第3の好ましい実施例に係る糸条ミシン縫製構造の上面図である。
図10】本発明の複合縫製糸で刺繍図案を刺繍したものの概略図である。
図11A】本発明の第4の好ましい実施例に係る糸条ミシン縫製構造の上面図である。
図11B】本発明の第4の好ましい実施例に係る糸条ミシン縫製構造の底面図である。
図12A】本発明の第5の好ましい実施例に係る糸条ミシン縫製構造の上面図である。
図12B】本発明の第5の好ましい実施例に係る糸条ミシン縫製構造の底面図である。
図13A】本発明の第6の好ましい実施例に係る糸条ミシン縫製構造の上面図である。
図13B】本発明の第6の好ましい実施例に係る糸条ミシン縫製構造の底面図である。
図14A】本発明の第7の好ましい実施例に係る糸条ミシン縫製構造の上面図である。
図14B】本発明の第7の好ましい実施例に係る糸条ミシン縫製構造の底面図である。
図15A】本発明の第8の好ましい実施例に係る糸条ミシン縫製構造の上面図である。
図15B】本発明の第8の好ましい実施例に係る糸条ミシン縫製構造の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1を参照すると、本発明の第1の好ましい実施例で提供される糸条ミシン縫製構造に含まれる構成要素は、シート状物体20と、2本のミシン糸30、36と、糸条(糸又は繊維)40とを備え、糸条40は特に機能性を有する糸条(糸又は繊維)で、本明細書及び特許請求の範囲において糸条と呼ばれる。
【0023】
前記シート状物体20は、ミシン糸をミシンで縫製できるための素材で、可撓性を持ち、例えば織物(布地)、皮革(人工皮革又は天然皮革)、プラスチック、紙などである。本実施例の前記シート状物体20は、織物で、表面22及びそれと反対側の底面24を有する。本実施例の前記シート状物体20は、織物を例にすると、衣服、ズボン、靴、靴下、手袋、帽子、ネクタイ、マフラー、ハンカチ、ストール、スカーフなどの物品、又はその他のこれらに類するものであり得る。
【0024】
図2図3を参照すると、前記2本のミシン糸30、36は、縫製に使用できる様々な糸で、可人工又は自然素材で作ることができ、本縫ミシンの縫い方で前記シート状物体20上に縫い付けられ、ミシン糸30の1つは上糸で、前記物体20の表面22に縫い付けられ、他のミシン糸36が下糸で、前記物体20の底面24に設けられる。
【0025】
前記糸条40は、前記シート状物体20の表面22に設けられ、前記上糸30によって押し付けられて固定される。前記糸条40は、反射糸、夜光糸、金属光沢を有する糸条又は導電性を有する糸条であり得る。反射糸の表面には、微小ガラスビーズがあることで、反射性を有する。夜光糸の表面には夜光粒子があるため、暗閣或いは薄暗い場所で光を発することができる。金属光沢を有する糸条は、高分子素材の糸条にアルミニウムや銀の微小物質を混ぜ合わせることで、前記糸条の外観に金属光沢を生じさせ、かつ異なる色の金属光沢にすることができる。導電性を有する糸条は、高分子の糸条内部に導電材料を混ぜ合わせることで、導電性を有する。銅糸などの金属糸条を本発明の導電性糸条として使用できる。本実施例では、反射糸を前記糸条40として選択した。
【0026】
本発明は、本縫ミシンの縫い方で前記2本のミシン糸30、36を前記物体20に縫い付け、ミシン縫製の過程中に前記上糸30で前記糸条40を固定する。本実施例は、ミシンを用いて前記2本のミシン糸30、36及び前記糸条40を前記物体20に縫い付け、糸条40を敷設するための構造はミシンに追加で取り付けられた機構であり、前記機構は本発明の対象物ではないため、ここでその説明を省略する。
【0027】
図4を参照すると、本縫ミシン縫製過程中において、ミシン針(図示せず)は、1つの針落ち位置Tで針を落とし、針落ち位置Tでミシン針が前記物体(例えば織物)20を突刺し、上糸30を織物20の表面22から前記織物20の底面24まで貫通させ、次にミシン針は上糸30を上に引っ張って前記織物の表面22に戻すことで、前記ミシン針が1回の本縫ミシンの縫製ストロークを完了する。1回のミシン縫製ストロークにおいて、前記上糸30は、前記織物20の底面24に1回の曲がりを生じさせ、前記曲がりが下糸36を渡る1つの渡り部34を形成する。次のミシン縫製ストロークを行う時、前記物体20がミシンによって一定距離移動され、前記ミシン針が別の針落ち位置Tで別のミシン縫製ストロークを行い、上糸30を前記織物20の底面24に貫通させ、再び上糸30を織物20の表面に引き戻し、このように針が落ちるミシン縫製ストロークを繰り返し、毎回のミシン縫製ストロークにおいて、前記上糸30が前記織物20の底面に前記下糸36を渡る1つの渡り部34を形成することで、下糸36と上糸30を前記織物の底面に互いに絡み合わせる。同時に、前記物体20の表面22上で、前記上糸30は、隣り合う2つの針落ち位置Tごとに1つの縫い目32を形成し、これら縫い目32がミシン糸30の縫い方向Dに沿って並べられる。通常、これら縫い目32は同じ長さで、等間隔に並べられる。図内に示される縫い方向Dが直線方向を例にするものであり、ミシン糸30の縫い方向が直線方向に限らず、円弧方向、多角形方向、又はジグザグ縫い方向等の様々な縫い方向であり得る。
【0028】
前記糸条40は、前記上糸30の進行方向に伴い配置され、すなわち、糸条40の配置方向は上糸30の縫い方向に伴い、糸条は上糸の縫い目32によって押し付けられることで、前記物体20の表面に挟んで押し付けられる。ミシン縫製過程で、ミシン糸30、36が繰り出し続けられる以外に、前記糸条40も繰り出し続けられ、かつ前記糸条40がこれらの縫い目32を順次回して通過し、縫い目32によって押し付けられる。図5及び図6は、本発明の糸条ミシン縫製構造10の実物写真で、構造を図2及び図3に示す。
【0029】
図7は、上糸30と糸条40のミシン縫製プロセスを示す概略図で、図7Aに示すように、糸条40はまず一側(例えば右側R)から他側(例えば左側L)に繰り出され、次に図7Bに示すように、ミシン針が別の針落ち位置T2で1回のミシン縫製ストロークを行い、針落ち位置T1とT2との間に縫い目32aを形成させ、前記糸条40を押し付け、その後、前記糸条40を左側Lから右側Rに引っ張り、さらに図7Cに示すように、ミシン針が次の針落ち位置T3で1回のミシン縫製ストロークを行い、上糸30に別の縫い目32bを形成させて、糸条40を押し付け、このように繰り返すと、本発明の糸条ミシン縫製構造10の縫製を完了できる。糸条40は、これら縫い目32に波状に回して通過する。前記波状とは、前記糸条40が前記上糸30の左右の両側から前記上糸30を往復に回して通過することを意味する。図内のFは、ミシン縫製プロセスで物体20の移動方向を示し、Dはミシン糸の縫い方向を示している。
【0030】
前記上糸30及び前記糸条40は、複合縫製糸50を形成し、前記物体20にミシンで縫製され、前記物体の表面(外向きの表面)に位置する。
【0031】
図2に示す好ましい実施例において、前記糸条40は、隣り合う縫い目32を順次かつ規則的に通し、各縫い目32によって押し付けられる。
【0032】
図8は、本発明の第2の好ましい実施例で提供される糸条ミシン縫製構造11を示し、同様にシート状物体20と、2本のミシン糸(上糸及び下糸)30、36(図内に下糸36は示されていない)と、糸条(或いは繊維)40とを備え、同じ構成要素には同じ符号を付し、各構成要素は前の好ましい実施例の説明から理解することできるため、説明を省略する。
【0033】
本実施例において、前記糸条40は、全ての縫い目32を通すのではなく、1つおきの縫い目32を規則的に通し、1つおきの縫い目32によって押し付けられる。図8に示すように、前記糸条40を押し付ける縫い目32cは1つおき、縫い目32cの間にある縫い目32dは糸条40を押し付けない。糸条40を押し付ける2つの隣り合う縫い目32cの間に糸条40を押し付けない1つから複数の縫い目32dで隔てることができる。図8は、糸条40を押し付ける2つの隣り合う縫い目32cは、糸条40を押し付けない縫い目32dで隔てることを示している。
【0034】
前記糸条40及び前記糸条40を押し付ける前記上糸30は、本実施例の複合縫製糸50を形成し、前記物体20にミシンで縫い付けられ、表面22に位置する。
【0035】
図9は、本発明の第3の好ましい実施例で提供される糸条ミシン縫製構造12を示し、同様にシート状物体20と、2本のミシン糸(上糸及び下糸)30、36(図内に下糸36は示されていない)と、複数の糸条(或いは繊維)40(40a、40b)とを備え、同じ構成要素には同じ符号を付した。
【0036】
本実施例は、2本の糸条40a、40bが前記シート状物体20の表面22に設けられ、上糸30の縫い目32によって押し付けられることを示している。前記2本の糸条40a、40bは、図9に示すように、前記上糸30の両側において前記物体20上に対称的に設けられ、前記2本の糸条は縫い目32を通して、縫い目32によって押し付けられ、前記2本の糸条が対称的に設けられ時、糸条を押し付ける縫い目32は同時に前記2本の糸条40a、40bを押し付ける。前記2本の糸条40a、40bも前記物体20上に非対称に設けることができることが理解され得る。
【0037】
図9は、前記2本の糸条40a、40bが隣り合う縫い目32を順次通し、これら縫い目32によって押し付けられることで前記物体20の表面22に固定されることを示す。同様に、前記2本の糸条40a、40bは、図8に示すように1つおきの縫い目32を通し、1つおきの縫い目32により押し付けられることができる。前記2本の糸条40a、40bが縫い目32によって押し付けられる間隔は異なっていてもよい。例えば前記糸条40aを押し付ける2つの隣り合う縫い目の間に糸条40aを押し付けない1つの縫い目で隔て、糸条40bを押し付ける2つの隣り合う縫い目の間に糸条40bを押し付けない2つの縫い目で隔てる。
【0038】
前記2本の糸条40a、40bは、同じ機能の糸条又は異なる機能の糸条であり得る。例えば前記2本の糸条は、両方とも反射糸、夜光糸、金属光沢を有する糸条、又は導電性を有する糸条である。前記2本の糸条は、異なる機能の糸条である場合、一方の糸条が反射糸で、他方の糸条が夜光糸、金属光沢を有する糸条又は導電性を有する糸条であり得、これをもって類推する。
【0039】
前記2本の糸条40及び前記2本の糸条を押し付ける前記上糸30は、本実施例の複合縫製糸50を形成し、前記物体20上にミシンで縫い付けられる。上述の各図面から分かるように本発明の複合縫製糸50は、物体上にミシンで縫い付けられるミシン糸とすることができ、例えば図10の物体(例えば布地)20の左下側に示すように、物体20の縁をミシンで縫うミシン糸である。
【0040】
図10は、本発明の糸条ミシン縫製構造13の応用例で、前記複合縫製糸50は刺繍糸としても使用できることを示す。ミシン又は電気刺繍機(図示せず)で、前記複合縫製糸50で物体20上に様々な刺繍図案60を刺繍し、前記図案60は様々な図案(例えば花、商標のLOGO)又は文字であり得る。図10の刺繍図案60は、単なる例示である。
【0041】
図11図15は、オーバーロックミシン(thread babylock、thread overlock)、カバーステッチミシン(thread coverstitch、thread coverstitch with binding)、又はフラットロック ミシン(flatlock)等の異なるミシンによって完成された本発明の糸条ミシン縫製構造のいくつかの実施例を示す。オーバーロックミシンは、1本針(1本のミシン針)3本糸(3本のミシン糸)、2本針4本糸のモデルに分けることができる。カバーステッチミシンは、2本針3本糸、2本針4本糸、3本針5本糸のモデルを有する。フラットロックミシンは、4本針6本糸のミシンである。本発明の糸条40を縫製するため、以下に記載の前記各種ミシンに前記糸条40を配置するための配置機構が取り付けられている。
【0042】
図11A及び図11Bは、1台の1本針3本糸オーバーロックミシンで縫製された本発明の糸条ミシン縫製構造14の表面(図11A)及び裏面(図11B)を示し、3本のミシン糸及び1本の糸条(反射糸、夜光糸、導電性糸条等)40を含む。前記3本のミシン糸のうち1本は、物体20の表面22に縫い付けられた上糸30で、ミシンの縫い方向に沿って直線的に並べられる複数の縫い目32を有し、他の2本のミシン糸がそれぞれ下糸36及び渡り糸38である。前記糸条40は、物体20の表面22に位置し、前記上糸30の縫い目32によって押し付けられて、物体20の表面22に固定される。前記3本のミシン糸30、36、38の間の結合構造は、本発明の対象ではないため、説明を省略する。
【0043】
図12A及び図12Bは、1台の2本針4本糸オーバーロックミシンで縫製された本発明の糸条ミシン縫製構造15の表面及び裏面を示し、4本のミシン糸及び2本の糸条40を含む。前記4本のミシン糸のうち2本は、物体20の表面22の上糸30で、各上糸30が直線的に延びる複数の縫い目32を有する。他の2本のミシン糸は、それぞれ下糸36及び渡り糸38である。前記2本の糸条40は、前記2本の上糸30の縫い目32によって押し付けられて、物体20の表面22に固定される。同様に、ミシン糸30、36、38の間の結合構造は、本発明の対象ではない。
【0044】
図13A及び図13Bは、1台の2本針3本糸カバーステッチミシンで縫製された本発明の糸条ミシン縫製構造16を示し、3本のミシン糸及び2本の糸条40を含み、このうちの2本のミシン糸は上糸30で、物体20の表面に位置し、直線的に延びる複数の縫い目32を有する。他の1本ミシン糸は、下糸36である。前記2本の糸条40は、それぞれ前記二上糸30の縫い目32によって押し付けられて、物体20の表面22に固定される。
【0045】
図14A及び図14Bは、1台の2本針4本糸カバーステッチミシンで縫製された本発明の糸条ミシン縫製構造17を示し、4本のミシン糸及び2本の糸条40を含み、このうちの2本ミシン糸は上糸30で、それぞれ直線的に延びる複数の縫い目32を有する。他の2本のミシン糸は、下糸36及び渡り糸38である。前記2本の糸条40は、それぞれ前記2本の上糸30の縫い目32によって押し付けられて、物体20の表面22に固定される。
【0046】
図15A及び図15Bは、1台の3本針5本糸カバーステッチミシンで縫製された本発明の糸条ミシン縫製構造18を示し、5本のミシン糸及び3本の糸条40を含む。このうちの3本のミシン糸は、物体20の表面22にミシンで縫い付けられた上糸30で、複数の縫い目32を有する。他の2本のミシン糸は、下糸36及び渡り糸38である。前記3本の糸条40は、それぞれ前記3本の上糸30の縫い目32によって押し付けられて、物体20の表面22に固定される。
【0047】
前述の4本針6本糸フラットロックミシンの縫製構造は、4本の上糸を有し、物体の表面に位置し、1本又は4本の糸条を上糸の縫い目に固定させることができる。
【0048】
図11A図15Aは、複数の糸条40が複数の上糸30の縫い目32によって固定されることを示し、実施時、1本の糸条40が複数の上糸の1つによって固定され得る。また、各糸条40は図8に示すように、隣り合わない縫い目32によって固定され得る。各上糸30は、図9に示すように、複数の糸条40を固定できる。各上糸30及び前記上糸に固定される1本又は複数の糸条40は、複合縫製糸50を形成する。
【0049】
本発明を介して、物体20表面にミシンで縫い付けられた上糸30を利用して特定の糸条(例えば反射糸)40を様々な物品の表面に固定でき、前記特定の糸条は物品を貫通せず、機能を損なうことなく、構造及び機能の完全性を維持することができる。本発明の上糸30及び糸条40で形成された複合縫製糸50は、衣類、ズボン、帽子などの被服の縫製糸、皮革の縫製糸、ランドセル、リュクサック、ブリーフケース、ハンドバッグ等の鞄類物品の縫製線、靴類の縫製線とすることができる。刺繍糸として、物体の表面に刺繍することで、前記特定の糸条40をミシン糸30で物品の表面に固定させることができ、人々も前記物品の表面から完全な糸条40を見ることができ、例えば金属光沢を有する糸条を見ることができ、糸条40の機能を物品の表面に直接表現させることができ、例えば反射糸は衣服に反射機能を提供し、夜光糸が衣服に夜光機能を提供する。
【0050】
糸条40を反射糸として例にすると、本発明の構造特徴は、反射糸を衣服の表面に縫い付け、反射糸が衣服の生地を貫通する必要がないため、反射糸の反射機能を損なうことがなく、反射糸表面の微小ガラスビーズの完全性を維持できることで、反射糸をミシンで縫製した衣服に不良品がなく、製造歩留まりが向上する。
【0051】
本発明を用いて反射糸を物体に縫い付ける場合、反射糸を物体(生地)に貫通する必要がなく、反射糸の裸糸を直接使用でき、反射糸を他の糸と撚り合わせて複数の撚り糸にする必要がない。従来技術と比較して、本発明は反射糸の裸糸を直接使用できるため、反射糸の製造コスト及び時間を削減するだけでなく、反射糸の裸糸を直接使用するため、太さが太くならない。
【符号の説明】
【0052】
10~18 糸条ミシン縫製構造
20 シート状物体
22 表面
24 底面
30 上糸(ミシン糸)
32(32a~32d) 縫い目
34 渡り部
36 下糸(ミシン糸)
38 渡り糸(ミシン糸)
40(40a、40b) 糸条
50 複合縫製糸
60 刺繍図案
T(T1~T3) 針落ち位置
D ミシンの縫い方向
F 移動方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
【手続補正書】
【提出日】2023-05-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸条ミシン縫製構造であって、
表面及び前記表面と反対側の底面を有するシート状物体と、
少なくとも1本の下線と、
上糸であって、前記シート状物体にミシンで縫製され、前記上糸が1つの方向に沿って前記シート状物体の表面に縫製され、かつ前記シート状物体の表面上で縫い方向に沿って複数の縫い目を形成し、各縫い目の両端部が縫い方向に沿って並べられ、前記下線が前記シート状物体の底面に位置されかつ前記上糸と絡み合う、少なくとも1本の上糸と、
糸条であって、前記糸条が反射糸または夜光糸であり、前記シート状物体の表面に位置し、前記上糸の縫い方向に沿って設けられ、前記上糸の縫い目によって前記シート状物体の表面に固定される少なくとも1本の糸条と、
を備える糸条ミシン縫製構造。
【請求項2】
前記糸条が前記上糸の縫い目によって押し付けられる請求項1に記載の糸条ミシン縫製構造。
【請求項3】
前記糸条は、それぞれが1本の前記上糸の縫い目によって固定され、かつ前記糸条は、前記上糸の両側から前記上糸の縫い目を往復に回して通過する請求項1又は2に記載の糸条ミシン縫製構造。
【請求項4】
各前記糸条は、1本の前記上糸によって固定され、かつ前記糸条は、前記上糸の隣り合う縫い目を順次通す請求項1又は請求項2に記載の糸条ミシン縫製構造。
【請求項5】
前記糸条は、それぞれが1本の前記上糸によって固定され、かつ前記糸条は、前記上糸の隣り合わない縫い目を通し、隣り合わない縫い目によって固定される請求項1又は請求項2に記載の糸条ミシン縫製構造。
【請求項6】
前記糸条を固定する隣り合う2つの縫い目の間に1つ又は前記糸条を押し付けない複数の縫い目を隔てる請求項5に記載の糸条ミシン縫製構造。
【請求項7】
少なくとも1本の前記上糸の縫い目によって固定される複数の糸条を備える請求項1に記載の糸条ミシン縫製構造。
【請求項8】
前記上糸の両側に対称になるように設けられた2本の糸条を含む請求項7に記載の糸条ミシン縫製構造。
【請求項9】
前記上糸及び前記上糸で固定された前記糸条は、それぞれ複合縫製糸を形成し、前記複合縫製糸が前記シート状物体に図案を刺繍することができる請求項1、2、4~8のいずれか一項に記載の糸条ミシン縫製構造。
【請求項10】
前記シート状物体の表面は、複数の上糸、及び1本又は複数の糸条を有する請求項1、2、4~6に記載の糸条ミシン縫製構造。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸条の損傷及び機能低下を避けるため、糸条を固定するミシン縫製構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
衣服は、人々の生活必需品であり、反射ストリップ又は反射シートを衣服に貼り付けて、光を反射させるなどの衣服に反射機能を持たせることで、夜間の人々の活動の安全性を高め、事故が発生する可能性を減らすことができる。
【0003】
反射効果の提供から言えば、上記反射ストリップ又は反射シートを貼り付ける以外に、別の方法として反射糸を衣服に縫い付けることであり、反射糸の表面に多数の微小ガラスビーズが接着され、これらガラスビーズを介して、反射糸が衣服に反射効果を与えることができる。
【0004】
反射糸にガラスビーズが埋め込まれることにより、切れやすくなるため、反射糸の裸糸を直接ミシンで縫製できず、他の糸と撚り合わせて双糸、三子糸にしてから反射糸を衣服にミシンで縫製することができる。しかしながら、上記の撚り合わせた複数の撚り糸の糸の太さは、太すぎて細くなく、ミシン縫製の貫通抵抗も大きくなってしまう。
【0005】
さらに、他の糸と撚り合わせて複数の撚り糸にすることで反射糸を衣服にミシンで縫い付けることができるが、生地を通過する過程で、反射糸の表面のガラスビーズが生地との摩擦により脱落し、反射糸を損傷し、表面のガラスビーズが不完全になり、反射糸の反射性に影響を与え、反射衣服の瑕疵となる。反射糸のガラスビーズがミシン縫製過程で脱落することは、当業者が解決できない難題であった。
【0006】
夜光粒子を有する夜光糸、表面に金属光沢を有する糸、又は表面に導電性材料を有する糸などの他の機能性糸も、ミシンで衣服に縫い付けた場合、同じ問題があり、表面上の物質がミシン縫製過程中の摩擦により脱落又は損傷して、不良品となっていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の欠点を解決することを意図し、糸体が損傷して使用機能に影響を与えないように、糸条を通過させることなく物体に固定できる糸条ミシン縫製構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明により提供される糸条ミシン縫製構造は、
ミシン糸をミシンで縫製できるためのシート状物体と、
前記シート状物体にミシンで縫製され、前記シート状物体の表面に位置する少なくとも1本の上糸と、
前記シート状物体の表面に位置し、前記上糸の縫い方向に沿って設けられ、前記上糸によって前記シート状物体の表面に固定される少なくとも1本の糸条とを備える。
【0009】
上記ミシン縫製構造を介して、前記糸条は前記上糸によって前記シート状物体の表面に固定され、前記物体を貫通する必要がないため、損傷することはなく、完全性及び既存の機能を保つことができる。さらに、糸条は、正常状態に維持し、前記糸条を含む物体が不良品にならない。
【0010】
また、前記糸条は、物体を通過する必要がなく固定されるため、裸糸として直接使用することができ、製造コストを削減でき、かつ複数の撚り糸として他の糸と撚り合わせる必要がないため、前記糸条の糸の太さが太くならず、元の糸の太さを維持できる。
【0011】
一実施態様において、前記上糸は、前記シート状物体の表面上で縫い方向に沿って複数の縫い目を形成し、前記糸条が前記上糸の縫い目によって押し付けられる。
【0012】
一実施態様において、前記糸条は、前記上糸の両側から前記上糸を往復に回して通過する。
【0013】
一実施態様において、前記糸条は、隣り合う縫い目を順次通し、これら縫い目によって押し付けられる。
【0014】
一実施態様において、前記糸条は、1つおきの縫い目を通し、1つおきの縫い目によって押し付けられる。
【0015】
上記の実施態様において、糸条を押し付ける2つの隣り合う縫い目の間に1つ又は複数の糸条を押し付けない縫い目を有する。
【0016】
一実施態様において、前記糸条ミシン縫製構造は、前記上糸の縫い方向に沿って設けられ、少なくとも1本の上糸によって押し付けられる複数の糸条を有する。
【0017】
一実施態様において、2本の糸条と、上糸とを含み、前記2本の糸条は、前記上糸の両側に対称的に設けられる。
【0018】
前記糸条は、反射糸、夜光糸、金属光沢を有する糸条又は導電性を有する糸条などの様々な糸体であり得る。複数の前述糸条を前記物体にミシンで縫う場合、機能の異なる糸条になり得る。
【0019】
前記上糸及び前記糸条は、複合縫製糸を形成し、前記シート状物体のミシン糸として、又は前記物体に様々な刺繍図案を刺繍するための刺繍糸とすることもできる。
【0020】
本発明の目的、特徴及び効果は、下記の好ましい実施例の説明及び図面から理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1の好ましい実施例に係る糸条ミシン縫製構造の構成要素を示す図である。
図2】本発明の第1の好ましい実施例に係る糸条ミシン縫製構造の上面図である。
図3図2の底面図である。
図4図2の4-4線に沿った断面図である。
図5】本発明の第1の好ましい実施例に係る糸条ミシン縫製構造の実物写真の上面図である。
図6図5の実物写真の底面図である。
図7A図2の糸条ミシン縫製構造のミシン縫製プロセスの概略図である。
図7B図2の糸条ミシン縫製構造のミシン縫製プロセスの概略図である。
図7C図2の糸条ミシン縫製構造のミシン縫製プロセスの概略図である。
図8】本発明の第2の好ましい実施例に係る糸条ミシン縫製構造の上面図である。
図9】本発明の第3の好ましい実施例に係る糸条ミシン縫製構造の上面図である。
図10】本発明の複合縫製糸で刺繍図案を刺繍したものの概略図である。
図11A】本発明の第4の好ましい実施例に係る糸条ミシン縫製構造の上面図である。
図11B】本発明の第4の好ましい実施例に係る糸条ミシン縫製構造の底面図である。
図12A】本発明の第5の好ましい実施例に係る糸条ミシン縫製構造の上面図である。
図12B】本発明の第5の好ましい実施例に係る糸条ミシン縫製構造の底面図である。
図13A】本発明の第6の好ましい実施例に係る糸条ミシン縫製構造の上面図である。
図13B】本発明の第6の好ましい実施例に係る糸条ミシン縫製構造の底面図である。
図14A】本発明の第7の好ましい実施例に係る糸条ミシン縫製構造の上面図である。
図14B】本発明の第7の好ましい実施例に係る糸条ミシン縫製構造の底面図である。
図15A】本発明の第8の好ましい実施例に係る糸条ミシン縫製構造の上面図である。
図15B】本発明の第8の好ましい実施例に係る糸条ミシン縫製構造の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1を参照すると、本発明の第1の好ましい実施例で提供される糸条ミシン縫製構造に含まれる構成要素は、シート状物体20と、2本のミシン糸30、36と、糸条(線又は糸又は繊維)40とを備え、糸条40は特に機能性を有する糸条(線又は糸又は繊維)で、本明細書及び特許請求の範囲において糸条と呼ばれる。
【0023】
前記シート状物体20は、ミシン糸をミシンで縫製できるための素材で、可撓性を持ち、例えば織物(布地)、皮革(人工皮革又は天然皮革)、プラスチック、紙などである。本実施例の前記シート状物体20は、織物で、表面22及びそれと反対側の底面24を有する。本実施例の前記シート状物体20は、織物を例にすると、衣服、ズボン、靴、靴下、手袋、帽子、ネクタイ、マフラー、ハンカチ、ストール、スカーフなどの物品、又はその他のこれらに類するものであり得る。
【0024】
図2図3を参照すると、前記2本のミシン糸30、36は、縫製に使用できる様々な糸で、可人工又は自然素材で作ることができ、本縫ミシンの縫い方で前記シート状物体20上に縫い付けられ、ミシン糸30の1つは上糸で、前記物体20の表面22に縫い付けられ、他のミシン糸36が下糸で、前記物体20の底面24に設けられる。
【0025】
前記糸条40は、前記シート状物体20の表面22に設けられ、前記上糸30によって押し付けられて固定される。前記糸条40は、反射糸、夜光糸、金属光沢を有する糸条又は導電性を有する糸条であり得る。反射糸の表面には、微小ガラスビーズがあることで、反射性を有する。夜光糸の表面には夜光粒子があるため、暗閣或いは薄暗い場所で光を発することができる。金属光沢を有する糸条は、高分子素材の糸条にアルミニウムや銀の微小物質を混ぜ合わせることで、前記糸条の外観に金属光沢を生じさせ、かつ異なる色の金属光沢にすることができる。導電性を有する糸条は、高分子の糸条内部に導電材料を混ぜ合わせることで、導電性を有する。銅糸などの金属糸条を本発明の導電性糸条として使用できる。本実施例では、反射糸を前記糸条40として選択した。
【0026】
本発明は、本縫ミシンの縫い方で前記2本のミシン糸30、36を前記物体20に縫い付け、ミシン縫製の過程中に前記上糸30で前記糸条40を固定する。本実施例は、ミシンを用いて前記2本のミシン糸30、36及び前記糸条40を前記物体20に縫い付け、糸条40を敷設するための構造はミシンに追加で取り付けられた機構であり、前記機構は本発明の対象物ではないため、ここでその説明を省略する。
【0027】
図4を参照すると、本縫ミシン縫製過程中において、ミシン針(図示せず)は、1つの針落ち位置Tで針を落とし、針落ち位置Tでミシン針が前記物体(例えば織物)20を突刺し、上糸30を織物20の表面22から前記織物20の底面24まで貫通させ、次にミシン針は上糸30を上に引っ張って前記織物の表面22に戻すことで、前記ミシン針が1回の本縫ミシンの縫製ストロークを完了する。1回のミシン縫製ストロークにおいて、前記上糸30は、前記織物20の底面24に1回の曲がりを生じさせ、前記曲がりが下糸36を渡る1つの渡り部34を形成する。次のミシン縫製ストロークを行う時、前記物体20がミシンによって一定距離移動され、前記ミシン針が別の針落ち位置Tで別のミシン縫製ストロークを行い、上糸30を前記織物20の底面24に貫通させ、再び上糸30を織物20の表面に引き戻し、このように針が落ちるミシン縫製ストロークを繰り返し、毎回のミシン縫製ストロークにおいて、前記上糸30が前記織物20の底面に前記下糸36を渡る1つの渡り部34を形成することで、下糸36と上糸30を前記織物の底面に互いに絡み合わせる。同時に、前記物体20の表面22上で、前記上糸30は、隣り合う2つの針落ち位置Tごとに1つの縫い目32を形成し、これら縫い目32がミシン糸30の縫い方向Dに沿って並べられる。通常、これら縫い目32は同じ長さで、等間隔に並べられ、各縫い目32の両端部(第1端部321、第2端部322)は縫い方向Dに沿って並べられ、各縫い目32の第1端部321が、隣接する縫い目32の第2端部322に隣接する。図内に示される縫い方向Dが直線方向を例にするものであり、ミシン糸30の縫い方向が直線方向に限らず、円弧方向、多角形方向、又はジグザグ縫い方向等の様々な縫い方向であり得る。
【0028】
前記糸条40は、前記上糸30の進行方向に伴い配置され、すなわち、糸条40の配置方向は上糸30の縫い方向に伴い、糸条は上糸の縫い目32によって押し付けられることで、前記物体20の表面に挟んで押し付けられる。ミシン縫製過程で、ミシン糸30、36が繰り出し続けられる以外に、前記糸条40も繰り出し続けられ、かつ前記糸条40がこれらの縫い目32を順次回して通過し、縫い目32によって押し付けられる。図5及び図6は、本発明の糸条ミシン縫製構造10の実物写真で、構造を図2及び図3に示す。
【0029】
図7は、上糸30と糸条40のミシン縫製プロセスを示す概略図で、図7Aに示すように、糸条40はまず一側(例えば右側R)から他側(例えば左側L)に繰り出され、次に図7Bに示すように、ミシン針が別の針落ち位置T2で1回のミシン縫製ストロークを行い、針落ち位置T1とT2との間に縫い目32aを形成させ、前記糸条40を押し付け、その後、前記糸条40を左側Lから右側Rに引っ張り、さらに図7Cに示すように、ミシン針が次の針落ち位置T3で1回のミシン縫製ストロークを行い、上糸30に別の縫い目32bを形成させて、糸条40を押し付け、このように繰り返すと、本発明の糸条ミシン縫製構造10の縫製を完了できる。糸条40は、これら縫い目32に波状に回して通過する。前記波状とは、前記糸条40が前記上糸30の左右の両側から前記上糸30を往復に回して通過することを意味する。図内のFは、ミシン縫製プロセスで物体20の移動方向を示し、Dはミシン糸の縫い方向を示している。
【0030】
前記上糸30及び前記糸条40は、複合縫製糸50を形成し、前記物体20にミシンで縫製され、前記物体の表面(外向きの表面)に位置する。
【0031】
図2に示す好ましい実施例において、前記糸条40は、隣り合う縫い目32を順次かつ規則的に通し、各縫い目32によって押し付けられる。
【0032】
図8は、本発明の第2の好ましい実施例で提供される糸条ミシン縫製構造11を示し、同様にシート状物体20と、2本のミシン糸(上糸及び下糸)30、36(図内に下糸36は示されていない)と、糸条(或いは繊維)40とを備え、同じ構成要素には同じ符号を付し、各構成要素は前の好ましい実施例の説明から理解することできるため、説明を省略する。
【0033】
本実施例において、前記糸条40は、全ての縫い目32を通すのではなく、1つおきの縫い目32を規則的に通し、1つおきの縫い目32によって押し付けられる。図8に示すように、前記糸条40を押し付ける縫い目32cは1つおき、縫い目32cの間にある縫い目32dは糸条40を押し付けない。糸条40を押し付ける2つの隣り合う縫い目32cの間に糸条40を押し付けない1つから複数の縫い目32dで隔てることができる。図8は、糸条40を押し付ける2つの隣り合う縫い目32cは、糸条40を押し付けない縫い目32dで隔てることを示している。
【0034】
前記糸条40及び前記糸条40を押し付ける前記上糸30は、本実施例の複合縫製糸50を形成し、前記物体20にミシンで縫い付けられ、表面22に位置する。
【0035】
図9は、本発明の第3の好ましい実施例で提供される糸条ミシン縫製構造12を示し、同様にシート状物体20と、2本のミシン糸(上糸及び下糸)30、36(図内に下糸36は示されていない)と、複数の糸条(或いは繊維)40(40a、40b)とを備え、同じ構成要素には同じ符号を付した。
【0036】
本実施例は、2本の糸条40a、40bが前記シート状物体20の表面22に設けられ、上糸30の縫い目32によって押し付けられることを示している。前記2本の糸条40a、40bは、図9に示すように、前記上糸30の両側において前記物体20上に対称的に設けられ、前記2本の糸条は縫い目32を通して、縫い目32によって押し付けられ、前記2本の糸条が対称的に設けられ時、糸条を押し付ける縫い目32は同時に前記2本の糸条40a、40bを押し付ける。前記2本の糸条40a、40bも前記物体20上に非対称に設けることができることが理解され得る。
【0037】
図9は、前記2本の糸条40a、40bが隣り合う縫い目32を順次通し、これら縫い目32によって押し付けられることで前記物体20の表面22に固定されることを示す。同様に、前記2本の糸条40a、40bは、図8に示すように1つおきの縫い目32を通し、1つおきの縫い目32により押し付けられることができる。前記2本の糸条40a、40bが縫い目32によって押し付けられる間隔は異なっていてもよい。例えば前記糸条40aを押し付ける2つの隣り合う縫い目の間に糸条40aを押し付けない1つの縫い目で隔て、糸条40bを押し付ける2つの隣り合う縫い目の間に糸条40bを押し付けない2つの縫い目で隔てる。
【0038】
前記2本の糸条40a、40bは、同じ機能の糸条又は異なる機能の糸条であり得る。例えば前記2本の糸条は、両方とも反射糸、夜光糸、金属光沢を有する糸条、又は導電性を有する糸条である。前記2本の糸条は、異なる機能の糸条である場合、一方の糸条が反射糸で、他方の糸条が夜光糸、金属光沢を有する糸条又は導電性を有する糸条であり得、これをもって類推する。
【0039】
前記2本の糸条40及び前記2本の糸条を押し付ける前記上糸30は、本実施例の複合縫製糸50を形成し、前記物体20上にミシンで縫い付けられる。上述の各図面から分かるように本発明の複合縫製糸50は、物体上にミシンで縫い付けられるミシン糸とすることができ、例えば図10の物体(例えば布地)20の左下側に示すように、物体20の縁をミシンで縫うミシン糸である。
【0040】
図10は、本発明の糸条ミシン縫製構造13の応用例で、前記複合縫製糸50は刺繍糸としても使用できることを示す。ミシン又は電気刺繍機(図示せず)で、前記複合縫製糸50で物体20上に様々な刺繍図案60を刺繍し、前記図案60は様々な図案(例えば花、商標のLOGO)又は文字であり得る。図10の刺繍図案60は、単なる例示である。
【0041】
図11図15は、オーバーロックミシン(thread babylock、thread overlock)、カバーステッチミシン(thread coverstitch、thread coverstitch with binding)、又はフラットロック ミシン(flatlock)等の異なるミシンによって完成された本発明の糸条ミシン縫製構造のいくつかの実施例を示す。オーバーロックミシンは、1本針(1本のミシン針)3本糸(3本のミシン糸)、2本針4本糸のモデルに分けることができる。カバーステッチミシンは、2本針3本糸、2本針4本糸、3本針5本糸のモデルを有する。フラットロックミシンは、4本針6本糸のミシンである。本発明の糸条40を縫製するため、以下に記載の前記各種ミシンに前記糸条40を配置するための配置機構が取り付けられている。
【0042】
図11A及び図11Bは、1台の1本針3本糸オーバーロックミシンで縫製された本発明の糸条ミシン縫製構造14の表面(図11A)及び裏面(図11B)を示し、3本のミシン糸及び1本の糸条(反射糸、夜光糸、導電性糸条等)40を含む。前記3本のミシン糸のうち1本は、物体20の表面22に縫い付けられた上糸30で、ミシンの縫い方向に沿って直線的に並べられる複数の縫い目32を有し、他の2本のミシン糸がそれぞれ下糸36及び渡り糸38である。前記糸条40は、物体20の表面22に位置し、前記上糸30の縫い目32によって押し付けられて、物体20の表面22に固定される。前記3本のミシン糸30、36、38の間の結合構造は、本発明の対象ではないため、説明を省略する。
【0043】
図12A及び図12Bは、1台の2本針4本糸オーバーロックミシンで縫製された本発明の糸条ミシン縫製構造15の表面及び裏面を示し、4本のミシン糸及び2本の糸条40を含む。前記4本のミシン糸のうち2本は、物体20の表面22の上糸30で、各上糸30が直線的に延びる複数の縫い目32を有する。他の2本のミシン糸は、それぞれ下糸36及び渡り糸38である。前記2本の糸条40は、前記2本の上糸30の縫い目32によって押し付けられて、物体20の表面22に固定される。同様に、ミシン糸30、36、38の間の結合構造は、本発明の対象ではない。
【0044】
図13A及び図13Bは、1台の2本針3本糸カバーステッチミシンで縫製された本発明の糸条ミシン縫製構造16を示し、3本のミシン糸及び2本の糸条40を含み、このうちの2本のミシン糸は上糸30で、物体20の表面に位置し、直線的に延びる複数の縫い目32を有する。他の1本ミシン糸は、下糸36である。前記2本の糸条40は、それぞれ前記二上糸30の縫い目32によって押し付けられて、物体20の表面22に固定される。
【0045】
図14A及び図14Bは、1台の2本針4本糸カバーステッチミシンで縫製された本発明の糸条ミシン縫製構造17を示し、4本のミシン糸及び2本の糸条40を含み、このうちの2本ミシン糸は上糸30で、それぞれ直線的に延びる複数の縫い目32を有する。他の2本のミシン糸は、下糸36及び渡り糸38である。前記2本の糸条40は、それぞれ前記2本の上糸30の縫い目32によって押し付けられて、物体20の表面22に固定される。
【0046】
図15A及び図15Bは、1台の3本針5本糸カバーステッチミシンで縫製された本発明の糸条ミシン縫製構造18を示し、5本のミシン糸及び3本の糸条40を含む。このうちの3本のミシン糸は、物体20の表面22にミシンで縫い付けられた上糸30で、複数の縫い目32を有する。他の2本のミシン糸は、下糸36及び渡り糸38である。前記3本の糸条40は、それぞれ前記3本の上糸30の縫い目32によって押し付けられて、物体20の表面22に固定される。
【0047】
前述の4本針6本糸フラットロックミシンの縫製構造は、4本の上糸を有し、物体の表面に位置し、1本又は4本の糸条を上糸の縫い目に固定させることができる。
【0048】
図11A図15Aは、複数の糸条40が複数の上糸30の縫い目32によって固定されることを示し、実施時、1本の糸条40が複数の上糸の1つによって固定され得る。また、各糸条40は図8に示すように、隣り合わない縫い目32によって固定され得る。各上糸30は、図9に示すように、複数の糸条40を固定できる。各上糸30及び前記上糸に固定される1本又は複数の糸条40は、複合縫製糸50を形成する。
【0049】
本発明を介して、物体20表面にミシンで縫い付けられた上糸30を利用して特定の糸条(例えば反射糸)40を様々な物品の表面に固定でき、前記特定の糸条は物品を貫通せず、機能を損なうことなく、構造及び機能の完全性を維持することができる。本発明の上糸30及び糸条40で形成された複合縫製糸50は、衣類、ズボン、帽子などの被服の縫製糸、皮革の縫製糸、ランドセル、リュクサック、ブリーフケース、ハンドバッグ等の鞄類物品の縫製線、靴類の縫製線とすることができる。刺繍糸として、物体の表面に刺繍することで、前記特定の糸条40をミシン糸30で物品の表面に固定させることができ、人々も前記物品の表面から完全な糸条40を見ることができ、例えば金属光沢を有する糸条を見ることができ、糸条40の機能を物品の表面に直接表現させることができ、例えば反射糸は衣服に反射機能を提供し、夜光糸が衣服に夜光機能を提供する。
【0050】
糸条40を反射糸として例にすると、本発明の構造特徴は、反射糸を衣服の表面に縫い付け、反射糸が衣服の生地を貫通する必要がないため、反射糸の反射機能を損なうことがなく、反射糸表面の微小ガラスビーズの完全性を維持できることで、反射糸をミシンで縫製した衣服に不良品がなく、製造歩留まりが向上する。
【0051】
本発明を用いて反射糸を物体に縫い付ける場合、反射糸を物体(生地)に貫通する必要がなく、反射糸の裸糸を直接使用でき、反射糸を他の糸と撚り合わせて複数の撚り糸にする必要がない。従来技術と比較して、本発明は反射糸の裸糸を直接使用できるため、反射糸の製造コスト及び時間を削減するだけでなく、反射糸の裸糸を直接使用するため、太さが太くならない。
【符号の説明】
【0052】
10~18 糸条ミシン縫製構造
20 シート状物体
22 表面
24 底面
30 上糸(ミシン糸)
32(32a~32d) 縫い目
34 渡り部
36 下糸(ミシン糸)
38 渡り糸(ミシン糸)
40(40a、40b) 糸条
50 複合縫製糸
60 刺繍図案
T(T1~T3) 針落ち位置
D ミシンの縫い方向
F 移動方向
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正の内容】
図2
【外国語明細書】