(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091714
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】ミシン及びミシンの縫い方
(51)【国際特許分類】
D05B 23/00 20060101AFI20230623BHJP
【FI】
D05B23/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022103082
(22)【出願日】2022-06-27
(31)【優先権主張番号】110147654
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(31)【優先権主張番号】111102032
(32)【優先日】2022-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】521205342
【氏名又は名称】麗特絲股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】姚 明賢
(72)【発明者】
【氏名】姚 順泰
【テーマコード(参考)】
3B150
【Fターム(参考)】
3B150AA02
3B150BB07
3B150CB11
3B150JA20
3B150JA28
(57)【要約】
【課題】 ミシン及びミシンの縫い方を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明は、ミシンに関する。前記ミシンは、機体と、前記機体に取り付けられた変位装置とを備え、前記変位装置は前記ミシンの1本又は数本のミシン針に対応する1つ又は複数の糸繰出し口を有し、各糸繰出し口が1本の糸条の突き通りに用いられ、ミシンが作動されている時、前記変位装置は前記糸繰出し口を前記ミシン針の両側で往復移動させる。これにより、前記ミシンは、少なくとも1本のミシン糸を被縫製物に縫い付け、1本又は数本の糸条が前記糸繰出し口から突き通り、前記ミシン針の両側で往復して配置され、前記ミシン糸が前記糸条を被縫製物に固定する。本発明もミシン糸で糸条を固定するミシンの縫い方に関する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミシンであって、
少なくとも1本の針棒を取り付け、前記針棒の底端に少なくとも1本のミシン針を有する機体と、
前記機体に取り付けられ、少なくとも1つの糸繰出し口を有し、前記ミシン針に対応し、少なくとも1本の糸条を前記糸繰出し口に通させることができ、前記糸繰出し口を前記ミシン針の両側に往復移動させる変位装置と、
を備えるミシン。
【請求項2】
前記ミシン針が上下運動して元の位置に戻す時に1回の縫製ストロークが完了し、前記糸繰出し口が移動して元の位置に戻す時に1回の移動ストロークが完了し、前記縫製ストロークの回数と前記糸繰出し口の移動ストロークの回数は、比例関係にあり、前記ミシン針の縫製ストロークと前記糸繰出し口の移動ストロークの回数の比率が2:1以上である請求項1に記載のミシン。
【請求項3】
前記変位装置は、主軸を有し、前記主軸が回転する時、前記変位装置に往復運動を生じさせ、前記糸繰出し口の往復移動を駆動する請求項1又は2に記載のミシン。
【請求項4】
前記変位装置の主軸を回転駆動する伝動軸を有し、前記伝動軸が1回転する時、前記ミシン針は1回の縫製ストロークを完了し、前記主軸が1回転する時、前記糸繰出し口は1回の移動ストロークを完了し、前記伝動軸の回転数と前記主軸の回転数の比率は2:1以上である請求項3に記載のミシン。
【請求項5】
前記変位装置は、主軸と、往復駆動部材と、往復移動部材とを備え、前記主軸は前記機体に回転可能に枢設され、前記往復駆動部材は前記主軸に連結され、前記主軸が回転する時、前記往復駆動部材を第1位置と第2位置との間において往復運動させ、前記糸繰出し口は前記往復移動部材に設けられ、前記往復駆動部材は前記往復移動部材を開始位置と終了位置との間で往復変位させ、前記往復駆動部材は前記往復移動部材を往復変位させ、前記糸繰出し口を往復移動させる請求項1に記載のミシン。
【請求項6】
前記往復駆動部材は、偏心輪とリンク端とを有する偏心輪リンク部材で、前記偏心輪端は前記主軸に取り付けられ、前記偏心輪リンク部材が前記主軸の半径方向において往復運送し、前記リンク端は前記往復移動部材を変位させる請求項5に記載のミシン。
【請求項7】
前記往復移動部材は、揺動支点を有するスイングアームであり、前記糸繰出し口は前記スイングアームに設けられ、前記偏心輪リンク部材は前記スイングアームを前記開始位置と前記終了位置との間で揺動させる請求項6に記載のミシン。
【請求項8】
前記機体に回転可能に枢設された回転軸と、前記回転軸に連結されたスイングアームとを備え、前記変位装置の主軸が回転する時、前記回転軸を回転駆動して、前記スイングアームを往復変位させ、前記糸繰出し口がスイングアームに設けられる請求項3に記載のミシン。
【請求項9】
前記主軸と前記回転軸との間に設けられた往復駆動部材を備え、前記主軸が回転すると、前記往復駆動部材を第1位置と第2位置との間において往復運動させ、前記往復駆動部材は前記回転軸に連動して往復回転する請求項8に記載のミシン。
【請求項10】
前記変位装置は、前記往復駆動部材と前記往復移動部材との間に設けられた連動機構をさらに備え、前記往復駆動部材が前記リンク機構を介して前記往復移動部材を駆動する請求項5に記載のミシン。
【請求項11】
前記変位装置は、回転部材と、リンクとを備え、前記回転部材は回転支点を有する連動機構をさらに備え、前記偏心輪リンク部材のリンク端は前記回転部材に連結され、前記リンクの一端は前記回転部材に連結され、他端が前記スイングアームに連結され、前記偏心輪リンク部材は前記連動機構を介して前記スイングアームを駆動する請求項7に記載のミシン。
【請求項12】
伝動軸を有する伝動機構を備え、前記伝動機構と前記主軸との間は、連動組で連動する請求項5に記載のミシン。
【請求項13】
前記機体に少なくとも1本の押えホルダーが取り付けられ、前記押えホルダーに連結される支持台をさらに含み、前記スイングアームの一端は前記支持台に枢設される請求項7に記載のミシン。
【請求項14】
前記機体は、複数のミシン針を有し、前記変位装置に前記ミシン針にそれぞれ対応する複数の糸繰出し口が設けられ、前記変位装置が前記糸繰出し口を対応するミシン針の両側で往復移動させる請求項1に記載のミシン。
【請求項15】
ミシンの縫い方であって、
前記ミシンの少なくとも1本のミシン針で少なくとも1本のミシン糸を被縫製物に縫い、各前記ミシン糸は複数の縫い目を縫うステップ、及び、
前記ミシン針で前記ミシン糸を縫う過程で、少なくとも1本の糸条を前記ミシン針の両側で往復して配置し、前記糸条が前記ミシン針の第1側から第2側に移動した後、前記ミシン糸の縫い目によって前記被縫製物に押し付けられ、前記糸条が前記ミシン針の第2側から第1側へ移動した後、前記ミシン糸の他の縫い目によって前記被縫製物に押し付けられるステップ、
を含むミシンの縫い方。
【請求項16】
前記ミシンに変位装置が取り付けられ、前記変位装置で前記糸条を前記ミシン針の両側に往復移動させる請求項15に記載のミシンの縫い方。
【請求項17】
前記変位装置は、前記少なくとも1本の糸条を突き通るための少なくとも1つの糸繰出し口を有し、前記変位装置の前記糸繰出し口が前記ミシン針の両側で往復移動する請求項16に記載のミシンの縫い方。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシンに関し、特に、革新的なミシン縫製構造を提供するミシン及び革新的なミシンの縫い方に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のミシンは、全てミシン針が布(布地)に貫通されて、ミシン糸を布に縫い付け、ミシン糸以外の糸条を布に固定できるミシンはなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的の一つは、ミシン糸を介してミシン糸以外の糸条(すなわち、非ミシン糸の糸条)を被縫製物に固定できる革新的な構造を有するミシンを提供することである。
【0004】
本発明の目的の一つは、前記糸条を被縫製物に貫通することなく、前記被縫製物に固定させることができる上記ミシンを提供することである。
【0005】
本発明の目的の一つは、ミシン糸で前記ミシン糸以外の糸条(すなわち、非ミシン糸の糸条)を固定させるミシンの縫い方を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明により提供されるミシンは、少なくとも1本の針棒を取り付け、前記針棒の底端に少なくとも1本のミシン針を有する機体と、前記機体に取り付けられ、少なくとも1つの糸繰出し口を有し、前記ミシン針に対応し、少なくとも1本の糸条を前記糸繰出し口に通させることができ、前記糸繰出し口を前記ミシン針の両側に往復移動させる変位装置とを備える。
【0007】
上記の構造により、少なくとも1本のミシン糸を前記ミシン針で被縫製物に縫い付け、少なくとも1本の糸条を前記糸繰出し口に通させ、前記変位装置は、前記糸条を前記ミシン針の両側に配置させ、ミシン縫製過程で前記ミシン糸は前記糸条を被縫製物に固定することができる。
【0008】
固定された前記糸条は、前記被縫製物を貫通することなく、前記糸条の完全性を保ち、前記糸条の損傷を避けることができる。
【0009】
一実施態様において、前記ミシン針の縫製ストロークの回数と前記糸繰出し口の移動ストロークの回数は、比例関係にあり、前記ミシン針の縫製ストロークと前記糸繰出し口の移動ストロークの回数の比率が2:1以上で、好ましくは、2:1~10:1の範囲である。
【0010】
一実施態様において、前記変位装置は、主軸を有し、前記主軸が回転する時、前記変位装置に往復運動を生じさせ、前記糸繰出し口の往復移動を駆動する。
【0011】
一実施態様において、前記ミシンは、前記変位装置の主軸を回転駆動する伝動軸を有し、前記伝動軸が1回転する時、前記ミシン針は1回の縫製ストロークを完了し、前記主軸が1回転する時、前記糸繰出し口は1回の移動ストロークを完了し、前記伝動軸の回転数と前記主軸の回転数の比率は2:1以上で、好ましいは2:1~10:1の範囲である。
【0012】
一実施態様において、前記変位装置は、主軸と、往復駆動部材と、往復移動部材とを備え、前記主軸は前記機体に回転可能に枢設され、前記往復駆動部材は前記主軸に連結され、前記主軸が回転する時、前記往復駆動部材を第1位置と第2位置との間において往復運動させ、前記糸繰出し口は前記往復移動部材に設けられ、前記往復駆動部材は前記往復移動部材を開始位置と終了位置との間で往復変位させ、前記糸繰出し口を前記ミシン針の両側で往復移動させる。
【0013】
一実施態様において、前記往復駆動部材は、偏心輪端とリンク端とを有する偏心輪リンク部材で、前記偏心輪端は前記主軸に取り付けられ、前記偏心輪リンク部材が前記主軸の半径方向において往復運送し、前記リンク端は前記往復移動部材を変位させる。
【0014】
一実施態様において、前記往復移動部材は、揺動支点を有するスイングアームであり、前記糸繰出し口は前記スイングアームに設けられ、前記偏心輪リンク部材は前記スイングアームを前記開始位置と前記終了位置との間で揺動させる。
【0015】
一実施態様において、前記機体に回転可能に枢設された回転軸と、前記回転軸に連結されたスイングアームとを備え、前記変位装置の主軸が回転する時、前記回転軸を回転駆動して、前記スイングアームを往復変位させ、前記糸繰出し口がスイングアームに設けられる。
【0016】
一実施態様において、前記主軸と前記回転軸との間に設けられた往復駆動部材を備え、前記主軸が回転すると、前記往復駆動部材を第1位置と第2位置との間において往復運動させ、前記往復駆動部材は前記回転軸に連動して1つの角度範囲内で時計回り方向と反時計回り方向との間を往復回転する。
【0017】
一実施態様において、前記変位装置は、前記往復駆動部材と前記往復移動部材との間に設けられた連動機構をさらに備え、前記往復駆動部材が前記リンク機構を介して前記往復移動部材を駆動する。
【0018】
一実施態様において、前記連動機構は、回転部材と、リンクとを備え、前記回転部材は回転支点を有し、前記偏心輪リンク部材のリンク端は前記回転部材に連結され、前記リンクの一端は前記回転部材に連結され、他端が前記スイングアームに連結され、前記偏心輪リンク部材は前記連動機構を介して前記スイングアームを駆動する。
【0019】
一実施態様において、前記ミシンは、伝動軸を有する伝動機構を備え、前記伝動軸は連動組を介して前記主軸と連動する。
【0020】
本発明により提供されるミシンの縫い方は、
ミシンの少なくとも1本のミシン針で少なくとも1本のミシン糸を被縫製物に縫い、各ミシン糸は複数の縫い目を縫うステップ、及び、
前記ミシン針で前記ミシン糸を縫う過程で、少なくとも1本の糸条を前記ミシン針の両側で往復して配置し、前記糸条が前記ミシン針の第1側から第2側に移動した後、前記ミシン糸の縫い目によって前記被縫製物に押し付けられ、前記糸条が前記ミシン針の第2側から第1側へ移動した後、前記ミシン糸の他の縫い目によって前記被縫製物に押し付けられるステップを含み、
これにより、前記ミシンが縫製作業を行う際、前記ミシン糸が前記糸条を被縫製物に固定する。
【0021】
上記ミシンの縫い方において、前記ミシンに変位装置が取り付けられ、前記変位装置で前記糸条を前記ミシン針の両側に往復移動させる。
【0022】
本発明の目的、特徴及び効果は、下記の好ましい実施例の説明及び図面から理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1の好ましい実施例に係るミシンの立体図である。
【
図2】別の視点から本発明の好ましい実施例の立体図である。
【
図4】
図1のミシンの変位装置を主とした上面図である(図内ではミシンの他の部分を省略した)。
【
図5】
図1の変位装置を主とした立体図である(作動状態を示している)。
【
図6】
図1の変位装置を主とした立体図である(作動状態を示している)。
【
図7】
図1の変位装置を主とした立体図である(作動状態を示している)。
【
図8】被縫製物に縫い付けられたミシン糸及び糸条の上面図である。
【
図10A】ミシン糸及び糸条を縫うミシンの縫製プロセスを示す概略図である。
【
図10B】ミシン糸及び糸条を縫うミシンの縫製プロセスを示す概略図である。
【
図10C】ミシン糸及び糸条を縫うミシンの縫製プロセスを示す概略図である。
【
図11】被縫製物に縫い付けられたミシン糸及び糸条の別の実施形態の上面図である。
【
図12】被縫製物に縫い付けられたミシン糸及び糸条の実施例を示す図である。
【
図13】
図5のミシン針とスイングアームの糸繰出し口を示す概略図である。
【
図14】本発明の第2の好ましい実施例に係るミシンの部分的立体図である。
【
図15】
図14のミシン針とスイングアームの糸繰出し口を示す概略図である。
【
図18】被縫製物に縫い付けられた複数のミシン糸及び複数の糸条の上面図である。
【
図19】本発明の第3の好ましい実施例に係るミシンの立体図である。
【
図23】本発明の第4の好ましい実施例に係るミシンの概略図である。
【
図24A】本発明の構造を1本針3本糸オーバーロックミシンに応用して縫製されたミシン縫製構造の表面及び裏面を示す概略図(本発明の糸条がミシン糸によって固定される)。
【
図24B】本発明の構造を1本針3本糸オーバーロックミシンに応用して縫製されたミシン縫製構造の表面及び裏面を示す概略図(本発明の糸条がミシン糸によって固定される)。
【
図25A】本発明の構造を2本針4本糸オーバーロックミシンに応用して縫製されたミシン縫製構造の表面及び裏面を示す概略図(本発明の2本の糸条が2本のミシン糸によって固定される)。
【
図25B】本発明の構造を2本針4本糸オーバーロックミシンに応用して縫製されたミシン縫製構造の表面及び裏面を示す概略図(本発明の2本の糸条が2本のミシン糸によって固定される)。
【
図26A】本発明の構造を2本針3本糸カバーステッチミシンに応用して縫製されたミシン縫製構造の表面及び裏面を示す概略図(本発明の2本の糸条が2本のミシン糸によって固定される)。
【
図26B】本発明の構造を2本針3本糸カバーステッチミシンに応用して縫製されたミシン縫製構造の表面及び裏面を示す概略図(本発明の2本の糸条が2本のミシン糸によって固定される)。
【
図27A】本発明の構造を2本針4本糸カバーステッチミシンに応用して縫製されたミシン縫製構造の表面及び裏面を示す概略図(本発明の2本の糸条が2本のミシン糸によって固定される)。
【
図27B】本発明の構造を2本針4本糸カバーステッチミシンに応用して縫製されたミシン縫製構造の表面及び裏面を示す概略図(本発明の2本の糸条が2本のミシン糸によって固定される)。
【
図28A】本発明の構造を2本針5本糸カバーステッチミシンに応用して縫製されたミシン縫製構造の表面及び裏面を示す概略図(本発明の3本の糸条が3本のミシン糸によって固定される)。
【
図28B】本発明の構造を2本針5本糸カバーステッチミシンに応用して縫製されたミシン縫製構造の表面及び裏面を示す概略図(本発明の3本の糸条が3本のミシン糸によって固定される)。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(実施例1)
図1及び
図2は、本発明の第1の好ましい実施例に係るミシン10を示す。
図8を参照すると、前記ミシン10は、ミシン糸82及び糸条84を布地80、織物、皮革、プラスチック、紙又はこれらに類する物などの被縫製物に縫い付けることができ、前記糸条84が前記ミシン糸82により被縫製物に固定され、前記被縫製物を貫通しない。
【0025】
図1~
図3を参照すると、前記ミシン10は、機体11を有し、機体11の頭部12に針棒13及び押えホルダー15が取り付けられ、前記針棒13の底端にミシン針14が設けられ、前記押えホルダー15の底端に押え金16が取り付けられる。ミシン10の針板17に針穴18が設けられ、ミシン針14を針穴18に挿入させることができ、針穴18の下に送り歯(図示せず)が設けられる。前記ミシンが前記針穴18に縫い方向Dを定め、前記縫い方向Dは送り歯の往復移動方向で、送り歯が被縫製物を前記縫い方向Dに沿って移動するよう押し続ける。前記機体11内に互いに連動する多くの機構が設けられ、機体11内に前記機体11に設けられた伝動軸19を含む伝動機構を有し、前記伝動軸19はモータ又は以ベルト、チェーンで駆動される。前記伝動機構は、前記針棒13を上下に往復運動させて、ミシン縫製作業を行うことを含め、ミシン10の全ての機構を作動させる。上記構造は、ミシンの従来構造であるため、ここでその説明を省略する。ミシン10の針板17の下における構造は、本明細書でも省略される。ミシンその他部分の構造は、本発明とは関係がないため、この説明を省略する。
【0026】
本発明のミシン10は、変位装置30と、前記変位装置30に設けられた糸繰出し口54とをさらに備え、前記糸繰出し口54は前記糸条84を案内するために用いられる。
【0027】
図3~
図5を参照すると、前記変位装置30は、主軸35と、往復駆動部材40と、往復移動部材50とを備える。
【0028】
ブラケット32は、前記機体11の一側面に固設され、前記主軸35が前記ブラケット32に回転可能に枢設され、前記往復駆動部材40を作動させることができる。前記主軸35は、別の伝動機構によって伝動されることができ、例えば電動モータで前記主軸を伝動する、又はプーリを介して手動で駆動することができる。前記主軸35は、本実施例において前記ミシン10自体の伝動軸19によって伝動され、
図1を参照すると、前記伝動軸19は連動組20で前記主軸35を駆動する。前記連動組20は、2つの軸受211に回転可能に取り付けられた第1連動軸21を有し、前記第1連動軸21の後端がプーリ22及びベルト23を介して前記伝動軸19のプーリ191に連結される。第2連動軸24の一端は、自在継手25で前記第1連動軸21の一端に連結され、他端が自在継手26で前記主軸35の一端に連結される。前記連動組20を介して前記伝動軸19が回転すると、前記主軸35を回転させることができる。
【0029】
前記往復駆動部材が前記主軸35に連結され、前記主軸35は前記往復駆動部材を第1位置と第2位置との間において往復運動させることができ。前記往復駆動部材は、偏心部材又はカム部材であり得、主軸35が回転すると、前記往復駆動部材は前記主軸35の半径方向で往復運動することで、前記第1位置と前記第2位置との間を往復変位する。この好ましい実施例の往復駆動部材は、偏心輪リンク部材40で、両端がそれぞれ偏心輪端及びリンク端401で、前記偏心輪端が前記主軸35に取り付けられ、リンク端401が前記第1位置と第2位置との間を往復移動することができる。具体的には、前記偏心輪リンク部材40は、偏心輪42とリンク44とから成り、前記偏心輪42は前記主軸35に固設され、前記リンク44の一端がリング部441で前記偏心輪42を外嵌し、前記偏心輪42が回転すると、前記リンク44の端(すなわち、前記リンク端401)が第1位置と第2位置との間を往復移動する。
【0030】
支持台36は、適切な方法で前記機体11に取り付けられ、例えば前記ブラケット32から腕部を延び、前記支持台36が前記腕部に取り付けられて、支持台36をブラケット32の一部となるようにさせる。この好ましい実施例の前記支持台36は、前記押えホルダー15を挟持し、前記押えホルダー15によって支えられる。前記ブラケット32及び前記支持台36は、前記変位装置30の設置のため、前記機体11の一部として製造することができる。
【0031】
前記往復移動部材は、直線変位又は揺動変位に設計され得る。本実施例の往復移動部材は、スイングアーム50で、前記スイングアーム50の一端が枢着端52で、前記支持台36に回転可能に枢設され、スイングアーム50は前記枢着端52を揺動支点とし、開始位置と終了位置との間を往復揺動できる。糸繰出し口54は、前記スイングアーム50の一端に位置し、前記ミシン針14に近い。前記偏心輪リンク部材40のリンク端401は、前記スイングアーム50を変位させるため、前記スイングアーム50に直接連結することができる。
図4を参照すると、前記偏心輪リンク部材40が第1位置にある時、前記スイングアーム50を前記開始位置まで変位させて、前記糸繰出し口54を前記ミシン針14の一側に位置させる。前記偏心輪リンク部材40が第2位置にある時、前記スイングアーム50を前記終了位置まで変位させて、前記糸繰出し口54をミシン針14の他側に位置させ、これにより前記主軸35が回転すると、前記往復駆動部材(40)が前記往復移動部材50を動かせ、前記糸繰出し口54をミシン針14の両側で往復移動させる。
【0032】
図4を参照すると、前記ミシン針14がある場所は前記縫い方向D上で破線Xを形成し、前記ミシン針14の両側が前記破線Xの両側であり、前記スイングアーム50の糸繰出し口54が前記ミシン針14の両側で往復移動することは前記糸繰出し口54が前記破線Xの両側で往復変位することを意味する。前記糸繰出し口54のミシン針14の一側における位置Pと他側における位置Qとを結ぶ線は、前記破線Xと平行ではない。好ましくは、前記位置PとQを結ぶ線は前記破線Xに垂直又はほぼ垂直である。
【0033】
図5を参照すると、前記スイングアーム50は、ロッド55と、長溝56と、カンチレバーロッド57と、中空の管体58とを備え、前記枢着端52が前記ロッド55の一端に位置し、長溝56は前記ロッド55に設けられ、カンチレバーロッド57の一端が螺着部材571で前記ロッド55の長溝56に連結され、前記長溝56の異なる位置に固定することで、前記カンチレバーロッド57の揺動変位量を調整することができ、中空の管体58は前記カンチレバーロッド57の自由端572に固設され、前記管体58の自由端(底端)が前記糸繰出し口54を形成する。
図2を参照すると、前記糸条84は前記管体58の一端(頂端)に挿入され、前記糸繰出し口54から突き通る。
図13は、糸繰出し口54の別の実施構造を示し、前記カンチレバーロッド57の自由端572に穴部が設けられ、前記穴部は前記繰り出し口54を形成し、糸条84が前記糸繰出し口54に貫設され、前記糸繰出し口54の一端に挿入され、他端から突き通る。
【0034】
この好ましい実施例において、前記偏心輪リンク部材40は、前記連動機構70を介して前記スイングアーム50を動かせる。前記連動機構70は、回転部材71と、リンク76とを含み、前記回転部材71の中央部が枢軸72で前記ブラケット32の腕部34に枢設され、前記回転部材に回転支点を有させ、回転部材71が回転すると、両端73、74は反対方向の変位を生じることができる。前記偏心軸リンク件40のリンク端401は、前記回転部材71の第1端73に枢着される。前記リンク76の一端は、前記回転部材71の第2端74に連結され、他端が前記スイングアーム50のロッド55に連結される。これにより、前記偏心輪リンク部材40は、前記連動機構70を介して前記スイングアーム50を往復変位させる。
【0035】
図2を参照すると、前記ミシン10が使用されている時、前記ミシン糸82は前記ミシン針14に通され、前記糸条84が前記スイングアーム50の糸繰出し口58から突き通る。前記糸条84は、反射糸、夜光糸、装飾糸、導電性を有する糸、金属光沢を有する糸又は特定の特性又は機能を有する他の糸であり得、また、さまざまな縫い糸、繊維、又は紡ぎ糸の糸条であってもよい。
【0036】
前記ミシン糸82及び前記糸条84を布地80に縫い付けることを例にすると、前記ミシン10が作動した時、
図4及び
図5~
図7に示す作動が発生する。
図5を参照すると、前記偏心輪リンク部材40は往復ストロークの第1位置にあり、前記スイングアーム50が往復移動ストロークの開始位置にあることを示している。この時、図面の方向に基づいて、偏心輪リンク部材40の最大偏心量が右側にあり、リンク端401はストロークの一番右側の死点にあり、前記連動機構70のリンク76及び前記スイングアーム50が移動ストロークの一番左側の死点にあり、前記スイングアームの糸繰出し口54は開始位置にあり、前記ミシン針14の一側(第1側)に位置し、前記針棒13及びミシン針14が縫製ストロークの上死点にある。
【0037】
前記ミシン10が作動している時、伝動軸19は、前記連動組20を介して前記変位装置30を作動させ、この時、前記連動組20が前記主軸35を時計回りに回転させる。
図6を参照すると、前記主軸35及び前記偏心輪リンク部材40が時計回りに転90度回転することを示し、この時、前記偏心軸リンク部材40及びリンク端401は左側へストロークの半分まで変位され、前記回転部材71が反時計回りに回転し、回転部材71の第2端74が前記リンク76及び前記スイングアーム50を右側へストロークの半分まで変位させ、前記針棒13及び前記ミシン針14が縫製ストロークの下死点まで下に変位され、前記ミシン針14は前記ミシン糸82を連れて布地80を貫通する。同時に、前記糸繰出し口54は、
図4の点Bに示すストロークの半分である中間位置に移動する。
【0038】
伝動軸19が前記主軸35を
図7に示される位置まで時計回りに90度回転させ続ける時、前記偏心軸リンク部材40及びリンク端401は、左に前記第2位置であるストロークの死点まで変位する。前記回転部材71は回転ストロークの死点まで反時計回りに回転し、回転部材71の第2端74が前記リンク76及び前記スイングアーム50を右にストロークの一番右側の死点まで変位させ、すなわち前記スイングアーム50が前記終了位置まで揺動し、前記糸繰出し口54はミシン針14の他側(第2側)に変位され、前記糸条84をミシン針14の他側(第2側)に移動させ、同時に前記針棒13及び前記ミシン針14が縫製ストロークの上死点に戻り、前記ミシン針14はミシン糸82を連れて布地80から上向きに突き出て、ミシン針14は1回の縫製ストロークを完了する。
【0039】
主軸35は、
図7に示される位置から時計回りに180度回転されると、
図5に示される位置に戻り、前記偏心輪リンク部材40を第2位置から第1位置に戻り、前記回転部材70を時計回りに回転させ、前記回転部材70の第2端74が前記リンク76及び前記スイングアーム50を左に移動ストロークの一番左側の死点まで駆動し、前記スイングアーム50が開始位置に戻り、前記糸繰出し口54が前記ミシン針14の一側(第1側)に戻り、前記糸条84をミシン針14の他側(第2側)からミシン針14の一側(第1側)に移動させ、同時に前記針棒13及びミシン針14は1回の縫製ストロークを再び完了し、すなわち、前記ミシン針14は前記ミシン糸82を連れて布地80に下向きに貫通し、布地80から上向きに突き出る。
【0040】
したがって、前記ミシン10が作動している時、前記針棒13及び前記ミシン針14は縫製ストロークを繰り返して、前記ミシン糸82を前記布地80に縫い付け、同時に前記変位装置30が往復運動して前記糸繰出し口54をミシン針14の両側で往復変位させ、前記糸条84をミシン針14の両側に往復配置し、前記ミシン糸82によって押し付けられ、前記ミシン糸82及び前記糸条84を被縫製物に縫い付けるミシン縫製作業を完了する。
【0041】
上記の作動過程で、前記ミシン針14は2回の縫製ストロークを完了し、前記スイングアーム50及び糸繰出し口54が1回の移動ストロークを完了し、前記糸繰出し口がミシン針14の第1側からミシン針の第2側に変位し、ミシン針の第1側に戻る。したがって、前記ミシン針14の縫製ストロークと前記スイングアーム50的移動ストロークとの比は、2:1である。
【0042】
図8は、前記ミシン10が前記ミシン糸82及び前記糸条84を前記布地80に縫い付けた場合の上面図で、前記ミシン糸82は前記糸条84を固定する。
【0043】
図9を参照すると、ミシン縫製過程で、布地80は縫い方向Dに沿って送り続けられ、ミシン10のミシン針は1つの針落ち位置Tで前記布地80を突き刺し、前記ミシン糸82を布地80の表面801から布地の底面802まで貫通させ、次にミシン針14は前記ミシン糸82を上に引っ張って布地の表面801に戻すことで、1回の縫製ストロークを完了する。1回の縫製ストロークにおいて、前記ミシン糸82は、布地80の底面802に1回の曲がりを生じさせ、前記曲がりが下糸86(前記下糸は本発明の対象ではないため、その説明を省略する)を渡る1つの渡り部821を形成する。次の縫製ストロークを行う時、前記布地80がミシン10によって一定距離移動され、前記ミシン針14が別の針落ち位置Tで別の縫製ストロークを再び行い、前記ミシン糸82を前記布地80の底面802に貫通させ、再び前記ミシン糸82を布地80の表面801から上向きに突き出て、このように、縫製ストロークを繰り返し、毎回の縫製ストロークにおいて、前記ミシン糸82が前記布地80の底面に1つの渡り部821を形成することで、下糸86とミシン糸82を互いに絡み合わせる。同時に、前記布地80の表面801上で、前記ミシン糸82は、隣り合う2つの針落ち位置Tごとに1つの縫い目83を形成し、これら縫い目83が布地80の縫い方向Dに沿って並べられる。通常、これら縫い目83は同じ長さで、等間隔に並べられる。図に示す縫い目83は、一例として直線状に並べられるが、これに限定されるものではなく、例えばこれら縫い目83も円弧状に並べられることができる。
【0044】
ミシン縫製過程で、前記ミシン糸82及び前記糸条84は、繰り出し続けられ、前記糸条84がミシン糸82の縫い目83によって押し付けられて、布地80の表面801に固定され、前記糸条84がこれら縫い目83を順次回して通過し、縫い目83によって押し付けられる。
【0045】
図10は、ミシン糸82と糸条84のミシン縫製プロセスを示す概略図で、
図10Aに示すように、ミシン縫製時、布地80は縫い方向Dに移動し、ミシン針14が1つの針落ち位置T1で1回のミシン縫製ストロークを行い、前記変位装置30は前記糸繰出し口54を開始位置から終了位置に移動させ、前記糸条84をミシン針の第1側(例えば右側R)から第2側(例えば左側L)に繰り出させる。次に、
図10Bに示すように、ミシン針は、別の針落ち位置T2で別の縫製ストロークを行い、針落ち位置T1とT2との間に縫い目83aを形成させ、前記糸条84を押し付け、その後、前記変位装置30は前記糸繰出し口54を終了位置から開始位置へ移動させ、前記糸条84を第2側(左側L)から第1側(右側R)に引っ張り、さらに
図10Cに示すように、ミシン針が次の針落ち位置T3で別のミシン縫製ストロークを行い、ミシン糸82に別の縫い目83bを形成させて、前記糸条84を押し付け、このように繰り返すと、
図8に示すミシン縫製構造90の縫製を完了できる。前記ミシン糸82及び前記糸条84は、前記布地80の表面に縫い付けられ、前記糸条84が前記ミシン糸82の左右両側からこれら縫い目83を往復に回して通過する。
【0046】
図8に示すミシン縫製構造90において、ミシン針14の縫製ストロークの回数と前記スイングアーム50の移動ストロークの回数との比は、2:1(例えば伝動軸19と主軸35の回転数の比率は2:1である)であり、前記糸条84は隣り合う縫い目83を順次かつ規則的に通し、各縫い目83によって押し付けられる。
【0047】
前記伝動軸19と主軸35の回転数の比率を変えることにより、前記ミシン針14の縫製ストロークと前記スイングアーム50の移動ストロークの回数との比例関係を変えることができる。例えば回転数の比率を3:1又は4:1に調整すると、
図11に示すようなミシン縫製構造91を形成することができ、前記糸条84は全ての縫い目83を通すのではなく、1つおきの縫い目83を規則的に通し、1つおきの縫い目83によって押し付けられる。前記糸条84を押し付ける縫い目83cは1つおき、縫い目83cの間にある縫い目83dは糸条84を押し付けない。糸条84を押し付ける2つの隣り合う縫い目83cの間に糸条84を押し付けない1つから複数の縫い目83dで隔てることができる。
図11は、糸条84を押し付ける2つの隣り合う縫い目83cは、糸条84を押し付けない縫い目83dで隔てることを示している。前記ミシン針14の縫製ストロークと前記スイングアーム50の移動ストロークとの回数比は、2:1以上で、実施時比率が2:1~10:1の範囲で、2:1~6:1の比が好ましく、2:1~4:1の比が好適である。
【0048】
また、
図12に示すように、実施時、前記ミシン10に前記ミシン針の両側で変位し、2本の糸条84a、84bを配置するための2つの糸繰出し口を設けることができ、かつ前記2本の糸条84a、84bが前記ミシン糸82の縫い目83を回して通過し、縫い目83によって押し付けられて、
図12に示すミシン縫製構造92を形成する。前記2本の糸条84a、84bは、これら縫い目83を対称的又は非対称的に回して通過する。前記2つの糸繰出し口は、1つの変位装置30によって駆動され、又はミシンに2つの変位装置を設け、前記2つの繰り出しが2つの変位装置によってそれぞれ駆動される。
【0049】
(実施例2)
図14は、本発明の第2の好ましい実施例のミシン10'を示し、図内には部分構造のみを示し、同じ構成要素には第1の好ましい実施例と同じ符号を付す。
【0050】
前記ミシン10'には、複数の針棒13、複数のミシン針14、複数の押えホルダー15及び複数の押え金16が取り付けられ、例えば2~10本のミシン針14で、複数のミシン糸を同時に縫うことができる。本実施例は、3本の針棒、3本のミシン針及び3本の押えホルダーを示し、前記ミシン10'は3本のミシン糸を同時に縫うことができる。
【0051】
前記支持台36は、1本又は数本の押えホルダー15を挟持する。前記スイングアーム50のカンチレバーロッド57にそれぞれ前記三ミシン針14に対応する3つの糸繰出し口54が設けられ、3本の糸条84が前記3つの糸繰出し口54を通す。
図15を参照すると、前記スイングアーム50の往復変位時、前記3つの糸繰出し口54は、対応するミシン針14の両側でそれぞれ往復移動する。
【0052】
図16から
図18に示すように、前記ミシン10'が縫製作業を行う時、前記3本のミシン針14(14a~14c)が縫製ストロークを行うと、被縫製物80に3本のミシン糸82を縫い付けることができ、前記スイングアーム54は前記3つの糸繰出し口54(54a~54C)を前記3本のミシン針の両側で往復移動させて、3本の糸条84を前記3本のミシン針の両側で移動させ、ミシン糸82の縫い目83によって押し付けられる。このようにして、同時に数本の糸条84を被縫製物に固定して、
図18に示すミシン縫製構造93を形成することができる。
【0053】
(実施例3)
図19~
図21は、本発明の第3の好ましい実施例に係るミシン10"を示す。ミシン10"は、機体11に取り付けられた変位装置30'を有する。前記ミシンは、ミシン針14又は複数のミシン針を有するモデルであり得る。前記変位装置30'の主軸35'は機体11に設けられ、歯車101、102から成る連動組20'を介して機体11の伝動軸19によって伝動される。前記伝動軸19と前記主軸35'の回転数の比率は、2:1~10:1である。前記主軸35'が回転する時、往復駆動部材(40')によって往復移動部材(50')を連動させて往復変位することができる。本実施例において、前記往復駆動部材は、偏心輪リンク部材40'で、前記往復移動部材は1つ又は複数の糸繰出し口54を有するスイングアーム50'である。
【0054】
また前記機体11に回転可能に枢設され、一端(底端)が前記機体から突き出る回転軸120を有する。前記スイングアーム50'の一端501は前記回転軸120の一端に連結される。前記偏心輪リンク部材40'は、前記回転軸120を回転駆動することで、前記スイングアーム50'を往復移動させることができる。前記回転軸120に横向きアーム122が設けられる。前記偏心輪リンク部材40'の偏心輪42は、前記主軸35'に固設され、リンク44にロッド111が連結され、前記ロッド111の一端が枢着部112で前記軸棒120の横向きアーム122に枢着される。前記スイングアーム50'は、カンチレバーロッド57を有し、前記カンチレバーロッド57の一端がスイングアーム50'に連結され、他端に糸条84の貫通のための糸繰出し口54が設けられる。前記ロッド111と前記回転軸120は連動機構70'を構成することで、前記偏心輪リンク部材40'が前記スイングアーム50'を変位させることができる。前記回転軸120は、前記スイングアーム50'の揺動支点である。
【0055】
図22を参照すると、主軸35'が回転する時、前記偏心輪リンク部材40'のリンク端(すなわち、リンク41)が前記ロッド111を横方向に変位させ、前記ロッドは前記横向きアーム122を介して前記軸棒120を1つの角度範囲内で時計回り方向と反時計回り方向との間で往復回転させることから、前記スイングアーム50'及び前記カンチレバーロッド57の往復角変位をさせる。
【0056】
図22を基準として、前記偏心輪リンク部材40'が第1位置にある時、前記スイングアーム50'は開始位置にあり、前記糸繰出し口54が前記ミシン針14の一側にある(
図22の実線で示されるように)。前記偏心輪リンク部材40'が第2位置にある時、前記回転軸120を時計回り方向に回転させ、スイングアーム50'は時計回り方向に終了位置まで変位されることで、前記糸繰出し口54がミシン針14の他側に位置する(
図22の破線で示されるように)。前記偏心輪リンク部材40'が第1位置に戻る時、前記回転軸120を反時計回り方向に回転させ、スイングアーム50'は反時計回り方向に開始位置に戻られる。したがって、前記変位装置30'が作動する時、前記糸繰出し口54はミシン針14の両側で往復移動する。本実施例における前記伝動軸19と前記主軸35'の回転数の比率は、2:1で、ミシン糸82と糸条84が
図8のミシン縫製構造90を形成させる。
【0057】
(実施例4)
図23は、本発明第4の好ましい実施例に係るミシン10'"を示し、ミシン10'"の変位装置30は第1の好ましい実例施に示されているものと同じであるため、ここでその説明を省略する。
【0058】
前記ミシン10'"の連動組20"は、前記機体11に取り付けられた伝達軸28を有し、前記伝達軸28の一端は歯車103でミシンの伝動軸19の歯車104と噛み合い、他端が歯車105で変位装置30の主軸35の歯車106と噛み合う。これにより、前記伝動軸19は、前記連動組20"を介して前記主軸35を伝動して、前記変位装置30を作動させることができる。同様に、前記伝動軸19と前記主軸35'の回転数の比率は、2:1~10:1である。
【0059】
図8、
図11、
図12及び
図18は、ミシン糸82が本縫ミシンの方式で織物に縫い付けられることを示している。本発明の構造は、例えばオーバーロックミシン(thread babylock;thread overlock)、カバーステッチミシン(thread coverstitch;thread coverstitch with binding)、又はフラットロックミシン(flatlock)等の異なるタイプのミシンで形成されたミシン糸構造に応用できる。オーバーロックミシンは、1本針(1本のミシン針)3本糸(3本ミシン糸)、2本針4本糸のモデルに分けることができる。カバーステッチミシンは、2本針3本糸、2本針4本糸、3本針5本糸のモデルを有する。フラットロックミシンは、4本針6本糸のミシンである。
【0060】
図24A及び
図24Bは、本発明の変位装置(図示せず)を1台の1本針3本糸オーバーロックミシン(図示せず)に設け、布地80上で縫製されたミシン縫製構造94の表面(
図24A)及び裏面(
図24B)を示し、3本のミシン糸及び1本の糸条(反射糸、夜光糸、導電性糸条等)84を含む。前記3本のミシン糸のうち1本のミシン糸82は、前記ミシン縫製構造94の表面に直線的に延び、前記ミシン糸82は複数の縫い目83を有する。本発明の変位装置は、前記糸条84を前記オーバーロックミシンのミシン針(図示せず)の両側で往復して配置させ、前記糸条84を前記縫い目83により押し付けて固定させる。糸条84は、縫い目83によって固定されるプロセスは、上記の説明を参照のこと。前記3本のミシン糸間の結合構造は、本発明の対象ではないため、説明を省略する。
【0061】
図25A及び
図25Bは、本発明の変位装置を1台の2本針4本糸オーバーロックミシン(図示せず)に設けで縫製されたミシン縫製構造95の表面(
図25A)及び裏面(
図25B)を示し、4本のミシン糸及び2本の糸条84を含む。前記4本のミシン糸82のうち2本は、布地80の表面に縫い付けられ、直線的に延びる複数の縫い目83を有する。前記変位装置は、前記2本の糸条84を前記オーバーロックミシンの2本のミシン針の両側で往復して配置させ、前記2本の糸条84が前記2本のミシン糸82の縫い目83によって押し付けられて、布地の表面に固定される。
【0062】
図26A及び
図26Bは、本発明の変位装置を1台の2本針3本糸カバーステッチミシン(図示せず)に設けで縫製されたミシン縫製構造96の表面(
図26A)及び裏面(
図26B)を示し、3本のミシン糸及び2本の糸条84を含む。前記3本のミシン糸82のうち2本は、布地80の表面に縫い付けられ、直線的に延びる複数の縫い目83を有する。前記変位装置は、前記2本の糸条84を前記カバーステッチミシンの2本のミシン針の両側で往復して配置させ、前記2本の糸条84が前記縫い目83によって固定される。
【0063】
図27A及び
図27Bは、本発明の変位装置を1台の2本針4本糸カバーステッチミシン(図示せず)に設けで縫製されたミシン縫製構造97の表面(
図27A)及び裏面(
図27B)を示し、4本のミシン糸及び2本の糸条84を含む。前記4本のミシン糸82のうち2本は、布地80の表面に縫い付けられ、直線的に延びる複数の縫い目83を有する。前記変位装置は、前記2本の糸条84を前記カバーステッチミシンの2本のミシン針の両側で往復して配置させ、前記2本の糸条84が前記縫い目83によって固定される。
【0064】
図28A及び
図28Bは、本発明の変位装置を1台の3本針5本糸カバーステッチミシン(図示せず)に設けで縫製されたミシン縫製構造98の表面(
図28A)及び裏面(
図28B)を示し、5本のミシン糸及び3本の糸条84を含む。前記5本のミシン糸82のうち3本は、布地80の表面に縫い付けられ、直線的に延びる複数の縫い目83を有する。前記変位装置は、前記3本の糸条84を前記カバーステッチミシンの3本のミシン針の両側で往復して配置させ、前記3本の糸条84が前記3つの縫い目83によって固定される。
【0065】
前述の4本針6本糸フラットロックミシンのミシン糸構造は、4本のミシン糸84を有し、布地の表面に位置し、1本又は4本の糸条をミシン糸の縫い目に固定させることができる。
【0066】
図24A~
図28Aは、複数の糸条84が複数のミシン糸82の縫い目83によって固定されることを示し、実施時、1本の糸条84が複数のミシン糸の1つによって固定され得る。
【0067】
本発明は、1本又は数本のミシン糸及び1本又は数本の糸条84を被縫製物に固定することができる革新的なミシン縫製構造的ミシンを提供し、かつ糸条84が被縫製物を貫通せず、前記糸条の構造的及び機能的完全性を維持し、糸条の機能を損なう或いは低下することを避けることができる。
【0068】
本発明のミシンは、前例のない創作で、前記ミシンの縫い方も同種の物品の中でも革新的な方法である。本発明に開示された実施例は、本発明の技術的手段の説明を目的のためのみであって、本発明を限定することを意図するものではなく、本発明のすべてのかかる均等な修正は、本発明の保護範囲と見なされるべきである。
【符号の説明】
【0069】
10、10'、10"、10'" ミシン
101~106 歯車
11 機体
111 ロッド
112 枢着部
12 頭部
120 回転軸
122 横向きアーム
13 針棒
14(14a~14c) ミシン針
15 押えホルダー
16 押え金
17 針板
18 針穴
19 伝動軸
191 プーリ
20、20'、20" 連動組
21 第1連動軸
22 プーリ
23 ベルト
24 第2連動軸
25、26 自在継手
28 伝達軸
30、30' 変位装置
32 ブラケット
34 腕部
35 主軸
36 支持台
40、40' 往復駆動部材(偏心輪リンク部材)
401 リンク端
42 偏心輪
44 リンク
441 リング部
50、50' 往復移動部材(スイングアーム)
52 枢着端
54(54a~54c) 糸繰出し口
55 ロッド
56 長溝
57 カンチレバーロッド
571 螺着部材
572 自由端
58 管体
70、70' 連動機構
71 回転部材
72 枢軸
73 第1端
74 第2端
76 リンク
80 布地(被縫製物)
801 表面
802 裏面
82 ミシン糸
821 渡り部
83(83a~83d) 縫い目
84(84a、84b) 糸条
86 下糸
90~98 ミシン縫製構造
D 縫い方向
X 破線
P、Q 位置
T(T1~T3) 針落ち位置
R 右側
L 左側
【外国語明細書】