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  • 特開-調理器具及び調理器具の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091715
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】調理器具及び調理器具の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A47J 36/02 20060101AFI20230623BHJP
   A47J 36/04 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
A47J36/02 B
A47J36/04
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107619
(22)【出願日】2022-07-04
(31)【優先権主張番号】202111563865.5
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】515353970
【氏名又は名称】ケ エム.オー.ハウス シーオー.,エルティーディー
【氏名又は名称原語表記】KE M.O. HOUSE CO., LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】リョ ピィン
(72)【発明者】
【氏名】サイ モォゥフゥー
【テーマコード(参考)】
4B055
【Fターム(参考)】
4B055AA01
4B055BA13
4B055BA14
4B055BA22
4B055CA02
4B055FA04
4B055FB32
4B055FC08
4B055FC09
4B055FC15
4B055FD10
4B055FE10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】グラフェン及び/又はグラフェン誘導体を介して、本体と食物との間の熱伝導を十分に実現し、加熱速度及び加熱均一性を効果的に向上させる。
【解決手段】調理器具は、調理器具の本体1と本体の表面に塗布された非粘着層2とを含む。非粘着層は、本体の1つの側面に接触するプライマー層を含む。プライマー層には、フレーク状のグラフェン及び/又はグラフェン誘導体が均一に分布される。調理器具の製造方法は以下のステップを含む。ステップ1:調理器具の本体の表面を粗面化する。ステップ2:プライマー層を形成し且つグラフェン及び/又はグラフェン誘導体を含む水性ペンキを本体の表面にスプレーし、プライマー層の乾燥されていない表面にシール層をスプレーし、ベーキングを行う。ステップ3:ミッドコート層とトップコート層とを順次にシール層の表面にスプレーし、且つ焼成を行うことによって、目標非粘着層を有する調理器具を取得する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理器具であって、前記調理器具の本体と前記本体の表面に塗布された非粘着層とを含み、
前記非粘着層は、前記本体の1つの側面に接触するプライマー層を含み、前記プライマー層には、フレーク状のグラフェン及び/又はグラフェン誘導体が均一に分布されている、
ことを特徴とする調理器具。
【請求項2】
前記プライマー層を形成するように構成された水性ペンキは、質量分率が28%~32%であるグラフェン及び/又はグラフェン誘導体を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の調理器具。
【請求項3】
前記非粘着層に面する前記本体の前記1つの側面は均一で粗い構造を有し、粗さは3μm~5μmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の調理器具。
【請求項4】
前記フレーク状のグラフェン及び/又はグラフェン誘導体の径方向幅は、5μm~20μmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の調理器具。
【請求項5】
前記非粘着層の厚さは50μm~60μmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の調理器具。
【請求項6】
請求項1に記載の調理器具の製造方法であって、
前記調理器具の本体の表面を粗面化するステップ1と、
プライマー層を形成し且つグラフェン及び/又はグラフェン誘導体を含む水性ペンキを前記本体の前記表面にスプレーし、前記プライマー層の乾燥されていない表面にシール層をスプレーし、ベーキングを行うステップ2と、
ミッドコート層とトップコート層とを順次に前記シール層の表面にスプレーし、且つ焼成を行うことによって、目標非粘着層を有する前記調理器具を取得するステップ3とを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の調理器具の製造方法。
【請求項7】
前記ステップ1の後の前記調理器具を洗浄した後に前記ステップ2を行い、
洗浄工程は以下のステップを含み、
35℃~45℃のアルカリ溶液で洗浄し――常温の清水で2回洗浄し――常温の酸性溶液で洗浄し――常温の清水で洗浄し――常温の純水で洗浄し――150℃で乾燥する、
ことを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記ステップ2における前記シール層をスプレーした後の前記ベーキングの工程条件は、温度が150℃~180℃、乾燥時間が3min~5minである、
ことを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項9】
前記ステップ3における焼成工程は、焼成温度が430℃、焼成時間が3min~5minの条件で行われる、
ことを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項10】
前記ステップ1における前記調理器具の前記本体の前記表面の粗面化はサンドブラストで実現され、前記本体の表面の粗さは3μm~5μmである、
ことを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は調理器具の技術分野に関し、特に、調理器具及び調理器具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の調理器具及び家電業界では、食物が製品にくっつかないように、通常、表面張力の低い又は摩擦係数の低い塗料が製品の表面にスプレーされる。例えば、非粘着塗料のスプレーが挙げられる。既存の非粘着塗料は主に、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene、PTFE)を主な成膜材料とするフルオロカーボン塗料(fluorocarbon coating)と、シリコン塗料(silicon coating)とに分類される。前者のPTFE塗料は線状ポリマーであり、高い分子量と大きな体積を有するため、膜密度が低いことにつながる。また、前者は耐熱性が低く(長期使用温度は250℃のみであり)、金属基材への保護に不足があるほか、熱伝導率係数が約0.25w/mkのみであるため、製品の加熱効率も悪い。後者の有機シリコン塗料は、硬度が8H以上に達することができるが、耐摩耗性と非粘着性が劣る。また、製品の表面が少しでも摩耗すると、非粘着性が明らかに低下し、顧客の使用予想を満たすことができない。
【0003】
フルオロカーボン塗料とシリコン塗料はそれぞれ熱伝導率係数が低いため、調理器具の加熱効率が低くなる。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、調理器具を提供することを目的とする。本発明において、グラフェン及び/又はグラフェン誘導体を介して、本体と食物との間の熱伝導を十分に実現し、加熱速度及び加熱均一性を効果的に向上させる。
【0005】
この技術的課題を解決するために、本発明の技術的解決策は以下の内容を含む。調理器具は、調理器具の本体と本体の表面に塗布された非粘着層とを含む。非粘着層は、本体の1つの側面に接触するプライマー層を含む。プライマー層には、フレーク状のグラフェン及び/又はグラフェン誘導体が均一に分布されている。
【0006】
プライマー層を形成するように構成された水性ペンキは、質量分率が28%~32%であるグラフェン及び/又はグラフェン誘導体を有することが好ましい。本発明において、プライマー層におけるグラフェン又はグラフェン誘導体を制御することで、プライマー層と本体との完全接触、完全結合、及び確実な接続が確保され、非粘着層の耐摩耗性が向上する。同時に、グラフェンの優れた熱伝導性を利用して昇温時間を短縮し、加熱の均一性を向上させる。
【0007】
さらなる改善のために、非粘着層に面する本体の1つの側面は均一で粗い構造を有し、粗さは3μm~5μmである。本発明において、平坦な表面と比べると、本体の表面の粗さは、プライマー層、特にグラフェン又はグラフェン誘導体と本体との接触面積がより多く、両者がより強固に結合されることを確保する。同時に、層状のグラフェン及びその関連製品は、プライマー層においてタイル状に均一に配置されて整然とした配列を形成しており、それで、熱伝達効果を十分に向上させることができる。
【0008】
フレーク状のグラフェン及び/又はグラフェン誘導体の径方向幅は、5μm~20μmであることが好ましい。本発明において、サイズが大きいグラフェンは選択され、プライマー層の平面構造及びシール層と協力する。グラフェンはプライマー層において、粗面を有する本体と封止層とによって制限され、整然としたタイル状を形成する。それによって、グラフェンの熱伝導性を十分に発揮させ、熱伝達速度と均一な熱伝導性能を確保する。
【0009】
非粘着層の厚さは50μm~60μmであることが好ましい。本発明の非粘着層は、耐摩耗性を十分に確保する。
【0010】
本発明は、調理器具の製造方法を提供することを目的とする。本発明において、グラフェン及び/又はグラフェン誘導体は、調理器具の本体の粗い構造と協力する。それによって、取得される調理器具の熱伝導率と耐摩耗性が効果的に改善される。
【0011】
この技術的課題を解決するために、本発明の技術的解決策は以下の内容を含む。調理器具の製造方法は以下のステップを含む。ステップ1:調理器具の本体の表面を粗面化する。ステップ2:プライマー層を形成し且つグラフェン及び/又はグラフェン誘導体を含む水性ペンキを本体の表面にスプレーし、プライマー層の乾燥されていない表面にシール層をスプレーし、ベーキングを行う。ステップ3:ミッドコート層とトップコート層とを順次にシール層の表面にスプレーし、且つ焼成を行うことによって、目標非粘着層を有する調理器具を取得する。
【0012】
ステップ1の後の調理器具を洗浄した後にステップ2を行うことが好ましい。洗浄工程は以下のステップを含む。35℃~45℃のアルカリ溶液で洗浄し――常温の清水で2回洗浄し――常温の酸性溶液で洗浄し――常温の清水で洗浄し――常温の純水で洗浄し――150℃で乾燥する。
【0013】
本発明において、アルカリ洗浄、清水洗浄、酸洗浄、及び清水洗浄により、本体の粗面化された表面上の油と酸化物が効果的に除去される。それによって、次のプライマー層のスプレーを容易にし、また、補助することができる。
【0014】
ステップ2におけるシール層をスプレーした後のベーキングの工程条件は、温度:150℃~180℃、乾燥時間:3min~5minであることが好ましい。
【0015】
ステップ3における焼成工程は、焼成温度:430℃、焼成時間:3min~5minの条件で行われることが好ましい。
【0016】
ステップ1における調理器具の本体の表面の粗面化はサンドブラストで実現され、且つ本体の表面の粗さは3μm~5μmであることが好ましい。本発明において、本体の粗さはサンドブラストを介して向上する。それによって、非粘着層の堅さ、耐摩耗性及び寿命が向上する。
【0017】
上記技術的解決策によれば、本発明の有益な効果は以下の通りである。
【0018】
本発明において、非粘着層を有する調理器具が製造される。まず、プライマー層が調理器具の本体の表面に付着し、プライマー層にグラフェン及び/又はグラフェン誘導体がタイル状に整然として配置されている。グラフェン及び/又はグラフェン誘導体の整然とした配列により、グラフェン素材の熱伝導性の十分な発揮、均一且つ高速な熱伝導が効果的に確保される。また、プライマー層におけるグラフェンはさらに優れた機械的性能を有し、グラフェンがプライマー層にある場合、グラフェンは本体の均一で粗い構造と協力して非粘着層全体を効果的にサポートし、シール層はグラフェンを効果的に保護する。従来のフルオロカーボン塗料と比べると、本発明における非粘着層は、表面硬度がより高い、耐腐食性、耐久性、耐摩耗性及び非粘着性がより優れており、寿命がより長いとう利点を有し、非粘着層は、環境により優しく、より高い効率、より優れた総合性能、耐久性及び耐摩耗性を有する非粘着層である。本発明は、製品の堅さ及び耐摩耗性を効果的に確保する。
【0019】
これで、本発明の上記目的が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明に係る調理器具の断面図である。
図2図2は、図1におけるAの拡大図である。
【0021】
図面中、本体1、非粘着層2、プライマー層21、シール層22、ミッドコート層23、トップコート層24である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の技術的解決策をさらに説明するために、次に、具体的な実施例を通じて本発明を詳細に説明する。
【実施例0023】
実施例1
図に示すように、本実施例において、調理器具が提供されている。当該調理器具は、調理器具の本体1と本体1の表面に塗布された非粘着層2とを含む。非粘着層2は、本体1の1つの側面に接触するプライマー層21を含み、プライマー層21には、フレーク状のグラフェン及び/又はグラフェン誘導体が均一に分布されている。プライマー層21を形成するように構成された水性ペンキは、質量分率が28%~32%であるグラフェン及び/又はグラフェン誘導体を有する。非粘着層2に面する本体1の1つの側面は均一で粗い構造を有し、粗さは3μm~5μmである。フレーク状のグラフェン及び/又はグラフェン誘導体の径方向幅は、5μm~20μmである。非粘着層2の厚さは50μm~60μmである。さらに、図2に示すように、非粘着層2においては、プライマー層21の上に、シール層22、ミッドコート層23及びトップコート層24が順次に含まれている。各層の厚み分布は表1に示すようである。
【0024】
本実施例において、調理器具の製造方法が提供されている。当該製造方法は以下のステップを含む。ステップ1:調理器具の本体の表面を粗面化する。ステップ1における調理器具の本体の表面の粗面化はサンドブラストで実現され、本体の表面の粗さは3μm~5μmである。
【0025】
ステップ1の後の調理器具を洗浄した後にステップ2を行う。洗浄工程は以下のステップを含む。35℃~45℃のアルカリ溶液で洗浄し――常温の清水で2回洗浄し――常温の酸性溶液で洗浄し――常温の清水で洗浄し――常温の純水で洗浄し――150℃で乾燥する。
【0026】
ステップ2:プライマー層を形成し且つグラフェン及び/又はグラフェン誘導体を含む水性ペンキを本体の表面にスプレーし、プライマー層の乾燥されていない表面にシール層をスプレーし、ベーキングを行う。ステップ2におけるシール層をスプレーした後のベーキングの工程条件は、温度:150℃~180℃、乾燥時間:3min~5minである。
【0027】
ステップ3:ミッドコート層とトップコート層とを順次にシール層の表面にスプレーし、且つ焼成を行う。ステップ3における焼成工程は、焼成温度:430℃、焼成時間:3min~5minの条件で行われる。それで、目標非粘着層を有する調理器具を取得する。
【0028】
実施例2
実施例2と実施例1の主な相違点は表1に詳しく示されている。
【0029】
実施例3
実施例3と実施例の主な相違点は表1に詳しく示されている。
【0030】
実施例4
実施例4と実施例1の主な相違点は表1に詳しく示されている。
【0031】
比較例
比較例に使用される被覆層は、従来技術におけるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)塗料である。
【0032】
【表1】
【0033】
実施例1~4及び比較例で取得された非粘着層を有する同一種類のフライパンに対して性能試験を行い、具体的な試験方法は次の通りである。
【0034】
T1、耐摩耗性及び耐久性(2.5kg(kilogram)乾式研磨)。試料を摩擦試験装置に固定する。ミネソタ・マイニング・アンド・マニュファクチャリング(Minnesota Mining and Manufacturing、3M)7447Bのタワシ(長さ:70mmで、幅:30mm)を試料に入れ、タワシを2.5kgの力で押し付け、33回/分の速度で試料の表面を繰り返しワイプする。500回ごとにタワシを交換し、金属基材が露出するまでの回数を記録する。
【0035】
T2、非粘着性(油無しの目玉焼き)。フラット型の電気ストーブの上に試料を置き、乾式加熱し、内側被覆層の表面温度が140~170℃に達する際、殻を割った生卵を試料に入れる。卵白が基本的に凝固したら(試料の内表面の温度は210℃以下)、外力を加えずに卵を直接に流し出す。手順1、2、3を順次に繰り返す。
【0036】
T3、被覆層の硬度試験。STAEDTLER(登録商標)の鉛筆をNo.46エメリーペーパー(emery paper)の上に置き、替芯の前端を研磨することによって、替芯のエッジをシャープにする。鉛筆を鉛筆硬度計の上に正しく置く。鉛筆硬度計を水平方向に力を加えて押し進め、被覆層の表面に10~20mm程度の長さの傷をつけ、傷による被覆層の表面の破損の有無を確認する。鉛筆硬度を9Hから8H、7H、6H、5H、4H、3H、2H、Hに順次に下げていき、上記の動作を繰り返す。
【0037】
T4、熱伝導の均一性。赤外線サーマル・イメージャを使用して、熱伝導率をテストする。カラー画像の種類が多いほど温度差が大きくなり、カラー画像のパターンが不規則なほど温度ムラが大きくなる。
【0038】
T5、熱伝導の速度。取得されたフライパンを電磁調理器の上に置いて乾式加熱し、温度が50~55℃に上昇した時の時刻を記録し、温度が150~155℃に上昇した時の時刻を記録し、温度が50℃から150℃に上昇する昇温時間を算出する。
【0039】
T6、耐腐食性。
【0040】
具体的な性能試験データは表2に示されている。
【0041】
【表2】
【0042】
本発明において、非粘着層を有する調理器具が製造された。まず、プライマー層が調理器具の本体の表面に付着し、プライマー層にグラフェン及び/又はグラフェン誘導体がタイル状に整然として配置されている。グラフェン及び/又はグラフェン誘導体の整然とした配列により、グラフェン素材の熱伝導性の十分な発揮、均一且つ高速な熱伝導が効果的に確保される。また、プライマー層におけるグラフェンはさらに優れた機械的性能を有し、グラフェンがプライマー層にある場合、グラフェンは本体の均一で粗い構造と協力して非粘着層全体を効果的にサポートし、シール層はグラフェンを効果的に保護する。従来のフルオロカーボン塗料と比べると、本発明における非粘着層は、表面硬度がより高い、耐腐食性、耐久性、耐摩耗性及び非粘着性がより優れており、寿命がより長いとう利点を有し、非粘着層は、環境により優しく、より高い効率、より優れた総合性能、耐久性及び耐摩耗性を有する非粘着層である。本発明は、製品の堅さ及び耐摩耗性を効果的に確保する。
【0043】
上記実施形態及び図面は、本発明の製品の形状及び様式を限定するためのものではない。当業者が本実施形態に対して加わった適切な変更又は潤色は、本発明の特許範囲から逸脱しないと見なされるべきである。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2022-07-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は調理器具の技術分野に関し、特に、調理器具及び調理器具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の調理器具及び家電業界では、食物が製品にくっつかないように、通常、表面張力の低い又は摩擦係数の低い塗料が製品の表面にスプレーされる。例えば、非粘着塗料のスプレーが挙げられる。既存の非粘着塗料は主に、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene、PTFE)を主な成膜材料とするフルオロカーボン塗料(fluorocarbon coating)と、シリコン塗料(silicon coating)とに分類される。前者のPTFE塗料は線状ポリマーであり、高い分子量と大きな体積を有するため、膜密度が低いことにつながる。また、前者は耐熱性が低く(長期使用温度は250℃のみであり)、金属基材への保護に不足があるほか、熱伝導率係数が約0.25w/mkのみであるため、製品の加熱効率も悪い。後者の有機シリコン塗料は、硬度が8H以上に達することができるが、耐摩耗性と非粘着性が劣る。また、製品の表面が少しでも摩耗すると、非粘着性が明らかに低下し、顧客の使用予想を満たすことができない。
【0003】
フルオロカーボン塗料とシリコン塗料はそれぞれ熱伝導率係数が低いため、調理器具の加熱効率が低くなる。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、調理器具を提供することを目的とする。本発明において、グラフェン及び/又はグラフェン誘導体を介して、本体と食物との間の熱伝導を十分に実現し、加熱速度及び加熱均一性を効果的に向上させる。
【0005】
この技術的課題を解決するために、本発明の技術的解決策は以下の内容を含む。調理器具は、調理器具の本体と本体の表面に塗布された非粘着層とを含む。非粘着層は、本体の1つの側面に接触するプライマー層を含む。プライマー層には、フレーク状のグラフェン及び/又はグラフェン誘導体が均一に分布されている。
【0006】
プライマー層水性ペンキによって作られ、質量分率が28%~32%であるグラフェン及び/又はグラフェン誘導体を有することが好ましい。本発明において、プライマー層におけるグラフェン又はグラフェン誘導体を制御することで、プライマー層と本体との完全接触、完全結合、及び確実な接続が確保され、非粘着層の耐摩耗性が向上する。同時に、グラフェンの優れた熱伝導性を利用して昇温時間を短縮し、加熱の均一性を向上させる。
【0007】
さらなる改善のために、非粘着層に面する本体の1つの側面は均一で粗い構造を有し、粗さは3μm~5μmである。本発明において、平坦な表面と比べると、本体の表面の粗さは、プライマー層、特にグラフェン又はグラフェン誘導体と本体との接触面積がより多く、両者がより強固に結合されることを確保する。同時に、層状のグラフェン及びその関連製品は、プライマー層においてタイル状に均一に配置されて整然とした配列を形成しており、それで、熱伝達効果を十分に向上させることができる。
【0008】
フレーク状のグラフェン及び/又はグラフェン誘導体の径方向幅は、5μm~20μmであることが好ましい。本発明において、サイズが大きいグラフェンは選択され、プライマー層の平面構造及びシール層と協力する。グラフェンはプライマー層において、粗面を有する本体と封止層とによって制限され、整然としたタイル状を形成する。それによって、グラフェンの熱伝導性を十分に発揮させ、熱伝達速度と均一な熱伝導性能を確保する。
【0009】
非粘着層の厚さは50μm~60μmであることが好ましい。本発明の非粘着層は、耐摩耗性を十分に確保する。
【0010】
本発明は、調理器具の製造方法を提供することを目的とする。本発明において、グラフェン及び/又はグラフェン誘導体は、調理器具の本体の粗い構造と協力する。それによって、取得される調理器具の熱伝導率と耐摩耗性が効果的に改善される。
【0011】
この技術的課題を解決するために、本発明の技術的解決策は以下の内容を含む。調理器具の製造方法は以下のステップを含む。ステップ1:調理器具の本体の表面を粗面化する。ステップ2:プライマー層を形成し且つグラフェン及び/又はグラフェン誘導体を含む水性ペンキを本体の表面にスプレーし、プライマー層の乾燥されていない表面にシール層をスプレーし、ベーキングを行う。ステップ3:ミッドコート層とトップコート層とを順次にシール層の表面にスプレーし、且つ焼成を行うことによって、目標非粘着層を有する調理器具を取得する。
【0012】
ステップ1の後の調理器具を洗浄した後にステップ2を行うことが好ましい。洗浄工程は以下のステップを含む。調理器具を35℃~45℃のアルカリ溶液で洗浄し常温の清水で2回洗浄し常温の酸性溶液で洗浄し常温の清水で洗浄し常温の純水で洗浄し、調理器具を150℃で乾燥する。
【0013】
本発明において、アルカリ洗浄、清水洗浄、酸洗浄、及び純水洗浄により、本体の粗面化された表面上の油と酸化物が効果的に除去される。それによって、次のプライマー層のスプレーを容易にし、また、補助することができる。
【0014】
ステップ2におけるシール層をスプレーした後のベーキングの工程条件は、温度:150℃~180℃、乾燥時間:3min~5minであることが好ましい。
【0015】
ステップ3における焼成工程は、焼成温度:430℃、焼成時間:3min~5minの条件で行われることが好ましい。
【0016】
ステップ1における調理器具の本体の表面の粗面化はサンドブラストで実現され、且つ本体の表面の粗さは3μm~5μmであることが好ましい。本発明において、本体の粗さはサンドブラストを介して向上する。それによって、非粘着層の堅さ、耐摩耗性及び寿命が向上する。
【0017】
上記技術的解決策によれば、本発明の有益な効果は以下の通りである。
【0018】
本発明において、非粘着層を有する調理器具が製造される。まず、プライマー層が調理器具の本体の表面に付着し、プライマー層にグラフェン及び/又はグラフェン誘導体がタイル状に整然として配置されている。グラフェン及び/又はグラフェン誘導体の整然とした配列により、グラフェン素材の熱伝導性の十分な発揮、均一且つ高速な熱伝導が効果的に確保される。また、プライマー層におけるグラフェンはさらに優れた機械的性能を有し、グラフェンがプライマー層にある場合、グラフェンは本体の均一で粗い構造と協力して非粘着層全体を効果的にサポートし、シール層はグラフェンを効果的に保護する。従来のフルオロカーボン塗料と比べると、本発明における非粘着層は、表面硬度がより高い、耐腐食性、耐久性、耐摩耗性及び非粘着性がより優れており、寿命がより長いとう利点を有し、非粘着層は、環境により優しく、より高い効率、より優れた総合性能、耐久性及び耐摩耗性を有する非粘着層である。本発明は、製品の堅さ及び耐摩耗性を効果的に確保する。
【0019】
これで、本発明の上記目的が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明に係る調理器具の断面図である。
図2図2は、図1におけるAの拡大図である。
【0021】
図面中、本体1、非粘着層2、プライマー層21、シール層22、ミッドコート層23、トップコート層24である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の技術的解決策をさらに説明するために、次に、具体的な実施例を通じて本発明を詳細に説明する。
【実施例0023】
実施例1
図に示すように、本実施例において、調理器具が提供されている。当該調理器具は、調理器具の本体1と本体1の表面に塗布された非粘着層2とを含む。非粘着層2は、本体1の1つの側面に接触するプライマー層21を含み、プライマー層21には、フレーク状のグラフェン及び/又はグラフェン誘導体が均一に分布されている。プライマー層21水性ペンキによって作られ、質量分率が28%~32%であるグラフェン及び/又はグラフェン誘導体を有する。非粘着層2に面する本体1の1つの側面は均一で粗い構造を有し、粗さは3μm~5μmである。フレーク状のグラフェン及び/又はグラフェン誘導体の径方向幅は、5μm~20μmである。非粘着層2の厚さは50μm~60μmである。さらに、図2に示すように、非粘着層2においては、プライマー層21の上に、シール層22、ミッドコート層23及びトップコート層24が順次に含まれている。各層の厚み分布は表1に示すようである。トップコート層24は、最も外にあるか、又は外に露出した被覆層であってよく、食物がくっつかないようにし、後片付けを簡単にすることができる。ミッドコート層23は、トップコート層24とプライマー層21との間に位置し、傷や摩耗を防止することができる
【0024】
本実施例において、調理器具の製造方法が提供されている。当該製造方法は以下のステップを含む。ステップ1:調理器具の本体の表面を粗面化する。ステップ1における調理器具の本体の表面の粗面化はサンドブラストで実現され、本体の表面の粗さは3μm~5μmである。
【0025】
ステップ1の後の調理器具を洗浄した後にステップ2を行う。洗浄工程は以下のステップを含む。調理器具を35℃~45℃のアルカリ溶液で洗浄し、常温の清水で2回洗浄し、常温の酸性溶液で洗浄し常温の清水で洗浄し常温の純水で洗浄し、調理器具を150℃で乾燥する。
【0026】
ステップ2:プライマー層を形成し且つグラフェン及び/又はグラフェン誘導体を含む水性ペンキを本体の表面にスプレーし、プライマー層の乾燥されていない表面にシール層をスプレーし、ベーキングを行う。ステップ2におけるシール層をスプレーした後のベーキングの工程条件は、温度:150℃~180℃、乾燥時間:3min~5minである。
【0027】
ステップ3:ミッドコート層とトップコート層とを順次にシール層の表面にスプレーし、且つ焼成を行う。ステップ3における焼成工程は、焼成温度:430℃、焼成時間:3min~5minの条件で行われる。それで、目標非粘着層を有する調理器具を取得する。
【0028】
施例2と実施例1の主な相違点は表1に詳しく示されている。
【0029】
施例3と実施例の主な相違点は表1に詳しく示されている。
【0030】
施例4と実施例1の主な相違点は表1に詳しく示されている。
【0031】
較例に使用される被覆層は、従来技術におけるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)塗料である。
【0032】
【表1】
【0033】
実施例1~4及び比較例で取得された非粘着層を有する同一種類のフライパンに対して性能試験を行い、具体的な試験方法は次の通りである。
【0034】
T1、耐摩耗性及び耐久性(2.5kg(kilogram)乾式研磨)。試料を摩擦試験装置に固定する。ミネソタ・マイニング・アンド・マニュファクチャリング(Minnesota Mining and Manufacturing、3M)7447Bのタワシ(長さ:70mmで、幅:30mm)を試料に入れ、タワシを2.5kgの力で押し付け、33回/分の速度で試料の表面を繰り返しワイプする。500回ごとにタワシを交換し、金属基材が露出するまでの回数を記録する。
【0035】
T2、非粘着性(油無しの目玉焼き)。フラット型の電気ストーブの上に試料を置き、乾式加熱し、内側被覆層の表面温度が140~170℃に達する際、殻を割った生卵を試料に入れる。卵白が基本的に凝固したら(試料の内表面の温度は210℃以下)、外力を加えずに卵を直接に流し出す。卵を流し出すには外力が必要となるまで、T2における上記非粘着性試験を繰り返し、且つ卵を流し出すには外力が必要となるまでの卵の個数を記録する
【0036】
T3、被覆層の硬度試験。STAEDTLER(登録商標)の鉛筆をNo.46エメリーペーパー(emery paper)の上に置き、替芯の前端を研磨することによって、替芯のエッジをシャープにする。鉛筆を鉛筆硬度計の上に正しく置く。鉛筆硬度計を水平方向に力を加えて押し進め、被覆層の表面に10~20mm程度の長さの傷をつけ、傷による被覆層の表面の破損の有無を確認する。鉛筆硬度を9Hから8H、7H、6H、5H、4H、3H、2H、Hに順次に下げていき、被覆層の表面に傷による破損が出るまで、T3における上記硬度試験を繰り返し、被覆層の表面に傷による破損が出るまでの鉛筆硬度に対応の被覆層の硬度を記録する
【0037】
T4、熱伝導の均一性。赤外線サーマル・イメージャを使用して、熱伝導率をテストする。カラー画像の種類が多いほど温度差が大きくなり、カラー画像のパターンが不規則なほど温度ムラが大きくなる。
【0038】
T5、熱伝導の速度。取得されたフライパンを電磁調理器の上に置いて乾式加熱し、温度が50~55℃に上昇した時の時刻を記録し、温度が150~155℃に上昇した時の時刻を記録し、温度が50℃から150℃に上昇する昇温時間を算出する。
【0039】
T6、耐腐食性。10wt%の食塩水を試料に入れ、固定温度のもとで被覆層の表面に腐食が出ているか否かを観察し、被覆層の表面に腐食が出るまでの必要な時間を記録する。
【0040】
具体的な性能試験データは表2に示されている。
【0041】
【表2】
【0042】
本発明において、非粘着層を有する調理器具が製造された。まず、プライマー層が調理器具の本体の表面に付着し、プライマー層にグラフェン及び/又はグラフェン誘導体がタイル状に整然として配置されている。グラフェン及び/又はグラフェン誘導体の整然とした配列により、グラフェン素材の熱伝導性の十分な発揮、均一且つ高速な熱伝導が効果的に確保される。また、プライマー層におけるグラフェンはさらに優れた機械的性能を有し、グラフェンがプライマー層にある場合、グラフェンは本体の均一で粗い構造と協力して非粘着層全体を効果的にサポートし、シール層はグラフェンを効果的に保護する。従来のフルオロカーボン塗料と比べると、本発明における非粘着層は、表面硬度がより高い、耐腐食性、耐久性、耐摩耗性及び非粘着性がより優れており、寿命がより長いとう利点を有し、非粘着層は、環境により優しく、より高い効率、より優れた総合性能、耐久性及び耐摩耗性を有する非粘着層である。本発明は、製品の堅さ及び耐摩耗性を効果的に確保する。
【0043】
上記実施形態及び図面は、本発明の製品の形状及び様式を限定するためのものではない。当業者が本実施形態に対して加わった適切な変更又は潤色は、本発明の特許範囲から逸脱しないと見なされるべきである。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理器具であって、前記調理器具の本体と前記本体の表面に塗布された非粘着層とを含み、
前記非粘着層は、前記本体の1つの側面に接触するプライマー層を含み、前記プライマー層には、フレーク状のグラフェン及び/又はグラフェン誘導体が均一に分布されている、
ことを特徴とする調理器具。
【請求項2】
前記プライマー層水性ペンキによって作られ、質量分率が28%~32%であるグラフェン及び/又はグラフェン誘導体を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の調理器具。
【請求項3】
前記非粘着層に面する前記本体の前記1つの側面は均一で粗い構造を有し、粗さは3μm~5μmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の調理器具。
【請求項4】
前記フレーク状のグラフェン及び/又はグラフェン誘導体の径方向幅は、5μm~20μmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の調理器具。
【請求項5】
前記非粘着層の厚さは50μm~60μmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の調理器具。
【請求項6】
請求項1に記載の調理器具の製造方法であって、
前記調理器具の本体の表面を粗面化するステップ1と、
プライマー層を形成し且つグラフェン及び/又はグラフェン誘導体を含む水性ペンキを前記本体の前記表面にスプレーし、前記プライマー層の乾燥されていない表面にシール層をスプレーし、ベーキングを行うステップ2と、
ミッドコート層とトップコート層とを順次に前記シール層の表面にスプレーし、且つ焼成を行うことによって、目標非粘着層を有する前記調理器具を取得するステップ3とを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の調理器具の製造方法。
【請求項7】
前記ステップ1の後の前記調理器具を洗浄した後に前記ステップ2を行い、
洗浄工程は以下のステップを含み、
35℃~45℃のアルカリ溶液で洗浄し常温の清水で2回洗浄し常温の酸性溶液で洗浄し常温の清水で洗浄し常温の純水で洗浄し150℃で乾燥する、
ことを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記ステップ2における前記シール層をスプレーした後の前記ベーキングの工程条件は、温度が150℃~180℃、乾燥時間が3min~5minである、
ことを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項9】
前記ステップ3における焼成工程は、焼成温度が430℃、焼成時間が3min~5minの条件で行われる、
ことを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項10】
前記ステップ1における前記調理器具の前記本体の前記表面の粗面化はサンドブラストで実現され、前記本体の表面の粗さは3μm~5μmである、
ことを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1
【手続補正5】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正の内容】
図2