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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091719
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】樹脂組成物および成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/20 20060101AFI20230623BHJP
   C08F 210/14 20060101ALI20230623BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
C08L23/20
C08F210/14
C08L1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115418
(22)【出願日】2022-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2021205986
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安井 基泰
(72)【発明者】
【氏名】植草 貴行
(72)【発明者】
【氏名】深川 克正
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4J002AB01X
4J002BB17W
4J002GC00
4J002GL00
4J002GL01
4J002GQ00
4J002GT00
4J100AA02Q
4J100AA03Q
4J100AA04Q
4J100AA05Q
4J100AA06Q
4J100AA17P
4J100CA03
4J100DA01
4J100DA04
4J100DA09
4J100DA13
4J100DA24
4J100DA49
4J100DA71
4J100FA08
4J100FA10
4J100FA19
4J100FA28
4J100JA43
4J100JA58
4J100JA59
4J100JA67
(57)【要約】
【課題】4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体の特徴である柔軟性と応力緩和性を生かした樹脂組成物であって、引張伸長時の歪み量が大きく、特に薄肉にあっては形状追従に優れ、経時変化によるべたつきが解消され、さらに抗菌性能を有する成形体を形成し得る樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】特定要件を満たす4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)20~90質量部と、バイオマス材料(B)10~80質量部(ただし、(A)と(B)の合計を100質量部とする。)とを含む樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記要件(A-a)~(A-e)を満たす4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)20~90質量部と、
バイオマス材料(B)10~80質量部〔ただし、(A)と(B)の合計を100質量部とする。〕とを含む樹脂組成物:
(A-a)4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(i)60~78モル%と、炭素原子数2~4のα-オレフィンから導かれる構成単位(ii)40~22モル%とからなる〔ただし、構成単位(i)と構成単位(ii)の合計を100モル%とする。〕;
(A-b)135℃デカリン中で測定した極限粘度〔η〕が、0.5~4.0dl/gの範囲にある;
(A-c)ゲミパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分子量分布(Mw/Mn)が、1.0~4.0の範囲にある;
(A-d)密度が825~860kg/m3の範囲にある;
(A-e)示差走査熱量計(DSC)で測定する融点(Tm)が観測されない。
【請求項2】
JIS Z2801に準拠して評価される抗菌活性値が、2.0以上である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)が、下記要件(A-f)~(A-g)を満たす請求項1に記載の樹脂組成物:
(A-f)-40~150℃の温度範囲で、トーションモード、周波数10rad/s(1.6Hz)、昇温速度2℃/分、および歪み量0.1%の条件で測定される動的粘弾性の損失正接tanδの最大値が、1.0~5.0の範囲である;
(A-g)-40~150℃の温度範囲で、トーションモード、周波数10rad/s(1.6Hz)、昇温速度2℃/分、および歪み量0.1%の条件で測定される動的粘弾性の損失正接tanδの値が最大となる際の温度が、10~60℃の範囲にある。
【請求項4】
前記バイオマス材料(B)が、木粉、木質繊維、パルプ、竹、綿花、サトウキビ、もみ殻、セルロース、およびナノセルロールからなる群から選ばれる少なくとも1種の植物由来粉末である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂組成物を用いて成形された成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4-メチル-1-ペンテン系重合体とバイオマス材料が、特定の配合比率で含まれる樹脂組成物およびその樹脂組成物を成形して得られる成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃棄プラスチックは一部で再生樹脂として活用されているが、未だ焼却や埋め立て処理が行われている。一方、木造家屋の解体に伴う木材や植物由来粉末の廃材は、主に燃料として用いられることで処理されていた。
【0003】
近年、循環型材料の構築を目指して、産業資材の大量生産および大量消費から循環利用が義務付けられ、これに伴い石油由来の化石資源から再生可能な資源への転換が望まれている。このような背景から、ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂とバイオマス材料を含む複合樹脂材料が開発されている。
【0004】
そこで、ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂とバイオマス材料を含む樹脂組成物を射出成形や押出成形等の各種成形方法により、合成木材並びに成形体を得ることが提案されてきた。
【0005】
そのような樹脂組成物には、樹脂とバイオマス材料との分散性を高めるために、相容化剤としてワックスを添加することが検討されている。特にポリオレフィン系ワックスを添加した樹脂組成物は、成形時の流動性が向上して成形加工性を容易にすることができる。
【0006】
特許文献1には、特定のポリエチレンとセルロース系粉末および融点が40~150℃のワックスからなる複合材料が開示されている。
【0007】
特許文献2には、植物粉とワックス系樹脂材料、滑剤あるいは分散剤、および熱可塑性樹脂を含む植物系樹脂ペレットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000-103915号公報
【特許文献2】特開2014-25053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載された複合材料は押出成形性に優れるものの、得られる成形体は夏場や直射日光などによる高温下での経時変化により、合成木材の表面からワックス成分がブリードアウトしてべたつきが起こり、木質本来の風合いを維持することが困難であるという問題があった。
【0010】
特許文献2に記載された植物系ペレットは、成形加工性に優れて、得られる成形体は天然木材に近い外観を付与できる利点がある。しかしながら、植物系ペレットにワックス系樹脂材料や滑剤および分散剤を含有することから、高温環境下での経時変化により成形体の表面がべたつくという問題があった。さらに、マトリックス樹脂と植物由来粉末との界面強度が増すため、機械強度の向上が見込めるものの、高剛性な成形体となりうるために用途が限られていた。最近では、柔軟性を有した循環型材料の要望があり、該植物系ペレットの使用には不向きという懸念がある。
【0011】
本発明の課題は、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体の特徴である柔軟性と応力緩和性を生かした樹脂組成物であって、引張伸長時の歪み量が大きく、特に薄肉にあっては形状追従に優れ、経時変化によるべたつきが解消された成形体を形成し得る樹脂組成物、および該樹脂組成物からなる成形体を提供することである。
【0012】
さらに、生活環境の中には様々な雑菌が存在している。これらの雑菌は、媒介物を経て人体やプラスチック製品に付着して繁殖することによって、健康障害を引き起こす場合がある。そこで、該樹脂組成物からなる成形体としては、抗菌性が付与された安全性の高い機能が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述の課題を解決するために鋭意検討した結果、4-メチル-1-ペンテン系重合体〔なお、本明細書においては、「重合体」と記載した場合は特に断りがない限り、単独重合体と共重合体を含むものとする。〕およびバイオマス材料が、特定の配合比率で含まれる樹脂組成物、ならびに、該樹脂組成物からなる成形体を用いることにより、前述の課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
さらに、該樹脂組成物のバイオマス材料として、特定の木粉を用いることにより、該樹脂組成物からなる成形体は、抗菌性能を有して安全性の高い成形体が得られる。
【0015】
すなわち、本発明は以下の〔1〕~〔5〕にかかわる。
〔1〕 下記要件(A-a)~(A-e)を満たす4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)20~90質量部と、
バイオマス材料(B)10~80質量部〔ただし、(A)と(B)の合計を100質量部とする。〕とを含む樹脂組成物:
(A-a)4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(i)60~78モル%と、炭素原子数2~4のα-オレフィンから導かれる構成単位(ii)40~22モル%とからなる〔ただし、構成単位(i)と構成単位(ii)の合計を100モル%とする。〕;
(A-b)135℃デカリン中で測定した極限粘度〔η〕が、0.5~4.0dl/gの範囲にある;
(A-c)ゲミパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分子量分布(Mw/Mn)が、1.0~4.0の範囲にある;
(A-d)密度が825~860kg/m3の範囲にある;
(A-e)示差走査熱量計(DSC)で測定する融点(Tm)が観測されない。
【0016】
〔2〕 JIS Z2801に準拠して評価される抗菌活性値が、2.0以上である項〔1〕に記載の樹脂組成物。
【0017】
〔3〕 前記4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)が、下記要件(A-f)~(A-g)を満たす項〔1〕または〔2〕に記載の樹脂組成物:
(A-f)-40~150℃の温度範囲で、トーションモード、周波数10rad/s(1.6Hz)、昇温速度2℃/分、および歪み量0.1%の条件で測定される動的粘弾性の損失正接tanδの最大値が、1.0~5.0の範囲である;
(A-g)-40~150℃の温度範囲で、トーションモード、周波数10rad/s(1.6Hz)、昇温速度2℃/分、および歪み量0.1%の条件で測定される動的粘弾性の損失正接tanδの値が最大となる際の温度が、10~60℃の範囲にある。
【0018】
〔4〕 前記バイオマス材料(B)が、木粉、木質繊維、パルプ、竹、綿花、サトウキビ、もみ殻、セルロース、およびナノセルロールからなる群から選ばれる少なくとも1種の植物由来粉末である項〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【0019】
〔5〕 項〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物を用いて成形してなる成形体。
【発明の効果】
【0020】
本発明の樹脂組成物は、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体の特徴である柔軟性と応力緩和性を生かした樹脂組成物であり、引張伸長時の歪み量が大きく、特に薄肉にあっては形状追従に優れ、経時変化によるべたつきが解消された成形体の材料として好適に使用できる。
【0021】
さらに、該樹脂組成物のバイオマス材料として、特定の木粉を用いることにより、抗菌性能を有した安全性の高い成形体が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0023】
本発明に係る樹脂組成物は、後述する4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)およびバイオマス材料(B)を含む。
【0024】
<4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)>
本発明の樹脂組成物を構成する成分の一つである4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)〔以下「共重合体(A)」と略記する場合がある。〕は、下記要件(A-a)~(A-e)を満たす4-メチル-1-ペンテンとα-オレフィンの共重合体である。
【0025】
〈要件(A-a)〉
4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(i)60~78モル%と、炭素原子数2~4のα-オレフィンから導かれる構成単位(ii)40~22モル%とからなる〔ただし、構成単位(i)と構成単位(ii)の合計を100モル%とする。〕。
【0026】
共重合体(A)における構成単位(i)の含有率が60モル%以上であることにより、樹脂組成物には応力緩和性を付与できる。共重合体(A)における構成単位(ii)の含有率が22モル%以上であることにより、引張伸長時の歪み量が大きく、薄肉にあっては形状追従に優れる成形体が得られる。
【0027】
共重合体(A)における構成単位の含有率(モル%)の値は、13C-NMRによる測定方法によって算出した場合のものである。なお、具体的な測定方法については、後述の実施例に記載する内容のとおりである。
【0028】
共重合体(A)における構成単位(i)の含有率は、好ましくは62~77モル%、より好ましくは64~76モル%、さらに好ましくは68~75モル%の範囲にある。
【0029】
共重合体(A)における構成単位(ii)の含有率は、好ましくは23~38モル%、より好ましくは24~36モル%、さらに好ましくは25~32モル%の範囲にある。
【0030】
共重合体(A)における構成単位(ii)を形成する炭素原子数2以上4以下のα-オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテンなどが挙げられる。これらは、1種単独、あるいは本発明の効果を損なわない範囲で、2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも特にプロピレンが好ましく、柔軟性と応力緩和性を併せ持つ特徴を発現するのに有利である。
【0031】
〈要件(A-b)〉
共重合体(A)の135℃デカリン中で測定した極限粘度〔η〕は、0.5~4.0dl/g、好ましくは0.6~3.5dl/g、より好ましくは0.8~3.0dl/gの範囲にある。
【0032】
共重合体(A)の極限粘度〔η〕が、上記範囲内にあると、低分子量成分が少ないため、得られる樹脂組成物のべたつきが低減され、成形加工が容易となるため好ましい。なお、具体的な測定方法については、後述の実施例に記載する内容のとおりである。
【0033】
さらに、共重合体(A)は、ASTM D1238に準拠して、温度230℃、21.18Nで測定されるメルトフローレイト(MFR)の値が、好ましくは0.1~100g/10分、より好ましくは0.5~80g/10分、さらに好ましくは1~50g/10分の範囲である。共重合体(A)が上記の範囲内であると、前記バイオマス材料との混合性、および樹脂組成物の成形加工性が容易となるため好ましい。
【0034】
〈要件(A-c)〉
共重合体(A)におけるゲミパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分子量分布(Mw/Mn)は、1.0~4.0の範囲にある。前記分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.2~3.5、より好ましくは1.3~3.0、さらに好ましくは1.5~2.8である。
【0035】
分子量分布(Mw/Mn)が、4.0以下であると、組成分布に由来する低分子量および低立体規則性ポリマーの影響が少なく、得られる樹脂組成物のべたつきが低減され、成形加工が容易となるため好ましい。
【0036】
また、共重合体(A)におけるGPCで測定される重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算で、好ましくは500~10,000,000、より好ましくは1,000~5,000,000、さらに好ましくは1,000~2,500,000の範囲にある。なお、GPCの測定条件等の詳細は、後述の実施例に記載する内容のとおりである。
【0037】
〈要件(A-d)〉
共重合体(A)の密度は、825~860kg/m3、好ましくは830~850kg/m3の範囲にある。密度が上記の範囲内にあると、樹脂組成物に含まれる前記バイオマス材料(B)に対して、均一で良好な分散性が得られるため好ましい。また、得られる成形体は、柔軟性を有するのに有利である。なお、密度の測定条件等の詳細は、後述の実施例に記載する内容のとおりである。
【0038】
〈要件(A-e)〉
共重合体(A)は、示差走査熱量計(DSC)で測定する融点(Tm)が観測されない。このような要件を満たすことによって、本発明の引張伸長時の歪み量が大きく、薄肉の成形体にあっては形状追従することが可能となる。
【0039】
融点(Tm)の値は、共重合体の立体規則性ならびに共に重合する構成単位(ii)のα-オレフィンに依存して変化する値である。共重合体(A)の融点(Tm)は、後述するオレフィン重合用触媒を用いて所望の組成に制御することにより調整が可能である。なお、融点(Tm)の測定条件等の詳細は、後述の実施例に記載する内容のとおりである。
【0040】
共重合体(A)の応力緩和性については、例えば、動的粘弾性で測定される貯蔵弾性率G′と損失弾性率G″の比(G″/G′)で示される損失正接tanδにより、評価することができる。貯蔵弾性率G′は応力を加えた際に、そのエネルギーを内部に蓄えて応力を保持する弾性成分のことである。損失弾性率G″は応力を加えた際に、そのエネルギーを熱に変換して逃がす(外部へ拡散する)粘性成分のことである。したがって、特定の温度環境下での損失正接tanδが高い材料であるほど、衝撃を吸収しやすく、より高い応力緩和性を発現することになる。
【0041】
共重合体(A)は、上記要件(A-a)~(A-e)に加え、さらに下記要件(A-f)~(A-g)を満たすことが好ましい。
【0042】
〈要件(A-f)〉
共重合体(A)における、-40~150℃の温度範囲で、トーションモード、周波数10rad/s(1.6Hz)、昇温速度2℃/分、および歪み量0.1%の条件で測定される動的粘弾性の損失正接tanδの最大値(以下、tanδピーク値ということがある。)は、好ましくは1.0~5.0、より好ましくは1.5~4.5、さらに好ましくは2.0~4.0の範囲である。
【0043】
本発明の樹脂組成物に用いられる共重合体(A)単独のtanδピーク値は、1.0以上であることが、得られる成形体の成形加工時で発生する歪みや変形などの応力を緩和しやすくなり、特に薄肉にあっては形状追従に優れるため好ましい。
【0044】
〈要件(A-g)〉
共重合体(A)における、-40~150℃の温度範囲で、トーションモード、周波数10rad/s(1.6Hz)、昇温速度2℃/分、および歪み量0.1%の条件で測定される動的粘弾性の損失正接tanδの値が最大となる際の温度(以下、tanδピーク温度ということがある。)は、好ましくは10~60℃、より好ましくは15~55℃、さらに好ましくは20~50℃の範囲にある。
【0045】
さらに、本発明の樹脂組成物については、共重合体(A)単独のtanδピーク温度は、20~45℃の範囲にあることが、得られる成形体の成形加工時に発生する歪みや変形などの応力を緩和しやすくなり、特に薄肉にあっては形状追従に優れるため好ましい。なお、具体的な動的粘弾性の損失正接tanδの測定方法については、後述の実施例に記載する内容のとおりである。
【0046】
前記tanδピーク値およびtanδピーク温度は、共重合体(A)における構成単位(i)/構成単位(ii)の組成比などにより調整することができる。
【0047】
<共重合体(A)の製造方法>
前記共重合体(A)の製造方法は、特に限定されないが、例えば、4-メチル-1-ペンテンと前述の炭素原子数2~4のα-オレフィンとをマグネシウム担持型チタン触媒、またはメタロセン触媒などの適切な重合触媒存在下で重合することにより製造できる。
【0048】
ここで、使用することができる重合触媒としては、従来公知の触媒、例えば、マグネシウム担持型チタン触媒、国際公開第01/53369号、国際公開01/27124号、特開平3-193796号公報、あるいは特開平2-41303号公報、国際公開第2011/055803号、国際公開第2014/050817号等に記載のメタロセン触媒などが好適に用いられる。重合は、溶解重合および懸濁重合などを含む液相重合法、ならびに気相重合法などから適宜選択して行うことができる。
【0049】
液相重合法では、液相を構成する溶媒として不活性炭化水素溶媒を用いることができる。上記不活性炭化水素の例には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、および灯油などを含む脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、およびメチルシクロヘキサンなどを含む脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、およびキシレンなどを含む芳香族炭化水素、ならびにエチレンクロリド、クロロベンゼン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、およびテトラクロロメタンなどを含むハロゲン化炭化水素、ならびにこれらの混合物などが含まれる。
【0050】
また、液相重合法では、前述の4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(iii)に対応するモノマー(すなわち、4-メチル-1-ペンテン)、前述の炭素原子数2~4のα-オレフィンから導かれる構成単位(iv)に対応するモノマー(すなわち、前述の炭素原子数2~4のα-オレフィン)自体を溶媒とした塊状重合とすることもできる。
【0051】
なお、上述の4-メチル-1-ペンテンと上述の炭素原子数2~4のα-オレフィンとの共重合を段階的に行うことにより、前記4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)を構成する4-メチル-1-ペンテンの構成単位(i)、および、炭素原子数2~4のα-オレフィンの構成単位(ii)の組成分布を適度に制御することもできる。
【0052】
重合温度は、-50~200℃が好ましく、0~100℃がより好ましく、20~100℃がさらに好ましい。重合圧力は、常圧~10MPaゲージ圧であることが好ましく、常圧~5MPaゲージ圧であることがより好ましい。
【0053】
重合の時に、生成するポリマーの分子量や重合活性を制御する目的として、水素を添加してもよい。添加する水素の量は、前述の4-メチル-1-ペンテンの量と前述の炭素原子数2~4のα-オレフィンの量との合計1kgに対して、0.001~100NL程度が適切である。
【0054】
<バイオマス材料(B)>
本発明に係るバイオマス材料(B)は、木粉、木質繊維、パルプ、竹、綿花、サトウキビ、もみ殻、セルロース、およびナノセルロールの植物由来粉末が含まれる。
【0055】
本発明に係るバイオマス材料(B)は、上述の共重合体(A)と混合可能であって、所望の流動性、成形体の外観、および機械物性等が得られるものであれば、特に制限されない。
【0056】
本発明の樹脂組成物には、前記バイオマス材料(B)を1種のみ含んでもよく、2種以上含んでもよい。なお、本明細書において、前記バイオマス材料(B)とは繊維形態のものだけではなく、これを粉末状にしたもの、および塊状にしたものを含む。
【0057】
パルプとしては、例えば、木材をチップ状にしてアルカリ性薬剤を加えて高温・高圧下で煮た後、その溶液を分離して洗浄してパルプ以外の不純物を除去して得られる広葉樹晒しクラフトパルプや針葉樹晒しクラフトパルプ等が挙げられる。
【0058】
セルロースとしては、例えば、植物の細胞壁を主成分とした多糖類のセルロースとヘミセルロールと高分子化合物のリグニンで形成されるリグノセルロールが挙げられる。それらセルロールおよびリグノセルロールに含まれる水酸基に、多塩基酸無水物を付加して得られるエステル化セルロールおよびエステル化リグノセルロール、セルロールおよびリグノセルロールに含まれる水酸基に、多塩基酸無水物とエポキシ化合物を付加して得られるオリゴエステル化セルロールおよびオリゴエステル化リグノセルロールであってもよい。
【0059】
多塩基酸無水物としては、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水ジクロロマレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸等が挙げられる。
エポキシ化合物としては、例えば、メチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、スチレンオキサイド等が挙げられる。
【0060】
ナノセルロールとしては、例えば、セルロースの束をミクロフィブリル化した構造を有するセルロースナノクリスタル、セルロースナノウィスカー、および微細な菌から作製されるバクテリアナノファイバー等が挙げられる。
【0061】
上述のバイオマス材料(B)としては、農産物から得られる繊維であってもよく、例えば、麻、亜麻、マニラ麻、サイザル麻、麦わら、ケナフ、コイア、ジュート、カポック、ラミー、ヘネッケン、トウモロコシ繊維、木の実の殻等が挙げられる。
【0062】
さらに、本発明に係るバイオマス材料(B)としては、上述に挙げた材料の中でも、製造コストや機能性を考慮して、木粉または木質繊維がより好ましく、木粉が特に好ましい。
【0063】
木粉としては、原木の樹種には制限されず、木材工業での木材廃棄物、および未利用の木材から得られる木粉や木質繊維を使用することができる。木粉は1種の樹種から得られる木粉であってもよく、2種以上の樹種からなる木粉混合物であってもよい。
【0064】
木粉は、菌に対して増殖を抑制する作用を有することが知られている。一般的には、木粉に含まれるアガサレジノール、セキリンC、β-オイデスモールおよびヒノキチオールなどの有機化合物が効果をもたらすことが知られている。代表的な木粉の原木として、針葉樹種のスギ、ヒノキおよび青森ヒバなどが挙げられる。
【0065】
ヒノキチオールは、タイワンヒノキや青森ヒバの精油中に含まれる天然物であり、菌種に対して優れた抗菌性を有する。また、抗カビや防虫性などの作用を併せ持つ有用な結晶性物質である。また、食品添加物の保存剤としても許可されており、安全性が確認されている。さらに近年では、アトビー症に対しても効果があると報告されている。
【0066】
木粉は吸水性の高い材料であるため、予め加熱乾燥処理を行って木粉中の含水率を低減させておくことが好ましい。その含水率は10質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。加熱温度は80~120℃の範囲が好ましく、乾燥時間は1~4時間が好ましい。木粉中の含水率を低減させておくことにより、前記共重合体(A)と前記バイオマス材料(B)で用いる木粉との良好な混合性が得られ、かつ均一な樹脂組成物が得られやすい。
【0067】
<樹脂組成物>
熱可塑性樹脂とバイオマス材料を含む樹脂組成物のコンパウンド化には、例えば、相容化剤としてポリオレフィン系ワックス、またはそれらの不飽和カルボン酸誘導体モノマー変性物を添加した組成物が検討されてきた。
【0068】
詳細な機構は明らかではないが、一般的にバイオマス材料である植物由来粉末の密度は1000kg/m3以上であり、それよりも低い密度の相容化剤を添加すると、相溶化剤が植物由来粉末の界面に局在化した場合には、植物由来粉末の界面において表面張力を下げる効果が得られ、植物由来粉末の凝集力が低下すると推定される。
【0069】
また、相容化剤としてポリオレフィン系ワックスからなる不飽和カルボン酸誘導体モノマー変性物(例えば、無水マレイン酸等)を添加した場合には、熱可塑性樹脂(マトリックス樹脂)と植物由来粉末の界面で接着力が増加することが推定される。したがって、これら相容化剤を樹脂組成物に添加することにより、得られる成形体は機械強度が向上すると考えられる。
【0070】
しかしながら、上記の相容化剤を含む樹脂組成物から得られる成形体は、夏場や直射日光などによる高温下での経時変化により、成形体の表面からポリオレフィン系ワックス成分がブリードアウトしてべたつくという不具合を引き起こすことがある。したがって、植物本来の風合いを維持することが困難であった。
【0071】
さらに、機械強度が向上するに伴って、高剛性な成形体となりうるために用途が限定されてきた。最近では、柔軟性を有した循環型材料の要望があり、上記の相容化剤を添加した樹脂組成物の使用には不向きという懸念がある。
【0072】
本発明の樹脂組成物は、前記共重合体(A)を20~90質量部、好ましくは25~85質量部、より好ましく30~80質量部、さらに好ましくは30~70質量部、前記バイオマス材料(B)を10~80質量部、好ましくは15~75質量部、より好ましくは20~70質量部、さらに好ましくは30~70質量部〔ただし、(A)+(B)の合計を100質量部とする。〕の範囲で含む組成物である。
【0073】
本発明の樹脂組成物は、前記共重合体(A)を上記の範囲内で含むことにより、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体の特徴である柔軟性と応力緩和性を発現する組成物となり、引張伸長時の歪み量が大きく、特に薄肉にあっては形状追従に優れ、経時変化によるべたつきが解消される成形体を得ることができる。また、前記バイオマス材料(B)が上記の範囲よりも多い樹脂組成物は、流動性が低下して成形加工が困難となる。
【0074】
本発明の樹脂組成物は、JIS Z2801に準拠して評価される抗菌活性値が、好ましくは2.0以上、より好ましくは2.5以上である。抗菌活性値が、2.0以上あると、抗菌性能を有しているとされる。抗菌活性値が大きいほど、抗菌効果が高いことを示すため好ましく、その上限は特に制限されるものではない。なお、前記抗菌活性値は、種々の菌に対して前記条件を満たすことが好ましく、特に黄色ブドウ球菌および大腸菌のいずれに対しても、前記条件を満たすことがより好ましい。
【0075】
<その他の成分>
本発明の樹脂組成物は、前記共重合体(A)と前記バイオマス材料(B)を含む。ただし、本発明の樹脂組成物は、必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲で、前記共重合体(A)にも、前記バイオマス材料(B)にも該当しないその他の成分(以下、「その他の成分」)をさらに含んでいても良い。このような「その他の成分」として、公知の添加剤が挙げられる。
【0076】
添加剤としては、例えば、軟化剤、酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、帯電防止剤、顔料、染料、耐候性安定剤、耐熱安定剤、赤外線吸収剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、結晶核剤、防黴剤、抗菌剤、および有機充填剤などが挙げられるが、これらは限定されるものではない。これらの添加剤は1種単独で使用してもよく、あるいは2種以上を併用してもよい。
【0077】
軟化剤としては、例えば、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、石油アスファルトおよびワセリンなどを含む石油系物質、コールタールおよびコールタールピッチなどを含むコールタール類、ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油および椰子油などを含む脂肪油、トール油、蜜ロウ、カルナウバロウおよびラノリンなどを含むロウ類、リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、12-水酸化ステアリン酸、モンタン酸、オレイン酸およびエルカ酸などを含む脂肪酸またはその金属塩、石油樹脂、クマロンインデン樹脂およびアタクチックポリプロピレンなどを含む合成高分子、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペートおよびジオクチルセバケートなどを含むエステル系可塑剤、マイクロクリスタリンワックス、液状ポリブタジエンまたはその変性物もしくは水添物、ならびに液状チオコールなどを含む公知の軟化剤が挙げられる。
【0078】
さらに、軟化剤としては、例えば、芳香族カルボン酸エステル(フタル酸ジブチル等)、脂肪族カルボン酸エステル(メチルアセチルリシノレート等)、脂肪族ジアルボン酸エステル(アジピン酸-プロピレングリコール系ポリエステル等)、脂肪族トリカルボン酸エステル(クエン酸トリエチル等)、リン酸トリエステル(リン酸トリフェニル等)、エポキシ脂肪酸エステル(ステアリン酸エポキシブチル等)、石油樹脂等が挙げられる。
【0079】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール等)、多環フェノール系(2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)その他のメチレン架橋化多環フェノール等)、リン系(テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4-ビフェニレンジホスフォネート等)、アミン系(N,N-ジイソプロピル-p-フェニレンジアミン等)などが挙げられる。
【0080】
難燃剤としては、例えば、ポリリン酸アンモニウム、エチレンビストリス(2-シアノエチル)ホスフォニウムクロリド、トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(3-ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキシド等のリン酸エステル及びその他のリン化合物、塩素化パラフィン、塩素化ポリオレフィン、パークロロシクロペンタデカン等の塩素系難燃剤、ヘキサブロモベンゼン、エチレンビスジブロモノルボルナンジカルボキシイミド、エチレンビステトラブロモフタルイミド、テトラブロモビスフェノールA誘導体、テトラブロモビスフェノールS、およびテトラブロモジペンタエリスリトール等の臭素系難燃剤、ならびにこれらの混合物が挙げられる。
【0081】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチル酸系、アクリレート系等が挙げられる。
【0082】
抗菌剤としては、例えば、4級アンモニウム塩、ピリジン系化合物、有機酸、有機酸エステル、ハロゲン化フェノール、有機ヨウ素などが挙げられる。
【0083】
界面活性剤としては、例えば、非イオン性、アニオン性、カチオン性または両性の界面活性剤を挙げることができる。非イオン性界面活性剤としては、高級アルコールエチレンオキシド付加物、脂肪酸エチレンオキシド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキシド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキシド付加物等のポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤、ポリエチレンオキシド、グリセリンの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビットもしくはソルビタンの脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミンの脂肪族アミド等の多価アルコール型非イオン性界面活性剤などが挙げられ、アニオン性界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸のアルカリ金属塩等の硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩等のスルホン酸塩、高級アルコールリン酸エステル塩等のリン酸エステル塩などが挙げられ、カチオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩などが挙げられる。両性界面活性剤としては、高級アルキルアミノプロピオン酸塩等のアミノ酸型両面界面活性剤、高級アルキルジメチルベタイン、高級アルキルジヒドロキシエチルベタイン等のベタイン型両性界面活性剤などが挙げられる。
【0084】
帯電防止剤としては、例えば、前述の界面活性剤、脂肪酸エステル、高分子型帯電防止剤が挙げられる。脂肪酸エステルとしてはステアリン酸やオレイン酸のエステルなどが挙げられ、高分子型帯電防止剤としてはポリエーテルエステルアミドなどが挙げられる。
【0085】
顔料としては、例えば、無機含量(酸化チタン、酸化鉄、酸化クロム、硫化カドミウム等)、有機顔料(アゾレーキ系、チオインジゴ系、フタロシアニン系、アントラキノン系)が挙げられる。染料としては、例えば、アゾ系、アントラキノン系、トリフェニルメタン系などが挙げられる。
【0086】
これら顔料および染料の添加量は、特に限定されないが、本発明の樹脂組成物100質量部に対して、通常5質量部以下、好ましくは0.1~3質量部である。
【0087】
上記の各種添加剤の添加量は、本発明の効果を損なわない範囲で用途に応じて、特に限定されないが、本発明の樹脂組成物100質量部に対して、それぞれ合計で、0.01~10質量部であることが好ましい。
【0088】
また、本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、前記共重合体(A)と前記バイオマス材料(B)以外の重合体を含有してもよい。その場合、樹脂組成物における前記共重合体(A)と前記バイオマス材料(B)以外の成分の含有量は、前記共重合体(A)と前記バイオマス材料(B)の合計100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
【0089】
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の樹脂組成物の製造方法には特に限定されることはなく、例えば、従来公知の製造方法が使用できる。本発明の樹脂組成物を構成する前記共重合体(A)と前記バイオマス材料(B)、および前記「その他の成分」とを公知の混合機を用いて、ドライブレンドする方法が挙げられる。ここで、上記混合機として、例えば、ヘンシェルミキサー、タンブラーブレンダー、V-ブレンダー等が挙げられる。
【0090】
上記の混合機でドライブレンドした後、例えば、180~240℃の温度設定下で、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールミル等により溶融混練後、造粒あるいは粉砕する方法を採用することができる。それらの中でも、各成分の混合性や生産性の観点から、二軸押出機やバンバリーミキサーによる溶融混練が好ましい。それらの方法によって、各成分が均一に混合分散された高品質なペレットを得ることができる。
【0091】
<成形体>
本発明の成形体は、前述の樹脂組成物を従来公知の成形方法、例えば、熱プレス成形、圧縮成形、射出成形、および押出成形等により所望の形状に製造することができる。射出成形の場合には、所望の金型を用いて成形体を製造することができる。
【0092】
成形体の形状は特に限定されないが、例えば、シート状、フィルム状、板状、円柱状、および角柱状等のいずれの形状であってもよい。
【0093】
<成形体の用途>
本発明の成形体は、特に用途は限定されないが、従来から木材が使用されている用途に用いることができる。例えば、造作材、化粧材、ウッドデッキ等のエクステリア部材やインテリア部材として好適に用いられる。
【0094】
また、建築用部材として用いることができ、例えば、壁面や床面等の内装材、家具用外装材、パーティション、窓枠、手摺、取手、敷居、防水材、防カビ材、防腐材、バスユニット、床パネル、タイル、ラグ、玄関マット、カウンター材等に利用することもできる。
【0095】
また、産業用部材や日用品部材として用いることもでき、例えば、筆記具用グリップ、ペンケース、カードホルダー、ブックカバー、マウスパット、デスクマット、収納ボックス等の文具・事務用品、プラモデル等の模型、玩具、積み木やパズル等の知育玩具、容器蓋、チューブキャップ等の化粧品容器、スマートフォン用ケース、押しボタンスイッチ部材、スピーカーコーン、家電用筐体等の部材、テーブルマット、ランチョンマット、コップ、スプーンやホーク等の食器・生活用品、眼鏡ケース、鉢、小物入れ等の包装容器などとして好適に用いられる。
【0096】
さらに、ウェアラブル部材として用いることもでき、例えば、インソール、腕時計バンド、プロテクター、スポーツ用グリップ、衣装ベルト、ネックレス式マウント、ネックスピーカー、眼鏡テンプル等として好適に用いられる。
【0097】
本発明の樹脂組成物および成形体は、木造家屋の解体に伴うバイオマス材料の焼却処理、並びに農産物での過剰生産による廃棄処分を有効利用することができ、かつ、石油由来原料である樹脂の使用量を大幅に削減できる。したがって、産業資材の大量生産や大量消費から循環型材料として、再生産可能な資源への転換に貢献できるものである。
【実施例0098】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の実施例および比較例における樹脂物性の測定方法、組成物の使用材料、試験片の作製方法、および物性評価方法は次のとおりである。
【0099】
樹脂物性の測定方法
<構成単位の含有率>
ポリマー中の4-メチル-1-ペンテン、およびα-オレフィン含量の定量化は、以下の装置および条件により13C-NMRで測定した結果を基にした。ただし、本測定結果のα-オレフィン含量には、4-メチル-1-ペンテンの含量は含まれない。
【0100】
日本電子社製ECP500型核磁気共鳴装置を用いて、オルトジクロロベンゼン/重水素化ベンゼン(80/20容量%)混合溶媒、試料濃度55mg/0.6mL、測定温度120℃、観測核は13C(125MHz)、シーケンスはシングルパルスプロトンデカップリング、パルス幅は4.7μ秒(45°パルス)、繰り返し時間は5.5秒、積算回数は1万回以上、27.50ppmをケミカルシフトの基準値として測定した。得られた13C-NMRスペクトルにより、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィンの組成を定量化した。
【0101】
<極限粘度>
ウベローデ粘度計を用いて、デカリン溶媒中135℃で測定した値である。重合パウダー、およびペレットまたは樹脂塊を約20mg採取し、デカリン15mLに溶解して、135℃に加熱したオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5mL追加して希釈後、同じように比粘度ηspを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)をゼロに外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度として算出した(下式を参照)。
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)
【0102】
<メルトフローレイト(MFR)>
ASTM D1238に準拠して、温度230℃、21.18Nで測定した。
【0103】
<重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn値)>
分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
具体的には、液体クロマトグラフとしてWaters社製ALC/GPC150-Cplus型(示差屈折計検出器一体型)を用い、分離カラムとして東ソー社製GMH6-HTを2本、およびGMH6-HTLを2本直列接続して用い、移動相媒体としてo-ジクロロベンゼン、酸化防止剤として0.025質量%のジブチルヒドロキシトルエン(武田薬品工業社製)を用い、移動相媒体を1.0mL/分で移動させ、試料濃度は15mg/10mLとし、試料注入量は500μLとし、検出器は示差屈折計を用いた。標準ポリスチレンとしては、重量平均分子量(Mw)が1,000以上、4000,000以下において、東ソー社製の標準ポリスチレンを用いた。
【0104】
得られたクロマトグラムを、公知の方法によって、標準ポリスチレンサンプルを用いて検量線を作成して解析することで、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn値)を算出した。1サンプル当たりの測定時間は60分であった。
【0105】
<密度>
密度は、JIS K7112に準拠して、密度勾配管を用いて測定した。
【0106】
<融点(Tm)>
JIS K7121に準拠し、TAインスツルメンツ社製示差走査熱量計Discovery DSC2500を用い、昇温速度10℃/分で測定される融解ピーク頂点の最も高い温度を融点とした。
【0107】
組成物の使用材料
<共重合体(A)の合成>
共重合体(A)として、4-メチル-1-ペンテン含有量、および炭素原子数2~4のα-オレフィン含有量を調整した共重合体(A-1)を合成した。その合成方法は、後述に記載する内容のとおりである。
【0108】
<共重合体(A-1)の合成>
充分に窒素置換した容量1.5Lの攪拌翼付SUS製オートクレーブに、23℃でn-ヘキサン300ml(乾燥窒素雰囲気下、活性アルミナ上で乾燥したもの)、4-メチル-1-ペンテン450mlを装入した。このオートクレーブに、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml装入して攪拌した。
【0109】
次に、オートクレーブを内温60℃まで加熱し、全圧(ゲージ圧)が0.40MPaとなるようにプロピレンで加圧した。
続いて、予め調製しておいたアルミニウム換算で1mmolのメチルアルミノキサン、および0.01mmolのジフェニルメチレン(1-エチル-3-t-ブチル-シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチル-フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを含むトルエン溶液0.34mlをオートクレーブに窒素で圧入し、重合反応を開始した。
【0110】
重合反応中は、オートクレーブの内温が60℃になるように温度を調整した。
重合開始から60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し、重合反応を停止させた後、オートクレーブ内を大気圧まで脱圧した。脱圧後、反応溶液にアセトンを添加しながら攪拌した。
【0111】
得られた溶媒を含むパウダー状の共重合体を100℃、減圧下で12時間乾燥した。生成物である共重合体(A-1)の重量は36.9gで、共重合体中の4-メチル-1-ペンテン含有量は72.3モル%、プロピレン含有量は27.7モル%であった。示差走査熱量計(DSC)で測定を行ったところ、融点は観測されなかった。各物性の測定結果を表1に示す。
【0112】
<動的粘弾性測定>
前述の方法で得られた共重合体(A-1)をSUS製型枠に所定量充填した。加熱盤200℃に設定し、油圧式熱プレス機(関西ロール社製PEWR-30)を用いて、予熱7分間、ゲージ圧10MPaで2分間加圧した後、20℃に設定した冷却盤に移し替え、ゲージ圧10MPaで圧縮して3分間冷却し、厚み2mmの測定用プレスシートを作製した。
【0113】
次に、上述の方法で得られた厚み2mmの測定用プレスシートを、レオメーター(アントンパール社製MCR301)により、トーションモード、周波数10rad/s(1.6Hz)、歪み量0.1%、昇温速度2℃/分の条件で、-40~150℃における動的粘弾性の温度分散を観測し、tanδピーク値およびtanδピーク温度を測定した。その結果を表1に示す。
【0114】
【表1】
【0115】
<バイオマス材料(B)>
バイオマス材料(B-1)として、針葉樹木粉を使用した。その針葉樹木粉を0.1質量部の水懸濁液に調整し、レーザー回折散乱式粒子径分布測定機(堀場製作所社製LA-950)により測定される50%平均粒子径(D50)は、150μmであった。
【0116】
バイオマス材料(B-2)として、ヒノキ由来の木粉を使用した。そのヒノキ由来の木粉を0.1質量部の水懸濁液に調整し、レーザー回折散乱式粒子径分布測定機(堀場製作所社製LA-950)により測定される50%平均粒子径(D50)は、110μmであった。
【0117】
樹脂組成物の作製
後述の表2に示す実施例および比較例の共重合体(A-1)および「その他の成分」を所定配合比率によりドライブレンドして得られた該樹脂成分100質量部に対して、二次抗酸化剤として、トリ(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフェートを1000ppm、耐熱安定剤として、n-オクタデシル-3-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)プロピネートを1000ppm、塩酸吸収剤として、ステアリン酸カルシウムを500ppm配合した。
【0118】
次に、ペレット化を目的とする単軸押出機が設けられたバンバリーミキサー(神戸製鋼所社製BB-L1800:接線式4翼ローター、混練槽容積1.63L)を使用した。バンバリーミキサーのホッパーには、上記のドライブレンドした該樹脂成分を所定量投入し、フローティングウェイトによりミキシングチャンバー内に押し込み、前記バイオマス材料(B-1)の所定量をホッパーサイドプレートから投入した。温度設定200℃、ローター回転数80rpmの条件で溶融混練し、その溶融状態を維持した混練物を単軸押出機へ送り込み、円形穴を有するダイ(ペレタイジングヘッド)、冷却水槽およびペレタイダーを用いて造粒し、樹脂組成物からなるペレットを得た。得られた樹脂組成物のペレットは均一に混合分散しており、ペレットの直径は3~4mmであった。
【0119】
<メルトフローレイト(MFR)>
前述の方法で得られた樹脂組成物のメルトフローレイトは、ASTM D1238に準拠して、温度230℃、21.18Nで測定した。その結果を表2に示す。
【0120】
<測定用プレスシートの作製>
前述の方法で得られた樹脂組成物のそれぞれをSUS製型枠に所定量充填した。加熱盤200℃に設定し、油圧式熱プレス機(関西ロール社製PEWR-30)を用いて、予熱7分間、ゲージ圧10MPaで2分間加圧した後、20℃に設定した冷却盤に移し替え、ゲージ圧10MPaで圧縮して3分間冷却し、厚み2mmの測定用プレスシートを作製した。
【0121】
<表面硬度>
上述の方法で得られた厚み2mmの測定用プレスシートを3枚重ねて試験片として、ASTM D2244に準拠して、23℃で硬度計の押針を試験片の表面に押しつけた直後と、15秒後とのそれぞれについて、ショアD硬度を測定した。それぞれのショアD硬度の値をもとに、下式によりΔHSの値を算出した。それらの結果を表2に示す。
ΔHS=〔押針接触開始直後のショアD硬度値〕-〔押針接触開始から15秒後のショアD硬度値〕
【0122】
試験片の作製
前述の方法で得られた樹脂組成物のペレットを、温度80℃、5kPa以下、8時間以上の条件で真空乾燥した後、射出成形機(東芝機械社製ES75SX III:型締力735kN、スクリュー直径Φ32mm)を用いて、後述の実施例および比較例の引張特性および曲げ特性に係る各種試験片を作製した。なお、成形条件と各種試験片の内容は、以下のとおりである。
【0123】
〔成形条件〕
シリンダー設定温度:190~210℃
スクリュー回転数:100rpm
射出圧力:28~35MPa
射出速度:15~20mm/秒
金型温度:40℃
冷却時間:40秒
【0124】
〔各種試験片の作製〕
引張ダンベル:ASTM D638 Type-IV(標線間長さ25mm、標線幅6mm、厚み3.2mm)
曲げ試験片:ASTM D790(長さ127mm、幅12.7mm、厚み3.2mm)
【0125】
<引張特性>
上述の「引張ダンベル」を温度23℃、相対湿度50%RHの雰囲気下で72時間エージングした後、ASTM D638に準拠して、チャック間距離65mm、試験速度50mm/分の条件により、引張弾性率、引張強度および破断歪みを測定した。その結果を表2に示す。
【0126】
<曲げ特性>
上述の「曲げ試験片」を温度23℃、相対湿度50%RHの雰囲気下で72時間エージングした後、ASTM D790に準拠して、支点間距離51mm、試験速度1.3mm/分の条件により、曲げ弾性率および曲げ強度を測定した。その結果を表2に示す。
【0127】
<動的粘弾性の測定>
前述の「測定用プレスシートの作製」の方法とおりに作製した厚み2mmの測定用プレスシートから所定寸法(長さ35mm、幅10mm)に打ち抜き加工し、レオメーター(アントンパール社製MCR301)により、トーションモード、周波数10rad/s(1.6Hz)、歪み量0.1%、昇温速度2℃/分の条件で、-40~150℃における動的粘弾性の温度分散を観測し、tanδピーク値およびtanδピーク温度を測定した。その結果を表2に示す。
【0128】
〔実施例1〕
共重合体(A-1)60質量部〔該樹脂成分100質量部に対して、トリ(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフェートを1000ppm、n-オクタデシル-3-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)プロピネートを1000ppm、ステアリン酸カルシウムを500ppm配合した。〕とバイオマス材料(B-1)40質量部の合計100質量部を、前述の「樹脂組成物の作製」の方法のとおりに樹脂組成物(X-1)のペレットを得た。
【0129】
次いで、前述の方法とおりに「各種試験片」、並びに「測定用プレスシート」を作製して、前述に記載した内容とおりに物性評価を行った。
【0130】
〔実施例2〕
実施例1で用いた樹脂組成物(X-1)に替えて、共重合体(A-1)45質量部と、バイオマス材料(B-1)55質量部の合計100質量部に替えた樹脂組成物(X-2)を用いたこと以外は、実施例1と同様に行って物性評価した。
【0131】
〔実施例3〕
実施例1で用いた樹脂組成物(X-1)に替えて、共重合体(A-1)40質量部と、バイオマス材料(B-1)60質量部の合計100質量部に替えた樹脂組成物(X-3)を用いたこと以外は、実施例1と同様に行って物性評価した。
【0132】
〔比較例1〕
実施例1で用いた樹脂組成物(X-1)に替えて、共重合体(A-1)60質量部とバイオマス材料(B-1)40質量部の合計100質量部に対し、相容化剤(C)として無水マレイン酸変性ポリプロピレン系ワックス(三洋化成工業社製ユーメックス1010:融点(Tm)135℃、酸価52mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)30000、密度960kg/m3)を2.0質量部添加した樹脂組成物(Y-1)を用いたこと以外は、実施例1と同様に行って物性評価した。
【0133】
〔比較例2〕
実施例1で用いた樹脂組成物(X-1)に替えて、共重合体(A-1)40質量部とバイオマス材料(B-1)60質量部の合計100質量部に対し、相容化剤(C)として無水マレイン酸変性ポリプロピレン系ワックス(三洋化成工業社製ユーメックス1010:融点(Tm)135℃、酸価52mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)30000、密度960kg/m3)を2.0質量部添加した樹脂組成物(Y-2)を用いたこと以外は、実施例1と同様に行って物性評価した。
【0134】
【表2】
【0135】
実施例1~3により得られた成形体は、動的粘弾性で測定される損失正接tanδの最大値が1.0以上であることから、柔軟性と応力緩和性を有することが示唆される。
また、高充填のバイオマス材料を含む成形体でありながらも、引張伸長時の歪み量が大きいことから、薄肉の成形体にあっては形状追従に優れる。
【0136】
比較例1により得られた成形体は、実施例1と比べて引張弾性率や曲げ弾性率の値が向上し、引張破断歪みが減少した。相容化剤の添加により、成形体の剛性が高くなったといえる。
【0137】
比較例2により得られた成形体は、実施例3と比べて引張弾性率や曲げ弾性率の値が向上し、引張破断歪みが減少した。相容化剤の添加により、成形体の剛性が高くなったといえる。
【0138】
〔対比例〕
共重合体(A-1)100質量部〔該樹脂成分100質量部に対して、トリ(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフェートを1000ppm、n-オクタデシル-3-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)プロピネートを1000ppm、ステアリン酸カルシウムを500ppm配合した。〕を用いて、前述の「樹脂組成物の作製」の方法のとおりに樹脂組成物(Z-1)のペレットを得た。
【0139】
次いで、前述の方法とおりに「測定用プレスシート」を作製して、後述に記載する内容のとおりに抗菌性試験を行った。
【0140】
〔参考例1〕
対比例で用いた樹脂組成物(Z-1)に替えて、共重合体(A-1)50質量部と、バイオマス材料(B-1)50質量部の合計100質量部に替えた樹脂組成物(Z-2)を用いたこと以外は、対比例と同様に抗菌性試験を行った。
【0141】
〔参考例2〕
対比例で用いた樹脂組成物(Z-1)に替えて、共重合体(A-1)50質量部と、バイオマス材料(B-2)50質量部の合計100質量部に替えた樹脂組成物(Z-3)を用いたこと以外は、対比例と同様に抗菌性試験を行った。
【0142】
<抗菌性試験>
前述の「測定用プレスシートの作製」の方法とおりに作製した厚み2mmの測定用プレスシートから所定寸法(長さ50mm、幅50mm)に打ち抜き加工して試験片とした。
【0143】
次いで、JIS Z2801(フィルムを被覆する方法)に準拠して、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus NBRC 12732)、および大腸菌(Escherichia coli NBRC 3972)のそれぞれ菌液を接種した試験片を温度35℃、相対湿度90%以上の雰囲気下で24時間培養した。
【0144】
生菌数の評価には、木粉を含まない対比例のみ菌液接種直後の生菌数を測定した。次いで、対比例、参考例1および参考例2は、24時間培養後の生菌数を測定した。菌液接種直後および24時間培養後の生菌数の評価には、それぞれ試験片3個を測定した。
【0145】
抗菌活性値の算出には、24時間培養後の木粉を含まない対比例の生菌数の常用対数値と、24時間培養後の参考例1および参考例2の生菌数の常用対数値を用いて求めた(下式を参照)。
【0146】
抗菌活性値(R)=Ut-At
t:24時間培養後の木粉を含まない対比例(無加工品)の生菌数の常用対数値
t:24時間培養後の参考例1および参考例2(抗菌加工品)の生菌数の常用対数値
その結果を表3に示す。一般的に抗菌活性値が、2.0以上であると、抗菌性能があるとされている。
【0147】
【表3】
【0148】
参考例1により得られた成形体は、黄色ブドウ球菌に対して抗菌性能を有するといえる。しかしながら、大腸菌に対しては、抗菌性能を有するものではないといえる。
【0149】
参考例2により得られた成形体は、黄色ブドウ球菌および大腸菌の両者に対して、優れた抗菌性能を有するといえる。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明の樹脂組成物および成形体は、従来から木材が使用されている用途の他に、建築用部材、産業用部材、日用品部材、およびウェアラブル部材として好適に用いることができる。
【0151】
また、本発明の樹脂組成物および成形体は、木造家屋の解体に伴うバイオマス材料の焼却処理、並びに農産物での過剰生産による廃棄処分を有効利用することができ、かつ、石油由来原料である樹脂の使用量を大幅に削減できる。したがって、産業資材の大量生産や大量消費から循環型材料として、再生産可能な資源への転換に貢献できる。