(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091750
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】車軸カウンタのレール接点用の動作周波数を生成するための周波数発生器、車軸カウンタ、及び車軸カウンタのレール接点用の動作周波数を生成する方法
(51)【国際特許分類】
B61L 1/16 20060101AFI20230623BHJP
【FI】
B61L1/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022194593
(22)【出願日】2022-12-06
(31)【優先権主張番号】21215978.4
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】516217907
【氏名又は名称】タレス マネジメント アンド サービシズ ドイチュランド ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Thales Management & Services Deutschland GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(74)【代理人】
【識別番号】100118278
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 聡
(72)【発明者】
【氏名】キム ミンホ
(72)【発明者】
【氏名】クレム ライナー
【テーマコード(参考)】
5H161
【Fターム(参考)】
5H161AA01
5H161BB02
5H161BB04
5H161CC13
5H161DD16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】磁場を発生させるための堅牢で効果的な回路を備え、製造の手間や高価な部品を削減する車軸カウンタ用の周波数発生器を提供する。
【解決手段】周波数発生器は、車軸カウンタのレール接点への送信信号用の動作周波数を生成する。レール接点には送信コイルユニット800を備え、送信コイルユニット800及び共振コンデンサ600は直列共振回路900を形成する。インバータ400は、出力部が共振コンデンサ600に接続され、生成した発振電圧を共振コンデンサ600を介してレール接点に備えられた送信コイルユニット800に供給し、変流器300は、インバータの出力電圧を直列共振回路900の電流に同期させる。また、直流電源100に接続された起動回路200は、インバータ400の動作を起動する。
【選択図】
図1a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車軸カウンタのレール接点の送信信号用の動作周波数を生成するための周波数発生器であって、前記周波数発生器は、
・前記レール接点の送信コイルユニット(800)及びコンデンサ(600)を備える直列共振回路
を備え、前記周波数発生器が、
・出力部がコンデンサ(600)に接続されたインバータ(400)であって、発振電圧を生成し、生成された発振電圧を、前記コンデンサを介して前記レール接点の前記送信コイルユニット(800)に供給するように構成されたインバータと、
・前記インバータの前記出力電圧を前記直列共振回路(600,800)の電流に同期させるための変流器(300)と、
・前記インバータに電気的に接続され、前記インバータ(400)をトリガするように構成され、入力電源に電気的に接続されるように構成された起動回路(200)と、
を更に備えることを特徴とする、周波数発生器。
【請求項2】
前記変流器(300)が前記直列共振回路(600,800)の前記電流を前記インバータ(400)の制御入力部に供給することを特徴とする、請求項1に記載の周波数発生器。
【請求項3】
前記変流器(300)が2つの同一の一次コイル(L310、L320)と二次コイル(L330)とを備えることを特徴とする、請求項1から2のいずれか一項に記載の周波数発生器。
【請求項4】
変流器(300)の前記二次コイルが前記送信コイルユニットに直列接続されていることを特徴とする、請求項3に記載の周波数発生器。
【請求項5】
前記インバータ(400)が前記起動回路(200)を無効にするように構成される、ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の周波数発生器。
【請求項6】
前記インバータ(400)はハーフブリッジインバータであることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の周波数発生器。
【請求項7】
前記ローゲートドライバが短絡保護コンデンサ(C422)を備えることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の周波数発生器。
【請求項8】
電源変圧器(500)が、インバータ(400)とコンデンサ(600)との間に電気的に接続されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の周波数発生器。
【請求項9】
前記直列共振回路(600,800)の前記送信コイルユニット(800)と前記コンデンサ(600)とがフィールドケーブルを介して接続されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の周波数発生器。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の周波数発生器を備える、車軸カウンタ。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか一項に記載の周波数発生器を使用して、車軸カウンタのレール接点用の動作周波数を生成するための方法であって、
変流器(300)を使用して前記直列共振回路(600,800)の前記電流を前記インバータ(400)の制御入力部にフィードバックすることによって、前記インバータ(400)の前記出力電圧が前記直列共振回路(600,800)の前記電流に同期されること
を特徴とする方法。
【請求項12】
DC電圧が起動回路(200)に印加され、前記起動回路が前記インバータ(400)をトリガすることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
電源変圧器を使用して、前記直列共振回路を前記周波数発生器の他の電子部品からガルバニ絶縁することを特徴とする、請求項11から12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直列共振回路を備える車軸カウンタのレール接点(rail contact)の送信信号用の動作周波数を生成するための周波数発生器に関し、周波数発生器はレール接点の送信コイルユニットとコンデンサを備える。本発明は、対応する(according)周波数発生器を備える車軸カウンタと、車軸カウンタのレール接点用の動作周波数を生成するための方法とを更に備える。
【背景技術】
【0002】
車軸カウンタのレール接点のための動作周波数を生成するための周波数発生器は、非特許文献1([タレス])で知られている。
【0003】
レール接点は、送信コイルユニット(少なくとも1つの送信コイルを備える)及び受信コイルユニット(少なくとも1つの受信コイルを備える)を備える車軸カウンタヘッドである。レール接点はレールに取り付けられているが、周波数発生器の他の電子部品は、レール接点から離れたレール付近の電子ユニット内に配置されている。
【0004】
車軸カウンタは、通過列車を検知し、列車が線路区間にいるかいないか(占有しているか否か)を判定するために使用される。車軸カウンタは、レール接点を有する検知点、即ち、レールとそれぞれのレール接点の近くに配置された電子ユニットに取り付けられたセンサ(送信コイルユニットと受信コイルユニット)を備える。車軸がレール接点を通過すると、検知点に電圧パルス(「ホイールパルス」)が誘導され、初期電圧が変化する(検知信号)。電子ユニットは、検知信号を評価して線路占有情報を生成する車軸カウンタ評価装置に接続されている。線路占有情報はその後、制御システムに転送される。
【0005】
発生した電圧の強度を確実に一定にするために、電子回路構成によって発生された周波数を車軸カウンタヘッドの周波数に合うように調整することが重要である。非特許文献1([タレス])で知られている車軸カウンタの場合、この調整は製造中にかなりの労力をかけて回路構成内で手作業で行われる。更に、通過する車輪を確実に検知するためには高精度のインダクタが必要であるが、これは高価である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】タレストランスポーテーションGmbH. 車軸カウンタ Az LM-あらゆる用途における列車検知のためのタレス社フラッグシップシステム. 2016 ([タレス])
【非特許文献2】シーメンスセミコンダクタグループ. BSM 50 GB 170 DN2 - IGBT 電力モジュール, 31.07.1996 ([シーメンス])
【非特許文献3】ワン,他. メタルハライドランプ用定ランプ電流制御を備えた2.65MHz自己発振型相補型電子安定器、パワーエレクトロニクス. IEEE会報,22.2097-2105. 2007 ([ワン])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、製造の手間が少なく、安価な部品で済む車軸カウンタのレール接点用周波数発生器を提供すること、並びに、この周波数発生器を用いた方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1に記載の周波数発生器、請求項10に記載の車軸カウンタ、及び請求項11に記載の方法によって達成される。
【0009】
本発明によれば、周波数発生器は、
・出力部がコンデンサに接続されたインバータであって、発振電圧を生成し、生成された発振電圧を、コンデンサを介してレール接点の送信コイルユニットに供給するように構成されたインバータと、
・インバータの出力電圧を直列共振回路の電流に同期させるための変流器と、
・インバータに電気的に接続され、インバータをトリガする(trigger)ように構成され、入力電源に電気的に接続されるように構成された起動回路と、
を更に備える。
【0010】
直列共振回路(送信コイルユニット+インバータの下流に接続されたコンデンサ)によって送信信号の周波数が規定される。
【0011】
従来技術の回路では、送信コイルに十分な電力を供給するために発振器と電力増幅器を使用していたが、本発明によれば、これら2つの機能とその構成要素が組み合わされている。
【0012】
本発明の周波数発生器は自己発振型インバータを形成し、変流器(current transformer)は共振回路の電流を電圧としてインバータにフィードバックする。これは、インバータの出力電圧が直列共振回路の電流に同期した状態に保たれ、共振振動が破綻しないことを意味する。結果として、インバータは、コンデンサ及び送信コイルユニットによって与えられる周波数に常に従う(インバータの出力は直列共振回路の電流と同相である)。
【0013】
自己発振型インバータは、非特許文献2([シーメンス])や非特許文献3([ワン])で知られるように、パワーモジュール(Power Module)に使用されることが知られており、また、出力部において定電圧又は定電流を生成するためにメタルハライドランプ用定電流制御部を備えた自己発振型相補型電子安定器が開示されている。
【0014】
しかし、本発明では、電圧や電流に着目していない。本発明によれば、負荷(レール接点の送信ヘッド内の送信コイルユニット)は、SOIの共振回路の一部である。結果として、全体としてできる限り最小の消費電力で、この送信コイルユニットでの電磁界は最大となる。
【0015】
電子回路によって生成された周波数を車軸カウンタヘッドの周波数に合うように調整するための製造時における調整プロセスは、本発明の周波数発生器ではもはや必要とされない。
【0016】
従来技術の回路では、公差のために、直列共振回路が使用可能な全周波数帯域で実際に発振できるかどうかを判定するために常にテストが必要であるが、本発明の周波数発生器は非常に広い周波数帯域で動作するため、このテストを省略することができる。したがって、高価で複雑な部品の数を減らすことができる。標準的な構成要素のみが必要である。特に、集積回路(IC)を省略することができ、これによりコストが削減され、堅牢性及び信頼性が向上する。
【0017】
本発明の周波数発生器はまた、直列共振回路の異なる変形に対する動作周波数の変動を単純化する。したがって、将来のアップグレードを容易に行うことができる。
【0018】
周波数発生器は、好ましくは、統合された入力電源を備える。代替的に、外部電源を周波数発生器に接続することができる。入力電源は直流電源である。
【0019】
本発明の周波数発生器の起動回路は、最初にインバータの動作に影響を与える(インバータを発振状態にする)。電源電圧の立上りエッジにより、起動回路は、インバータを初めてスイッチングするためのトリガを生成する。これにより、共振回路が発振を開始する。それ以降は、直列共振回路の電流を変流器を用いて検知することで、発振を維持するための更なるトリガを自動的に生成させる。
【0020】
本発明の周波数発生器のインバータは、好ましくは、共振回路の電流のゼロクロスで常にスイッチングする、即ち、ストレスフリーであり、これにより更に装置の寿命を向上させることができる。
【0021】
インバータの出力電圧を同期させるために、変流器は、直列共振回路の電流をインバータの制御入力部に供給するように構成されていることが好ましい。
【0022】
変流器は、好ましくは、2つの同一の一次コイルと、二次コイルとを備える。二次コイルは、インバータの出力部に電気的に接続されており、一次コイルに電流を誘導する。誘導電流は、インバータの制御入力部に供給される。
【0023】
変流器の二次コイルは、送信コイルユニットに直列接続されている(series-connected)ことが好ましい。
【0024】
インバータは、好ましくは、起動回路を無効にする(disable)ように構成される。インバータが発振状態になるとすぐに、インバータは起動回路を無効にする。
【0025】
非常に好ましい実施形態では、インバータはハーフブリッジインバータである。インバータは、ローサイドゲートドライバ及びハイサイドゲートドライバを備える。各ゲートドライバはスイッチを備えており、このスイッチは、起動回路によってトリガされて(triggered)導通し、インバータの発振を開始させる。スイッチを導通状態に切り替えることにより、起動回路は無効にされる。代替的に、フルブリッジインバータを使用することもできる。
【0026】
好ましくは、入力分圧器としても機能するブロッキングコンデンサが設けられる。
【0027】
ハイサイドゲートドライバは、好ましくは、任意の望ましくない低周波振動を除去するためのハイパスフィルタを備え、ローサイドゲートドライバは、任意の望ましくない高周波振動を除去するためのローパスフィルタを備える。
【0028】
本発明の周波数発生器の非常に好ましい実施形態では、ローゲートドライバは短絡保護コンデンサを備える。
【0029】
送信コイルユニットが(例えば、フィールドケーブルの損傷に起因して)短絡した場合、短絡保護コンデンサは回路を遮断するため、短絡保護部として機能する。本実施形態の周波数発生器は、短絡保護された自己発振型インバータを形成する。
【0030】
短絡保護コンデンサを使用することにより、入力電源を過電流から保護するための電流制限器は必要とされない。
【0031】
とはいえ、より基本的な実施形態では、電流制限器を設けてもよい。
【0032】
共振回路を電子機器から絶縁するために、電源変圧器をインバータとコンデンサとの間に電気的に接続することが好ましい。レール接点へのケーブル配線が高い誘導電圧の影響を受ける可能性があるため、これは身の安全のためにも有効である。この実施形態では、インバータの出力電圧は、電源変圧器の一次側、即ち、インバータの出力部に印加される。電源変圧器は、一次側の電子部品(特に、インバータ及び変流器の一次コイルを含む)を二次側の電子部品(特に、送信コイルユニット及び変流器の二次コイルを含む)からガルバニ絶縁するように適合されている。
【0033】
代替的な実施形態では、自己発振型インバータが、完全に「ホット」側(“hot” side)に割り当てられている場合、即ち、高い誘導電圧の影響を受けるリスクがある場合、電源変圧器を省略することができる(例えば、レール接点へ向かうケーブル及び車軸カウンタ評価装置へ向かうケーブル)。メンテナンス担当者が追加の安全対策なしに電子機器に対して作業できるようにするために、「ホット側」へ向かうこれらのインタフェースは全て絶縁されていなければならない。
【0034】
直列共振回路の送信コイルユニットとコンデンサとは、フィールドケーブルを介して接続されることが好ましい。フィールドケーブルは、フィールド内に、即ち、特には、電子ユニットと検知点のレール接点(センサ)との間に配置されたケーブルである。フィールドケーブルは環境の影響を受けるため、損傷のリスクが高まる。
【0035】
本発明はまた、前述の周波数発生器を備える車軸カウンタに関する。本発明の車軸カウンタは、受信コイルユニットと、受信コイルユニットに電気的に接続された車軸カウンタ評価ユニットとを更に備える。受信コイルユニットは、バンドパスフィルタを使用して、求められる周波数帯に調整/寸法決めされているため、部品の公差や温度影響による公差によって設定され得る全ての周波数に対して機能する。
【0036】
本発明はまた、前述したような周波数発生器を使用して、車軸カウンタのレール接点用の動作周波数を生成する方法に関する。本発明によれば、変流器を使用して直列共振回路の電流をインバータの制御入力部にフィードバックすることによって、インバータの出力電圧が直列共振回路の電流に同期される。
【0037】
好ましい変形例では、DC電圧が起動回路に印加され、起動回路がインバータをトリガする。
【0038】
直列共振回路を周波数発生器の他の電子部品からガルバニ絶縁するために、電源変圧器を使用することが非常に好ましい。
【0039】
本発明の周波数発生器は、磁場を生成するための堅牢で効果的な回路を形成する。
【0040】
本発明の更なる利点は、説明及び図面から導き出すことができる。更に、上述の機能及び更に説明される機能は、本発明に従って個別に又は任意の組合せで使用することができる。図示及び説明した実施形態は、決定的なリストとして理解されるべきではなく、むしろ本発明の説明のための例示的な特徴を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1a】本発明による周波数発生器の基本的な実施形態の概略レイアウトを示す。
【
図1b】本発明による周波数発生器の好ましい実施形態の概略レイアウトを示す。
【
図2】
図1bによる周波数発生器の概略レイアウトであって、本発明による周波数発生器の構成要素の好ましい回路構成を有するものを示す。
【
図3】本発明の周波数発生器を有する車軸カウンタを示す。
【
図4】起動時のトリガ電流と、その結果生じるインバータスイッチのゲート・ソース間電圧を示す。
【
図5】変流器の二次コイルの電圧及びそこを流れる電流の典型的な波形を示す。
【
図6】インバータスイッチにおける電圧及びそこを流れる電流の典型的な波形を示す。
【
図7】ローサイドゲートドライバにおける電圧及びそこを流れる電流の典型的な波形を示す。
【
図8】電源変圧器における電圧及びそこを流れる電流の典型的な波形を示す。
【
図9】直列共振回路の送信コイルユニットにおける電圧及びそこを流れる電流の典型的な波形を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1aは、レール接点の送信コイルユニット800とコンデンサ600とを備える直列共振回路900を有する本発明の周波数発生器の基本的な実施形態を示す。
【0043】
DC入力電源100は、インバータ400に電気的に接続された起動回路200に給電する。起動回路200はインバータ400をトリガし(trigger)、結果として、発振が開始し、動作周波数f0の発振電圧が生じる。インバータ400の出力部はコンデンサ600に接続されている。発生した発振電圧は、コンデンサ600を介してレール接点の送信コイルユニット800に供給される。
【0044】
好ましい実施形態では、インバータ400の出力部は、
図1bに示すように電源変圧器500を介してコンデンサ6に接続される。電源変圧器500は、直列共振回路900を他の電子部品から電気的に絶縁する。
【0045】
本発明によれば、周波数発生器は、インバータ400の出力電圧を直列共振回路900の電流に同期させる変流器300を設けることによって自己発振型インバータを形成する。このために、共振回路900内の電流は、変流器300を介してインバータ400にフィードバックされる。したがって、インバータ400の出力部における電圧の周波数は、コンデンサ600と送信コイルユニット800(共振回路900)とによって規定される周波数に適合される。
【0046】
図3は、本発明の周波数発生器100~900(送信コイルが表示されている)と、車軸カウンタ評価装置ACEに電気的に接続された受信コイルユニットRC(送信コイルが表示されている)とを備える車軸カウンタの主要構成要素の概略図を示す。送信コイルユニット800及び受信コイルユニットRCUは、好ましくは、レールの両側(opposite sides)に配置される。
【0047】
図2は、本発明の周波数発生器の回路構成(circuitry)の好ましい実施形態を示す。
【0048】
インバータ400は、交流電圧を生成するためのハーフブリッジインバータである。インバータ400は、直列に接続された電界効果トランジスタM430とM440(ハーフブリッジインバータ400の相補インバータスイッチ)を備え、インバータスイッチM430はハイサイドゲートドライバ410によって制御され、インバータスイッチM440はローサイドゲートドライバ420によって制御される。電界効果トランジスタの代わりに、制御されてスイッチングされる他のトランジスタをハーフブリッジインバータ400のスイッチングに使用することができる。
【0049】
インバータ400は、入力電源から電力を供給するための電源入力部と、制御入力部(ダイオードD250を介して電界効果トランジスタM440の入力部に接続された起動回路200の出力部から信号を受信するもの)と、直列共振回路の電流をフィードバックするための制御入力部(一次コイルL310、L320が表されている変圧器300からの入力)とを備える。ローサイドゲートドライバ420からの適切な信号がまだないため、制御入力部の信号により電界効果トランジスタM440が初めてスイッチングされる。
【0050】
最初に、起動回路200によりインバータが起動される。起動回路200は、ラッチ210及びツェナーダイオードZD240の直列接続と並列に接続されたコンデンサC230を備える。コンデンサC230の両端の電圧(voltage across the capacitor C230)が、閾値電圧
【数1】
を超えると、ラッチ210はインバータ400のインバータスイッチM440のゲートをトリガする。ここで、
【数2】
は、ラッチ210のトランジスタQ211のエミッタ・ベース間のターンオン電圧降下(emitter-base turn-on voltage drop)を表し、V
ZD240は、ツェナーダイオードZD240の降伏電圧を表す。起動回路200がインバータスイッチM440をトリガして導通すると、インバータ400が発振し始める。起動時の典型的なトリガ電流及び結果として生じるインバータスイッチにおけるゲート・ソース間電圧を
図4に示す。インバータスイッチM440を介したスイッチングは、コンデンサC230とインバータスイッチM430、M440とを接続するダイオードD260を介してコンデンサC230を放電することによって、起動回路200を、順に無効にする、即ち、停止させる。
【0051】
直流電源100の入力電圧VDCは、電源入力部を介してインバータ400に入力される。インバータ400は、電源100とハーフブリッジインバータ400のセンタータップ(電界効果トランジスタM430とM440との間)との間の出力電圧を出力する。
【0052】
直列共振回路900は、共振コンデンサ600と、フィールドケーブル700と、インダクタンスL800及び内部直列抵抗R800を有する送信コイルユニット800とを備え、インダクタンスL800及び内部直列抵抗R800は、フィールドケーブル700を含むソレノイドの総複素インピーダンスを表す。直列共振回路900は、3つのパラメータ:共振周波数f0、特性インピーダンスR0及び品質係数Qで特徴付けられる。
【0053】
【数3】
ここで、
【数4】
とし、規格化された周波数を
【数5】
とすると、直列共振回路の複素インピーダンスは
【数6】
であり、直列共振回路の帯域幅は
【数7】
である。
【0054】
本発明の周波数発生器は、自己発振して、インバータの出力電圧から生じる直列共振回路の電流をインバータにフィードバックすることができる。これは、変流器に2つの同一の一次コイルL310、L320及び二次コイルL330を設けることによって実現される。直列共振回路900の電流は、変流器300の二次コイルL330を流れ、変流器300の一次コイルL310、L320を介してインバータ400にフィードバックされる。二次コイル330の電圧及び電流の典型的な波形を
図5に示す。
【0055】
インバータ400の制御入力部のそれぞれにおいて、一方の一次コイルL310はハイサイドゲートドライバ410に電気的に接続され、他方の一次コイルL320はローサイドゲートドライバ420に電気的に接続される。一次コイルL320、L330に誘導された電流は、電界効果トランジスタM430、M440をスイッチングする。一次コイルL310、L320は巻線方向が反対であるため、一度につき、インバータスイッチM430、M440の一方のみが導通する。インバータスイッチM430、M440を通る電圧及び電流の典型的な波形を
図6に示す。
【0056】
変流器300を介した直列共振回路の電流のフィードバックにより、インバータの出力電圧が共振回路の電流と同期することになる。その結果、インバータの出力電圧の周波数は、直列共振回路の動作周波数(共振周波数f0)と同一になる。本発明の周波数発生器により、インバータの出力電圧は直列共振回路の電流と同相であることが保証される。
【0057】
ハイサイドゲートドライバ420とローサイドゲートドライバ420とは、略相補的である。ローゲートドライバは、電界効果トランジスタM440のゲート電圧を±(V
ZD+V
F)にクランプするツェナーダイオードD424及びZD425を備えている。ここで、V
ZD及びV
Fは、ツェナーダイオードZD424及びZD425の降伏電圧及び順方向電圧降下を表す。ハイサイドゲートドライバ410のツェナーダイオードD413及びZD414についても同様である。ローサイドゲートドライバ420を通る電圧及び電流の典型的な波形を
図7に示す。
【0058】
図2に示す実施形態では、インバータ400の出力電圧は周波数fの振幅±VDC/2(V)の矩形波であり、電源変圧器500を介して直列共振回路900に印加される。電源変圧器500は、一次コイルL510及び二次コイルL520を備え、インバータ400は電源変圧器500の一次側にあり、直列共振回路900は二次側にある。電源変圧器500は、主にインバータ400と直列共振回路900との間の電気絶縁に使用される。したがって、巻数比
【数8】
は、約1であり得る。電源変圧器500を通る電圧及び電流の典型的な波形を
図8に示す。
【0059】
最終的に、本発明の周波数発生器は、直列共振回路900の送信コイルユニット800における動作周波数を最適化する結果となる。
【0060】
送信コイルユニット800の電圧及び電流の典型的な波形を
図9に示す。
【0061】
本発明の周波数発生器はまた、フィールドケーブル700の故障の場合に周波数発生器を保護するために、短絡保護部を備える。フィールドケーブル700の故障は、インバータ400の出力部を開放/短絡させることになる。フィールドケーブル700が開放回路となると、フィードバックが欠落するため、インバータ400は発振を停止する。しかし、フィールドケーブル700が短絡回路となると、高周波振動が発生する。インバータが保護されていない場合、短絡電流はインバータ400を永久的に損傷させることになる。したがって、ローサイドゲートドライバ420は、望ましくない高周波発振を除去するために、抵抗器R421と短絡保護コンデンサC422とを備えたローパスフィルタを備える。したがって、短絡保護コンデンサC422は、抵抗R421と共に、ローサイドゲートドライバの入力においてローパスフィルタとして機能する。出力部での短絡は高周波発振を引き起こすため、ローパスフィルタは保護効果を有する。
【0062】
インバータ400は、入力分圧器としても機能する、DCブロッキングコンデンサC460とC450とを更に備える。DCブロッキングコンデンサC460とC450は直列に接続されており、入力電圧VDCはDCブロッキングコンデンサC460とC470との直列接続部に印加される。更なるDCブロッキングコンデンサC423がローサイドゲートドライバ420内に設けられる。
【符号の説明】
【0063】
100 直流電源
200 起動回路
210 起動回路のラッチ
C230 コンデンサ
D260 ダイオード
Q211 トランジスタ
ZD240 ツェナーダイオード
300 変流器
L310 ハイサイドゲートドライバに接続された変流器の一次巻線
L320 ローサイドゲートドライバに接続された変流器の一次巻線
L330 直列共振回路に接続された二次巻線
400 インバータ
410 ハイサイドゲートドライバ
420 ローサイドゲートドライバ
C423 DCブロッキングコンデンサ
C460、C470 DCブロッキングコンデンサ
M430 ハイサイドゲートドライバの出力部のFET
M440 ローサイドゲートドライバの出力部のFET
R421 コンデンサ422と共にハイパスフィルタを形成する抵抗器
C422 短絡保護コンデンサ
ZD424,ZD425 ローサイドゲートドライバの、逆スイッチ(oppositely-switched)ツェナーダイオードフィルタ
ZD413,ZD414 ハイサイドゲートドライバの、逆スイッチツェナーダイオードフィルタ
500 電源変圧器
L510 電源変圧器の一次巻線
L520 電源変圧器の二次巻線
600 共振コンデンサ
700 フィールドケーブル
800 送信コイルユニット
900 直列共振回路
RCU 受信コイルユニット
ACE 車軸カウンタ評価装置
【0064】
引用文献一覧
[タレス] タレストランスポーテーションGmbH
車軸カウンタ Az LM-あらゆる用途における列車検知のためのタレス社フラッグシップシステム
2016
(Thales Transportation Systems GmbH. Axle Counter Az LM - Thales‘ flagship system for train detection in any application. 2016)
[シーメンス] シーメンスセミコンダクタグループ
BSM 50 GB 170 DN2 - IGBT 電力モジュール
31.07.1996
(Siemens Semiconductor Group.BSM 50 GB 170 DN2 - IGBT Power Module. 31.07.1996)
[ワン] ワン,他
メタルハライドランプ用定ランプ電流制御を備えた2.65MHz自己発振型相補型電子安定器、パワーエレクトロニクス
IEEE会報,22.2097-2105
2007
(Wang et al. 2.65-MHz Self-Oscillating Complementary Electronic Ballast With Constant-Lamp-Current Control For a Metal Halide Lamp. Power Electronics, IEEE Transactions on. 22. 2097 - 2105. 2007)
【外国語明細書】