(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091794
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】配管構造及び燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20230626BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20230626BHJP
【FI】
H01M8/04 N
H01M8/04 Z
H01M8/04 J
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206574
(22)【出願日】2021-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】外村 孝直
(72)【発明者】
【氏名】小柳 壮矩
(72)【発明者】
【氏名】秡川 徳彦
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H126DD02
5H126DD05
5H127AA06
5H127AC11
5H127AC15
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA33
5H127BA57
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB37
5H127BB40
5H127CC01
5H127EE17
5H127EE23
5H127EE25
(57)【要約】
【課題】簡便な構造で、液水を効果的に捕集し、且つベンチュリ効果発生までのタイムラグが短く、効率的に液水を霧化できる配管構造を提供する。
【解決手段】ガスの循環用又は移送用の配管の構造であって、前記配管は、内壁面の少なくとも一部又は全周に、当該内壁面との間に空間のある二重配管構造を有し、前記配管は、前記二重配管構造の内側にガス流路を有し、前記配管は、前記二重配管構造の外側にガス進行方向に向かって閉じられた液水捕集部を有し、前記ガス流路は、前記液水捕集部により形成されるガス進行方向に向かって窄まったくびれ部を有し、前記液水捕集部は、ガス進行方向下流且つ前記くびれ部の一部に前記ガス流路と連通する小径の連通孔を有する、配管構造。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスの循環用又は移送用の配管の構造であって、
前記配管は、内壁面の少なくとも一部又は全周に、当該内壁面との間に空間のある二重配管構造を有し、
前記配管は、前記二重配管構造の内側にガス流路を有し、
前記配管は、前記二重配管構造の外側にガス進行方向に向かって閉じられた液水捕集部を有し、
前記ガス流路は、前記液水捕集部により形成されるガス進行方向に向かって窄まったくびれ部を有し、
前記液水捕集部は、ガス進行方向下流且つ前記くびれ部の一部に前記ガス流路と連通する小径の連通孔を有する、配管構造。
【請求項2】
前記連通孔はスリット状の連通孔である、請求項1に記載の配管構造。
【請求項3】
ガスの循環用又は移送用の配管の構造であって、
前記配管は、内壁面の少なくとも一部又は全周に、堰状の液水捕集部と、ガス進行方向に向かってテーパー状に窄まった形状のガス流れ制御部を有し、
前記ガス流れ制御部は、下流側の端部が、前記液水捕集部よりもガス流れ上流近傍に位置するように配置されている、配管構造。
【請求項4】
ガスの循環用又は移送用の配管の構造であって、
前記配管は、内壁面の少なくとも一部又は全周に、堰状の液水捕集部とガス進行方向に向かってテーパー状に窄まった形状のガス流れ制御部を有し、
前記ガス流れ制御部は、下流側の端部が、前記液水捕集部よりもガス流れ下流近傍に位置するように配置されている、配管構造。
【請求項5】
前記液水捕集部は、ガス進行方向の下流側の端部が重力方向下部に向かって傾斜している、請求項1に記載の配管構造。
【請求項6】
前記連通孔はスリット状の連通孔である、請求項5に記載の配管構造。
【請求項7】
前記液水捕集部及び前記ガス流れ制御部は、ガス進行方向の下流側の端部が重力方向下部に向かって傾斜している、請求項3に記載の配管構造。
【請求項8】
前記液水捕集部及び前記ガス流れ制御部は、ガス進行方向の下流側の端部が重力方向下部に向かって傾斜している、請求項4に記載の配管構造。
【請求項9】
前記液水捕集部は、重力方向下部の方が、重力方向上部よりも貯留可能液水量が小さい、請求項1に記載の配管構造。
【請求項10】
燃料電池のガス入り口近傍に請求項1~9のいずれか一項に記載の配管構造が配置されていることを特徴とする燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配管構造及び燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムに関して様々な技術が提案されている。
例えば特許文献1では、配管中の貯留された液水を、主配管周辺に設けた絞り部と周囲に設けられた配管を使用して主配管の絞り部をガスが通過する際のベンチュリ効果を利用して霧化し、配管中の滞留する液水を排出する効果を発生させる技術が開示されている。
特許文献2~3では、排水ポンプを用いずにタンクに貯留された水を霧化させて排出管から排出することができる燃料電池システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-146351号公報
【特許文献2】特開2010-218802号公報
【特許文献3】特開2010-218803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、(1)滞留する液水が一定量以上の場合には液水がそのまま配管の下流側に流れる可能性があること、(2)配管構造が複雑であり、配管構造の燃料電池システム内の設置が困難であり、配管構造のコストが高いことが懸念される。
【0005】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、簡便な構造で、液水を効果的に捕集し、且つベンチュリ効果発生までのタイムラグが短く、効率的に液水を霧化できる配管構造及び燃料電池システムを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1実施形態においては、ガスの循環用又は移送用の配管の構造であって、
前記配管は、内壁面の少なくとも一部又は全周に、当該内壁面との間に空間のある二重配管構造を有し、
前記配管は、前記二重配管構造の内側にガス流路を有し、
前記配管は、前記二重配管構造の外側にガス進行方向に向かって閉じられた液水捕集部を有し、
前記ガス流路は、前記液水捕集部により形成されるガス進行方向に向かって窄まったくびれ部を有し、
前記液水捕集部は、ガス進行方向下流且つ前記くびれ部の一部に前記ガス流路と連通する小径の連通孔を有する、配管構造を提供する。
【0007】
本開示の第2実施形態においては、第1実施形態において前記連通孔はスリット状の連通孔であってもよい。
【0008】
本開示の第3実施形態においては、ガスの循環用又は移送用の配管の構造であって、
前記配管は、内壁面の少なくとも一部又は全周に、堰状の液水捕集部と、ガス進行方向に向かってテーパー状に窄まった形状のガス流れ制御部を有し、
前記ガス流れ制御部は、下流側の端部が、前記液水捕集部よりもガス流れ上流近傍に位置するように配置されている、配管構造を提供する。
【0009】
本開示の第4実施形態においては、ガスの循環用又は移送用の配管の構造であって、
前記配管は、内壁面の少なくとも一部又は全周に、堰状の液水捕集部とガス進行方向に向かってテーパー状に窄まった形状のガス流れ制御部を有し、
前記ガス流れ制御部は、下流側の端部が、前記液水捕集部よりもガス流れ下流近傍に位置するように配置されている、配管構造を提供する。
【0010】
本開示の第5実施形態においては、第1実施形態において前記液水捕集部は、ガス進行方向の下流側の端部が重力方向下部に向かって傾斜していてもよい。
【0011】
本開示の第6実施形態においては、第5実施形態において前記連通孔はスリット状の連通孔であってもよい。
【0012】
本開示の第7実施形態においては、第3実施形態において前記液水捕集部及び前記ガス流れ制御部は、ガス進行方向の下流側の端部が重力方向下部に向かって傾斜していてもよい。
【0013】
本開示の第8実施形態においては、第4実施形態において前記液水捕集部及び前記ガス流れ制御部は、ガス進行方向の下流側の端部が重力方向下部に向かって傾斜していてもよい。
【0014】
本開示の第9実施形態においては、第1実施形態において前記液水捕集部は、重力方向下部の方が、重力方向上部よりも貯留可能液水量が小さくてもよい。
【0015】
本開示の第10実施形態においては、燃料電池のガス入り口近傍に第1~9のいずれか一つの実施形態の配管構造が配置されていることを特徴とする燃料電池システムを提供する。
【発明の効果】
【0016】
本開示の配管構造は、簡便な構造で、液水を効果的に捕集し、且つベンチュリ効果発生までのタイムラグが短く、効率的に液水を霧化できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本開示の第1実施形態の配管構造の縦断面模式図(左)と横断面模式図(右)である。
【
図2】
図2は、本開示の第2実施形態の配管構造の縦断面模式図(左)と横断面模式図(右)である。
【
図3】
図3は、本開示の第3実施形態の配管構造の縦断面模式図(左)と横断面模式図(右)である。
【
図4】
図4は、本開示の第4実施形態の配管構造の縦断面模式図(左)と横断面模式図(右)である。
【
図5】
図5は、本開示の第5実施形態の配管構造の縦断面模式図(左)と横断面模式図(右)である。
【
図6】
図6は、本開示の第6実施形態の配管構造の縦断面模式図(左)と横断面模式図(右)である。
【
図7】
図7は、本開示の第7実施形態の配管構造の縦断面模式図(左)と横断面模式図(右)である。
【
図8】
図8は、本開示の第8実施形態の配管構造の縦断面模式図(左)と横断面模式図(右)である。
【
図9】
図9は、本開示の第9実施形態の配管構造の縦断面模式図(左)と横断面模式図(右)である。
【
図10】
図10は、本開示の燃料電池システムの一例を示すシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示による実施の形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本開示の実施に必要な事柄(例えば、本開示を特徴付けない配管構造及び燃料電池システムの一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本開示は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
また、図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。
本明細書において数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
また、数値範囲における上限値と下限値は任意の組み合わせを採用できる。
【0019】
燃料電池のシステムにおいては、発電時に液水が発生すること、及び、良好な発電のためには、一定の湿度が欠かせないこと等から、ガス流通系(反応ガス系)には液水が存在する可能性がある。
ガス流通系に液水がある場合、そのままの状態で燃料電池のスタック(セル積層体)に侵入すると、配管近傍のセル(以下単セルと称する場合がある)に液水が集中する現象が発生し、液水が多量に侵入したセルは発電不能となる。
本開示の配管構造は、燃料電池システム中を循環する液水(結露水、及び、気液分離器の分離ミスによる未分離水等)が、燃料電池スタックに集中的に流入し、液水が端部セルに集中的に流入することによる、端部セルの発電性能の低下を抑制する。
本研究者らは、配管中の液水を捕集する部位とベンチュリ効果を発生させる部位とを隣接させることで、簡便な構造で液水を効果的に捕集部位に捕集し、且つベンチュリ効果発生までのタイムラグが短く、効率的に液水を霧化できる配管構造を見出した。
【0020】
第1実施形態
本開示の第1実施形態においては、ガスの循環用又は移送用の配管の構造であって、
前記配管は、内壁面の少なくとも一部又は全周に、当該内壁面との間に空間のある二重配管構造を有し、
前記配管は、前記二重配管構造の内側にガス流路を有し、
前記配管は、前記二重配管構造の外側にガス進行方向に向かって閉じられた液水捕集部を有し、
前記ガス流路は、前記液水捕集部により形成されるガス進行方向に向かって窄まったくびれ部を有し、
前記液水捕集部は、ガス進行方向下流且つ前記くびれ部の一部に前記ガス流路と連通する小径の連通孔を有する、配管構造を提供する。
二重配管構造とは、直径の異なる2つの配管を外側と内側の2重に組み合わせた構造を意味する。二重配管構造の内側とは、二重配管構造の直径の異なる2つの配管の内の直径の小さい方の内側の配管を意味する。二重配管構造の外側とは、二重配管構造の直径の異なる2つの配管の内の直径が大きい方の外側の配管を意味する。
二重配管構造を構成する液水捕集部は、配管の内壁面の少なくとも一部に設けられていてもよく、より効率的に液水を霧化する観点から配管の内壁面の全周に設けられていてもよい。
液水捕集部は、配管の内壁面側である二重配管構造の外側に設けられ、ガス進行方向に向かって閉じられた構造を有し、ガス進行方向に沿って断面積が大きくなるように形成されていてもよい。これにより、ガス進行方向に沿ってガス流路の断面積は小さくなり、ガス流路にガス進行方向に向かって窄まったくびれ部を設けることができる。液水捕集部は、ガス進行方向下流且つくびれ部の一部にガス流路と連通する小径の連通孔を有していればよい。
本開示において小径とは、配管の直径よりも小さい連通孔の孔径であってもよい。小径とは、具体的には、連通孔の孔径が0.8~1.2mmであってもよい。
配管の材質は、特に限定されず、従来公知の材質のものを採用することができる。
【0021】
図1は、本開示の第1実施形態の配管構造の縦断面模式図(左)と横断面模式図(右)である。
燃料電池のシステム運用上問題となる液水は、配管の内壁面に沿って移動することが分かっている。この移動する液水を捕集するため、
図1に示すように、配管の内壁面側である二重配管構造の外側にトラップ状の液水捕集部を設ける。配管の内壁面をつたって移動してきた液水は、液水捕集部に捕捉される。一方、二重配管構造の内側のガス流路を流れるガスは液水捕集部により形成されるガス流路のくびれ部によってガス流速が増し、ベンチュリ効果による負圧を発生させる。発生した負圧により、液水捕集部のガス進行方向下流且つガス流路のくびれ部の一部に設けた小径の連通孔(霧化液水放出孔)を通して、液水捕集部に貯留された液水はガス流路に合流し、合流の際に、霧化される。霧化された液水は、ガス流れとともにガス流路下流に移動する。
すなわち、第1実施形態においては、トラップ状の液水捕集部によりガス流路にくびれ構造を持たせ、そのくびれ構造をガスが通過する際に発生するベンチュリ効果により、ガス流路のくびれ部に負圧が発生する構造としている。負圧の発生部分に液水の貯留した部分との間をつなぐ連通孔を設けると、負圧により液水がガス流れ側に吸引される。吸引された液水は、ガス流れに乗る際に霧化され、霧化された液水を含むガスが下流に流れるようになっている。
【0022】
第2実施形態
本開示の第2実施形態においては、第1実施形態において前記連通孔はスリット状の連通孔であってもよい。連通孔(霧化液水放出孔)をスリット形状にすることにより小径の連通孔の場合と同程度の液水の排出効果を発生させることができる。
スリットの幅は、0.8~1.2mmであってもよい。
【0023】
図2は、本開示の第2実施形態の配管構造の縦断面模式図(左)と横断面模式図(右)である。
図2は、連通孔(霧化液水放出孔)をスリット形状(霧化液水放出スリット)にしたこと以外は
図1と同様である。
【0024】
第3実施形態
本開示の第3実施形態においては、ガスの循環用又は移送用の配管の構造であって、
前記配管は、内壁面の少なくとも一部又は全周に、堰状の液水捕集部と、ガス進行方向に向かってテーパー状に窄まった形状のガス流れ制御部を有し、
前記ガス流れ制御部は、下流側の端部が、前記液水捕集部よりもガス流れ上流近傍に位置するように配置されている、配管構造を提供する。
液水捕集部及びガス流れ制御部は、配管の内壁面の少なくとも一部に設けられていてもよく、より効率的に液水を霧化する観点から配管の内壁面の全周に設けられていてもよい。
ガス流れ制御部は、ガス進行方向に向かってテーパー状に窄まった形状を有し、上流側の端部が配管の内壁面から配管中心に向かって伸びた構造の保持部材により保持されていてもよい。ガス流れ制御部が、ガス進行方向に向かってテーパー状に窄まった形状を有することにより、ガス流れ制御部の上流側の端部よりも下流側の端部の方がガス流路の断面積を小さくすることができる。ガス流れ制御部及び保持部材は配管と同じ材質であってもよい。保持部材は、ガス流れ制御部を保持できればよいため、配管の内壁面の一部に設けられていればよく、配管の内壁面の4か所に等間隔で設けられていてもよく、ガス進行方向に向かって液水が液水捕集部に流れることを妨げない観点から配管の内壁面の全周には設けられていなくてもよい。ガス流れ制御部は、液水が霧化してガス流路下流に流れることを妨げない観点から、液水捕集部(液水捕集堰)と所定の距離を保って離隔されていてもよい。
【0025】
図3は、本開示の第3実施形態の配管構造の縦断面模式図(左)と横断面模式図(右)である。
図3においては、ガス流れ制御部は、下流側の端部が、液水捕集部(液水捕集堰)よりもガス流れ上流近傍に位置するように配置されている。ガス流れ制御部は、液水捕集部(液水捕集堰)と所定の距離を保って離隔されている。ガス流れ制御部の上流側の端部は、保持部材により保持されている。保持部材は、配管の内壁面の4か所に等間隔で設けられている。
図3に示すように、液水捕集部を堰構造とし、ガス流れ中央付近に設置したガス進行方向に向かってテーパー状に窄まった形状のガス流れ制御部を設けることにより、発生したベンチュリ効果による負圧を利用し、堰に留められた貯留液水をガス流れ中に巻き込む構造としている。巻き込まれた液水は霧化され、ガスと共に下流に流れるようになっている。
【0026】
第4実施形態
本開示の第4実施形態においては、ガスの循環用又は移送用の配管の構造であって、
前記配管は、内壁面の少なくとも一部又は全周に、堰状の液水捕集部とガス進行方向に向かってテーパー状に窄まった形状のガス流れ制御部を有し、
前記ガス流れ制御部は、下流側の端部が、前記液水捕集部よりもガス流れ下流近傍に位置するように配置されている、配管構造を提供する。
液水捕集部及びガス流れ制御部は、配管の内壁面の少なくとも一部に設けられていてもよく、より効率的に液水を霧化する観点から配管の内壁面の全周に設けられていてもよい。
ガス流れ制御部は、ガス進行方向に向かってテーパー状に窄まった形状を有し、上流側の端部が配管の内壁面から配管中心に向かって伸びた構造の保持部材により保持されていてもよい。ガス流れ制御部が、ガス進行方向に向かってテーパー状に窄まった形状を有することにより、ガス流れ制御部の上流側の端部よりも下流側の端部の方がガス流路の断面積を小さくすることができる。ガス流れ制御部及び保持部材は配管と同じ材質であってもよい。保持部材は、ガス流れ制御部を保持できればよいため、配管の内壁面の一部に設けられていればよく、配管の内壁面の4か所に等間隔で設けられていてもよく、ガス進行方向に向かって液水が液水捕集部に流れることを妨げない観点から配管の内壁面の全周には設けられていなくてもよい。
第4実施形態においては、ガス流れ制御部の上流側の端部は、液水捕集部(液水捕集堰)よりもガス流れ上流近傍に位置するように配置されていてもよい。ガス流れ制御部は、液水が霧化してガス流路下流に流れることを妨げない観点から、液水捕集部(液水捕集堰)と所定の距離を保って離隔されていてもよい。
【0027】
図4は、本開示の第4実施形態の配管構造の縦断面模式図(左)と横断面模式図(右)である。第4実施形態においては、第3実施形態の負圧発生部位を調整し、液水の霧化粒径等を調整できる構造になっている。
図4においては、ガス流れ制御部は、下流側の端部が、液水捕集部(液水捕集堰)よりもガス流れ下流近傍に位置するように配置されている。また、ガス流れ制御部は、上流側の端部が、液水捕集部よりもガス流れ上流近傍に位置するように配置されている。ガス流れ制御部は、液水捕集部(液水捕集堰)と所定の距離を保って離隔されている。ガス流れ制御部の上流側の端部は、保持部材により保持されている。保持部材は、配管の内壁面の4か所に等間隔で設けられている。
【0028】
第5実施形態
本開示の第5実施形態においては、第1実施形態において前記液水捕集部は、ガス進行方向の下流側の端部が重力方向下部に向かって傾斜していてもよい。
【0029】
図5は、本開示の第5実施形態の配管構造の縦断面模式図(左)と横断面模式図(右)である。第1実施形態においては、配管中に滞留する液水が一定量以下になり、連通孔(液水霧化放出孔)に到達し辛くなり、液水の霧化の効率が妨げられる状況が考えられる。
一方、第5実施形態においては、
図5に示すように、二重配管構造の液水捕集部の下流側の端部(終端部)を重力方向下部に向かって斜めに傾斜させることにより、液水は傾斜に沿って移動し、重力下部に集中し、液水が一定量以下の状態においても、効率的に配管中に滞留する液水の霧化が継続されるようにすることができ、ガス流量の低下により発生する配管中の重力方向上部の滞留する液水の霧化不良を抑制することができる。
【0030】
第6実施形態
本開示の第6実施形態においては、第5実施形態において前記連通孔はスリット状の連通孔であってもよい。連通孔(霧化液水放出孔)をスリット形状にすることにより小径の連通孔の場合と同程度の液水排出効果を発生させることができる。
スリットの幅は、0.8~1.2mmであってもよい。
【0031】
図6は、本開示の第6実施形態の配管構造の縦断面模式図(左)と横断面模式図(右)である。
図6は、連通孔(霧化液水放出孔)をスリット形状(霧化液水放出スリット)にしたこと以外は
図5と同様である。
【0032】
第7実施形態
本開示の第7実施形態においては、第3実施形態において前記液水捕集部及び前記ガス流れ制御部は、ガス進行方向の下流側の端部が重力方向下部に向かって傾斜していてもよい。
【0033】
図7は、本開示の第7実施形態の配管構造の縦断面模式図(左)と横断面模式図(右)である。
図7に示すように、堰を重力方向下部に向かって傾斜させることで、液水は傾斜に沿って移動し、液水を重力方向下部に集中させ、液水が一定量以下の状態においても、効率的に配管中に滞留する液水の霧化が継続されるようにすることができ、ガス流量の低下により発生する配管中の重力方向上部の滞留する液水の霧化不良を抑制することができる。
【0034】
第8実施形態
本開示の第8実施形態においては、第4実施形態において前記液水捕集部及び前記ガス流れ制御部は、ガス進行方向の下流側の端部が重力方向下部に向かって傾斜していてもよい。
【0035】
図8は、本開示の第8実施形態の配管構造の縦断面模式図(左)と横断面模式図(右)である。第8実施形態においては、第7実施形態の負圧発生部位を調整し、液水の霧化粒径等を調整できる構造になっている。
【0036】
第9実施形態
本開示の第9実施形態においては、第1実施形態において前記液水捕集部は、重力方向下部の方が、重力方向上部よりも貯留可能液水量が小さくてもよい。
【0037】
図9は、本開示の第9実施形態の配管構造の縦断面模式図(左)と横断面模式図(右)である。
図9に示すように、重力方向下部の液水捕集部の容量を減少させ、貯留液水量を低下させることにより、液水が直接連通孔(霧化液水放出口)に接触しやすくし、液水の効率的な霧化を継続して実施しやすくした構造となっている。
【0038】
第10実施形態
本開示の第10実施形態においては、燃料電池のガス入り口近傍に第1~9のいずれか一つの実施形態の配管構造が配置されていることを特徴とする燃料電池システムを提供する。
ガス入り口とは、燃料電池の燃料ガス入り口及び酸化剤ガス入り口の内の少なくとも一方であってもよく、両方であってもよい。
本開示の配管構造を燃料電池のガス入り口近傍に配置することにより、液水が端部セルに集中的に流入することを抑制し、結果として端部セルの発電性能の低下を抑制することができる。
【0039】
図10は、本開示の燃料電池システムの一例を示すシステム構成図である。
図10に示すように、燃料電池システムは、燃料電池スタックと、燃料ガス系として、燃料ガス供給配管(ガスIN)、燃料ガス排出配管(ガスOUT)、燃料ガスタンク、気体混合器、気液分離器、及び、水素ポンプ等を有し、本開示の配管構造は、燃料ガス供給配管上の燃料電池スタックの燃料ガス入り口近傍に設けられている。燃料電池システムは、その他、酸化剤ガス系、及び、冷却系等を有していてもよい。なお、
図10においては、便宜のため酸化剤ガス系、及び、冷却系等の記載を省略している。また、
図10においては、本開示の配管構造を燃料ガス系に設けた例を示したが、酸化剤ガス系に設けてもよい。その場合、本開示の配管構造は、酸化剤ガス供給配管上の燃料電池スタックの酸化剤ガス入り口近傍に設けてもよい。また、本開示の配管構造は、燃料ガス系と酸化剤ガス系の両方に設けてもよい。
酸化剤ガス系としては、燃料電池システム外部と燃料電池の酸化剤ガス入口とを接続する酸化剤ガス供給配管、燃料電池の酸化剤ガス出口と燃料電池システム外部とを接続する酸化剤ガス排出配管、燃料電池のカソードに酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給部、及び、酸化剤ガス調圧弁等を有していてもよい。
酸化剤ガス供給部としては、例えば、エアポンプ、エアコンプレッサー、エアブロワー、及び、エアファン等が挙げられる。
冷却系としては、燃料電池内外で冷媒を循環させるための冷却配管、ラジエータ、及び、冷却ポンプ等を有していてもよい。
【0040】
燃料電池は、電解質膜の両面に一対の触媒層が形成された膜電極接合体(MEA)と、MEAの両面に当接する一対のガス拡散層(GDL)と、GDLのMEAと反対側の面に当接するリブを備えた一対のセパレータと、を備える単セルを複数積層した燃料電池スタックであってもよい。本開示においては、単セル及び燃料電池スタックをまとめて燃料電池と称する。
【0041】
一対の触媒層は、一方がアノード触媒層であり、もう一方がカソード触媒層である。
MEAは、アノード触媒層、電解質膜、及び、カソード触媒層をこの順に有する。
カソード触媒層及びアノード触媒層をまとめて触媒層と称する。
触媒層は、電気化学反応を促進する金属等の触媒、電解質、及び、導電性を有する担体を備える。
触媒(触媒金属)としては、例えば、白金(Pt)、及び、Ptと他の金属とから成る合金(例えばコバルト、及び、ニッケル等を混合したPt合金)等を用いることができる。
上記触媒はカーボン粒子等の担体上に担持されており、各触媒層では、触媒金属を担持した担体(触媒担持担体)と電解質とが混在している。
電解質膜は、例えば、固体高分子電解質膜であってもよい。固体高分子電解質膜としては、例えば、水分が含まれたパーフルオロスルホン酸の薄膜等のフッ素系電解質膜、及び、炭化水素系電解質膜等が挙げられる。電解質膜としては、例えば、ナフィオン膜(デュポン社製)等であってもよい。
【0042】
本開示においては、カソード(酸化剤極)は、カソード触媒層を含む。
本開示においては、アノード(燃料極)は、アノード触媒層を含む。
本開示においては、燃料ガス、及び、酸化剤ガスをまとめて反応ガスと称する。アノードに供給される反応ガスは、燃料ガスであり、カソードに供給される反応ガスは酸化剤ガスである。燃料ガスは、主に水素を含有するガスであり、水素であってもよい。酸化剤ガスは酸素、空気、及び、乾燥空気等であってもよい。
【0043】
一対のガス拡散層は、一方がアノード側ガス拡散層であり、もう一方がカソード側ガス拡散層である。アノード側ガス拡散層及びカソード側ガス拡散層をまとめてガス拡散層と称する。一対のガス拡散層は、燃料ガス及び酸化剤ガスの供給と反応生成物の排出と電子伝導を受け持つ。
【0044】
一対のセパレータは、一方がアノード側セパレータであり、もう一方がカソード側セパレータである。本開示では、アノード側セパレータとカソード側セパレータとをまとめてセパレータという。
セパレータは、GDLのMEA側の面とは反対側の面と当接するリブを備え、GDLに接する面に反応ガス流路を有する。
セパレータは、ガス不透過の導電性部材から構成される。導電性部材としては、例えば、カーボンを圧縮してガス不透過とした緻密質カーボン、及び、プレス成形した金属(例えば、鉄、アルミニウム、及び、ステンレス等)板等であってもよい。