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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091796
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】軟水化装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/42 20230101AFI20230626BHJP
   C02F 1/461 20230101ALI20230626BHJP
   B01J 39/07 20170101ALI20230626BHJP
   B01J 41/07 20170101ALI20230626BHJP
   B01J 47/14 20170101ALI20230626BHJP
   B01J 49/53 20170101ALI20230626BHJP
   B01J 49/57 20170101ALI20230626BHJP
【FI】
C02F1/42 A
C02F1/461 A
B01J39/07
B01J41/07
B01J47/14
B01J49/53
B01J49/57
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206578
(22)【出願日】2021-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】土田 直輝
(72)【発明者】
【氏名】加藤 港
【テーマコード(参考)】
4D025
4D061
【Fターム(参考)】
4D025AA02
4D025AB19
4D025BA10
4D025BA15
4D025BB02
4D025BB09
4D025CA01
4D025CA10
4D025DA02
4D061DA02
4D061DA03
4D061DB07
4D061DB08
4D061EA02
4D061EB02
4D061EB05
4D061EB12
4D061EB19
4D061EB30
4D061EB37
4D061EB39
4D061GA14
4D061GC14
4D061GC16
4D061GC20
(57)【要約】
【課題】転極運転のタイミングを検知し、適切なタイミングで転極運転を行うことが可能な軟水化装置を提供すること。
【解決手段】軟水化装置1は、軟水化槽3と、中和槽4と、電解槽9と、検知部27と、制御部26とを備える。検知部27は、電圧を検知し、制御部26は検知部27が検知した電圧を基に電解槽9の電極再生処理を制御する。樹脂再生処理に、検知部27が検知した電圧が第一基準値未満の場合には、樹脂再生処理を継続または軟水化処理に移行し、検知部27が検知した電圧が第一基準値以上の場合には、樹脂再生処理を停止して電極再生処理に移行する。また、電極再生処理時に、検知部27が検知した電圧が第二基準値以上の場合には、電極再生処理を継続し、検知部27が検知した電圧が第二基準値未満となった場合には、電極再生処理を終了し、樹脂再生処理または前記軟水化処理に移行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水を弱酸性陽イオン交換樹脂により軟水化処理する軟水化槽と、
前記軟水化槽を通過した軟水のpHを弱塩基性陰イオン交換樹脂により中和する中和槽と、
酸性電解水とアルカリ性電解水とを生成する電解槽と、
前記電解槽の電圧を検知する検知部と、
前記検知部が検知した前記電圧を基に前記電解槽の電極再生処理を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記酸性電解水を用いた前記弱酸性陽イオン交換樹脂の再生または前記アルカリ性電解水を用いた前記弱塩基性陰イオン交換樹脂の再生の少なくとも一方を行う樹脂再生処理時に、
前記検知部が検知した前記電圧が第一基準値未満の場合には、前記樹脂再生処理を継続または前記軟水化処理に移行し、
前記検知部が検知した前記電圧が第一基準値以上の場合には、前記樹脂再生処理を停止して前記電極再生処理に移行し、
前記電極再生処理時に、
前記検知部が検知した前記電圧が第二基準値以上の場合には、前記電極再生処理を継続し、
前記検知部が検知した前記電圧が第二基準値未満となった場合には、前記電極再生処理を終了し、前記樹脂再生処理または前記軟水化処理に移行する軟水化装置。
【請求項2】
原水を弱酸性陽イオン交換樹脂により軟水化処理する軟水化槽と、
前記軟水化槽を通過した軟水のpHを弱塩基性陰イオン交換樹脂により中和する中和槽と、
酸性電解水とアルカリ性電解水とを生成する電解槽と、
前記電解槽の電圧を検知する検知部と、
前記検知部が検知した前記電圧を基に前記電解槽の電極再生処理を制御する制御部と、
を備え、
前記酸性電解水を用いた前記弱酸性陽イオン交換樹脂の再生または前記アルカリ性電解水を用いた前記弱塩基性陰イオン交換樹脂の再生の少なくとも一方を行う樹脂再生処理の終了後かつ前記軟水化処理の開始前に、
前記制御部は、
前記検知部が検知した前記電圧が第一基準値未満の場合には、前記電極再生処理に移行せず、前記軟水化処理に移行する軟水化装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記検知部が検知した前記電圧が前記第一基準値以上の場合に、前記電極再生処理及び前記軟水化処理を並列に実行する請求項2に記載の軟水化装置。
【請求項4】
前記検知部が検知した前記電圧が前記第一基準値以上の場合に、前記電極再生処理に移行後、前記軟水化処理に移行する請求項2に記載の軟水化装置。
【請求項5】
前記検知部が検知した前記電圧が、前記電極再生処理中に第二基準値未満となった場合に、前記電極再生処理を終了する請求項3または4に記載の軟水化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟水化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の軟水化装置として、陽イオン交換樹脂を用いたものが数多く提案されている。例えば、ナトリウムイオンを官能基として有する陽イオン交換樹脂(強酸性イオン交換樹脂)を用い、原水中に含まれる硬度成分であるカルシウムイオンやマグネシウムイオンをナトリウムイオンにイオン交換して軟水を得るものが知られている。
【0003】
ところで、陽イオン交換樹脂は、使用を続けるとイオン交換能力が低下又は消失する。すなわち、陽イオン交換樹脂の官能基であるナトリウムイオンすべてが、硬度成分であるカルシウムイオンやマグネシウムイオンと交換された後は、イオン交換ができなくなる。そのため、再びイオン交換を可能とするために、陽イオン交換樹脂の再生を行う必要がある。
【0004】
再生処理としては、飽和食塩水等の再生水を陽イオン交換樹脂に通水するといった処理が一例として挙げられる。そのような再生処理は、軟水の使用量に応じて定期的に食塩を補充する必要があり、食塩の補充に手間がかかる。また、多量の食塩を用いるため環境問題の原因となっている。
【0005】
そこで、食塩を使用しない陽イオン交換樹脂の再生方法として、弱酸性陽イオン交換樹脂を用い、電気分解で生成した酸性電解水により陽イオン交換樹脂を再生する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。弱酸性陽イオン交換樹脂は、官能基の末端に水素イオン(水素イオン)を有しており、原水中の硬度成分(例えば、カルシウムイオン、マグネシウムイオン)を水素イオンに交換して原水を軟水化している。弱酸性陽イオン交換樹脂により軟水化された水は、硬度成分の代わりに水素イオンが放出されるために酸性となる。これを中和するために、弱酸性陽イオン交換樹脂に弱塩基性陰イオン交換樹脂を組み合わせて利用されることがある。つまり、弱塩基性陰イオン交換樹脂は、弱酸性陽イオン交換樹脂により軟水化された水に含まれる水素イオン及び陰イオンを吸着することで軟水化された原水を中和している。弱塩基性陰イオン交換樹脂の再生方法として、電気分解で生成したアルカリ性電解水を用いる方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-30973号公報
【特許文献2】特開2010-142674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような従来の軟水化装置では、弱酸性陽イオン交換樹脂を再生する水素イオンと、弱塩基性陰イオン交換樹脂を再生する水酸化物イオンとを、水の電気分解により生成する電解槽が用いられている。電解槽の運転時には、陰極で生成された水酸化物イオンが水中のカルシウムイオンあるいはマグネシウムイオンと反応し、主に陰極上に固体(スケール)が析出する。この電解槽内で析出したスケールは、電解槽の運転電圧を上昇させるため、軟水化装置の消費電力上昇を引き起こす。そこで、電解槽の電極に印加する電圧を反転する転極運転を行い、固体を除去する必要がある。しかし、転極を行うことで電極が消耗するため、適切なタイミングで転極運転を行う必要があるが、そのタイミングを検知することが困難であるという課題がある。
【0008】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、転極運転のタイミングを検知し、適切なタイミングで転極運転を行うことが可能な軟水化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、この目的を達成するために、本発明に係る軟水化装置は、原水を弱酸性陽イオン交換樹脂により軟水化する軟水化槽と、軟水化槽を通過した軟水のpHを弱塩基性陰イオン交換樹脂により中和する中和槽と、酸性電解水とアルカリ性電解水を生成する電解槽と、電解槽の電圧を検知する検知部と、検知部が検出した電圧を基に電解槽の電極再生処理を制御する制御部と、を備える。制御部は、酸性電解水を用いた弱酸性陽イオン交換樹脂の再生またはアルカリ性電解水を用いた弱塩基性陰イオン交換樹脂の再生の少なくとも一方を行う樹脂再生処理時に、検知部が検知した電圧が第一基準値未満の場合には、前記樹脂再生処理を継続または前記軟水化処理に移行し、検知部が検知した電圧が第一基準値以上の場合には、樹脂再生処理を停止して電極再生処理に移行する。電極再生処理時に、検知部が検知した電圧が第二基準値以上の場合には、電極再生処理を継続し、検知部が検知した電圧が第二基準値未満となった場合には、電極再生処理を終了し、樹脂再生処理または軟水化処理に移行する。これにより、所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、転極運転のタイミングを検知し、適切なタイミングで転極運転を行うことが可能な軟水化装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の実施の形態1に係る軟水化装置の構成を示す概念図である。
図2図2は、軟水化装置の樹脂再生処理時の各構成要素の状態を示す図である。
図3図3は、軟水化装置の電極再生処理時の各構成要素の状態を示す図である。
図4図4は、軟水化装置の動作時の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例で合って、本発明の技術的範囲を限定するものではない。また、実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0013】
(実施の形態1)
図1を参照して、本発明の実施の形態1に係る軟水化装置1について説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る軟水化装置1の構成を示す概念図である。なお、図1では、軟水化装置1の各要素を概念的に示している。
【0014】
(全体構成)
軟水化装置1は、外部から供給される硬度成分を含む原水から、中性の軟水を生成する装置である。なお、原水とは、流入口2から装置内に導入された水(処理対象水)であり、例えば市水や井戸水である。原水は、硬度成分(例えばカルシウムイオンまたはマグネシウムイオン)を含む。
【0015】
具体的には、図1に示すように、軟水化装置1は、流入口2と、軟水化槽3(第一軟水化槽3a及び第二軟水化槽3b)と、中和槽4(第一中和槽4a及び第二中和槽4b)と、取水口5と、再生装置6とを備えている。
【0016】
また、軟水化装置1は、複数の開閉弁(開閉弁51~開閉弁55、開閉弁61~開閉弁66、開閉弁71、開閉弁72、開閉弁81、及び、開閉弁82)及び複数の流路(流路30~36、第一供給流路41、第一バイパス流路42、第一回収流路43、第二供給流路45、第二バイパス流路46、第二回収流路47、送水流路48、及び送水流路49)を備えており、詳細は後述する。なお、複数の流路(流路30~36、第一供給流路41、第一バイパス流路42、第一回収流路43、第二供給流路45、第二バイパス流路46、第二回収流路47、送水流路48、及び送水流路49)として、例えばパイプ等の管が用いられる。
【0017】
((流入口、取水口、及び流路30~34))
流入口2は、原水の供給元及び流路30に接続されている。流入口2は、原水を装置内に導入する開口である。
【0018】
取水口5は、軟水化槽3及び中和槽4により処理された中性の軟水を装置外へ排出する開口である。軟水化装置1では、流入口2から流入する原水の圧力により、取水口5から軟水化処理後の軟水を取り出すことができる。
【0019】
流入口2から取水口5までは、流路30、流路31、流路32、流路33、及び流路34によってこの順で接続されている。
【0020】
流路30は、流入口2から第一軟水化槽3aまでを接続する流路である。つまり、流路30は、硬度成分を含む原水を流入口2から第一軟水化槽3aへ導く流路である。
【0021】
流路31は、第一軟水化槽3aから第一中和槽4aまでを接続する流路である。つまり、流路31は、第一軟水化槽3aで軟水化された酸性の軟水(第一軟水)を第一中和槽4aへ導く流路である。
【0022】
流路32は、第一中和槽4aから第二軟水化槽3bまでを接続する流路である。つまり、流路32は、第一中和槽4aで中和された第一軟水(第一中和軟水)を第二軟水化槽3bへ導く流路である。
【0023】
流路33は、第二軟水化槽3bから第二中和槽4bまでを接続する流路である。つまり、流路33は、第二軟水化槽3bで軟水化された酸性の軟水(第二軟水)を第一中和槽4aへ導く流路である。
【0024】
流路34は、第二中和槽4bから取水口5までを接続する流路である。つまり、流路34は、第一中和槽4aで中和された第二軟水(第二中和軟水)を取水口5へ導く流路である。
【0025】
まとめると、軟水化装置1では、軟水化処理において、外部から供給される原水が、流入口2、流路30、第一軟水化槽3a、流路31、第一中和槽4a、流路32、第二軟水化槽3b、流路33、第二中和槽4b、流路34、及び取水口5の順に流通して、中性の軟水として排出される。
【0026】
((軟水化槽))
軟水化槽3は、弱酸性陽イオン交換樹脂7の作用により、硬度成分を含む原水を軟水化する。具体的には、軟水化槽3は、流通する水(原水)に含まれる硬度成分である陽イオン(カルシウムイオン、マグネシウムイオン)を水素イオンと交換するため、原水の硬度が下がり、原水を軟水化する。軟水化槽3は、官能基の末端に水素イオンを有する弱酸性陽イオン交換樹脂7を備えている。
【0027】
軟水化槽3は、例えば円筒状の容器に弱酸性陽イオン交換樹脂7が充填されて構成されている。軟水化槽3は、第一軟水化槽3aと第二軟水化槽3bとを含んで構成される。
【0028】
第一軟水化槽3aは、第一弱酸性陽イオン交換樹脂7aが充填されて構成されている。第一軟水化槽3aは、上流側で流路30と接続され、下流側で流路31と接続される。
【0029】
第二軟水化槽3bは、第二弱酸性陽イオン交換樹脂7bが充填されて構成されている。第二軟水化槽3bは、上流側で流路32と接続され、下流側で流路33と接続される。
【0030】
また、第一軟水化槽3aと第二軟水化槽3bとは、同一の流路長、流路断面積、及び同体積の弱酸性陽イオン交換樹脂7を有している。これにより、第一軟水化槽3a及び第二軟水化槽3bを同じ部材で構成できるため、軟水化装置1の低コスト化を図れる。
【0031】
なお、以下では、第一弱酸性陽イオン交換樹脂7a及び第二弱酸性陽イオン交換樹脂7bに関しては、特に両者を区別する必要がない場合には、弱酸性陽イオン交換樹脂7として説明する。
【0032】
弱酸性陽イオン交換樹脂7は、官能基の末端に水素イオンを有するイオン交換樹脂である。弱酸性陽イオン交換樹脂7は、通水される原水に含まれる硬度成分である陽イオン(カルシウムイオン、マグネシウムイオン)を吸着し、水素イオンを放出する。弱酸性陽イオン交換樹脂7として、特に制限はなく、汎用的なものを使用することができ、例えば、カルボキシル基(-COOH)を交換基とするものが挙げられる。また、弱酸性陽イオン交換樹脂7として、カルボキシル基の対イオンである水素イオン(H+)が、金属イオン、アンモニウムイオン(NH4+)等の陽イオンとなっている樹脂を用いてもよい。
【0033】
((中和槽))
中和槽4は、弱塩基性陰イオン交換樹脂8の作用により、軟水化槽3から出てきた水素イオンを含む軟水(酸性化した軟水)のpHを中和し、中性の軟水とする。具体的には、中和槽4は、軟水化槽3から流入する軟水に含まれる水素イオンを陰イオンとともに吸着するため、軟水のpHが上がり、中性の軟水とすることができる。
【0034】
中和槽4は、弱塩基性陰イオン交換樹脂8を備えている。
【0035】
中和槽4は、例えば円筒状の容器に弱塩基性陰イオン交換樹脂8が充填されて構成されている。また、中和槽4は、第一中和槽4aと第二中和槽4bとを含んで構成される。
【0036】
第一中和槽4aは、例えば円筒状の容器に第一弱塩基性陰イオン交換樹脂8aが充填されて構成されている。第一中和槽4aは、上流側で流路31と接続され、下流側で流路32と接続される。
【0037】
第二中和槽4bは、第二弱塩基性陰イオン交換樹脂8bが充填されて構成されている。第二中和槽4bは、上流側で流路33と接続され、下流側で流路34と接続される。
【0038】
第一中和槽4aと第二中和槽4bとは、同一の流路長、流路断面積、及び同体積の弱塩基性陰イオン交換樹脂8を有している。これにより、第一中和槽4a及び第二中和槽4bを同じ部材で構成できるため、軟水化装置1の低コスト化を図れる。
【0039】
なお、以下では、第一弱塩基性陰イオン交換樹脂8a及び第二弱塩基性陰イオン交換樹脂8bに関しては、特に両者を区別する必要がない場合には、弱塩基性陰イオン交換樹脂8として説明する。
【0040】
弱塩基性陰イオン交換樹脂8は、通水される水に含まれる水素イオンを中和し、中性の水を生成する。弱塩基性陰イオン交換樹脂8としては、特に制限はなく、汎用的なものを使用することができ、例えば、遊離塩基型の陰イオン交換樹脂が挙げられる。弱塩基性陰イオン交換樹脂8は、後述する樹脂再生処理において、アルカリ性電解水を用いて再生される。
【0041】
((再生装置))
再生装置6は、軟水化槽3の弱酸性陽イオン交換樹脂7を再生させ、且つ、中和槽4の弱塩基性陰イオン交換樹脂8を再生させる機器である。具体的には、再生装置6は、電解槽9と、酸性電解水貯水槽19と、酸性電解水循環ポンプ23と、アルカリ性電解水貯水槽21と、アルカリ性電解水循環ポンプ24と、捕捉部25と、制御部26と、検知部27とを含んで構成される。そして、再生装置6では、流入口2から取水口5までの流路33、流路30、流路34、及び流路31に対して、第一供給流路41、第一回収流路43、第二供給流路45、及び第二回収流路47がそれぞれ接続されている。
【0042】
((電解槽))
電解槽9は、弱酸性陽イオン交換樹脂7を再生する酸性電解水と、弱塩基性陰イオン交換樹脂8を再生するアルカリ性電解水とを、水の電気分解により生成する。電解槽9で酸性電解水及びアルカリ性電解水を生成することで、軟水化装置1の軟水化性能が低下してきた場合には、再生処理を行うことができる。なお、電解槽9は、後述する制御部26によって、陽極11及び陰極15への通電状態を制御できるように構成されている。また、電解槽9の電圧は、後述する検知部27によって、樹脂再生処理及び電極再生処理時に検知される。
【0043】
電解槽9は、隔膜10、陽極室14、及び陰極室18を備える。
【0044】
電解槽9は、内部に設けられた隔膜10により、陽極室14と陰極室18とに隔てられている。
【0045】
隔膜10は、電解槽9の内部を陽極室14と陰極室18とに隔てる。隔膜10は、陽極室14で生成する酸性電解水と陰極室18で生成するアルカリ性電解水との混合を抑制する。これにより、酸性電解水中の水素イオン及びアルカリ性電解水中の水酸化物イオンが中和反応により消費されることが抑制できるため、弱酸性陽イオン交換樹脂7及び弱塩基性陰イオン交換樹脂8の再生効率低下を抑制できる。
【0046】
また、隔膜10により、一方のイオン交換樹脂の再生が先に終わった場合の他方のイオン交換樹脂の再生効率低下についても抑制することができる。具体的には、隔膜10がない場合、酸性電解水とアルカリ性電解水とが混合しやすい環境となる。例えば、弱塩基性陰イオン交換樹脂8の再生に対して、弱酸性陽イオン交換樹脂7の再生が先に完了すると、弱酸性陽イオン交換樹脂7の再生に供されていた酸性電解水中の水素イオンが、アルカリ性電解水中の水酸化物イオンと反応し、中和により水酸化物イオンが消費されてしまう。つまり、隔膜10を有さない場合には、一方のイオン交換樹脂の再生が先に完了すると、他方のイオン交換樹脂の再生効率が低下しやすい。しかし、隔膜10により、電解槽9の内部を陽極室14と陰極室18とに隔てることで、一方のイオン交換樹脂の再生が完了した場合においても、他方のイオン交換樹脂の再生に供される電解水との混合を抑制可能となる。したがって、隔膜10により、一方のイオン交換樹脂の再生が先に終わった場合の他方のイオン交換樹脂の再生効率低下についても抑制可能となる。
【0047】
隔膜10として、例えばフッ素系の多孔質膜を用いることができる。なお、隔膜10に用いる多孔質膜として、フッ素系の他に、炭化水素系の多孔質膜等、一般的に用いられる多孔質膜を用いてもよいが、フッ素系の多孔質膜は耐久性に優れるため、軟水化装置1では、フッ素系の多孔質膜を用いている。
【0048】
陽極室14は、水の電気分解時に、酸性電解水が生成する部位である。陽極室14は、陽極11、第一取水口12、及び第一吐出口13を備える。
【0049】
陽極11は、水を電気分解することにより水素イオンを生成する。したがって、陽極11を備える陽極室14では、水の水素イオン濃度が高まり、酸性電解水となる。陽極11として、例えば白金電極を用いることができる。
【0050】
第一取水口12は、酸性電解水貯水槽19に貯められた酸性電解水を、送水流路48を通して陽極室14に導入する開口である。第一取水口12は、送水流路48に接続される。
【0051】
第一吐出口13は、陽極11で生成された水素イオンを含む酸性電解水を、第一供給流路41を通して軟水化槽3へ供給する開口である。第一吐出口13は、第一供給流路41と接続される。
【0052】
陰極室18は、水の電気分解時に、アルカリ性電解水が生成する部位である。陰極室18は、陰極15、第二取水口16、及び第二吐出口17を備える。
【0053】
陰極15は、水を電気分解することにより水酸化物イオンを生成する。したがって、陰極15を備える陰極室18では、水の水酸化物イオン濃度が高まり、アルカリ性電解水となる。陰極15として、例えば白金電極を用いることができる。
【0054】
第二取水口16は、アルカリ性電解水貯水槽21に貯められたアルカリ性電解水を、送水流路49を通して陰極室18に導入する開口である。第二取水口16は、送水流路49に接続される。
【0055】
第二吐出口17は、陰極15で生成された水酸化物イオンを含むアルカリ性電解水を、第二供給流路45を通して中和槽4へ供給する開口である。第二吐出口17は、第二供給流路45と接続される。
【0056】
つまり、電解槽9は、陽極11を用いて、第一取水口12から流入した水(酸性電解水貯水槽19から供給される水)を電気分解することによって、陽極室14で酸性電解水を生成し、第一吐出口13から排出する。また、電解槽9は、陰極15を用いて、第二取水口16から流入した水(アルカリ性電解水貯水槽21から供給される水)を電気分解することによって、陰極室18でアルカリ性電解水を生成し、第二吐出口17から排出する。
【0057】
なお、ここまでは、陰極15に対して陽極11に高電位となるように通電した(正電解)場合について説明した。一方、陽極11に対して陰極15が高電位となるように通電した(逆電解)場合には、陽極室14ではアルカリ性電解水が生成し、陰極室18では酸性電解水が生成される。軟水化装置1では、電解槽9は、樹脂再生処理時には正電解を行い、電極再生処理時には逆電解を行う。
【0058】
((酸性電解水貯水槽及びアルカリ性電解水貯水槽))
酸性電解水貯水槽19は、上流側で第一回収流路43と接続され、下流側で送水流路48と接続される。酸性電解水貯水槽19は、空気抜き弁20を備えたタンクまたは容器である。酸性電解水貯水槽19は、弱酸性陽イオン交換樹脂7を再生する際に酸性電解水循環流路40(図2参照)内を流通させる水を確保し、貯留するものである。
【0059】
酸性電解水貯水槽19に酸性電解水を貯めることで、酸性電解水循環流路40内を流通する酸性電解水の総量を制御することが可能となる。例えば、酸性電解水貯水槽19の容積を大きくすることにより、酸性電解水循環流路40内のイオンの量が一定の場合に、酸性電解水循環流路40内のイオン濃度を低下させることができる。硬度成分等の陽イオン濃度の低下により、弱酸性陽イオン交換樹脂7での反応の平衡は、再生反応(弱酸性陽イオン交換樹脂7から硬度成分が脱離し、水素イオンが吸着する反応)側に傾くため、再生効率を高めることが可能となる。また、酸性電解水貯水槽19の容積を小さくすることにより、酸性電解水循環流路40内のイオン(硬度成分等の陽イオン)の量が一定の場合に、酸性電解水循環流路40内のイオン濃度を上昇させることができる。酸性電解水のイオン濃度の上昇により、電解槽9において電気分解を行う際の溶液抵抗が小さくなる。したがって、電解槽9が印加する印加電圧を小さくすることが可能となり、消費電力を低減することが可能となる。つまり、目的に応じた容積を有する酸性電解水貯水槽19を用いることにより、軟水化装置1の性能を向上させることができる。
【0060】
空気抜き弁20は、酸性電解水に含まれる気体を抜き、酸性電解水循環流路40内に気体が溜まらないようにするものである。
【0061】
アルカリ性電解水貯水槽21は、上流側で第二回収流路47と接続され、下流側で送水流路49と接続される。アルカリ性電解水貯水槽21は、空気抜き弁22を備えたタンクまたは容器である。アルカリ性電解水貯水槽21は、弱塩基性陰イオン交換樹脂8を再生する際にアルカリ性電解水循環流路44(図2参照)内を流通させる水を確保し、貯留するものである。
【0062】
アルカリ性電解水貯水槽21にアルカリ性電解水を貯めることで、アルカリ性電解水循環流路44内を流通するアルカリ性電解水の総量を制御することが可能となる。例えば、アルカリ性電解水貯水槽21の容積を大きくすることにより、アルカリ性電解水循環流路44内のイオンの量が一定の場合に、アルカリ性電解水循環流路44内のイオン濃度を低下させることができる。陰イオン濃度の低下により、弱塩基性陰イオン交換樹脂8での反応の平衡は、再生反応側に傾くため、再生効率を高めることが可能となる。また、アルカリ性電解水貯水槽21の容積を小さくすることにより、アルカリ性電解水循環流路44内のイオンの量が一定の場合に、アルカリ性電解水循環流路44内のイオン濃度を上昇させることができる。アルカリ性電解水のイオン濃度の上昇により、電解槽9において電気分解を行う際の溶液抵抗が小さくなる。したがって、電解槽9が印加する印加電圧を小さくすることが可能となり、消費電力を低減することが可能となる。つまり、目的に応じた容積を有するアルカリ性電解水貯水槽21を用いることにより、軟水化装置1の性能を向上させることができる。
【0063】
空気抜き弁22は、アルカリ性電解水に含まれる気体を抜き、アルカリ性電解水循環流路44内に気体が溜まらないようにするものである。
【0064】
((酸性電解水循環ポンプ及びアルカリ性電解水循環ポンプ))
酸性電解水循環ポンプ23は、再生装置6による樹脂再生処理の際に、酸性電解水循環流路40(図2参照)に水を流通させる機器である。酸性電解水循環ポンプ23は、酸性電解水貯水槽19と第一取水口12との間を連通接続する送水流路48に設けられている。
【0065】
酸性電解水循環ポンプ23により、酸性電解水循環流路40を流通する酸性電解水の流量を制御することが可能となる。例えば、電解槽9での水素イオンの生成速度が一定の場合に、酸性電解水の流量を大きくすると、水素イオン濃度が低下(pHが上昇)する。また、酸性電解水の流量を小さくすると、水素イオン濃度が上昇(pHが低下)する。つまり、酸性電解水循環ポンプ23によって、酸性電解水の流量を調整することにより、弱酸性陽イオン交換樹脂7へ供給する酸性電解水中の水素イオン濃度を調整することができる。そのため、弱酸性陽イオン交換樹脂7の状態に応じた水素イオン供給が可能となり、軟水化装置1の性能を向上させることができる。
【0066】
アルカリ性電解水循環ポンプ24は、再生装置6による樹脂再生処理の際に、アルカリ性電解水循環流路44(図2参照)に水を流通させる機器である。アルカリ性電解水循環ポンプ24はアルカリ性電解水貯水槽21と第二取水口16との間を連通接続する送水流路49に設けられている。
【0067】
アルカリ性電解水循環ポンプ24により、アルカリ性電解水循環流路44を流通するアルカリ性電解水の流量を制御することが可能となる。例えば、電解槽9での水酸化物イオンの生成速度が一定の場合に、アルカリ性電解水の流量を大きくすると、水酸化物イオン濃度が低下する。また、アルカリ性電解水の流量を小さくすると、水酸化物イオン濃度が上昇する。つまり、アルカリ性電解水循環ポンプ24によって、アルカリ性電解水の流量を調整することにより、弱塩基性陰イオン交換樹脂8へ供給するアルカリ性電解水中の水酸化物イオン濃度を調整することができる。そのため、弱塩基性陰イオン交換樹脂8の状態に応じた水酸化物イオン供給が可能となり、軟水化装置1の性能を向上させることができる。
【0068】
酸性電解水循環ポンプ23及びアルカリ性電解水循環ポンプ24を一つのポンプとせず、それぞれ独立して設けることにより、弱酸性陽イオン交換樹脂7の再生に適した水素イオン供給が可能な酸性電解水の流量及び弱塩基性陰イオン交換樹脂8の再生に適した水酸化物イオン供給が可能なアルカリ性電解水の流量を個別に設定することが可能となる。
【0069】
酸性電解水循環ポンプ23及びアルカリ性電解水循環ポンプ24は、後述する制御部26と無線又は有線により通信可能に接続されている。
【0070】
((捕捉部))
捕捉部25は、第二供給流路45において、電解槽9の後段、且つ、第二中和槽4bの前段に設けられている。
【0071】
捕捉部25は、電解槽9から供給されるアルカリ性電解水に含まれる固体を分離する。固体とは、電解槽9の陰極室18でアルカリ性電解水水中の硬度成分と陰極15により生成される水酸化物イオンが反応して析出する反応生成物である。例えば、アルカリ性電解水に含まれる硬度成分がマグネシウムイオンの場合、水酸化マグネシウムが生じる。樹脂再生処理時に析出する固体は、除去しなければ中和槽4に溜まり、固体から硬度成分が溶出することで、軟水化処理時の軟水硬度を高くしてしまう、すなわち軟水化性能を低下させる。そのため、捕捉部25で析出物の分離を行うことにより、第二中和槽4bへの析出物の流入及び堆積を抑制し、軟水化処理時の軟水化性能の低下を抑制できる。
【0072】
捕捉部25は、電解槽9から供給されるアルカリ性電解水に含まれる硬度成分との反応生成物を分離可能であればその形態は問わない。例えば、カートリッジタイプのフィルター、粒状ろ材を用いたろ過層、サイクロン型の固液分離機、又は中空糸膜等を用いる形態が挙げられる。
【0073】
((制御部))
制御部26は、硬度成分を含む原水を軟水化する軟水化処理を制御する。また、制御部26は、軟水化槽3の弱酸性陽イオン交換樹脂7及び中和槽4の弱塩基性陰イオン交換樹脂8の樹脂再生処理を制御する。さらに、制御部26は、電解槽9を再生する電極再生処理を制御する。加えて、制御部26は、軟水化装置1の軟水化処理、樹脂再生処理、及び電極再生処理の切り替えを制御する。この際、制御部26は、陽極11、陰極15、酸性電解水循環ポンプ23、アルカリ性電解水循環ポンプ24、開閉弁51~開閉弁55、開閉弁61~開閉弁66、開閉弁71、開閉弁72、開閉弁81、及び、開閉弁82の動作を制御し、軟水化処理、樹脂再生処理、及び電極再生処理の切り替えを行い、それぞれの処理を実行させる。
【0074】
具体的には、制御部26は、検知部27で検知された電圧と、後述する第一基準値あるいは第二基準値を比較することにより、軟水化処理、樹脂再生処理、及び、電極再生処理の切り替えを判断する。
【0075】
なお、制御部26は、プロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムを有している。そして、プロセッサがメモリに格納されているプログラムを実行することにより、コンピュータシステムが制御部として機能する。プロセッサが実行するプログラムは、ここではコンピュータシステムのメモリに予め記録されているとしたが、メモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通じて提供されてもよい。
【0076】
((検知部))
検知部27は、樹脂再生処理及び電極再生処理時の電解槽9における電圧を検知する。また、検知部27は、制御部26に接続されている。つまり、検知部27で検知された電圧をもとに、制御部26では、軟水化処理、樹脂再生処理、及び、電極再生処理の切り替えを判断することができる。
【0077】
((酸性電解水循環流路、アルカリ性電解水循環流路))
次に、図2を参照して、軟水化装置1の樹脂再生処理の際に形成される酸性電解水循環流路40及びアルカリ性電解水循環流路44について説明する。図2は、軟水化装置1の樹脂再生処理時の各構成要素の状態を示す図である。
【0078】
酸性電解水循環流路40は、図2(白矢印)に示すように、酸性電解水循環ポンプ23によって酸性電解水貯水槽19から送出された水が、電解槽9、第二軟水化槽3b、及び第一軟水化槽3aを流通し、酸性電解水貯水槽19に戻って循環する流路である。より詳細には、酸性電解水循環流路40は、酸性電解水循環ポンプ23によって酸性電解水貯水槽19から送出された水が、送水流路48、第一取水口12、陽極室14、第一吐出口13、第一供給流路41、開閉弁63、第二軟水化槽3b、第一バイパス流路42、開閉弁65、第一軟水化槽3a、第一回収流路43、開閉弁61、酸性電解水貯水槽19の順に流通して循環する流路である。
【0079】
第一供給流路41は、第一吐出口13から流路33までを接続する流路である。つまり、第一供給流路41は、第一吐出口13から第二軟水化槽3bの下流側へ酸性電解水を供給する流路である。なお、第一供給流路41は、第二軟水化槽3b及び開閉弁54の間で流路33と接続している。そして、開閉弁54は、第二バイパス流路46及び流路33の接続箇所と第二軟水化槽3bとの間に設けられている。これにより、第一供給流路41を流通する酸性電解水と第二回収流路47を流通するアルカリ性電解水との混合を抑制することができる。なお、第一供給流路41には開閉弁63が設置されている。
【0080】
第一バイパス流路42は、第一中和槽4aを迂回して流路32から流路31までを接続する流路である。つまり、第一バイパス流路42は、第二軟水化槽3bを流通した酸性電解水を、第一中和槽4aをバイパスして第一軟水化槽3aに供給する流路である。これにより、酸性電解水を第二軟水化槽3bから第一軟水化槽3aの下流側に供給することができる。なお、第一バイパス流路42を設けることにより、第一軟水化槽3aと第二軟水化槽3bとの間に存在する第一中和槽4aに酸性電解水を流通させることなく樹脂再生処理を進行させることができる。なお、第一バイパス流路42には開閉弁65が設置されている。
【0081】
第一回収流路43は、流路30から酸性電解水貯水槽19までを接続する流路である。つまり、第一回収流路43は、軟水化槽3の樹脂再生処理によって軟水化槽3から流出した硬度成分を含む酸性電解水を、酸性電解水貯水槽19へ回収する流路である。なお、第一回収流路43には、開閉弁61が設置されている。
【0082】
送水流路48は、酸性電解水貯水槽19から第一取水口12までを接続する流路である。送水流路48には、酸性電解水循環ポンプ23が設けられている。つまり、送水流路48は、酸性電解水循環ポンプ23を用いて、酸性電解水貯水槽19に貯められた酸性電解水を電解槽9の陽極室14へと供給する流路である。送水流路48には、開閉弁71が設置されている。
【0083】
ここで、酸性電解水循環流路40に水を循環させるための各流路の状態を説明する。
【0084】
流路33には、第一供給流路41の下流側、且つ、第一バイパス流路42の上流側に開閉弁54が設置されている。そして、開閉弁54を閉止して、開閉弁63を開放することで、第二軟水化槽3bの下流側に第一供給流路41が連通接続された状態となる。これにより、電解槽9の陽極室14からの酸性電解水を第二軟水化槽3bに供給できるようになる。
【0085】
流路31には、第一バイパス流路42の下流側、且つ、第二回収流路47の上流側に開閉弁52が設置されている。また、流路32には、第二バイパス流路46の下流側、且つ、第一バイパス流路42の上流側に開閉弁53が設置されている。そして、開閉弁52及び開閉弁53を閉止して、開閉弁65を開放することで、第二軟水化槽3bの上流側、且つ、第一軟水化槽3aの下流側に、第一バイパス流路42が連通接続された状態となる。これにより、第二軟水化槽3bを流通した酸性電解水を第一軟水化槽3aに供給できるようになる。
【0086】
流路30には、流入口2の下流側、且つ、第一回収流路43の上流側に開閉弁51が設置されている。そして、開閉弁51及び開閉弁52を閉止して、開閉弁61を開放することで、第一軟水化槽3aの上流側に第一回収流路43が連通接続された状態となる。これにより、軟水化装置1では、第一軟水化槽3a及び第二軟水化槽3bを流通した水(硬度成分を含む酸性電解水)を酸性電解水貯水槽19へ回収することができるようになる。
【0087】
送水流路48には、酸性電解水貯水槽19の下流側(酸性電解水貯水槽19と酸性電解水循環ポンプ23の間の位置)に開閉弁71が設置されている。開閉弁71を閉止することにより、酸性電解水貯水槽19に水を貯留することができる。一方、開閉弁71を開放することにより、送水流路48へ水を供給することができる。
【0088】
一方、アルカリ性電解水循環流路44は、図2(黒矢印)に示すように、アルカリ性電解水循環ポンプ24によってアルカリ性電解水貯水槽21から送出された水が、電解槽9、第二中和槽4b、及び第一中和槽4aを流通し、アルカリ性電解水貯水槽21に戻って循環する流路である。より詳細には、アルカリ性電解水循環流路44は、アルカリ性電解水循環ポンプ24によってアルカリ性電解水貯水槽21から送出された水が、送水流路49、第二取水口16、陰極室18、第二吐出口17、第二供給流路45、捕捉部25、開閉弁64、第二中和槽4b、第二バイパス流路46、開閉弁66、第一中和槽4a、第二回収流路47、開閉弁62、アルカリ性電解水貯水槽21の順に流通して循環する流路である。
【0089】
第二供給流路45は、第二吐出口17から流路34までを接続する流路である。つまり、第二供給流路45は、電解槽9から第二中和槽4bの下流側へアルカリ性電解水を供給する流路である。第二供給流路45には、開閉弁64が設置されている。
【0090】
第二バイパス流路46は、第二軟水化槽3bを迂回して流路33から流路32までを接続する流路である。つまり、第二バイパス流路46は、第二中和槽4bを流通したアルカリ性電解水を、第二軟水化槽3bをバイパスして第一中和槽4aの下流側に供給する流路である。第二バイパス流路46には、開閉弁66が設置されている。
【0091】
第二回収流路47は、流路31からアルカリ性電解水貯水槽21までを接続する流路である。つまり、第二回収流路47は、第一中和槽4aを通過したアルカリ性電解水をアルカリ性電解水貯水槽21へ回収する流路である。第二回収流路47には、開閉弁62が設置されている。
【0092】
送水流路49は、アルカリ性電解水貯水槽21から第二取水口16までを接続する流路である。送水流路49には、アルカリ性電解水循環ポンプ24が設けられている。つまり、送水流路49は、アルカリ性電解水循環ポンプ24を用いて、第二取水口16より電解槽9の陰極室18へ、アルカリ性電解水貯水槽21に貯められた酸性電解水を供給する流路である。送水流路49には、開閉弁72が設置されている。
【0093】
ここで、アルカリ性電解水循環流路44に水を循環させるための各流路の状態を説明する。
【0094】
流路34には、第二供給流路45の下流側、且つ、第二バイパス流路46の上流側に開閉弁54が設置されている。また、流路34には、取水口5の上流側、且つ、第二中和槽4bの下流側に開閉弁55が設置されている。開閉弁54及び開閉弁55を閉止して、開閉弁64を開放することで、第二中和槽4bの下流側に第二供給流路45が連通接続された状態となる。これにより、電解槽9の陰極室18からのアルカリ性電解水を第二中和槽4bに供給できるようになる。
【0095】
流路32には、第二バイパス流路46の下流側、且つ、第二軟水化槽3bの上流側に開閉弁53が設置されている。また、開閉弁52、開閉弁53及び開閉弁54を閉止して、開閉弁66を開放することで、第一中和槽4aの下流側、且つ、第二中和槽4bの上流側に、第二バイパス流路46が連通接続された状態となる。これにより、第二中和槽4bを流通したアルカリ性電解水を第一中和槽4aに供給できるようになる。
【0096】
また、開閉弁52を閉止して、開閉弁62を開放することで、第一中和槽4aの上流側に第二回収流路47が連通接続された状態となる。これにより、軟水化装置1では、第一中和槽4a及び第二中和槽4bを流通した水(陰イオンを含むアルカリ性電解水)をアルカリ性電解水貯水槽21へ回収することができるようになる。
【0097】
また、送水流路49には、アルカリ性電解水貯水槽21の下流側(アルカリ性電解水貯水槽21とアルカリ性電解水循環ポンプ24の間の位置)に開閉弁72が設置されている。開閉弁72を閉止することにより、アルカリ性電解水貯水槽21に水を貯留することができる。一方、開閉弁72を開放することにより、送水流路49へ水を供給することができる。
【0098】
また、開閉弁51及び開閉弁55を閉止することによって、酸性電解水循環流路40、アルカリ性電解水循環流路44への水の循環を開始することができる一方、開閉弁51及び開閉弁55を開放することによって、酸性電解水循環流路40、アルカリ性電解水循環流路44への水の循環を停止することができる。
【0099】
((陽極室電解水排水流路、陰極室電解水排水流路))
次に、図3を参照して、軟水化装置1の電極再生処理の際に形成される陽極室電解水排水流路90及び陰極室電解水排水流路92について説明する。図3は、軟水化装置1の電極再生処理時の各構成要素の状態を示す図である。
【0100】
陽極室電解水排水流路90は、図3(白矢印)に示すように、酸性電解水貯水槽19に貯留された水が、酸性電解水循環ポンプ23によって送出され、電解槽9、第一供給流路41、流路35を流通し、装置外に排出される流路である。
【0101】
流路35は、開閉弁63と電解槽9との間で第一供給流路41に接続される流路である。流路35の一端は、装置外へと開放されている。つまり、流路35は、陽極室14から送出された電解水を装置外へ排出する流路である。
【0102】
陰極室電解水排水流路92は、図3(黒矢印)に示すように、アルカリ性電解水貯水槽21に貯留された水が、アルカリ性電解水循環ポンプ24によって送出され、電解槽9、第二供給流路45、流路36を流通し、装置外に排出される流路である。
【0103】
流路36は、開閉弁64と電解槽9との間で第二供給流路45に接続される流路である。流路36の一端は、装置外へと開放されている。つまり、流路36は、陰極室18から送出された電解水を装置外へ排出する流路である。
【0104】
((開閉弁))
複数の開閉弁(開閉弁51~開閉弁55、開閉弁61~開閉弁66、開閉弁71、開閉弁72、開閉弁81、及び、開閉弁82)は、各流路にそれぞれ設けられ、各流路において「開放」された状態と、「閉止」された状態とに切り替えられる。また、複数の開閉弁(開閉弁51~開閉弁55、開閉弁61~開閉弁66、開閉弁71、開閉弁72、開閉弁81、及び、開閉弁82)はそれぞれ、制御部26と無線又は有線により通信可能に接続されている。
【0105】
以上が軟水化装置1の構成である。
【0106】
続いて、軟水化装置1の動作時について説明する。
【0107】
((軟水化処理、樹脂再生処理及び電極再生処理))
次に、図4を参照して、軟水化装置1の軟水化処理、樹脂再生処理、及び電極再生処理について説明する。図4は、軟水化装置1の動作時の状態を示す図である。
【0108】
軟水化処理、再生処理、及び排水処理では、制御部26は、図4に示すように、開閉弁51~開閉弁55、開閉弁61~開閉弁66、開閉弁71、開閉弁72、開閉弁81、開閉弁82、陽極11、陰極15、酸性電解水循環ポンプ23、アルカリ性電解水循環ポンプ24、及び検知部27を切り替えてそれぞれの流通状態及び動作状態となるように制御する。
【0109】
ここで、図4中の「ON」は、該当の開閉弁が「開放」した状態、酸性電解水循環ポンプ23及びアルカリ性電解水循環ポンプ24が動作している状態、並びに検知部27が動作している状態をそれぞれ示す。「ON(正電解)」は、陰極15に対して陽極11が高電位となるように通電している状態(正電解状態)のことである。「ON(逆電解)」は、陽極11に対して陰極15が高電位となるように通電している状態(逆電解状態)である。空欄は、該当の開閉弁が「閉止」した状態、陽極11及び陰極15が通電していない状態、酸性電解水循環ポンプ23及びアルカリ性電解水循環ポンプ24が停止している状態、並びに、検知部27が動作していない状態をそれぞれ示す。
【0110】
((軟水化処理))
軟水化装置1による軟水化処理時の動作について、図1図4の「軟水化処理時」の欄を参照して説明する。
【0111】
軟水化装置1では、図4に示すように、軟水化処理時において、開閉弁51~開閉弁54を開放した状態で、取水口5に設けた開閉弁55を開放する。これにより、外部から硬度成分を含む原水が流入する、流入した原水は、軟水化槽3と中和槽4とを流通するので、軟水化装置1は、取水口5から軟水化した水(中性の軟水)を取り出すことができる。このとき、開閉弁61~開閉弁66、開閉弁71、開閉弁72、開閉弁81、及び、開閉弁82は、いずれも閉止した状態になっている。また、陽極11、陰極15、酸性電解水循環ポンプ23、及びアルカリ性電解水循環ポンプ24、検知部27の動作も停止した状態である。
【0112】
具体的には、図1に示すように、軟水化処理では、市水の圧力によって、供給される原水は、流入口2から流路30を通って、第一軟水化槽3aに供給される。そして、第一軟水化槽3aに供給された原水は、第一軟水化槽3a内に備えられた第一弱酸性陽イオン交換樹脂7aを流通する。このとき、原水中の硬度成分である陽イオンは第一弱酸性陽イオン交換樹脂7aの作用により吸着され、水素イオンが放出される(イオン交換が行われる)。そして、原水から陽イオンが除去されることで原水が軟水化される。軟水化された水は、硬度成分と交換されて流出した水素イオンを多く含むため、酸性化してpHが低い酸性水(第一軟水)となっている。ここで、硬度成分として永久硬度成分(例えば、硫酸カルシウム等の硫酸塩もしくは塩化マグネシウム等の塩化物)を多く含有する水は、軟水化を行う際、一時硬度成分(例えば、炭酸カルシウム等の炭酸塩)を多く含有する水よりpHが低下しやすい。pHが低下した状態では軟水化が進行しにくくなるため、第一軟水化槽3aを流通した水を、第一中和槽4aへ通水させ、中和を行う。
【0113】
軟水化された水は、さらに流路31を流通し、第一中和槽4aへ流入する。第一中和槽4aでは、第一弱塩基性陰イオン交換樹脂8aの作用によって、軟水化された水に含まれる水素イオンが吸着される。つまり、第一軟水化槽3aにより軟水化された水から水素イオンが除去されるので、低下したpHが上昇して中和される。そのため、第一軟水化槽3aにおいて軟水化した水をそのまま第二軟水化槽3bで軟水化する場合と比較して、第二軟水化槽3bでの軟水化処理が進行しやすくなる。
【0114】
第一中和槽4aにより中和された水(中和第一軟水)は、さらに流路32を流通し、第二軟水化槽3bに流入する。第二軟水化槽3bでは、第二弱酸性陽イオン交換樹脂7bの作用により、硬度成分である陽イオンが吸着され、水素イオンが放出される。第二軟水化槽3bは、第一軟水化槽3aで除去できなかった硬度成分を、第二弱酸性陽イオン交換樹脂7bの有する水素イオンと交換する。つまり、第二軟水化槽3bに流入した水がさらに軟水化され、軟水(第二軟水)となる。
【0115】
第二軟水は、流路33を流通し、第二中和槽4bに流入する。第二中和槽4bでは、第二弱塩基性陰イオン交換樹脂8bの作用により、流入した第二軟水に含まれる水素イオンが吸着される。つまり、第二軟水から水素イオンが除去されるので、低下したpHが上昇し、生活用水として使用可能な中性の軟水(中和第二軟水)となる。中和第二軟水は、流路34を流通して取水口5から取り出すことができる。
【0116】
つまり、軟水化処理では、原水は、第一軟水化槽3a、第一中和槽4a、第二軟水化槽3b、及び第二中和槽4bの順に流通する。これにより、硬度成分を含む原水は、第一軟水化槽3aでの軟水化処理によって原水のpHの低下が進行する前に第一軟水化槽3aを流出し、第一中和槽4aにおいて中和され、第二軟水化槽3bで軟水化され、第二中和槽4bにおいて中和されるようになる。そのため、軟水化槽3及び中和槽4をそれぞれ単体で構成する場合と比較して、軟水化槽3内を流通する水のpHの低下すなわち酸性化を抑制できるので、硬度成分と軟水化槽3(特に第二軟水化槽3b)の弱酸性陽イオン交換樹脂が保持する水素イオンとの交換が起こりやすくなる。したがって、軟水化性能を向上させることが可能となる。
【0117】
そして、軟水化装置1では、制御部26で特定された時間帯になった場合もしくは軟水化処理が一定時間を超えた場合に樹脂再生処理を実行する。
【0118】
((樹脂再生処理))
次に、軟水化装置1の再生装置6による樹脂再生処理時の動作について、図2と、図4の「樹脂再生処理時」の欄を参照して順に説明する。
【0119】
軟水化装置1において、弱酸性陽イオン交換樹脂7を充填した軟水化槽3は、使用を続けると陽イオン交換能力が低下または消失する。すなわち、陽イオン交換樹脂の官能基である水素イオンすべてが、硬度成分であるカルシウムイオンあるいはマグネシウムイオンと交換された後は、イオン交換ができなくなる。このような状態になると、硬度成分が処理水中に含まれるようになる。このため、軟水化装置1では、再生装置6による軟水化槽3及び中和槽4の樹脂再生処理を行う必要が生じる。
【0120】
樹脂再生処理時において、開閉弁51~開閉弁55、開閉弁81、及び、開閉弁82を閉止して、開閉弁61~開閉弁66、開閉弁71、及び、開閉弁72を開放すると、図2に示すように、酸性電解水循環流路40及びアルカリ性電解水循環流路44がそれぞれ形成される。
【0121】
そして、酸性電解水循環ポンプ23及びアルカリ性電解水循環ポンプ24を動作させると、酸性電解水貯水槽19及びアルカリ性電解水貯水槽21に貯留した水が酸性電解水循環流路40及びアルカリ性電解水循環流路44のそれぞれを循環する。
【0122】
また、電解槽9は、陰極15に対して陽極11に高電位となるように通電する(正電解)。これにより、電気分解の際に、陽極11では水素イオンが生じ、陽極室14では酸性電解水が生成される。一方、陰極15では水酸化物イオンが生じ、陰極室18ではアルカリ性電解水が生成される。
【0123】
また、検知部27を動作させることにより、樹脂再生処理時の電解槽9の電圧を検知することが可能となる。
【0124】
電解槽9の陽極室14で生成した酸性電解水は、第一吐出口13から第一供給流路41を流通し第二軟水化槽3b内に送水され、内部の第二弱酸性陽イオン交換樹脂7bを流通する。そして、第二軟水化槽3bを流通した酸性電解水は、第一バイパス流路42を流通し、第一軟水化槽3a内に送水され、内部の第一弱酸性陽イオン交換樹脂7aを流通する。すなわち、酸性電解水を第一弱酸性陽イオン交換樹脂7a及び第二弱酸性陽イオン交換樹脂7bに通水することで、第一弱酸性陽イオン交換樹脂7a及び第二弱酸性陽イオン交換樹脂7bに吸着されている陽イオン(硬度成分)が、酸性電解水に含まれる水素イオンとイオン交換反応を起こす。これにより、第一弱酸性陽イオン交換樹脂7a及び第二弱酸性陽イオン交換樹脂7bが再生される。
【0125】
その後、第一弱酸性陽イオン交換樹脂7aを流通した酸性電解水は、陽イオンを含み、第一回収流路43へ流入する。すなわち、第一弱酸性陽イオン交換樹脂7a及び第二弱酸性陽イオン交換樹脂7bを流通した陽イオンを含む酸性電解水は、第一バイパス流路42及び第一回収流路43を介して酸性電解水貯水槽19に回収される。
【0126】
このように、酸性電解水循環流路40は、酸性電解水を、原水の流入口から最も下流に位置し、硬度成分の吸着量が少ない第二弱酸性陽イオン交換樹脂7bを有する第二軟水化槽3bの下流側から流通させ、上流に位置しており第二弱酸性陽イオン交換樹脂7bに比べて硬度成分がより多く吸着している第一弱酸性陽イオン交換樹脂7aを有する第一軟水化槽3aの下流側へと流入させるように構成される。つまり、酸性電解水循環流路40は、電解槽9から送出された酸性電解水を、第二軟水化槽3bに流通させた後、第一バイパス流路42によって第一軟水化槽3aへと送出し、第一軟水化槽3aを流通させ、酸性電解水貯水槽19に回収した後、第一取水口12から電解槽9へ流入させる流路である。これにより、再生処理の際には、第一軟水化槽3aと比べて硬度成分の吸着量が少ない第二軟水化槽3bに、電解槽9の陽極室14から吐出された酸性電解水が流入し、硬度成分を含んだ酸性電解水が第二軟水化槽3bから第一軟水化槽3aへと吐出される。第二軟水化槽3bの第二弱酸性陽イオン交換樹脂7bの再生では、第一軟水化槽3aと比較し、酸性電解水中の水素イオンの消費が少ないため、第一軟水化槽3aの再生と比べ、水素イオン濃度の低減を抑制できる。そのため、水素イオンを多く含有する酸性電解水が第一軟水化槽3aに流入し、硬度成分が第一軟水化槽3aにおいて再吸着するのを抑制することができる。したがって、再生処理効率の低下を抑制でき、再生時間が短縮できる。
【0127】
また、酸性電解水循環流路40は、電解槽9から送出された酸性電解水を、第一軟水化槽3a及び第二軟水化槽3bの下流側から第一軟水化槽3a及び第二軟水化槽3bに導入し、軟水化槽3の下流側に比べて硬度成分の吸着量が多い上流側から流出させる経路である。なお、下流側とは、軟水化処理時の流路における下流側を指す。
【0128】
一方、電解槽9の陰極室18で生成したアルカリ性電解水は、第二吐出口17から第二供給流路45、捕捉部25を通って第二中和槽4b内に送水され、内部の第二弱塩基性陰イオン交換樹脂8bを流通する。そして、第二中和槽4bを流通したアルカリ性電解水は、第二バイパス流路46を流通し、第一中和槽4a内に送水され、内部の第一弱塩基性陰イオン交換樹脂8aを流通する。すなわち、アルカリ性電解水を第一弱塩基性陰イオン交換樹脂8a及び第二弱塩基性陰イオン交換樹脂8bに通水させることで、第一弱塩基性陰イオン交換樹脂8a及び第二弱塩基性陰イオン交換樹脂8bに吸着されている陰イオンが、アルカリ性電解水に含まれる水酸化物イオンとイオン交換反応を起こす。これにより、第一弱塩基性陰イオン交換樹脂8a及び第二弱塩基性陰イオン交換樹脂8bが再生される。
【0129】
その後、第二弱塩基性陰イオン交換樹脂8bを流通したアルカリ性電解水は、陰イオンを含み、第二回収流路47へ流入する。すなわち、第一弱塩基性陰イオン交換樹脂8a及び第二弱塩基性陰イオン交換樹脂8bを流通した陰イオンを含むアルカリ性電解水は、第二バイパス流路46及び第二回収流路47を介してアルカリ性電解水貯水槽21内に回収される。
【0130】
このように、アルカリ性電解水循環流路44は、アルカリ性電解水を、原水の流入口から最も下流に位置し、陰イオンの吸着量が少ない第二弱塩基性陰イオン交換樹脂8bを有する第二中和槽4bの下流側から流通させ、上流に位置しており第二弱塩基性陰イオン交換樹脂8bに比べて陰イオンがより多く吸着している第一弱塩基性陰イオン交換樹脂8aを有する第一中和槽4aの下流側へと流入させるように構成した。つまり、アルカリ性電解水循環流路44は、電解槽9から送出されたアルカリ性電解水を、第二中和槽4bに流通させた後、第二バイパス流路46によって第一中和槽4aへと送出し、第一中和槽4aを流通させ、アルカリ性電解水貯水槽21に回収した後、第二取水口16から電解槽9へ流入させる流路である。これにより、再生処理の際には、第一中和槽4aと比べて陰イオンの吸着量が少ない第二中和槽4bに、アルカリ性電解水が流入し、陰イオンを含んだアルカリ性電解水が第二中和槽4bから第一中和槽4aへと吐出される。第二中和槽4bの第二弱塩基性陰イオン交換樹脂8bの再生では、第一中和槽4aと比較し、アルカリ性電解水中の水酸化物イオンの消費が少ないため、第一中和槽4aの再生と比べ、水酸化物イオン濃度の低減を抑制できる。そのため、水酸化物イオンを多く含有するアルカリ性電解水が第一中和槽4aに流入し、陰イオンが第一中和槽4aにおいて再吸着するのを抑制することができる。したがって、再生処理効率の低下を抑制でき、再生時間が短縮できる。
【0131】
また、アルカリ性電解水循環流路44は、電解槽9から送出されたアルカリ性電解水を、第一中和槽4a及び第二中和槽4bの下流側から第一中和槽4a及び第二中和槽4bに導入し、各中和槽の下流側に比べて陰イオンの吸着量が多い上流側から流出させる。これにより、より陰イオン成分の吸着量が少ない下流側からアルカリ性電解水が流入し、中和槽4の再生を行う。下流側の弱塩基性陰イオン交換樹脂8の再生では、上流側と比較し、アルカリ性電解水中の水酸化物イオンの消費が少ないため、アルカリ性電解水の水酸化物イオン濃度の低減を抑制できる。そのため、下流側からのアルカリ性電解水に含まれる陰イオンが上流側において再吸着するのを抑制することができる。したがって、中和槽4の再生処理効率の低下を抑制でき、再生時間が短縮できる。なお、下流側とは、軟水化処理時の流路における下流側を指す。
【0132】
樹脂再生処理の期間中、検知部27は、電解槽9の電圧を検知している。検知部27によって検知した電解槽9の電圧を第一基準値と比較し、電極再生処理への移行を判断する。なお、第一基準値は、所定の電圧値に設定される。所定の電圧値は、例えば消費電力の観点から設定してもよい。電圧値が低い場合には、消費電力を低減可能である。
【0133】
具体的には、検知部27によって検知した電解槽9の電圧が第一基準値未満の場合には、制御部26は、樹脂再生処理を継続する。なお、検知した電圧が第一基準値未満の場合、かつ、樹脂再生処理の開始(陽極11及び陰極15の動作開始時)から一定時間(例えば7時間)経過している場合には、制御部26は、樹脂再生処理を終了し、軟水化処理へ移行する。
【0134】
また、検知部27によって検知した電解槽9の電圧が第一基準値以上の場合には、制御部26は、樹脂再生処理を終了し電極再生処理へと移行する。
【0135】
((電極再生処理))
次に、軟水化装置1の再生装置6による電極再生処理時の動作について、図3図4の「電極再生処理時」の欄を参照して順に説明する。
【0136】
樹脂再生処理時において、電解槽9が動作していると、陰極15には水中の硬度成分(カルシウムイオンあるいはマグネシウムイオン)が固体(スケール)として析出する。陰極15へ析出した固体は不導体であるため、電解槽9の運転電圧を上昇させ、樹脂再生処理時の消費電力を上昇させてしまう。そこで、陰極15に析出した固体を除去する電極再生処理を行う必要がある。
【0137】
電極再生処理時において、開閉弁51~開閉弁55、及び、開閉弁61~開閉弁66を閉止して、開閉弁71、開閉弁72、開閉弁81、及び、開閉弁82を開放する。このようにすると、図3に示すように、陽極室電解水排水流路90及び陰極室電解水排水流路92が形成される。
【0138】
そして、酸性電解水循環ポンプ23及びアルカリ性電解水循環ポンプ24を動作させると、酸性電解水貯水槽19及びアルカリ性電解水貯水槽21に貯留した水が電解槽9に流通する。
【0139】
電極再生処理では、制御部26は、陽極11に対して陰極15が高電位となるように通電する(逆電解)。そのため、電解槽9は、電解槽内に流入した水を電気分解し、陽極室14ではアルカリ性電解水を生成し、陰極室18では酸性電解水を生成する。
【0140】
この際、陰極室18で生成された酸性電解水は、陰極15に析出した固体を溶解させることができる。したがって、電極再生処理を行うことで、検知部27によって検知される電解槽9の電圧が低下していく。
【0141】
電極再生処理の期間中、検知部27は、電解槽9の電圧を検知している。制御部26は、検知部27によって検知した電解槽9の電圧を第二基準値と比較し、電極再生処理の終了を判断する。なお、第二基準値は、陰極15に析出した固体の溶解度合いに応じて所定の電圧値に設定される。所定の電圧値とは、例えば、樹脂再生処理初期の電圧よりも高い値を第二基準値として設定してもよい。この場合は、陰極15に析出した固体の一定量を溶解することができる。また、樹脂再生処理初期の電圧を第二基準値として設定することがより好ましい。この場合は、陰極15に析出した固体の大部分を溶解させることができる。
【0142】
具体的には、検知部27によって検知した電解槽9の電圧が第二基準値以上の場合には、制御部26は、電極再生処理を継続する。
【0143】
一方、電解槽9の電圧が第二基準値未満の場合には、制御部26は、電極再生処理を終了し、樹脂再生処理または軟水化処理へと移行する。具体的には、樹脂再生処理の開始から一定時間(例えば7時間)経過していない段階で電極再生処理を開始した場合には、樹脂再生処理へ移行する。一方、電極再生処理の開始時に、既に樹脂再生処理の開始から一定時間(例えば7時間)経過していた場合には、軟水化処理へ移行すればよい。
【0144】
以上のようにして、軟水化装置1では、軟水化処理、樹脂再生処理、及び電極再生処理が繰り返し実行される。
【0145】
以上、本実施の形態1に係る軟水化装置1によれば、以下の効果を享受することができる。
【0146】
(1)軟水化装置1は、軟水化槽3と、中和槽4と、電解槽9と、検知部27と、制御部26と、を備える。軟水化槽3は、硬度成分を含む原水を弱酸性陽イオン交換樹脂7により軟水化する。中和槽4は、軟水化槽3を通過した軟水のpHを弱塩基性陰イオン交換樹脂8により中和する。電解槽9は、弱酸性陽イオン交換樹脂7を再生するための酸性電解水と、弱塩基性陰イオン交換樹脂8を再生するためのアルカリ性電解水とを生成する。検知部27は、電解槽9の電圧を検知する。制御部26は、酸性電解水を用いた弱酸性陽イオン交換樹脂7の再生またはアルカリ性電解水を用いた弱塩基性陰イオン交換樹脂8の再生の少なくとも一方を行う樹脂再生処理時に、検知部27が検知した電圧が第一基準値未満の場合には、樹脂再生処理を継続または軟水化処理に移行し、検知部27が検知した電圧が第一基準値以上の場合には、樹脂再生処理を停止して電極再生処理に移行し、電極再生処理時に、検知部27が検知した電圧が第二基準値以上の場合には、電極再生処理を継続し、検知部27が検知した電圧が第二基準値未満となった場合には、電極再生処理を終了し、樹脂再再生処理または軟水化処理に移行する。
【0147】
これにより、樹脂再生処理の際に、電解槽9内で発生したスケールによる第一基準値以上への電圧上昇を抑制することができる。したがって、また、電極再生処理の開始及び終了、樹脂再生処理または軟水化処理への移行を判断することが可能となる。つまり、電極再生処理のタイミングを検知し、適切なタイミングで転極運転を行うことが可能となる。したがって、過剰に電極再生処理を行うことがないため、電極の消耗を抑制し、長期間にわたり使用可能な軟水化装置1とすることができる。
【0148】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る軟水化装置1aは、樹脂再生処理の終了後、かつ、軟水化処理の開始前のタイミングにおいて、電解槽9の電圧を検知部27aにより検知し、電極再生処理実施の判断をする点で実施の形態1と異なる。これ以外の構成は実施の形態1に係る軟水化装置1と同様である。以下、実施の形態1で説明済みの内容は再度の説明を適宜省略し、実施の形態1と異なる点を主に説明する。
【0149】
((検知部))
検知部27aは、樹脂再生処理の終了後、かつ、軟水化処理の開始前における電解槽9の電圧を検知する。また、検知部27aは、電極再生処理時における電解槽9の電圧を検知する。また、検知部27aは、制御部26に接続されている。つまり、検知部27aで検知された電圧をもとに、制御部26では、軟水化処理、樹脂再生処理、及び電極再生処理の切り替えを判断することができる。
【0150】
((軟水化処理、樹脂再生処理、及び電極再生処理))
((軟水化処理))
軟水化装置1aでは、軟水化処理時において、開閉弁51~開閉弁54を開放した状態で、取水口5に設けた開閉弁55を開放する。これにより、外部から硬度成分を含む原水が流入する、流入した原水は、軟水化槽3と中和槽4とを流通するので、軟水化装置1aは、取水口5から軟水化した水(中性の軟水)を取り出すことができる。
【0151】
そして、軟水化装置1aでは、制御部26で特定された時間帯になった場合もしくは軟水化処理が一定時間を超えた場合に樹脂再生処理を実行する。
【0152】
((樹脂再生処理))
樹脂再生処理は、樹脂再生処理の開始(陽極11及び陰極15の動作開始時)から一定時間(例えば7時間)後に終了するようにすればよい。なお、一定時間は、設置地域の水質、原水の硬度、または樹脂の性質などにより、任意に設定することができる。
【0153】
樹脂再生処理の終了後、かつ、軟水化処理の開始前に、検知部27aは、電解槽9の電圧を検知する。検知部27aによって検知した電解槽9の電圧が第一基準値未満の場合には、制御部26は、電極再生処理に移行せず、軟水化処理に移行する。一方、樹脂再生処理が終了した時点で、検知部27aによって検知した電解槽9の電圧が第一基準値以上の場合には、制御部26は、電極再生処理及び軟水化処理を並列で行う。
【0154】
((電極再生処理及び軟水化処理))
軟水化装置1aの樹脂再生処理及び軟水化処理の動作について、図4の「軟水化処理時」及び「樹脂再生処理時」の欄を参照して順に説明する。
【0155】
制御部26によって樹脂再生処理から電極再生処理及び軟水化処理に移行する場合、開閉弁61~開閉弁66を閉止して、開閉弁51~開閉弁55、開閉弁71、開閉弁72、開閉弁81、及び開閉弁82を開放する。つまり、陽極室電解水排水流路90及び陰極室電解水排水流路92が形成される。
【0156】
そして、酸性電解水循環ポンプ23及びアルカリ性電解水循環ポンプ24を動作させると、酸性電解水貯水槽19及びアルカリ性電解水貯水槽21に貯留した水が電解槽9に流通する。さらに、電解槽9により電解されたアルカリ性電解水及び酸性電解水は、流路35及び流路36より排水される。
【0157】
また、電極再生処理では、制御部26は、陽極11に対して陰極15が高電位となるように通電する(逆電解)。これにより、陽極室14ではアルカリ性電解水を生成し、陰極室18では酸性電解水を生成することができる。
【0158】
この際、陰極室18で生成された酸性電解水は陰極15に析出した固体を溶解させることができる。したがって、電極再生処理を行うことで、検知部27aによって検知される電解槽9の電圧は低下していく。
【0159】
電極再生処理の期間中、検知部27aは、電解槽9の電圧を検知している。制御部26は、検知部27aによって検知した電解槽9の電圧を第二基準値と比較し、電極再生処理の終了を判断する。なお、第二基準値は、陰極15に析出した固体の溶解度合いに応じて所定の電圧値に設定される。所定の電圧値とは、例えば、樹脂再生処理初期の電圧よりも高い値を第二基準値として設定してもよい。この場合は、陰極15に析出した固体の一定量を溶解することができる。また、樹脂再生処理初期の電圧を第二基準値として設定することがより好ましい。この場合は、陰極15に析出した固体の大部分を溶解させることができる。
【0160】
具体的には、検知部27aによって検知した電解槽9の電圧が第二基準値以上の場合には、制御部26は、電極再生処理を継続する。
【0161】
一方、電解槽9の電圧が第二基準値未満の場合には、制御部26は、電極再生処理を終了する。電極再生処理の終了時には、開閉弁71、開閉弁72、開閉弁81、及び開閉弁82を閉止し、陽極11及び陰極15への通電を停止する。また、酸性電解水循環ポンプ23、アルカリ性電解水循環ポンプ24、及び、検知部27の運転を停止する。電極再生処理に要する時間よりも、軟水化処理に要する時間の方が長いため、軟水化処理については継続する。
【0162】
以上のようにして、軟水化装置1aでは、軟水化処理、樹脂再生処理、及び電極再生処理が繰り返し実行される。
【0163】
以上、本実施の形態2に係る軟水化装置1によれば、実施の形態1の効果に加え、以下の効果を享受することができる。
【0164】
(2)軟水化装置1aは、軟水化槽3と、中和槽4と、電解槽9と、検知部27と、制御部26と、を備える。軟水化槽3は、硬度成分を含む原水を弱酸性陽イオン交換樹脂7により軟水化する。中和槽4は、軟水化槽3を通過した軟水のpHを弱塩基性陰イオン交換樹脂8により中和する。電解槽9は、弱酸性陽イオン交換樹脂7を再生するための酸性電解水と、弱塩基性陰イオン交換樹脂8を再生するためのアルカリ性電解水とを生成する。検知部27aは、電解槽9の電圧を検知する。制御部26は、酸性電解水を用いた弱酸性陽イオン交換樹脂7の再生またはアルカリ性電解水を用いた弱塩基性陰イオン交換樹脂8の再生の少なくとも一方を行う樹脂再生処理の終了後かつ軟水化処理の開始前に、検知部27aが検知した電圧が第一基準値未満の場合には、電極再生処理に移行せず、軟水化処理に移行する。
【0165】
こうした構成によれば、軟水化処理と樹脂再生処理を1セットとして実施した後に、電極再生処理へ移行するか判断することが可能となり、電極再生処理が必要ない場合には、樹脂再生処理後に電極再生処理を行うことなく、軟水化処理に移行することができる。したがって、過剰な電極再生処理を行わないように制御できる。そのため、電極の消耗を抑制でき、長期間にわたって使用可能な軟水化装置1aとすることができる。また、樹脂再生処理が終了した時点で、検知部27aが電解槽9の電圧を検知するため、検知部27aは常時動作する必要がない。したがって、検知部27aの長寿命化が可能となる。
【0166】
(3)軟水化装置1では、検知部27が検知した電圧が第一基準値以上の場合には、電極再生処理及び軟水化処理を並列に実行する。
【0167】
こうした構成によれば、電極再生処理と軟水化処理を並行して同時に行うことができる。したがって、樹脂再生処理後に速やかに軟水化処理を行うことができるため、軟水化処理を実施可能な時間を長くすることができる。
【0168】
(4)軟水化装置1では、検知部27が検知した電圧が電極再生処理中に第二基準値未満となった場合に、電極再生処理を終了する。
【0169】
こうした構成によれば、軟水化処理と並行して行われていた電極再生処理の終了を判断することが可能となる。したがって、適切なタイミングで電極再生処理の終了を判断することができるため、電極の消耗を抑制でき、長期間にわたって使用可能な軟水化装置1aとすることができる。
【0170】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3に係る軟水化装置1bは、樹脂再生処理の終了後かつ軟水化処理の開始前のタイミングで電解槽9の電圧を検知部27により検知し、電解槽9の電圧が第一基準値以上であった場合に、電極再生処理と軟水化処理を並行して行わず、電極再生処理のみに移行する点で実施の形態2と異なる。これ以外の構成は実施の形態2に係る軟水化装置1aと同様である。以下、実施の形態2で説明済みの内容は再度の説明を適宜省略し、実施の形態2と異なる点を主に説明する。
【0171】
((軟水化処理、樹脂再生処理、及び電極再生処理))
((軟水化処理))
軟水化装置1bでは、軟水化処理時において、開閉弁51~開閉弁54を開放した状態で、取水口5に設けた開閉弁55を開放する。これにより、外部から硬度成分を含む原水が流入する、流入した原水は、軟水化槽3と中和槽4とを流通するので、軟水化装置1bは、取水口5から軟水化した水(中性の軟水)を取り出すことができる。
【0172】
そして、軟水化装置1bでは、制御部26で特定された時間帯になった場合もしくは軟水化処理が一定時間を超えた場合に樹脂再生処理を実行する。
【0173】
((樹脂再生処理))
樹脂再生処理は、樹脂再生処理の開始(陽極11及び陰極15の動作開始時)から一定時間(例えば7時間)後に終了するようにすればよい。なお、一定時間は、設置地域の水質、原水の硬度、または樹脂の性質などにより、任意に設定することができる。
【0174】
樹脂再生処理の終了後、かつ、軟水化処理の開始前に、検知部27aは、電解槽9の電圧を検知する。検知部27aによって検知された電解槽9の電圧が第一基準値未満の場合には、制御部26は、電極再生処理へ移行せず、軟水化処理に移行する。一方、樹脂再生処理が終了した時点で、検知部27aによって検知した電解槽9の電圧が第一基準値以上の場合には、制御部26により電極再生処理に移行する。
【0175】
((電極再生処理))
軟水化装置1bの樹脂再生処理及び軟水化処理の動作について、図4の「樹脂再生処理時」の欄を参照して順に説明する。
【0176】
制御部26によって樹脂再生処理から電極再生処理に移行する場合、開閉弁51~開閉弁55、及び、開閉弁61~開閉弁66を閉止して、開閉弁71、開閉弁72、開閉弁81、及び、開閉弁82を開放する。すると、陽極室電解水排水流路90及び陰極室電解水排水流路92が形成される。
【0177】
そして、酸性電解水循環ポンプ23、及びアルカリ性電解水循環ポンプ24を動作させると、酸性電解水貯水槽19、及び、アルカリ性電解水貯水槽21に貯留した水が電解槽9に流通し、さらに、流路35、及び、流路36より排水される。
【0178】
また、電極再生処理では、制御部26は、陽極11に対して陰極15が高電位となるように通電する(逆電解)。これにより、陽極室14ではアルカリ性電解水、陰極室18では酸性電解水を生成することができる。
【0179】
この際、陰極室18で生成された酸性電解水は陰極15に析出した固体を溶解させることができる。これにより、検知部27aによって検知される電解槽9の電圧は低下していく。
【0180】
電極再生処理の期間中、検知部27aは、電解槽9の電圧を検知している。制御部26は、検知部27aによって検知した電解槽9の電圧を第二基準値と比較し、電極再生処理の終了を判断する。なお、第二基準値は、陰極15に析出した固体の溶解度合いに応じて所定の電圧値に設定される。所定の電圧値とは、例えば、樹脂再生処理初期の電圧よりも高い値を第二基準値として設定してもよい。この場合は、陰極15に析出した固体の一定量を溶解することができる。また、樹脂再生処理初期の電圧を第二基準値として設定することがより好ましい。この場合は、陰極15に析出した固体の大部分を溶解させることができる。
【0181】
具体的には、検知部27aによって検知した電解槽9の電圧が第二基準値以上の場合には、制御部26は、電極再生処理を継続する。
【0182】
一方、電解槽9の電圧が第二基準値未満の場合には、制御部26は、電極再生処理を終了し、軟水化処理に移行する。電極再生処理の終了時には、開閉弁71、開閉弁72、開閉弁81、及び開閉弁82を閉止し、陽極11及び陰極15への通電を停止する。また、酸性電解水循環ポンプ23、アルカリ性電解水循環ポンプ24、及び検知部27aの運転を停止する。そして、開閉弁51~開閉弁55を開放し、軟水化処理に移行する。
【0183】
以上のようにして、軟水化装置1では、軟水化処理、樹脂再生処理、及び電極再生処理が繰り返し実行される。
【0184】
以上、本実施の形態3に係る軟水化装置1によれば、実施の形態2の(2)~(4)の効果に加え、以下の効果を享受することができる。
【0185】
(5)軟水化装置1では、検知部27が検知した電圧が第一基準値以上の場合に、電極再生処理に移行後、軟水化処理に移行する。
【0186】
こうした構成によれば、樹脂再生処理中に、電解槽9の電圧が第一基準値以上になった場合には、電極再生処理を行った後に軟水化処理に移行する。したがって、電極再生処理と軟水化処理とが同時に行われることはなく、軟水化装置1の制御を簡略化できる。
【0187】
以上、本発明に関して実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、それらの各構成要素あるいは各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されているところである。
【0188】
本実施の形態1に係る軟水化装置1では、軟水化槽3及び中和槽4は、それぞれ2個ずつであるとしたが、これに限られない。例えば、それぞれ1個ずつであってもよい。これにより、装置構成は簡便になる。また、例えば、それぞれ3個ずつであってもよいし、それ以上であってもよい。これにより、軟水化処理時に、軟水化と中和を交互に行う回数が増加するため、軟水化性能をさらに向上させることができる。
【0189】
また、本実施の形態1に係る軟水化装置1では、第一軟水化槽3a及び第二軟水化槽3bの流路長及び流路断面積はそれぞれ等しいものとしたが、この限りではない。例えば、流路長もしくは流路断面積が異なっていてもよいし、流路長及び流路断面積の双方が異なっていてもよい。このようにしても、実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0190】
また、本実施の形態1に係る軟水化装置1では、第一軟水化槽3aに充填されている第一弱酸性陽イオン交換樹脂7a及び第二軟水化槽3bに充填されている第二弱酸性陽イオン交換樹脂7bの体積を等しいものとしたが、この限りではない。例えば、第一弱酸性陽イオン交換樹脂7a及び第二弱酸性陽イオン交換樹脂7bの体積がそれぞれ異なっていてもよいし、異なる種類の弱酸性陽イオン交換樹脂7を用いてもよい。これにより、軟水化性能を調整することができ、目的に応じた軟水化性能をもつ軟水化装置1が得られる。
【0191】
また、本実施の形態1に係る軟水化装置1では、第一中和槽4a及び第二中和槽4bの流路長及び流路断面積はそれぞれ等しいものとしたが、この限りではない。例えば、流路長もしくは流路断面積が異なっていてもよいし、流路長及び流路断面積の双方が異なっていてもよいこのようにしても、実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0192】
また、本実施の形態1に係る軟水化装置1では、第一中和槽4aに充填されている第一弱塩基性陰イオン交換樹脂8a及び第二中和槽4bに充填されている第二弱塩基性陰イオン交換樹脂8bの体積を等しいものとしたが、この限りではない。例えば、第一弱塩基性陰イオン交換樹脂8a及び第二弱塩基性陰イオン交換樹脂8bの体積がそれぞれ異なっていてもよいし、異なる種類の弱塩基性陰イオン交換樹脂8を用いてもよい。但し、第二中和槽4bに充填されている第二弱塩基性陰イオン交換樹脂8bの体積は、第二軟水化槽3bから放出された水素イオンを吸着し、第二軟水化槽3bから流入した酸性の軟水を中性の軟水とするのに十分な体積であればよい。これにより、軟水化性能を調整することができ、目的に応じた軟水化性能をもつ軟水化装置1が得られる。
【0193】
また、本実施の形態1に係る軟水化装置1では、酸性電解水を第二軟水化槽3b及び第一軟水化槽3aの順に流通させたが、この限りではない。例えば、酸性電解水を第一軟水化槽3a及び第二軟水化槽3bの順に流通させるようにしてもよい。さらには、本実施の形態1に係る軟水化装置1では、酸性電解水を軟水化槽3の下流側から流通させたが、上流側から流通させてもよい。このようにしても、軟水化槽3の再生処理を行うことができる。
【0194】
また、本実施の形態1に係る軟水化装置1では、酸性電解水を第二軟水化槽3b及び第一軟水化槽3aの順に流通させたが、この限りではない。例えば、再生装置6と同等の機能を備える第一再生装置及び第二再生装置を用いてそれぞれ独立した流通経路で再生処理を行うようにしてもよい。これにより、第一軟水化槽3a及び第二軟水化槽3bの再生処理をそれぞれ独立して行うことができ、再生処理に要する時間が短縮できる。
【0195】
また、本実施の形態1に係る軟水化装置1では、アルカリ性電解水を第二中和槽4b、第一中和槽4aの順に流通させたが、この限りではない。例えば、アルカリ性電解水を第一中和槽4a及び第二中和槽4bの順に流通させるようにしてもよい。さらには、本実施の形態1に係る軟水化装置1では、酸性電解水を中和槽4の下流側から流通させたが、上流側から流通させてもよい。このようにしても、中和槽4の再生処理を行うことができる。
【0196】
また、本実施の形態1に係る軟水化装置1では、アルカリ性電解水を第二中和槽4b及び第一中和槽4aの順に流通させたが、この限りではない。例えば、再生装置6と同等の機能を備える第一再生装置及び第二再生装置を用いてそれぞれ独立した流通経路で再生処理を行うようにしてもよい。これにより、第一中和槽4a及び第二中和槽4bの再生処理をそれぞれ独立して行うことができ、再生処理に要する時間が短縮できる。
【0197】
また、本実施の形態1に係る軟水化装置1では、制御部26で特定された時間帯になった場合もしくは軟水化処理が一定時間を超えた場合に再生処理を実行するようにしたが、これに限られない。例えば、第二中和槽4bの下流側、且つ、開閉弁55の上流側に、イオン濃度検出部を設け、そのイオン濃度検出部によって、流路34を流通する軟水のイオン濃度(例えば、硬度成分濃度)を常に検出し、制御部26で特定された時間帯になった場合もしくは軟水化処理が一定時間を超えた場合だけでなく、イオン濃度が予め設定された基準値を超えた場合に再生処理を実行するようにしてもよい。これにより、第二中和槽4bを流通した後の水のイオン濃度に基づいて、再生処理の実行を判断することができる。そのため、軟水化槽3の弱酸性陽イオン交換樹脂7の状態をより正確に判断することができ、適切なタイミングでの弱酸性陽イオン交換樹脂7及び弱塩基性陰イオン交換樹脂8の再生を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0198】
本発明に係る軟水化装置は、使用場所設置型浄水装置(POU:Point of Use)あるいは建物入口設置型浄水装置(POE: Point of Entry)等に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0199】
1、1a、1b 軟水化装置
2 流入口
3 軟水化槽
3a 第一軟水化槽
3b 第二軟水化槽
4 中和槽
4a 第一中和槽
4b 第二中和槽
5 取水口
6 再生装置
7 弱酸性陽イオン交換樹脂
7a 第一弱酸性陽イオン交換樹脂
7b 第二弱酸性陽イオン交換樹脂
8 弱塩基性陰イオン交換樹脂
8a 第一弱塩基性陰イオン交換樹脂
8b 第二弱塩基性陰イオン交換樹脂
9 電解槽
10 隔膜
11 陽極
12 第一取水口
13 第一吐出口
14 陽極室
15 陰極
16 第二取水口
17 第二吐出口
18 陰極室
19 酸性電解水貯水槽
20 空気抜き弁
21 アルカリ性電解水貯水槽
22 空気抜き弁
23 酸性電解水循環ポンプ
24 アルカリ性電解水循環ポンプ
25 捕捉部
26 制御部
27 検知部
27a 検知部
30、31、32、33、34、35、36 流路
40 酸性電解水循環流路
41 第一供給流路
42 第一バイパス流路
43 第一回収流路
44 アルカリ性電解水循環流路
45 第二供給流路
46 第二バイパス流路
47 第二回収流路
48、49 送水流路
51、52、53、54、55、61、62、63、64、65、66、71、72、81、82 開閉弁
90 陽極室電解水排水流路
92 陰極室電解水排水流路
図1
図2
図3
図4