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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091801
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】蓄熱装置及び熱交換方法
(51)【国際特許分類】
   F28D 20/02 20060101AFI20230626BHJP
   F28F 23/02 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
F28D20/02 E
F28F23/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206591
(22)【出願日】2021-12-21
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100163463
【弁理士】
【氏名又は名称】西尾 光彦
(72)【発明者】
【氏名】竹口 伸介
(57)【要約】
【課題】蓄冷材の凝固又は蓄冷材の融解を所定時間内に完了させる観点から有利な蓄熱装置を提供する。
【解決手段】本開示の蓄熱装置1aは、蓄熱槽10と、供給口21と、回収口22と、複数の蓄冷ユニット30とを備えている。複数の蓄冷ユニット30は、熱媒液5を水平方向に通過させる。第一蓄冷ユニット30aは、複数の第一容器31aを備えている。第二蓄冷ユニット30bは、複数の第二容器32aを備えている。複数の第二容器32aが占める体積の総和を複数の第二容器32aの表面積の総和で除した値は、複数の第一容器31aが占める体積の総和を複数の第一容器31aの表面積の総和で除した値より小さい。第二蓄冷ユニット30bは、複数の蓄冷ユニット30における熱媒液5の流れの下流域35dにおいて、複数の蓄冷ユニット30の上端部35p及び下端部35qに配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒液を貯留する蓄熱槽と、
前記蓄熱槽の内部に配置され、前記熱媒液を前記蓄熱槽の内部に導く供給口と、
前記蓄熱槽の内部に配置され、前記熱媒液を前記蓄熱槽の外部に向かって導く回収口と、
前記蓄熱槽の内部において前記供給口と前記回収口との間に配置され、第一蓄冷ユニット及び第二蓄冷ユニットを含む複数の蓄冷ユニットと、を備え、
前記複数の蓄冷ユニットは、前記供給口から前記回収口に向かって前記熱媒液を水平方向に通過させ、
前記第一蓄冷ユニットは、液体と固体との間で相変化して冷熱を蓄えて放出する第一蓄冷材が収容され、互いに平行に配置された複数の第一容器を備え、
前記第二蓄冷ユニットは、液体と固体との間で相変化して冷熱を蓄えて放出する第二蓄冷材が収容され、互いに平行に配置された複数の第二容器を備え、
前記第二蓄冷ユニットにおいて前記複数の第二容器が占める体積の総和を前記複数の第二容器の表面積の総和で除した値は、前記第一蓄冷ユニットにおいて前記複数の第一容器が占める体積の総和を前記複数の第一容器の表面積の総和で除した値より小さく、
前記第二蓄冷ユニットは、前記複数の蓄冷ユニットにおける前記熱媒液の流れの下流域において、鉛直方向における前記複数の蓄冷ユニットの上端部、前記鉛直方向における前記複数の蓄冷ユニットの下端部、又は前記上端部及び前記下端部の両方に配置されている、
蓄熱装置。
【請求項2】
前記第一蓄冷ユニットは、前記下流域において、前記鉛直方向における前記上端部と前記下端部との間に配置されている、請求項1に記載の蓄熱装置。
【請求項3】
熱媒液を貯留する蓄熱槽と、
前記蓄熱槽の内部に配置され、前記熱媒液を前記蓄熱槽の内部に導く供給口と、
前記蓄熱槽の内部に配置され、前記熱媒液を前記蓄熱槽の外部に向かって導く回収口と、
前記蓄熱槽の内部において前記供給口と前記回収口との間に配置され、第一蓄冷ユニット及び第二蓄冷ユニットを含む複数の蓄冷ユニットと、を備え、
前記複数の蓄冷ユニットは、前記供給口から前記回収口に向かって前記熱媒液を水平方向に通過させ、
前記第一蓄冷ユニットは、液体と固体との間で相変化して冷熱を蓄えて放出する第一蓄冷材が収容され、互いに平行に配置された複数の第一容器を備え、
前記第二蓄冷ユニットは、液体と固体との間で相変化して冷熱を蓄えて放出する第二蓄冷材が収容され、互いに平行に配置された複数の第二容器を備え、
前記第二蓄冷ユニットは、下記(Ia)及び(Ib)の条件、又は、下記(IIa)及び(IIb)の条件を満たす、
蓄熱装置。
(Ia)前記第二蓄冷材は、前記第二蓄冷材に冷熱を蓄えるときの前記供給口における前記熱媒液の温度より高く、かつ、前記第一蓄冷材の融点より高い融点を有する。
(Ib)前記第二蓄冷ユニットは、前記複数の蓄冷ユニットにおける前記熱媒液の流れの下流域において、鉛直方向における前記複数の蓄冷ユニットの上端部に配置されている。
(IIa)前記第二蓄冷材は、前記第二蓄冷材から冷熱を放出するときの前記供給口における前記熱媒液の温度より低く、かつ、前記第一蓄冷材の融点より低い融点を有する。
(IIb)前記第二蓄冷ユニットは、前記下流域において、前記鉛直方向における前記複数の蓄冷ユニットの下端部に配置されている。
【請求項4】
前記第二蓄冷ユニットは、前記(Ia)及び(Ib)の条件を満たす、請求項3に記載の蓄熱装置。
【請求項5】
前記第二蓄冷ユニットは、前記(IIa)及び(IIb)の条件を満たす、請求項3に記載の蓄熱装置。
【請求項6】
前記第一蓄冷ユニットは、前記下流域において、前記水平方向に垂直な方向における前記上端部と前記下端部との間に配置されている、請求項3から5のいずれか1項に記載の蓄熱装置。
【請求項7】
第一蓄冷ユニット及び第二蓄冷ユニットを含む複数の蓄冷ユニットにおいて水平方向に沿って熱媒液を通過させて前記複数の蓄冷ユニットに冷熱を蓄える又は前記複数の蓄冷ユニットに蓄えられた冷熱を放出させることを含み、
前記第一蓄冷ユニットは、液体と固体との間で相変化して冷熱を蓄えて放出する第一蓄冷材が収容され、互いに平行に配置された複数の第一容器を備え、
前記第二蓄冷ユニットは、液体と固体との間で相変化して冷熱を蓄えて放出する第二蓄冷材が収容され、互いに平行に配置された複数の第二容器を備え、
前記第二蓄冷ユニットにおいて前記複数の第二容器が占める体積の総和を前記複数の第二容器の表面積の総和で除した値は、前記第一蓄冷ユニットにおいて前記複数の第一容器が占める体積の総和を前記複数の第一容器の表面積の総和で除した値より小さく、
前記第二蓄冷ユニットは、前記複数の蓄冷ユニットにおける前記熱媒液の流れの下流域において、鉛直方向における前記複数の蓄冷ユニットの上端部、前記鉛直方向における前記複数の蓄冷ユニットの下端部、又は前記上端部及び前記下端部の両方に配置されている、
熱交換方法。
【請求項8】
第一蓄冷ユニット及び第二蓄冷ユニットを含む複数の蓄冷ユニットにおいて供給口から回収口に向かって水平方向に沿って熱媒液を通過させて前記複数の蓄冷ユニットに冷熱を蓄える又は前記複数の蓄冷ユニットに蓄えられた冷熱を放出させることを含み、
前記第一蓄冷ユニットは、液体と固体との間で相変化して冷熱を蓄えて放出する第一蓄冷材が収容され、互いに平行に配置された複数の第一容器を備え、
前記第二蓄冷ユニットは、液体と固体との間で相変化して冷熱を蓄えて放出する第二蓄冷材が収容され、互いに平行に配置された複数の第二容器を備え、
前記第二蓄冷ユニットは、下記(Ia)及び(Ib)の条件、又は、下記(IIa)及び(IIb)の条件を満たす、
熱交換方法。
(Ia)前記第二蓄冷材は、前記第二蓄冷材に冷熱を蓄えるときの前記供給口における前記熱媒液の温度より高く、かつ、前記第一蓄冷材の融点より高い融点を有する。
(Ib)前記第二蓄冷ユニットは、前記複数の蓄冷ユニットにおける前記熱媒液の流れの下流域において、鉛直方向における前記複数の蓄冷ユニットの上端部に配置されている。
(IIa)前記第二蓄冷材は、前記第二蓄冷材から冷熱を放出するときの前記供給口における前記熱媒液の温度より低く、かつ、前記第一蓄冷材の融点より低い融点を有する。
(IIb)前記第二蓄冷ユニットは、前記下流域において、前記鉛直方向における前記複数の蓄冷ユニットの下端部に配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄熱装置及び熱交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、潜熱蓄熱材が用いられた蓄熱装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、蓄熱槽の内部に潜熱蓄熱材が封入された多数の容器が配設された蓄熱装置が記載されている。この蓄熱装置は、蓄熱槽の内部を流れる流体と潜熱蓄熱材とを熱交換させる。容器の内部には、融点の異なる潜熱蓄熱材が封入されている。これらの容器は、蓄熱槽の内部における流体の流れ方向に潜熱蓄熱材の融点に基づいて配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭58-33097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、蓄冷材の凝固又は蓄冷材の融解を所定時間内に完了させる観点から有利な蓄熱装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示における蓄熱装置は、
熱媒液を貯留する蓄熱槽と、
前記蓄熱槽の内部に配置され、前記熱媒液を前記蓄熱槽の内部に導く供給口と、
前記蓄熱槽の内部に配置され、前記熱媒液を前記蓄熱槽の外部に向かって導く回収口と、
前記蓄熱槽の内部において前記供給口と前記回収口との間に配置され、第一蓄冷ユニット及び第二蓄冷ユニットを含む複数の蓄冷ユニットと、を備え、
前記複数の蓄冷ユニットは、前記供給口から前記回収口に向かって前記熱媒液を水平方向に通過させ、
前記第一蓄冷ユニットは、液体と固体との間で相変化して冷熱を蓄えて放出する第一蓄冷材が収容され、互いに平行に配置された複数の第一容器を備え、
前記第二蓄冷ユニットは、液体と固体との間で相変化して冷熱を蓄えて放出する第二蓄冷材が収容され、互いに平行に配置された複数の第二容器を備え、
前記第二蓄冷ユニットにおいて前記複数の第二容器が占める体積の総和を前記複数の第二容器の表面積の総和で除した値は、前記第一蓄冷ユニットにおいて前記複数の第一容器が占める体積の総和を前記複数の第一容器の表面積の総和で除した値より小さく、
前記第二蓄冷ユニットは、前記複数の蓄冷ユニットにおける前記熱媒液の流れの下流域において、鉛直方向における前記複数の蓄冷ユニットの上端部、前記鉛直方向における前記複数の蓄冷ユニットの下端部、又は前記上端部及び前記下端部の両方に配置されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示の蓄熱装置において、複数の蓄冷ユニットに冷熱を蓄えるときに下流域の上端部に導かれる熱媒液の温度が高くても、第二蓄冷材と熱媒液との間で所定時間内に交換される熱量が大きくなりやすい。加えて、複数の蓄冷ユニットから冷熱を放出するときに下流域の下端部に導かれる熱媒液の温度が低くても、第二蓄冷材と熱媒液との間で所定時間内に交換される熱量が大きくなりやすい。そのため、本開示の蓄熱装置は、蓄冷材の凝固又は蓄冷材の融解を所定時間内に完了させる観点から有利である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1における蓄熱装置の構成図
図2A図1に示す蓄熱装置における第一蓄冷ユニットの内部構造を示す斜視図
図2B図1に示す蓄熱装置における第一容器を示す斜視図
図3A図1に示す蓄熱装置における第二蓄冷ユニットの内部構造を示す斜視図
図3B図1に示す蓄熱装置における第二容器を示す斜視図
図4】実施の形態2における蓄熱装置の構成図
図5A図4に示す蓄熱装置における第二蓄冷ユニットの内部構造を示す斜視図
図5B図4に示す蓄熱装置における第二容器を示す斜視図
図6】実施の形態2における蓄熱装置の熱媒液の温度と蓄冷材の融点との関係を示すグラフ
図7】実施の形態3における蓄熱装置の構成図
図8A図7に示す蓄熱装置における第二蓄冷ユニットの内部構造を示す斜視図
図8B図7に示す蓄熱装置における第二容器を示す斜視図
図9】実施の形態3における蓄熱装置の熱媒液の温度と蓄冷材の融点との関係を示すグラフ
図10】実施の形態4における蓄熱装置の構成図
図11A図10に示す蓄熱装置における第一蓄冷ユニットの内部構造を示す斜視図
図11B図10に示す蓄熱装置における第一容器を示す斜視図
図12A図10に示す蓄熱装置における第二蓄冷ユニットの内部構造を示す斜視図
図12B図10に示す蓄熱装置における第二容器を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本開示の基礎となった知見)
本発明者らが本開示を想到するに至った当時、特許文献1に記載の通り、潜熱蓄熱材が封入された多数の容器を蓄熱槽の内部における流体の流れ方向に潜熱蓄熱材の融点に基づいて配設する技術があった。この技術によれば、蓄熱材からの熱の取得又は蓄熱材への蓄熱を短時間で行なうことができる。
【0010】
しかしながら、鉛直方向に複数の蓄冷ユニットを設置し、複数の蓄冷ユニットにおいて熱媒液を水平方向に通過させる場合、蓄冷材の凝固又は蓄冷材の融解の完了に要する時間が長くなりやすいという課題が新たに見出された。蓄冷材を凝固させるときには、複数の蓄冷ユニットにおける熱媒液の流れの上流域及び中流域において蓄冷材との熱交換により温度上昇した熱媒液は、下流域において鉛直方向の上端部に導かれやすい。このため、この上端部において蓄冷材の凝固の完了に要する時間が長くなりやすい。蓄冷材を融解させるときには、複数の蓄冷ユニットにおける熱媒液の流れの上流域及び中流域において蓄冷材との熱交換により温度低下した熱媒液は、下流域において鉛直方向の下端部に導かれやすい。このため、この下端部において蓄冷材の融解の完了に要する時間が長くなりやすい。本発明者は、このような課題を新たに見出し、その課題を解決するために本開示の主題を構成するに至った。
【0011】
そこで、本開示は、蓄冷材の凝固又は蓄冷材の融解を所定時間内に完了させる観点から有利な蓄熱装置を提供する。
【0012】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細な説明、又は、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が必要以上に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0013】
(実施の形態1)
以下、図1図2A図2B図3A、及び図3Bを用いて、実施の形態1を説明する。
【0014】
[1-1.構成]
図1に示す通り、蓄熱装置1aは、蓄熱槽10と、供給口21と、回収口22と、複数の蓄冷ユニット30とを備えている。蓄熱槽10は、熱媒液5を貯留する。供給口21は、蓄熱槽10の内部に配置されている。熱媒液5は、供給口21を通って蓄熱槽10の内部に導かれる。回収口22は、蓄熱槽10の内部に配置されている。熱媒液5は、回収口22を通って蓄熱槽10の外部に向かって導かれる。複数の蓄冷ユニット30は、蓄熱槽10の内部において供給口21と回収口22との間に配置されている。複数の蓄冷ユニット30によって、ユニット群35が形成されている。図1に示す通り、複数の蓄冷ユニット30は、第一蓄冷ユニット30a及び第二蓄冷ユニット30bを含む。複数の蓄冷ユニット30は、供給口21から回収口22に向かって熱媒液5を水平方向に通過させる。蓄熱槽10において、複数の蓄冷ユニット30は、蓄熱槽10に貯留された熱媒液5に浸漬されている。熱媒液5は、特定の液体に限定されない。熱媒液5は、例えば水である。熱媒液5の融点は特定の値に限定されない。熱媒液5の融点は、例えば0℃である。
【0015】
図1に示す通り、蓄熱装置1aは、例えば、冷却装置50と、ポンプ61と、吸込口71と、吐出口72と、ポンプ81と、冷却対象90とを備えている。
【0016】
図2Aに示す通り、第一蓄冷ユニット30aは、複数の第一容器31aを備えている。第一容器31aには、液体と固体との間で相変化して冷熱を蓄えて放出する第一蓄冷材が収容されている。第一蓄冷ユニット30aにおいて、複数の第一容器31aは互いに平行に配置されている。複数の第一容器31aは、例えば、上記の水平方向と交差する方向に沿って配置されている。
【0017】
第一容器31aの形状は特定の形状に限定されない。図2Bに示す通り、第一容器31aは、例えば平板状である。第一容器31aは、例えば、その表面に凹凸を有していてもよい。この場合、複数の第一容器31aの主面は、熱媒液5の通過に関する上記の水平方向と交差する方向を向いている。第一容器31aの主面は、鉛直方向に沿って延びていてもよく、水平方向に沿って延びていてもよい。
【0018】
図2Aに示す通り、第一蓄冷ユニット30aは、例えば、箱31bと、一対の蓋31cとを備えている。箱31bは筒状であり、鉛直方向における両端が開口している。箱31bの鉛直方向における両端の開口は、一対の蓋31cによって覆われている。複数の第一容器31aは、箱31bの内部において所定の間隔で配置されている。これにより、箱31bの内部に熱媒液5の流路が形成されている。加えて、箱31bは、上記の水平方向に配置された一対の側面に形成された開口部を有する。このため、熱媒液5は、上記の水平方向に沿って第一蓄冷ユニット30aを通過でき、熱媒液5と第一蓄冷材との間で熱交換がなされる。箱31bの他の側面に開口部が形成されていてもよいし、一対の蓋31cの少なくとも1つに開口部が形成されていてもよい。
【0019】
図3Aに示す通り、第二蓄冷ユニット30bは、複数の第二容器32aを備えている。第二容器32aには、液体と固体との間で相変化して冷熱を蓄えて放出する第二蓄冷材が収容されている。第二蓄冷ユニット30bにおいて、複数の第二容器32aは互いに平行に配置されている。複数の第二容器32aは、例えば、上記の水平方向と交差する方向に沿って配置されている。
【0020】
第二容器32aの形状は特定の形状に限定されない。図3Bに示す通り、第二容器32aは、例えば平板状である。第二容器32aは、例えば、その表面に凹凸を有していてもよい。
【0021】
第二蓄冷ユニット30bは、例えば、箱31bと、一対の蓋31cとを備えている。第二蓄冷ユニット30bにおける箱31b及び一対の蓋31cは、例えば、第一蓄冷ユニット30aにおける箱31b及び一対の蓋31cと同様に構成されている。複数の第二容器32aは、箱31bの内部において所定の間隔で配置されている。これにより、箱31bの内部に熱媒液5の流路が形成されている。熱媒液5は、上記の水平方向に沿って第二蓄冷ユニット30bを通過でき、熱媒液5と第二蓄冷材との間で熱交換がなされる。
【0022】
蓄熱装置1aにおいて、第二蓄冷ユニット30bにおける値V2は、第一蓄冷ユニット30aにおける値V1より小さい。値V2は、第二蓄冷ユニット30bにおいて複数の第二容器32aが占める体積の総和C2を複数の第二容器32aの表面積の総和で除した値である。値V1は、第一蓄冷ユニット30aにおいて複数の第一容器31aが占める体積の総和C1を複数の第一容器31aの表面積の総和で除した値である。
【0023】
値V1に対する値V2の比V2/V1は特定の値に限定されない。V2/V1は、例えば0.5以上0.8以下である。この値は、蓄冷ユニット30の数、蓄冷運転又は放冷運転において供給口21から吐出される熱媒液5の温度、蓄冷運転又は放冷運転に許容される時間、容器の形状等に応じて、適宜調整されうる。
【0024】
蓄熱装置1aにおいて、第二容器32aの平均厚みは、例えば、第一容器31aの平均厚みよりも小さい。第一容器31a及び第二容器32aの平均厚みは、例えば、第一容器31a又は第二容器32aの体積を、厚み方向に沿って第一容器31a又は第二容器32aを平面視したときの面積で除することによって決定されうる。
【0025】
蓄熱装置1aにおいて、総和C1に対する総和C2の比C2/C1は特定の値に限定されない。C2/C1は、例えば0.5以上であり、0.6以上であってもよく、0.7以上であってもよく、0.8以上であってもよく、0.9以上であってもよく、1であってもよい。C2/C1は、例えば、2以下であり、1.8以下であってもよく、1.5以下であってもよく、1.2以下であってもよい。
【0026】
図1に示す通り、第二蓄冷ユニット30bは、例えば、複数の蓄冷ユニット30における熱媒液5の流れの下流域35dにおいて、鉛直方向における複数の蓄冷ユニット30の上端部35p及び下端部35qに配置されている。
【0027】
複数の蓄冷ユニット30における上端部35p及び下端部35q以外の場所には、例えば、第一蓄冷ユニット30aが配置されている。
【0028】
図1に示す通り、上端部35p及び下端部35qは、鉛直方向において離れている。第一蓄冷ユニット30aは、例えば、下流域35dにおいて、鉛直方向における上端部35pと下端部35qとの間に配置されている。
【0029】
第一蓄冷材及び第二蓄冷材のそれぞれは、特定の蓄冷材に限定されない。第一蓄冷材及び第二蓄冷材のそれぞれは、例えば、クラスレートハイドレートを形成可能な物質を含む。第一蓄冷材及び第二蓄冷材の組成は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。第一蓄冷材及び第二蓄冷材のそれぞれの融点は、特定の値に限定されない。第一蓄冷材及び第二蓄冷材のそれぞれの融点は、例えば7℃である。
【0030】
第一容器31a及び第二容器32aの材料は特定の材料に限定されない。第一容器31a及び第二容器32aの材料は、例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン等の樹脂材料である。
【0031】
図1に示す通り、蓄熱装置1aは、蓄熱槽10と冷却装置50との間で熱媒液5を循環させる第一循環路25を備えている。ポンプ61は、第一循環路25に配置されている。ポンプ61の作動により、蓄熱槽10に貯留された熱媒液5は、回収口22から取り込まれ、冷却装置50の入口52を通過して冷却装置50に導かれる。その後、熱媒液5は、冷却装置50の出口53及び供給口21を通過して蓄熱槽10の内部に供給される。
【0032】
蓄熱装置1aは、蓄熱槽10と冷却対象90との間で熱媒液5を循環させる第二循環路75を備えている。ポンプ81は、第二循環路75に配置されている。吸込口71及び吐出口72は、蓄熱槽10の内部に配置されている。吸込口71は、吐出口72よりも低いい位置に配置されている。ポンプ81の作動により、蓄熱槽10に貯留された熱媒液5は、吸込口71から取り込まれ、冷却対象90に導かれる。その後、熱媒液5は、冷却対象90を通過して吐出口72から蓄熱槽10の内部に戻される。
【0033】
冷却対象90の温度は、所定の目標温度に近づくように調整される。目標温度は、特定の値に限定されない。目標温度は、例えば、第一蓄冷材及び第二蓄冷材のそれぞれの融点より高い。目標温度は、例えば12℃である。冷却対象90は、例えば、所定の製造プロセスで目標温度に調整されるべき機器でありうる。
【0034】
[1-2.動作]
以上のように構成された蓄熱装置1aについて、その動作の一例を以下説明する。最初に、複数の蓄冷ユニット30に冷熱を蓄える蓄冷運転と、冷却対象90の冷却運転とを同時に行うときの蓄熱装置1aの動作を説明する。
【0035】
ポンプ61の作動により、蓄熱槽10に貯留された熱媒液5は、回収口22から取り込まれ、冷却装置50を通過する。これにより、冷却装置50において、熱媒液5は、その融点より高く、かつ、第一蓄冷材の融点未満の温度に冷却される。その後、熱媒液5は、供給口21から吐出され蓄熱槽10に供給される。蓄熱槽10に供給された熱媒液5は、蓄熱槽10の内部において回収口22に向かって複数の蓄冷ユニット30を水平方向に通過する。熱媒液5は、複数の蓄冷ユニット30における、この水平方向において供給口21に最も近い第一蓄冷ユニット30aに最初に導かれる。熱媒液5は、この第一蓄冷ユニット30aの箱31bの一対の側面の一方に形成された開口部を通過して箱31bの内部に入り、箱31bの中に配置された複数の第一容器31a同士の隙間を流れる。その後、熱媒液5は、箱31bの一対の側面の他方に形成された開口部を通過して、下流側に配置された別の第一蓄冷ユニット30aに導かれる。これにより、熱媒液5と第一蓄冷材との間で熱交換が行われる。その結果、複数の蓄冷ユニット30における熱媒液5の流れの上流域に配置された蓄冷ユニット30の蓄冷材から熱媒液5の流れ方向に沿って順番に各蓄冷ユニット30の蓄冷材の温度が蓄冷材の融点未満の温度に低下する。これにより、複数の蓄冷ユニット30において蓄冷材が液体から固体に相変化し、冷熱が蓄えられる。熱媒液5は、複数の蓄冷ユニット30における熱媒液5の流れの上流域及び中流域において、第一蓄冷材等の蓄冷材と熱交換する。これにより、熱媒液5は、蓄冷材の凝固に伴い発生する凝固熱を受け取り、熱媒液5の温度が上昇する。その結果、下流域35dでは、熱媒液5に鉛直方向において所定の温度分布が生じ、下流域35dの上端部35pに導かれる熱媒液5の温度は、下流域35dの他の部分に導かれる熱媒液5の温度より高くなりやすい。
【0036】
ポンプ81の作動により、蓄熱槽10に貯留された熱媒液5は、吸込口71から取り込まれ、冷却対象90に供給される。熱媒液5が冷却対象90を冷却することによって、熱媒液5の温度が上昇する。温度が上昇した熱媒液5は、吐出口72を通過して蓄熱槽10の内部に戻される。蓄熱槽10において、複数の蓄冷ユニット30を通過して蓄冷に供された熱媒液5と、冷却対象90を冷却することによって温度が上昇した熱媒液5とが混ざる。これにより、回収口22付近の熱媒液5の温度は、複数の蓄冷ユニット30を通過した直後の熱媒液5の温度よりも高くなる。このため、複数の蓄冷ユニット30を通過した直後の熱媒液5の温度よりも高い温度を有する熱媒液5が冷却装置50に送られる。一方、冷却対象90に送られる熱媒液5の温度は、冷却対象90を冷却することによって温度が上昇した熱媒液5の温度よりも低くなる。このため、冷却対象90に送られる熱媒液5は大きな密度を有するので蓄熱槽10の内部において下降し、吐出口72よりも低い位置にある吸込口71の付近に至り、吸込口71から再び取り込まれ、冷却対象90に送られる。
【0037】
次に、複数の蓄冷ユニット30から冷熱を放出する放冷運転と、冷却対象90の冷却運転とを同時に行うときの蓄熱装置1aの動作を説明する。
【0038】
ポンプ61の作動により、蓄熱槽10に貯留された熱媒液5は、回収口22から取り込まれ、冷却装置50を通過する。放冷運転において、熱媒液5は、冷却装置50によって第一蓄冷材の融点以上の温度に調整される。その後、この冷媒液5は、供給口21から吐出され蓄熱槽10に供給される。蓄熱槽10に供給された熱媒液5は、蓄熱槽10の内部において回収口22に向かって複数の蓄冷ユニット30を水平方向に通過する。熱媒液5は、複数の蓄冷ユニット30における、この水平方向において供給口21に最も近い第一蓄冷ユニット30aに最初に導かれる。熱媒液5は、この第一蓄冷ユニット30aの箱31bの一対の側面の一方に形成された開口部を通過して箱31bの内部に入り、箱31bの中に配置された複数の第一容器31a同士の隙間を流れる。その後、熱媒液5は、箱31bの一対の側面の他方に形成された開口部を通過して、下流側に配置された別の第一蓄冷ユニット30aに導かれる。これにより、熱媒液5と第一蓄冷材との間で熱交換が行われる。その結果、複数の蓄冷ユニット30における熱媒液5の流れの上流域に配置された蓄冷ユニット30の蓄冷材から熱媒液5の流れ方向に沿って順番に各蓄冷ユニット30の蓄冷材の温度が蓄冷材の融点以上の温度に上昇する。これにより、複数の蓄冷ユニット30において蓄冷材が固体から液体に相変化し、冷熱が放出される。熱媒液5は、複数の蓄冷ユニット30における熱媒液5の流れの上流域及び中流域において、第一蓄冷材等の蓄冷材と熱交換する。これにより、熱媒液5は、蓄冷材の融解に必要な融解熱を蓄冷材に与えるので、熱媒液5の温度が低下する。その結果、下流域35dでは、熱媒液5に鉛直方向において所定の温度分布が生じ、下流域35dの下端部35qに導かれる熱媒液5の温度は、下流域35dの他の部分に導かれる熱媒液5の温度より低くなりやすい。
【0039】
蓄冷運転と同様に、熱媒液5が冷却対象90を冷却することによって、熱媒液5の温度が上昇する。温度が上昇した熱媒液5は、吐出口72を通過して蓄熱槽10の内部に戻される。蓄熱槽10において、複数の蓄冷ユニット30を通過して放冷に供された熱媒液5と、冷却対象90を冷却することによって温度が上昇した熱媒液5とが混ざる。これにより、回収口22付近の熱媒液5の温度は、複数の蓄冷ユニット30を通過した直後の熱媒液5の温度よりも高くなる。このため、複数の蓄冷ユニット30を通過した直後の熱媒液5の温度よりも高い温度を有する熱媒液5が冷却装置50に送られる。一方、冷却対象90に送られる熱媒液5の温度は、冷却対象90を冷却することによって温度が上昇した熱媒液5の温度よりも低くなる。このため、冷却対象90に送られる熱媒液5は大きな密度を有するので蓄熱槽10の内部において下降し、吐出口72よりも低い位置にある吸込口71の付近に至り、吸込口71から再び取り込まれ、冷却対象90に送られる。
【0040】
[1-3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、蓄熱装置1aは、蓄熱槽10と、供給口21と、回収口22と、複数の蓄冷ユニット30とを備えている。蓄熱槽10は、熱媒液5を貯留する。供給口21は、蓄熱槽10の内部に配置され、熱媒液5を蓄熱槽10の内部に導く。回収口22は、蓄熱槽10の内部に配置され、熱媒液5を蓄熱槽10の外部に向かって導く。複数の蓄冷ユニット30は、蓄熱槽10の内部において供給口21と回収口22との間に配置され、第一蓄冷ユニット30a及び第二蓄冷ユニット30bを含む。複数の蓄冷ユニット30は、供給口21から回収口22に向かって熱媒液5を水平方向に通過させる。第一蓄冷ユニット30aは、液体と固体との間で相変化して冷熱を蓄えて放出する第一蓄冷材が収容され、互いに平行に配置された複数の第一容器31aを備えている。第二蓄冷ユニット30bは、液体と固体との間で相変化して冷熱を蓄えて放出する第二蓄冷材が収容され、互いに平行に配置された複数の第二容器32aを備えている。蓄熱装置1aにおいて、値V2は、値V1より小さい。値V2は、第二蓄冷ユニット30bにおいて複数の第二容器32aが占める体積の総和を複数の第二容器32aの表面積の総和で除した値である。V1は、第一蓄冷ユニット30aにおいて複数の第一容器31aが占める体積の総和を複数の第一容器31aの表面積の総和で除した値である。第二蓄冷ユニット30bは、複数の蓄冷ユニット30における熱媒液5の流れの下流域35dにおいて、鉛直方向における複数の蓄冷ユニット30の上端部35p及び下端部35qの両方に配置されている。
【0041】
これにより、複数の蓄冷ユニット30に冷熱を蓄えるときに下流域35dの上端部35pに導かれる熱媒液5の温度が高くても、第二蓄冷材と熱媒液5との間で所定時間内に交換される熱量が大きくなりやすい。その結果、複数の蓄冷ユニット30の蓄冷材の凝固が所定時間内に完了しやすい。加えて、複数の蓄冷ユニット30から冷熱を放出するときに下流域35dの下端部35qに導かれる熱媒液5の温度が低くても、第二蓄冷材と熱媒液5との間で所定時間内に交換される熱量が大きくなりやすい。その結果、複数の蓄冷ユニット30の蓄冷材の融解が所定時間内に完了しやすい。
【0042】
本実施の形態のように、第一蓄冷ユニット30aは、下流域35dにおいて、鉛直方向における上端部35pと下端部35qとの間に配置されていてもよい。
【0043】
これにより、下流域35dでは、熱媒液5に鉛直方向において所定の温度分布がより生じやすく、下流域35dの上端部35pに導かれる熱媒液5の温度は、下流域35dの他の部分に導かれる熱媒液5の温度よりもより高くなりやすい。しかし、第二蓄冷ユニット30bが上端部35p及び下端部35qの両方に配置されているので、蓄冷材の凝固及び蓄冷材の融解が所定時間内に完了しやすい。下流域35dの全域には、第二蓄冷ユニット30bが配置されていてもよい。
【0044】
本実施の形態のように、複数の蓄冷ユニット30において水平方向に沿って熱媒液5を通過させて複数の蓄冷ユニット30に冷熱を蓄える又は複数の蓄冷ユニット30に蓄えられた冷熱を放出させることを含む、熱交換方法を提供できる。
【0045】
(実施の形態2)
以下、図4図5A図5B、及び図6を用いて、実施の形態2を説明する。
【0046】
[2-1.構成]
実施の形態2に係る蓄熱装置1bは、特に説明する部分を除き実施の形態1に係る蓄熱装置1aと同様に構成される。蓄熱装置1aの構成要素と同一又は対応する蓄熱装置1bの構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。蓄熱装置1aに関する説明は、技術的に矛盾しない限り蓄熱装置1bにもあてはまる。
【0047】
図4に示す通り、蓄熱装置1bにおいて、複数の蓄冷ユニット30は、第一蓄冷ユニット30aと、第二蓄冷ユニット30cとを備えている。第二蓄冷ユニット30cは、下流域35dにおいて、鉛直方向における複数の蓄冷ユニット30の上端部35pに配置されている。第一蓄冷ユニット30aは、例えば、複数の蓄冷ユニット30における上端部35p以外の部分に配置されている。
【0048】
図5Aに示す通り、第二蓄冷ユニット30cは、複数の第二容器33aを備えている。第二容器33aには、液体と固体との間で相変化して冷熱を蓄えて放出する第二蓄冷材が収容されている。第二蓄冷ユニット30cにおいて、複数の第二容器33aは互いに平行に配置されている。図5Bに示す通り、第二容器33aは、例えば、第一容器31aと同様の形状及び寸法を有している。蓄熱装置1bにおいて、例えば、値V2は値V1と等しい。値V2は、第二蓄冷ユニット30cにおいて複数の第二容器33aが占める体積の総和を複数の第二容器33aの表面積の総和で除した値である。値V1は、第一蓄冷ユニット30aにおいて複数の第一容器31aが占める体積の総和を複数の第一容器31aの表面積の総和で除した値である。
【0049】
図6に示す通り、第二蓄冷ユニット30cの第二蓄冷材は、第二蓄冷材に冷熱を蓄えるときの供給口21における熱媒液5の温度より高く、かつ、第一蓄冷材の融点より高い融点を有する。第二蓄冷材の融点は、例えば、8℃である。第一蓄冷材の融点は、例えば7℃である。第二蓄冷ユニット30cの第二蓄冷材の組成は、例えば、第一蓄冷材の組成と異なっている。蓄冷材に冷熱を蓄えるときの供給口21における熱媒液5の温度は、例えば5℃である。
【0050】
[2-2.動作]
以上のように構成された蓄熱装置1bについて、その動作を実施の形態1に係る蓄熱装置1aの動作と異なる点について以下説明する。
【0051】
蓄熱装置1bの蓄冷運転において、蓄熱装置1aと同様に、下流域35dの上端部35pに導かれる熱媒液5の温度は、下流域35dの他の部分に導かれる熱媒液5の温度より高くなりやすい。このような温度を有する熱媒液5が上端部35pに配置された第二蓄冷ユニット30cの内部に導かれる。
【0052】
[2-3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、蓄熱装置1bは、蓄熱槽10と、供給口21と、回収口22と、複数の蓄冷ユニット30とを備えている。蓄熱槽10は、熱媒液5を貯留する。供給口21は、蓄熱槽10の内部に配置され、熱媒液5を蓄熱槽10の内部に導く。回収口22は、蓄熱槽10の内部に配置され、熱媒液5を蓄熱槽10の外部に向かって導く。複数の蓄冷ユニット30は、蓄熱槽10の内部において供給口21と回収口22との間に配置され、第一蓄冷ユニット30aと、第二蓄冷ユニット30cを含む。複数の蓄冷ユニット30は、供給口21から回収口22に向かって熱媒液5を水平方向に通過させる。第一蓄冷ユニット30aは、液体と固体との間で相変化して冷熱を蓄えて放出する第一蓄冷材が収容され、互いに平行に配置された複数の第一容器31aを備えている。第二蓄冷ユニット30cは、液体と固体との間で相変化して冷熱を蓄えて放出する第二蓄冷材が収容され、互いに平行に配置された複数の第二容器33aを備えている。第二蓄冷材は、第二蓄冷材に冷熱を蓄えるときの供給口21における熱媒液5の温度より高く、かつ、第一蓄冷材の融点より高い融点を有する。第二蓄冷ユニット30cは、複数の蓄冷ユニット30における熱媒液5の流れの下流域35dにおいて、鉛直方向における複数の蓄冷ユニット30の上端部35pに配置されている。
【0053】
これにより、複数の蓄冷ユニット30に冷熱を蓄えるときに下流域35dの上端部35pに導かれる熱媒液5の温度が高くても、第二蓄冷材の融点と熱媒液5の温度との差が大きくなりやすい。このため、所定時間において第二蓄冷材と熱媒液5との間において交換される熱量が大きくなりやすい。その結果、複数の蓄冷ユニット30の蓄冷材の凝固が所定時間内に完了しやすい。
【0054】
本実施の形態のように、第一蓄冷ユニット30aは、下流域35dにおいて、鉛直方向における上端部35pと下端部35qとの間に配置されていてもよい。
【0055】
これにより、下流域35dでは、熱媒液5に鉛直方向において所定の温度分布がより生じやすく、下流域35dの上端部35pに導かれる熱媒液5の温度は、下流域35dの他の部分に導かれる熱媒液5の温度よりもより高くなりやすい。しかし、第二蓄冷ユニット30cが上端部35pに配置されているので、蓄冷材の凝固が所定時間内に完了しやすい。下流域35dの全域には、第二蓄冷ユニット30cが配置されていてもよい。
【0056】
本実施の形態のように、複数の蓄冷ユニット30において水平方向に沿って熱媒液5を通過させて複数の蓄冷ユニット30に冷熱を蓄える又は複数の蓄冷ユニット30に蓄えられた冷熱を放出させることを含む、熱交換方法を提供できる。
【0057】
(実施の形態3)
以下、図7図8A図8B、及び図9を用いて、実施の形態3を説明する。
【0058】
[3-1.構成]
実施の形態3に係る蓄熱装置1cは、特に説明する部分を除き実施の形態1に係る蓄熱装置1aと同様に構成される。蓄熱装置1aの構成要素と同一又は対応する蓄熱装置1cの構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。蓄熱装置1aに関する説明は、技術的に矛盾しない限り蓄熱装置1cにもあてはまる。
【0059】
図7に示す通り、蓄熱装置1cにおいて、複数の蓄冷ユニット30は、第一蓄冷ユニット30aと、第二蓄冷ユニット30dとを備えている。第二蓄冷ユニット30dは、下流域35dにおいて、鉛直方向における複数の蓄冷ユニット30の下端部35qに配置されている。第一蓄冷ユニット30aは、例えば、複数の蓄冷ユニット30における下端部35q以外の部分に配置されている。
【0060】
図8Aに示す通り、第二蓄冷ユニット30dは、複数の第二容器34aを備えている。第二容器34aには、液体と固体との間で相変化して冷熱を蓄えて放出する第二蓄冷材が収容されている。第二蓄冷ユニット30dにおいて、複数の第二容器34aは互いに平行に配置されている。図8Bに示す通り、第二容器34aは、例えば、第一容器31aと同様の形状及び寸法を有している。蓄熱装置1cにおいて、例えば、値V2は値V1と等しい。値V2は、第二蓄冷ユニット30dにおいて複数の第二容器34aが占める体積の総和を複数の第二容器34aの表面積の総和で除した値である。値V1は、第一蓄冷ユニット30aにおいて複数の第一容器31aが占める体積の総和を複数の第一容器31aの表面積の総和で除した値である。
【0061】
図9に示す通り、第二蓄冷ユニット30dの第二蓄冷材は、第二蓄冷材から冷熱を放出するときの供給口21における熱媒液5の温度より低く、かつ、第一蓄冷材の融点より低い融点を有する。第二蓄冷材の融点は、例えば、6℃である。第一蓄冷材の融点は、例えば、7℃である。蓄冷材から冷熱を放出するときの供給口21における熱媒液5の温度は、例えば12℃である。
【0062】
[3-2.動作]
以上のように構成された蓄熱装置1cについて、その動作を実施の形態1に係る蓄熱装置1aの動作と異なる点について以下説明する。
【0063】
蓄熱装置1cの放冷運転において、蓄熱装置1aと同様に、下流域35dの下端部35qに導かれる熱媒液5の温度は、下流域35dの他の部分に導かれる熱媒液5の温度より低くなりやすい。このような温度を有する熱媒液5が下端部35qに配置された第二蓄冷ユニット30dの内部に導かれる。
【0064】
[3-3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、蓄熱装置1cは、蓄熱槽10と、供給口21と、回収口22と、複数の蓄冷ユニット30とを備えている。蓄熱槽10は、熱媒液5を貯留する。供給口21は、蓄熱槽10の内部に配置され、熱媒液5を蓄熱槽10の内部に導く。回収口22は、蓄熱槽10の内部に配置され、熱媒液5を蓄熱槽10の外部に向かって導く。複数の蓄冷ユニット30は、蓄熱槽10の内部において供給口21と回収口22との間に配置され、第一蓄冷ユニット30aと、第二蓄冷ユニット30dを含む。複数の蓄冷ユニット30は、供給口21から回収口22に向かって熱媒液5を水平方向に通過させる。第一蓄冷ユニット30aは、液体と固体との間で相変化して冷熱を蓄えて放出する第一蓄冷材が収容され、互いに平行に配置された複数の第一容器31aを備えている。第二蓄冷ユニット30dは、液体と固体との間で相変化して冷熱を蓄えて放出する第二蓄冷材が収容され、互いに平行に配置された複数の第二容器34aを備えている。第二蓄冷材は、第二蓄冷材から冷熱を放出するときの供給口21における熱媒液5の温度より低く、かつ、第一蓄冷材の融点より低い融点を有する。第二蓄冷ユニット30dは、下流域35dにおいて、鉛直方向における複数の蓄冷ユニット30の下端部35qに配置されている。
【0065】
これにより、複数の蓄冷ユニット30から冷熱を放出するときに下流域35dの下端部35qに導かれる熱媒液5の温度が低くても、第二蓄冷材の融点と熱媒液5の温度との差が大きくなりやすい。このため、所定時間において第二蓄冷材と熱媒液5との間において交換される熱量が大きくなりやすい。その結果、複数の蓄冷ユニット30の蓄冷材の融解が所定時間内に完了しやすい。
【0066】
本実施の形態のように、第一蓄冷ユニット30aは、下流域35dにおいて、鉛直方向における上端部35pと下端部35qとの間に配置されていてもよい。
【0067】
これにより、下流域35dでは、熱媒液5に鉛直方向において所定の温度分布がより生じやすく、下流域35dの下端部35qに導かれる熱媒液5の温度は、下流域35dの他の部分に導かれる熱媒液5の温度よりもより低くなりやすい。しかし、第二蓄冷ユニット30dが下端部35qに配置されているので、蓄冷材の融解が所定時間内に完了しやすい。下流域35dの全域には、第二蓄冷ユニット30dが配置されていてもよい。
【0068】
本実施の形態のように、複数の蓄冷ユニット30において水平方向に沿って熱媒液5を通過させて複数の蓄冷ユニット30に冷熱を蓄える又は複数の蓄冷ユニット30に蓄えられた冷熱を放出させることを含む、熱交換方法を提供できる。
【0069】
(実施の形態4)
以下、図10図11A図11B図12A、及び図12Bを用いて、実施の形態4を説明する。
【0070】
[4-1.構成]
実施の形態4に係る蓄熱装置1dは、特に説明する部分を除き実施の形態1に係る蓄熱装置1aと同様に構成される。蓄熱装置1aの構成要素と同一又は対応する蓄熱装置1dの構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。蓄熱装置1aに関する説明は、技術的に矛盾しない限り蓄熱装置1dにもあてはまる。
【0071】
図10に示す通り、蓄熱装置1dにおいて、複数の蓄冷ユニット30は、第一蓄冷ユニット30aと、第二蓄冷ユニット30bとを備えている。
【0072】
図11A図11B図12A、及び図12Bに示す通り、第一容器31a及び第二容器32aのそれぞれは、円柱状である。第二容器32aの軸線に垂直な方向における直径は、第一容器31aの軸線に垂直な方向における直径より小さい。これにより、蓄熱装置1dにおいて、値V2は、値V1より小さい。値V2は、第二蓄冷ユニット30bにおいて複数の第二容器32aが占める体積の総和を複数の第二容器32aの表面積の総和で除した値である。V1は、第一蓄冷ユニット30aにおいて複数の第一容器31aが占める体積の総和を複数の第一容器31aの表面積の総和で除した値である。
【0073】
[4-2.動作]
以上のように構成された蓄熱装置1dは、実施の形態1に係る蓄熱装置1aと同様に動作しうる。
【0074】
[4-3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、値V2は値V1より小さい。加えて、第二蓄冷ユニット30bは、下流域35dにおいて、鉛直方向における複数の蓄冷ユニット30の上端部35p及び下端部35qの両方に配置されている。これにより、複数の蓄冷ユニット30に冷熱を蓄えるときに下流域35dの上端部35pに導かれる熱媒液5の温度が高くても、第二蓄冷材と熱媒液5との間で所定時間内に交換される熱量が大きくなりやすい。その結果、複数の蓄冷ユニット30の蓄冷材の凝固が所定時間内に完了しやすい。加えて、複数の蓄冷ユニット30から冷熱を放出するときに下流域35dの下端部35qに導かれる熱媒液5の温度が低くても、第二蓄冷材と熱媒液5との間で所定時間内に交換される熱量が大きくなりやすい。その結果、複数の蓄冷ユニット30の蓄冷材の融解が所定時間内に完了しやすい。
【0075】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1、2、3、及び4を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用できる。また、上記実施の形態1、2、3、及び4で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
【0076】
そこで、以下、他の実施の形態を例示する。実施の形態1、2、3、及び4では、熱媒液5の一例として水を挙げた。熱媒液5は、利用温度帯において流動できるものであればよい。したがって、熱媒液5は、水に限定されない。ただし、熱媒液5として水を用いれば、熱媒液5を安価で大量に入手できる。
【0077】
実施の形態1、2、3、及び4では、第一蓄冷材及び第二蓄冷材の一例としてクラスレートハイドレートを形成可能な物質を含む蓄冷材を挙げた。第一蓄冷材及び第二蓄冷材は、所定の温度で、液体から固体へ相変化することにより蓄冷し、固体から液体へ相変化することにより放冷するものであればよい。したがって、蓄冷材は、クラスレートハイドレートを形成可能な物質を含むものに限定されない。ただし、クラスレートハイドレートを形成可能な物質を含む蓄冷材を用いれば、クラスレートハイドレートにおけるゲスト物質の選択により、利用温度帯に近い温度で蓄冷及び放冷を実現しやすい。この場合、蓄冷において蓄冷材は液体から固体へ相変化し、放冷において蓄冷材は固体から液体へ相変化する。
【0078】
実施の形態1及び4では、第二蓄冷ユニット30bは、下流域35dにおいて、鉛直方向における複数の蓄冷ユニット30の上端部35p及び下端部35qの両方に配置されている。第二蓄冷ユニット30bは、上端部35pのみに配置されていてもよいし、下端部35qのみに配置されていてもよい。第二蓄冷ユニット30bが上端部35pのみに配置されている場合、下端部35qには第一蓄冷ユニット30aが配置されうる。第二蓄冷ユニット30bが下端部35qのみに配置されている場合、上端部35pには第一蓄冷ユニット30aが配置されうる。
【0079】
なお、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲又はその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本開示は、冷熱利用の時間帯をシフトするため、蓄冷材を収容した蓄冷ユニットが熱媒液に浸漬された蓄熱槽を備え、空調又は製造プロセスの冷却に利用する熱媒液を供給する蓄熱装置等に適用可能である。
【符号の説明】
【0081】
1a、1b、1c、1d 蓄熱装置
5 熱媒液
10 蓄熱槽
21 供給口
22 回収口
30 蓄冷ユニット
30a 第一蓄冷ユニット
30b、30c、30d 第二蓄冷ユニット
31a 第一容器
32a、33a、34a 第二容器
35d 下流域
35p 上端部
35q 下端部
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B