(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091803
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】振動モータおよび電子機器
(51)【国際特許分類】
B06B 1/04 20060101AFI20230626BHJP
【FI】
B06B1/04 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206594
(22)【出願日】2021-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平田 篤範
(72)【発明者】
【氏名】小林 知弘
【テーマコード(参考)】
5D107
【Fターム(参考)】
5D107AA20
5D107BB08
5D107CC09
5D107DD03
5D107DD12
5D107FF10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】弾性部材の部位同士を接触させずに、コイルを保護することが可能となる振動モータおよび電子機器を提供する。
【解決手段】振動モータは、固定子5と、左右方向に振動可能な振動子8と、前記振動子8と前記固定子5を接続する弾性部材91,92と、を備える。前記振動子8は、上下方向に凹む溝を有する質量体6と、上下方向に視て前記溝61,62の内側において前記質量体6に固定される磁石部材と、を有する。前記固定子5は、前記磁石部材と上下方向に対向し、前記溝61,62の内側に配置されるコイル31と、前記コイル31の左右方向両端部の少なくとも一部を覆う保護部材41,42と、を有する。前記溝61,62は、第1対向面を有する。前記保護部材41,42は、第2対向面を有する。前記第1対向面と前記第2対向面は、左右方向において対向する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子と、
左右方向に振動可能な振動子と、
前記振動子と前記固定子を接続する弾性部材と、を備え、
前記振動子は、
上下方向に凹む溝を有する質量体と、
上下方向に視て前記溝の内側において前記質量体に固定される磁石部材と、
を有し、
前記固定子は、
前記磁石部材と上下方向に対向し、前記溝の内側に配置されるコイルと、
前記コイルの左右方向両端部の少なくとも一部を覆う保護部材と、
を有し、
前記溝は、第1対向面を有し、
前記保護部材は、第2対向面を有し、
前記第1対向面と前記第2対向面は、左右方向において対向する、振動モータ。
【請求項2】
前記保護部材は、前記コイルの全周を覆う、請求項1に記載の振動モータ。
【請求項3】
前記固定子は、前記振動子、前記弾性部材、前記コイル、および前記保護部材を覆う筐体をさらに有し、
前記筐体と前記保護部材は、一方が凹部を有し、他方が前記凹部に嵌る凸部を有する、請求項1または請求項2に記載の振動モータ。
【請求項4】
前記凹部および前記凸部は、少なくとも、上下方向に視て、前記コイルを挟んで配置される、請求項3に記載の振動モータ。
【請求項5】
前記コイルは、前記保護部材に固定される、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の振動モータ。
【請求項6】
前記コイルは、引き出し線を有し、
前記保護部材は、前記引き出し線を案内する案内部を有する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の振動モータ。
【請求項7】
前記弾性部材は、
前記振動子の左右方向端面に固定される第1固定部と、
前記第1固定部に連接される第1屈曲部と、
前記第1屈曲部に連接される平板部と、
前記平板部に連接される第2屈曲部と、
前記第2屈曲部に連接され、前記固定子に固定される第2固定部と、
を有する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の振動モータ。
【請求項8】
前記第1屈曲部と前記第2屈曲部は、同形状である、請求項7に記載の振動モータ。
【請求項9】
前記振動子の静止状態において、
前記第1固定部と前記平板部との間の左右方向距離、前記第2屈曲部と前記左右方向端面との間の左右方向距離、前記平板部と前記第2固定部との間の左右方向距離、および前記第1屈曲部と前記固定子との間の左右方向距離は、いずれも前記溝と前記保護部材との間の左右方向距離の半分よりも大きい、請求項7または請求項8に記載の振動モータ。
【請求項10】
前記質量体は、前記溝と上下方向に隣接して上下方向に貫通する貫通孔を有し、
前記磁石部材は、前記貫通孔に設けられる、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の振動モータ。
【請求項11】
前記第2対向面は、前記質量体に向かうにつれて前記コイル側に近づくテーパ面を有する、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の振動モータ。
【請求項12】
前記溝は、前記質量体の上下両面に設けられ、
前記コイルは、上下両面の前記溝のそれぞれに配置される、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の振動モータ。
【請求項13】
上下に設けられたそれぞれの前記保護部材は、同形状である、請求項12に記載の振動モータ。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の振動モータを備える、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、振動モータおよび電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スマートフォン等の携帯機器など各種電子機器には、振動発生装置として振動モータが備えられている。振動モータは、例えば、着信またはアラーム等を利用者に知らせる機能、あるいはヒューマンインタフェースにおける触覚フィードバックの機能などの用途で用いられる。
【0003】
一般的に、振動モータは、固定子と、弾性部材と、振動子と、を有する。固定子は、筐体と、コイルと、を有する。振動子は、マグネットを有する。振動子と筐体とは、弾性部材により接続される。コイルに通電して磁界を発生させることにより、振動子は振動する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】中国特許出願公開第110994934号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、振動モータでは、弾性部材に緩衝部材を設け、振動子が過度に移動した場合でも緩衝部材を介して弾性部材の部位同士が間接的に接触することで、振動子の移動を抑制し、振動子がコイルに接触することを抑制する場合があった。しかしながら、弾性部材の形状によっては、間接的にでも弾性部材の部位同士が接触することが望ましくない場合があった。
【0006】
上記状況に鑑み、本開示は、弾性部材の部位同士を接触させずに、コイルを保護することが可能となる振動モータおよび電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の例示的な振動モータは、固定子と、左右方向に振動可能な振動子と、前記振動子と前記固定子を接続する弾性部材と、を備える。前記振動子は、上下方向に凹む溝を有する質量体と、上下方向に視て前記溝の内側において前記質量体に固定される磁石部材と、を有する。前記固定子は、前記磁石部材と上下方向に対向し、前記溝の内側に配置されるコイルと、前記コイルの左右方向両端部の少なくとも一部を覆う保護部材と、を有する。前記溝は、第1対向面を有する。前記保護部材は、第2対向面を有する。前記第1対向面と前記第2対向面は、左右方向において対向する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の例示的な振動モータおよび電子機器によれば、弾性部材の部位同士を接触させずに、コイルを保護することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の例示的な実施形態に係る振動モータの斜視図である。
【
図2】
図2は、蓋部を取り外した状態での振動モータの斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2の状態の振動モータを前後方向に直交する切断面で切断した断面図である。
【
図4】
図4は、コイルと保護部材から構成されるアセンブリの斜視図である。
【
図5】
図5は、上方から視た振動モータの内部構成を示す平面図である。
【
図6】
図6は、前後方向に直交する切断面で切断した振動モータの一部断面図である。
【
図7】
図7は、
図6に示す構成における第1対向面と第2対向面を拡大した図である。
【
図8】
図8は、電子機器の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の例示的な実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図面において、左右方向をX軸方向として、左方をX1、右方をX2として示す。また、前後方向をY軸方向として、前方をY1、後方をY2として示す。また、上下方向をZ軸方向として、上方をZ1、下方をZ2として示す。左右方向、前後方向、および上下方向は、互いに直交する。なお、上記各方向は、振動モータを機器に組み込んだときの方向を限定しない。
【0011】
<1.振動モータの全体構成>
図1は、本開示の例示的な実施形態に係る振動モータ10の斜視図である。
図2は、蓋部11を取り外した状態での振動モータ10の斜視図である。蓋部11は、後述するように筐体1に含まれる。すなわち、
図2は、振動モータ10の内部構成を示す。
図3は、
図2の状態の振動モータ10を前後方向に直交する切断面で切断した断面図である。
【0012】
振動モータ10は、左右方向の振動を発生可能な、いわゆる横リニア振動モータである。振動モータ10は、固定子5と、振動子8と、弾性部材91,92と、を備える。
【0013】
固定子5は、筐体1と、基板2と、コイル31,32と、保護部材41,42と、を有する。
【0014】
筐体1は、例えばステンレス鋼により構成され、蓋部11と、ベースプレート12と、を有する。ベースプレート12の上方から蓋部11が取り付けられて筐体1が構成される。蓋部11は、下方が開口した矩形体状であり、天面部111と、前側面部112と、後側面部113と、左側面部114と、右側面部115と、を有する。前側面部112と、後側面部113と、左側面部114と、右側面部115と、は、天面部111の各辺から下方へ延びる。ベースプレート12は、左右方向および前後方向に広がる板状部材である。蓋部11とベースプレート12とで囲まれる空間内部に、振動子8と、コイル31,32と、保護部材41,42と、弾性部材91,92とが収容される。すなわち、固定子5は、振動子8、弾性部材91,92、コイル31,32、および保護部材41,42を覆う筐体1を有する。
【0015】
基板2は、FPC(フレキシブルプリント基板)であり、基部20と、基部20に対して折り曲げられた折り曲げ部21,22と、を有する。ベースプレート12は、前方の縁部から前方へ突出した突出片121を有する。基部20は、突出片121上に配置される。折り曲げ部21,22は、蓋部11の前側面部112に沿って配置される。基板2には、コイル31,32が電気的に接続される。基板2は、コイル31,32に電流を供給するために設けられる。
【0016】
コイル31,32は、上下方向に対向して配置される。コイル31がコイル32の上方に配置される。すなわち、振動モータ10は、2つのコイルを有する。コイル31,32は、上下方向に沿う軸周りに導線を巻き回されて構成される。コイル31,32に電流が供給されることで磁力線が発生する。
【0017】
コイル31は、保護部材41に収容される。コイル32は、保護部材42に収容される。すなわち、保護部材41,42は、上下方向に対向する。保護部材41,42は、例えば樹脂により構成される。コイル31および保護部材41は、蓋部11の天面部111の下面に配置される。コイル32および保護部材42は、ベースプレート12の上面に配置される。保護部材41,42は、後述する質量体6と接触しないようにコイル31を保護する。なお、コイル31,32および保護部材41,42の詳細については、後述する。
【0018】
振動子8は、左右方向に振動可能であり、質量体6と、磁石部材7と、を有する。すなわち、振動モータ10は、左右方向に振動可能な振動子8を備える。
【0019】
質量体6は、例えばタングステン合金により構成され、振動子8の重量を増加させることで振動モータ10の振動出力を高める。質量体6は、左右方向および前後方向に広がるとともに上下方向に厚みを有する矩形体状に構成され、左右方向内側において溝61,62を有する。溝61,62は、質量体6において前後方向の全体に延びる。溝61,62は、上下方向に対向する。溝61は、溝62の上方に配置される。すなわち、溝61,62は、質量体6の上下両面に設けられる。溝61は、下方に凹む。溝62は、上方に凹む。すなわち、振動子8は、上下方向に凹む溝61,62を有する質量体6を有する。
【0020】
また、振動子8は、上下方向に視て溝61,62の内側において質量体6に固定される磁石部材7を有する。
【0021】
磁石部材7は、左右方向に磁極を有する。すなわち、磁石部材7は、左方にN極、右方にS極を有するか、あるいは左方にS極、右方にN極を有する。
【0022】
質量体6は、上下方向に貫通する貫通孔63を有する。貫通孔63は、溝61の下方に隣接するとともに溝62の上方に隣接する。すなわち、質量体6は、溝61,62と上下方向に隣接して上下方向に貫通する貫通孔63を有する。磁石部材7は、貫通孔63内部に例えば接着剤により固定される。すなわち、磁石部材7は、貫通孔63に設けられる。これにより、磁石部材を溝の内側に設ける場合よりも振動モータ10の薄型化が可能となる。
【0023】
コイル31および保護部材41は、溝61の内側に配置される。コイル32および保護部材42は、溝62の内側に配置される。すなわち、コイル31,32は、上下両面の溝61,62のそれぞれに配置される。これにより、振動モータ10をさらに薄型化できる。また、上下のコイル31,32により電磁力を得ることができるため、振動出力が向上する。
【0024】
磁石部材7は、コイル31,32と上下方向に対向する。すなわち、固定子5は、磁石部材7と上下方向に対向し、溝61,62の内側に配置されるコイル31,32を有する。
【0025】
弾性部材91は、振動子8の左方に設けられる。弾性部材92は、振動子8の右方に設けられる。すなわち、振動モータ10は、2つの弾性部材を有する。弾性部材91,92は、上下方向に視てS字状に構成される。
【0026】
弾性部材91の一端部は、質量体6の左方端面6Lに固定される。弾性部材91の他端部は、蓋部11の左側面部114の内壁面に固定される。これにより、弾性部材91は、振動子8と筐体1とを接続する。弾性部材92の一端部は、質量体6の右方端面6Rに固定される。弾性部材92の他端部は、蓋部11の右側面部115の内壁面に固定される。これにより、弾性部材92は、振動子8と筐体1とを接続する。すなわち、振動モータ10は、振動子8と固定子5とを接続する弾性部材91,92を備える。なお、弾性部材91,92の詳細については、後述する。
【0027】
このような構成の振動モータ10においては、基板2を介してコイル31,32に電流を供給することにより、コイル31,32に磁力線が発生し、磁石部材7により発生する磁力線との相互作用により振動子8を左右方向に駆動できる。コイル31,32への適切な電流供給の制御および弾性部材91,92の弾性力により、振動モータ10において左右方向の振動が発生する。
【0028】
<2.コイルと保護部材>
次に、コイル31,32と保護部材41,42の詳細について述べる。
図4は、コイル31と保護部材41から構成されるアセンブリの斜視図である。保護部材41は、左右方向および前後方向に広がるとともに上下方向に厚みを有する板状部材であり、基部411と、突出片412と、を有する。基部411は、矩形体状である。突出片412は、基部411の前方縁部から前方へ突出する。基部411には、上下方向に貫通する孔部411Aが設けられる。コイル31は、孔部411Aに収容されて例えば接着剤により基部411に固定される。これにより、コイル31と保護部材41から構成されるアセンブリが作成され、当該アセンブリが筐体1の天面部111の下面に取り付けられる。このように、コイル31は、保護部材41に固定される。これにより、コイル31と保護部材41によるアセンブリを作成してから、当該アセンブリを筐体1に固定することで固定子5を構成することができる。従って、固定子5の製造がより容易となる。
【0029】
基部411には、上方に突出する凸部414,415が設けられる。凸部414,415は、上下方向に視て基部411の対角線上に配置される。上記アセンブリが天面部111に取り付けられるとき、凸部414,415は、それぞれ天面部111に設けられる凹部111A,111B(
図1参照)に嵌められる。これにより、上記アセンブリの位置決めが容易となる。なお、保護部材41側に凹部を設け、天面部111側に凸部を設けてもよい。
【0030】
すなわち、筐体1と保護部材41は、一方が凹部111A,111Bを有し、他方が凹部111A,111Bに嵌る凸部414,415を有する。これにより、保護部材41の位置決めが容易となる。また、後述するように質量体6が保護部材41に接触可能であることに鑑み、保護部材41をより強固に固定することができる。
【0031】
また、凹部111A,111Bおよび凸部414,415は、上下方向に視て、保護部材41における対角位置に配置される。すなわち、凹部111A,111Bおよび凸部414,415は、少なくとも、上下方向に視て、コイル31を挟んで配置される。これにより、振動子8が保護部材41に接触した場合に、保護部材41が凸部周りに回転することを抑制し、保護部材41をより強固に固定できる。
【0032】
図4に示すようにコイル31を保護部材41に固定した状態で、保護部材41は、コイル31の全周を覆う。これにより、コイル31の左方端部31Lと右方端部31Rのそれぞれが前後方向全域にわたって保護部材41により覆われる。従って、振動子8が左右両側からコイル31に接触することを、全周を覆う一つの保護部材41により抑制できる。なお、保護部材41が左右に分割されており、それぞれがコイル31の左方端部31Lと右方端部31Rのそれぞれの一部を覆うようにしてもよい。
【0033】
上記を換言すれば、固定子5は、コイル31の左右方向両端部31L,31Rの少なくとも一部を覆う保護部材41を有する。
【0034】
図4に示すように、突出片412には、前後方向に延びる溝として構成される2つの案内部413が設けられる。コイル31が基部411に固定されるとき、コイル31の引き出し線311が案内部413を通される。ここで、蓋部11の前側面部112には、前後方向に開口する引き出し口112Aが設けられる(
図1参照)。上記アセンブリを天面部111に固定するとき、コイル31の引き出し線311を引き出し口112Aから外部へ引き出す。このとき、引き出し線311が案内部413に固定されており、引き出し口112A付近まで案内部413が延びているため、引き出しが容易となる。引き出し口112Aから引き出された引き出し線311は、基板2の折り曲げ部21,22に設けられる電極部21A,22A(
図2)にそれぞれ接続される。なお、
図1、
図2、および
図4において、引き出し線311の案内部413から引き出された部分は、図示を省略している。
【0035】
このように、コイル31は、引き出し線311を有する。保護部材41は、引き出し線311を案内する案内部413を有する。これにより、引き出し線311を保護部材41により保護することができる。また、保護部材41にコイル31を固定する場合には、引き出し線311を案内部413に通すことで、引き回しの作業がより容易となる。
【0036】
なお、コイル31と保護部材41とを一体成型により製造することで、コイル31を保護部材41に固定してもよい。この場合は、コイル31の線径を細くして巻線占積率を向上させても、作業員がコイル31に触れることによる巻線への悪影響を抑制できる。
【0037】
また、保護部材42は、保護部材41と同形状である。コイル32を保護部材42に固定することでアセンブリが作成され、当該アセンブリがベースプレート12の上面に固定される。このとき、保護部材42は、保護部材41と上下を反転させた状態で固定される。保護部材42に設けられる下方へ突出する凸部(図示せず)は、ベースプレート12に設けられる凹部(図示せず)に嵌められる。当該凸部および凹部は、上下方向に視て、凸部414,415および凹部111A,111Bが配置される対角線と交差する対角線上に配置される。コイル32の引き出し線321は、保護部材42の案内部423を案内される(
図1参照)。引き出し線321は、蓋部11の前側面部112に設けられる引き出し口112Bから外部に引き出され、基板2の折り曲げ部21,22に設けられる電極部21A,22Aに接続される。電極部21Aは、基部20に設けられる電極部20A(
図2)と、基板2に設けられる図示しない配線によって接続される。電極部22Aは、基部20に設けられる電極部20B(
図2)と、基板2に設けられる図示しない配線によって接続される。コイル31,32を駆動するための電流は、電極部20A(もしくは20B)⇒電極部21A(もしくは22A)⇒コイル31,32⇒電極部22A(もしくは21A)⇒電極部20B(もしくは20A)の順に流れる。
【0038】
このように、上下に設けられたそれぞれの保護部材41,42は、同形状である。これにより、同じ形状の保護部材41,42を上下で流用できるため、保護部材を成型する金型の数を削減できる。また、保護部材41,42を組み付けるときは、互いに上下を反転させて配置すればよい。
【0039】
<3.弾性部材>
次に、弾性部材91,92の詳細について述べる。
図5は、上方から視た振動モータ10の内部構成を示す平面図である。なお、
図5においては、蓋部11の一部のみ図示している。
【0040】
図5に示すように、弾性部材91は、板ばね911と、補強板912,913と、を有している。板ばね911は、第1端部911Aと、第1屈曲部911Bと、平板部911Cと、第2屈曲部911Dと、第2端部911Eと、を有し、上下方向に視てS字状に構成される。
【0041】
第1端部911Aは、質量体6の左方端面6Lにおける前方側に例えば溶接により固定される。第1端部911Aには、補強板912が例えば溶接により固定される。第1端部911Aと補強板912とから第1固定部91Aが構成される。
【0042】
第1屈曲部911Bの一端部は、第1端部911Aの前端部に連接される。第1屈曲部911Bは、前後方向に屈曲する。前後方向に延びる平板部911Cの一端部は、第1屈曲部911Bの他端部に連接される。第2屈曲部911Dの一端部は、平板部911Cの他端部に連接される。第2屈曲部911Dは、前後方向に屈曲する。第2端部911Eは、第2屈曲部911Dの他端部に連接される。
【0043】
第2端部911Eは、蓋部11における左側面部114の内壁面に例えば溶接により固定される。第2端部911Eには、補強板913が例えば溶接により固定される。第2端部911Eと補強板913とから第2固定部91Bが構成される。
【0044】
換言すれば、弾性部材91は、振動子8の左右方向端面に固定される第1固定部91Aと、第1固定部91Aに連接される第1屈曲部911Bと、第1屈曲部911Bに連接される平板部911Cと、平板部911Cに連接される第2屈曲部911Dと、第2屈曲部911Dに連接され、固定子5に固定される第2固定部91Bと、を有する。これにより、振動モータ10の駆動時には、第1屈曲部911Bと第2屈曲部911Dが弾性変形する。弾性部材91における変形箇所が2箇所であり、それぞれに応力が分散されるため、弾性部材91の寿命が向上する。
【0045】
また、第1屈曲部911Bと第2屈曲部911Dは、同形状である。これにより、応力が第1屈曲部911Bと第2屈曲部911Dに等しく分散されるため、弾性部材91の寿命がより向上する。
【0046】
なお、弾性部材92は、弾性部材91と同様な構成であるため詳述は省くが、板ばね921と補強板922,923を有する。板ばね921の第1端部921Aと、補強板922とから第1固定部92Aが構成される。第1固定部92Aは、質量体6の右方端面6Rにおける後方側に固定される。板ばね921の第2端部921Eと、補強板923とから第2固定部92Bが構成される。第2固定部92Bは、蓋部11における右側面部115の内壁面に固定される。このような弾性部材92も弾性部材91と同様な効果を奏する。
【0047】
<4.コイル保護機能>
次に、コイル31,32を保護する機能について述べる。
図6は、前後方向に直交する切断面で切断した振動モータ10の一部断面図である。
図6では、振動モータ10における右方の一部構成を示している。
【0048】
上方に配置される溝61は、第1対向面61Aを有する。上方に配置される保護部材41は、右方端面において第2対向面41Aを有する。第1対向面61Aと第2対向面41Aは、左右方向に対向する。なお、
図6において、矢印にて第1対向面61Aと第2対向面41Aの形成される範囲を示す。
【0049】
下方に配置される溝62は、第1対向面62Aを有する。下方に配置される保護部材42は、右方端面において第2対向面42Aを有する。第1対向面62Aと第2対向面42Aは、左右方向に対向する。なお、
図6において、矢印にて第1対向面62Aと第2対向面42Aの形成される範囲を示す。
【0050】
このような構成により、例えば振動モータ10を落下させた場合などに質量体6が過度に左方へ移動した場合でも、質量体6の第1対向面61A,62Aが保護部材41,42の第2対向面41A,42Aと接触するため、質量体6がコイル31,32と接触することが抑制され、コイル31,32を保護できる。
【0051】
ここで、例えば特許文献1のように弾性部材が上下方向に視てV字状の形状を有する場合は、緩衝部材を弾性部材に設け、振動子がコイルに接触するより前に緩衝部材を介して弾性部材の部位同士が接触するようにして振動子の移動を抑制し、コイルを保護することが可能である。しかしながら、上記従来の弾性部材では、屈曲する箇所が1箇所であるため、応力集中が課題であり、本実施形態では、弾性部材91を上下方向に視てS字状に形成している。しかしながら、その場合、仮に例えば第1固定部91Aと第2固定部91Bに緩衝部材を設け、緩衝部材を介して第1固定部91Aと平板部911C、第2固定部91Bと平板部911Cがそれぞれ接触することは望ましくない。すなわち、弾性部材91においては、間接的にでも部位同士が接触することは望ましくない。
【0052】
そこで、本実施形態では、弾性部材91における部位同士が接触するより前に、第1対向面61A,62Aが第2対向面41A,42Aと接触する構成とし、コイル31,32を保護している。
【0053】
図6では図示していない振動モータ10における左方の構成においても同様に、溝61,62は第1対向面を有し、保護部材41,42は左方端面において第2対向面を有する。従って、質量体6が過度に右方へ移動した場合でも、第1対向面が第2対向面に接触することでコイル31,32が保護される。このとき、弾性部材92における部位同士が接触するより前に、第1対向面が第2対向面と接触する構成としている。
【0054】
このように本実施形態では、溝61,62は、第1対向面61A,62Aを有する。保護部材41,42は、第2対向面41A,42Aを有する。第1対向面61A,62Aと第2対向面41A,42Aは、左右方向において対向する。これにより、弾性部材91,92における部位同士を接触させずに、コイル31,32を保護することが可能となる。
【0055】
弾性部材91,92における部位同士が接触することを抑制するために、より具体的には次のような構成としている。
図5に示すように、弾性部材91については、振動子8の静止状態において、第1固定部91Aと平板部911Cとの間の左右方向距離L1、第2屈曲部911Dと左方端面6Lとの間の左右方向距離L2、平板部911Cと第2固定部91Bとの間の左右方向距離L3、および第1屈曲部911Bと左側面部114との間の左右方向距離L4は、いずれも溝61と保護部材41との間に形成される隙間S1,S2のうち右方の隙間S2の左右方向距離L5の半分よりも大きくしている。質量体6が左方に移動した場合、左右方向距離L1~L4は、左右方向距離L5が縮まる長さの半分の長さだけ縮められる。従って、上記のような距離の条件とすることで、質量体6が保護部材41に接触したときに、第1固定部91Aと平板部911C、左方端面6Lと第2屈曲部911D、第2固定部91Bと平板部911C、第1屈曲部911Bと左側面部114のそれぞれの接触が抑制される。
【0056】
また、弾性部材92については、振動子8の静止状態において、第1固定部92Aと平板部921Cとの間の左右方向距離L11、第2屈曲部921Dと右方端面6Rとの間の左右方向距離L12、平板部921Cと第2固定部92Bとの間の左右方向距離L13、および第1屈曲部921Bと右側面部115との間の左右方向距離L14は、いずれも溝61と保護部材41との間に形成される隙間S1,S2のうち左方の隙間S1の左右方向距離L15の半分よりも大きくしている。質量体6が右方に移動した場合、左右方向距離L11~L14は、左右方向距離L15が縮まる長さの半分の長さだけ縮められる。従って、上記のような距離の条件とすることで、質量体6が保護部材41に接触したときに、第1固定部92Aと平板部921C、右方端面6Rと第2屈曲部921D、第2固定部92Bと平板部921C、第1屈曲部921Bと右側面部115のそれぞれの接触が抑制される。
【0057】
換言すれば、振動子8の静止状態において、第1固定部91A,92Aと平板部911C,921Cとの間の左右方向距離L1,L11、第2屈曲部911D,921Dと左右方向端面6L,6Rとの間の左右方向距離L2,L12、平板部911C,921Cと第2固定部91B,92Bとの間の左右方向距離L3,L13、および第1屈曲部911B,921Bと固定子5との間の左右方向距離L4,L14は、いずれも溝61と保護部材41との間の左右方向距離L5,L15の半分よりも大きい。これにより、質量体6が保護部材41に接触した場合に、弾性部材91,92における部位同士、弾性部材91,92と質量体6、弾性部材91,92と固定子5のそれぞれの接触を抑制できる。
【0058】
なお、本実施形態以外の弾性部材を用いる際でも、溝61と保護部材41との間の左右方向距離L5,L15を適切に設計することで、弾性部材の引張および圧縮の範囲を所望の距離に規制することができる。
【0059】
<5.対向面>
図7は、
図6に示す構成における第1対向面61Aと第2対向面41Aを拡大した図である。
図7に示すように、第2対向面41Aは、下方すなわち質量体6に向かうにつれてコイル31側に近づくテーパ面41Sを有する。テーパ面41Sは、上下方向に対して傾き角θだけ傾く。傾き角θは、例えば5度である。第2対向面41Aは、テーパ面41Sの下方に連接される角部41Rを有する。
【0060】
これにより、
図7の矢印に示すように、質量体6すなわち第1対向面61Aが左方に移動して第2対向面41Aと接触しても、第1対向面61Aはテーパ面41Sと接触するため、質量体6が上方Z1方向にぶれることを抑制できる。また、角部41Rがアール部として形成されるため、角部41Rが第1対向面61Aと接触することが抑制される。また、第1対向面61Aの角部61Rがアール部として形成されるため、角部61Rが第2対向面41Aと接触することが抑制される。
【0061】
また、第1対向面62Aと第2対向面42Aについても、第1対向面61Aと第2対向面41Aと同様である。この場合、質量体6が下方Z2方向にぶれることを抑制できる。
【0062】
すなわち、第2対向面41A,42Aは、質量体6に向かうにつれてコイル31,32側に近づくテーパ面を有することが望ましい。これにより、質量体6が上下方向にぶれることが抑制され、筐体1に接触することを抑制できる。
【0063】
<6.電子機器>
先述した実施形態に係る振動モータ10は、例えば
図8に概略的に示す電子機器100に搭載可能である。すなわち、電子機器100は、振動モータ10を備える。電子機器100は、振動モータ10の振動によって、電子機器100を操作する人に触覚的な刺激を与える機器である。
図8に示す電子機器100は、一例としてスマートフォンとしているが、その他にもタブレット、ゲーム機器、および、ウェアラブル端末などを採用できる。
【0064】
図8に示すような電子機器100の場合は、振動モータ10が振動を出力することで、操作者へ着信などの各種の通知を行ったり、操作者へ触覚フィードバックを与えることができる。触覚フィードバックとしては、例えば、
図8に示す凹部100Aを押すと振動モータ10が振動を出力することで、操作者はあたかもボタンを押している感覚を得ることができる。特に、先述したような実施形態の振動モータ10を用いることにより、コイル31,32を保護することができ、コイル31,32の不具合による電子機器100の振動の不具合を抑制できる。
【0065】
<7.その他>
以上、本開示の実施形態を説明した。なお、本開示の範囲は上述の実施形態に限定されない。本開示は、発明の主旨を逸脱しない範囲で上述の実施形態に種々の変更を加えて実施することができる。また、上述の実施形態で説明した事項は、矛盾を生じない範囲で適宜任意に組み合わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本開示の技術は、例えば各種機器に搭載される振動モータに利用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 筐体
2 基板
5 固定子
6 質量体
6L 左方端面
6R 右方端面
7 磁石部材
8 振動子
10 振動モータ
11 蓋部
12 ベースプレート
20 基部
20A,20B 電極部
21,22 折り曲げ部
21A,22A 電極部
31,32 コイル
31L 左方端部
31R 右方端部
41,42 保護部材
41A,42A 第2対向面
41R 角部
41S テーパ面
42 保護部材
61,62 溝
61A,62A 第1対向面
61R 角部
62A 第1対向面
63 貫通孔
91,92 弾性部材
91A,92A 第1固定部
91B,92B 第2固定部
100 電子機器
100 振動モータ
100A 凹部
111 天面部
111A,111B 凹部
112 前側面部
112A,112B 引き出し口
113 後側面部
114 左側面部
115 右側面部
121 突出片
311,321 引き出し線
411 基部
411A 孔部
412 突出片
413 案内部
414,415 凸部
423 案内部
911 板ばね
911A 第1端部
911B 第1屈曲部
911C 平板部
911D 第2屈曲部
911E 第2端部
912,913 補強板
921 板ばね
921A 第1端部
921B 第1屈曲部
921C 平板部
921D 第2屈曲部
921E 第2端部
922,923 補強板