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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091837
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】濾過装置および濾過方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 63/00 20170101AFI20230626BHJP
   A01K 63/04 20060101ALI20230626BHJP
   B01D 35/027 20060101ALI20230626BHJP
   B01D 29/00 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
A01K63/00 A
A01K63/04 D
B01D35/02 C
B01D23/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206657
(22)【出願日】2021-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】521557388
【氏名又は名称】BRIC’s ECO JAPAN 株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135781
【弁理士】
【氏名又は名称】西原 広徳
(74)【代理人】
【識別番号】100217227
【弁理士】
【氏名又は名称】野呂 亮仁
(72)【発明者】
【氏名】堀 直彦
【テーマコード(参考)】
2B104
4D116
【Fターム(参考)】
2B104AA03
2B104AA06
2B104AA18
2B104EB05
2B104ED01
2B104ED19
2B104EE06
2B104EF09
4D116AA08
4D116AA11
4D116BB01
4D116BC01
4D116BC03
4D116BC74
4D116DD01
4D116DD04
4D116FF12B
4D116FF15B
4D116FF16B
4D116FF20B
4D116GG12
4D116GG13
4D116GG29
4D116HH01B
4D116KK03
4D116QA29C
4D116QA29D
4D116QA29F
4D116UU02
4D116UU13
4D116VV07
(57)【要約】
【課題】水生動物を養殖するための貯水部の水を簡単な構成で効率よく浄化できる。
【解決手段】水生動物を養殖するための水を貯水する養殖槽(貯水部)3の水を濾過する濾過装置5であって、筒状に形成され、一方端部51aが水中に位置し、他方端部51bが水面近傍に位置するように配置される本体51と、本体51の他方端部51b近傍に取り付けられる浮体52と、浮体52よりも上方において本体51の他方端部51b近傍に取り付けられる濾過マット53と、本体51の一方端部51aに設けられ、本体51の内部に気泡を発生させる通気部51dとを備えた。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水生動物を養殖するための貯水部に貯水された飼育水を濾過する濾過装置であって、
筒状に形成され、一方端部が前記飼育水の水中に位置し、他方端部が前記飼育水の水面近傍に位置するように配置されて内部に前記飼育水を通過させる通水体と、
前記通水体の他方端部の近傍に取り付けられる浮体と、
前記浮体よりも上方において前記通水体の他方端部の近傍に取り付けられる濾過マットと、
前記通水体の一方端部の近傍に設けられ、気泡を発生させて前記通水体の内部を通過させる気泡発生部を備えた
濾過装置。
【請求項2】
前記気泡発生部は、エアー供給部から供給される空気を前記通水体の内部に導入する空気導入部を有する
請求項1記載の濾過装置。
【請求項3】
前記空気導入部は、複数設けられ、
複数の前記空気導入部は、前記通水体の内周上に等間隔に配置された
請求項2記載の濾過装置。
【請求項4】
前記通水体の一方端部の内径は、前記通水体の他方端部の内径よりも大きい
請求項1、2または3記載の濾過装置。
【請求項5】
前記通水体は、前記一方端部から前記他方端部に向かうにつれて徐々に内径が小さくなる断面変化部を有する
請求項1から4のいずれか1つに記載の濾過装置。
【請求項6】
前記濾過マットは、少なくとも前記浮体の上面の全体を覆うように形成される
請求項1から5のいずれか1つに記載の濾過装置。
【請求項7】
前記浮体は、
前記通水体および前記濾過マットを前記飼育水内で浮かせて少なくとも前記濾過マットの上面を前記飼育水の水面より上方に位置させる構成であり、
前記通水体は、
前記気泡発生部から発生した気泡を内部に通過させて前記飼育水と前記気泡を前記他方端部から上方周囲へ溢れ出させる構成であり、
前記濾過マットは、
前記飼育水が通過できる通水性を有し、かつ、前記他方端部から溢れ出た前記飼育水が前記濾過マットの外周へ直接到達せずに前記濾過マット内を通過する大きさに形成されている
請求項1から6のいずれか1つに記載の濾過装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つに記載の濾過装置を用いて前記飼育水を濾過する濾過方法であって、
前記気泡発生部によって前記通水体の内部に気泡を発生させることによって、前記通水体において前記一方端部から前記他方端部に向かう水流を発生させ、
前記水流によって前記一方端部から前記貯水部に貯水された前記飼育水を吸い上げ、吸い上げた水を前記他方端部から前記飼育水の水面よりも上方に噴出させ、
前記他方端部から噴出した前記飼育水を前記貯水部に戻る前に前記濾過マットに通過させる
濾過方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水生動物を養殖するための貯水部(養殖池または養殖槽)の水を濾過する濾過装置および濾過方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水生動物を養殖する養殖池を浄化する養殖池浄化装置が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1記載の養殖池浄化装置は、用水池である養殖池もしくは養殖池の浄化設備からポンプで水を汲上げ、その水に水エジェクターより吸込んだ空気を混ぜ、活水器を通して養殖池に戻すものである。これにより、初期投資さえすれば、労力をかけずに養殖池の浄化ができるとされている。
【0003】
しかしながら、特許文献1記載の養殖池浄化装置では、養殖池浄化装置とは別に浄化装置が必要になるか、あるいは、養殖池から直接汲上げる場合には活水器が目詰まりしないように固形物の混入を防止するこし器を設ける必要がある等、設備が大掛かりになってしまうという問題がある。このため、できるだけ簡単な構成で養殖池または養殖槽の水を浄化できることが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-263797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、上述の問題に鑑みて、水生動物を養殖するための貯水部の水を簡単な構成で効率よく浄化できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、水生動物を養殖するための貯水部に貯水された飼育水を濾過する濾過装置であって、筒状に形成され、一方端部が前記飼育水の水中に位置し、他方端部が前記飼育水の水面よりも上方に位置するように配置された本体と、前記本体の他方端部に取り付けられる浮体と、前記浮体よりも上方において前記本体の他方端部に取り付けられる濾過マットと、前記本体の一方端部に設けられ、前記本体の内部に気泡を発生させる気泡発生部を備えた濾過装置、およびこれを用いた濾過方法であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明により、水生動物を養殖するための貯水部の水を簡単な構成で効率よく浄化できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】養殖システムの構成図。
図2】貯水部と濾過装置の構成を説明する説明図。
図3】濾過装置の構成を説明する説明図。
図4】濾過マットの構成を説明する平面図。
図5】変形例の濾過装置の構成を説明する説明図。
図6】変形例の濾過装置の構成を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の一実施形態を図面と共に説明する。
【0010】
図1は、水生動物を養殖する養殖システム1の構成図である。図2は、貯水部3と濾過装置5の構成を説明する説明図である。図1および図2に示すように、養殖システム1は、飼育水を貯水部3に供給する給水装置2と、飼育水を貯留した貯水部3と、貯水部3からの排水を処理する排水装置4と、貯水部3に貯留された飼育水を物理濾過するための濾過装置5とを有する。
【0011】
養殖システム1は、陸上に人工的に創設した環境下で養殖を行う陸上養殖方式のシステムである。具体的には、養殖システム1は、水生動物を養殖するための水(飼育水)を貯留した貯水部3において水生動物を養殖する。
【0012】
また、この養殖システム1は、屋内に設置されている。これにより、貯水部3に雨水等が入り込まないようにしている。これにより、天候の変化に左右されることなく、安定して水生動物の養殖を行うことができる。また、この養殖システム1は、他の生物の侵入を防止することができるなど、外部との接触が少ないため、病気の発生を抑制することができる。さらに、この養殖システム1の設置されている屋内は、空調設備を備えている。これにより、温度管理をして水生動物の成長に適切な温度(環境)を維持できるようにしている。
【0013】
このような養殖システム1で養殖することができる水性生物としては、たとえば、ウナギ、サケ、マス、トラフグ等の魚類やエビ(クルマエビ、バナメイエビ)等の甲殻類等がある。なお、この養殖システム1で養殖する水性生物は、陸上養殖方式で飼育水を用いて養殖可能な生物であれば特に限定されない。
【0014】
なお、陸上養殖方式の養殖システムとしては、天然環境から水を継続的に引き込み飼育水として使用するかけ流し式、飼育水を水浄化装置で浄化しながら循環利用する循環式等があるが、いずれの形式であっても、飼育水の水質悪化を防止するために飼育水中のごみ(残餌、水性生物の糞等)を除去するための物理濾過を行う必要がある。
【0015】
図2に示すように、貯水部3は、適宜の量の飼育水W(例えば0.8トン~4.0トンの水)を貯水できる大きさに形成されている。貯水部3は、たとえば、内部中空で上面を解放した容器で形成された養殖槽として構成することができる。また、貯水部3は、天然の地形を利用するか、あるいは地面に窪み(凹部)を設けることによって形成された養殖池として構成することもできる。本実施形態では、貯水部3は、内部中空で上面を解放したFRP(Fiber Reinforced Plastics)製の直方体の容器で構成されている。
【0016】
また、給水装置2と貯水部3は、給水パイプ2aで接続されている。給水装置2は、天然環境(海、河川、漁業用水または地下水等)から得た新しい水を給水パイプ2aから貯水部3に供給する。給水装置2は、必要に応じて水を飼育水Wに適した状態に適宜処理する処理部や給水ポンプ等を有する。
【0017】
また、排水装置4と貯水部3は、排水パイプ4aで接続されている。排水装置4は、必要に応じて排水された飼育水Wを処理する処理部や排水ポンプ等を有する。また、貯水部3に貯水されている飼育水Wが一定量以上になった場合に飼育水Wが貯水部3からオーバーフローするようにしておき、排水装置4は、貯水部3からオーバーフローした飼育水Wを排水するようにしてもよい。
【0018】
なお、給水装置2と排水装置4とを接続し、飼育水Wを循環利用するようにしてもよい。この場合、給水装置2と排水装置4との間に、物理濾過、生物濾過または吸着濾過等を行い、飼育水Wを浄化する浄化装置を設けてもよい。
【0019】
図3は濾過装置5の構成を説明する説明図である。図4は濾過マット53の構成を説明する平面図である。図2および図3に示すように、濾過装置5は、本体51と、浮体52と、濾過マット53と、エアー供給部54とを有する。
【0020】
本体51は、通水可能に筒状に形成されている。本実施形態では、本体51は、断面円形状の円筒状に形成されているが、これに限らず四角筒や六角筒等の適宜の筒状に形成されてもよい。また、本体51は、外周に孔等が形成されておらず、一方端部から他方端部まで外周を隙間なく覆っている。また、本体51は、一方端部(下端部)51aが水中に位置し、他方端部(上端部)51bが水面よりもわずかに上方(水面近傍に)に位置するように配置されている。すなわち、他方端部51bを除く本体51の大部分は飼育水Wの中(水中)に位置し、本体51は、飼育水Wに浮いている状態となっている。なお、本体51は、一方端部51aと他方端部51bの上下関係が逆転しない程度であれば本体51の軸線が傾いた姿勢であってもよいが、飼育水W内において、本体51の軸線がほぼ鉛直方向となるような姿勢となることが望ましい。
【0021】
本体51は、水と同等か水よりも比重が大きい(少なくとも比重が0.9以上の)材料(金属材料、樹脂材料等)によって形成されている。本実施例では、本体51は、塩化ビニルまたはポリ塩化ビニルによって形成されている。
【0022】
また、本体51の一方端部51aの内径(直径)D1は、本体51の他方端部51bの内径(直径)D2よりも大きい。すなわち、本体51の一方端部51a側の開口面積は、本体51の他方端部51b側の開口面積よりも大きい。たとえば、一方端部51aの内径D1は、80mm~100mmであり、他方端部51bの内径D2は、50mm~70mmである。また、内径D1は、内径D2に対して1.2~1.8倍の大きさである。本実施形態では、内径D1は、89.5mmであり、内径D2は、60.5mmである。
【0023】
さらに、本体51は、一方端部51aから断面一定で延びる広大部51eと、他方端部51bから断面一定で延びる狭小部51fと、広大部51eおよび狭小部51fを接続し、かつ、一方端部51aから他方端部51bに向かうにつれて徐々に内径が小さくなる断面変化部51cを有する。断面変化部51cは、一方端部51aから他方端部51bに向かうにつれて徐々に内径が小さくなる縮径部ということもでき、本体51は、他方端部51bから一方端部51aに向かうにつれて徐々に内径が大きくなる拡径部ということもできる。断面変化部51cの内周面は、一方端部51aから他方端部51bに向かうにつれて徐々に内径が小さくなるテーパ面となっている。
【0024】
また、断面変化部51cは、本体51の長手方向(本体51の軸線方向)の中央よりも一方端部51a側に設けられている。すなわち、本体51の軸線方向における狭小部51fの長さは、本体51の軸線方向における広大部51eの長さよりも長い。
【0025】
図2ないし図4に示すように、浮体52および濾過マット53は、本体51の他方端部51bの近傍に取り付けられる。本実施形態では、浮体52は、平板状に形成されている。浮体52の外形形状(本体51の軸線方向から見た場合の形状)は、円形状であってもよいし、矩形状であってもよい。図4に示すように、本実施形態では、浮体52の外形形状は、平面視が正方形状となっている。また、浮体52の中央部には、本体51を通すための貫通孔52aが形成されており、この貫通孔52aの内径は、本体51の外径と略同じ大きさとなっている。このため、浮体52の貫通孔52aが本体51(他方端部51b)に嵌め込まれることによって固定されている。なお、浮体52は、固定部材を用いて本体51に固定されているか、あるいは接着等の方法で本体51に固定されてもよい。
【0026】
浮体52は、木材や発泡樹脂材料等の水よりも比重が小さい材料(比重が1.0未満の材料)によって形成されている。たとえば、浮体52は、発泡ポリスチレンや発泡ポリエステルによって形成されている。浮体52は、本体51並びに本体51に取り付けられる濾過マット53を飼育水Wに浮かせることができる程度の浮力を有する構成になっている。これにより、本体51、浮体52および濾過マット53は、飼育水Wに浮いた状態となっており、少なくとも本体51の他方端部51bおよび浮体52の上面は、飼育水Wの水面よりも上方に位置する。
【0027】
なお、浮体52は、内部に気体を封入した中空体であってもよい。この場合、浮体52は、本体51、浮体52および濾過マット53を飼育水Wに浮かせることができる構成であれば、水よりも比重が大きい材料で形成されていてもよい。
【0028】
図2ないし図4に示すように、濾過マット53は、浮体52よりも上方において本体51の他方端部51bに取り付けられる。この濾過マット53は、湾曲可能な柔軟性のある素材で形成され、本体51および浮体52に対して着脱可能(交換可能)に設けられている。すなわち、濾過マット53は、濾過装置5に対し着脱可能に設けられている。また、濾過マット53は、浮体52と同様に平板状に形成されており、厚さが1~3cmに形成されている。さらに、濾過マット53の中央部には、本体51を通すための貫通孔53aが形成されており、この貫通孔53aの内径は、本体51の外径と略同じ大きさとなっている。したがって、濾過マット53は、本体51の他方端部51bに対し隙間なく配置されている。
【0029】
さらに、濾過マット53は、少なくとも浮体52の上面の全体を覆うように形成されている。すなわち、本体51(濾過マット53の貫通孔53a)から濾過マット53の側端部までの距離L1は、本体51(浮体52の貫通孔52a)から浮体52の側端部までの距離L2よりも長い。つまり、平面視において濾過マット53の外側の輪郭の全体が、浮体52の外側の輪郭よりも外側に位置するようになる。
【0030】
また、図4に示すように、本体51(濾過マット53の貫通孔53a)から濾過マット53の側端部までの最短部分の距離(最短距離)L3は、本体51(他方端部51b)の内径(直径)D2の3倍以上の距離であり、好ましくは本体51(他方端部51b)の内径の4倍以上の距離であり、より好ましくは本体51(他方端部51b)の内径の5倍以上の距離である。
【0031】
さらに、濾過マット53と浮体52との間(上下方向)には他の部材が設けられるか、あるいは隙間があってもよいが、濾過マット53と浮体52とが隙間なく上下に重ねられていることが望ましい。また、濾過マット53は、濾過マット53の上面と他方端部51bの端面とがほぼ同じ高さとなるか、濾過マット53の上面が他方端部51bの端面よりも下方に位置するのが望ましい。
【0032】
濾過マット53は、網目状に形成された繊維、不織布またはスポンジ等で構成され、通水性を有し、かつ、濾過マット53を飼育水Wが通過した際に残餌、水性生物の糞等のごみを吸着することができる吸着マットである。濾過マット53を構成する素材としては、コットン、ウールなどの天然繊維、樹脂系繊維(ポリウレタン、ポリエステル、ポリ塩化ビニリデン)、耐水紙または不織布等である。
【0033】
エアー供給部54は、シリコンチューブまたはゴムチューブ等である通気チューブ54aを介して空気を連続的または断続的に外部に送り出すエアーポンプである。通気チューブ54aの一方端部はエアー供給部54の吐出口に接続され、通気チューブ54aの他方端部は本体51の一方端部51aに設けられた通気部(空気導入部)51dに接続されている。本実施形態では、エアー供給部54は、2つの吐出口を有しており、それぞれの吐出口に通気チューブ54aが接続されている。エアー供給部54の各吐出口における吐出量は、150~250L/minである。本実施形態のエアー供給部54の各吐出口における吐出量は、200L/minである。なお、エアー供給部54の吐出量は、本体51の内径D1または内径D2に応じて適宜設定することができる。また、本実施形態では、通気部51dは、本体51の側壁を貫通する貫通孔を有する通気管によって構成されている。また、通気部51dは、少なくとも断面変化部51cよりも一方端部51a側に配置される。
【0034】
また、本実施形態では、通気部51dは、複数設けられている。複数の通気部51dは、本体51の長手方向における同じ位置の内周上に等間隔に(内周上に均等に)配置されている。本実施形態では、2つの通気部51dが本体51の軸線CLを挟んで対向する位置に設けられる(本体51の内周上に180°間隔で配置されている)。なお、通気部51dは、1つだけでもよいし、3つ以上設けられていてもよい。
【0035】
エアー供給部54から供給された空気は、通気チューブ54aおよび通気部51dを経由して、本体51の内部に導入される。ここで、図3に示すように、通気部51d(一方端部51a)の先端部分は飼育水Wの水中に位置するため、本体51の内部に導入された空気は、気泡Bとなる。すなわち、エアー供給部54から供給された空気によって本体51の内部に気泡Bが発生する。エアー供給部54は、連続的または断続的に空気を供給するため、本体51の内部に多数の気泡Bが発生する。
【0036】
この気泡Bは、浮力FPによって一方端部51aから他方端部51bに向かって(上方に向かって)移動する。このとき、多数の気泡Bが一方端部51aから他方端部51bに向かって移動することに伴って、本体51の内部において一方端部51aから他方端部51bに向かう水流が生じる。この水流によって一方端部51aから残餌、水性生物の糞等のごみMを含有する貯水部3の飼育水Wが吸い上げられる。一方端部51aから吸い上げられた飼育水Wは、本体51の内部を通って上方に向かい、他方端部51bから上方(水面よりも上方)に溢れ出る(噴出する)。すなわち、本実施形態では、本体51が内部に飼育水Wを通過させる通水体として機能する。このため、一方端部51aは、通水体の一方端部ということもでき、他方端部51bは、通水体の他方端部ということもできる。
【0037】
他方端部51bから溢れ出た飼育水Wは、濾過マット53を通過し、浮体52の上面を流れて貯水部3に戻る。ここで、飼育水Wが濾過マット53を通過する際に、飼育水Wに含有されるごみMが濾過マット53に吸着される。ごみM以外の飼育水Wは、浮体52の上面を流れて貯水部3に戻る。したがって、浮体52の上面を流れて貯水部3に戻る飼育水Wは、ごみが除去されて浄化された状態となっている。
【0038】
また、浮体52および濾過マット53は、他方端部51bから噴出した飼育水Wが濾過マット53の上面に到達する範囲(落水範囲)WAを全てカバーするように構成される。したがって、他方端部51bから溢れ出た飼育水Wは、濾過マット53の外周へ直接到達せずに必ず濾過マット53内を通過する。
【0039】
以上の構成および方法により、大掛かりな設備を設けることなく簡単な構成で養殖池または養殖槽等の貯水部3に貯水された飼育水Wを効率よく濾過ないし浄化でき、飼育水Wの水質を良好な状態に保つことができる。
【0040】
また、濾過装置5がエアー供給部54から供給される空気を本体51の内部に導入する通気部51dを有するので、簡単な構成で本体51の内部に気泡Bを発生させ、貯水部3に貯水された飼育水Wを濾過ないし浄化することができる。
【0041】
さらに、複数の通気部51dが本体51の内周上に等間隔に配置されているので、本体51の内部にバランスよく、かつ多数の気泡Bを発生させることができる。このため、本体51の内部に生じる水流に偏りを無くすことができ、かつ、水流の勢いを増大させることができるので、貯水部3の飼育水Wを効率よく吸い上げることができる。
【0042】
さらにまた、本体51の一方端部51aの内径D1が本体51の他方端部51bの内径D2よりも大きいので、本体51の内部に生じる水流の流速を高め、貯水部3の飼育水Wを効率よく吸い上げることができる。また、貯水部3の飼育水Wを吸い上げる入口となる本体51の一方端部51aの内径D1を大きくすることによって、本体51を流れる水流の流量を増大させることができ、飼育水Wを迅速に浄化することができる。
【0043】
また、本体51は、一方端部51aから他方端部51bに向かうにつれて徐々に内径が小さくなる断面変化部51cを有するので、本体51の断面積変化による水流の圧力損失を低減することができ、本体51を流れる水流の流量を増大させることができる。特に、断面変化部51cがテーパ面であるので、水流の圧力損失を効果的に低減することができる。
【0044】
さらに、濾過マット53が、少なくとも浮体52の上面の全体を覆うように形成されるので、他方端部51bから噴出した飼育水Wをできるだけ広い面積で濾過マット53に通過させることができ、飼育水Wのごみを効率よく取り除くことができる。
【0045】
また、濾過マット53は、中央に形成された貫通孔53aに本体51の他方端部51bを挿通し、浮体52の上に被せられた状態である(接着などによる固定が行われていない)。このため、ある程度汚れが蓄積すれば濾過マット53を本体51から取り外して新しい濾過マット53に交換することを容易に実現できる。
【0046】
さらにまた、養殖システム1の全体が屋内に設置され温度管理されていることにより、貯水部3に貯水された飼育水の温度を一定に保つことができ、エサの食いつきをよくして飼育に最適な環境で生成生物を育てることができる。また、天候、災害等の被害を受けづらく、台風・赤潮など季節的に起こる自然現象を回避できる。さらに、屋内のため、他生物によって捕食されることも無い。さらにまた、生育環境や栄養状態による個体差が少なく、見た目や味、肉質を安定させることができる。また、生育場所やエサの記録等、生育状況の記録を残しやすく、トレーサビリティを向上させることができる。
【0047】
この発明の濾過装置は上記実施形態の濾過装置5に対応し、以下同様に、本体は本体51に対応し、浮体は浮体52に対応し、濾過マットは濾過マット53に対応し、気泡発生部は通気部51d、通気チューブ54aおよびエアー供給部54に対応し、空気導入部は通気部51dに対応し、断面変化部は断面変化部51cに対応するが、この発明は、本実施形態に限られず他の様々な実施形態とすることができる。
【0048】
たとえば、上述した実施形態では、エアー供給部54は、貯水部3の外部に設けられているが、小型化できる場合は本体51に取り付けてもよい。この場合、浮体52は、本体51および濾過マット53に加え、エアー供給部54も飼育水Wに浮かせることができる程度の浮力を有する構成になっている。このようにすれば、濾過装置5の構成をより簡単にすることができ、ひいては濾過装置5を持ち運び可能にすることができ、貯水部3の状況に応じて濾過装置5を設置することができるなど、利便性を向上させることができる。
【0049】
また、上述の実施形態では屋内での空調により温度調整をしていたが、これに限らず、貯水部3にヒータ等の温調装置を備え、飼育水の温度を管理できるようにしてもよい。この場合でも適切な温度を維持して水生動物の成長を促進させることができる。
【0050】
さらに、上述の実施形態では本体51が一方端部51aから他方端部51bにむかうにつれて内径が変化するようにしたが、図5に示すように、本体51を内径一定(断面一定)のストレート管(ストレートパイプ)としてもよい。このようにすれば、本体51の構成を簡略化することができ、濾過装置5をより簡単な構成にすることができる。
【0051】
さらにまた、上述の実施形態では本体51が内部に飼育水Wを通過させる通水体として機能するようにしたが、本体51の上端部が浮体52の上面よりも低い位置に設定される場合、本体51および貫通孔52aによって通水体が構成されてもよい。また、本体51の上端部に別の筒体を取り付け、本体51および別の筒体によって通水体が構成されてもよい。これらの場合、本体51の上端部が水面よりも下方に位置することがある。
【0052】
また、図6に示すように、浮体52に対し濾過マット53を所定割合(5~10%)以上大きくすることが望ましい。なお、図6では、説明の便宜上、濾過装置5の一部分のみを示している。濾過マット53が湾曲可能な柔軟性のある素材で形成されているため、によって、浮体52よりも外側に位置する濾過マット53の外側端部が自重により下方に湾曲した状態となる。このようにすれば、濾過マット53の外側端部に形成される湾曲部53bで効率よくごみを吸着することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
この発明は、水生動物を養殖する産業に利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1…養殖システム
2…給水装置
3…貯水部
4…排水装置
5…濾過装置
51…本体
51a…一方端部
51b…他方端部
51c…断面変化部
51d…通気部
52…浮体
53…濾過マット
54…エアー供給部
54a…通気チューブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6