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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091839
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】シャワーヘッド
(51)【国際特許分類】
   B05B 1/18 20060101AFI20230626BHJP
   A47K 3/28 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
B05B1/18 101
A47K3/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206663
(22)【出願日】2021-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000242378
【氏名又は名称】株式会社KVK
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 純也
【テーマコード(参考)】
2D132
4F033
【Fターム(参考)】
2D132FA01
2D132FJ25
2D132FJ26
2D132FJ28
2D132FJ31
2D132FJ35
4F033AA11
4F033BA04
4F033CA12
4F033DA05
4F033EA01
4F033GA04
4F033GA11
4F033NA01
(57)【要約】
【課題】湯水の流路を切り替えて異なる吐出形態を選択することができるシャワーヘッドの厚みを薄くする。
【解決手段】ヘッドケースに固定されたインナーカップ20と、インナーカップ20からの湯水の流路を切り替えて異なる吐出形態を選択することができる吐出ユニットとを備えたシャワーヘッドにおいて、吐出ユニットは、インナーカップ20に係合してインナーカップ20と相対回動可能な操作部40を備え、操作部40の回動によりインナーカップ20からの湯水の流路を切り替えることができるものであり、インナーカップ20に係合板282を設け、操作部40に係合リブ45を設けて両者を相対回動可能に係合し、インナーカップ20の係合板282を、操作部40の回動方向において、インナーカップ20へ湯水を供給する接続部24と重ならない位置に設けた。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドケースに固定された通水部材と、前記通水部材からの湯水の流路を切り替えて異なる吐出形態を選択することができる吐出ユニットとを備えたシャワーヘッドにおいて、
前記吐出ユニットは、前記通水部材に係合して前記通水部材と相対回動可能な操作部を備え、前記操作部の回動により前記通水部材からの湯水の流路を切り替えることができるものであり、
前記通水部材と前記操作部とを相対回動可能に係合する第1係合部を前記通水部材と前記操作部とに設け、
前記通水部材の第1係合部を、前記操作部の回動方向において、前記通水部材へ湯水を供給する接続部と重ならない位置に設けたシャワーヘッド。
【請求項2】
前記操作部は外嵌筒部を有し、前記通水部材は前記外嵌筒部に少なくとも一部が内嵌される円板部を有し、
前記操作部の第1係合部は前記外嵌筒部の内周面から径方向内側に向かう係合リブであり、
前記通水部材の第1係合部は前記係合リブに係合する円板部である請求項1に記載のシャワーヘッド。
【請求項3】
前記ヘッドケースと前記操作部とを相対回動可能に係合する第2係合部を前記ヘッドケースと前記操作部とに設け、
前記ヘッドケースの第2係合部を、前記操作部の回動方向において、前記通水部材の接続部と重なる位置に設けた請求項1又は請求項2に記載のシャワーヘッド。
【請求項4】
前記操作部の第2係合部は、前記操作部の第1係合部よりも前方に形成されている請求項3に記載のシャワーヘッド。
【請求項5】
前記操作部の第2係合部は前記外嵌筒部の外周面に設けた溝部であり、前記ヘッドケースの第2係合部は前記ヘッドケースに設けた係合片である請求項2を引用する請求項3又は請求項4に記載のシャワーヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャワーヘッド、特に湯水の流路を切り替えて異なる吐出形態を選択することができるシャワーヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
湯水の流路を切り替えて異なる吐出形態を選択することができるシャワーヘッドが知られている。特許文献1に記載のシャワーヘッドは、ヘッドケースやこれに固定された通水部材に対して回動可能な操作環を有している。この操作環の操作摘みを回動させると切替機構により湯水の流路が切り替えられて異なる吐出形態にて湯水を吐出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-25132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、操作環は通水部材と相対回動可能に通水部材に係合されている。一方、通水部材は内部に湯水を供給する流路との接続部を基端側に有しており、通水部材における操作環との係合部も接続口の前方に位置している(特許文献1の図1参照)。ここで、シャワーヘッド全体の前後方向の厚みを薄くしようとすれば、操作部と通水部材との係合部と通水部材の接続部との前後の距離が近づいて干渉してしまうため、それ以上シャワーヘッドの厚み(前後長)を薄くすることができなくなる。
【0005】
そこで、本発明は、湯水の流路を切り替えて異なる吐出形態を選択することができるシャワーヘッドの厚みを薄くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための発明は、ヘッドケースに固定された通水部材と、前記通水部材からの湯水の流路を切り替えて異なる吐出形態を選択することができる吐出ユニットとを備えたシャワーヘッドにおいて、前記吐出ユニットは、前記通水部材に係合して前記通水部材と相対回動可能な操作部を備え、前記操作部の回動により前記通水部材からの湯水の流路を切り替えることができるものであり、前記通水部材と前記操作部とを相対回動可能に係合する第1係合部を前記通水部材と前記操作部とに設け、前記通水部材の第1係合部を、前記操作部の回動方向において、前記通水部材へ湯水を供給する接続部と重ならない位置に設けた。
【0007】
また、前記操作部は外嵌筒部を有し、前記通水部材は前記外嵌筒部に少なくとも一部が内嵌される円板部を有し、前記操作部の第1係合部は前記外嵌筒部の内周面から径方向内側に向かう係合リブであり、前記通水部材の第1係合部は前記係合リブに係合する円板部である。
【0008】
前記ヘッドケースと前記操作部とを相対回動可能に係合する第2係合部を前記ヘッドケースと前記操作部とに設け、前記ヘッドケースの第2係合部を、前記操作部の回動方向において、前記通水部材の接続部と重なる位置に設けた。
【0009】
前記操作部の第2係合部は、前記操作部の第1係合部よりも前方に形成されている。また、前記操作部の第2係合部は前記外嵌筒部の外周面に設けた溝部であり、前記ヘッドケースの第2係合部は前記ヘッドケースに設けた係合片である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、湯水の流路を切り替えて異なる吐出形態を選択することができるシャワーヘッドの厚みを薄くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】シャワーヘッドの斜視図。
図2】シャワーヘッドの分解斜視図。
図3図3(a)はインナーカップ本体及びカバーの正面図、図3(b)はインナーカップの半断面図。
図4】吐出ユニットの分解斜視図。
図5図5(a)は操作部の正面図、図5(b)は同底面図、図5(c)は同側面図、図5(d)は断面図。
図6図6(a)はインナーカバーと操作部の位置関係を示す正面図、図6(b)は同半断面図、図6(c)は操作部を回動させた場合の正面図、図6(d)は同半断面図、図6(e)は操作部を回動させた場合の正面図、図6(f)は同半断面図。
図7図7(a)は斜め前方から見た切替部の分解斜視図、図7(b)は斜め後方から見た切替部の分解斜視図。
図8図8(a)は操作部が散水位置の流路を示す断面図、図8(b)は操作部が噴霧水位置の流路を示す断面図、図8(c)は操作部が直流水位置の流路を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1図8にしたがって説明する。
図1にシャワーヘッド1の斜視図を示す。同図に示すシャワーヘッド1は先端前面から湯水を吐出することができ、その吐出形態を直流水(ストレート水)、散水(シャワー水)、噴霧水(ミスト水)の3種から任意に選択することができる。なお、シャワーヘッド1の基端には図示しないホース及び水栓が接続されており、水栓にて温度及び流量が調整された湯水がホースを通ってシャワーヘッド1に送られてくる。
【0013】
図2にシャワーヘッド1の分解斜視図を示す。同図に示すようにシャワーヘッド1は、その外殻をなすヘッドケース10と、通水部材としてのインナーカップ20と、インナーカップ20からの湯水を異なる吐出形態に切り替えて吐出することのできる吐出ユニット30とを有する。なお、シャワーヘッド1及びこれを構成する各部材において、先端、基端、前方(前面)、後方(背面)とは、図1に矢印にて図示した方向をいう。
【0014】
図2に示すように、ヘッドケース10は本体ケース11とこれに嵌合する前面ケース12とを有し、それぞれABS樹脂にて成形されて、その表面が金属メッキされている。本体ケース11は、側壁13及び底壁14を有し前面が開口した円筒状のヘッド部11Aと、このヘッド部11Aの基端に連通し、前面が開口した半円筒状の背面ハンドル部11Bを一体成形したものである。ヘッド部11Aの基端側の側壁13と背面ハンドル部11Bは前縁の高さ(前後方向の長さ)が低くなっており、ここに前面ケース12が装着される。ヘッド部11Aの底壁14には前方に突出するボス15が4箇所形成されており、ボス15に内側に雌ネジが形成されている。
【0015】
前面ケース12は背面が開口した半円筒状の前面ハンドル部12Aと、前面ハンドル部12Aの先端に一体成形された円弧状の枠部12Bを有し、正面視で略Y字状をなす。枠部12Bの前面はヘッド部11Aの側壁13に直交する面を有し、先端縁がヘッド部11Aの側壁13と同心円かつ側壁13よりも小径の円弧状に形成された係合片16を有する。この係合片16はヘッドケース10の第2係合部を構成する。係合片16は側壁13の前縁と同じ高さとなっており、側壁13の延長線(側壁13の正面視における円弧を基端に延長させた場合の軌跡)よりも径方向(吐出ユニット30の回動軸に直交する方向)内側に位置する。
【0016】
図2図3に示すように、インナーカップ20はインナーカップ本体21と、インナーカップ本体21の前面に位置するカバー22とを有する。インナーカップ本体21は前面が開口した有底円筒状をなす円筒部23を有し、この円筒部23の基端に管状の接続部24が形成されている。接続部24の基端は径方向外側に延び、シャワーヘッド1のハンドル内に位置する配管(図2に2点鎖線で示す)に接続されており、インナーカップ20へと湯水を供給する。円筒部23内には同心円状に外側から案内溝25、円状流路26、嵌合部27が形成されている。案内溝25は基端を除く範囲に周方向(吐出ユニット30の回動方向)に形成された正面視(図3(a))でC字状の溝であり、後述する切替部50に形成された案内筒部515を回動可能に遊嵌している。案内溝25の内側には円筒状の仕切り壁251を挟んで円状流路26が形成されている。円状流路26の基端には接続部24の先端が連通して開口している。円状流路26の中央には円筒状の嵌合部27が位置し、嵌合部27の中心には内側に雌ネジを有するボス271が形成されている。このボス271に吐出ユニット30が回動可能に固定され、吐出ユニット30の回動軸はボス271を通る。
【0017】
図3(b)に示すように、円筒部23の前端外周から鍔部28が形成されている。鍔部28は円筒部23の前端外縁から径方向外側に向かって延びる円板状をなし周方向において接続部24と重なる箇所を除いた範囲に形成されている。なお、図3等では接続部24と周方向に重なる箇所にも鍔部28が位置するように図示されているが、成型上、鍔部28の前面形状を接続部24の前面にも形成しているだけであり、この箇所には鍔部28は形成されていない。鍔部28には周方向の4箇所に本体ケース11の底壁14のボス15に対応したネジ孔281が形成されており、インナーカップ20はネジ29(図2参照)により本体ケース11に回動不能に固定されている。
【0018】
図3(b)に示すように、鍔部28の外周部分には背面側に形成された段差を介して薄肉の係合板282が形成されており、この係合板282はインナーカップ20の第1係合部を構成する。図3(a)に示すように係合板282は鍔部28のうち正面視で先端を12時とした場合の12時、3時、9時となる位置には形成されていない。すなわち、鍔部28のこれらの位置は係合板282の幅だけ径方向内側に凹んでいる。これは成形及び操作部40との組付けを考慮したものである。なお、鍔部28の一部である係合板282が円板部となる。
【0019】
カバー22は、図3(b)に断面図を示すように円状流路26の前面を覆うものである。カバー22は円形の板材であり、外周縁の2箇所には凸片221が形成されて円状流路26の仕切り壁251に形成された切り欠きにて位置決めされている。カバー22には中央の貫通孔222とこれを挟んで対向する2つで対をなす扇形の吐出口223が貫通形成されており、接続部24から円状流路26に送られてきた湯水は2つの吐出口223から湯水を前方に吐出可能となっている。
【0020】
図4に吐出ユニット30の分解斜視図を示す。同図に示すように吐出ユニット30は図中右から操作部40、切替部50、シャワーノズル60、シャワーフェイス70、整流器80を含んで構成される。なお、操作部40には後述する摺動リング49が装着されているが、摺動リング49は吐出ユニット30には含まれない。
【0021】
図5(a)に操作部40の正面図、図5(b)に同底面図、図5(c)に同側面図、図5(d)に同断面図を示す。操作部40はABS樹脂で形成されている。操作部40は円環状の表面部41と表面部41から後方に円筒状に延びる外嵌筒部42とを有する。この外嵌筒部42がインナーカップ20の一部に外嵌した状態で係合し、インナーカップ20に対して回動可能となっている。表面部41の外径はヘッドケース10の側壁13と同径であり、表面部41の基端には前方に突出する摘み43が形成されていて使用者はこの摘み43を把持して操作部40を回動させることができる。なお、操作部40において基端及び先端とは、操作部40が回動中心にある位置(図1の位置)における先端(図中上)及び基端(図中下)をいう。外嵌筒部42の内周面には一定の高さ範囲に雌ネジ44が形成されている。この雌ネジ44は後述するシャワーフェイス70に螺合するものである。外嵌筒部42の内周面のうち雌ネジ44より後方には内周面から径方向内側に向かう一定幅の係合リブ45が円弧状に形成されており、これは操作部40の第1係合部を構成する。係合リブ45は外嵌筒部42の先端と基端とを結ぶ線に対称に形成されており、係合リブ45のうち最も離れて位置する部分間の角度範囲は約200度となっている。係合リブ45は周方向に連続して形成されてはおらず、例えば図5(a)にて先端を12時とした場合の12時、3時、9時の位置には形成されていない。これは成形上及びインナーカップ20との組付けを考慮したものである。外嵌筒部42の内周面において係合リブ45が形成されていない左右位置の前方には径方向内側に向かう位置決めリブ46がそれぞれ形成されており、正面視では各位置決めリブ46が左右の係合リブ45が形成されていない箇所に重なる。係合リブ45と位置決めリブ46との前後方向の間隔は、インナーカップ20の係合板282の厚みよりも長い。また、外嵌筒部42のうち係合リブ45と同じ高さであって係合リブ45が形成されていない周方向部分には外嵌筒部42も形成されておらず、同部分は図5(c)に示すように係合リブ45の高さ分だけ短く切り欠かれたような凹部47となっている。
【0022】
操作部40の表面部41の背面かつ外嵌筒部42の前端外周面には径方向外側に開口する第2係合部及び溝部としての係合溝48が全周に亘って形成されている。図8に示すように、この係合溝48には全体としてリング状をなし断面が径方向外側に開口するコ字状の摺動リング49が装着されている。摺動リング49は基端に切れ目を挟んで端部を有する略Ω状をなし、その両端部からそれぞれ径方向外側に延びる係止片49aを有する。係止片49aが前面ケース12に係止されて摺動リング49は前面ケース12に回動不能に固定されている。摺動リング49は断面コ字状において平行に延びる2片のうち前方(図8の上方)に位置する前片が後方に位置する後片よりも径方向外側に長く形成されている。摺動リング49を係合溝48に装着した状態では係合溝48の内面は摺動リング49に覆われる。そして、係合溝48及び摺動リング49内に前面ケース12の係合片16が挿入されて、ヘッドケース10及び摺動リング49に対して操作部40を回動可能に係合している。また、表面部41の背面は摺動リング49を介してヘッドケース10の側壁13前端に着座してヘッドケース10及び摺動リング49に対して操作部40を回動可能に係合している。摺動リング49はPOM樹脂にて成形されている。
【0023】
図6にインナーカップ20と操作部40とを係合した関係を示し、他の部材の図示は省略する。インナーカップ20は接続部24を除いた部分が操作部40に内嵌されて両者が相対回動可能に係合されている。図6(a)、図6(b)に示すように、操作部40の係合リブ45(図6(a)では破線で示す)はインナーカップ20の係合板282と正面視にて重なる関係にある。また、操作部40の係合リブ45とインナーカップ20の係合板282からなる第1係合部は、図6(b)、同(d)、同(f)に示すように接続部24と前後方向(高さ方向)において重なる位置に形成されている。インナーカップ20の係合板282が操作部40の係合リブ45の上(前方)に着座して操作部40の前方への移動を規制しつつ、両者は回動可能に係合されている。そして、操作部40はインナーカップ20に対して図6(a)の位置から図6(c)に示す時計回り方向、図6(e)に示す反時計回り方向に回動することができる。操作部40はインナーカップ20のボス271を中心として回動する。なお、操作部40の回動に伴い係合リブ45も回動するため、インナーカップ20の係合板282が操作部40の係合リブ45に着座する箇所は、図6(d)、図6(f)のように回動に伴い変化する。流路切り替えに必要な操作部40の回動可能な範囲は図6(a)を中心として左右にそれぞれ約60度である。そして、この回動範囲では操作部40に形成された係合リブ45はインナーカップ20の接続部24と回動方向において重ならない。すなわち、操作部40の係合リブ45とインナーカップ20の係合板282からなる第1係合部は、操作部40が回動する範囲を含めて、正面視では接続部24の位置を避けた環状に位置する。インナーカップ20の接続部24が位置する箇所は、操作部40の外嵌筒部42に凹部47が形成されているため、操作部40を回動しても接続部24が外嵌筒部42に干渉することはない。
【0024】
図7(a)及び図7(b)に切替部50の分解斜視図を示す。切替部50はインナーカップ20の吐出口223から吐出された湯水の流路を切り替える部材であり、背面切替部51と前面切替部52と散水板53とから構成される。背面切替部51は、操作部40の外嵌筒部42内に遊嵌される環状の円環部511を有する。円環部511の前面内周縁には前方に突出するスペーサ512が形成されている。また、円環部511の外周縁には弾性リング513が装着されており、その後方には位置決め凹部514が周方向に180度離間した2箇所に形成されている。この位置決め凹部514は操作部40の外嵌筒部42に形成された位置決めリブ46に嵌合し、背面切替部51を操作部40に対して相対回動不能に固定する。円環部511の内周縁からは半円筒状の案内筒部515が後方に突出しており、インナーカップ20に形成された案内溝25に嵌合している。
【0025】
図7(a)及び図7(b)に示すように、前面切替部52は円環状の案内板521と有底円筒状の弁体522とを有する。案内板521は背面切替部51の円環部511より小径であり、その背面には円環部511のスペーサ512に係止するスペーサ523が突出形成されている。背面切替部51の円環部511と前面切替部52の案内板521との間にはスペーサ512、523の高さに相当する隙間を前後方向に有した状態で両者は相対回動不能に固定されている。この隙間は噴霧水流路となる。
【0026】
弁体522は背面切替部51の円環部511に水密状態で内嵌されている。弁体522は内部に内筒524を有する二重筒状となっている。弁体522内のうち、内筒524の内側は前面に開口しており直流水流路を構成する。また、弁体522内のうち内筒524の外側は周方向に4つに分割されており、このうち対向する1対は前面に開口して散水流路を構成する。また、もう1対は前面が閉塞されているとともに弁体522の側面に内外を連通する流出孔525が2箇所形成されており噴霧水流路を構成する。
【0027】
弁体522の底は当接面526となっており、中央の固定孔527を中心として周方向にそれぞれ独立した6個の扇状をなす開口が形成されている。各開口は固定孔527を挟んで対向する2つが対をなしており、当接面526には第1開口528A、第2開口528B、第3開口528Cからなる合計3対の開口が形成されている。このうち、第1開口528Aは内筒524の外側の前面開口した部分に連通しており散水流路を構成する。また、第2開口528Bは弁体522に形成された流出孔525に連通しており噴霧水流路を構成する。さらに、第3開口528Cは内筒524の内側に連通しており直流水流路を構成する。
【0028】
当接面526の各開口には周囲を囲う弾性部材529が配されており、当接面526はインナーカップ20のカバー22に対向した状態で当接し弾性部材529をカバー22に押圧している。固定孔527にはワッシャ54を介してネジ55が挿通されてインナーカップ20のボス271に固定されており、背面切替部51と前面切替部52とをインナーカップ20の嵌合部27に嵌合してインナーカップ20に回動可能に固定している。散水板53は円環状をなし周方向に一定間隔で小孔531が形成された板材であり、前面切替部52の内筒524の外側を塞ぐ形で配置されており、散水流路を通った湯水を小孔531から前方に吐出する。背面切替部51は前面切替部52と相対回動不能に固定されており、また背面切替部51は操作部40と相対回動不能に固定されている。このため、切替部50と操作部40とは相対回動不能かつ一体回動可能となっている。
【0029】
図4に示すシャワーノズル60は円環状のノズル部61を有し、弾性材料にて一体形成されている。ノズル部61の前面には前方に向けて突出する複数の散水ニップル62が形成されており、内部に図示しない散水孔が形成されている。シャワーフェイス70は円環状のカバー部71とその背面から後方に延びる円筒状の挿入筒部72とを有し、ABS樹脂にて一体形成されている。カバー部71には複数の挿通孔73が形成されており、シャワーノズル60の散水ニップル62が挿通孔73を通り抜けてシャワーフェイス70の前方に突出している。また、カバー部71の外周端には複数のミスト孔74が周方向に形成されており、ミスト孔74からは湯水を霧状(ミスト状)に噴出する。挿入筒部72の外周面には雄ネジ75が形成されており操作部40の雌ネジ44に螺合する。挿入筒部72の内周面は背面切替部51の円環部511外周の弾性リング513と当接する。図4に示す整流器80は円筒状をなし内部に図示しない整流板が配置されており、内部を通過する湯水の水流を整えるものである。整流器80は前面切替部52の内筒524内に装着されており、直流水流路を構成する。
【0030】
次に、図8(a)ないし(c)に基づいてシャワーヘッド1の切り替えと湯水の流路について説明する。
まず、操作部40の摘み43が基端(図6(a)の位置)にある場合、インナーカップ20のカバー22に形成された1対の吐出口223は当接面526の第1開口528Aと対向する。図8(a)に破線で示すようにインナーカップ20から吐出された湯水は第1開口528Aから内筒524の外側にある散水流路及び散水板53を通りシャワーノズル60の背面に流れる。そして、湯水はシャワーノズル60の散水ニップル62から散水(シャワー水)として吐出される。
【0031】
次に、操作部40の摘み43を把持して時計回りに回動すると(図6(c)の位置)、操作部40の係合リブ45はインナーカップ20の係合板282に係合したまま回動する。また、操作部40の係合溝48は摺動リング49を介して前面ケース12の係合片16に係合したまま回動する。そして、吐出ユニット30全体も時計回りに回動し、インナーカップ20のカバー22に形成された1対の吐出口223は当接面526の第2開口528Bと対向する。図8(b)に破線で示すようにインナーカップ20から吐出された湯水は第2開口528Bから弁体522内を経て流出孔525から弁体522の外に出る。その後、湯水は、案内板521の背面側を通って径方向外側に拡がってシャワーノズル60の外周側背面に案内され、ミスト孔74から噴霧水(ミスト水)として吐出される。
【0032】
一方、操作部40の摘み43を把持して反時計回りに回動すると(図6(e)の位置)、操作部40の係合リブ45はインナーカップ20の係合板282に係合したまま回動する。また、操作部40の係合溝48も摺動リング49を介して前面ケース12の係合片16に係合したまま回動する。そして、吐出ユニット30は反時計回りに回動し、インナーカップ20のカバー22に形成された1対の吐出口223は当接面526の第3開口528Cと対向する。図8(c)に破線で示すようにインナーカップ20から吐出された湯水は第3開口528Cから内筒524の内側にある整流器80を経て直流水(ストレート水)として吐出される。
【0033】
上記実施形態のシャワーヘッド1によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、インナーカップ20の係合板282と操作部40の係合リブ45とが係合した状態でインナーカップ20に対して操作部40を回動可能としている。そして、インナーカップ20の係合板282を操作部40の回動方向において接続部24と重ならない位置に設けている。このため、シャワーヘッド1を薄くしても、インナーカップ20の係合板282と接続部24が干渉しない。
【0034】
(2)操作部40は外嵌筒部42を有し、その内周面から径方向内側に向かう係合リブ45が形成されている。また、インナーカップ20は外嵌筒部42に一部が内嵌される鍔部28を有し、鍔部28の外周には係合リブ45の前方に着座して係合する係合板282が形成されている。このため、インナーカップ20と操作部40との係合が容易である。
【0035】
(3)操作部40と前面ケース12とを操作部40の回動方向においてインナーカップ20の接続部24と重なる位置で係合している。操作部40はインナーカップ20と係合する係合板282が位置しない接続部24がある位置でヘッドケース10と係合する。このため、正面視で操作部40の係合リブ45とインナーカップ20の係合板282からなる第1係合部は接続部24の位置を除く環状に位置する。そして、第1係合部が位置しない接続部24の位置に操作部40の係合溝48と前面ケース12の係合片16からなる第2係合部が位置する。このため、第1係合部が位置しない箇所に第2係合部が位置して補うこととなり、回動する操作部40の係合がより安定したものとなる。
【0036】
(4)操作部40と前面ケース12とを係合する操作部40の係合溝48は、係合リブ45より前方に位置している。このため、操作部40の係合溝48はインナーカップ20の接続部24と干渉しにくい。
【0037】
(5)操作部40の係合溝48には、前面ケース12の係合片16が挿入されて操作部40をヘッドケース10に回動可能に係合している。このため、操作部40とヘッドケース10とを回動可能に係合させることができる。
【0038】
(6)操作部40の係合溝48には摺動リング49が装着されて、係合溝48と前面ケース12の係合片16とは摺動リング49を介して係合している。このため、相対回動を行う構成同士が直接接触せず円滑な回動が可能となる。
【0039】
(7)操作部40の係合リブ45とインナーカップ20の係合板282からなる第1係合部は、接続部24と前後方向(高さ方向)において重なる位置に形成されている。このため、シャワーヘッド1をより薄型にすることができる。
【0040】
(7)操作部40の回動範囲は係合リブ45がインナーカップ20の接続部24と回動方向において重ならない範囲である。このため、操作部40を回動させてもインナーカップ20の接続部24と干渉しない。また、シャワーヘッド1を薄くしても、操作部40の係合リブ45が接続部24に干渉しない。
【0041】
(8)操作部40は吐出ユニット30の一部を構成し、吐出時には吐出ユニット30とインナーカップ20との間に湯水が充満して吐出ユニット30は前方に、インナーカップ20は後方に押圧される。インナーカップ20の係合板282と操作部40の係合リブ45とは、係合リブ45が後方に係合板282が前方に位置して両者が着座する形で係合している。このため、操作部40が前方に押圧されても操作部40は前方への移動が規制された状態となっていれば両者の係合が外れにくい。
【0042】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・操作部40の係合リブ45はインナーカップ20の係合板282を回動可能に係合(着座)させるものであれはよい。操作部40の先端を12時とした場合の12時、3時、9時に係合リブ45は形成されていない。それは成形ないし組付け等を考慮したものであり、そのような考慮が不要であればこれらの位置に係合リブ45を形成してもよい。また、係合リブ45は櫛歯状でもよい。
【0043】
・インナーカップ20の係合板282は操作部40の係合リブ45に回動可能に係合(着座)できるものであれはよい。インナーカップ20の先端を12時とした場合の鍔部28の12時、3時、9時に係合板282は形成されていない。それは成形ないし組付け等を考慮したものであり、そのような考慮が不要であればこれらの位置に係合板282を形成してもよい。また、係合板282は櫛歯状でもよい。
【0044】
・操作部40と前面ケース12との係合につき、前面ケース12に溝を形成し、操作部40にこの溝に挿入可能な係合片を形成してもよい。この構成によっても両者の係合が可能となる。
【0045】
・操作部40と前面ケース12との係合部を省略してもよい。操作部40とインナーカップ20とが相対回動可能に係合されていれば操作部40の回動は可能となる。
・シャワーヘッド1は吐出形態を異なる3種類としたが、異なる吐出形態は2種以上であればよい。また、湯水の吐出とその吐出停止や、原水と機能水との関係も異なる吐出形態に含む。なお、機能水とは、例えば浄水や微細気泡(マイクロバブル)混入水等をいう。
【0046】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(a)操作部40の係合溝48には摺動リング49が装着されて、係合溝48と前面ケース12の係合片16とは摺動リングを介して係合している。これにより、相対回動を行う構成同士が直接接触せず円滑な回動が可能となる。
【0047】
(b)操作部40の回動範囲は係合リブ45がインナーカップ20の接続部24と回動方向において重ならない範囲である。このため、操作部40を回動させてもインナーカップ20の接続部24と干渉しない。
【符号の説明】
【0048】
1…シャワーヘッド、10…ヘッドケース、16…係合片(第2係合部)、20…インナーカップ(通水部材)、24…接続部、28…鍔部、282…係合板(第1係合部・円板部)、30…吐出ユニット、40…操作部、42…外嵌筒部、45…係合リブ(第1係合部)、48…係合溝(第2係合部・溝部)、50…切替部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8