(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091854
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】物干し具
(51)【国際特許分類】
D06F 57/00 20060101AFI20230626BHJP
D06F 55/00 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
D06F57/00 350
D06F57/00 380
D06F55/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206682
(22)【出願日】2021-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】394016874
【氏名又は名称】河淳株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾苗 則彰
(72)【発明者】
【氏名】若月 優紀
(57)【要約】
【課題】ピンチ部が回転しやすい物干し具を提供する。
【解決手段】曲面又は平坦面に取り付け可能なフック部と、前記フック部に連結された中空筒状の枠体と、前記枠体に取り付けられた吊り部材と、前記吊り部材を介して前記枠体に吊り下げられたピンチ部と、を具備し、前記枠体の少なくとも一部が、径方向内側に突出した内壁部を形成し、該内壁部に形成された係止孔に前記吊り部材が係止する、物干し具である。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲面又は平坦面に取り付け可能なフック部と、
前記フック部に連結された中空筒状の枠体と、
前記枠体に取り付けられた吊り部材と、
前記吊り部材を介して前記枠体に吊り下げられたピンチ部と、
を具備し、
前記枠体の少なくとも一部が、径方向内側に突出した内壁部を形成し、該内壁部に形成された係止孔に前記吊り部材が係止する、物干し具。
【請求項2】
前記吊り部材は、前記係止孔と係合する係止部を備える線ばね部材であり、
前記吊り部材が前記係止孔に係止した状態では、前記係止部のみが前記枠体と当接する、請求項1に記載の物干し具。
【請求項3】
前記枠体は、アルミニウム押出材でできている、請求項1又は2に記載の物干し具。
【請求項4】
前記ピンチ部は、
開閉可能に組み合わせられた第1ピンチ片及び第2ピンチ片と、
前記第1ピンチ片及び前記第2ピンチ片に介在し、前記第1ピンチ片及び前記第2ピンチ片を付勢するばねと、
を備えるピンチを有し、
前記第1ピンチ片及び前記第2ピンチ片は、それぞれ、上側の把持部と、互いに係合する中間の係合部と、下側の挟持部と、を備え、
前記第1ピンチ片及び前記第2ピンチ片の前記挟持部は、それぞれ、突起部が設けられた第1対向面及び第2対向面を備える、請求項1~3のいずれか1項に記載の物干し具。
【請求項5】
前記第1対向面に形成された前記突起部が前記第2対向面に当接可能であり、前記第2対向面に設けられた前記突起部が前記第1対向面に当接可能である、請求項4に記載の物干し具。
【請求項6】
前記ピンチ部は、
開閉可能に組み合わせられた第1ピンチ片及び第2ピンチ片と、
前記第1ピンチ片及び前記第2ピンチ片に介在し、前記第1ピンチ片及び前記第2ピンチ片を付勢するばねと、
を備えるピンチを有し、
前記第1ピンチ片及び前記第2ピンチ片は、それぞれ、上側の把持部と、互いに係合する中間の係合部と、下側の挟持部と、を備え、
前記第1ピンチ片及び前記第2ピンチ片の前記挟持部は、それぞれ、略平坦な第1対向面及び第2対向面を備え、前記第1対向面及び前記第2対向面同士が当接可能である、請求項1~3のいずれか1項に記載の物干し具。
【請求項7】
前記第1ピンチ片及び前記第2ピンチ片の前記挟持部は、それぞれ、先端側の外周に傾斜面を備え、前記傾斜面同士が離間している、請求項4~6のいずれか1項に記載の物干し具。
【請求項8】
前記ピンチ部は、前記第1ピンチ片及び前記第2ピンチ片の前記把持部同士を連結するピンチベルトを備え、
前記ピンチは、前記ピンチベルトを介して前記吊り部材に吊り下げられる、請求項4~7のいずれか1項に記載の物干し具。
【請求項9】
前記ピンチ部は、
上側の把持部と、互いに係合する中間の係合部と、下側の挟持部と、をそれぞれ備え、開閉可能に組み合わせられた第1ピンチ片及び第2ピンチ片と、
前記第1ピンチ片及び前記第2ピンチ片に介在し、前記第1ピンチ片及び前記第2ピンチ片を付勢するばねと、
を備えるピンチと、
前記第1ピンチ片及び前記第2ピンチ片の前記把持部同士を連結するピンチベルトと、
を備え、
前記ピンチは、前記ピンチベルトを介して前記吊り部材に吊り下げられる、請求項1~3のいずれか1項に記載の物干し具。
【請求項10】
前記枠体は、互いに回動可能に連結された第1枠体及び第2枠体を備える、請求項8又は9に記載の物干し具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピンチ部を備える物干し具に関する。
【背景技術】
【0002】
金属製筒状フレーム内でピンチ部の取付け具が自在に回転し、取付け具を介して吊り下げられたピンチ部も自在に回転可能な物干し具が知られている(例えば特許文献1)。ピンチ部が回転自在なことで、ピンチ部に挟んだ洗濯物もスムーズに回転し、短時間で万遍なく均一に乾きやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、ピンチ部が回転しやすい物干し具のニーズがある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、ピンチ部が回転しやすい物干し具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の本発明により解決される。すなわち、本発明(1)は、
曲面又は平坦面に取り付け可能なフック部と、
前記フック部に連結された中空筒状の枠体と、
前記枠体に取り付けられた吊り部材と、
前記吊り部材を介して前記枠体に吊り下げられたピンチ部と、
を具備し、
前記枠体の少なくとも一部が、径方向内側に突出した内壁部を形成し、該内壁部に形成された係止孔に前記吊り部材が係止する、物干し具である。
【0007】
本発明(2)は、前記吊り部材が、前記係止孔と係合する係止部を備える線ばね部材であり、前記吊り部材が前記係止孔に係止した状態では、前記係止部のみが前記枠体と当接する、(1)に記載の物干し具である。
【0008】
本発明(3)は、前記枠体が、アルミニウム押出材でできている、(1)又は(2)に記載の物干し具である。
【0009】
本発明(4)は、前記ピンチ部が、開閉可能に組み合わせられた第1ピンチ片及び第2ピンチ片と、前記第1ピンチ片及び前記第2ピンチ片に介在し、前記第1ピンチ片及び前記第2ピンチ片を付勢するばねと、を備えるピンチを有し、前記第1ピンチ片及び前記第2ピンチ片は、それぞれ、上側の把持部と、互いに係合する中間の係合部と、下側の挟持部と、を備え、前記第1ピンチ片及び前記第2ピンチ片の前記挟持部は、それぞれ、突起部が設けられた第1対向面及び第2対向面を備える、(1)~(3)のいずれか1に記載の物干し具である。
【0010】
本発明(5)は、前記第1対向面に設けられた前記突起部が前記第2対向面に当接可能であり、前記第2対向面に設けられた前記突起部が前記第1対向面に当接可能である、(4)に記載の物干し具である。
【0011】
本発明(6)は、前記ピンチ部が、開閉可能に組み合わせられた第1ピンチ片及び第2ピンチ片と、前記第1ピンチ片及び前記第2ピンチ片に介在し、前記第1ピンチ片及び前記第2ピンチ片を付勢するばねと、を備えるピンチを有し、前記第1ピンチ片及び前記第2ピンチ片は、それぞれ、上側の把持部と、互いに係合する中間の係合部と、下側の挟持部と、を備え、前記第1ピンチ片及び前記第2ピンチ片の前記挟持部は、それぞれ、略平坦な第1対向面及び第2対向面を備え、前記第1対向面及び前記第2対向面同士が当接可能である、(1)~(3)のいずれか1に記載の物干し具である。
【0012】
本発明(7)は、前記第1ピンチ片及び前記第2ピンチ片の前記挟持部が、それぞれ、先端側の外周に傾斜面を備え、前記傾斜面同士が離間している、(4)~(6)のいずれか1に記載の物干し具である。
【0013】
本発明(8)は、前記ピンチ部が、前記第1ピンチ片及び前記第2ピンチ片の前記把持部同士を連結するピンチベルトを備え、前記ピンチは、前記ピンチベルトを介して前記吊り部材に吊り下げられる、(4)~(7)のいずれか1に記載の物干し具である。
【0014】
本発明(9)は、前記ピンチ部が、上側の把持部と、互いに係合する中間の係合部と、下側の挟持部と、をそれぞれ備え、開閉可能に組み合わせられた第1ピンチ片及び第2ピンチ片と、前記第1ピンチ片及び前記第2ピンチ片に介在し、前記第1ピンチ片及び前記第2ピンチ片を付勢するばねと、を備えるピンチと、前記第1ピンチ片及び前記第2ピンチ片の前記把持部同士を連結するピンチベルトと、を備え、前記ピンチは、前記ピンチベルトを介して前記吊り部材に吊り下げられる、(1)~(3)のいずれか1に記載の物干し具である。
【0015】
本発明(10)は、前記枠体が、互いに回動可能に連結された第1枠体及び第2枠体を備える、(8)又は(9)に記載の物干し具である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ピンチ部が回転しやすい物干し具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、物干し具の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、物干し具の一例を示す正面図である。
【
図3】
図3は、物干し具の一例を示す左側面図である。
【
図4】
図4は、物干し具を折りたたんだ状態を示す図である。
【
図5】
図5は、物干し具のハンドル部の使用状態を示す図である。
【
図6】
図6は、物干し具のハンドル部の非使用状態を示す図である。
【
図8】
図8は、枠体、吊り部材及びピンチ部の取り付けの状態を示す図である。
【
図9】
図9は、枠体及び吊り部材の断面の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、ピンチの第1ピンチ片を示す斜視図である。
【
図14】
図14は、ピンチ部の他の例を分解して示す図である。
【
図15】
図15は、ピンチの第1ピンチ片の他の例を示す斜視図である。
【
図16】
図16は、枠体及び吊り部材の断面の他の例を示す図である。
【
図17】
図17は、枠体及び吊り部材の断面の他の例を示す図である。
【
図18】
図18は、枠体及び吊り部材の断面の他の例を示す図である。
【
図19】
図19は、従来技術の枠体及び吊り部材の断面の一例を示す図である。
【
図20】
図20は、従来技術の枠体及び吊り部材の断面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る物干し具について説明する。本実施形態に係る物干し具は、ピンチ部を備え、ピンチハンガー、洗濯ハンガー、物干しハンガーなどと称される。本実施形態に係る物干し具は、枠体にピンチ部を吊り下げる吊り部材が回転しやすいように、枠体と吊り部材との接地面積を少なくしている。接地面積が少ないため、吊り部材を介して吊り下げられるピンチ部も滑らかに回転しやすい。
【0019】
図1~
図3は、本実施形態に係る物干し具1の一例を示す図である。物干し具1は、枠体10と、フック部30と、ハンドル部60と、ピンチ部80とを有する。
【0020】
枠体10は、例えば回動機構11によって互いに回動可能に連結された第1枠体12及び第2枠体13を備える。第1枠体12及び第2枠体13により、矩形の枠体10が形成されている。枠体10は、回動機構11の回動軸14を中心に開閉可能であり、物干し具1の非使用時には
図4に示すように折りたたみ可能である。なお、
図4に示す物干し具1ではピンチ部80の図示を省略している。
【0021】
第1枠体12は、互いに略平行な第1辺15及び第2辺16と、第1辺15及び第2辺16に略垂直な第3辺17とからなる。第2枠体13は、互いに略平行な第4辺18及び第5辺19と、第4辺18及び第5辺19に略垂直な第6辺21とからなる。第1枠体12の第1辺15と第2枠体13の第4辺18とは第1連結部材22及び第2連結部材23を介して同軸に連結されており、第1枠体12の第2辺16と第2枠体13の第5辺19とは第3連結部材24及び第4連結部材25を介して同軸に連結されている。
【0022】
第1枠体12には、両端がそれぞれ第1辺15及び第2辺16に連結された第1中間ロッド26が設けられている。また、第2枠体13には、両端がそれぞれ第4辺18及び第5辺19に接続された第2中間ロッド27が設けられている。
【0023】
第1枠体12、第2枠体13、第1中間ロッド26及び第2中間ロッド27は、アルミニウム製であり、例えばアルミニウム押出材でできている。アルミニウム製あるいはアルミニウム合金製が好ましいが、樹脂製であってもよい。第1枠体12、第2枠体13、第1中間ロッド26及び第2中間ロッド27は、中空筒状である。
【0024】
フック部30は、第1フック部31と、第2フック部32と、第3フック部33とを有する。フック部30は、枠体10に連結されている。フック部30は、物干し具1を物干し竿などの曲面又は長押などの平坦面に引っ掛けるために設けられている。
【0025】
第1フック部31は、第1フック本体34と、第1フック支持体35とを有する。第1フック本体34は、例えば楕円形状の曲面36を備えるフックである。第1フック本体34には、第1フック本体34に対して回動軸37で回動可能に軸支されたC形状のロック部材38が設けられている。例えば物干し竿などの曲面に第1フック本体34を掛けたとき、ロック部材38が回動することでロックが働く。また、第1フック本体34の先端は、長押などに引っ掛け可能な先端面39を備える。第1フック支持体35は、第1フック本体34を支持している。第1フック支持体35は、第1中間ロッド26及び第2中間ロッド27の間に、これらと略平行に延びている。第1フック支持体35の両端には、それぞれ、枠体10の回動機構11が設けられており、回動機構11に第1連結部材22、第2連結部材23、第3連結部材24及び第4連結部材25が取り付けられている。また、第1フック支持体35の内部には、ハンドル部60が収納可能である。
【0026】
図4に示すように、第1枠体12及び第2枠体13は、回動機構11により第1フック支持体35に対して上側に回動する。つまり、物干し具1を折りたたんだ状態では、第1枠体12と第2枠体13との間に第1フック部31が位置している。
【0027】
第2フック部32は、第2フック本体41と、第2フック本体41を支持する第2フック支持体42とを有する。第2フック本体41は、例えば楕円形状の曲面43を備えるフックである。第2フック本体41にも、第1フック本体34と同様に、第2フック本体41に対して回動軸44で回動可能に軸支されたC形状のロック部材45が設けられている。第2フック本体41の先端も、長押などに引っ掛け可能な先端面46を備える。第2フック支持体42は、第1枠体12の第3辺17に回動可能に取り付けられている。
【0028】
第3フック部33は、第3フック本体47と、第3フック本体47を支持する第3フック支持体48とを有する。第3フック本体47は、例えば楕円形状の曲面49を備えるフックである。第3フック本体47にも、第1フック本体34及び第2フック本体41と同様に、第3フック本体47に対して回動軸51で回動可能に軸支されたC形状のロック部材52が設けられている。第3フック本体47の先端も、長押などに引っ掛け可能な先端面53を備える。第3フック支持体48は、第2枠体13の第6辺21に回動可能に取り付けられている。
【0029】
なお、
図3では、第2フック部32及び第3フック部33の図示を省略している。
【0030】
ハンドル部60は、高い位置にある物干し竿などに物干し具を取り付ける際に握る細長の把持部である。ハンドル部60には、第1フック支持体35に設けられた突起部54に係合する係合孔61が設けられている。突起部54と係合孔61との係合により、ハンドル部60は、突起部54を回動軸として第1フック支持体35に対して回動可能になっている。ハンドル部60は、使用時には、
図2、
図3及び
図5に示すように、第1フック支持体35に対して略垂直に下方に延びる位置に配置される。非使用時には、
図6に示すように、第1フック支持体35の内部空間55に収容される。なお、
図5及び
図6に示す物干し具1では、第2フック部32、第3フック部33及びピンチ部80の図示を省略している。
【0031】
図7に断面を示すように、中空筒状の枠体10と第1中間ロッド26及び第2中間ロッド27は、上側円弧部分56と、下側円弧部分57とを有する。下側円弧部分57は、上側円弧部分56に対して径方向内側に突出している。言い換えれば、下側円弧部分57は、径方向内側に凹んでいる。枠体10と第1中間ロッド26及び第2中間ロッド27の少なくとも一部が、径方向内側に突出した内壁部58を形成している。
【0032】
図8に示すように、枠体10と第1中間ロッド26及び第2中間ロッド27の下側円弧部分57の内壁部58には、吊り部材70を取り付けるための係止孔59が設けられている。係止孔59には、吊り部材70が係止する。吊り部材70は、係止孔59と係合する係止部71を備える線ばね部材である。吊り部材70は、手や治具で吊り部材70の両端72を内側に押して係止部71の外側への突出量を小さくすることで、係止孔59にワンタッチで嵌めることができる。
【0033】
図9に示すように、吊り部材70が係止孔59に係止した状態では、吊り部材70の係止部71のみが枠体10、第1中間ロッド26及び第2中間ロッド27と当接する。つまり、吊り部材70の係止部71以外の箇所は、枠体10、第1中間ロッド26及び第2中間ロッド27から離間している。
【0034】
ピンチ部80は、
図1~
図3及び
図8に示すように、吊り部材70を介して枠体10と第1中間ロッド26及び第2中間ロッド27の係止孔59に吊り下げられている。枠体10と第1中間ロッド26及び第2中間ロッド27に複数のピンチ部80が吊り下げられている。
【0035】
なお、
図4に示すように、第1枠体12及び第2枠体13は、回動機構11により第1フック支持体35に対して上側に回動する。物干し具1を折りたたんだとき、第1枠体12及び第1中間ロッド26の係止孔59と第2枠体13及び第2中間ロッド27の係止孔59とは、互いに背中合わせになっている。つまり、第1枠体12及び第1中間ロッド26の係止孔59に取り付けられる吊り部材70及びピンチ部80と、第2枠体13及び第2中間ロッド27の係止孔59に取り付けられる吊り部材70及びピンチ部80とは、物干し具1を折りたたんだときに枠体10、第1中間ロッド26及び第2中間ロッド27を挟んで位置する。折りたたんだ状態で互いに離間している。
【0036】
ピンチ部80は、第1ピンチ片81と、第2ピンチ片82と、ばね83とを備えるピンチ84を有する。第1ピンチ片81及び第2ピンチ片82は、開閉可能に組み合せられている。ばね83は、第1ピンチ片81及び第2ピンチ片82に介在し、第1ピンチ片81及び第2ピンチ片82を付勢する。第1ピンチ片81及び第2ピンチ片82は、それぞれ、上側の把持部85と、第1ピンチ片81及び第2ピンチ片82を互いに係合する中間の係合部86と、下側の挟持部87とを備える。つまり、第1ピンチ片81は、上側から下側に向かって、第1把持部88と、第1係合部89と、第1挟持部91とを有する。第2ピンチ片82は、上側から下側に向かって、第2把持部92と、第2係合部93と、第2挟持部94とを有する。第1把持部88と第2把持部92によりピンチ84の把持部85が形成されている。第1係合部89と第2係合部93によりピンチの係合部86が形成されている。第1挟持部91と第2挟持部94によりピンチ84の挟持部87が形成されている。
【0037】
図10に示すように、第1挟持部91は、第1対向面95と、第1傾斜面96とを有する。第2挟持部94は、第2対向面97と、第2傾斜面98とを有する。第1対向面95及び第2対向面97には、
図10~
図12に示すように、緩やかな傾斜の台形状の(小さなかまぼこ型、例えば略半円形状の)複数の突起部99が設けられている。第1対向面95又は第2対向面97の突起部99は、互いに離間して、つまり互い違いに配置されている。第1対向面95及び第2対向面97の突起部99同士は、
図10に示すように、ピンチ84を閉じた状態で互いに当接しない。ピンチ84を閉じた状態では、第1対向面95に設けられた突起部99が第2対向面97に当接し、第2対向面97に設けられた突起部99が第1対向面95に当接する。第1傾斜面96及び第2傾斜面98は、常に離間している。つまり、第1ピンチ片81及び第2ピンチ片82の挟持部87が、それぞれ、先端側の外周に傾斜面96、98を備え、傾斜面同士が離間している。
【0038】
なお、
図1~
図3では、突起部99の図示を省略している。
【0039】
図10及び
図11に示すように、ピンチ部80は、ピンチベルト100を有する。ピンチベルト100は、アーチ状の部材であり、可撓性を有する。例えば樹脂製であってよい。ピンチベルト100は、第1ピンチ片81及び第2ピンチ片82の把持部85に取り付けられている。第1把持部88及び第2把持部92の外面101には、それぞれ、ピンチベルト100のリブと幅に適合する第1溝部102及び第2溝部103が形成されており、さらに、第1溝部102及び第2溝部103にそれぞれ第1係合孔104及び第2係合孔105が設けられている。ピンチベルト100の両端部の内面106には、それぞれ、第1突起部107及び第2突起部108が形成されている。ピンチベルト100の第1突起部107及び第2突起部108をそれぞれピンチ84の第1溝部102及び第2溝部103に係合することで、ピンチ84にピンチベルト100が取り付けられている。また、ピンチベルト100の中央部には、吊り部材70に吊り下げるための取付け孔109が設けられている。
【0040】
なお、
図13~
図15に示す他の例のように、第1挟持部91の第1対向面95と第2挟持部94の第2対向面97は、ギザギザや凹凸のない平坦な面であってもよく、この場合、第1対向面95及び第2対向面97は互いに当接可能である。つまり、第1ピンチ片81及び第2ピンチ片82の挟持部87は、それぞれ、略平坦な対向面95、97を備え、対向面同士が当接可能であってよい。
図13~
図15に示す他の例は、上記の点を除いて
図10~
図12に示す一例と同様の構成であるため、その説明は省略する。
【0041】
従来、吊り部材が吊り下げられる枠体、第1中間ロッド及び第2中間ロッドは、
図19に示すような円形の断面形状であったり、
図20に示すような上側円弧部分と下側平坦部分とを有する断面形状であったりした。このような構造では、吊り部材と枠体、第1中間ロッド及び第2中間ロッドとの摩擦抵抗力や接地面積が大きいため、吊り部材及びこれに吊り下げられるピンチ部が滑らかに回転しにくかった。
【0042】
本実施形態によれば、吊り部材70を枠体10、第1中間ロッド26及び第2中間ロッド27に取り付けた際、枠体10、第1中間ロッド26及び第2中間ロッド27の少なくとも一部が、径方向内側に突出した内壁部58を形成し、内壁部58に形成された係止孔59に吊り部材70が係止する。これにより、吊り部材70と枠体10、第1中間ロッド26及び第2中間ロッド27との摩擦抵抗力や接地面積が少なくなり、吊り部材70が枠体10、第1中間ロッド26及び第2中間ロッド27に対して回転しやすくなる。このため、吊り部材70を介して枠体10、第1中間ロッド26及び第2中間ロッド27に吊り下げられたピンチ部80も滑らかに回転しやすくなる。ピンチ部80が滑らかに回転することで、ピンチ84に挟まれた洗濯物同士が絡まりにくい物干し具1を提供することができる。洗濯物同士が絡まりにくいことで、洗濯物同士が絡まった部分が乾きにくいといった問題が生じにくい。洗濯物の乾きがよい物干し具1を提供することができる。
【0043】
特に、係止孔59と係合する係止部71を備える線ばね部材である吊り部材70について、係止孔59に係止した状態で係止部71のみが枠体10、第1中間ロッド26及び第2中間ロッド27と当接することで、吊り部材70と枠体10、第1中間ロッド26及び第2中間ロッド27との接地面積を少なくし、吊り部材70が枠体10、第1中間ロッド26及び第2中間ロッド27に対して回転しやすくなる。
【0044】
枠体10、第1中間ロッド26及び第2中間ロッド27がアルミニウム押出材でできていることで、枠体10、第1中間ロッド26及び第2中間ロッド27の少なくとも一部が径方向内側に突出した内壁部58を形成しやすい。また、物干し具1の強度を保ちながら軽量化できる。
【0045】
また、ピンチ84がピンチベルト100を介して吊り部材70に吊り下げられていることにより、ピンチ同士が絡まるのを防ぐことができる。特に、枠体10が互いに回動可能に連結された第1枠体12及び第2枠体13からなるため、枠体10を折りたたんだ際にピンチ部同士が絡まるのを防ぐことができる。
【0046】
また、枠体10を折りたたんだ状態では、第1枠体12及び第1中間ロッド26と第2枠体13及び第2中間ロッド27との間に第1フック部31が位置し、さらに、係止孔59も互いに背中合わせになっている。このため、折りたたんだときにピンチ部同士が離間することとなり、ピンチ部同士を絡まりにくくすることができる。
【0047】
第1対向面95及び第2対向面97に突起部99が設けられていることにより、挟持部87の把持力を高め、洗濯物などをしっかりと挟むことができる。第1対向面95に設けられた突起部99が第2対向面97に当接し、第2対向面97に設けられた突起部99が第1対向面95に当接するようになっているため、対向面95、97及び突起部99とその間に挟まれる洗濯物などとの当接面積が大きくなり、確実に挟むことができる。
【0048】
あるいは、第1対向面95及び第2対向面97が平坦な面であることにより、対向面95、97で挟んでも生地を傷めにくく、挟んだ跡が生地につきにくくすることができる。なお、対向面95、97が平坦であってもしっかり挟めるばね83をピンチ部80に採用することで、確実に挟むことができる。
【0049】
挟持部87の先端側の外周に第1傾斜面96及び第2傾斜面98を設け、傾斜面同士が離間している形状を採用することにより、
図10又は
図13に矢印A1で示す方向に洗濯物を引っ張って取っても挟持部87に引っかかりにくく、矢印A1方向への洗濯物を取り込みやすい物干し具1を提供することができる。
【0050】
さらに、洗濯物を引っ張って取った場合にも取りやすいピンチベルト100を採用することで、洗濯物を引っ張ったときにピンチ84の把持部85に側方から
図10又は
図13に矢印A2、A3で示す方向に力が加わりやすくなり、洗濯物の取り込みをアシストすることができる。
【0051】
図16~
図18は、枠体10、第1中間ロッド26、第2中間ロッド27及び吊り部材70の断面の他の例を示す図である。枠体10、第1中間ロッド26及び第2中間ロッド27は、径方向内側に突出した内壁部58に係止孔が形成されていればよく、枠体10、第1中間ロッド26及び第2中間ロッド27の下側部分の形状は、円弧状に限られない。例えば、
図16に示すような逆V字型の径方向内側に突出した内壁部58を有する下側部分111、
図17に示すような、平坦面から一部のみが径方向内側に突出した内壁部58を有する下側部分112、
図18に示すような、中央部が厚くなっており径方向内側に突出した内壁部58を有する下側部分113などであってもよい。いずれであっても、吊り部材70と枠体10、第1中間ロッド26及び第2中間ロッド27との接地面積を少なくし、吊り部材70が枠体10に対して回転しやすくなる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形及び変更が可能である。例えば、枠体の形状は、ラウンド型、ハーフラウンド型など角型以外であってもよいし、折りたたみ可能な枠体以外の固定の枠体であってもよい。枠体間に延びた中間ロッドはなくてもよいし、中間ロッドの数も2つに限定されない。フック部も3つのフックに限定されず、1つであってもよい。吊り部材の形状も、内壁部に形成された係止孔で係止する係止部を備えるものであれば限定されない。ピンチベルトの形状も限定されない。ピンチへのピンチベルトの取り付けも、突起部と溝部の係合に限定されない。また、係止孔の形状も円形に限定されない。対向面に設けられる突起部の形状も、把持力を備えるものであればここに開示される形状と異なってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 物干し具
10 枠体
12 第1枠体
13 第2枠体
30 フック部
58 内壁部
59 係止孔
60 ハンドル部
70 吊り部材
71 係止部
80 ピンチ部
84 ピンチ
85 把持部
86 係合部
87 挟持部
100 ピンチベルト