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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091865
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】小麦蛋白質加水分解物含有組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20230626BHJP
   A23L 33/24 20160101ALI20230626BHJP
【FI】
A23L33/105
A23L33/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206702
(22)【出願日】2021-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】301049744
【氏名又は名称】日清ファルマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】中山 優也
(72)【発明者】
【氏名】浅田 憲一
【テーマコード(参考)】
4B018
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018MC04
4B018MD04
4B018MD29
4B018MD32
4B018MD35
4B018MD36
4B018MD47
4B018MD48
4B018MD49
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF02
(57)【要約】
【課題】小麦蛋白質の加水分解物、ブラックジンジャーエキス及び/又はモリンガエキスの2乃至3成分を含有し、かつ経時的な着色の少ない、組成物を提供する。
【解決手段】小麦蛋白質の加水分解物と、ブラックジンジャーエキス及び/又はモリンガエキスを含み、さらにセルロースを含む組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
小麦蛋白質の加水分解物と、ブラックジンジャーエキス及び/又はモリンガエキスを含み、さらにセルロースを含む組成物。
【請求項2】
小麦蛋白質の加水分解物を50~90質量%、ブラックジンジャーエキスを3~30質量%及び/又はモリンガエキスを3~30質量%含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
セルロースを3~30質量%含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
温度25℃、相対湿度100%で2日間の保存による色差(ΔE)が15以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小麦蛋白質の加水分解物を含有する組成物に関する。
詳細には、小麦蛋白質の加水分解物と、ブラックジンジャーエキス及び/又はモリンガエキスを含み、さらにセルロースを含むことを特徴とする、経時的な着色が改善された組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の医療の発達による平均寿命の延伸や少子化に伴って、我が国のみならず、世界的に高齢者人口の割合が増加してきている。また、エスカレーターやエレベーターの普及やバリアフリー化、低床化など、社会インフラ整備の進展に加え、コンピュータやTVゲームの普及等の社会環境等の要因もあって、屋内で過ごすことが従来に比べて多くなる傾向にあり、日常生活の中で大きな筋力を使う機会がますます少なくなっている。その結果、高齢者だけでなく、若年層も含めた様々な世代での体力低下が社会的な問題となっている状況にある。
【0003】
例えば、高齢者では、地面のわずかな段差に脚を引っかけて転倒するといった事例がしばしば報告されているが、これは脚を持ち上げる筋肉が減少することによるものと推定されている。また、一般に、年齢と共に筋力低下による体のだるさや関節痛を自覚することが多くなるが、特に脚、腰、膝などの下肢周辺でそのような自覚症状があると、体を動かす意欲が一層低下し、悪循環に陥りやすい。このようにして、日常生活のクオリティオブライフ(QOL)の質が下がることは、本人はもとより、周囲にとっても切実な問題である。
【0004】
こうした背景のもと、脚、腰、膝などの下肢周辺における筋肉、筋力、関節の健康を維持・増進するための食品成分が各種上市されており、小麦蛋白質の加水分解物、ブラックジンジャーエキス、モリンガエキスのほか、グルコサミン、コンドロイチン、ヒアルロン酸、コラーゲン、メチルスルホニルメタン(MSM)、エラスチン、3-ヒドロキシ-3-メチルブチレート(HMB)、クレアチンなどが利用されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、小麦蛋白質の加水分解物、好ましくは小麦グルテンの加水分解物、特に好ましくはL-グルタミン含有量が15~60質量%であり、平均分子量が200~100,000ダルトンであるペプチドを含有する筋力維持および関節機能を改善する組成物が開示されている。
【0006】
小麦蛋白質の加水分解物は、高分子の小麦由来の蛋白質を、加水分解することによって比較的分子量の小さいペプチドとしたものであり、運動負荷後の遅発性筋損傷軽減作用、エクササイズとの併用による中高齢者の筋量維持などが報告されている(非特許文献1~4)。
【0007】
また、特許文献2には、ブラックジンジャーからのエキスを有効成分として含有することを特徴とする筋肉持久力の向上のための製剤が、特許文献3には、有効成分としてモリンガおよび/またはモリンガエキスを含有する腰痛改善のための組成物が、それぞれ、開示されている。
【0008】
ブラックジンジャーエキスは、ショウガ科バンウコン科の植物であるブラックジンジャーのエキスであり、タイ王国ではクラチャイダムと呼ばれ、伝統的に食されてきた。ブラックジンジャーエキスは、脚の筋肉におけるミトコンドリアの合成亢進やエネルギー代謝
の亢進により、歩行能力を維持・向上させることが知られている。ブラックジンジャーエキスは、例えば、根茎部などを用いて、水、親水性有機溶媒等、通常用いられる抽出溶媒により抽出することで製造される。(特許文献2)
【0009】
モリンガは、正式名称をワサビノキといい、ワサビノキ科ワサビノキ属の1種であり、インドなどではカレーやサラダとして古くから食されてきた。モリンガエキスは筋持久力を向上させ、疲労感や腰痛を改善させることが知られており、抗酸化作用やPPARβ/γの活性化に関連しているといわれている。モリンガエキスは、例えば、葉、茎、鞘(果肉)、根、種子などを用いて、水、親水性有機溶媒等、通常用いられる抽出溶媒により抽出することで製造される。(特許文献3)
【0010】
小麦蛋白質の加水分解物は、例えば、小麦由来のグルテンを、酸を用いて加水分解する方法や、蛋白質加水分解酵素(プロテアーゼ)を用いて加水分解する方法等を適用して加水分解することによって製造されるが、保存条件によって変色しやすく、従来、小麦蛋白質の加水分解物含有錠剤を着色したコーティング剤で被覆する方法や、包装容器内に吸湿剤を存在させる方法が採用されているが、変色を抑制する成分を添加する方法も知られている。
【0011】
例えば、特許文献4には、カルシウム塩をカルシウム換算で100ppm~2000ppm含有する蛋白加水分解調味料は、保存や加熱による褐変が抑制されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2011-246387号公報
【特許文献2】特開2016-8180号公報
【特許文献3】特開2001-29182号公報
【特許文献4】特開2000-184863号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Koikawa N et al.Delayed-onset muscle injury and its modification by wheat gluten hydrolysate.Nutrition 2009;25:p493-498.
【非特許文献2】Aoki K,et al.Post-training consumption of wheat gluten hydrolysate suppresses the delayed onset of muscle injury in soccer players.Experimental and Therapeutic Medicine 2012;3:p969-972.
【非特許文献3】高梨雄太ほか.小麦グルテン加水分解物(WGH)は投擲競技者のウエイトトレーニングにおける筋損傷を軽減するか?日本臨床スポーツ医学会誌 2012;20(1):66-71.
【非特許文献4】新村由紀ほか.自体重エクササイズと小麦グルテン加水分解物配合サプリメント併用が中高齢者の下肢筋力と筋量に及ぼす効果.体力科学 2012;61(6):636(42-2-C-3,p188).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上に述べたように、小麦蛋白質の加水分解物、ブラックジンジャーエキス、モリンガエキスは、それぞれ、脚、腰、関節等の健康を維持・増進するための食品成分として使用されている。
そこで、本発明者らは、これらを複数組み合わせることでより高い効果を奏することを期待して、小麦蛋白質の加水分解物、ブラックジンジャーエキス及び/又はモリンガエキスを組み合わせて配合したところ、これらの2乃至3成分を同時に配合した組成物は、安
定性が低下して経時的に着色が生じ、カルシウム塩のような既知の変色抑制成分を添加しても着色を適切に抑制することができないため、食品として提供するために十分な品質が得られないという問題があることが判明した。
【0015】
本発明の課題は、小麦蛋白質の加水分解物、ブラックジンジャーエキス及び/又はモリンガエキスの2乃至3成分を含有し、かつ経時的な着色の少ない、組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の課題は、以下の組成物によって、解決することができる。
(1)小麦蛋白質の加水分解物と、ブラックジンジャーエキス及び/又はモリンガエキスを含み、さらにセルロースを含む組成物。
(2)小麦蛋白質の加水分解物を50~90質量%、ブラックジンジャーエキスを3~30質量%及び/又はモリンガエキスを3~30質量%含む、(1)の組成物。
(3)セルロースを3~30質量%含む、(1)又は(2)の組成物。
(4)温度25℃、相対湿度100%で2日間の保存による色差(ΔE)が15以下である、(1)~(3)の組成物。
【発明の効果】
【0017】
小麦蛋白質の加水分解物と、ブラックジンジャーエキス及び/又はモリンガエキスを組み合わせることによる経時的な着色を、セルロースを配合することで改善することができる。本発明の組成物は、高湿条件下における著しい着色に対しても、十分な改善効果を示す。
【0018】
そのため、本発明の組成物は、安定性、保存性に優れるため、継続して経口摂取するような飲食品用の組成物として極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0020】
本発明の組成物は、小麦蛋白質の加水分解物、ブラックジンジャーエキス及び/又はモリンガエキス、及びセルロースを少なくとも含むものであり、これらの成分が含まれている限り、各成分の相対的な配合量については、特段の制限はないが、通常、小麦蛋白質の加水分解物は、好ましくは50~90質量%、より好ましくは60~80質量%の範囲で配合され、ブラックジンジャーエキスは、好ましくは3~30質量%、より好ましくは6~15質量%の範囲で配合され、モリンガエキスは、好ましくは3~30質量%、より好ましくは6~15質量%の範囲で配合される。
【0021】
また、本発明の組成物において、セルロースは、好ましくは3~30質量%、より好ましくは7~21質量%、さらに好ましくは10~18質量%の範囲で配合される。本発明の組成物においては、小麦蛋白質の加水分解物、ブラックジンジャーエキス及び/又はモリンガエキスが有効成分であって、セルロースは、その安定剤として使用されるものであるので、安定剤としての役割を果たす範囲であれば、その使用量をむやみに増やす必要はない。
【0022】
使用するセルロースとしては、粉末状の市販品を特に制限なく使用することができ、市販品の例としては、例えば旭化成製のセオラスFD-301、セオラスST-100、セオラスUF-F702、セオラスFD-F20などを挙げることができる。
【0023】
本発明の組成物の態様としては、経口摂取に適した形態であれば特に制限はないが、例
えば、粉末状、粒状、顆粒状、錠剤状、棒状、板状、ブロック状、固形状、丸状、ハードカプセルやソフトカプセルのようなカプセル状、カプレット状、タブレット状、チュアブル状、スティック状等の各形態が挙げられる。
【0024】
本発明の組成物には、効果を損なわない範囲において、通常飲食品に配合される任意の成分を加えることができる。そのような任意の成分としては、例えば、賦形剤、結合剤、光沢剤、滑沢剤、安定剤、増粘剤、乳化剤、酸化防止剤、pH調整剤、着色料、香料、添加剤、甘味料、酸味料、その他の有効成分(生理活性成分)などを挙げることができる。
【0025】
本発明の組成物において、温度25℃、相対湿度100%で2日間の保存による色差(ΔE)が15以下であることが好ましい。色差(ΔE)が15を超えると、目視で経時的な着色が目視で認識可能となり、商品価値が低下するなどの点で好ましくない。
【0026】
以下も、実施例により本発明についてさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【実施例0027】
実施例1~11及び比較例1~10
方法:下記表1(実施例1~6)、表2(実施例7~11)及び表3(比較例1~10)に示した量の各成分の粉末を合計100gとなるように混合して、実施例及び比較例用の試料を調製した。
【0028】
実施例及び比較例の試料の調製に使用した製品は、以下のとおりである。
・小麦蛋白質の加水分解物(日清ファルマ製、商品名「GP-1」)
・ブラックジンジャーエキス(丸善製薬製、商品名「ブラックジンジャー抽出物」)
・モリンガエキス(バイオアクティブジャパン製、商品名「モリンガオレイフェラエキス」 )、
・セルロース(旭化成製、商品名「セオラス」)
・デキストリン(松谷化学工業製、商品名「TK-16」)
・還元麦芽糖水飴(三菱商事ライフサイエンス製、商品名「アマルティMR50」)
・乳糖(DFE Pharma製、商品名「Pharmatose 200M」)
・エリスリトール(三菱ケミカルフーズ製、商品名「エリスリトール」)
・HPMC(信越化学工業製、商品名「メトローズ」)
・HPC(日本曹達製、商品名「HPC-L」)
・乳酸カルシウム(太平化学産業製、商品名「乳酸カルシウム」)
【0029】
これらの試料を、温度25℃、相対湿度100%の保存条件で2日間保管し、以下の方法で色差を測定した。
色差は分光色彩計(日本電色工業製、SE-6000)を使用し、試料の色彩をL***表色系で測定した。この分光色彩計では、開始時と保存後の色差ΔEが、下記数式
1により算出して表示される。
数式1:ΔE=[(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)21/2
【0030】
上記条件で保存した試料の試験開始前と比較した2日後の色差ΔEが15以下であれば、市販品として十分な安定性があるといえる。実施例及び比較例の結果を表1~3に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
表1~3の結果から、比較例1~10の組成物は着色を示すが、セルロースを添加した実施例1~11の場合には、着色が少なく、安定性の高い組成物を提供できたことが理解できる。