(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091876
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】ドラム式洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 33/48 20200101AFI20230626BHJP
D06F 33/76 20200101ALI20230626BHJP
【FI】
D06F33/48
D06F33/76
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206717
(22)【出願日】2021-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】512128645
【氏名又は名称】青島海爾洗衣机有限公司
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO HAIER WASHING MACHINE CO.,LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田島 登
(72)【発明者】
【氏名】山本 彰
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 聡司
【テーマコード(参考)】
3B167
【Fターム(参考)】
3B167AA02
3B167AA04
3B167AA05
3B167AD02
3B167AD06
3B167AD07
3B167AE05
3B167AE07
3B167AE12
3B167AE13
3B167BA08
3B167BA15
3B167HA11
3B167JC22
3B167KA02
3B167KA18
3B167KA71
3B167KA75
3B167KB02
3B167KB16
3B167LC02
3B167LD12
3B167LD13
3B167LE07
3B167LF06
3B167LG08
(57)【要約】
【課題】洗濯物内の収容物が偏らないように洗濯物を洗濯できるドラム式洗濯機を提供する。
【解決手段】ドラム式洗濯機1は、モータ9と、モータ9のトルクを受けて回転するドラム8と、制御部30とを含む。制御部30は、ドラム8内の洗濯物Lの収容量を検出する準備工程と、準備工程の後の洗い工程と、洗い工程の後のすすぎ工程と、すすぎ工程の後の脱水工程とを実行する。制御部30は、洗い工程の開始から脱水工程の終了までの間において、ドラム8内の洗濯物Lが常にドラム8の内周面部8Eに張り付くようにモータ9によって所定の最低回転数以上でドラム8を同一方向に回転させ続ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルクを発生する駆動部と、
洗濯物を収容し、前記駆動部のトルクを受けて回転するドラムと、
前記ドラム内に給水するための給水部と、
前記駆動部及び前記給水部を制御する制御部とを含み、
前記制御部は、
前記ドラム内の洗濯物の収容量を検出する準備工程と、
前記準備工程の後に、前記給水部によって前記ドラム内に給水して前記駆動部によって前記ドラムを回転させて前記ドラム内の洗濯物を洗う洗い工程と、
前記洗い工程の後に、前記給水部によって前記ドラム内に給水して前記駆動部によって前記ドラムを回転させて前記ドラム内の洗濯物をすすぐすすぎ工程と、
前記すすぎ工程の後に、前記駆動部によって前記ドラムを回転させて前記ドラム内の洗濯物を脱水する脱水工程とを実行し、
前記洗い工程の開始から前記脱水工程の終了までの間において、前記ドラム内の洗濯物が常に前記ドラムの内周面部に張り付くように前記駆動部によって所定の最低回転数以上で前記ドラムを同一方向に回転させ続ける、ドラム式洗濯機。
【請求項2】
布地の間に羽毛又は綿が詰まった洗濯物が前記ドラム内に収容される場合に、前記制御部は、前記洗い工程の開始から前記脱水工程の終了までの間において、前記駆動部によって前記最低回転数以上で前記ドラムを同一方向に回転させ続ける、請求項1に記載のドラム式洗濯機。
【請求項3】
前記最低回転数は、90rpm以上200rpm以下である、請求項1又は2に記載のドラム式洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラム式洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載のドラム式洗濯乾燥機は、洗濯物を収容するドラムと、ドラムを回転させるモータとを含む。ドラム式洗濯乾燥機の洗い工程及びすすぎ工程では、水が溜められたドラムが回転することにより、ドラム内の洗濯物がある程度持ち上げられてから水面に自然落下するというタンブリングが繰り返される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えばダウンジャケットのように布地の間に羽毛等の収容物が詰まった洗濯物については、クリーニング業者に洗濯を依頼するのが一般的であるが、その費用は高価であることが多い。そこで、このような洗濯物を自宅の洗濯機で洗濯できると便利である。しかし、このような洗濯物をドラム式洗濯機で洗濯すると、洗濯物がタンブリングに応じてドラム内で移動したり水中で浮遊してほぐされたりすることによって、洗濯物内の収容物が布地の間で偏ってしまうことがある。収容物の偏りを洗濯後に修正することは困難であるので、収容物が偏らないように洗濯物を洗濯できることが望まれる。
【0005】
本発明は、かかる背景のもとでなされたもので、洗濯物内の収容物が偏らないように洗濯物を洗濯できるドラム式洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トルクを発生する駆動部と、洗濯物を収容し、前記駆動部のトルクを受けて回転するドラムと、前記ドラム内に給水するための給水部と、前記駆動部及び前記給水部を制御する制御部とを含むドラム式洗濯機であって、前記制御部が、前記ドラム内の洗濯物の収容量を検出する準備工程と、前記準備工程の後に、前記給水部によって前記ドラム内に給水して前記駆動部によって前記ドラムを回転させて前記ドラム内の洗濯物を洗う洗い工程と、前記洗い工程の後に、前記給水部によって前記ドラム内に給水して前記駆動部によって前記ドラムを回転させて前記ドラム内の洗濯物をすすぐすすぎ工程と、前記すすぎ工程の後に、前記駆動部によって前記ドラムを回転させて前記ドラム内の洗濯物を脱水する脱水工程とを実行し、前記洗い工程の開始から前記脱水工程の終了までの間において、前記ドラム内の洗濯物が常に前記ドラムの内周面部に張り付くように前記駆動部によって所定の最低回転数以上で前記ドラムを同一方向に回転させ続ける、ドラム式洗濯機である。
【0007】
また、本発明は、布地の間に羽毛又は綿が詰まった洗濯物が前記ドラム内に収容される場合に、前記制御部が、前記洗い工程の開始から前記脱水工程の終了までの間において、前記駆動部によって前記最低回転数以上で前記ドラムを同一方向に回転させ続けることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、前記最低回転数が、90rpm以上200rpm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ドラム式洗濯機の洗濯運転では、準備工程においてドラム内の洗濯物の収容量が検出された後に、洗い工程の開始から脱水工程の終了までの間において、ドラム内の洗濯物が常にドラムの内周面部に張り付くように所定の最低回転数以上でドラムが同一方向に回転し続ける。これにより、洗濯運転中において、ドラムに対する洗濯物の相対位置が変わらないので、洗濯物内の収容物、例えば洗濯物の布地の間に詰まった羽毛又は綿が、布地の間で偏りにくい。そのため、洗濯物内の収容物が偏らないように洗濯物を洗濯できる。
【0010】
また、本発明によれば、前述した最低回転数が90rpm以上200rpm以下であれば、最低回転数でのドラムの回転中において、振動や騒音を抑制しつつ、洗濯物を常にドラムの内周面部に張り付かせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係るドラム式洗濯機の模式的な縦断面右側面図である。
【
図2】ドラム式洗濯機の電気的構成を示すブロック図である。
【
図3】ドラム式洗濯機において実行される洗濯運転を示すタイムチャートである。
【
図4】洗濯運転中におけるドラム式洗濯機のドラムの内部の模式的な正面図である。
【
図5】洗濯運転中におけるドラムの内部の模式的な正面図である。
【
図6】洗濯運転中におけるドラムの内部の模式的な正面図である。
【
図7】洗濯運転の開始前における洗濯物の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下には、図面を参照して、本発明の実施形態について具体的に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るドラム式洗濯機1の模式的な縦断面右側面図である。
図1の紙面に直交する方向をドラム式洗濯機1の左右方向Xといい、
図1における左右方向をドラム式洗濯機1の前後方向Yといい、
図1における上下方向をドラム式洗濯機1の上下方向Zという。
【0013】
左右方向Xのうち、
図1の紙面における奥側を左側X1といい、
図1の紙面における手前側を右側X2という。前後方向Yのうち、
図1における左側を前側Y1といい、
図1における右側を後側Y2という。上下方向Zのうち、上側を上側Z1といい、下側を下側Z2という。左右方向X及び前後方向Yは、横方向に含まれる。横方向は、水平方向Hであってもよいし、水平方向Hに対して若干傾斜した略水平方向であってもよい。
【0014】
ドラム式洗濯機1として、本実施形態では、乾燥機能を有するドラム式洗濯乾燥機について説明するが、ドラム式洗濯機1では、乾燥機能が省略されてもよい。ドラム式洗濯機1は、筐体2と、筐体2内に配置された水槽3と、水槽3に接続された主給水路4、シャワー給水路5及び排水路6と、水槽3内に洗剤や柔軟剤などを投入するための投入部7とを含む。ドラム式洗濯機1は、水槽3内に収容されて洗濯物Lを収容するドラム8と、ドラム8を回転させる駆動部の一例としてのモータ9と、ドラム8内の洗濯物Lを乾燥させる乾燥ユニット10とをさらに含む。
【0015】
筐体2は、ボックス状に形成される。筐体2の前面2Aは、例えば垂直面である。前面2Aには、筐体2の内外を連通させる開口2Bが形成される。前面2Aには、開口2Bを開閉する扉11が設けられる。以下の説明では、扉11が開口2Bを閉じた状態を基準とする。
【0016】
水槽3は、筐体2の底壁2Cから上側Z1へ延びるダンパ12によって支えられ、ばね(図示せず)によって吊り下げられる。これにより、水槽3及びその内側のドラム8の全体が、筐体2によって弾性支持される。水槽3は、水平方向Hに沿って前後方向Yに延びる軸線Jを中心とした円筒状の円周壁3Aと、円周壁3Aの中空部分を後側Y2から塞いだ円盤状の背面壁3Bと、円周壁3Aの前端縁につながったリング状の正面壁3Cとを有する。
【0017】
背面壁3Bは、上下方向Zに沿って垂直に配置される。背面壁3Bの中心には、軸線Jに沿って背面壁3Bを前後方向Yに貫通した貫通穴3Dが形成される。正面壁3Cは、円周壁3Aの前端縁から軸線J側へ張り出した円環状の第1部3Eと、第1部3Eの内周縁から前側Y1へ突出した円筒状の第2部3Fと、第2部3Fの前端縁から軸線J側へ張り出した円環状の第3部3Gとを有する。第3部3Gの内側には、円周壁3Aの中空部分に前側Y1から連通した出入口3Hが形成される。出入口3Hは、筐体2の開口2Bに対して後側Y2から対向して連通した状態にある。
【0018】
主給水路4は、蛇口(図示せず)に接続される一端4Aと、水槽3の正面壁3Cの第2部3Fにおける例えば上部に接続された他端4Bとを有する。シャワー給水路5は、主給水路4に接続された一端5Aと、例えば第2部3Fの上部を貫通して水槽3の出入口3Hの周辺に配置された他端5Bとを有する。他端5Bは、扉11の内面11Aに臨んで配置される。排水路6は、水槽3の下端部、例えば円周壁3Aの下端部に接続される。
【0019】
ドラム式洗濯機1は、主給水路4に設けられた開閉可能な主給水バルブ13と、シャワー給水路5に設けられた開閉可能なシャワーバルブ14と、排水路6に設けられた開閉可能な排水バルブ15とを含む。開状態の主給水バルブ13は、主給水路4を開いたON状態にあり、閉状態の主給水バルブ13は、主給水路4を閉じたOFF状態にある。開状態のシャワーバルブ14は、シャワー給水路5を開いたON状態にあり、閉状態のシャワーバルブ14は、シャワー給水路5を閉じたOFF状態にある。開状態の排水バルブ15は、排水路6を開いたON状態にあり、閉状態の排水バルブ15は、排水路6を閉じたOFF状態にある。
【0020】
排水バルブ15が閉じた状態で主給水バルブ13及びシャワーバルブ14の少なくとも一方が開くと、蛇口からの水道水が主給水路4及びシャワー給水路5の少なくとも一方を流れる。水道水を、以下では単に「水」ということがある。主給水路4を流れた水は、主給水路4の他端4Bから水槽3内に流入して溜まる。シャワー給水路5を流れた水は、シャワー給水路5の他端5Bからシャワー状に水槽3内に流入し、一部の水が扉11の内面11Aに浴びせられる。これにより、内面11Aから汚れが洗い落とされる。内面11Aに浴びせられた水は、水槽3内に溜まる。
【0021】
本実施形態では、シャワー給水路5の一端5Aが主給水路4において主給水バルブ13よりも一端4A側の部分に接続されるので、シャワーバルブ14だけを開けば、蛇口からの水をシャワー給水路5に流すことができる。一端5Aが主給水路4において主給水バルブ13よりも他端4B側の部分に接続されてもよいが、この場合には、蛇口からの水をシャワー給水路5に流すために、主給水バルブ13及びシャワーバルブ14の両方を開く必要がある。水槽3に水が溜まった状態で排水バルブ15が開くと、水槽3内の水は、排水路6から筐体2の外、つまり機外に排出される。
【0022】
投入部7は、洗剤投入部7Aと柔軟剤投入部7Bとを含む。洗剤投入部7A及び柔軟剤投入部7Bのそれぞれは、洗剤又は柔軟剤を収容するケース16と、ケース16から延びて主給水路4につながった投入路17と、投入路17に設けられた開閉可能な投入バルブ18とを含む。
【0023】
ケース16は、筐体2内において水槽3よりも上側Z1の領域に配置される。ケース16の少なくとも一部は、筐体2の前面2A又は上面2Dから露出される。ケース16において前面2A又は上面2Dから露出された露出部分は、開閉可能な蓋、又は、引出しであってもよい。使用者は、当該露出部分を開いたり引き出したりしてケース16内に洗剤又は柔軟剤を補充することができる。洗剤投入部7Aのケース16と、柔軟剤投入部7Bのケース16とは、
図1に示すように別々に存在してもよいし、一体化されてもよい。
【0024】
投入路17は、ケース16の下部から下側Z2へ延びて、主給水路4において主給水バルブ13よりも他端4B側の部分に接続される。開状態の投入バルブ18は、投入路17を開いたON状態にあり、閉状態の投入バルブ18は、投入路17を閉じたOFF状態にある。
【0025】
主給水バルブ13が開いた状態で洗剤投入部7Aの投入バルブ18が開くと、洗剤投入部7Aのケース16内の洗剤が、投入路17を通って主給水路4に流入し、主給水路4内の水に乗って他端4Bから水槽3内に投入される。主給水バルブ13が開いた状態で柔軟剤投入部7Bの投入バルブ18が開くと、柔軟剤投入部7Bのケース16内の柔軟剤が、投入路17を通って主給水路4に流入し、主給水路4内の水に乗って他端4Bから水槽3内に投入される。洗剤や柔軟剤が溶けた水も、水道水と同様に、以下では単に「水」ということがある。
【0026】
ドラム8は、軸線Jと一致した中心軸線を有する円筒体であって、水槽3よりも一回り小さい。ドラム8は、本実施形態では中心軸線が水平方向Hに沿うように水平に配置されるが、中心軸線が水平方向Hに対して傾斜するように斜めに配置されてもよい。ドラム8は、水槽3の円周壁3Aと同軸上に配置された円筒状の円周壁8Aと、円周壁8Aの中空部分を後側Y2から塞いだ円盤状の背面壁8Bと、円周壁8Aの前端縁から軸線J側へ張り出した円環状の環状壁8Cとを有する。
【0027】
ドラム8において少なくとも円周壁8Aには、複数の貫通穴8Dが形成され、水槽3内の水は、貫通穴8Dを介して、水槽3とドラム8との間で行き来する。そのため、水槽3内の水位とドラム8内の水位とは、一致する。前述したように開状態で水槽3に水を供給する主給水バルブ13及びシャワーバルブ14は、ドラム8内に給水するための給水部19を構成する。
【0028】
円周壁8Aの内周面は、ドラム8の内周面部8Eを構成する。内周面部8Eは、背面壁8Bの前面における外周部も含んでもよい。内周面部8Eにおいて貫通穴8Dを避けた位置には、軸線J側へ突出したバッフル8Fが複数設けられる。本実施形態では、3つのバッフル8Fが、軸線Jまわりの周方向Sにおいて等間隔で配置される(後述する
図4なども参照)。ドラム8の背面壁8Bの中心には、軸線Jに沿って後側Y2へ延びる支持軸8Gが設けられる。支持軸8Gの後端部は、水槽3の背面壁3Bの貫通穴3Dを通って背面壁3Bよりも後側Y2に配置される。
【0029】
環状壁8Cの内側には、円周壁8Aの中空部分に前側Y1から連通した出入口8Hが形成される。出入口8Hは、水槽3の出入口3H及び筐体2の開口2Bに対して後側Y2から対向して連通した状態にある。出入口3H及び出入口8Hは、開口2Bとともに、扉11によって一括開閉される。使用者は、開放された開口2B、出入口3H及び出入口8Hを介して、ドラム8内に洗濯物Lを出し入れする。扉11の内面11Aには、扉11が開口2B、出入口3H及び出入口8Hを閉じたときに水槽3の正面壁3Cの第3部3Gに密着するパッキン11Bが設けられる。
【0030】
モータ9は、筐体2内において、水槽3の背面壁3Bの後側Y2に配置される。モータ9の一例として、DD(ダイレクトドライブ)モータを採用できる。モータ9は、ドラム8に設けられた支持軸8Gに連結される。モータ9が発生したトルクは、支持軸8Gに伝達されるので、モータ9のトルクを受けたドラム8が、支持軸8Gを伴って軸線Jまわりに回転する。なお、モータ9と支持軸8Gと間には、モータ9のトルクを支持軸8Gに伝達したり遮断したりするクラッチ機構(図示せず)が設けられてもよい。
【0031】
乾燥ユニット10は、水槽3内の空気を循環させるための循環路20及び送風部21と、循環する空気を加熱する加熱部22とを含む。乾燥ユニット10は、循環する空気に含まれる異物を捕獲する乾燥フィルタ23と、乾燥フィルタ23に自動掃除用の水を供給する副給水路24と、副給水路24に設けられた開閉可能なフィルタ掃除バルブ25とをさらに含む。
【0032】
循環路20は、筐体2内において水槽3の上側Z1に配置された流路である。循環路20は、前後方向Yに延びる途中部分20Aと、途中部分20Aの後端から下側Z2へ延びる後部分20Bと、途中部分20Aの前端から下側Z2へ延びる前部分20Cとを有する。後部分20Bの下端部の前端には、取出口20Dが形成される。取出口20Dは、水槽3の背面壁3Bに接続され、水槽3内に後側Y2から連通する。前部分20Cの下端には、戻し口20Eが形成される。戻し口20Eは、水槽3の正面壁3Cの第2部3Fの上端部に接続され、水槽3内に上側Z1から連通する。
【0033】
送風部21は、いわゆるブロアであり、循環路20内に配置された回転羽根21Aと、回転羽根21Aを回転させるモータ(図示せず)とを含む。回転羽根21Aが回転すると、水槽3内の空気、つまり水槽3内及びドラム8内の空気が、太い破線矢印で示すように、取出口20Dから循環路20内に取り出された後に、戻し口20Eから水槽3内に戻される。これにより、水槽3内の空気は、水槽3と循環路20とを順に流れるように循環する。
【0034】
加熱部22は、ヒートポンプにおける熱交換器又は一般的なヒータなどであり、少なくとも一部が、循環路20内に設けられる。加熱部22において循環路20内に設けられた部分は、放熱部22Aを有する。加熱部22が作動すると放熱部22Aが高温になるので、循環路20内を流れる空気が放熱部22Aの周囲を通過する際に加熱されて熱風になる。循環路20内において放熱部22Aよりも取出口20D側の領域を、上流領域20Fという。途中部分20Aの後端部と後部分20Bとが、上流領域20Fを構成する。
【0035】
乾燥フィルタ23は、メッシュシート又は格子であって、循環路20の上流領域20Fを例えば縦に横切って配置される。循環路20内で取出口20Dから戻し口20Eへ向かう空気が乾燥フィルタ23を通過する際に、この空気に含まれる塵や埃などの異物が、乾燥フィルタ23によって捕獲されて、乾燥フィルタ23において取出口20D側の上流面23Aに溜まる。
【0036】
副給水路24は、主給水路4において主給水バルブ13よりも一端4Aに近い部分に接続された一端24Aと、循環路20の上流領域20Fにおける乾燥フィルタ23に上側Z1から臨む他端24Bとを有する。一端24Aは、主給水路4に直接接続されるのでなく、シャワー給水路5においてシャワーバルブ14よりも一端5Aに近い部分を介して主給水路4に接続されてもよい。
【0037】
開状態のフィルタ掃除バルブ25は、副給水路24を開いたON状態にあり、閉状態のフィルタ掃除バルブ25は、副給水路24を閉じたOFF状態にある。フィルタ掃除バルブ25が開くと、蛇口からの水が副給水路24を流れて、副給水路24の他端24Bから循環路20の上流領域20F内の乾燥フィルタ23に上側Z1から浴びせられる。乾燥フィルタ23に浴びせられた水は、乾燥フィルタ23の上流面23Aから異物を洗い落として、循環路20の取出口20Dから水槽3内に流入する。フィルタ掃除バルブ25も、主給水バルブ13及びシャワーバルブ14と同様に、前述した給水部19を構成する。
【0038】
乾燥フィルタ23から洗い落とした異物を乗せた水が水槽3内に流入した状態で排水バルブ15が開くと、これらの異物及び水は、排水路6を流れて機外に排出される。なお、排水路6において排水バルブ15よりも水槽3に近い上流部には、排水フィルタ(図示せず)が設けられてもよく、その場合には、排水路6を流れる異物は、排水フィルタによって捕獲されて、排水フィルタのメンテナンス時に使用者によって回収される。排水フィルタとして、メンテナンス時に使用者によって筐体2に対して着脱可能な公知の構成を用いることができる。
【0039】
図2は、ドラム式洗濯機1の電気的構成を示すブロック図である。ドラム式洗濯機1は、表示操作部27と、水位センサ28と、回転数センサ29と、制御部30とをさらに含む。
【0040】
表示操作部27は、液晶操作パネルなどで構成され、筐体2の前面2Aなどに配置される(
図1参照)。使用者は、表示操作部27を操作することによって、ドラム式洗濯機1で実行される洗濯運転についての運転条件やコースなどを選択したり、ドラム式洗濯機1に対して洗濯運転の開始や停止などを指示したりすることができる。表示操作部27には、使用者向けの情報が表示される。
【0041】
水位センサ28は、水槽3内の水位、つまりドラム8内の水位を検出するセンサである。水位センサ28として、公知のセンサを採用できる。
【0042】
回転数センサ29は、モータ9の回転数を検出するセンサであって、例えばホールICで構成される。本実施形態では、モータ9の回転数とドラム8の回転数とは同じなので、回転数センサ29は、モータ9の回転数を検出することによって、実際にはドラム8の回転数を検出する。なお、モータ9とドラム8の支持軸8Gと間に、前述したクラッチ機構(図示せず)が設けられる場合には、ドラム8の回転数は、クラッチ機構での減速比などの所定の定数をモータ9の回転数に乗じて得られる値である。回転数センサ29は、支持軸8Gの回転数を検出することによって、ドラム8の回転数を直接検出してもよい。
【0043】
制御部30は、例えば、CPUと、ROMやRAMなどのメモリと、計時用のタイマとを含むマイコンとして構成され、筐体2内に内蔵される(
図1参照)。表示操作部27、水位センサ28、回転数センサ29、並びに、前述したモータ9、主給水バルブ13、シャワーバルブ14、排水バルブ15、投入バルブ18、送風部21、加熱部22及びフィルタ掃除バルブ25のそれぞれは、制御部30に対して電気的に接続される。
【0044】
使用者による表示操作部27の操作内容は、制御部30に入力される。制御部30は、表示操作部27の表示内容を制御する。水位センサ28及び回転数センサ29のそれぞれの検出結果は、リアルタイムで制御部30に入力される。制御部30は、回転数センサ29から入力されたドラム8の回転数に基いて、モータ9に印加する電圧のデューティ比を制御することによって、ドラム8が所望の回転数で回転するようにモータ9を制御する。制御部30は、主給水バルブ13、シャワーバルブ14、排水バルブ15、投入バルブ18及びフィルタ掃除バルブ25のそれぞれの開閉、つまりON・OFFを制御する。制御部30は、送風部21及び加熱部22のそれぞれの動作を制御する。
【0045】
制御部30は、洗濯運転を実行する。洗濯運転は、最初の準備工程と、準備工程の後の洗い工程と、洗い工程の後に1回又は複数回実行されるすすぎ工程と、最後のすすぎ工程の後に実行される脱水工程とを含む。洗濯運転は、脱水工程後に実行される乾燥工程も含む洗濯乾燥運転であってもよい。洗濯運転には、通常コースと、布地の間に羽毛又は綿が詰まったダウンジャケットや布団などの洗濯物Lを選択するためのダウンコースとがあり、使用者は、表示操作部27を操作することによって、通常コース及びダウンコースのどちらかを選択することができる。
【0046】
まず、通常コースの洗濯運転について大まかに説明する。制御部30は、準備工程では、モータ9を作動させて、例えば100rpmでドラム8を回転させ、その際のモータ9の電流の抵抗値などに基いて、ドラム8内の洗濯物Lによる負荷量を検出する。負荷量は、ドラム8内の洗濯物Lの収容量に相当する。洗濯物Lの収容量の一例は、洗濯物Lの重量であり、その場合の単位はkgである。
【0047】
制御部30は、検出した負荷量に基いて、洗剤及び柔軟剤のそれぞれの必要量と、洗い工程及びすすぎ工程における水槽3内の目標水位とを決定する。負荷量毎の洗剤及び柔軟剤のそれぞれの必要量と、負荷量毎の目標水位とは、予め定められて制御部30のメモリに記憶される。
【0048】
洗い工程では、制御部30は、まず、排水バルブ15を閉じた状態で主給水バルブ13を開くことによって給水処理を実行する。これにより、主給水路4からの水が水槽3内に流入して溜まるので、水槽3内の水位が上昇する。水槽3内の水位が目標水位まで上昇すると、制御部30は、主給水バルブ13を閉じることによって給水処理を終了する。なお、制御部30は、補給水としてシャワーバルブ14やフィルタ掃除バルブ25も開いてもよく、これにより、水槽3内の水位を目標水位まで速やかに上昇させることができる。
【0049】
給水処理の際に、制御部30は、洗剤投入部7Aの投入バルブ18を開くことによって、必要量の洗剤を水槽3内に自動投入する。なお、洗剤は、使用者によって水槽3内に手動投入されてもよい。洗剤が水道水に溶けることによって生成された洗剤水が、水槽3内に溜まる。
【0050】
制御部30は、給水処理後の洗い処理として、モータ9によってドラム8を正回転させたり反回転させたりする。これにより、ドラム8内の洗濯物Lが、たたき洗いされる。たたき洗いでは、洗濯物Lがある程度持ち上げられてからドラム8の回転方向の切り替わりなどに応じて水面に自然落下するというタンブリングが繰り返される。タンブリングによる衝撃や、ドラム8内に溜まった洗剤水に含まれる洗剤成分によって、洗濯物Lから汚れが取り除かれる。タンブリングの開始から所定時間が経過した後に、制御部30が排水バルブ15を開いて排水する。
【0051】
洗い工程の最後に、制御部30は、脱水処理を実行する。制御部30は、脱水処理では、排水バルブ15を開いた状態で、ドラム8を脱水回転させる。ドラム8の脱水回転により生じた遠心力によって、ドラム8内の洗濯物Lが脱水される。脱水により洗濯物Lから染み出た水は、排水路6から機外に排出される。
【0052】
次に、制御部30は、すすぎ工程を実行する。制御部30は、すすぎ工程では、排水バルブ15を閉じた状態で、少なくとも主給水バルブ13を所定時間開いて水槽3に目標水位まで水道水を溜めてから、モータ9によってドラム8を回転させる。すると、前述したタンブリングが繰り返されるので、洗濯物Lがドラム8内の水道水によってすすがれる。なお、制御部30は、主給水バルブ13を開く際に柔軟剤投入部7Bの投入バルブ18も開くことによって、必要量の柔軟剤を水槽3内に自動投入する。タンブリングの開始から所定時間が経過した後に、制御部30が排水して、前述した脱水処理を実行すると、すすぎ工程が終了する。
【0053】
次に、制御部30は、脱水工程として、排水バルブ15を開いた状態で、ドラム8を脱水回転させる。つまり、脱水工程の内容は、洗い工程の終盤の脱水処理やすすぎ工程の終盤の脱水処理の内容と、ほぼ同じである。脱水処理を中間脱水工程といって、脱水工程を最終脱水工程といってもよい。最終脱水工程と中間脱水工程とでは、ドラム8の回転数や回転時間などに違いがあってもよい。
【0054】
制御部30は、乾燥工程では、送風部21及び加熱部22を制御することによって熱風を発生させてドラム8と循環路20との間で循環させ、ドラム8内の洗濯物Lに供給する。これにより、洗濯物Lが乾燥する。洗濯運転では、前述した異物が発生して、この異物が乾燥工程中において熱風に乗って流れるが、異物は、循環路20内の乾燥フィルタ23の上流面23Aによって捕獲される。制御部30は、フィルタ掃除バルブ25を開いて上流面23Aの異物を洗い流す掃除処理を、乾燥工程後に引き続き実行してもよいし、使用者によって指定された別のタイミングに実行してもよい。
【0055】
次に、ダウンコースの洗濯運転を示すタイムチャートである
図3を参照しながら、ダウンコースの洗濯運転について詳細に説明する。
図3のタイムチャートでは、横軸が経過時間を示し、縦軸が、上から順に、排水バルブ15の開閉、主給水バルブ13の開閉、シャワーバルブ14の開閉、フィルタ掃除バルブ25の開閉、回転数センサ29の検出値であるドラム8の回転数を示す。
【0056】
ダウンコースの洗濯運転でも、制御部30は、まず、準備工程を実行して、ドラム8内の洗濯物Lの負荷量を検出し、この負荷量に基いて、洗剤及び柔軟剤のそれぞれの必要量と、洗い工程やすすぎ工程における水槽3内の目標水位とを決定する。
【0057】
準備工程の後の洗い工程では、制御部30は、まず、排水バルブ15を閉じた状態でモータ9を作動させ、ドラム8を、所定の最低回転数で同一方向Rへ回転させる(タイミングT0)。この最低回転数は、本実施形態では120rpmであるが、90rpm以上200rpm以下であればよい。また、この同一方向Rは、前述した軸線Jまわりの周方向Sのうち、本実施形態では正面視における時計回りの方向であるが(
図4~
図6における太線矢印を参照)、反時計回りの方向であってもよい。
【0058】
このようにドラム8が最低回転数で同一方向Rに回転し続ける状態で、制御部30は、洗い工程での給水処理として、まず、主給水バルブ13及びフィルタ掃除バルブ25を同時に開き(タイミングT1)、しばらくしてからシャワーバルブ14も開く(タイミングT2)。水槽3内の水位が目標水位まで上昇すると、制御部30は、主給水バルブ13、シャワーバルブ14及びフィルタ掃除バルブ25を同時に閉じることによって、給水処理を終了する(タイミングT3)。給水処理の所要時間は、一例として、70秒程度である。給水処理中において、制御部30は、通常コースの洗い工程と同様に、洗剤投入部7Aの投入バルブ18を開くことによって、必要量の洗剤を水槽3内に自動投入する。
【0059】
このように主給水バルブ13、シャワーバルブ14及びフィルタ掃除バルブ25、つまり給水部19によってドラム8内に給水した制御部30は、モータ9によってドラム8を最低回転数で同一方向Rに回転させ続ける。これにより、ドラム8内の洗濯物Lは、ドラム8内の水に浸かった状態(
図4参照)では、この水に含まれる洗剤成分によって汚れが除去されることで洗われる。そして、ドラム8内の洗濯物Lは、ドラム8の回転によって水面Wよりも上側Z1に配置されても(
図5及び
図6参照)、水面Wに落下することなく、ドラム8の内周面部8Eに張り付いた状態で、同一方向Rに回転し続ける。
【0060】
その後、給水処理の終了から例えば5分間の洗い時間が経過すると、制御部30は、排水バルブ15を開くことによって、水槽3及びドラム8の排水を開始する(タイミングT4)。しばらくしてドラム8内の水位がある程度低下すると、制御部30は、前述した脱水処理を開始する(タイミングT5)。
【0061】
具体的には、制御部30は、排水バルブ15を引き続き開いた状態で、まずドラム8を400rpmで10秒程度回転させる。これにより、ドラム8内の洗濯物Lに含まれる水分がある程度絞り取られる。そして、制御部30は、先ほどよりも高い最高回転数で60秒程度ドラム8を回転させる。最高回転数は、600rpm以上1200rpm以下である。最高回転数でのドラム8の回転により、ドラム8内の洗濯物Lに含まれる水分のほとんどが絞り取られる。その後、制御部30がドラム8の回転数を、最低回転数よりも少し高い150rpmまで下げると、脱水処理が終了し、洗い工程自体が終了する(タイミングT6)。
【0062】
洗い工程の終了に応じて、制御部30は、ドラム8を引き続き最低回転数よりも少し高い150rpmで回転させた状態で、1回目のすすぎ工程である第1すすぎ工程を開始する(タイミングT6)。このとき、制御部30は、排水バルブ15を閉じて、シャワーバルブ14及びフィルタ掃除バルブ25を60秒程度開く。これにより、副給水路24からの水が水槽3に供給されると共に、シャワー給水路5からの水がシャワー状で水槽3内に供給されることによって、ドラム8内の洗濯物Lについてのシャワーすすぎが実行される。このように、制御部30は、シャワーバルブ14及びフィルタ掃除バルブ25、つまり給水部19によってドラム8内に給水してモータ9によってドラム8を最低回転数以上で同一方向Rに回転させ続けて、ドラム8内の洗濯物Lをすすぐ。
【0063】
その後、制御部30は、シャワーバルブ14及びフィルタ掃除バルブ25を閉じて、排水バルブ15を開く(タイミングT7)。そして、例えば60秒経過することによってドラム8の水位がある程度低下すると、制御部30は、脱水処理を実行する(タイミングT8)。
【0064】
具体的には、制御部30は、排水バルブ15を引き続き開いた状態で、ドラム8を600rpmで120秒程度回転させる。これにより、ドラム8内の洗濯物Lに含まれる水分のほとんどが絞り取られる。その後、制御部30がドラム8の回転数を、最低回転数よりも少し高い150rpmまで下げると、脱水処理が終了し、第1すすぎ工程自体が終了する。
【0065】
第1すすぎ工程の終了に応じて、制御部30は、ドラム8を引き続き最低回転数よりも少し高い150rpmで回転させた状態で、2回目のすすぎ工程である第2すすぎ工程を開始する(タイミングT9)。このとき、制御部30は、排水バルブ15を閉じて、主給水バルブ13、シャワーバルブ14及びフィルタ掃除バルブ25の全てを70秒程度開いて給水する。この際、制御部30は、柔軟剤投入部7Bの投入バルブ18を開くことによって、必要量の柔軟剤を水槽3内に自動投入してもよい。
【0066】
水槽3内の水位が目標水位まで上昇すると、制御部30は、主給水バルブ13、シャワーバルブ14及びフィルタ掃除バルブ25を同時に閉じる(タイミングT10)。これにより、ドラム8内の洗濯物Lが、ドラム8内に溜まった水によってすすがれる。このようなすすぎを、溜めすすぎという。このように、制御部30は、主給水バルブ13、シャワーバルブ14及びフィルタ掃除バルブ25、つまり給水部19によってドラム8内に給水してモータ9によってドラム8を最低回転数以上で同一方向Rに回転させ続けて、ドラム8内の洗濯物Lをすすぐ。
【0067】
溜めすすぎを150秒程度実行した制御部30は、排水バルブ15を開き(タイミングT11)、その後に水位がある程度低下したタイミング(タイミングT12)に脱水工程を実行する。具体的には、制御部30は、排水バルブ15を引き続き開いた状態で、ドラム8を、まず400rpmで10秒程度回転させる。これにより、ドラム8内の洗濯物Lに含まれる水分がある程度絞り取られる。そして、制御部30は、先ほどよりも高い600rpmでドラム8を200秒程度回転させる。これにより、ドラム8内の洗濯物Lに含まれる水分の大部分が絞り取られる。
【0068】
そして、制御部30は、さらに高い700rpmでドラム8を60秒程度回転させる。これにより、ドラム8内の洗濯物Lに含まれる水分のほとんどが絞り取られる。つまり、制御部30は、モータ9によってドラム8を回転させてドラム8内の洗濯物Lを脱水する。その後、制御部30は、ドラム8の回転数を、最低回転数よりも少し高い150rpmまで下げてから(タイミングT13)、150rpmでしばらくドラム8を回転させ続けた後に、脱水工程を終了する(タイミングT14)。
【0069】
脱水工程の終了後、制御部30は、ドラム8の回転を停止させることによって、今回の洗濯運転を終了する(タイミングT15)。なお、制御部30は、洗濯運転の終了に応じて排水バルブ15を閉じてもよいし、洗濯運転の終了後も排水バルブ15を開いた状態にしてもよい。
【0070】
ダウンコースでの洗濯対象となる洗濯物Lは、
図7に示すように、袋状に縫い合わされた布地L1及びL2の間に、羽毛又は綿などの収容物L3がほぼ均一の厚さで詰まった洗濯物である。前述した通常コースの洗濯運転では、洗濯物Lがタンブリングに応じてドラム8内で移動したり、水中で浮遊してほぐされたりすることによって、
図8に示すように、収容物L3が布地L1及びL2の間で偏って塊状にまとまってしまうことがある。これでは収容物L3の厚さが不均一になるので、洗濯後の洗濯物Lの見栄えや着心地が損なわれるおそれがある。
【0071】
しかし、このような洗濯物Lがドラム8内に収容されるダウンコースの洗濯運転の場合には、準備工程においてドラム8内における洗濯物Lの収容量を検出した制御部30は、準備工程後の洗い工程の開始から脱水工程の終了までの間において、ドラム8内の洗濯物Lが常にドラム8の内周面部8Eに張り付くようにモータ9によって所定の最低回転数以上でドラム8を同一方向Rに回転させ続ける(
図3~
図6を参照)。
【0072】
これにより、ダウンコースの洗濯運転中において、ドラム8に対する洗濯物Lの相対位置が変わらないうえに、洗濯物L内の収容物L3が、遠心力でドラム8の内周面部8Eに押さえ付けられることによって、布地L1及びL2の間で偏りにくい。そのため、洗濯物L内の収容物L3が偏らないように洗濯物Lを洗濯できる。洗濯運転の終了後の洗濯物L内の収容物L3は、
図9に示すように、脱水によって若干平べったくなるものの、布地L1及びL2の間でほぼ均一に分布した状態にあるので、乾燥後には、洗濯運転開始前の状態(
図7参照)に戻る。
【0073】
また、前述した最低回転数が90rpm以上200rpm以下であれば、最低回転数でのドラム8の回転中において、振動や騒音を抑制しつつ、洗濯物Lを常にドラム8の内周面部8Eに張り付かせることができる。
【0074】
本発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項に記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【0075】
例えば、前述したダウンコースでは、洗い工程の開始から脱水工程の終了までの間において最低回転数以上でドラム8を同一方向Rに回転させ続けるが、準備工程でのドラム8の回転開始から脱水工程の終了までの間において最低回転数以上でドラム8を同一方向Rに回転させ続けてもよい。また、ダウンコースにおいて、脱水工程の後に乾燥工程が実行されてもよく、この場合には、脱水工程の終了後も乾燥工程の終了まで最低回転数以上でドラム8を同一方向Rに回転させ続けるとよい。
【0076】
また、ダウンコースを、洗濯運転の通常コースとして設定してもよく、その場合には、布地L1及びL2の間に収容物L3が詰まった洗濯物Lに限らず、全ての洗濯物をダウンコースにおける洗濯対象としてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 ドラム式洗濯機
8 ドラム
8E 内周面部
9 モータ
19 給水部
30 制御部
L 洗濯物
L1 布地
L2 布地
R 同一方向